説明

電子写真用導電性部材

【課題】帯電部材に求められる導電性を確保しつつも、長期の使用、使用環境に依存せず放電ムラ起因の画像欠陥の発生を極力低減させた電子写真用の導電性部材を提供すること。
【解決手段】導電性支持体および導電層を有する電子写真用導電性部材であって、該導電層は、分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(1)または(2)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:


(式(2)中、nおよびnは各々独立にnは1〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される電子写真用の導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置、すなわち電子写真装置には、導電性部材が様々な用途、例えば、帯電部材、現像部材、転写部材などの部材として使用されている。電子写真装置において電子写真感光体に当接して配置され、当該電子写真感光体を帯電させる帯電部材としての帯電ローラの導電層には、当該導電層の導電性の調整のために、カーボンブラックに代表される電子導電剤や、四級アンモニウム塩化合物等のイオン導電剤が添加されている。上記イオン導電剤は、電子導電剤と比較して、バインダー樹脂中に均一に分散される。特許文献1においては、バインダー樹脂中での導電剤の分散ムラ起因の電気抵抗ムラを低減させるため、導電剤としてイオン導電剤を選択している。
【0003】
また、特許文献2においては、イオン導電剤として疎水性のイオン液体を用い、低温低湿下における電気抵抗の上昇を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−142569号公報
【特許文献2】特開2003−202722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
局所的な電気抵抗のムラを有する帯電部材は、感光体に局所的な放電ムラを生じさせ、ひいては、電子写真画像に白色または黒色のブロッチを生じさせ、または、スジ状の濃度ムラを生じさせる場合がある。
【0006】
上記した通り、帯電部材の電気抵抗ムラを抑制するうえで、導電層中に含有させる導電剤としてイオン導電剤は電子導電剤よりも有利である。しかし、イオン導電剤を用いて導電化してなる導電層を備えた帯電ローラであっても、局所的な放電ムラに起因する上記したような欠陥を電子写真画像に生じさせることがある。特に、長期間の使用によって電子写真画像の出力枚数が増加した場合、または低温・低湿環境下で画像形成を行った場合には、帯電部材の局所的な電気抵抗のムラに起因する画像への欠陥の発生が多くなる傾向にある。
さらに、イオン導電剤は帯電ローラの表面に滲み出し(ブリード)、当接している電子写真感光体の表面に付着する場合がある。
【0007】
本発明の目的は、帯電ローラに求められる導電性を確保しつつ、イオン導電剤の滲み出しを抑え、かつ、局所的な放電ムラに起因する画像欠陥の発生を低減させることのできる電子写真用の導電性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、該導電層は、分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(1)または(2)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材が提供される:
【化1】

(式(2)中、n1およびn2は各々独立に1〜4の整数を表す。)
本発明によれば、導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、該導電層は、分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(3)または(4)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材が提供される:
【化2】

本発明によれば、導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、該導電層は、分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(5)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材が提供される:
【化3】

(式(5)中、Rは、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
本発明によれば、導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、該導電層は、分子構造中にスルホン酸イオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(6)または(7)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材が提供される:
【化4】

(式(6)及び式(7)中、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、または、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
本発明によれば、導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、該導電層は、分子構造中にスルホン酸イオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(8)または(9)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材が提供される:
【化5】

(式(8)および式(9)中、R、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
また、本発明によれば、導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、該導電層は、分子構造中にスルホン酸イオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、下記式(10)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材が提供される:
【化6】

(式(10)中、R15、R16、R17、およびR18はそれぞれ独立に、水素または炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イオン導電剤のブリードが抑えられ、また、局所的な電気抵抗のムラに起因する画像欠陥を生じさせにくい電子写真用の導電性部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電子写真用導電性部材の一形態である帯電ローラの概略図である。
【図2】電流値測定機の概略図である。
【図3】本発明に係る導電層の模式図である。
【図4】本発明に係る電子写真装置の説明図である。
【図5】本発明に係るプロセスカートリッジの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者等は、イオン導電剤により導電化した導電層を備えた帯電ローラにおける局所的な放電ムラの発生原因を以下にように推測している。
即ち、導電層中に含まれるイオン導電剤に由来するキャリア分子は、その種類毎に導電層中における移動速度が異なっている。
【0012】
ここで、キャリア分子の移動速度は、キャリア移動度μで表すことができ、キャリア移動度μと電気抵抗率ρの関係は下記式(1)で表すことができる。
【数1】

