説明

電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置

【課題】 帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制して、それによる画像劣化の問題の解消を図り得る電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置の提供。
【解決手段】 繊維状導電性材料を含有する弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真現像方式を利用した複写機やプリンター等の電子写真画像形成装置に用いられる帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置において、感光ドラム(像担持体)に接触させた帯電ロール(接触帯電部材)に、電源を用いて帯電電圧を印加することによって感光ドラム表面を所定の電位に均一に帯電する帯電装置が知られている。
【0003】
そして、そのような帯電ロールは、軸体(芯金)の外周面上に、カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を添加した導電性を有するソリッド構造のゴム組成物やスポンジ構造の発泡体を用いて形成された導電性弾性体層が所定の厚さで設けられている。
【0004】
このような帯電装置においては、感光ドラム表面に付着している転写残トナー等のトナーや外添剤が転移して帯電ロール表面に付着し、固着したりすると、帯電不良が発生し画質劣化が問題となる。
【0005】
その防止策として、例えば、帯電ロールが感光ドラムの回転によって従動回転することに基づき、帯電ロール表面と感光ドラム表面との摺擦により帯電ロール表面の汚れを感光ドラム表面に転移させる方法や、帯電ロール表面にスポンジ等のクリーニング部材を軽く押し当てて汚れを払拭する方法等が行われているが、前者はトナーや外添剤の除去性が不十分であり、後者は帯電ロールを傷つける恐れがある。
【0006】
また、帯電ロールに付着した正極性の帯電トナーを除去すべく、転写ロールに負極性の電圧を印加して感光ドラムを負極性に帯電し、更に帯電ロールに正極性の電圧を印加し、正極性の帯電ロールと負極性の感光ドラムとの間に強い電界を形成して、帯電ロール上の正極性の帯電トナーを感光ドラムに転移させる方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
さらに、帯電ロールの保護層としてフッ素変性アクリレート系樹脂及びフッ素化オレフィン系樹脂と共に、トナーのバインダ樹脂よりも高いガラス転移温度を有する非(フッ素変性)アクリレート系樹脂を更に含む樹脂組成物を用いて、形成せしめ、ロール表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制あるいは阻止する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−161500号公報
【特許文献2】特開2001−154456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術においては、弾性体層に、カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を所定量添加することにより、導電性粒子同志が連続的に接触するパーコレーション構造を付与し、これを弾性層における導電路として利用している。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子の添加が、トナーや外添剤の付着に影響を与える大きな因子であることを見いだした。
【0010】
すなわち、従来技術において、カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を添加した弾性層は、パーコレーション構造における導電性粒子同志のつながりが弱いため弾性層における電荷の減衰が遅く、帯電部材表面へ付着したトナーや外添剤が脱離しにくくなることにより、帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着が発生しやすくなるものと推測される。
【0011】
また、上記特許文献1に開示された方法では、消費電力の増加や装置の大型化を伴うという問題がある。
【0012】
また、上記特許文献2に開示された方法では、フッ素系樹脂を使用するため、環境に対する負荷が懸念される。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制して、それによる画像劣化の問題の解消を図り得る電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、以下のような構成により達成される。
(請求項1)
繊維状導電性材料を含有する弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材。
