説明

電子写真成像モジュール及び電子写真成像装置並びに電子写真成像モジュール製造方法

【課題】トナー輸送の高信頼化により電子写真装置の成像出力における経時変化を減らす。
【解決手段】トナーをトナー装荷ローラからドナーローラへと輸送し更にそのドナーローラからフォトレセプタローラの光導電面上に輸送する仕組みの電子写真成像モジュールにて、そのトナー装荷ローラ136を、例えば発泡質の素材により形成された芯材146と、その芯材146を取り巻くよう芯材146と同種又は別種の素材により形成された外殻148とを有し、外殻148の表面を以てその外面156とする構成にする。外殻148によりトナー浸透が妨げられるのでローラ136の信頼性が高まる。芯材形成素材が発泡質の素材であるので、芯材146と外殻148が同種素材からなるローラ136が、例えばモールド1回で形成される。面156に長尺溝158を設けるとトナー輸送効率が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真成像モジュール、そのモジュールを具備する電子写真装置、並びにそのモジュールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置では、フォトレセプタローラを部位選択的に充放電させることで静電潜像を発生させ、更にそのフォトレセプタローラ上の潜像にトナーを被着させてトナー像を発現させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4399933号明細書
【特許文献2】米国特許第4990958号明細書
【特許文献3】米国特許第5047806号明細書
【特許文献4】米国特許第5212522号明細書
【特許文献5】米国特許第5305064号明細書
【特許文献6】米国特許第6473587号明細書
【特許文献7】米国特許第4397409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、電子写真装置では、フォトレセプタローラへのトナー輸送を高信頼化し、長期使用による成像出力の変化(劣化)を抑えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに、本発明の一実施形態に係る電子写真成像モジュールは、光導電面を有するフォトレセプタローラと、その光導電面にトナーを輸送できるようフォトレセプタローラに面して配置されたドナーローラと、そのドナーローラにトナーを輸送できるようドナーローラに面して配置されたトナー装荷ローラと、を備える。そのトナー装荷ローラは、発泡質の第1素材により形成された芯材と、その芯材を取り巻くよう第1素材により形成された非孔質の外殻と、を有し、その外殻の表面を以てトナー装荷ローラの外面とする。
【0006】
本発明の他の実施形態に係る電子写真成像モジュールは、光導電面を有するフォトレセプタローラと、その光導電面にトナーを輸送できるようフォトレセプタローラに面して配置されたドナーローラと、そのドナーローラにトナーを輸送できるようドナーローラに面して配置されたトナー装荷ローラと、を備える。そのトナー装荷ローラは、発泡質の第1素材により形成された芯材と、その芯材を取り巻くよう第2素材により形成され(例えば真の第1素材に接合され)た非孔質の外殻と、を有し、その外殻の表面を以てトナー装荷ローラの外面とする。
【0007】
本発明の更に他の実施形態に係る電子写真成像モジュール製造方法では、第1成形器に少なくとも第1素材を入れるステップと、第2成形器に少なくとも第1素材を入れるステップと、それら第1,第2成形器を連結するステップと、第1,第2成形器内の少なくとも第1素材を硬化させてトナー装荷ローラを形成するステップと、を実行することにより、(i)発泡質の第1素材により形成された芯材と、(ii)その芯材を取り巻くよう第1素材により形成されておりその表面がトナー装荷ローラの外面となる非孔質の外殻と、を有するトナー装荷ローラを形成する。本方法は、好ましくは、ドナーローラがフォトレセプタローラ・トナー装荷ローラ間に位置し且つそれらに面することとなるよう、トナー装荷ローラ、ドナーローラ及びフォトレセプタローラの両端をハウジング側の対応する壁に実装するステップを、更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】中間転写ベルト及びそれに沿って配置された複数個の電子写真成像モジュールを有する電子写真装置の一例構成を示す図である。
【図2】図1に示した電子写真成像モジュールのうち一つを示す図である。
【図3】図2に示した電子写真成像モジュールにおけるトナー装荷ローラの一例構成を示す図である。
