説明

電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】電子写真感光体と、各手段と、の間の距離を正確に制御するために、ギャップ規制用コロ等の接触部材を用いた場合であっても、感光層の剥離を効果的に抑制できるとともに、製造効率に優れる電子写真感光体及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体及びそれを搭載した画像形成装置であって、円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、当該非感光層形成部に、感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、かつ、薄膜層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及び画像形成装置に関し、特に、感光層の剥離を効果的に抑制できるとともに、製造効率に優れる電子写真感光体及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザープリンタ等の電子写真機においては、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程等を順次実施することにより、画像を形成している。
これらの工程は、主として電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の間において実施されるため、電子写真感光体と、各手段と、の間の距離を正確に制御することが要求される。
例えば、現像剤を現像手段から電子写真感光体に対して飛翔させて現像を行う場合には、電子写真感光体と、現像手段と、の距離は、画像濃度等の画像特性に大きな影響を与えることとなるため、かかる距離を正確に制御する必要がある。
【0003】
そこで、電子写真感光体と、各手段と、の間の距離を正確に制御するために、接触部材を用いる方法が知られている。
具体例としては、現像手段としての現像ロールにおける両端部に、所定の直径を有する回転可能なギャップ規制用コロを設けるとともに、かかるギャップ規制用コロを電子写真感光体に対して当接させる方法が挙げられる。
しかしながら、接触部材を直接的に電子写真感光体の感光層に対して当接させた場合、感光層における当接箇所が断続的に撓むこととなるため、当接箇所を起点として基体から感光層が剥離しやすくなるという問題が見られた。
【0004】
そこで、かかる問題を解決すべく、接触部材が当接する箇所における感光層を完全に除去し、接触部材と、基体と、を直接的に当接させる方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−330239号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、接触部材が当接する箇所における感光層を完全に除去しようとすると、感光層を除去するために大量の有機溶剤が必要となるばかりか、時間もかかり、電子写真感光体の製造効率が著しく低下するという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、電子写真感光体において、接触部材と当接する箇所に非感光層形成部を設けるとともに、当該非感光層形成部に、感光層に連続してなる所定膜厚の薄膜層を形成することによって、感光層の剥離を効果的に抑制することができるとともに、製造効率についても効果的に向上させることができることを見出すに至った。
すなわち、本発明の目的は、感光層の剥離を効果的に抑制できるとともに、製造効率に優れる電子写真感光体及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、当該非感光層形成部に、感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、かつ、薄膜層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすることを特徴とする電子写真感光体が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、接触部材と当接する箇所において、非感光層形成部を設けるとともに、当該非感光層形成部に、感光層と連続してなる所定膜厚の薄膜層を形成することにより、感光層に対して直接的に接触部材を当接させた場合等と比較して、感光層の剥離を効果的に抑制することができる。
そればかりか、当接箇所における感光層を完全に除去する場合と比較して、感光層を溶解させるための有機溶剤が少なくて済むとともに、溶解させるための時間を短縮させることができる。
また、言うまでも無く、電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の間の距離を正確に制御するという接触部材の本来的な機能についても、有効に発揮させることができる。
【0008】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、非感光層形成部における薄膜層の幅を1〜50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、接触部材を、より安定的に当接させることができる。
【0009】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層と、薄膜層との間に、斜行部が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、薄膜層において生じた僅かな撓みを、より分散された状態で感光層に対して伝達することができることから、感光層の剥離をより効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、薄膜層の表面粗さ(Ra)を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、製造効率を維持しつつも、接触部材に対する摩擦を低減させることができる。