(請求項2)
前記繊維状導電性材料は、繊維軸に垂直な方向の長さBが1nm以上100μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項3)
前記繊維状導電性材料は、繊維軸方向の長さAが1cm未満であり、かつ、繊維軸方向の長さAと繊維軸に垂直な方向の長さBとの比であるA/Bが2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項4)
前記繊維状導電性材料の体積固有抵抗が103Ω・cm以上108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項5)
前記繊維状導電性材料は繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項6)
前記繊維状炭素材料は、有機化合物を窒素雰囲気下において800℃の温度で熱処理したときの残存率が20質量%以上95質量%以下である有機化合物由来の繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項7)
前記繊維状炭素材料は、前記有機化合物を非酸化性雰囲気下において800℃以上の温度で熱処理することにより得られた繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項8)
前記繊維状炭素材料は、前記有機化合物を繊維状に成型した状態で、前記熱処理をすることにより得られた繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項7に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項9)
前記有機化合物が、有機高分子材料であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項10)
前記有機高分子材料がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項11)
前記繊維状導電性材料と体積固有抵抗が103Ω・cm未満の導電性材料とを、質量分率が繊維状炭素材料/導電性材料<1となるようにして併用することを特徴とする請求項4乃至10のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項12)
前記電子写真用帯電部材が電子写真用帯電ロールであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項13)
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材を用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
(請求項14)
前記電子写真用帯電部材は、被帯電体に接触して帯電させることを特徴とする請求項13に記載の電子写真画像形成装置。
【0015】
本発明者らは、繊維状導電性材料を含有する弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材を用いることで、繊維状導電性材料を含有する弾性体層は、パーコレーション構造において繊維状導電性材料同志が絡まり合うことによる接触面積の増加により、つながりが強化され、電荷減衰が速くなる。このことにより、弾性体層の電荷が減衰しやすくなり、ひいては、帯電部材表面へのトナーの付着や外添剤の付着を抑制して、それによる画像劣化の問題の解消を図り得ると考え、本発明に至った。
【発明の効果】
【0016】
本発明の帯電部材によれば、帯電部材の弾性体層の電荷減衰が速いので、トナーの付着や外添剤の付着を抑制し、帯電部材が汚れにくくなり、良好な画像が得られるる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0018】
<電子写真画像形成装置>
まず、本発明に係る帯電部材を用いた電子写真画像形成装置について説明する。本例では、帯電部材として帯電ロールを、被帯電体として感光体を用いた例を示す。
【0019】
図1は本発明の電子写真画像形成装置の一例を示す断面構成図である。4は被帯電体である感光体ドラムであり、アルミニウム製のドラム基体の外周面に感光体層である有機光導電体(OPC)を形成してなるもので矢印方向に所定の速度で回転する。
【0020】
図1において、図示しない原稿読み取り装置にて読み取った情報に基づき、半導体レーザ光源1から露光光が発せられる。これをポリゴンミラー2により、図1の紙面と垂直方向に振り分け、画像の歪みを補正するfθレンズ3を介して、感光体面上に照射され静電潜像を作る。感光体ドラム4は、あらかじめ帯電ロール5により一様帯電され、像露光のタイミングにあわせて時計方向に回転を開始している。
【0021】
