説明

電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置

【課題】 圧縮力による歪みがつきにくいポリウレタン発泡体層を有する電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置の提供。
【解決手段】 導電性基体の上に、絶縁性ポリウレタン発泡体層が形成され、該絶縁性ポリウレタン発泡体層の上に半導性ゴム層が形成されていることを特徴とする電子写真用帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真現像方式を利用した複写機やプリンター等の電子写真画像形成装置に用いられる帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真現像方式を利用した複写機やプリンター等においては、感光体(ドラム)に押圧接触せしめられ、直流電圧と交流電圧とが重畳されて印加されることにより、該感光体表面を帯電させる帯電ロールが用いられている。
【0003】
そして、そのような帯電ロールの一つとして、導電性基体である軸体(芯金)の外周面上に、導電性を有するゴム組成物を用いて形成されたソリッド構造の導電性基層が所定の厚さで設けられていると共に、該導電性基層の外周面上に、抵抗調整層が設けられ、更に必要に応じて、それら基層と抵抗調整層との間に電極層が、また抵抗調整層の外周面上に保護層が、それぞれ積層形成されて、構成されたものが知られている。
【0004】
また、それとは別の構造を有するものとして、軸体の外周面上に、カーボンブラックや金属粉等の導電性粒子を添加した導電性を有する発泡性ゴム組成物を用いて発泡形成された導電性基層が所定の厚さで設けられていると共に、該導電性基層の外周面上に、熱可塑性樹脂材料からなる略薄肉の表面平滑層が設けられ、また該表面平滑層の外周面上に抵抗調整層が、更に必要に応じて、該抵抗調整層の外周面上に保護層が、それぞれ積層形成されて、構成されたものも知られている(特許文献1参照)。
【0005】
このような構造とされた帯電ロールにあっては、導電性基層が発泡形成されたスポンジ構造をもって構成されていることによって、多量の軟化剤を含有せしめることなく、その低硬度化が有利に達成され得て、該導電性基層からの軟化剤の滲み出し等による感光体に対する汚染が効果的に防止され得るばかりでなく、その軽量化が有利に図られ得るといった、前述の如き、ソリッド構造をもって構成された導電性基層を有する帯電ロールには見られない優れた特徴が発揮され得るようになっているのである。
【0006】
また、導電性基層の外周面上に設けられる表面平滑層によって、気泡が露呈せしめられて粗面状態とされた導電性基層の表面に対して平滑性が付与せしめられ得て、該導電性基層の外周面上に、リーク防止や感材固着性の低下を図る抵抗調整層や保護層が良好に形成され得るようになっているのである。
【特許文献1】特開2001−154456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、よく知られているように、それらの帯電ロールにおいては、感光体に接触して用いられるときに均一な力で接触していることが必要である。
【0008】
しかし、従来技術の導電性粒子を添加した発泡体においては、圧縮力による歪みが回復しにくくなり、わずかに変形して感光体と接触し、異音が発生する原因になっていることがわかった。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、導電性粒子の添加が、圧縮力による歪みに影響を与える大きな因子であることを見いだした。すなわち、従来技術においては、導電性粒子は、単に導電材として分散されているだけなので、導電性粒子と発泡体との界面においては、外部からの力に対し、界面剥離やクラックなどが発生しやすく、これにより歪みが回復しなくなるものと推測される。
【0010】
そして、そのような異音は装置全体から発生する音よりも小さいため、これまで気がつかなかったが、装置の改良が進むにつれ発生ノイズレベルが小さくなり、帯電ロールの発する騒音が問題になり始めた。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮力による歪みがつきにくいポリウレタン発泡体層を有する電子写真用帯電部材及びそれを用いた電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、以下のような構成により達成される。
(請求項1)
導電性基体の上に、絶縁性ポリウレタン発泡体層が形成され、該絶縁性ポリウレタン発泡体層の上に半導性ゴム層が形成されていることを特徴とする電子写真用帯電部材。
(請求項2)
前記半導性ゴム層の体積固有抵抗が103Ω・cm以上1011Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項3)