【0011】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、薄膜層の一部を構成する結着樹脂がシロキサン成分を含有するポリカーボネート樹脂であって、当該ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量を10,000〜100,000の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、感光層の剥離を、より効果的に抑制することができる。
【0012】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が、単層型感光層であることが好ましい。
このように構成することにより、積層型感光層の場合と異なり、感光層中における界面を無くすことができることから、感光層と連続して形成される薄膜層の強度を安定化させることができる。
【0013】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が円筒型基体上に、直接的に形成されていることが好ましい。
このように構成することにより、中間層を介した場合と比較して、感光層と連続して形成される薄膜層の強度を安定化させることができる。
【0014】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、薄膜層が、電子写真感光体の端部に一旦形成した感光層の表面を、有機溶剤によって溶解除去することによって得られてなることが好ましい。
このように構成した場合であっても、感光層を溶解させるための有機溶剤が少なくて済むとともに、溶解させるための時間を短縮させて、電子写真感光体の製造効率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の別の態様は、円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体を備えた画像形成装置であって、円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、当該非感光層形成部に、感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、かつ、薄膜層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とした電子写真感光体を備え、さらに、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段からなる群より選択される少なくとも一つに設けられた接触部材が、薄膜層に対して、当接することを特徴とする画像形成装置である。
すなわち、本発明の画像形成装置であれば、所定の薄膜層を有する電子写真感光体を搭載していることから、電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の距離を正確に制御できる一方で、感光層が接触部材と当接することによる感光層の剥離についても、効果的に抑制できる。
【0016】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、接触部材が、ギャップ規制用コロであることが好ましい。
このように構成することにより、電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の間の距離を、より正確に制御できる一方で、薄膜層に対して回転可能に当接するため、感光層の剥離についても、より効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、当該非感光層形成部に、感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、かつ、薄膜層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすることを特徴とする電子写真感光体である。
以下、第1の実施形態としての電子写真感光体について、具体的に説明する。
【0018】
1.基本的構成
本発明の電子写真感光体は、図1(a)に示すように、電子写真感光体10の軸線方向における少なくとも一方の端部に、接触部材50と当接するための非感光層形成部11が設けてあるとともに、当該非感光層形成部11に、感光層14に連続してなる薄膜層12を有する。
さらに、本発明の電子写真感光体は、図1(b)に示すように、電子写真感光体10における薄膜層12を所定の膜厚L2となるように、具体的にはL2=0.1〜3μmとなるように残すことを特徴とする。
この理由は、このように構成しない場合、以下のような問題が生じるためである。
【0019】
すなわち、図2(a)〜(b)に示すように、所定の薄膜層を設けない場合、すなわち、接触部材50を直接的に電子写真感光体10の感光層14に対して当接させた場合、感光層14における当接箇所12´が断続的に撓むこととなるため、当接箇所12´を起点として感光層14が円筒型基体22から剥離しやすくなる。
一方、図2(c)に示すように、当接箇所12´´における感光層を完全に除去し、接触部材50と、円筒型基体22と、を当接させようとすると、感光層14を除去するために大量の有機溶剤が必要となるばかりか、時間もかかり、電子写真感光体の製造効率が著しく低下するという問題が生じる。
【0020】
この点、図1(a)〜(b)に示す本発明の電子写真感光体10であれば、上述した二つの問題点を同時に解決することができる。
すなわち、本発明の電子写真感光体であれば、感光層の剥離を効果的に抑制することができるとともに、製造効率についても効果的に向上させることができる。
もちろん、電子写真感光体10に対して接触部材50を当接させることによって、電子写真感光体10と、その周囲に配置された現像ローラ40等と、の間の距離L1を正確に制御するという接触部材の本来的な機能についても、有効に発揮させることができる。
【0021】