感光体ドラム面上の静電潜像は、現像器6内の負帯電トナーにより現像され、形成された現像像はタイミングを合わせて搬送されてきた転写体8に転写器7の作用により転写される。さらに感光体ドラム4と転写体8は分離器(分離極)9により分離されるが、現像像は転写体8に転写担持されて、定着器10へと導かれ定着される。
【0022】
感光体面に残留した未転写のトナー等は、クリーニングブレード方式のクリーニング器11にて清掃され、帯電前露光(PCL)12にて残留電荷を除き、次の画像形成のため再び帯電ロール5により、一様帯電される。
【0023】
14はこの帯電ロール5に電圧を印加する電源部で、所定の電圧を帯電ロール5の軸体(芯金)51に供給する。印加電圧は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。
【0024】
また、帯電ロールと電子写真感光体との間に加えられる力学的圧力は、帯電ロールの感光体への当接圧は5〜500Paに、電気的負荷は、帯電ロールに印加される直流電圧は絶対値200〜900Vに、交流電圧を印加する場合はピーク−ピーク電圧500〜5,000Vp−p、周波数50〜3,000Hzに、各々調整されることが望ましい。たとえば、印加される電圧は感光体に対する帯電開始電圧値の2倍以上のピーク間電圧値を有しているものが好ましい。
【0025】
帯電ロールは、面移動駆動される感光体に従動駆動させてもよいし、非回転のものとさせてもよいし、接触部における感光体の面移動方向に順方向又は逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0026】
尚、転写体は代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に限定されず、OHP用のPETベース等も無論含まれる。
【0027】
又、クリーニングブレード13は、厚さ1〜30mm程度のゴム状弾性体を用い、材質としてはウレタンゴムが最も良く用いられる。これは感光体に圧接して用いられるため熱を伝え易く、解除機構を設け、画像形成動作を行っていない時には感光体から離しておくのが望ましい。
【0028】
<帯電ロール>
次に、本発明に係る帯電ロールについて詳細に説明する。
【0029】
以下、繊維状導電性材料として繊維状炭素材料を含有したゴム層からなる弾性体層を有する帯電ロールを例に挙げて説明する。
【0030】
本発明に係る帯電ロール5は、ステンレス鋼棒から成る軸体(芯金)51と、その外周に繊維状導電性材料として繊維状炭素材料を含有したゴム層からなる弾性体層52とから構成されている。
【0031】
繊維状導電性材料は、繊維状炭素材料以外に、繊維状金属材料、繊維状導電性酸化チタンや繊維状導電性酸化スズのような繊維状導電性金属酸化物材料などを用いることができるが、体積固有抵抗及び弾性率のコントロールと製造の容易性から繊維状炭素材料が特に好ましい。
【0032】
また、弾性体層は、ゴム層以外にポリウレタン等の発泡体層を用いることができる。
【0033】
また、帯電ロールは、本発明の目的を達成できれば、本発明の弾性体層を1層設けたものでも良く、また、この層以外に他の弾性体層を複数組み合わせても良い。
【0034】
本発明では弾性体層の組み合わせについて特に制限を加えないが、好ましくは、本発明の弾性体層が最外層もしくは外側から第二層目までに設置するのが、汚れ防止効果を高める点で好ましい。例えば、本発明の弾性体層の上に、抵抗調整層や保護層を設けても良い。
【0035】
帯電ロールにおける繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料を含有したゴム層からなる弾性体層52の体積固有抵抗としては、帯電性能とリーク防止の観点から105Ω・cm〜1011Ω・cmのものが好ましい。
【0036】
繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料を含有した弾性体層の体積固有抵抗は、以下の方法で測定できる。
【0037】
繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料を含有したゴムを1辺5cmの立方体に切り出し、140℃に加熱した平板プレスで107Paの圧力をかけ20分間放置してシート状にする。このシートの中間部分を1cmの幅で切り出して体積固有抵抗測定用の試料とする。試料の厚みはゴムの密度で異なるので厚さ計で計測する。1cm×5cmの短冊状に切り出された試料表面にドータイトを用いて直径0.2mm長さ4cmの銅線を4本接着し十分に乾燥する。このように形成された電極を用いて、25℃50%RHの温湿度に調整された環境下で、4端子法により体積固有抵抗を測定する。
【0038】
さらに、繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料の体積固有抵抗が103Ω・cm以上108Ω・cm以下であることが、弾性体層の体積固有抵抗のコントロールが容易になるので好ましい。
【0039】
