説明

電子写真用転写紙の製造方法

【課題】ギャップフォーマ型抄紙機を用いて、中性抄紙法により電子写真用紙を抄造する場合において、特に、紙中填料率が高い電子写真用紙を高速条件で抄造する場合において、表層から脱落する紙粉が少ない電子写真用紙の製造方法の提供にある。
【解決手段】ロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて、中性抄紙法により電子写真用紙を製造する方法であって、用紙を構成するパルプのうちLBKPを40部以上含み、カチオン化澱粉を0.3%以上添加して抄紙する電子写真用紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップフォーマ型抄紙機を用いて、中性抄紙法により電子写真用転写紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機は生産性の高さから高速化・広幅化が進んでおり、併せて、抄紙機の改良、開発が進んでいる。特に、ワイヤパートに関しては、脱水能力の向上という観点から、長網型フォーマからオントップ型のツインワイヤフォーマ、更にギャップフォーマへと移行してきた。
【0003】
ギャップフォーマ型抄紙機では、ヘッドボックスから噴出された原料ジェットをすぐに2枚のワイヤで挟み込むため原料ジェット表面の乱れが少なく、そのため、得られる紙の表面性が良好である。また、ギャップフォーマ型抄紙機では紙層の両側から脱水されるために、得られる紙の表裏差が小さいという利点がある。
【0004】
その一方で、紙料濃度が極めて低い段階から紙層の両側から急激に脱水されるため、紙層中の填料分布が表層部へと偏りがちである。そのため、ギャップフォーマ型抄紙機により製造された電子写真用転写紙をコピー機で使用すると、表層の填料の脱落などによりコピー機内部で紙粉が多く発生し、コピー機の故障や用紙の搬送不良、さらには印字不良が生じ易いという課題があった。ギャップフォーマ型抄紙機により製造された電子写真用転写紙や連続記録用紙については、印字面の画質や通紙性の向上を目的とした技術が提案されているものの、紙粉の発生抑制について充分な解決策を提供するものではない(特許文献1、2)。
【0005】
紙粉の抑制については、サイズプレスで澱粉などの表面塗工剤を塗布することが有効であることが知られている。紙粉の抑制効果は、塗工剤の種類が同じであれば、塗布する塗工剤の量にほぼ比例する。したがって、紙粉の抑制という観点からは、多量の塗工剤を塗布できる2ロールサイズプレスが好ましいが、2ロールサイズプレスでは使用できる抄速が低く、高速で抄紙したい場合には不適である。高速抄紙に使用可能なサイズプレスとして、ロッドメタリングサイズプレスやゲートロールコータなどのフィルム転写型サイズプレスがあるものの、塗布量が2ロールサイズプレスと比べて低くなるため、紙粉の抑制という観点からは十分であるとは言いがたい。
【0006】
このように、特に、高速・高灰分という製造条件においては、紙粉の発生抑制のさらなる改善を始めとする品質向上が求められていた。
【特許文献1】特開2000−39736号公報
【特許文献2】特開平6−128898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ギャップフォーマ型抄紙機を用いて、特に高速抄紙速度において、印字時の紙粉の発生が少ない電子写真用転写紙を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題につき鋭意検討した結果、本発明者らは、特定のギャップフォーマ型抄紙機を用い、一定のパルプ原料とカチオン化澱粉とを添加した場合に、複写機内部で発生する紙粉の量が少なく、層間強度が高く、良好な電子写真用転写紙が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ロールアンドブレードフォーマ方式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて、中性抄紙法により電子写真用転写紙を製造する方法であって、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が全パルプ中の40重量%以上含み、カチオン化澱粉を0.3%以上添加した紙料を抄紙する方法である。
【0010】
本発明により、紙粉の発生量が少ない電子写真用転写紙が得られる理由については定かでなく、これに拘束されるものではないが、本発明によるとフィブリル化した微細繊維が表層に留まり、紙層内の微細繊維のネットワークが密になるため、紙の表層からの紙粉の脱落が減少し、コピー複写機内部で発生する紙粉量が減少するものと推察される。また繊維のネットワークが密になることで、紙料の歩留まり等が向上するものと思われる。
【発明の効果】
【0011】