以下、主に単層型電子写真感光体を例にとって、本発明の電子写真感光体を構成要件ごとに説明するが、図3に示すように単層型電子写真感光体10aとして構成した場合、積層型電子写真感光体の場合と異なり、感光層中における界面を無くすことができることから、感光層と連続して形成される薄膜層の強度を安定化させることができる。
かかる単層型電子写真感光体10aの基本的構成は、円筒型基体22上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる単一の感光層14aを設けたものである。
また、図3(b)に例示するように、感光層14aと、円筒型基体22と、の間に、中間層26を形成した単層型電子写真感光体10a´とすることもできる。
【0022】
2.基体
本発明における基体としては、円筒型であって、かつ、所定の導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。
例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上述した金属が蒸着又はラミネートされたプラスチック材料、アルマイト、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス、あるいはカーボンブッラク等の導電性微粒子を分散してなるプラスッチク材料等が挙げられる。
また、感光層における干渉縞の発生を防止するために、エッチング、陽極酸化、ウェットブラスティング方、サンドブラスティング法、粗切削、センタレス切削等の方法を用いて基体の表面に粗面化処理を施してもよい。
なお、基体の外径としては、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましく、20〜500mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、基体の厚さとしては、0.3〜5mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜3mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0023】
3.中間層
また、図3(b)に示すように、基体22上に、所定の結着樹脂を含有する中間層26を設けてもよい。
この理由は、基体と感光層との密着性を向上させるとともに、この中間層内に所定の微粉末を添加することで、入射光を散乱させて、干渉縞の発生を抑制することができるばかりか、カブリや黒点の原因となる非露光時における基体から感光層への電荷注入を抑制することができるためである。
かかる微粉末としては、光散乱性、分散性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等を用いることができる。
また、中間層の膜厚としては、0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、中間層を設けた場合には、図1(c)に示すように、中間層26上に形成されている所定の薄膜層12の膜厚L2´を0.1〜3μmの範囲内の値とすればよく、中間層は、薄膜層には含まれない。
【0024】
但し、本発明としての電子写真感光体は、端部における感光層を所定の膜厚となるように一部除去して、所定の薄膜層を形成することを特徴としている。
したがって、かかる所定の薄膜層の強度を安定化させる観点からは、中間層を介することなく、感光層が円筒型基体上に、直接的に形成されていることが、より好ましい。
【0025】
4.感光層
(1)結着樹脂
本発明における感光層に用いられる結着樹脂は、特に制限されるものではないが、ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
この理由は、ポリカーボネート樹脂であれば、所定の薄膜層を起点とする感光層の剥離を、より効果的に抑制することができるためである。
また、ポリカーボネート樹脂の中でも、特にシロキサン含有ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
この理由は、シロキサン含有ポリカーボネート樹脂であれば、所定の薄膜層における接触部材に対する摩擦を低減させることができ、その結果、所定の薄膜層を起点とする感光層の剥離を、さらに効果的に抑制することができるためである。
以下に、本発明において好適に用いられるポリカーボネート樹脂の一般式(1)及び(2)を例示する。
【0026】
【化1】

【0027】
(一般式(1)中、複数の置換基Reは、水素原子、炭素数1〜4の置換又は非置換のアルキル基、あるいは炭素数6〜30の置換又は非置換のアリール基であり、添字oは、0〜4の整数である。)
【0028】
【化2】

【0029】
(一般式(2)中、X〜X3は、それぞれ独立した−(CH2q−であり、繰り返し数qは1〜12の整数であり、Rf〜Riは、それぞれ独立しており、フェニル基、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基であり、繰り返し数pは0〜200の整数である。)
【0030】
また、結着樹脂の重量平均分子量が10,000〜100,000の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、結着樹脂の重量平均分子量をかかる範囲とすることにより、所定の薄膜層を起点とする感光層の剥離を、さらに効果的に抑制することができるためである。
すなわち、結着樹脂の重量平均分子量が10,000未満の値となると、凝集力が過度に低下して、感光層が剥離しやすくなる場合があるためである。一方、結着樹脂の重量平均分子量が100,000を超えた値となると、粘度が過度に増加して、電荷輸送剤等を分散させることが困難となったり、感光層を均一に形成することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、結着樹脂の重量平均分子量を20,000〜80,000の範囲内の値とすることがより好ましく、30,000〜70,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0031】