また、この場合、体積固有抵抗が103Ω・cm以上108Ω・cm以下の繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料と、繊維状導電性材料よりも導電性が高い、すなわち体積固有抵抗が103Ω・cm未満の導電性材料とを組み合わせて併用することは好ましい実施態様であるが、後者は繊維状導電性材料よりも多く添加すると好ましくない。すなわち繊維状導電性材料の添加質量をX、併用する導電性材料の添加質量をYとすると、質量分率X/Yが1以上では帯電ロールの導電性が高くなりすぎる傾向があり好ましくなく、X/Yが1未満では、繊維状導電性材料の導電性への寄与が高く、ロール表面の汚れ防止効果が高められ、かつ、帯電ロールの弾性体層の導電性を容易に制御できるので好ましい。このような体積固有抵抗が103Ω・cm未満の導電性材料として好適なのはカーボンブラックなどに代表される炭素粉であり、カーボンブラック協会編カーボンブラック便覧に記載されている材料である。
【0040】
この繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料の体積固有抵抗は、錠剤に成型した後、25℃50%RHの温湿度に調整された環境下で、2端子法により計測する。錠剤の作製方法については錠剤成型器で成型後、108Pa以上の静水圧加圧をかけて作製する。5×108Pa以上の静水圧加圧をかけてもよいがあまり圧力が高すぎると、ラバーモルドから離形しにくくなるので、好ましくは、5×108Pa未満である。また、より好ましくは3×108Pa以下である。
【0041】
繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料の弾性体層への添加量(繊維状導電性材料の質量×100/母体である弾性体層(例えばゴム層)の質量)であるが、帯電ロールの力学物性を考慮すると含有率が30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。繊維状炭素材料の最低必要量は、帯電ロールの帯電性能から選定される。この条件を重視すると、繊維状炭素材料は1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。
【0042】
以下に、本発明の繊維状炭素材料を詳細に説明する。
【0043】
本発明における繊維状は、繊維軸方向の長さAが1cm未満であり、かつ、繊維軸方向の長さAと繊維軸に垂直な方向の長さ(すなわち繊維の太さ)Bとの比であるA/Bが2以上となる形状が好ましく、より好ましくは3以上1000未満である。この比が小さすぎると本発明の効果が小さくなる。また、この比が大きすぎるとゴムとの混合時に困難をきたすので好ましくない。さらに100未満であればゴムへより安定に分散することができ、さらに50未満であれば混合装置への負荷を小さくできるので好適である。
【0044】
繊維軸に垂直な方向の長さ(すなわち繊維の太さ)Bについては、細すぎると混合時に増粘の原因となるので、1nm以上が好ましく、繊維が太すぎると均一分散が難しくなるので100μm未満が好ましい。さらに好ましくは50μm未満である。また、取り扱いの点で好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
【0045】
また、これらの長さA,Bは、電子顕微鏡観察により測定できる。また、Bは、繊維軸に垂直な面における最大長さで定義され、円であれば直径に相当する長さになる。
【0046】
また、繊維状炭素材料は、体積固有抵抗のコントロールと製造の容易性、コストから、有機化合物を窒素雰囲気下において800℃の温度で熱処理したときの残存率((熱処理後の残渣物の質量×100)/(熱処理前の有機化合物の質量))が20質量%以上95質量%以下である有機化合物由来の繊維状炭素材料であることが好ましい。残存率が20質量%以上であることが製造コストを下げられる点で特に重要である。また、95質量%以下であることは、有機化合物を炭化する点において重要である。
【0047】
具体的には、この繊維状炭素材料は、前記有機化合物を非酸化性雰囲気下において800℃以上の温度で熱処理することにより得られる。非酸化性雰囲気下としては、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気下が挙げられる。
【0048】
有機化合物の残渣物の質量は、窒素雰囲気下における熱質量分析法(以下TGA)で測定する。昇温速度10℃/分で800℃まで測定し、800℃における残渣物の質量を読み取る。また試料は一度空気中100℃で60分加熱処理を行ったものを用いる。
【0049】
本発明で用いる有機化合物は、有機材料の中でも窒素雰囲気下800℃で熱処理したときに、(熱処理後の炭素の質量×100)/(熱処理前の有機化合物の質量)が20質量%以上の炭素を生成できる有機化合物が好ましく、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上が、また40質量%以上の炭素を生成する有機化合物であれば最も好適である。炭素生成量が多いほど、繊維状炭素材料の体積固有抵抗のコントロールが容易になる。