【図4】図3中の線4−4に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に電子写真装置の一例構成100を示す。この装置100は、装置構成部材の動作を制御する制御兼電子回路ユニット110と、中間転写ベルト200の一部外面201に沿って順に配置された4個の電子写真成像モジュール120,160,170,180とを備えている。ベルト200は無限ベルトであり弾性素材で形成されている。
【0010】
電子写真成像モジュール120,160,170,180は、それぞれ、帯電ステーション122,162,172,182と、成像ステーション124,164,174,184と、現像ステーション126,166,176,186とを備えている(符号同順)。現像ステーション126,166,176,186にはフォトレセプタローラ128,168,178,188が設けられている(符号同順)。
【0011】
電子写真成像モジュール120,160,170,180で使用する現像材は例えば一成分現像材、即ちトナー粒子のみを成分とする現像材である。そのトナー粒子の色はモジュール毎に違い、例えばブラック、マゼンタ、シアン及びイエローの四色がモジュール120,160,170,180に入っている(符号同順)。更に、本装置100はトナー容器202,204,206,208を内蔵している。モジュール120,160,170,180はそれらのうち対応するものにつながっている。
【0012】
本装置100を使用する際には、ユーザは、その表面に1個又は複数個の画像(例えば多色テキスト画像)が記されている原稿を透明プラテン220に1枚ずつ載せ、図示の通りリッド230を閉位置にしてプラテン220に被せるか、或いは何枚かの原稿を上部原稿トレイ240に載せるかすればよい。
【0013】
図2に、本装置100内の電子写真成像モジュール120を拡大して示す。他の電子写真成像モジュール160,170,180もこれと同様の構成及び動作であるので、簡明化のためこのモジュール120に絞ってその構成及び動作を説明することとする。
【0014】
まず、フォトレセプタローラ128は、矢印Bで示す方向(この図では時計回り方向)に回転する。帯電ステーション122は、そのローラ128の外面130即ち光導電面の上に電荷を供給するステーションであり、バイアス帯電ローラ129及びローラクリーナ131を有している。そのうちバイアス帯電ローラ129は導電性を有する弾性素材で形成されており、光導電面130はクリーナ131で清掃された後ローラ129によってほぼ均一の電位に帯電される。また、図示例のバイアス帯電ローラ129は光導電面130に面連結して配置されており、光導電面130との間に僅かな間隙を有している。即ち、非接触型の帯電装置となっているが、これに代え、光導電面にバイアス帯電ローラを接触させるタイプの帯電装置も使用することができる。
【0015】
フォトレセプタローラ128上の均一帯電部分は、次いで成像ステーション124にて露光される。このステーション124では、例えばレーザ利用型ラスタ出力スキャナ(ROS)や発光ダイオード(LED)バー等、相応の光源からの出射光で当該均一帯電部分内の随所を露光させる。均一帯電部分内の露光部位では放電(電荷の散逸)が起きるので、この露光によって光導電面130上に静電潜像が形成される。形成された潜像は、現像ステーション126を通過するときにトナーにより現像され、トナー像となる。
【0016】
フォトレセプタローラ128上のトナー像は、図1中の中間転写ベルト200へと転写される。このベルト200は矢印Aで示す方向(この図では反時計回り方向)に回転しており、ある個所でローラ128と接触し又はそのすぐ近くまで接近する。トナー転写はその個所にて生じる。ベルト200の進行方向に沿ってモジュール120より下流に位置する他の電子写真成像モジュール、即ちモジュール120と共に本装置100の第1転写ゾーンを形成している他のモジュール160,170,180でも、同様にしてそのフォトレセプタローラ168,178,188からベルト200上へとトナー像が転写される(符号同順)。モジュール120,160,170,180から順繰りに転写されるトナー像は互いに違う色(例えばブラック、マゼンタ、シアン及びイエローの四基本色)であるので、それらによってベルト200上に例えばフルカラートナー像が発生する。なお、ベルト200への転写は静電作用と物理接触の組合せで行われる。
【0017】