上記式(1)中、ρは電気抵抗率、qはキャリアの電荷、nはキャリア密度、μはキャリア移動度を表す。上記式(1)から明らかなように、帯電ローラ中で局所的にμが小さいキャリア分子が局在した領域や、μが大きなキャリア分子が局在した領域が存在すると、帯電ローラの電気抵抗ムラに関与することが予想される。
特に、μが大きなキャリア分子が局在した領域は、局所的に電気抵抗が下がるため、異常放電による白斑点画像が発生しやすい。
【0013】
ここで、本発明者等は、帯電ローラに対して直流電圧を印加した場合における、キャリア分子の移動速度のムラを低減させるべく、導電層中を移動するキャリア分子の移動速度を低減させることを試みた。具体的には、導電層中に存在するキャリア分子のμを小さくした場合における、帯電ローラへの電気抵抗ムラの低減効果について、検討を行った。
【0014】
その結果、μの小さいキャリア分子を有するイオン導電剤を用いて導電化した導電層を有する帯電ローラは、長時間に亘って直流電圧を印加し続けた場合においても、電気抵抗のムラが生じにくく、その結果として、放電ムラに起因する画像欠陥の発生をも低減し得ることを見出した。
本発明に係る導電性部材は、イオン導電剤をバインダー樹脂に共有結合を介し結合しているため、イオン導電に寄与する成分をカチオン、或いは、アニオン何れか一方に限定できる。さらに、バインダー樹脂に結合されていることにより、長時間に亘って帯電ローラに直流電圧の印加した場合にも、導電層からのイオン導電剤の滲み出しを極力低減させることができる。
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、以下、電子写真用導電性部材として、帯電部材についてその詳細を記載するが、本発明はその用途を帯電部材のみに限定するものではない。図1に、本発明の帯電部材の概略図を示す。
【0016】
本発明に係る帯電部材は、図1(a)に示すように、導電性支持体としての芯金11と、その外周に設けられた弾性層12とからなることができる。該弾性層12は導電層であり、本発明に係るイオン導電性樹脂からなる。図1(b)に示すように、弾性層12の表面に表面層13を形成してもよい。この場合、弾性層12、或いは表面層13の少なくとも何れかが導電層であり、本発明に係るイオン導電性樹脂からなる。図1(c)に示すように、弾性層12と表面層13の間に中間層14を配置した3層構造、或いは、中間層14を複数配置した多層構成であってもよい。この場合、少なくともいずれかの層が導電層であり、この導電層は本発明に係るイオン導電性樹脂からなる。
【0017】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、電子写真用導電性部材の分野で公知なものから適宜選択して用いることができる。
【0018】
<導電層>
本発明に係る導電層は、バインダー樹脂として、分子構造中に四級アンモニウムイオンおよびスルホン酸イオンから選択される何れか一方、または両方のイオン交換基を有するイオン導電性樹脂を含むと共に、特定のキャリア分子を含む。本発明に係るイオン交換基は、樹脂に共有結合によって結合されており、かつ、イオン解離している。
図3は、本発明に係る導電層の一態様の模式的断面図であり、導電層31は、イオン交換基として四級アンモニウムイオンがポリマー鎖に共有結合によって結合してなるイオン導電性樹脂32をバインダー樹脂として含んでいる。また、導電層31は、フリーなキャリア分子として、前記式(1)で表されるキャリア分子33を含んでいる。
【0019】
(1)キャリア分子
キャリア分子とは、元来は、上述のイオン交換基のカウンターイオンであったものである。導電層中においては、少なくとも一部のキャリア分子は、上述のイオン交換基から解離してフリーな状態で存在しているものと考えられる。そして、導電性部材への直流電圧の印加により、当該フリーなキャリア分子は、バインダー樹脂中を移動してイオン導電が達成される。
【0020】
そして、前記した通り、μが小さいキャリア分子を用いることにより、帯電部材に対して長時間に亘って電圧を印加した場合における帯電部材への電気抵抗ムラの発生を低減できる。その一方で、μの小さいキャリア分子は、導電層の導電化においては、μの大きいキャリア分子と比較して相対的に不利である。そこで、本発明者らは、導電層の導電化と、導電性部材への電気抵抗ムラの発生の低減とを高いレベルで両立し得るキャリア分子について検討を重ねた。その結果、バインダー樹脂が第四級アンモニウムイオンを分子内に有する場合において、導電層が下記式(1)〜(5)で示されるキャリア分子から選択される少なくとも1つを含むことが好ましいことを見出した。また、バインダー樹脂がスルホン酸イオンを分子内に含む場合においては、導電層が下記式(6)〜(10)で示されるキャリア分子から選択される少なくとも1つを含むことが好ましいことを見出した。
【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

式(2)中、nおよびnは各々独立に1〜4の整数を表す。
【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】
【化11】

【0026】
式(5)中、Rは、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。そして、上記式(5)で表されるキャリア分子の具体例を以下に挙げる。メチルスルホネート、エチルスルホネート、n−ブチルスルホネート、sec−ブチルスルホネート、tert−ブチルスルホネート、n−ヘキシルスルホネート、n−オクチルスルホネート、n−デシルスルホネート等。
【0027】
【化12】

式(6)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0028】
式(6)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−ブチルイミダゾリウム、1−オクチルイミダゾリウム、1−デシルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1、3−ジエチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−エチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−エチルイミダゾリウム、1−オクチル−3エチルイミダゾリウム、1−デシル−3−エチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−プロピル−2,3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム等。
【0029】
【化13】

式(7)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0030】
式(7)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−ヘキシルピリジニウム、N−オクチルピリジニウム、N−デシルピリジニウム、N−メチル−3−メチルピリジニウム、N−エチル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−3−メチルピリジニウム、N−ヘキシル−3−メチルピリジニウム、N−オクチル−3−メチルピリジニウム、N−デシル−3−メチルピリジニウム、N−メチル−4−メチルピリジニウム、N−エチル−4−メチルピリジニウム、N−ブチル−4−メチルピリジニウム、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム、N−オクチル−4−メチルピリジニウム、N−デシル−4−メチルピリジニウム、N−メチル−3,4−ジメチルピリジニウム、N−エチル−3,4−ジメチルピリジニウム、N−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウム、N−ヘキシル−3,4−ジメチルピリジニウム、N−オクチル−3,4−ジメチルピリジニウム、N−デシル−3,4−ジメチルピリジニウム、N−メチル−3,5−ジメチルピリジニウム、N−エチル−3,5−ジメチルピリジニウム、N−ブチル−3,5−ジメチルピリジニウム、N−ヘキシル−3,5−ジメチルピリジニウム、N−オクチル−3,5−ジメチルピリジニウム、N−デシル−3,5−ジメチルピリジニウム等。
【0031】
【化14】

式(8)中、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素または炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0032】
式(8)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
1,1−ジメチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム、1−オクチル−1−メチルピロリジニウム、1−デシル−1−メチルピロリジニウム、1,1−ジエチルピロリジニウム、1−ブチル−1−エチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−エチルピロリジニウム、1−オクチル−1−エチルピロリジニウム、1−デシル−1−エチルピロリジニウム、1,1−ジブチルピロリジニウム等。
【0033】
【化15】

式(9)中、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0034】
式(9)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、メチルトリブチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、メチルトリデシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、(2−クロロエチル)トリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム等。
【0035】
【化16】