(2)電荷輸送剤及び電荷発生剤
電荷輸送剤及び電荷発生剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の種々の化合物を用いることができる。
例えば、正孔輸送剤としては、スチルベンアミン系化合物等が好適に用いられ、電子輸送剤としては、ナフトキノン系化合物等が好適に用いられる。
また、電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン結晶等が好適に用いられる。
また、正孔輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して20〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましく、電子輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して10〜70重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、電荷発生剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して0.2〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0032】
(3)添加剤
また、感光層に対し、上述した各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を添加することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えば、テルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0033】
(4)膜厚
また、感光層の膜厚を5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、感光層の膜厚が5μm未満の値となると、感光層を均一に形成することが困難となったり、機械的強度が低下する場合があるためである。一方、感光層の膜厚が100μmを超えた値となると、所定の薄膜層以外の箇所を起点として、感光層が基体から剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって感光層の膜厚を10〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜45μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
5.薄膜層
本発明の電子写真感光体は、図1(a)〜(c)に示すように、電子写真感光体10の軸線方向における少なくとも一方の端部に、非感光層形成部11が設けてあるとともに、当該非感光層形成部11に、感光層14に連続してなる薄膜層12が設けてあり、かつ、薄膜層12の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、接触部材と当接する箇所において、非感光層形成部を設けるとともに、非感光層形成部に、感光層と連続してなる所定膜厚の薄膜層を形成することにより、感光層に対して直接的に接触部材を当接させた場合等と比較して、感光層の剥離を効果的に抑制することができるためである。
そればかりか、当接箇所における感光層を完全に除去する場合と比較して、感光層を溶解させるための有機溶剤が少なくて済むとともに、溶解させるための時間を短縮させることができるためである。
また、言うまでも無く、電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の間の距離を正確に制御するという接触部材の本来的な機能についても、有効に発揮させることができるためである。
すなわち、薄膜層の膜厚が0.1μm未満の値となると、かかる膜厚にまで感光層を溶解させるための有機溶剤が過度に増加するとともに、溶解させるための時間についても過度に長くなって、製造効率が著しく低下する場合があるためである。一方、薄膜層の膜厚が3μmを超えた値となると、接触部材との当接によって薄膜層が断続的に撓みやすくなって、その結果、感光層の剥離が生じやすくなる場合があるためである。
したがって、所定の薄膜層の膜厚を0.2〜2.5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜2.0μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、薄膜層における最表面層の膜厚は、渦電流計を用いて測定することができる。
【0035】
次いで、図4を用いて、薄膜層の膜厚と、感光層の剥離性及び製造効率と、の関係を説明する。
すなわち、図4おいては、横軸に薄膜層の膜厚(μm)を採り、左縦軸に感光層の剥離性(相対評価)を採った場合の特性曲線Aと、右縦軸に感光層を一部溶解して薄膜層を形成するのに用いたテトラヒドロフランの交換寿命(分)を採った場合の特性曲線Bと、を示している。
なお、感光層の剥離性についての相対評価は、電子写真感光体を、現像ローラの両端に接触部材としてのギャップ規制用コロを設けた画像形成装置に組み付けて、5%原稿を30,000枚耐久印刷した場合における感光層の剥離の有無を、下記基準に沿って相対化し、評価したものである。
評価点3:感光層の剥離が確認されない。
評価点1:感光層の剥離が確認される。
【0036】
また、テトラヒドロフランの交換寿命とは、50リットルのテトラヒドロフランを用いて、5分間に70本のペースで、膜厚30μmの感光層を有する単層型電子写真感光体の一方の端部における感光層幅:10mmを所定の膜厚となるまで順次溶解させ続けた場合のテトラヒドロフランの交換寿命を意味する。
このとき、交換寿命であるか否かの判断基準は、電子写真感光体の端部を、上述した条件で溶解させた際に、グラフの横軸に採ってあるそれぞれの目標膜厚まで溶解できなくなったときをテトラヒドロフランの交換時期であると判断し、その時点までの時間をテトラヒドロフランの交換寿命(分)とした。
なお、その他の詳細については、実施例において記載する。