ロールアンドブレードフォーマ方式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて中性抄紙法により電子写真用紙を抄造する場合において、本発明を実施することにより、特に1300m/分以上の高速で操業しつつ、コピー機、レーザープリンターなどの複写機内部で発生する紙粉を抑制することができ、更に、歩留まり、地合が良好な電子写真用転写紙を得ることができる。特に紙中填料率が高い電子写真用紙の抄造において、本発明を好適に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ロールアンドブレード方式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて中性抄紙法により電子写真用転写紙を製造する方法であって、広葉樹機械パルプ(LBKP)が全パルプ中の40重量%以上含み、カチオン化澱粉を0.3%以上添加する製造方法である。
【0013】
本発明においてロールアンドブレードフォーマ方式のギャップフォーマ型抄紙機とは、いわゆるフォーミングロールによる初期脱水の直後に脱水ブレードによる脱水機構を有したギャップフォーマ型抄紙機のことである。ギャップフォーマ型抄紙機においては、いわゆるトップワイヤとボトムワイヤとが同規模の大きさであり、インレットから吐出された紙料が2枚のワイヤ間に供給され、紙の両側のワイヤから同時に脱水され、紙層が形成される。
【0014】
上述したように、比較的高速での運転が可能なギャップフォーマ型抄紙機を用いて電子写真用紙を抄造する場合、フォーマ部において紙層の両側から脱水が行われるために紙面の表裏差は良好となるものの、紙表層部へ灰分が局在化し、コピー機を始めとする印刷機内部での紙粉発生量の増加が問題となる。本発明の電子写真用紙の製造方法によれば、フォーマ部がギャップ形式である抄紙機を用いた場合でも紙粉の問題が生じない電子写真用転写紙を製造することができる。
【0015】
本発明は、中性抄紙条件で製造され、pH5.5〜8.5の範囲で行われ、好ましくはpH6.0〜8.0で行われる。
本発明において電子写真用転写紙とは、コピー機、レーザープリンターなどで使用されるために製造された用紙を意味し、PPC用紙などともいわれるものである。通常、コピー機等においては、感光体上にトナー画像を形成し、それを用紙へ転写、熱等によって定着させてハードコピーを得る。したがって、電子写真用転写紙においては、トナーの紙表面への定着性を高めるため用紙表面の電荷が調整されており、また、コピー機内の熱で用紙がカールしないように用紙の繊維配向が調整されていることが一般的である。本発明の製造方法により抄造される電子写真用転写紙の坪量は特に限定はないが、通常50〜80g/m程度であり、好ましくは50〜70g/mである。
【0016】
本発明においては、原料のパルプとしてLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を全パルプ中の40重量%以上使用することにより、コピー時の紙粉等を抑えることできる。また、好ましくは、LBKPの配合量は60重量%以上である。LBKPは叩解を受けることで繊維がフィブリル化し、カチオン化澱粉等を介して緻密なネットワークを形成することができる。LBKPが40重量部未満になると、十分なネットワークが形成できなくなり、灰分の補捉が困難になり、紙粉抑制効果が低下する。
【0017】
本発明においては、カチオン化澱粉を0.3%以上紙料に添加する。カチオン化澱粉の添加量は、固形分重量当たり0.3〜3.0%であり、0.3〜2.0%が好ましく、0.3〜1.5%がより好ましい。カチオン化澱粉の添加量は、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.7%以上である。カチオン化澱粉の添加量が0.3%未満であると、十分な繊維とのネットワークを形成できず、紙粉の抑制効果が劣る。3.0%を超えて添加すると、紙粉抑制効果は高くなるが、ワイヤ上での濾水性やプレスでの搾水性が悪化し、脱水不良や乾燥負荷の増大といった問題が発生する。
【0018】
本発明の製造方法で使用するカチオン化澱粉は、3級アミン系、4級アンモニウム系のカチオン化澱粉であってよい。該カチオン化澱粉の電荷密度は特には限定されない。
本発明の製造方法は、抄紙速度が高速である上記ギャップフォーマ型抄紙機を用いる製造方法である。本発明において、抄紙速度が高速とは、1300m/分以上であり、好ましくは1500m/分以上、さらに好ましくは1600m/分以上であり、2500m/分程度でも抄造可能である。高速抄紙においてはフォーマ部で強力な脱水が行われるため、紙表層部へ灰分が局在化し、製造された紙は印字時に紙粉が発生しやすくなることが特に問題とされていたところ、本発明の製造方法を適用すれば、このような紙粉の問題を解決することができる。したがって、本発明の方法は、高速抄紙に極めて好適に適用することができる。
【0019】