本装置100には、更に、媒体シート(例えば紙シート)を入れておく媒体トレイ250が備わっている。その隣には、トレイ250から媒体シートを1枚ずつ送り出す媒体送り兼位置合わせシステム252が組み込まれている。その媒体シートに代えて封筒、レターヘッド等を送り込みたい場合は、下部差込トレイ254を用いればよい。
【0018】
中間転写ベルト200上のフルカラートナー像は、本装置100内の第2転写ゾーン256にて、そのベルト200から媒体シートへと転写される。このゾーン256は、トレイ250から媒体送り兼位置合わせシステム252によって送り込まれた媒体シートが、そのベルト200と出会う場所にある。このゾーン256では、静電作用及び物理接触を併用しベルト200から媒体シートへとトナーを転写する。
【0019】
本装置100は更にベルトクリーナ210を備えている。このクリーナ210は、媒体シートへのトナー像転写が済んだ後、電子写真成像モジュール120に送られ次の像が形成される前の段階で、中間転写ベルト200を清掃する。
【0020】
他方、第2転写ゾーン256を出たばかりの媒体シートは、その表面上に緩結合しているだけのフルカラートナー像と共に、熔着ステーション260に通される。このステーション260には加熱熔融ローラ262及び加圧ローラ264(或いは図示しない加熱熔融ベルト)があり、媒体シートはそれらに接触する。これらのローラ262,264で熱及び圧力を加えると、その上のトナーが熔融して媒体シート表面に固着する。このステーション260では、更に、最終的な画像光沢レベルも決まる。トナー像熔着が済んだ媒体シートは本装置100の取出用トレイに送られる。
【0021】
翻って、図2に示した電子写真成像モジュール120では、そのハウジング132内にトナー溜まりが形成されている。そのトナー溜まりには幾ばくかのトナー134を入れることができる。トナー装荷(ローディング)ローラ136はそのトナー134に浸るよう且つドナーローラ138に面して設けられており、そのドナーローラ138はフォトレセプタローラ128に面して設けられている。従って、ハウジング132内のトナー134は、トナー装荷ローラ136を回転させるとそのローラ136によってドナーローラ138に輸送され、更にそのローラ138を回転させるとフォトレセプタローラ128に輸送される。輸送されたトナーはフォトレセプタローラ128の光導電層140、特にその表面に位置する光導電面130上に付着する。なお、ローラ136、138及び128は、例えば図示しないモータによって回転駆動する。
【0022】
ハウジング132内には更にドクタブレード142が設けられている。これは、ドナーローラ138上に供給されたトナーを均し、その量乃至厚みを均等化する刃である。また、このブレード142を用いそのトナーを帯電させることもできる。例えば、ブレード142、ローラ138及びトナー粒子間の接触/分離で生じる電子移動でトナーを摩擦帯電させることができる。ブレード142を電気的にバイアスしてトナーを帯電させることもできる。
【0023】
他方、フォトレセプタローラ128の光導電面130上には、均一帯電後の部位選択的放電によって静電潜像が形成されている。ドナーローラ138上のトナーのうち潜像中の成像部位に面することとなったトナーは、その大半がローラ128側に移動するが、他の部位に面することとなったトナーはドナーローラ138上に残る。また、少量ではあるが、成像部位に面することとなったトナーの一部もドナーローラ138上に残る。それらの残留トナーは、ドナーローラ138の回転に伴いトナー装荷ローラ136側に戻ってきたときに、そのトナー装荷ローラ136によって攪乱され、更にそのトナー装荷ローラ136によってトナー溜まりから輸送されてくる新鮮なトナー134と混ざり合う。
【0024】
図3及び図4にトナー装荷ローラ136の一例構成を示す。図示の通り、本ローラ136は軸材(シャフト)144、その軸材144上に形成された芯材(コア)146、並びにその芯材146を取り巻く外殻(スキン)148を有している。図示の通り、軸材144上にはその周方向に間隔をとりつつ複数枚の羽根150が設けられており、それによって芯材形成素材に対する構造的一体性が補強されている。その芯材146は、芯材146を形成する工程で、軸材144に対し強固に接合される。
【0025】
電子写真成像モジュール120を組み立てる際には、例えば本ローラ136の端部152,154をハウジング132の側壁間に装着する。図示しないが、ハウジング132の側壁は、例えば本ローラ136の長軸にほぼ直交するよう相対向して設けられている。それらの間に本ローラ136を装着するには、それぞれベアリング及びベアリングシールが実装されている一対の端部保持板を用いればよい。例えば、本ローラ136、ドナーローラ138及びフォトレセプタローラ128それぞれの軸材の一端を、一方の端部保持板につながるベアリングに差し込む。他方の端部保持板はハウジング132に取り付ける。そして、ローラ136,138,128それぞれの軸材の他端を、当該他方の端部保持板につながるベアリングに差し込む。