【0037】
まず、特性曲線Aからは、薄膜層の膜厚が増加するのにともなって、感光層の剥離が発生しやすくなることがわかる。
一方、特性曲線Bからは、薄膜層の膜厚が増加するのにともなって、テトラヒドロフランの交換寿命が延びることがわかる。
より具体的には、薄膜層の膜厚が0.1μm未満の値となると、感光層の剥離は抑制できるものの、テトラヒドロフランの交換寿命が100分を切ってしまい、製造効率が過度に低下することがわかる。
一方、薄膜層にの膜厚が3μmを超えた値となると、テトラヒドロフランの交換寿命は350分以上にまで安定的に延ばすことができるものの、感光層の剥離が発生しやすくなることがわかる。
よって、特性曲線A及びBを総合的に考慮すると、薄膜層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすることで、製造効率に優れるとともに、感光層の剥離についても効果的に抑制できる電子写真感光体を得られるようになることがわかる。
【0038】
また、所定の薄膜層の軸線方向における幅L3が1〜50mmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、所定の薄膜層の軸線方向における幅をかかる範囲とすることにより、接触部材を、より安定的に当接させることができるためである。
すなわち、所定の薄膜層の軸線方向における幅が1mm未満の値となると、特に組み付け時において、接触部材を安定的に当接させることが困難となる場合があるためである。一方、所定の薄膜層の軸線方向における幅が50mmを超えた値となると、所定の薄膜層の膜厚にばらつきが生じやすくなって、感光層の剥離の原因となる場合があるためである。
したがって、所定の薄膜層の軸線方向における幅を2〜40mmの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜30mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
また、薄膜層の表面粗さ(Ra)を0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、薄膜層の表面粗さ(Ra)をかかる範囲とすることにより、製造効率を維持しつつも、接触部材に対する摩擦を低減させることができるためである。
すなわち、薄膜層の表面粗さ(Ra)の値が0.01μm未満の値となると、円筒状基体の表面を過度に加工する必要が生じて、製造効率が低下する場合があるためである。一方、薄膜層の表面粗さ(Ra)の値が3μmを超えた値となると、接触部材に対する摩擦が過度に増加して、感光層が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、薄膜層の表面粗さ(Ra)を0.02〜3μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜1μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0040】
また、図1(c)に示すように、感光層14と、薄膜層12と、の間に、斜行部13が設けてあることが好ましい。
この理由は、かかる斜行部を設けることにより、薄膜層において生じた僅かな撓みを、より分散された状態で感光層に対して伝達することができることから、感光層の剥離をより効果的に抑制することができるためである。
なお、かかる斜行部13の幅L4を1〜10mmの範囲内の値とすることが好ましく、3〜8mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0041】
6.製造方法
(1)感光層の形成
また、電子写真感光体の製造方法としては、特に制限されるものではないが、以下のような手順で実施することができる。
まず、溶剤に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂、添加剤等を含有させて塗布液を作成する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて導電性基材(アルミニウム素管)上に塗布する。
その後、例えば、100℃、40分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する単層型電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。このとき、さらに、電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を含有させてもよい。
【0042】
また、この感光層を形成する前に、基体上に中間層を形成してもよい。
この中間層を形成するにあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えば、ブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することができる。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することができる。
その後、基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
【0043】
(2)薄膜層の形成
本発明における所定の薄膜層は、電子写真感光体の軸線方向における少なくとも一方の端部に設けられていればよい。
この理由は、一般に感光層の形成はディップコート法によって行われるため、ディップコート法実施時の円筒型基体上端側については、当該上端を感光層用塗布液に浸漬させないように制御することにより、最初から感光層を有さない当接箇所を形成することができるためである。
【0044】
本発明における所定の薄膜層の形成方法は、当該薄膜層の膜厚を所定の範囲に形成できる方法であれば、特に制限されるものではない。
一方、特に好ましい形成方法としては、感光層が既に形成してある電子写真感光体の軸線方向における端部の感光層を、有機溶剤によって一部溶解除去する方法が挙げられる。