式(10)中、R15、R16、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0036】
式(10)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラペンチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラデシルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、メチルトリオクチルホスホニウム、メチルトリデシルホスホニウム、エチルトリメチルホスホニウム、ブチルトリメチルホスホニウム、ヘキシルトリメチルホスホニウム、オクチルトリメチルホスホニウム、デシルトリメチルホスホニウム、フェニルトリメチルホスホニウム、シクロヘキシルトリメチルホスホニウム、(2−クロロエチル)トリメチルホスホニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウム等。
【0037】
なお、上述のキャリア分子を複数種用いても構わない。
【0038】
式(1)から式(10)で表される構造を有するキャリア分子は、プロトンやハロゲンイオン等の一般的なキャリア分子と比較し、分子サイズが極めて大きいことが特徴である。そのため、イオン移動度μが小さく、本発明の目的を達成できると考えている。
【0039】
なお、例えば式(9)で表されるキャリア分子において、R11乃至R14が炭素数が11以上の炭化水素基である場合には、長時間に亘って直流電圧を印加した際に帯電部材の電気抵抗が上昇し易くなる傾向が認められた。これは、バインダー樹脂と、R11乃至R14との絡み合いが発生することに起因すると考えている。バインダー樹脂との絡み合いにより、キャリア分子の移動が制限された結果、電気抵抗が上昇したものと推測される。
【0040】
以上のような理由から、分子サイズが大きく、かつ、バインダー樹脂との絡み合いが生じにくい構造を有するキャリア分子が本発明において好ましく、上記キャリア分子の中でも、特に、式(1)〜式(4)、並びに式(6)〜式(8)のキャリア分子が好適である。
【0041】
また、本発明においては、式(1)で表されるキャリア分子、および、式(2)で表されるキャリア分子が特に好適である。すなわち、式(1)および、式(2)で表されるキャリア分子は、導電層中において、バインダー樹脂と絡み合いにくいこと、および、キャリア分子の疎水性が高いため、低湿環境下においても帯電部材の電気抵抗を十分に低下させることができるためである。
【0042】
さらには、式(1)で表されるキャリア分子は、環状構造を有するため、導電層中において、バインダー樹脂との絡み合いがさらに生じにくい。そのため、μが低いにもかかわらず、導電層をより良く導電化し得る。
【0043】
また、本発明に係るキャリア分子は、バインダー樹脂との親和性が高いため、バインダー樹脂と均一に分散し、分散ムラ起因の電気抵抗ムラをより低減できる点においても好適である。
【0044】
さらに、本発明に係るキャリア分子は、イオン液体の性質を示すため、水分量が少ない状態においても液体として存在し、バインダー樹脂中を移動できる。さらに低湿環境下における電気抵抗の低下を改善できる点においても好適である。ここで、イオン液体とは、融点が100度以下である溶融塩を示す。
【0045】
ところで、本発明に係る導電層は、上記式(1)〜(10)で表されるキャリア分子以外の、イオン導電に寄与するキャリア分子を含むことを含んでいてもよい。しかし、導電層中に、キャリア移動度μが異なっている複数種のキャリア分子が存在していると、導電層に電気抵抗ムラが生じやすくなる。そのため、本発明に係る導電層に含まれるイオン伝送に寄与するキャリア分子に対して、上記式(1)〜(10)で表されるキャリア分子の占める割合が、50モル%以上、100モル%以下、特には、70モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。
【0046】
導電層中における、本発明に係るキャリア分子の存在、および、定量は、イオン交換反応を利用したキャリア分子の抽出により検証できる。当該イオン導電性樹脂を塩酸、或いは水酸化ナトリウムの希薄水溶液中で攪拌し、イオン導電性樹脂中のキャリア分子を水溶液中に抽出する。抽出後の水溶液を乾燥し、抽出物を回収後、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)にて質量分析を行うことでキャリア分子の同定、および、定量が可能である。なお、抽出物中のキャリア分子はカチオン、或いはアニオン分子のため、キャリア分子の分子量が高い場合においても、TOF−MS測定においてキャリア分子を分解させることなく分析できる。さらに、抽出物の誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により元素分析を行い、質量分析の結果と組み合わせることで、キャリア分子の同定、定量はより容易となる。
【0047】
(2)バインダー樹脂
本発明に係るバインダー樹脂としては、分子構造中に四級アンモニウム基およびスルホン酸基から選択される何れか一方または両方を有するイオン導電性樹脂を用いる。
そして、本発明に係るイオン導電性樹脂としては、四級アンモニウム基のカウンターイオンとして、本発明に係るキャリア分子以外の、イオン導電に寄与するキャリア分子を有しないものを用いることが好ましい。導電層中にキャリア移動度の異なるキャリア分子が混在することによって、導電層に大きな電気抵抗ムラが生じることを抑制するためである。
例えば、エピクロルヒドリン系ゴムに代表されるイオン導電性ゴムは、加硫することによって電気抵抗が低くなることが知られている。これは、加硫時に用いる加硫促進剤が、加熱により放出される塩素や、添加剤の硫黄、加硫促進剤から放出される硫黄等と塩を形成し、イオン導電剤としての機能を発現するためと考えられる。つまり、エピクロルヒドリン系ゴムは、加硫の結果、塩素イオン、硫黄イオン、加硫促進剤由来のイオン等がキャリア分子として生成することになる。
【0048】
以上のような理由から、本発明に係るイオン導電性樹脂として、重合、或いは加熱によりイオン導電性を示す化合物が生成し難い樹脂が好ましい。上記条件に該当する樹脂として、例えば、イオン交換基を有したエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
【0049】
上述の樹脂群は、原料としてのモノマー成分またはポリマー成分と、樹脂と反応し樹脂中に共有結合を介して結合するイオン導電剤のみで樹脂を製造できるため、イオン導電に寄与するキャリア分子の種類を極力低減できる。本発明においては、前記樹脂群の中でも特に、フェノール樹脂を用いることが好ましい。フェノール樹脂は、樹脂の主鎖骨格が芳香環により形成されているため、キャリア分子との絡み合いが生じにくく、本発明の目的に対して好適である。
【0050】
また、イオン導電の観点から、該イオン導電性樹脂は、分子構造中にエチレンオキサイドユニットを有することが好ましい。エチレンオキサイドユニットの含有量は適宜設定することができる。ただし、エチレンオキサイドユニット含有量は、イオン導電性樹脂中の水分量と相関するため、該イオン導電性樹脂の電気抵抗値の温度・湿度依存性を支配する傾向にある。以上のような理由から、エチレンオキサイドユニットの含有量を30wt%以上80wt%以下の範囲に調整できる含有量であることが好ましい。より具体的には、40wt%以上60wt%以下であることが好ましい。含有量が40wt%以上の場合には、低温・低湿環境下における電気抵抗の上昇を防ぐことができる。含有量が60wt%以下の場合には、高温・高湿環境下における電気抵抗の低下を防ぐことができる。なお、エチレンオキサイドユニットの含有量は、原料としてのバインダー樹脂中のエチレンオキサイドユニットの重量比として算出できる。
【0051】
<イオン導電性樹脂の製造方法>
本発明に係るイオン導電性樹脂は、例えば、(1)原料としてのイオン導電剤、及び、(2)バインダー樹脂の原料としてのポリマーまたはモノマーを用いて、以下の方法で製造することができる。
【0052】
(1−1)原料としてのイオン導電剤の用意;
イオン導電性樹脂の原料として、バインダー樹脂と化学反応し得る部分を有すると共に、四級アンモニウム基、或いはスルホン酸基のいずれかを有するイオン導電剤を用意する。
ここで、バインダー樹脂と化学反応し得る部分としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素,塩素,臭素およびヨウ素原子)の結合部位や、反応性官能基が挙げられる。反応性官能基の具体例としては、カルボキシル基、酸無水物等の酸基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、アルコキシ基、ビニル基、グリシジル基、エポキシ基、ニトリル基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0053】
(1−2)イオン導電剤へのキャリア分子の導入;
次に、本発明に係るキャリア分子を、上記(1−1)で用意したイオン導電剤に導入する。具体的には、本発明に係るキャリア分子の塩と、上記(1−1)で用意したイオン導電剤の四級アンモニウム基またはスルホン酸基との間で、イオン交換反応を行うことによって、本発明に係るキャリア分子が導入されたイオン導電剤を得ることができる。
例えば、上記(1−1)にて用意したイオン導電剤が、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドである場合を例に説明する。まず、前記キャリア分子の塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用意する。そして、前記イオン導電剤および前記キャリア分子の塩の各々を精製水に溶解する。次いで、各水溶液を混合し、攪拌することによってイオン交換反応が生じ、イオン交換性の高い塩素イオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンと置換される。
この場合、生成したグリシジルトリメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは疎水性を示すイオン液体のため、副生成物である水溶性のリチウムクロライドを容易に除去できる。同様に、本発明に係るキャリア分子からなるイオン導電剤はすべてイオン液体の特性を有するため、上述の方法で得られた反応性イオン導電剤が親水性の場合においても、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メチルイソブチルケトン等の溶剤を選択することにより副生成物を容易に除去できる。
【0054】
(2)イオン導電剤と、バインダー樹脂の原料ポリマーまたは原料モノマーとの反応;
バインダー樹脂の原料としてのポリマーまたはモノマーは、前述のイオン導電剤に含まれる反応性官能基と反応する限りにおいて特に制限はなく用い得る。具体例を挙げる。ポリグリシジル化合物、ポリアミン化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、多価アルコール化合物、ポリイソシアネート化合物、フェノール化合物、ビニル化合物等、反応性官能基を2個以上有する化合物、化合物単独で重合性を有する化合物等。
上記(1−2)に係るイオン導電剤として、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドの塩素イオンを、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドにイオン交換したイオン導電剤を用いる場合を例に、本発明に係るイオン導電性樹脂を合成する方法を説明する。