【0026】
本ローラ136の芯材146は、発泡質の素材を発泡させ固形にすることによって形成されている。従って多孔質であり、その内部には閉じた又は開いた泡が多数ある。外殻148はその芯材146をくるむ部分であり、その表面がローラ136の外面156ともなっている。トナー134は微粒子の集まりであり、個々のトナー粒子は通常は10μm未満程度の直径であるので、この外殻148を適宜構成すれば、電子写真成像モジュール120の稼働中にローラ136内にトナー粒子が浸透することを、防ぐことができる。即ち、外殻148で芯材146を保護することにより、微細なトナー粒子が芯材146内の泡に浸透し汚すことを防ぐことができる。例えば、外殻148,芯材146双方を弾性素材で形成する際には、外殻148をトナー非浸透化することで、外殻形成素材及び芯材形成素材が共にトナー浸透性である場合に比べ、外殻148,芯材146双方の弾性をより長期間に亘り保ち続けることができる。それによって、本ローラ136からドナーローラ138へのトナー輸送速度がより長期に亘り所望速度に維持されることとなるので、電子写真成像モジュール120の寿命(稼働可能期間)も長くなる。
【0027】
それら、芯材146,外殻148を形成する素材としては、互いに同種の素材を選定してもよいし、互いに別々の素材を選定してもよい。別々の素材を使用すれば、その機械特性、化学特性、電気特性等が芯材146・外殻148間で異なるトナー装荷ローラ136を、得ることができる。
【0028】
トナー非浸透化のため、本ローラ136では、その外面156を非孔質面にしてある。非孔質とは、その面156に貫通孔、盲孔等の欠陥即ち孔がないことである。芯材146を途切れなく覆う滑らかな面156を非孔質面にすることで、トナー粒子に面156の通過を許し外殻形成素材内更には芯材形成素材内への浸透を許す開放流路がなくなる。
【0029】
トナー浸透を更に抑えるため、本ローラ136では、その(非孔質な)外面156の硬度を十分に高めてある。従って、電子写真成像モジュール120を稼働させても、トナー粒子が面156越しに押し込まれることがない。そのためには、面156のショアA硬度を例えば約10〜45にするとよい。
【0030】
本ローラ136における外殻148の厚みは例えば約0.05〜0.5mmである。外殻148を厚手にすれば本ローラ136の寿命はより長くなる。また、本ローラ136の形状は概ね円柱状である。その寸法は、搭載先電子写真成像モジュール120の寸法にもよるが、通常は、その長さが250〜400mm程、その直径が20〜50mm程となろう。
【0031】
本ローラ136における芯材146,外殻148の形成素材は、電子写真成像モジュール120内で役立つ所望の特性を呈する素材であればどのような素材でもよい。例えば、より優れた物理特性、化学特性、電気特性等を呈する素材がよい。特に、外殻148の形成には、その引き裂き強度、耐摩耗性及び対トナー化学親和性が高い素材が適している。また、芯材146,外殻148共に、残留圧縮歪が少ない素材が望まれる。例えば、外殻形成素材に対しては、ASTM(米国材料試験協会)規格D−3574に従い計測した引き裂き強度が少なくとも約100ポンド重/インチあること、電子写真成像モジュール120稼働環境にてトナー134との接触による摩耗に耐えうること、そのトナー134に対する化学的な親和性を有すること等が望まれる(1ポンド=約0.45kg,1インチ=約0.03m)。また、芯材146,外殻148双方の形成素材に対して、その残留圧縮歪が十分少ないこと、例えば華氏130度(約54℃)の温度下で24時間に亘り合計約25%の歪量を与えた後にASTM規格D−3574に従い計測した歪率が、約10%未満であることが望まれる。
【0032】
その外殻形成素材(場合によっては更に芯材形成素材)の組成は、電子写真成像モジュール120内で役立つ電気特性が得られるよう設定、調整する。目的とする電気特性を得るには、本ローラ136を製造する際、外殻形成素材中に導電素材例えば炭素を相応量入れればよい。外殻148の電気特性を適宜設定することで、例えば、外殻148とトナー134、ドナーローラ138又はその双方との間に摩擦帯電作用を発生させることができる。
【0033】