本発明で製造される電子写真用転写紙のパルプ原料は、上記したようにLBKPをパルプ中の40重量%以上使用する以外は特に限定されず、用紙の抄紙原料として一般的に使用されるものを適宜使用することができる。本発明においては、例えば、機械パルプ(MP)、脱墨パルプ(DIP)、クラフトパルプ(KP)など、印刷用紙の抄紙原料として一般的に使用されているものを使用でき、適宜、これらの1種類または2種類以上を配合して使用することができる。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプであれば良く、特に限定はないが、本発明においては、脱墨パルプがパルプ中の10重量%以上配合しても効果を発揮することができる。クラフトパルプとしては、公知のものを使用することができ、特に、針葉樹クラフトパルプが好適である(NKP)。
【0020】
また、本発明においては、パルプの電荷を調整する目的で、無機または有機凝結剤を添加しても良く、特に、脱墨パルプや機械パルプを用いる場合、無機または有機凝結剤の添加が好ましい。凝結剤としては、硫酸アンモニウム、ポリアクリルアミド、ポリダドマック、ポリアミン、ポリエチレンイミン、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド重合体及び変性ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン等が用いられ、凝結剤の使用量としては、対パルプに対して10〜300ppmで処理することが好ましい。
【0021】
凝結剤は脱墨パルプや機械パルプなどのパルプ単体に添加するか、パルプが混合された後に添加することが好ましい。脱墨パルプや機械パルプは強い負電荷を持つ粒子(アニオントラッシュ)を含有しており、これらのアニオントラッシュが、正電荷を有するカチオン化澱粉や歩留剤に作用し、その効果を減少させてしまう。従って、強い正電荷を有する凝結剤にてアニオントラッシュの負電荷を中和することで、本発明におけるカチオン化澱粉の効果が発揮されやすくなり、紙粉が減少し、歩留が向上する。本発明の好ましい態様においては、凝結剤で処理した脱墨パルプが10%重量以上、より好ましくは10〜50重量%使用される。
【0022】
本発明で製造される電子写真用転写紙の紙中灰分で示される紙中填料率は1〜40固形分重量%である。電子写真用転写紙においては、印字が裏面に透けてしまう裏抜けに対する改善要望が年々高まっているが、裏抜けの改善には紙中の填料率の増加が大きく寄与する。しかしながら、コピー機などの複写機内における紙粉については、紙中填料率が上昇するほど発生量が増加する。したがって、紙中填料率が高い電子写真用紙の製造に本発明を適用すると、紙粉発生を効果的に抑制できるため好適である。この観点から、本発明の製造方法は、紙中填料率が高い条件で行われる。具体的には、紙中填料率が8固形分重量%以上であることが好ましく、10〜30固形分重量%がより好ましく、10〜20固形分重量%がさらに好ましい。なお、本発明における紙中填料率の測定方法は、実施例に記載する。
【0023】
本発明で使用される填料は公知のものを任意に使用でき、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱産による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素―ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用又は併用できる。なお、炭酸カルシウム−シリカ複合物としては、特開2003−212539号公報や特願2004−27483号に記載の複合物を例示できる。炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムーシリカ複合物が好ましく使用される。
【0024】
上述したように、本発明においてはカチオン化澱粉が紙料に0.3%以上添加されるが、カチオン化澱粉以外の内添薬品としては、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、染料、中性サイズ剤などの薬品を必要に応じて使用しても良い。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミドなどが挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法において歩留り向上剤を使用する場合、公知の歩留り向上剤を任意に使用できるが、高い微細繊維の歩留を求める場合は、極限粘度法による重量平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリアクリルアミド系物質を用いるのが好ましく、より好ましくは2000万以上である。この範囲の歩留まり剤を用いることにより、歩留まりが向上し、紙粉をより抑えることができる。このカチオン性ポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特に限定はないが、電子写真用転写紙の紙料には塗被液由来のアニオン性物質が多く含まれるためにそのカチオン要求量は極めて高いので、歩留りを高める観点からカチオン電荷密度は高いほうが良く、具体的には1.5meq/g以上が好ましく、2.0meq/g以上がより好ましく、電荷密度の上限としては20.0meq/g程度である。