バインダー樹脂の原料ポリマーとして、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールビス(2−アミノプロピルエーテル)を用意する。
そして、上記イオン導電剤と、上記原料ポリマーとを、イソプロピルアルコール等の溶媒に溶解させた塗料を調製する。
この塗料の塗膜を、温度90〜200℃で加熱することで、グリシジル基とアミノ基とが反応し、本発明に係るキャリア分子をカウンターイオンとして有する四級アンモニウムが結合したイオン導電性樹脂が得られる。
本発明に係るイオン導電剤の添加量は適宜設定することができ、バインダー樹脂の原料としてのポリマーやモノマーに対して、該イオン導電剤を0.5質量%以上、20質量%以下の割合で配合することが好ましい。これによって、導電性に優れると共に、電気抵抗ムラの生じにくい導電層の形成に適したイオン導電性樹脂を得ることができる。
なお、本発明に係るイオン導電性樹脂の合成方法は、上述した方法に限定されるものでない。例えば、キャリア分子としてプロトンやハロゲンイオンを有するイオン導電剤が導入されたイオン導電性樹脂を合成した後に、プロトンやハロゲンイオンを、本発明に係るキャリア分子とイオン交換することにより本発明に係るイオン導電性樹脂を合成する方法も採用することができる。
【0055】
<他の成分>
イオン導電性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂の配合剤として一般的に用いられている充填剤、軟化剤、加工助剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分散剤、発泡剤等を添加することができる。
【0056】
<導電性ローラ>
本発明に係る導電性部材は、例えば、感光体等の被帯電部材に当接して当該被帯電体を帯電させるための帯電部材として好適に用い得る。また、像担持体と、当該像担持体に接触し電圧の印加により前記像担持体を帯電する帯電部材とを有し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されてなるプロセスカートリッジにおいて、当該帯電部材として、本発明に係る導電性部材を好適に用い得る。
なお、本発明のイオン導電性樹脂は、帯電ローラ等の帯電部材以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラ等の搬送部材としても使用可能である。
【0057】
図1は本発明の電子写真用導電性部材の1種である帯電ローラの形態を示す概略図である。帯電ローラの構成は図1(a)に示すように、芯金11とその外周に設けられた弾性層12とからなる単層構成であっても良く、図1(b)に示すように、弾性層12の外側に表面層13を配置した2層構成であってもよい。更に、図1(c)に示すように、弾性層12と表面層13との間に中間層14や接着層を何層か配置した多層構成であってもよい。図1中の弾性層12、表面層13、中間層14の少なくとも何れかが導電層であり、本発明に係るイオン導電性樹脂は、いずれの層に用いても構わない。
【0058】
さらに、帯電ローラとして放電に関与するのは帯電ローラの表面近くのため、放電ムラを改善できる本発明のイオン導電性樹脂を表層近傍に用いることが好ましい。この場合、必ずしも本発明のイオン導電性樹脂を最表層に用いる必要はなく、放電ムラに影響を与えない限りにおいて、トナーや外添剤の付着を防止する目的で、最表層を非粘着処理しても構わない。最表層の非粘着処理としては、帯電ローラ表面に電子線、紫外線、X線及びマイクロウェーブ等のエネルギー線を照射して表面を硬化し非粘着性とする方法や、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びシリコーン樹脂等の非粘着性樹脂を最表面層として形成してもよい。
【0059】
本発明に係る導電性部材の電気抵抗の目安としては、1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下であるが、電気抵抗を1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下にした場合に効果がある。1×10Ω・cm以上にすることでリークによる異常放電の発生を抑制でき、1×10Ω・cm以下にすることで電気抵抗の不足による画像弊害の発生を抑制できる。
【0060】
本発明に係るイオン導電性樹脂を図1(b)に示すような、弾性層12の表面層13として用いた場合、弾性層12を形成するゴム成分としては、特に限定されるものではなく、電子写真用導電性部材の分野において公知のゴムを用いることができる。具体的には、エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物、アクリルゴム及びウレタンゴム等が挙げられる。
【0061】
本発明に係るイオン導電性樹脂を弾性層12もしくは弾性層12と表面層13の中間層として用いた場合、表面層13は、電子写真用導電性部材の分野において公知の樹脂を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びシリコーン樹脂等が挙げられる。上記表面層を形成する樹脂に対して、必要に応じて、カーボンブラック、グラファイト、及び酸化錫等の導電性を有する酸化物、銅、銀等の金属、酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電性を付与した導電性粒子、第四級アンモニウム塩等のイオン交換性能を有するイオン導電剤を用いてもよい。
【0062】
[電子写真装置]
本発明に係る電子写真装置は、本発明に係る電子写真用の導電性部材を有しているものであればよく、その一例の概略構成を図4に示す。電子写真感光体44(以降、「感光体」ともいう)、本発明に係る導電性部材からなる帯電部材45を有する帯電装置が一体となったプロセスカートリッジ、不図示の潜像形成装置、潜像をトナー像とする現像装置、トナー像を紙等の転写材47に転写する転写装置を有する。更に、トナー像を転写後の感光体に残留するトナーを回収するクリーニング装置48、転写材上のトナー像を定着する定着装置49等から構成されている。
感光体44は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型であり、矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電ローラ45は、交流電源50から印加される電源により所定の電圧にされ、所定の押圧力で当接される感光体の回転に従い従動回転し、感光体を所定の電位に帯電する。不図示の潜像形成装置は、感光体44に潜像を形成するレーザー光41を出力するレーザービームスキャナ等の露光装置を有する。画像情報により変調されたレーザー光41を感光体44に照射することによって、一様に帯電された感光体44に静電潜像が形成される。
感光体44に形成された静電潜像は、感光体44に近接又は接触して配設される現像スリーブ又は現像ローラ46により、感光体44と同極性のトナーが搬送され反転現像により、静電潜像が現像されトナー像が形成される。感光体44上のトナー像は、転写装置において、転写ローラ42と感光体間に給紙システムにより搬送される普通紙等の転写材47に転写される。その後、定着装置49において、加熱ローラ等により転写材47上のトナー像が転写材に定着され、機外に排出され、出力画像を得る。
一方、感光体44上の残留トナーはクリーニング装置48においてブレード型のクリーニング部材43によって、機械的に掻き落とされクリーニング装置48の回収容器に回収される。ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
【0063】
[プロセスカートリッジ]
本発明に係るプロセスカートリッジは、例えば、本発明に係る導電性部材からなる帯電ローラ45と、他の電子写真用部材、例えば、感光体44とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されているものである。
本発明に係るプロセスカートリッジの断面図を図5に示す。図5に示すプロセスカートリッジは、感光体44、帯電ローラ45を有する帯電装置、現像ローラ46とトナー供給ローラ51と現像ブレード52とを備えた現像装置、クリーニングブレード53を備えたクリーニング装置54等が一体化され、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。
A:導電層形成用の塗工液No.1〜42の調製;
【0065】
<調製例A1:塗工液No.1の調製>
(1−1)イオン導電剤の準備;
反応性官能基を有するイオン導電剤として、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド 8.56g(56.5mmol)を精製水50mlに溶解し、1時間攪拌して、イオン導電剤の水溶液を得た。
次に、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドリチウム 16.22g(56.5mmol)を精製水50mlに溶解し、1時間攪拌した。
得られた水溶液を混合して、2時間攪拌して反応させた。反応液を、12時間静置して、反応副生成物としてのリチウムクロライドが溶解した水層と、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドを有するグリシジルトリメチルアンモニウム塩イオン導電剤からなる油層の2層に分離させた。分液漏斗を用いて、下層の油層を回収した。その後、回収した油層を、精製水を用いて2回洗浄し、油層に少量残存したリチウムクロライドを除去し、グリシジル基を反応性官能基として有するイオン導電剤を作製した。
(1−2)イオン導電性樹脂の合成;
イオン導電性樹脂の原料ポリマーとして、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(重量平均分子量:640)と、ポリプロピレングリコールビス(2アミノプロピルエーテル)(重量平均分子量:400)を用意した。
上記(1−1)で得たイオン導電剤 0.47g、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル 13.68g(21.4mmol)、及び、ポリプロピレングリコールビス(2アミノプロピルエーテル)10.27g(25.6mmol)をイソプロピルアルコール(IPA)に溶解し、固形分が27重量%になるように調整し、導電層の塗工液No.1を調製した。
【0066】
<調製例2〜42:塗工液No.2〜42の調製>
イオン導電剤種、イオン交換に供したキャリア分子種、イオン導電性樹脂の原料、および、イオン導電剤の添加量を表1に示したように変更した以外は、塗工液No.1と同様にして塗工液No.2〜42を調製した。
なお、表1中、イオン導電剤種を表す記号A−1〜A−7、イオン交換に供したキャリア分子種を表す記号B−1〜B−15、および、イオン導電性樹脂の原料モノマー/原料ポリマーを表す記号C−1〜C−11の示す化合物名等は、表2〜表4に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
B:弾性ローラNo.1〜2の作成;
<調製例B1:弾性ローラNo.1の作成)
下記表5に記載の原料をオープンロールにて混合して未加硫ゴム組成物を得た。
【0072】
【表5】