【0050】
本発明に用いることが可能な有機化合物は、800℃の残存率が満たされれば、どのような有機化合物でも用いることが可能であるが、例えば、液相ではピッチ、コ−ルタ−ルあるいはコ−クスとピッチの混合物などが用いられ、固相では木質原料、フラン樹脂、フェノール樹脂、セルロ−ス、ポリアクリロニトリル、レ−ヨンなどの架橋物が用いられる。炭素質材料は大別すると、石油ピッチなどを出発原料とし、一般的には2000℃以上の高温で熱処理し、発達したグラファイト構造を有する、いわゆる易黒鉛化炭素材料と、フェノール樹脂やフラン樹脂を始めとする熱硬化性高分子を出発原料として、2000℃以下の比較的低温で熱処理し、乱層構造を有する、いわゆる難黒鉛化炭素材料とがある。
【0051】
本発明では、発明の目的を損なわない限りどちらの炭素材料でもよいが、導電率の制御しやすさから好ましくは難黒鉛化炭素材料が選ばれ、このような炭素材料を生成する有機化合物として有機高分子材料、とりわけフェノール樹脂が好ましい。
【0052】
また、有機高分子材料、とりわけフェノール樹脂を用いることにより、多孔質の繊維状炭素材料を容易に得ることができ、ゴムなどの弾性層を構成する材料と繊維状炭素材料の界面の表面積の増加により、架橋点が増加して、繊維状炭素材料を含有するゴムなどの弾性層の強度を向上させることが可能になる。
【0053】
本発明に好適に用いられるフェノール樹脂とは例えばフェノールの他にアルキルフェノール類や他の置換フェノール類、多価フェノール類とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを原料とし、一般に知られている常法により酸性触媒下(ノボラック型)あるいはアルカリ触媒下(レゾール型)において反応せしめて得られるものである。
【0054】
本発明では有機化合物をあらかじめ繊維状に成型後、前述の熱処理による炭化プロセスを経て繊維状炭素材料を得ることが好ましい。また、延伸しながら炭化を進め繊維状物としても良い。
【0055】
ただし、炭化する際の熱処理温度については、800℃以上が好ましくさらに好ましくは1200℃以上である。2000℃以上でも好ましいが3000℃以上の温度は経済的に好ましくない。この熱処理温度までの昇温速度および熱処理温度の保持時間は処理する炭素材料の形状や組成で異なるので特に制限をしないが、昇温速度は1℃/分以上50℃/分未満が、保持時間は1分以上24時間未満が好ましい。また、熱処理後に粉砕、分級などのプロセスを行なっても良い。
【0056】
本実施形態の帯電ロールの弾性体層は、繊維状炭素材料等の繊維状導電性材料とゴムを基本成分として構成されるが、必要に応じて、本発明の目的を達成できる範囲内で架橋剤、界面活性剤、マット材、劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など他の成分を添加しても良い。使用するゴムに関しては本発明では特に制限を加えない。一般のゴム製品に使用可能なものであれば何でも良く、また組成は複数のゴムをブレンドしたものでも何でも良い。また繊維状炭素材料とゴムとの混合方法も特に制限しない。
【0057】
以上のように、本発明の帯電部材によれば、帯電部材の弾性体層の電荷減衰が速いので、トナーの付着や外添剤の付着を抑制し、帯電部材が汚れにくくなり、良好な画像が得られるる。
【0058】
上記実施形態では、帯電部材として帯電ロールの例を示したが、ロールタイプ以外にもブレード状タイプやロッド状タイプ、ベルト状タイプなどの帯電部材にも本発明は適用可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、帯電ロールが被帯電体である感光体に接触して感光体を帯電させる例を示したが、本発明の帯電部材に対する被帯電体は、感光体に限られるものではなく、例えば、被帯電体である転写材を帯電させる転写部材(例えば転写ロール)などにも適用可能である。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0061】
<繊維状炭素材料の製造方法>
フェノール1.2kg、50%ホルマリン0.6kg、蓚酸3.5gを3リットルのフラスコに仕込み、還流温度で4時間反応させた後、さらに加熱下で真空脱水濃縮を行い軟化点110℃の未硬化ノボラック樹脂1kgを得た。未硬化ノボラック樹脂200gを加熱溶融させ、攪拌して未硬化ノボラック樹脂を得た。この未硬化ノボラック樹脂を孔数20、孔径0.2mmφの紡糸口金を用いて260m/分の速度で溶融紡糸を行い、未硬化ノボラック樹脂繊維を得た。
【0062】
この未硬化ノボラック樹脂繊維をホルムアルデヒドと塩酸を主成分とした硬化水溶液中に浸漬し、0.5℃/分の速度で95℃まで昇温後、8時間保持して硬化ノボラック樹脂繊維(フェノール樹脂繊維)を得た。得られた繊維を窒素雰囲気下で熱質量分析を行い、800℃における残渣量を求めたところ52質量%であった。
【0063】
