電子制御装置
【課題】車両と歩行者との衝突判定精度の向上を図ることが可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】第1周期で受信した加速度データを低加速度データと判別し、前記第1周期より短い第2周期で受信した加速度データを高加速度データと判別する電子制御装置であって、処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データと、前記高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するデータ処理部を備える。
【解決手段】第1周期で受信した加速度データを低加速度データと判別し、前記第1周期より短い第2周期で受信した加速度データを高加速度データと判別する電子制御装置であって、処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データと、前記高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するデータ処理部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両が歩行者に衝突した場合、車両のフロントバンパと歩行者の下半身とが衝突するため、歩行者は車両のエンジンフード上に跳ね上げられて頭部を強打してしまい、深刻な傷害を負う恐れがある。近年では、歩行者との衝突が発生した場合に、エンジンフードの後端部を持ち上げることにより、エンジンフードとエンジンルーム内に配置された部品との間に空間を生じさせ、歩行者の頭部への衝撃を緩和する歩行者保護システム(いわゆるポップアップフードシステム)を搭載した車両も実用化されている。
【0003】
図9は、従来における歩行者保護システムの構成概略図である。図9(a)は、歩行者保護システムが搭載された車両100の側面図であり、図9(b)は、この車両100の上面図である。また、図9では、車両100としてフロントエンジンタイプの車両を想定しており、エンジンルーム上にはエンジンフード130が開閉自在に設けられている。
【0004】
この図9に示すように、歩行者保護システムは、車両100におけるフロントバンパ110の車幅方向に沿って左側、中央、右側の各々に設置された3つの歩行者衝突センサ(PCS:Pedestrian Crash Sensor)10L、10C、10Rと、車両100の前輪120に設置された車速センサ20と、ECU(Electronic Control Unit)30と、エンジンフード130の後端部を持ち上げるためのパワーユニット80とから構成されている。
【0005】
フロントバンパ110の内部には、バンパビーム140と、歩行者脚部保護用のセーフティプレート150とが設けられており、PCS10L、10C、10Rは、セーフティプレート150の下部に設置されている。一般的にフロントバンパ110は樹脂製であるが、セーフティプレート150は衝突時に変形して衝突エネルギーを吸収しやすいような形状(例えば図9(a)に示すような「くの字」型)に成形された鉄板が用いられる。
【0006】
図10に示すように、各PCS10L、10C、10Rは、高感度(例えば±100G)の衝突検出用の加速度センサ(HiGセンサ)11と、低感度(例えば±1.5G)のフロントバンパ110の傾き角度検出用の加速度センサ(LoGセンサ)12と、LoGセンサ12の出力信号を80ms周期でデジタル変換して加速度データ(LoGデータ)を生成すると共に、HiGセンサ11の出力信号が閾値を越えた場合に、その出力信号を250μs周期でデジタル変換して加速度データ(HiGデータ)を生成するマイコン13と、当該マイコン13とECU30との間でシリアルデータの通信を行う通信IC14とを備えている。
【0007】
図11は、HiGセンサ11及びLoGセンサ12の出力信号と、通信IC14からECU30へ送信されるシリアルデータ(換言すればECU30で受信されるシリアルデータ)の時間的関係を示すタイミングチャートである。この図11に示すように、ECU30で受信されるシリアルデータには、80ms周期で通信されるLoGデータと、HiGセンサ11の出力信号が閾値を越えた場合に、250μs周期で連続通信されるHiGデータとが含まれている。なお、上記シリアルデータにおいて、LoGデータやHiGデータが通信されない期間では、ノーコードデータ(無効データ)が通信される(この他、あるタイミングでエラーコードデータが通信される場合もある)。
【0008】
このようにPCS10L、10C、10RからECU30へ送信されるシリアルデータには、LoGデータとHiGデータとの2種類のGデータが含まれるが、両者を区別するためのユニークコード等の識別情報は含まれていない。そこで、ECU30は、LoGデータとHiGデータとの受信周期の違いを利用して2種類のGデータを判別する。つまり、ECU30は、80ms周期で受信したGデータをLoGデータと判別し、250μs周期で受信したGデータをHiGデータと判別する。
【0009】
そして、ECU30は、LoGデータに基づいてフロントバンパ110の傾き角度を監視する一方、HiGデータと車速センサ20から送信される車速データに基づいてパワーユニット80を制御することで、エンジンフード130のポップアップ動作を制御する。具体的には、ECU30は、車速が一定速度(例えば25km/h)以上であって、HiGデータが衝突判定閾値を越えた場合に歩行者との衝突が発生したと判定し、パワーユニット80を作動させてエンジンフード130をポップアップさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−248270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、従来のECU30は、80ms周期で受信したGデータをLoGデータと判別し、250μs周期で受信したGデータをHiGデータと判別していた。しかしながら、図12に示すように、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後にHiGデータの連続通信が開始された場合、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後に連続的に受信したGデータの内、最初に受信したGデータは80ms周期で受信されたためLoGデータと判別可能であるが、後続のGデータが250μs周期で受信されたため、結局、最初に受信したGデータの判別は不可能となる。
