説明

電子制御装置

【課題】組立工程を簡略化し、且つ、放熱性を向上させた電子制御装置を得る。
【解決手段】片面又は両面に分散して配置された複数の電子部品3、4と、1つ以上のコネクタが実装された電子回路基板2を有し、電子回路基板をカバー7及びベース8の筐体部材から成る筐体内に収容した電子制御装置において、一部、又は全ての電子部品3、4の上面、及び投影領域に当たる基板の反搭載面側、の両方に中間介在物11を配置し、筐体部材7、8の一部を中間介在物11に密着させて電子回路基板2の両面を中間介在物および筐体部材により挟み込んだ構造とし、且つ電子回路基板周囲の端面を筐体部材により挟み込んだ構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品を電子回路基板(プリント基板)に実装し、その電子回路基板を筐体内に収納した電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輌などの制御に用いられる電子制御装置(以下、ECUともいう。)は、一般的に入出
力回路、通信回路、マイコン、電源回路などの電子部品が基板上に配置され、筐体に収容される構造となっている。
ECUを構成する電子部品は回路動作に従って発熱し、大電流が流れる回路などによって
は、場合により放熱対策を行わなければ回路および回路素子の破損に至る場合がある。
このため、種々の放熱対策が実施されているが、特に高発熱の電子部品の放熱方法としては、特許文献1あるいは特許文献2に示すように、電子部品上面あるいはその投影領域
に当たる反実装面を、熱伝導体などを介して金属製の筐体と接触させて放熱する構造が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許 第440759号公報
【特許文献2】特開2003−289191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように基板上の電子部品を筐体部材に接触させることで放熱を行う手法は、高発熱の電子部品の放熱手法としてはきわめて有効であるものの、このような構造にて放熱を行う場合は、熱伝導薄膜層と金属筐体間の密着度を上げるためねじ止めにて組立が行われるため、使用部品点数の増加、製造工程の複雑化が問題となるものであった。
【0005】
この発明は、上記のような従来の電子制御装置における課題を解決するためになされたものであって、組立工程を簡略化して低コスト化を可能にする共に、放熱性を向上させることができ、その結果、装置の小型軽量化を実現することの出来る電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電子制御装置は、片面あるいは両面に分散して配置された複数の電子部品と、1つ以上のコネクタが実装された電子回路基板を有し、前記電子回路基板をカバー
およびベースの筐体部材から成る筐体内に収容した構造の電子制御装置において、一部、または全ての前記電子部品の上面および投影領域に当たる基板の反搭載面側の両方に中間介在物を配置し、前記筐体部材の一部を前記中間介在物に密着させて前記電子回路基板両面を前記中間介在物および前記筐体部材により挟み込んだ構造とし、且つ前記電子回路基板周囲の端面を前記筐体部材により挟み込んだ構造としたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の電子制御装置によれば、筐体の組立にねじを使用しないことにより組立工程を簡略化することができ、工程削減による低コスト化と、基板の単位面積当たりの電子部品の放熱性を向上させることができ、その結果、装置の小型軽量化を実現することの出来る電子制御装置を得ることができるものである。
【0008】
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1の電子制御装置の外観図である。
【図2】この発明の実施の形態1の電子制御装置の内部構造を模式的に示した分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1の電子制御装置の要部断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1の電子制御装置における、カバーの形状及び電子部品と密着した状態の一例を示す要部断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における基板上における電子部品の分散配置の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1の電子制御装置におけるカバーとベースの接合方法の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における、コネクタ部分のコネクタ保持部材とカバーとベースの接合方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下に、この発明の実施の形態1の電子制御装置について、図1〜図7を参照して詳述する。なお、各図中、同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。
図1は電子制御装置(以下、ECUともいう。)1の外観を表す斜視図、図2は電子制御装
置の内部構造を模式的に示した分解斜視図であり、図2に示すように、ECU1は、電子回
路基板(以下、単に基板ともいう。)2に、発熱する電子部品(以下、発熱部品ともいう。)3、およびその他の電子部品4が複数実装されており、さらにECU1と他の入出力装置(図示せず)を接続するための、一体または別体のコネクタ保持部材14を取り付けたコネクタ5が実装され、サーキットアセンブリ6を構成している。
【0011】
なお、本実施の形態1においては、発熱部品3およびコネクタ5はすべて基板2の同一平面上に実装されており、その他の部品4は基板2の両面に実装されているものとする。ここで発熱部品3、コネクタ5およびその他の部品4が実装されている面を搭載面、その他の部品4のみが実装されている面を反搭載面とする。なお、実際は本実施の形態1において定義する反搭載面側に発熱部品3が実装されている場合においても同様の考え方で容易に実施可能であることは言うまでもない。
【0012】
サーキットアセンブリ6は、搭載面側をカバー7、反搭載面側をベース8からなる筐体にて覆われており、カバー7とベース8の接合面およびコネクタ保持部材14との界面をそれぞれ接合する。カバー7およびベース8は放熱性を考慮すると金属などの熱伝導率が高い素材が望ましいが、主として基板の保持を目的とし、放熱性能を不要とするのであればその他の素材で実施してもなんら問題はない。