【0026】
また、歩留りを高める目的で、本発明の効果を損なわない範囲で、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウムなどの無機凝結剤を併用しても良い。
抄紙機前処理工程では、パルプ原料と内添抄紙薬品をミキサーで混合した紙料に、ファンポンプの前でフレッシュ填料が添加され、均一混合されるのが通常である。従って、歩留剤の添加場所は、この填料添加後〜抄紙機ストックインレット前の間が好ましい。
【0027】
歩留剤の添加量は、紙料の性状や抄紙速度に応じて適宜決定されるので一概には言えないが、通常は、紙料固形分重量当たり50〜750ppmであり、50〜600ppmが好ましく、100〜600ppmがより好ましく、100〜500ppmが更に好ましい。歩留剤の添加量が50ppm未満であると、電子写真用転写紙の地合は良好であるが、微細成分の充分な歩留りが得られない。750ppmを超えて添加すると、微細成分の歩留りは高くなるが、地合が悪化し、地合ムラに起因する印字ムラ、裏抜けなどの問題が発生する。
【0028】
本発明の製造方法におけるフォーミングパートはロールアンドブレード形式のギャップフォーマであり、最初の脱水はバキュームを有したフォーミングロールのラップエリアで行われ、その直後に加圧ブレードモジュールによるブレード脱水が行われる。この機構より従来のフォーマよりも緩慢な脱水が可能となるため、紙層構造や地合が均一なため相関強度が良好で、コピー時の紙粉をより抑制できる電子写真用転写紙が得られる。この時に使用されるフォーミングロールの径は、十分な抱き角度を得ることができ、脱水の調整を十分にして、上述の効果をより得るために1500mm以上が望ましい。ブレード圧等の脱水条件としては特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。フォーミングロールやブレードによる脱水機構に加えて、その後段にサクションユニットやハイバキュームサクションボックスなどの脱水装置を適宜用いることでドライネスの調整を行うことができる。
【0029】
本発明の製造方法におけるプレスパートは、シュープレスを用いることが好ましく、抄紙速度が高速の場合、より好ましくは2段以上で処理することによりプレス後のドライネスを向上できることから、層間強度や裂断長などの強度が向上し、コピー時の紙粉をより抑えることができる。本発明のシュープレスは回転駆動するプレスロールと油圧で押し上げる加圧シューの間を通紙させるもので、フェルトと加圧シューの間にスリーブを走行させるタイプである。プレス圧はプレス出口水分や表裏差を加味して適宜調整できる。
【0030】
抄紙機プレドライヤー、アフタードライヤーも公用の装置を用いることができ、乾燥条件も特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。
本発明の電子写真用転写紙においては、表面強度の強化等を目的とした表面処理剤の外添塗工をクリアー塗工することが好ましい。塗工する薬剤は、生澱粉や、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、熱変性澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉等の変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール等の変性アルコール、スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等を単独又は併用する。また、外添塗工の薬剤は前記の薬剤以外に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物等一般的な表面サイズ剤を併用塗工することができる。
【0031】
また、本発明の電子写真用転写紙では、電気抵抗性をコントロールするために、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機導電剤やジメチルアミノエチルメタアクリレート等の有機導電剤を外添で塗工することができるが、その場合の塗工剤や塗工量は適宜調製されるものもある。これらの表面塗工剤は、原紙片面当たり0.5〜3.0g/m2が好ましい。また、本発明においては、表面性や品質等を向上させるため、クリアー塗工液の他に、顔料と接着剤を含有する顔料塗工液を塗工することもできる。
【0032】