この理由は、本発明における所定の薄膜層であれば、かかる方法で形成した場合であっても、感光層を溶解させるための有機溶剤が少なくて済むとともに、溶解させるための時間を短縮させて、電子写真感光体の製造効率を向上させることができるためである。
【0045】
また、上述した有機溶剤としては、基本的に、感光層用塗布液を製造した際に用いた有機溶剤を使用することができるが、特にテトラヒドロフラン等の有機溶剤を使用することが好ましい。
また、溶解に要する時間は、感光層の構成や、使用する有機溶剤の種類や温度によって変化することとなるが、一般に、室温であれば1〜4分の範囲内で所定の膜厚まで感光層を溶解除去することができる。
【0046】
7.積層型電子写真感光体
本発明の電子写真感光体は、図5に示すように、積層型電子写真感光体10bとして構成することもできる。
すなわち、電荷発生剤を含む電荷発生層34と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含む電荷輸送層32と、からなる積層型感光層14bを備えた積層型電子写真感光体10bであってもよい。
この場合、所定の薄膜層においては、薄膜層における最表面層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
したがって、例えば、図5(a)のように感光層14bの最表面層が電荷輸送層32である場合には、かかる電荷輸送層32の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とすればよいことになる。
なお、積層型電子写真感光体におけるその他の構成については、従来公知の構成とすることができ、使用する有機材料としては、例えば、単層型電子写真感光体におけるものと同様の有機材料が使用可能である。
また、電荷輸送層の膜厚としては、5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましく、電荷発生剤の膜厚としては、0.01〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0047】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体を備えた画像形成装置であって、円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、当該非感光層形成部に、感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、かつ、薄膜層の膜厚を0.1〜3μmの範囲内の値とした電子写真感光体を備え、さらに、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段からなる群より選択される少なくとも一つに設けられた接触部材が、薄膜層に対して、当接することを特徴とする画像形成装置である。
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に、第2の実施形態としての画像形成装置について説明する。
【0048】
第2の実施形態の画像形成装置は、例えば、図6に示すように構成することができる。
かかる画像形成装置100について、画像形成時における基本動作とともに、その基本構成を説明する。
まず、電子写真感光体10を、矢印Aで示す方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転させた後、その表面を帯電手段112によって所定電位に帯電させる。なお、図6においては、帯電手段112としては、帯電ロールを用いている。
次いで、露光手段113により、画像情報に応じて光変調されながら反射ミラー等を介して、電子写真感光体10の表面を露光する。この露光により、電子写真感光体10の表面に静電潜像が形成される。
次いで、この静電潜像に基づいて、現像手段114により潜像現像が行われる。この現像手段114の内部にはトナーが収納されており、このトナーが電子写真感光体10表面の静電潜像に対応して付着することで、トナー像が形成される。
また、記録紙120は、所定の転写搬送経路に沿って、電子写真感光体10下部まで搬送される。このとき、電子写真感光体10と転写手段115との間に、所定の転写バイアスを印加することにより、記録材120上にトナー像を転写することができる。
【0049】
次いで、トナー像が転写された後の記録紙120は、分離手段(図示せず)によって電子写真感光体10表面から分離され、搬送ベルトによって定着器に搬送される。次いで、この定着器によって、加熱、加圧処理されて表面にトナー像が定着された後、排出ローラによって画像形成装置100の外部に排出される。
一方、トナー像転写後の電子写真感光体10はそのまま回転を続け、転写時に記録紙120に転写されなかった残留トナー(付着物)が電子写真感光体10の表面から、クリーニング装置117によって除去される。
次いで、除電手段118によって、電子写真感光体10に対する除電光の照射、あるいは除電電圧の印加がなされ、感光層中に残留しているメモリ電位が除去される。
【0050】
ここで、本発明においては、上述した電子写真感光体として、第1の実施形態において詳述した所定の薄膜層を有する電子写真感光体を用いることを特徴とする。
さらに、上述した帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段かなる群より選択される少なくとも一つは、接触部材を有するとともに、かかる接触部材を介して電子写真感光体における所定の薄膜層に対して当接していることを特徴とする。
したがって、本発明の画像形成装置であれば、電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の距離を正確に制御できる一方で、感光層が接触部材と当接することによる感光層の剥離についても、効果的に抑制できる。
【0051】
また、上述した接触部材として、図1(a)に示すように、ギャップ規制用コロ50を用いることが好ましい。