【0013】
図3および図4はECU1の断面構造の一部をあらわしており、ここでは基板2の保持に
ついて詳細に説明する。
図3において、発熱部品3は基板2上に実装されている。また、発熱部品3の投影面の反搭載面側は放熱性を最も重視する場合は、図3(a)に示すように銅箔などにより構成される、いわゆる放熱用パターンであるところの熱伝導薄膜層9を配置し、スルーホール10などによって搭載面と反搭載面を相互に接続し、発熱部品3の熱を反搭載面に導く構成が望ましい。一方、それほど放熱性を重視しない場合は、図3(b)に示すようにスルーホール10および熱伝導薄膜層9は設けなくともよい。また、ECUの小型化を最も重視する場合は、図3(c)のように反搭載面にその他の部品4を実装する構成も考えうる。
【0014】
発熱部品3の上面、および発熱部品3の投影面の反搭載面側には、絶縁性と柔軟性を有する熱伝導体11を配し、さらに、発熱部品3の投影面に当たる部分をECU内部方向に突
出させたカバー7およびベース8を、基板2を挟み込む形で配置する。
熱伝導体11は発熱部品3が発生した熱を効率よくカバー7とベース8からなる筐体に導く役割および、筐体とサーキットアセンブリ6の間にあって、相互を密着させ筐体内のサーキットアセンブリ6、ひいては基板2を保持する役割を有する。
【0015】
また、図3(a)のように、基板2の周囲についても直接あるいは接着剤12や熱伝導体などの中間介在物を介してカバー7およびベース8によって挟み込むことにより、さらに保持点とする。なお、この基板周囲の保持点は、図5の電子部品の分散配置図に記載する基板2のハンチング部分15のように、基板周囲の一部に設ける方法や、基板周囲の全体に設ける方法が考えられる。
また、カバー7およびベース8の形状については、図4に示すように、部品高さとの兼ね合いやECU薄型化の要請により、カバー7を突出させずに挟み込む構造、カバー7をECU外部方向に突出させて挟み込む構造などが考えられる。
【0016】
さらに、図2および図5に示すように、基板2上の発熱部品3の配置を、中心部および外周部に分散させて配置することにより、基板2の保持を均等に行うことが可能となる。
【0017】
カバー7とベース8、およびコネクタ5の接合は、図2および図3に示すように、接着剤12などにより行う。コネクタ5には一体型または別体のコネクタ保持部材14を設けており、図7(a)の正面図および(b)の側面図に示すように、コネクタ保持部材14の周囲を接着剤12およびカバー7、ベース8にて挟み込む構造とする。また、このときコネクタ保持部材14のカバー7およびベース8との接触面を幅広く取ることにより保持力の向上が可能である。
【0018】
また、カバー7とベース8の接合に関しては、接着剤を使わず、図6(a)に示すように、パッキン13と筐体曲げ加工によるカシメにて接合を行う方法、さらに、防水性を必要としない場合は、図6(b)に示すように、カシメのみにて行う方法も考えられる。
また同様に、コネクタ保持部材14とカバー7、ベース8の接合についても、接着剤のみならずパッキン、柔軟性を持つ中間介在物などを介して行ってもよく、さらに、防水性を必要としない場合は、コネクタ保持部材14、カバー7、ベース8のそれぞれの接合部分に凹凸部を設けて位置決めを行い、その他の介在物を介することなく勘合させてもよい。当然のことであるが、これらの方法を相互に組み合わせて実施してもなんら問題はない。
【0019】
以上のように、この発明の実施の形態1の電子制御装置によれば、筐体、熱伝導体により基板を複数点において上下から挟み込むことで基板の保持が可能となり、従来構造のようにねじ等を用いて基板を保持する必要がなくなることにより、組立工程を簡略化することができ、部品点数の低減、工程数の削減によるコスコストダウンの効果が得られる。
また、発熱する電子部品の放熱を基板の搭載面側および反搭載面側の両方から行うことにより、基板の単位面積当たりの放熱性を向上させることが可能となり、放熱能力の向上による電子制御装置の小型軽量化を実現することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 電子制御装置(ECU)、2 電子回路基板、3 発熱する電子部品、
4 その他の電子部品、5 コネクタ、6 サーキットアセンブリ、7 カバー、
8 ベース、9 熱伝導薄膜層、10 スルーホール、11 熱伝導体、
12 接着剤、 13 パッキン、14 コネクタ保持部材、15 基板保持部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面あるいは両面に分散して配置された複数の電子部品と、1つ以上のコネクタが実装
された電子回路基板を有し、前記電子回路基板をカバーおよびベースの筐体部材から成る筐体内に収容した構造の電子制御装置において、一部、または全ての前記電子部品の上面および投影領域に当たる基板の反搭載面側の両方に中間介在物を配置し、前記筐体部材の一部を前記中間介在物に密着させて前記電子回路基板両面を前記中間介在物および前記筐体部材により挟み込んだ構造とし、且つ前記電子回路基板周囲の端面を前記筐体部材により挟み込んだ構造としたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記コネクタに設けたコネクタ保持部材を前記筐体部材によって挟み込んだ構造とすることによって、前記電子回路基板を多点にて保持する構造としたことを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記電子部品のうち、中間介在物および筐体にて挟み込みを行うものを少なくとも2箇所以上の基板周辺部、および1箇所以上の基板中央部に配置したことを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記中間介在物は、柔軟性、弾性、あるいは熱伝導性のいずれか1つ以上の特性を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249520(P2011−249520A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120537(P2010−120537)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】