【0073】
次に、クロスヘッド押し出し機に芯金の供給機構、導電性ローラの排出機構を有する装置を用意し、芯金の搬送速度を60mm/sec、クロスヘッドには内径がφ12.5mmのダイスを取り付け、押出し機とクロスヘッドを80℃に調整した。クロスヘッドに供給した外径φ6mm、長さ258mmのステンレス棒の芯金の周囲に未加硫ゴム組成物の層を形成した。次に、170℃の熱風加硫炉中に未加硫ゴム組成物の層で周面が被覆された芯金を投入し、60分間加熱して当該未加硫ゴム組成物の層を架橋させてゴム弾性層とした。その後、ゴムの長さが228mmになるように端部を切断、除去した。最後に、ゴム弾性層の表面を回収砥石で研磨し、中央部直径12mm、中央部から左右90mm端部側の平均直径11.8mmのクラウン形状に成形し、弾性ローラNo.1を得た。
【0074】
<調製例B2:弾性ローラNo.2の作成>
下記表6に記載の原料をオープンロールにて混合して得た未加硫ゴム組成物を用いた以外は、弾性ローラNo.1と同様にして弾性ローラNo.2を作成した。
【0075】
【表6】

【0076】
<調製例B3:弾性ローラNo.3の作成>
直径6mm、長さ258mmのステンレス棒を円筒金型内に配置した。この円筒金型のキャビティに、下記表7に記載の材料からなる液状シリコーンゴム混合物を注入して充填した。
【0077】
【表7】