このフェノール樹脂繊維を1mm前後に断裁後、電気炉で窒素雰囲気下1000℃30分間熱処理を行い炭素短繊維を得た。この炭素短繊維をジェットミル粉砕し、繊維長(繊維軸方向の長さAに相当)が0.5mm、繊維径(繊維軸に垂直な方向の長さBに相当)が0.07mmの炭素短繊維が得られた。この炭素短繊維の体積固有抵抗は5×104Ω・cmであった。
(実施例1)
<帯電ロール1の作製>
下記の要領で本発明の、帯電ロール1を作製した。
【0064】
{本発明ゴム層配合A}
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体 100質量部
炭素短繊維 7質量部
四級アンモニウム塩 2質量部
酸化亜鉛 5質量部
脂肪酸 2質量部
以上の材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム三元共重合体100質量部に対してセバシン酸系ポリエステル可塑剤5質量部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。
【0065】
このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム三元共重合体100質量部に対し加硫剤としての硫黄1質量部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1質量部、ノクセラーTS0.5質量部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを、ステンレス製芯金の周囲にロール状になるように押出成型機にて成型し、加熱加硫成型した後に研磨処理した。
【0066】
得られたゴム層の体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
【0067】
ここで得られたロールに抵抗調整層をつけて帯電ロール1とした。
【0068】
すなわち抵抗調整層の材料として、
アクリルポリオール溶液(有効成分70質量%) 100質量部
イソシアネートA(IPDI、有効成分60質量%) 40質量部
イソシアネートB(HDI、有効成分80質量%) 30質量部
導電性酸化錫(石原産業製) 90質量部
負荷電制御樹脂(CCR1) 12質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK)溶剤 340質量部
をミキサーを用いて攪拌し混合溶液を作製した。次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理を行い、ディッピング用塗料を作製した。
【0069】
なお、上記のIPDIはイソホロンジイソシアナートを、HDIはヘキサメチレンジイソシアナートを意味する。
【0070】
このディッピング用塗料をロールの上にディッピング法にて膜厚が10μmになるように塗布して、10分間の風乾後に加熱型乾燥機にて、160℃で1時間乾燥させ、帯電ロール1を得た。
【0071】
得られた帯電ロールを、図1の電子写真画像形成装置に取付け、23℃/53%RHの環境下で、以下の条件で感光体を帯電させて、所定の画像を1000枚、連続的にプリントアウトした。
帯電条件
感光体当接圧;50g/cm,
帯電ロールに印加される直流電圧;−600V,交流電圧;2,000Vp−p,周波数;150Hz
画像評価とプリント後の帯電ロール上に付着しているトナー、外添剤の評価を行った。
<汚れと画像評価法>
(1.汚れ評価法)
汚れ評価は、耐電ロール表面へのトナーの付着性と外添剤の付着性により評価した。
【0072】
トナー付着性:帯電ロール上に付着しているトナーをテープ(3M社製、スコッチ・メンディングテープ)にて除去し、そのテープに転写された付着トナーの濃度を、目視で観察し評価した。
○:テープは透明のまま、全くトナーが転写されていない状態のもの。
△:テープにトナーが転写されている箇所が部分的に認められるもの。
×:テープ全面にトナーが転写された状態のもの。
【0073】
外添剤付着性:帯電ロール上に付着している外添剤の濃度を、目視で観察し評価した。
○:ロールは黒色外観のまま、又はうっすらと外添剤が載っている箇所が部分的に認められるに過ぎないもの。
△:ロール全面にうっすらと外添剤が載った状態のもの。
×:ロール全面に外添剤が載った状態のもの。
【0074】
この付着性評価で、トナー付着性、外添剤付着性の両方において、○が2つの場合は◎、○と△の組み合わせは○、○と×の組み合わせは△、○が無い場合は×とした。
【0075】
(2.画像評価法)
○:画像が良好のもの。
△:トナーや外添剤が帯電ロールに付着したために発生した画像の乱れが、画像の一部に見られたもの。
×:トナーや外添剤が帯電ロールに付着したために発生した画像の乱れが、画像の全体に見られたもの。
(実施例2)
実施例1において、炭素短繊維の量を20質量部用いた以外は実施例1と同様に帯電ロールを製造し、評価した。また、得られたゴム層の体積固有抵抗は106Ω・cmであった。
(実施例3)