この理由は、ギャップ規制用コロであれば、電子写真感光体と、その周囲に配置された各手段と、の間の距離を、より正確に制御できる一方で、所定の薄膜層に対して回転可能に当接するため、感光層の剥離についても、より効果的に抑制することができるためである。
また、かかるギャップ規制用コロの材料物質としては、例えば、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等を用いることが好ましい。
また、かかるギャップ規制用コロの直径としては、ギャップ規制用コロを有する手段のサイズや、当該手段と、電子写真感光体と、の距離によって変化するが、一般的には3〜100mmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜50mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、かかるギャップ規制用コロの幅としては、1〜40mmの範囲内の値とすることが好ましく、2〜20mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0053】
[実施例1]
1.電子写真感光体の製造
(1)感光層の形成
容器内に、電荷発生剤として、下記式(3)で表されるX型無金属フタロシアニン化合物結晶(CGM−1)3重量部と、正孔輸送剤として、下記式(4)で表されるスチルベンアミン化合物(HTM−1)50重量部と、電子輸送剤として、下記式(5)で表されるナフトキノン系化合物(ETM−1)30重量部と、結着樹脂として、下記式(6)で表される重量平均分子量10,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(Resin−1)100重量部と、溶剤として、テトラヒドロフラン700重量部と、を収容した。
次いで、ボールミルにて50時間混合分散して、感光層用塗布液を作成した。次いで、得られた感光層用塗布液を、直径30mm、長さ254mmの基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布した後、130℃、45分間の条件で熱風乾燥して、膜厚30μmの単層型感光層を形成した。
なお、ディップコート法を実施した際、電子写真感光体の上端部には、軸線方向10mmの幅となるように、感光層の未塗布領域を設けた。
【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
(2)薄膜層の形成
次いで、電子写真感光体における感光層が形成されている方の端部を、軸線方向10mmの幅となるように、テトラヒドロフラン中に浸漬し、感光層の一部を溶解除去し、薄膜層を形成した。
次いで、薄膜層の膜厚を、渦電流計(フィッシャー(株)製、GRUMDEINHEIT MMS 3AM)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
【0059】
2.評価
(1)剥離性の評価
得られた電子写真感光体における感光層の剥離性を評価した。
すなわち、得られた電子写真感光体を、現像ローラの両端に接触部材としてのギャップ規制用コロ(材料物質:ABS樹脂、直径:10mm、幅:3mm)を設けた画像形成装置(京セラミタ(株)製、FS-C5030N改造機)に組み付けて、5%原稿を30,000枚耐久印刷した。
次いで、耐久印刷後の電子写真感光体において、感光層の剥離の有無を、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:感光層の剥離が確認されない。
×:感光層の剥離が確認される。
【0060】
なお、画像形成条件は、下記の通りとした。
ドラム線速 168mm/sec
帯電手段 スコロトロン帯電
露光手段 レーザスキャナー 波長780nm
現像手段 タッチダウン現像方式
転写手段 中間転写方式
クリーニング手段 カウンタブレード方式
除電手段 LED光除電 波長630nm
【0061】
(2)製造効率の評価
次いで、電子写真感光体を製造する際の製造効率の評価を行った。
すなわち、まず、薄膜層を形成していない以外は、上述した電子写真感光体と同一である電子写真感光体を、5分間に70本のペースで、50リットルのテトラヒドフラン(常温)中に一部浸漬させ、上述した電子写真感光体と同一の薄膜層を順次形成し続けた。
そして、上述した条件で溶解させた際に、目標膜厚まで溶解できなくなったときをテトラヒドロフランの交換時期であると判断し、その時点までの時間をテトラヒドロフランの交換寿命(分)とした。得られた結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
実施例2では、結着樹脂の重量平均分子量を100,000としたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0063】
[実施例3]
実施例3では、結着樹脂として、下記式(7)で表される重量平均分子量10,000のシロキサン成分含有ポリカーボネート樹脂(Resin−2)を用いたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0064】
【化7】

【0065】
[実施例4]
実施例4では、結着樹脂として、式(7)で表される重量平均分子量30,000のシロキサン成分含有ポリカーボネート樹脂(Resin−2)を用いたほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
[実施例5〜8]
実施例5〜8では、薄膜層の膜厚を0.5μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0067】
[実施例9〜12]
実施例9〜12では、薄膜層の膜厚を1μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
[実施例13〜16]
実施例13〜16では、薄膜層の膜厚を2μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
[実施例17〜20]