上述の表面塗工剤を塗工する装置としては、ロッドメタリングサイズプレスコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータ、ゲートロールコータ、2ロールサイズプレスが使用できるが、特に高速時における層間強度向上の点からロッドメタリングサイズプレスコータを使用することが好ましい。澱粉が固形分で50%以上含み主成分であるクリアー塗工液をロッドメタリングサイズプレスで塗工する場合、ロッドの溝幅は0.3mm以下であることが、ミストが発生しないため、操業性の点から好ましい。
【0033】
本発明の電子写真用転写紙の製造法では、表面塗工剤を塗布、乾燥後、コピー機での印字に適した紙厚、平滑性を得るために、カレンダー処理をしてもよい。カレンダー装置の種類と処理条件は特に限定はなく、金属ロールから成る通常のカレンダーやソフトニップカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどの公用の装置を適宜選定し、用紙の品質目標値に応じて、これらの装置の制御可能な範囲内で条件を設定すれば良い。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。
【0035】
以下の実施例及び比較例に用いた測定項目の測定方法を次に示す。
測定方法
(1)紙粉評価
コピー機による印字試験で、紙粉量の測定を行った。紙粉量の評価方法は、富士ゼロックス製複写機(Vivace555)を用い、A4横目通紙で55枚/分の速度でモノクロ印字を行い、1000枚印字した時にコピー機内に堆積する紙粉の重量測定を行った。
(2)紙中灰分(紙中填料率)の測定
JIS P8251に基づいて測定を行った。
(3)歩留りの測定方法
ストックインレット原料とワイヤを抜け落ちた白水(ワイヤ下白水と記述する)について、それぞれ固形分濃度と灰分濃度を測定した。下記式(1)により紙料歩留りを、下記式(2)により灰分歩留りを測定した。
【0036】
紙料歩留り=100×(A−B)/A …計算式(1)
A:ストックインレット原料の固形分濃度(g/l)
B:ワイヤ白水の固形分濃度(g/l)
灰分歩留り=100×(C−D)/C …計算式(2)
C:ストックインレット原料の灰分濃度(g/l)
D:ワイヤ白水の灰分濃度(g/l)
・灰分濃度の測定:ストックインレット原料とワイヤ白水について、その固形分を525℃で灰化した。
(4)紙の地合の測定方法
紙の地合は野村商事(株)製の地合計FMT-III(光透過光変動法)により評価した。なお、測定値が小さい程、地合は良好であることを示す。
【0037】
電子写真用転写紙の抄造
(1)抄紙機
フォーミングロールによる初期脱水の直後に脱水ブレードによる脱水機構を有したロールアンドブレードフォーマ形式のオンマシンギャップフォーマ型抄紙機。
(2)パルプ原料配合
広葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=450ml)、針葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=600ml)1、脱墨パルプ(濾水度CSF=240ml)を実施例、比較例のとおり配合した。
(3)紙中填料
ロゼッタ型軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm)を使用し、目標の紙中灰分となるように添加量を適宜調整した。
【0038】
実施例1
広葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=450ml)90%、針葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=600ml)10%を混合したパルプスラリーに、紙中灰分が12%となるように填料を混合した紙料に、内添用紙力向上剤のカチオン化澱粉(日本コーンスターチ製、Cato304)を紙料固形分重量当たり0.7%添加し、極限粘度法による重量平均分子量が2,000万のカチオン性ポリアクリルアミド系歩留まり剤(ソマール株式会社製、リアライザーR300、カチオン電荷密度1.96 meq/g)を紙料固形分重量当たり200ppm添加し、フォーミングロール径が1600mmであるロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて抄紙速度1700 m/分で抄紙し、表面紙力剤として熱変性澱粉を1.5g/m、及び塩化ナトリウム(導電剤)を0.05g/mを、ロッドメタリングサイズプレス(ロッドの溝幅0.1mm)にて塗工・乾燥した後、カレンダーで処理し、坪量64 g/m2、紙中灰分15%の電子写真用転写紙を作成した。
【0039】
実施例2