【0012】
図12に示すように、従来のECU30は、受信したシリアルデータをHiGデータの受信周期と同じ250μs周期でサンプリングし、処理単位時間である1ms毎に4個のサンプリングデータを1組のデータセットとしてグループ化し、1つのデータセット内において、上記の理由でLoGデータと判別可能なGデータ(最初のGデータ)と、HiGデータと判別可能なGデータ(後続のGデータ)とが混在する場合(パターンA〜Dのケースが考えられる)、最初のGデータの判別が不可能となるため、そのデータセットを無効データとして破棄していた。
【0013】
つまり、従来のECU30は、データセット内に存在する4個のサンプリングデータの全てがHiGデータと判別可能なGデータである場合のみ、そのデータセットを衝突判定用の有効データとして使用していた。この場合、図12のパターンA〜Cに示すように、1つのデータセット内に有効なHiGデータが存在するにも関わらず、そのデータセットを破棄してしまうことになり、衝突判定精度の低下を招く虞があった。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両と歩行者との衝突判定精度の向上を図ることが可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子制御装置は、第1周期で受信した加速度データを低加速度データと判別し、前記第1周期より短い第2周期で受信した加速度データを高加速度データと判別する電子制御装置であって、処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データと、前記高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するデータ処理部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る電子制御装置において、前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データから前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄した後、残った加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電子制御装置において、前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記低加速度データとして用いることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る電子制御装置において、前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記高加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電子制御装置によれば、処理単位時間内に取得した受信データ中に、低加速度データと判別可能な加速度データと、高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するため、従来のように、処理単位時間内に取得した受信データ中に存在する有効な高加速度データを破棄することなく、衝突判定に用いることができる。すなわち、本発明に係る電子制御装置によれば、車両と歩行者との衝突判定精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子制御装置(ECU30)のブロック構成図である。
【図2】本実施形態におけるGデータの判別原理に関する第1説明図である。
【図3】本実施形態におけるGデータの判別原理に関する第2説明図である。
【図4】ECU30のCPU47が実行するサンプリングデータ判別処理を表すフローチャートである。
【図5】ECU30のCPU47が実行するGデータ判別処理を表すフローチャートである。
【図6】ECU30のCPU47が実行するGデータ判別処理を表すフローチャートである。
【図7】Gデータ判別処理におけるステップS47の詳細処理を表すフローチャートである。
【図8】サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理の理解を容易にするためのタイミングチャートである。
【図9】従来における歩行者保護システムの構成概略図である。
【図10】歩行者保護システムで使用される歩行者衝突センサ(PCS)の内部構成図である。
【図11】PCSから送信されるシリアルデータに含まれるLoGデータ及びHiGデータに関する説明図である。
【図12】従来の問題点に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、本発明に係る電子制御装置として、図9に示した歩行者保護システムで用いられるECUを例示して説明する。ただし、図9のECU30と区別するために、本実施形態におけるECUの符号を40とする。
【0022】