前記半導性ゴム層の密度が0.5g/cm3以上2g/cm3未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項4)
最外層が前記半導性ゴム層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項5)
前記絶縁性ポリウレタン発泡体層の密度が0.001g/cm3以上0.5g/cm3未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項6)
前記絶縁性ポリウレタン発泡体層の体積固有抵抗が1012Ω・cm以上1016Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項7)
前記導電性基体に直接接触する層が絶縁性ポリウレタン発泡体層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項8)
前記絶縁性ポリウレタン発泡体層に直接接触する層が半導性ゴム層であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項9)
前記電子写真用帯電部材が電子写真用帯電ロールであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
(請求項10)
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材を用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
(請求項11)
前記電子写真用帯電部材は、被帯電体に接触して帯電させることを特徴とする請求項10に記載の電子写真画像形成装置。
【0013】
本発明者は、導電性基体の上に、絶縁性ポリウレタン発泡体層が形成され、該絶縁性ポリウレタン発泡体層の上に半導性ゴム層が形成されていることを特徴とする電子写真用帯電部材を用いることで、絶縁性ポリウレタン発泡体層には、導電性粒子を添加する必要がないので、ポリウレタン発泡体層の歪みがつきにくくなるとともに、その外側の半導性ゴム層により、帯電性を維持できると考え、本発明に至った。
【発明の効果】
【0014】
本発明の帯電部材によれば、良好な帯電性を有するとともに、帯電部材のポリウレタン発泡体層が圧縮力による歪みがつきにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0016】
<電子写真画像形成装置>
まず、本発明に係る帯電部材を用いた電子写真画像形成装置について説明する。本例では、帯電部材として帯電ロールを、被帯電体として感光体を用いた例を示す。
【0017】
図1は本発明の電子写真画像形成装置の一例を示す断面構成図である。4は被帯電体である感光体ドラムであり、アルミニウム製のドラム基体の外周面に感光体層である有機光導電体(OPC)を形成してなるもので矢印方向に所定の速度で回転する。
【0018】
図1において、図示しない原稿読み取り装置にて読み取った情報に基づき、半導体レーザ光源1から露光光が発せられる。これをポリゴンミラー2により、図1の紙面と垂直方向に振り分け、画像の歪みを補正するfθレンズ3を介して、感光体面上に照射され静電潜像を作る。感光体ドラム4は、あらかじめ帯電ロール5により一様帯電され、像露光のタイミングにあわせて時計方向に回転を開始している。
【0019】
感光体ドラム面上の静電潜像は、現像器6により現像され、形成された現像像はタイミングを合わせて搬送されてきた転写体8に転写器7の作用により転写される。さらに感光体ドラム4と転写体8は分離器(分離極)9により分離されるが、現像像は転写体8に転写担持されて、定着器10へと導かれ定着される。
【0020】
感光体面に残留した未転写のトナー等は、クリーニングブレード方式のクリーニング器11にて清掃され、帯電前露光(PCL)12にて残留電荷を除き、次の画像形成のため再び帯電ロール5により、一様帯電される。
【0021】
14はこの帯電ロール5に電圧を印加する電源部で、所定の電圧を帯電ロール5の軸体(芯金)51に供給する。印加電圧は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。
【0022】
また、帯電ロールと電子写真感光体との間に加えられる力学的圧力は、帯電ロールの感光体への当接圧は5〜500g/cmに、電気的圧力は、帯電ロールに印加される直流電圧は絶対値200〜900Vに、交流電圧を印加する場合はピーク−ピーク電圧500〜5,000Vp−p、周波数50〜3,000Hzに、各々調整されることが望ましい。たとえば、印加される電圧は感光体に対する帯電開始電圧値の2倍以上のピーク間電圧値を有しているものが好ましい。
【0023】
帯電ロールは、面移動駆動される感光体に従動駆動させてもよいし、非回転のものとさせてもよいし、接触部における感光体の面移動方向に対する順方向又は逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0024】