本ローラ136の外面156には、全体的に又はその一部に、本ローラ136からドナーローラ138へのトナー装荷量を増やすための形状的工夫が施されている。形状的工夫とは、外殻148に出っ張り、へこみ又はその双方を設けることである。即ち、面156は、微細なトナー粒子が外殻148の下の芯材146に侵入してその形成素材を硬直させることがないよう本ローラ136を全周に亘りくるむと共に、トナー装荷量を増すための形状的な工夫が施された“皮”となっている。
【0034】
具体的には、本ローラ136の外面156は、図3及び図4に示す「U」字状断面の長尺溝158を複数本有している。溝158は本ローラ136の長軸A−Aに対しほぼ平行に延びており、また本ローラ136の外周に沿って互いに等間隔で並んでいる。溝158を「U」字状断面にしたのは、溝内のどの面もその勾配変化が緩やかになり(即ち丸みを帯び)、微小なトナー粒子を捕まえてしまうような尖った角がないからである。「U」字断面以外では、「V」字断面、方形断面等の長尺溝が有用な場合がある。
【0035】
これに代え、小さなポケット状又は孔状の断面を有するへこみ例えばディンプルを、本ローラ136の外面156に設けてもよい。例えば、その寸法、形状及び容積がある所要の寸法、形状及び容積に揃うよう、またその面156又はその一部に均一分布することとなるよう、面156上に複数個のへこみを形成する。そのへこみの容積は、所与の現像手段又は現像条件に応じて定めればよい。
【0036】
次に、トナー装荷ローラ136の製造プロセスについて説明する。ローラ136は様々なプロセスで製造できるが、ここでは2個の半円柱状の成形器(半型)を用いトナー装荷ローラ136を製造するモールド(注型)プロセスについて例示説明する。モールドプロセス、例えばローラ136の略半分を一方の半型、残りの略半分を他方の半型で成形するプロセスを使用すると、それらの半型の内面輪郭を適宜設計・設定することで、ローラ136の外面輪郭を所望の形状にすることができる。例えば、半型内面に出っ張りを設けることで、それに相応するへこみ例えばディンプルや孔をトナー装荷面156に設けることができ、また半型内面にへこみを設けることで、それに相応する出っ張り即ち突出形状を同面156に設けることができる。
【0037】
モールドプロセスによるトナー装荷ローラ136の形成に当たっては、ワックス、弗化炭化水素等の離型剤によって各成形器の内面を被覆するのが望ましい。離型剤を使用するのは型離れをよくするため、即ちモールドプロセス終了後に成形器から本ローラ136を容易且つ円滑に取り出せるようにするためである。
【0038】
その後は、例えば、トナー装荷ローラ136の芯材146と外殻148を、同種素材を用いモールドプロセスで形成する。このプロセスでは、(上掲の離型剤被覆が施されている)成形器の中にそれぞれ十分な量の素材を入れ、更にそれら成形器同士を連結してその中身の素材を硬化させる。すると、その素材の一部が芯材146となり、他の一部が芯材146を取り巻く外殻148となる。更に、その素材としては、セルフスキニングする発泡質の素材を使用する。セルフスキニングとは、芯材146と一体な外殻148が自動形成されることである。その表面即ちローラ136の外面156は、そのローラ136を途切れなく覆うトナー非浸透性の面になる。
【0039】
このプロセスによるトナー装荷ローラ形成に使用できる素材としては、例えば幾種類かの弾性素材がある。なかでもポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、酢酸セルロース、フェノール樹脂等のように、その発泡が可能で硬化・発泡させると弾性が生じる素材は、芯材146,外殻148の形成に有用である。即ち、発泡した素材には弾性があり、変形をもたらしていた力が去ると速やかにその原形を回復する。
【0040】
例えば、各半型の内面に離型剤を塗布した後、それらの半型にポリウレタン系素材、例えばポリウレタンに多価アルコール及びイソシアネートを所要量事前調合してある素材を入れる。次いで、各半型がその事前調合素材で満ちたら半型同士を連結して閉じ、そのままその素材を発泡させる。すると、トナー装荷ローラ136ができあがる。また、こうしたポリウレタン系の弾性被覆及び発泡素材でローラ138を形成する際には、例えば大気圧下で約40〜45℃の温度を約10〜20分間に亘り加えて硬化させる、というプロセス条件を使用する。
【0041】
芯材146の周囲にある外殻148の厚み及び均質性は、芯材146,各148を形成すべく成形器内に入れた素材と、その成形器の内面との間の温度差を制御することによって、制御することができる。例えば、芯材146と一体で芯材146を取り巻く外殻148をより薄くしたければ、当該温度差を大きくすればよい。
【0042】