【0078】
次いで、円筒金型を温度120℃で8分間加熱し、その後、温度25℃に冷却して、周面にシリコーンゴム層が形成されたステンレス棒を脱型した。その後、シリコーンゴム層を、温度200℃で60分間処理して、該シリコーンゴム層を硬化して、厚み3.0mmの弾性体層がステンレス棒の周面に形成された弾性ローラNo.3を得た。
【0079】
<実施例1:帯電ローラNo.1の作成>
弾性ローラNo.1を、先に調製した塗工液No.1に1回ディッピングして、弾性層の表面に塗工液No.1の塗膜を形成した。なお、ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度が2mm/secになるように調整し、20mm/secから2mm/secの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。
その後、表面に塗膜が形成された弾性ローラ1を、温度25℃の環境に30分間置いた。次いで、当該弾性ローラ1を温度90℃に設定した熱風循環乾燥機内に1時間置き、更に、温度160℃に設定した熱風循環乾燥機内に1時間置き、塗膜を反応させて、弾性層上に導電層としての表面層を形成した。
こうして、帯電ローラNo.1を得た。
得られた帯電ローラ1を、以下の評価に供した。
【0080】
<評価1;体積抵抗率の測定>
帯電ローラの電流値を測定し、測定結果を用いて帯電ローラ1の体積抵抗率を算出した。
図2は、帯電ローラの電流値の測定方法の説明図である。図2に示したように、電子写真方式の画像形成装置に用いた場合の使用状態と同様の荷重で、帯電ローラを、電子写真装置内の感光体と同じ曲率を有する金属円柱22に対して、電子写真装置の使用状態におけるのと同じ荷重で当接させた状態で、電流を流したときの電流値を測定する。
図2(a)において、23aと23bは重りに固定された軸受けであり、21は、被検体としての帯電ローラである。そして、帯電ローラ21の導電性支持体11の両端に鉛直下方向に押す応力を印加する。帯電ローラの鉛直下方には、帯電ローラ21と回転軸が平行となるように金属円柱22が配置されている。そして、不図示の駆動装置により、金属円柱22を回転させながら、図2(b)の様に帯電ローラを軸受け23aと23bとへ押し当てる。電子写真装置の使用状態における感光体の回転速度と同じ速度で金属円柱22を回転させ、帯電ローラ21を金属円柱22の回転に従動回転させながら、電源24によって直流電圧−200Vを印加する。電圧を印加して2秒後から、円柱形金属22から流れ出てくる電流の時間平均を電流計Aで測定し、5秒間測定した結果の時間平均を算出した。
そして、本評価においては、被検体としての帯電ローラNo.1を2本用意した。
一方の帯電ローラNo.1については、温度23℃/湿度55%R.H.(N/N環境)に48時間置いて、N/N環境に帯電ローラNo.1を順化させた。その後、同環境下で、帯電ローラNo.1の軸の両端にそれぞれ5Nの力を加えて、直径30mmの円柱形金属に当接させ、該円柱形金属を周速150mm/sで回転させて電流値を測定し、電気抵抗値を求めた。
他方の帯電ローラNo.1については、温度15℃/湿度10%R.H.(L/L環境)の環境に48時間置いて、L/L環境に順化させた。その後、同環境下で、帯電ローラNo.1の軸の両端にそれぞれ5Nの力を加えて、直径30mmの円柱形金属に当接させ、該円柱形金属を周速150mm/sで回転させて電気抵抗値を測定し、電気抵抗率を求めた。
また、L/L環境下における帯電ローラNo.1の電気抵抗率を、N/N環境下における帯電ローラNo.1の電気抵抗率で除し、対数変換したものを環境変動桁とした。これによって、帯電ローラNo.1の電気抵抗率の環境変動依存性が評価できる。
【0081】
<評価2:ブリード評価>
帯電ローラNo.1を、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に置き、帯電ローラNo.1の軸の両端にそれぞれ500gの荷重を加えて、帯電ローラNo.1の表面をPETシートに当接させた。この状態を、温度40℃/湿度95%R.H.の環境下で1週間保持した。その後、帯電ローラNo.1を、PETシートから取り除き、PETシートの帯電ローラNo.1が当接していた面を、光学顕微鏡(10倍)で観察した。帯電ローラNo.1の弾性層からのブリード物が、表面層を通過してPETシートの表面に付着しているか否かを、下記表8に記載の基準に基づき評価した。
【0082】
【表8】