尚、転写体は代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に限定されず、OHP用のPETベース等も無論含まれる。
【0025】
又、クリーニングブレード13は、厚さ1〜30mm程度のゴム状弾性体を用い、材質としてはウレタンゴムが最も良く用いられる。これは感光体に圧接して用いられるため熱を伝え易く、解除機構を設け、画像形成動作を行っていない時には感光体から離しておくのが望ましい。
【0026】
<帯電ロール>
次に、本発明に係る帯電ロールについて詳細に説明する。
【0027】
帯電ロール5は、導電性基体であるステンレス鋼棒から成る軸体(芯金)51上に直接接触する形態で絶縁性ポリウレタン発泡体層53が形成され、該ポリウレタン発泡体層53の上に直接接触する形態で半導性ゴム層54が形成されている。この2つの層により弾性層が形成されており、半導性ゴム層54が最外層になっている。このような構成は、耐久性向上とトナーや外添剤によるロール表面の汚染防止の点で好ましい。
【0028】
帯電ロール5は、本発明の目的を達成できれば、本発明のポリウレタン発泡体層53と半導性ゴム層54以外に他の弾性体層を設けても良い。
【0029】
半導性ゴム層54の体積固有抵抗は、帯電性能とリーク防止の観点から、103Ω・cm以上1011Ω・cm以下であることが好ましい。
【0030】
半導性ゴム層54の密度は0.5g/cm3以上2g/cm3未満であることが好ましい。0.5g/cm3以上とすることで、軟化剤等を多量に添加する必要がなく、ロールの汚染を防止できる。また、2g/cm3以上になると弾性率が大きくなるので好ましくない。
【0031】
絶縁性ポリウレタン発泡体層53の密度は0.001g/cm3以上0.5g/cm3未満であることが好ましい。あまり密度が高いと弾性率が大きくなるので好ましくなく、密度が低すぎると逆にやわらかくなりすぎるので好ましくない。
【0032】
絶縁性ポリウレタン発泡体層53の体積固有抵抗が1012Ω・cm以上1016Ω・cm以下であることが好ましい。発泡体層に導電性粒子をほとんど添加する必要がなくなるので、歪の回復性が向上する。
【0033】
体積固有抵抗は、ポリウレタン発泡体や半導性ゴムを1辺5cmの立方体に切り出し、140℃に加熱した平板プレスで107Paの圧力をかけ20分間放置してシート状にする。このシートの中間部分を1cmの幅で切り出して体積固有抵抗測定用の試料とする。試料の厚みは発泡体の密度で異なるので厚さ計で計測する。1cm×5cmの短冊状に切り出された試料表面にドータイトを用いて直径0.2mm長さ4cmの銅線を4本接着し十分に乾燥する。このように形成された電極を用いて、25℃50%RHの温湿度に調整された環境下で、4端子法により体積固有抵抗を測定する。
【0034】
密度は、公知の方法で測定される。
【0035】
本発明で用いるポリウレタン発泡体は、ポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオール、あるいはその両者の混合物とイソシアネート系化合物と触媒、界面活性剤、発泡剤を基本配合処方とする公知の軟質ポリウレタン発泡体であり、本発明の実施形態である新規電子写真用帯電ロール製造技術において重合触媒に係る以外は、ポリウレタン樹脂ハンドブック(岩田敬治編日刊工業新聞社;ISBN:4526022349;(1987/09))、機能性ポリウレタンの基礎と応用(松永勝治編;シーエムシー;ISBN:4882312972;(2000/11))や新版ポリウレタン原料・製品の総合調査 新材料・新素材シリーズ(シーエムシー;ISBN:4882316404;新版 版(2000/09))などの公知文献に記載された原料および製造技術で製造される。
【0036】
具体的には、ポリオールおよび多官能性イソシアナート、界面活性剤、重合触媒、発泡剤を使用してポリウレタン発泡体を形成させるが、その製造法としては、従来知られている、当該業者公知の(1)プレポリマー法、(2)ワンショット法、(3)部分プレポリマー法等のいずれかの方法によっても製造することが出来るが、本発明においては、ワンショット法が好ましく用いられる。
【0037】
ここで、ワンショット法については、例えば、(株)高分子刊行会発行、今井嘉夫著、『ポリウレタンフォーム』、(1987)等を参照することが出来る。
【0038】
以下、本発明のポリウレタン発泡体の各成分について、具体的に説明する。
【0039】
<ポリオール成分>
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール、これらの多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合した付加重合物等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸、コハク酸などの多価カルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類との縮合反応から得られる縮合物等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