実施例17〜20では、薄膜層の膜厚を3μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0070】
[比較例1〜4]
比較例1〜4では、当接箇所における感光層を完全に除去し、薄膜層を形成しなかったほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
[比較例5〜8]
比較例5〜8では、薄膜層の膜厚を4μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
[比較例9〜12]
比較例9〜12では、薄膜層の膜厚を5μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
[比較例13〜16]
比較例13〜16では、薄膜層の膜厚を10μmとしたほかは、それぞれ実施例1〜4と同様に電子写真感光体を製造して、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかる電子写真感光体及び画像形成装置であれば、電子写真感光体において、接触部材と当接する箇所に感光層を所定の膜厚となるように残し、非感光層形成部を設けるとともに、非感光層形成部に、感光層に連続してなる所定膜厚の薄膜層を形成することによって、感光層の剥離を効果的に抑制することができるとともに、製造効率についても効果的に向上させることができるようになった。
したがって、本発明にかかる電子写真感光体及び画像形成装置は、複写機やプリンター等の各種画像形成装置における低価格化や製造効率化ばかりでなく、高品質化に対しても著しく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の電子写真感光体を説明するために供する図である。
【図2】(a)〜(c)は、従来の当接箇所を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(b)は、単層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。
【図4】図4は、薄膜層の膜厚と、感光層の剥離性及び製造効率と、の関係を説明するために供する図である。
【図5】(a)〜(b)は、積層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。
【図6】図6は、本発明の画像形成装置を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0077】
10:電子写真感光体、11:非感光層形成部、12:薄膜層、12´及び12´´:当接箇所、13:斜行部、14:感光層、22:円筒型基体、40:現像ローラ、50:接触部材(ギャップ規制用コロ)、26:中間層、100:画像形成装置、112:帯電手段、113:露光手段、114:現像手段、115:転写手段、117:クリーニング手段、18:除電手段、120:記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、
前記円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、
当該非感光層形成部に、前記感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、
かつ、前記薄膜層の厚さを0.1〜3μmの範囲内の値とすることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記非感光層形成部における薄膜層の幅を1〜50mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層と、前記薄膜層との間に、斜行部が設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記薄膜層の表面粗さ(Ra)を0.01〜3μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記薄膜層の一部を構成する結着樹脂がシロキサン成分を含有するポリカーボネート樹脂であって、当該ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量を10,000〜100,000の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記感光層が、単層型感光層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記感光層が、前記円筒型基体上に、直接的に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記薄膜層が、前記電子写真感光体の端部に一旦形成した感光層の表面を、有機溶剤によって溶解除去することによって得られてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
円筒型基体上に感光層を有する電子写真感光体を備えた画像形成装置であって、
前記円筒型基体の端部に、非感光層形成部が設けてあるとともに、当該非感光層形成部に、前記感光層に連続してなる薄膜層が設けてあり、かつ、前記薄膜層の厚さを0.1〜3μmの範囲内の値とした電子写真感光体を備え、さらに、
帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段からなる群より選択される少なくとも一つに設けられた接触部材が、前記薄膜層に対して、当接することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記接触部材が、ギャップ規制用コロであることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−39327(P2010−39327A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203794(P2008−203794)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】