発泡場所となる軸材144は適切な任意の素材、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、塩素化ポリエーテル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、アセタート、弗化炭化水素、メチルメタクリラート等の樹脂系素材で形成しておく。例えばガラス入りファイバを20%含有するアクリロニトリルブタジエンスチレンは、軸材144の形成に適する素材の一つである。
【0043】
また、トナー装荷ローラ136の外殻148と芯材146を別々にモールドするプロセスも使用できる。このプロセスでは、各成形器の内面に第1素材を被着させて外殻148を形成し、更にその中に第2素材を入れて芯材146を形成する。第1,第2素材は互いに同種の素材でも別種の素材でもよい。第1素材によって形成される弾性層は、後にローラ136の外殻148になる層である。第2素材によって別途形成される芯材146は、その層の内側に接合される。それら第1,第2素材を同種素材とする場合には、例えば発泡質の素材を自動スキニングさせて外殻148とし芯材146と外殻148が一体になったローラ136を形成する前掲の例でのそれと、同じ素材を使用することができる。また、その他の素材を使用することもできる。
【0044】
このプロセス、即ち芯材146と外殻148を別途形成するモールドプロセスでは、好ましくはその内面に離型剤被覆が施されている個々の成形器の中に外殻形成素材(上掲の第1素材)を被着させる。その量は硬化後に所望の厚みになる量とする。トナー装荷ローラ136の外殻148となりうる素材であればどのような素材を使用してもよいが、泡を含む芯材形成素材の表面に非孔質被覆を形成可能な一群の弾性素材等のなかから、適当な素材を選定するとよい。例えばウレタン系素材を使用して膜を形成し、その膜を外殻148として使用するとよい。その膜には、ローラ136の耐摩耗性を高め寿命を延ばす性質がある。また、その膜なら、微細なトナー粒子の侵入を妨げ、電子写真成像モジュールの稼働寿命を延ばすことができる。更に、孔が生じにくいので、その膜は、滑らかで、均質で、ローラ136を途切れなくくるむトナー非浸透性の被覆となる。その膜の素材には、更に、トナー134及びそれへの添加物に対する化学的親和性がある。
【0045】
各成形器の内面を外殻形成部材で被覆したら、例えば、形成された外殻148と芯材形成素材とが好適に接合するよう、その外殻148より内側に芯材形成素材(上掲の第2素材)を入れる。その素材としては発泡質の素材、例えば所要量の発泡成分を事前調合済のポリウレタン系素材を使用する。そうした素材で各成形器乃至外殻148の内側を満たしたら、それら成形器同士を連結して閉じ、そのままその中の芯材形成素材を発泡させる。また、本プロセスでは、前工程を実施した後できるだけ早期に、一連の後工程を実施するのが望ましい。これは、芯材146となる発泡素材と外殻148との間の接合強度を高めるためである。芯材146・外殻148間を強固に接合するとトナー装荷ローラ136の信頼性が高まり、その寿命が長くなる。
【0046】
従って、このプロセスでは、その外殻148と芯材146が互いに別種の素材で形成されたトナー装荷ローラ136も、形成することが可能である。即ち、機械特性、電気特性、化学特性等の特性が互いに異なる複数の素材を、ローラ136の部位毎に使い分けることが可能である。例えば、ローラ136の“皮”になる外殻148に、その下にある芯材146とは異なる物理特性を持たせることができる。外殻148の組成を適宜設定・調整することにより、例えば外殻148の導電率やトナー134に対する外殻148の摩擦帯電作用を調整することができる。
【0047】
また、トナー装荷ローラ136の芯材146や外殻148は多層化も可能である。例えば外殻148を複数個の層で形成する場合、最も外側の層の表面がそのローラ136の外面156になるので、出っ張りやへこみはその面に持たせるとよい。
【0048】
このように、トナー装荷ローラ136の芯材146と外殻148は、互いに同種の素材でも別種の素材でも形成することができる。そのいずれでも、ローラ136の外面156に孔が生じないので、面156を介したローラ136内へのトナー浸透を実質的に発生させずに、電子写真成像モジュール120を稼働させて印刷を行うことができる。また、面156は、その起伏が緩やかで、均質で、そのローラ136を途切れなくくるむトナー非浸透性の面であるので、そのモジュール120を用い大量の印刷を行った後でも外殻148の弾性が十分高く保たれ、ローラ136からドナーローラ138へのトナー輸送効率があまり落ちない。その結果として、そのモジュール120の寿命(稼働可能期間)が長くなる。例えば、そのモジュール120の交換が必要になる前に、10000枚、50000枚、100000枚或いはそれ以上も、印刷することができる。