【0083】
<評価3:帯電能力の評価>
電子写真式のレーザープリンター(商品名:Laserjet 4700dn)について、記録メディアの出力スピードが300mm/secとなるように改造した。この改造したレーザープリンターの帯電ローラとして、帯電ローラNo.1を装着した。なお、このレーザープリンターの画像解像度は600dpiである。
上記レーザープリンターに間欠的な画像形成動作をさせることにより、40001枚の電子写真画像を出力した。間欠的な画像形成動作とは、画像を2枚出力させた後、電子写真感光体ドラムの回転を約3秒停止させ、再び画像形成の動作を行うものである。また、このときに出力した画像としては、1枚目〜40000枚目までは、印字濃度1%の文字画像とし、最後の1枚はハーフトーン画像とした。なお、ここでのハーフトーン画像は電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像とした。そして、40001枚目のハーフトーン画像を目視で観察し、下記表9に記載の基準にて評価した。
【0084】
【表9】

【0085】
<評価4:斑点状の画像欠陥による評価>
電子写真式のレーザープリンタ(商品名:Laserjet 4515n,HP社製)の帯電ローラとして帯電ローラNo.1を装着した。なお、このレーザープリンタの記録メディアの出力スピードは370mm/sec、画像解像度は1200dpiである。
上記レーザープリンタに間欠的な画像形成動作をさせることにより、40000枚の電子写真画像を出力した。間欠的な画像形成動作とは、画像を2枚出力させた後、電子写真感光体ドラムの回転を約3秒停止させ、再び画像形成の動作を行うものである。
また、このときに出力した画像としては、H−Line画像とした。H−Line画像とは、電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔176ドットの横線を描くような画像とした。
その後、直流印加電圧−600V、周波数2931Hz、交流印加電圧をVpp=1200Vから上げながらハーフトーン画像を出力し、斑点状の画像欠陥が消失する電圧を測定した。本評価において、斑点状の画像欠陥が消失する電圧が低い程、電気抵抗値が均一な帯電ローラであるといえる。
【0086】
<評価5:導電層中の全キャリア分子に対する本発明に係るキャリア分子のモル比>
帯電ローラ1の表面層を削り取り、塩酸の希薄水溶液に溶解させ、イオン導電性樹脂中のキャリア分子を抽出した。抽出後の水溶液を乾燥し、抽出物を回収後、飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)による質量分析と、ICP発光分析を行って、表面層中に存在する全キャリア分子の量、および、本発明に係るキャリア分子の量を検出し、導電層中の全キャリア分子に対する本発明に係るキャリア分子のモル比を求めた。
【0087】
<実施例2〜42>
表面層である導電層の形成に、表10に示したNo.の塗工液を用いた以外は、帯電ローラ1と同様にして帯電ローラNo.2〜42を作成した。そして、これらの帯電ローラについて、帯電ローラ1と同様に評価した。
【0088】
【表10】

【0089】
<実施例43〜53>
弾性ローラNo.1を弾性ローラNo.2に変え、表面層の形成を表11に記載したNo.の塗工液を用いた以外は、帯電ローラNo.1と同様にして帯電ローラNo.43〜53を作成し、評価1〜評価5に供した。結果を表11に併せて示す。
【0090】
【表11】

【0091】
<実施例54>
直径6mm、長さ258mmのステンレス棒を円筒金型内に配置した。この円筒金型のキャビティに、塗工液No.3からIPAを除いた樹脂混合物を注入して充填した。次いで、円筒金型を温度90℃で1時間加熱し、更に、温度160℃で1時間加熱した。その後、温度25℃に円筒金型を冷却して、周面に、厚み3.0mmの導電層が形成されたステンレス棒を脱型した。これを帯電ローラNo.54とする。この帯電ローラNo.54を評価1〜評価5に供した。結果を表12に示す。
【0092】
<実施例55>
弾性ローラNo.10の表面層上に、以下の方法に従って保護層を設けた。
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が10質量%となるように調整した。前述のアクリルポリオール溶液の固形分100質量部に対して、カーボンブラック(HAF)15質量部、針状ルチル型酸化チタン微粒子35質量部、変性ジメチルシリコーンオイル0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3の混合物、80.14質量部を入れ混合溶液を調整した。このとき、ブロックHDIとブロックIPDIの混合物は、「NCO/OH=1.0」となるように添加した。
【0093】
450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散後、樹脂粒子として架橋タイプアクリル粒子(商品名:MR50G;綜研化学製)の5.44質量部(アクリルポリオール100重量部に対して20重量部相当量)を添加した後、更に30分間分散して保護層形成用の塗料を得た。
【0094】
得られた保護層形成用の塗料を、実施例10の帯電ローラの外周上に1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾した。次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥し、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥して、帯電ローラ上に最外層を形成した。ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度が2mm/secになるように調節し、20mm/secから2mm/secの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。以上のように、保護層を有する帯電ローラNo.55を作成した。この帯電ローラNo.55を評価1〜評価5に供した。結果を表12に示す。
【0095】
【表12】