実施例1のパルプ配合を、広葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=450ml)60%、針葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=600ml)10%、凝結剤(片山ナルコ製、N7527)をパルプ固形分重量当たり100ppm添加して処理した脱墨パルプ(濾水度CSF=240ml)30%、とした以外は、実施例1と同様に電子写真用転写紙を得た。
【0040】
比較例1
実施例1のカチオン化澱粉の添加率を0.2%とした以外は、実施例1と同様に電子写真用転写紙を得た。
【0041】
比較例2
実施例2のカチオン化澱粉の添加率を0.2%とした以外は、実施例2と同様に電子写真用転写紙を得た。
【0042】
比較例3
実施例1のパルプ配合を、広葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=450ml)30%、針葉樹クラフトパルプ(濾水度CSF=600ml)10%、脱墨パルプ(濾水度CSF=240ml)60%、とした以外は、実施例1と同様に電子写真用転写紙を作成した。
【0043】
比較例4
実施例1の抄紙機を、ブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて抄紙速度1,500m/分とした以外は、実施例1と同様に電子写真用転写紙を作成した。
【0044】
表1および表2に結果を示す。実施例1、2は、紙粉の発生が少なく、歩留まりや地合についても良好な電子写真用転写紙が得られた。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
実施例1、2と比較例1、2との比較から、カチオン化澱粉の添加率が高くなると紙粉の発生量が減少し、歩留まりが良好であることが示された。紙粉の脱落が減少する理由は定かではないが、カチオン化澱粉により、歩留まりが向上し、紙層内の微細繊維のネットワーク構造が密になり、表層からの紙粉の脱落が抑制されたためと推測される。
【0048】
また、実施例2と比較例3の比較から、用紙を構成するLBKPの比率が低くなると、表層からの紙粉の脱落が増加し、歩留まりも劣っていることがわかる。LBKPの比率が低くなると紙粉量が増加する理由は定かではないが、フィブリル化した微細繊維が減少し、紙層内の微細繊維のネットワークが不十分になったため、紙粉量が増加したものと推測される。比較例4ではブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機を用いているが、紙層中の灰分の局在が顕著になっており、紙粉が増加し、歩留まり、地合も低くなっている。
【0049】
本発明を実施することにより、ギャップフォーマ型抄紙機を用いて高速、高灰分条件において中性抄紙法により電子写真用紙の製造を行う場合に、紙粉発生量の少ない電子写真用紙の製造を安定して行える。したがって、本発明の効果は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーミングロールによる初期脱水の直後に脱水ブレードによる脱水機構を有したロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機を用いて中性抄紙法により電子写真用転写紙を製造する方法であって、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が全パルプ中の40重量%以上であり、カチオン化澱粉が固形分重量当たり0.3重量%以上添加した紙料を抄紙する電子写真用転写紙の製造方法。
【請求項2】
抄紙速度が1300m/min以上である、請求項1記載の電子写真用転写紙の製造方法。
【請求項3】
紙中灰分が8%以上である、請求項1または2に記載の電子写真用転写紙の製造方法。
【請求項4】
脱墨パルプが全パルプの10重量%以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真用転写紙の製造方法。
【請求項5】
使用される原料パルプに、凝結剤で処理した脱墨パルプが10重量%以上含まれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真用転写紙の製造方法。
【請求項6】
極限粘度法による重量平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリアクリルアミド系歩留まり向上剤を紙料に添加して抄紙する、請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真用転写紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−52162(P2009−52162A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218785(P2007−218785)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】