【0049】
なお、電子写真成像モジュール120内にあるトナー134の量が少なくなったら、そのモジュール120にトナーを補充することができる。そのため、モジュール120は補充トナー入り容器付のキットに組み込まれている。モジュール120のハウジング132には補充口があるので、その補充口を介しモジュール120内に補充トナーを入れればよい。
【0050】
以上、幾つかの実施形態を参照して本発明について説明した。上述した種々の部材、機能及び工程は、説明を省略した又はそれに代わる種々の部材、機能及び構成と任意に組み合わせることができるので、その組合せによってまた別の有用なシステム乃至用途が生まれることがありうる。更に、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)が、今後、上掲の部材、機能又は工程を一部置換、変形、変更又は改良することもあろう。別紙特許請求の範囲に記載の発明には、それらのものも包含されるものとする。
【符号の説明】
【0051】
100 電子写真装置、110 制御兼電子回路ユニット、120,160,170,180 電子写真成像モジュール、122,162,172,182 帯電ステーション、124,164,174,184 成像ステーション、126,166,176,186 現像ステーション、128,168,178,188 フォトレセプタローラ、129 バイアス帯電ローラ、130 フォトレセプタローラ外面(光導電面)、131 ローラクリーナ、132 トナーハウジング、134 トナー、136 トナー装荷ローラ、138 ドナーローラ、140 光導電層、142 ドクタブレード、144 軸材、146 芯材、148 外殻、150 羽根、152,154 ローラ端部、156 ローラ外面、158 長尺溝、200 中間転写ベルト、201 ベルト外面、202,204,206,208 トナー容器、210 ベルトクリーナ、220 透明プラテン、230 リッド、240 上部原稿トレイ、250 媒体トレイ、252 媒体送り兼位置合わせシステム、254 下部差込トレイ、256 第2転写ゾーン、260 熔着ステーション、262 加熱熔融ローラ、264 加圧ローラ、A 中間転写ベルト進行方向、B フォトレセプタローラ回転方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導電面を有するフォトレセプタローラと、その光導電面にトナーを輸送できるようフォトレセプタローラに面して配置されたドナーローラと、そのドナーローラにトナーを輸送できるようドナーローラに面して配置されたトナー装荷ローラと、を備え、
上記トナー装荷ローラが、発泡質の第1素材により形成された芯材と、その芯材を取り巻くよう第1素材により形成された非孔質の外殻と、を有し、その外殻の表面を以てトナー装荷ローラの外面とする電子写真成像モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の電子写真成像モジュールであって、上記トナー装荷ローラの外面に、へこみ、出っ張り、或いは当該トナー装荷ローラの周方向に間隔をとりつつ当該トナー装荷ローラの長軸に対し平行に延びる長尺溝が、複数個ある電子写真成像モジュール。
【請求項3】
請求項1記載の電子写真成像モジュールであって、
上記第1素材が弾性素材であり、
上記外殻が、その厚みが約0.05〜0.5mm、ショアA硬度が約10〜45である電子写真成像モジュール。
【請求項4】
光導電面を有するフォトレセプタローラと、その光導電面にトナーを輸送できるようフォトレセプタローラに面して配置されたドナーローラと、そのドナーローラにトナーを輸送できるようドナーローラに面して配置されたトナー装荷ローラと、を備え、
上記トナー装荷ローラが、発泡質の第1素材により形成された芯材と、その芯材を取り巻くよう第2素材により形成され芯材の第1素材に接合された非孔質の外殻とを有し、その外殻の表面を以てトナー装荷ローラの外面とする電子写真成像モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−271525(P2009−271525A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104807(P2009−104807)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】