【0096】
<比較例1>
調製例1の(1−2)において、イオン導電剤として、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを用いた以外は、調製例1の(1−2)と同様にして塗工液No.43を調製した。
表面層の形成に塗工液No.43を用いた以外は、実施例1と同様にして帯電ローラNo.C−1を作成し、評価1〜5に供した。結果を表13に示す。
なお、評価5に関して、本比較例に係る帯電ローラNo.C−1の導電層に含まれるキャリア分子は塩素イオンのみであった。塩素イオンは、本発明に係るキャリア分子には該当しない。そのため、評価5の結果は、0モル%となった。
【0097】
<比較例2>
調製例1の(1−2)において、イオン導電剤として、トリメチルヘキシルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いた以外は、調製例1の(1−2)と同様にして塗工液No.44を調製した。
表面層の形成に塗工液No.44を用いた以外は、実施例1と同様にして帯電ローラNo.C−2を作成し、評価1〜5に供した。結果を表13に示す。
本比較例に係るイオン導電剤は、反応性官能基を有しない。そのため、本比較例に係るバインダー樹脂は、分子構造中に四級アンモニウム基およびスルホン酸基を有さず、本発明に係るイオン導電性樹脂に該当しない。
【0098】
<比較例3>
調製例1の(1−2)において、イオン導電剤として、ステアリン酸−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いた以外は、調製例1の(1−2)と同様にして塗工液No.45を調製した。
表面層の形成に塗工液No.45を用いた以外は、実施例1と同様にして帯電ローラNo.C−3を作成し、評価1〜5に供した。結果を表13に示す。
なお、本比較例において用いたイオン導電剤は、カルボキシル基をイオン交換基と有する。そのため、本比較例に係るバインダー樹脂は、分子構造中に四級アンモニウム基およびスルホン酸基を有さず、本発明に係るイオン導電性樹脂に該当しない。
【0099】
【表13】

【0100】
<実施例56>
弾性ローラNo.3を用いると共に、表面層の形成に塗工液No.4を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラNo.1を作成した。
現像ローラNo.1を、評価1、評価2、評価5、および、下記の評価6に供した。
【0101】
<評価6;電子写真画像の形成試験>
電子写真装置として、レーザープリンター(商品名:LBP5400,キヤノン社製)を用意した。そして、現像ローラと感光体との当接圧力と侵入量を、現像ローラ上のトナー被覆量が0.35mg/cmとなるように調整した。また、現像ローラから古いトナーを掻き落とし、現像ローラに新しいトナーを供給する軟質ウレタンスポンジ製のトナー供給ローラを設けた。
このレーザプリンターの現像ローラとして、現像ローラNo.1を装着し、感光体の回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔50ドットの横線を描くような電子写真画像を20000枚連続して形成した。引き続いて、ハーフトーン画像を1枚形成した。このハーフトーン画像を目視で観察し、下記表14に記載の基準に従って評価した。結果を表15に示す。
【0102】
【表14】

【0103】
<実施例57〜59>
表面層の形成に表15に示したNo.の塗工液を用いた以外は、実施例56と同様にして現像ローラNo.2〜4を作成し、評価1〜2、評価5および評価6に供した。結果を表15に併せて示す。
【0104】
【表15】

【0105】
(比較例4)
塗工液No.4を塗工液No.44に変えて表面層を形成した以外は、実施例56と同様にして現像ローラC−4を作成し、評価1〜2、5および6に供した。結果を表16に示す。
なお、本比較例に係るイオン導電剤は、反応性官能基を有しない。そのため、本比較例に係るバインダー樹脂は、分子構造中に四級アンモニウム基およびスルホン酸基を有さず、本発明に係るイオン導電性樹脂に該当しない。
【0106】
【表16】

【符号の説明】
【0107】
11 芯金
12 弾性層
13 表面層
14 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、
分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、
下記式(1)または(2)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:
【化1】

(式(2)中、nおよびnは各々独立に1〜4の整数を表す。)。
【請求項2】
導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、
分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、
下記式(3)または(4)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:
【化2】

【請求項3】
導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、
分子構造中に四級アンモニウムイオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、
下記式(5)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:
【化3】

(式(5)中、Rは、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
【請求項4】
導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、
分子構造中にスルホン酸イオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、
下記式(6)または(7)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:
【化4】

(式(6)および式(7)中、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、または、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
【請求項5】
導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、分子構造中にスルホン酸イオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、
下記式(8)または(9)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:
【化5】

(式(8)および式(9)中、R、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に、炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
【請求項6】
導電性支持体および導電層を有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、分子構造中にスルホン酸イオンを有するイオン導電性樹脂をバインダー樹脂として含み、かつ、
下記式(10)で示されるキャリア分子を含むことを特徴とする導電性部材:
【化6】

(式(10)中、R15、R16、R17、およびR18はそれぞれ独立に、水素または炭素数1乃至10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。)。
【請求項7】
前記イオン導電性樹脂の分子構造中にエチレンオキサイドユニットを有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記イオン導電性樹脂がフェノール樹脂である請求項7に記載の導電性部材。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の導電性部材を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の導電性部材を有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212127(P2012−212127A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51718(P2012−51718)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】