重合体ポリオールとしては、前記に列記したポリオールの少なくとも1種中でラジカル重合開始剤の存在下でアクリルニトリル、スチレン等のビニルモノマーを重合し安定分散させたもの等、およびこれら混合物が挙げられる。
【0042】
その他のポリオール成分としては、メラミンまたはポリリン酸アンモニウムが分散されたポリオール及び含リンポリオール、多価アルコールを開始剤としてラクトンの開環重合により得られるポリラクトン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリジェン系ポリオール等、およびこれら混合物が挙げられる。
【0043】
さらに前記ポリオールは、後述の多官能性イソシアナートと反応させたOH基末端プレポリマーとして使用されてもよい。
【0044】
次に述べる疎水性ポリオールを用いることで耐水性が付与され好適である。疎水性ポリオールとしては、後述するポリオールの相溶性試験において合格するものである。具体的には、ダイマー酸系ポリオールとして、ダイマー酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多官能の水酸化物とのエステル化物、ひまし油及びひまし油変性物、ポリブタジエン系ポリオール及びその水添物、ポリイソプレン系ポリオール及びその水添物等である。これらポリオールは、後述の多官能性イソシアナートと予め反応させたOH基末端プレポリマー又はNCO基末端として使用される等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
<多官能性イソシアナート>
多官能性イソシアナートとしては、分子中にイソシアナート基が2個以上含有する芳香族ポリイソシアナート及び脂肪族ポリイソシアナートあるいはそれらの変性物であって、具体的には、トルエンジイソシアナート(TDI)、ジフェニルメタンイソシアナート(MDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)等、およびこれらの混合物等が挙げられる。また、前記ポリオールと反応させたNCO基末端プレポリマー等、およびこれら混合物等が挙げられる。
【0046】
<重合触媒>
重合触媒としては、一般の1級アミン化合物から3級アミン化合物あるいはそれらの塩まで用いることができる。また、ピリジンなどの芳香族系アミンも用いることができる。このアミン系化合物の中で好ましくは、トリエチレンジアミンである。またこれらのアミン系化合物とスズを含む化合物を併用して反応に用いることも好ましい。
【0047】
<整泡剤>
整泡剤としては、有機シリコーン整泡剤や界面活性剤等およびこれらの混合物が挙げられるが、前者では、用途によっては使用しない事が好ましいが、あえて使用するのであれば多官能性イソシアナートと反応するヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基等の活性基を有するシリコーン整泡剤を用いると非移行性となるので好ましい。また後者では、ジエチルアミノオレエート、ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ビニルピロリドン系、フッ素系、有機化合物系等、およびこれら混合物が挙げられる。
【0048】
<発泡剤>
発泡剤としては、例えば、水;常圧で気体の窒素、炭酸ガス、空気等の不活性ガス;モノ弗化トリ塩化メタンやジ塩化メタン等のハロゲン化アルカン;ブタンやペンタン等の低沸点アルカン;分解窒素ガスなどを発生するアゾビスイソブチルニトリル等、およびこれら混合物が挙げられる。
【0049】
その他の添加剤としては、架橋剤、着色剤、樹脂改質剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐久性改良剤等を必要に応じて任意使用することができる。
【0050】
本発明に用いる絶縁性ポリウレタン発泡体には、導電性粒子を含有させる必要がなく、低密度でも圧縮永久歪みが少ない発泡体を製造することが可能となり本発明を完成させた。すなわち本発明ではポリウレタン発泡体の密度を低密度にすることが可能で、帯電ロールに必要な低い弾性率を可塑剤をほとんど用いることなく達成でき、導電性を調節する層(以下に示す半導性ゴム層)などの材料設計を容易にする。
【0051】
なお、本発明に用いる絶縁性ポリウレタン発泡体に圧縮永久歪みに影響を与えない範囲で導電性粒子を添加しても良い、
<半導性ゴム層>
以下、半導性ゴム層について説明する。
【0052】
半導性ゴム層は、一般のゴム材料に、カーボンブラックなどに代表される炭素粉を添加し、体積固有抵抗を調整することにより製造することが可能である。必要に応じて発泡剤を用いてもよいが、発泡剤を使用しないほうが本発明の目的には好ましい。なお、本発明で用いる炭素粉はカーボンブラック協会編カーボンブラック便覧に記載されている材料から適宜選択して用いられる。