実施例1において、ゴム層の導電性材料として、ケッチェンブラックEC600JD(ケッチェンブラックインターナショナル(株))3質量部を併用した以外は実施例1と同様に帯電ロールを製造し、評価した。
【0076】
また、ケッチェンブラックEC600JDの体積固有抵抗は10-2Ω・cmであり、得られたゴム層の体積固有抵抗は106Ω・cmであった。
(比較例1)
実施例1において炭素短繊維の代わりにカーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC、ライオンアクゾ社製)を用いた以外は実施例1と同様に帯電ロールを製造し、評価した。
【0077】
また、ケッチェンブラックECの体積固有抵抗は10-2Ω・cmであり、得られたゴム層の体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
【0078】
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめた。
【0079】
【表1】

【0080】
表1の実施例と比較例から、本発明の帯電ロールは、耐久試験において、汚れ、画像評価とも良好であり、本発明の目的を達成している。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体レーザ光源
2 ポリゴンミラー
3 fθレンズ
4 感光体ドラム
5 帯電ローラー
51 軸体(芯金)
6 現像器
7 転写器
8 転写体
9 分離極
10 定着器
11 クリーニング器
12 帯電前露光(PCL)
13 クリーニングブレード
14 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状導電性材料を含有する弾性体層を有することを特徴とする電子写真用帯電部材。
【請求項2】
前記繊維状導電性材料は、繊維軸に垂直な方向の長さBが1nm以上100μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項3】
前記繊維状導電性材料は、繊維軸方向の長さAが1cm未満であり、かつ、繊維軸方向の長さAと繊維軸に垂直な方向の長さBとの比であるA/Bが2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項4】
前記繊維状導電性材料の体積固有抵抗が103Ω・cm以上108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項5】
前記繊維状導電性材料は繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項6】
前記繊維状炭素材料は、有機化合物を窒素雰囲気下において800℃の温度で熱処理したときの残存率が20質量%以上95質量%以下である有機化合物由来の繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項7】
前記繊維状炭素材料は、前記有機化合物を非酸化性雰囲気下において800℃以上の温度で熱処理することにより得られた繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項8】
前記繊維状炭素材料は、前記有機化合物を繊維状に成型した状態で、前記熱処理をすることにより得られた繊維状炭素材料であることを特徴とする請求項7に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項9】
前記有機化合物が、有機高分子材料であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項10】
前記有機高分子材料がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項11】
前記繊維状導電性材料と体積固有抵抗が103Ω・cm未満の導電性材料とを、質量分率が繊維状炭素材料/導電性材料<1となるようにして併用することを特徴とする請求項4乃至10のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項12】
前記電子写真用帯電部材が電子写真用帯電ロールであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材を用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項14】
前記電子写真用帯電部材は、被帯電体に接触して帯電させることを特徴とする請求項13に記載の電子写真画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−350074(P2006−350074A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177512(P2005−177512)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】