【0053】
上記実施形態では、帯電部材として帯電ロールの例を示したが、ロールタイプ以外にもブレード状タイプやロッド状タイプ、ベルト状タイプなどの帯電部材にも本発明は適用可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、帯電ロールが被帯電体である感光体に接触して感光体を帯電させる例を示したが、本発明の帯電部材に対する被帯電体は、感光体に限られるものではなく、例えば、被帯電体である転写材を帯電させる転写部材(例えば転写ロールなど)にも適用可能であるる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1)
(絶縁性ポリウレタン発泡体層の形成)
A成分は、TDI−80を49g、B成分は、PPG−BM(グリセリンベースのポリオキシプロピレントリオール:Mw=3000:OH価56)100g、シリコン界面活性剤(L520)1.2g、水と触媒(トリエチレンジアミン及びスズの化合物)を混合したものである。
【0056】
帯電ロールの形状のモールドの中心に金属棒を設置し、A成分とB成分を激しく混合し1gモールドに流し込み50℃に加熱すると発泡反応が生じた。モールドから取り出し、80℃4時間エージングを行った後、セルが外に露出しないよう注意しながら表面を平に研磨した。絶縁性ポリウレタン発泡体層の密度は、0.2g/cm3、体積固有抵抗は1015Ω・cmであった。
【0057】
(半導性ゴム層の形成)
ゴム層の配合A
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体 100質量部
カーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC、ライオンアクゾ社製)
20質量部
四級アンモニウム塩 1質量部
酸化亜鉛 5質量部
脂肪酸 2質量部
ゴム層の配合Aを60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100質量部に対してセバシン酸系ポリエステル可塑剤5質量部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。
【0058】
このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100質量部に対し加硫剤としての硫黄1質量部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1質量部、ノクセラーTS0.5質量部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。
【0059】
得られたコンパウンドを、研磨したポリウレタン発泡体にロール状になるように押出成型機にて成型して巻きつけ、加熱加硫成型した後に研磨処理した。半導性ゴム層の密度は、1.0g/cm3、体積固有抵抗は107Ω・cmであった。
【0060】
得られた帯電ロールを、図1の電子写真画像形成装置に取付け、23℃/53%RHの環境下で、以下の条件で感光体を帯電させて、所定の画像を1000枚、連続的にプリントアウトした。
帯電条件
感光体当接圧;50g/cm,
帯電ロールに印加される直流電圧;−600V,交流電圧;2,000Vp−p,周波数;150Hz
結果は、500枚あたりからやや画像に汚れは見られたがほぼ良好であった。その後、帯電ロールを取り外し10cm四方の2枚の板にはさみ、1kgの荷重を24時間かける。その後負荷を取り除き24時間放置後、板に挟まれた部分の3点の外径の平均と挟まれていなかった部分3点の外径の平均の差(圧縮による歪の評価)を求めたところ、0であった。
(実施例2)
実施例1の帯電ロールにさらに表面層をつけて帯電ロールとした。表面層の材料として、
アクリルポリオール溶液(有効成分70質量%) 100質量部
イソシアネートA(IPDI、有効成分60質量%) 40質量部
イソシアネートB(HDI、有効成分80質量%) 30質量部
導電性酸化錫(石原産業製) 90質量部
負荷電制御樹脂(CCR1) 12質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK)溶剤 340質量部
をミキサーを用いて攪拌し混合溶液を作製した。
【0061】
次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理を行い、ディッピング用塗料を作製した。このディッピング用塗料をロールの上にディッピング法にて膜厚が10μmになるように塗布して、10分間の風乾後に加熱型乾燥機にて、160℃で1時間乾燥させ、帯電ロールを得た。
【0062】
実施例1と同様の耐久性評価を行ったところ、画像に汚れは無く良好の結果であった。その後実施例1と同様に歪みの評価を行ったところ、0.05mmの歪が観察された。
(比較例1)
実施例1のポリウレタン発泡体層にカーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC、ライオンアクゾ社製)を30質量部加えた以外は、実施例1のポリウレタン発泡体層の形成と同様にして、ポリウレタン発泡体層を一層のみ設けた、比較の帯電ロールを製造した。
【0063】
実施例1と同様の耐久性評価を行ったところ、800枚を経過したあたりから、異音が発生する現象が見られた。その後実施例1と同様に歪みの評価を行ったところ、1.5mmの歪が観察された。
(比較例2)
実施例1における半導性ゴム層とポリウレタン発泡体層の形成順序を逆にした以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。すなわち、実施例1の半導性ゴム層を金属に巻きつけ加硫成型後、その上層に実施例1の絶縁性ポリウレタン発泡体層を形成した。表面層をセルが外に現れないよう注意深く研磨して帯電ロールを製造した。
【0064】
実施例1と同様の耐久性評価を行ったところ、十分な機能をせず、プリント1枚目で汚れた画像がでてきたため、評価を中止した。
(比較例3)
実施例1において、ポリウレタン発泡体層を設けず、半導性ゴム層のみを設けた以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0065】
実施例1と同様の耐久性評価を行ったところ、半導性ゴム層が堅いため、帯電ロールとして十分な機能をせず、プリント1枚目で汚れた画像がでてきたため、評価を中止した。感光体を確認したところ、半導性ゴム層との接触による傷が付いていた。
【0066】
以上の実施例と比較例から、本発明の帯電ロールは、耐久試験の結果も良好で、さらに耐久試験後のサンプルでも圧縮による歪みがつきにくいことから、長時間使用しても変形せず、本発明の目的を達成している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の主要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 半導体レーザ光源
2 ポリゴンミラー
3 fθレンズ
4 感光体ドラム
5 帯電ロール
51 軸体(芯金)
6 現像器
7 転写器
8 転写体
9 分離極
10 定着器
11 クリーニング器
12 帯電前露光(PCL)
13 クリーニングブレード
14 電源部
53 絶縁性ポリウレタン発泡体層
54 半導性ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体の上に、絶縁性ポリウレタン発泡体層が形成され、該絶縁性ポリウレタン発泡体層の上に半導性ゴム層が形成されていることを特徴とする電子写真用帯電部材。
【請求項2】
前記半導性ゴム層の体積固有抵抗が103Ω・cm以上1011Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項3】
前記半導性ゴム層の密度が0.5g/cm3以上2g/cm3未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項4】
最外層が前記半導性ゴム層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項5】
前記絶縁性ポリウレタン発泡体層の密度が0.001g/cm3以上0.5g/cm3未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項6】
前記絶縁性ポリウレタン発泡体層の体積固有抵抗が1012Ω・cm以上1016Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項7】
前記導電性基体に直接接触する層が絶縁性ポリウレタン発泡体層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項8】
前記絶縁性ポリウレタン発泡体層に直接接触する層が半導性ゴム層であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項9】
前記電子写真用帯電部材が電子写真用帯電ロールであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子写真用帯電部材を用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項11】
前記電子写真用帯電部材は、被帯電体に接触して帯電させることを特徴とする請求項10に記載の電子写真画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−350075(P2006−350075A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177513(P2005−177513)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】