図1は、本実施形態におけるECU40のブロック構成図である。この図1に示すように、ECU40は、通信インタフェース41、タイマ42、ROM(Read Only Memory)43、RAM(Random Access Memory)44、パワーユニット駆動回路46、及びCPU(Central Processing Unit)47を備えている。なお、図1では、図9に示したPCS10L、10C、10RをPCS10と総称している。
【0023】
通信インタフェース41は、PCS10とのシリアル通信を実現可能とするインタフェースである。具体的には、この通信インタフェース41は、PCS10から受信したシリアルデータを、CPU47から250μs周期で入力されるサンプリング要求に応じてサンプリングし、そのサンプリングデータをCPU47に出力する。なお、図11で説明したように、PCS10から送信されるシリアルデータには、80ms周期(第1周期)で通信されるLoGデータ(低加速度データ)と、HiGセンサ11の出力信号が閾値を越えた場合に、250μs周期(第2周期)で連続通信されるHiGデータ(高加速度データ)とが含まれている(ノーコードデータやエラーコードデータも含まれる)。
【0024】
タイマ42は、CPU47による制御に応じて計時動作を行うものであり、具体的には100msにセットされた受信周期カウンタのカウントダウンを行う。ROM43は、CPU47によって実行される制御プログラムや各種設定データを予め記憶している不揮発性メモリである。RAM44は、CPU47が制御プログラムを実行して各種動作を行う際に、データの一時保存先に用いられる揮発性のワーキングメモリである。パワーユニット駆動回路46は、CPU47から入力されるパワーユニット作動指令信号に応じて、パワーユニット80を作動させるための駆動信号を生成し、当該駆動信号をパワーユニット80に出力する。
【0025】
CPU47(データ処理部)は、ROM43に記憶されている制御プログラムに従って歩行者保護システムを統括制御するものである。具体的には、このCPU47は、通信インタフェース41から取得したサンプリングデータ(LoGデータやHiGデータ等)、及び車速センサ20から取得した車速データに基づいて、フロントバンパ110の傾き角度の監視、及び歩行者との衝突判定を行い、衝突が発生したと判定した場合にパワーユニット作動指令信号をパワーユニット駆動回路46に出力することで、パワーユニット80を作動させる。なお、フロントバンパ110の傾き角度の監視にはLoGデータが用いられ、歩行者との衝突判定にはHiGデータ及び車速データが用いられる。
【0026】
詳細は後述するが、このCPU47は、通信インタフェース41から250μs周期で取得したサンプリングデータを、処理単位時間である1ms毎にグループ化することで、4個のサンプリングデータを1組のデータセットとし、処理単位時間毎に得られるデータセット内に含まれるサンプリングデータが、加速度データ(以下、Gデータと称す)なのか、ノーコードデータなのか、或いはエラーコードデータなのかを判別するためのサンプリングデータ判別処理を行う。
【0027】
さらに、このCPU47は、処理単位時間毎に実行される(つまり1ms周期で実行される)上記サンプリングデータ判別処理の結果と、タイマ42の計時結果(つまり受信周期カウンタの残り時間)とに基づき、現在のデータセットに存在するGデータがLoGデータなのか、或いはHiGデータなのかを判別するためのGデータ判別処理を行う。つまり、このGデータ判別処理も処理単位時間毎に実行される(つまり1ms周期で実行される)処理である。
【0028】
次に、上記のように構成された本実施形態におけるECU40の動作、特にCPU47が実行するサンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理について詳細に説明する。
まず、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理の詳細説明に入る前に、その前提として、本実施形態におけるGデータの判別原理について説明する。
【0029】
図2は、HiGセンサ11及びLoGセンサ12の出力信号と、ECU40で受信されるシリアルデータの時間的関係を示すタイミングチャートである。ここで、図2に示すように、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後にHiGデータの連続通信が開始された場合を想定する。つまり、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後に連続的に受信したGデータの内、最初に受信したGデータは80ms周期で受信されたためLoGデータと判別可能であるが、後続のGデータが250μs周期で受信されたため、結局、最初に受信したGデータの判別は不可能となる。
【0030】
本実施形態におけるCPU47は、1つのデータセット内に(つまり処理単位時間内に取得した受信データ中に)、上記の理由でLoGデータと判別可能なGデータ(最初のGデータ)と、HiGデータと判別可能なGデータ(後続のGデータ)とが混在する場合、LoGデータと判別可能なGデータ、つまり最初のGデータのみを破棄する。この時、図2中のパターンA〜Dのケースが考えられるが、データセット内に存在する有効なHiGデータを破棄することなく衝突判定に用いることができ、衝突判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0031】
図3は、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms未満でHiGデータの連続通信が開始された場合を想定したタイミングチャートである。この場合、最初のGデータはLoGデータと判別可能なGデータに該当せず、後続のGデータが250μs周期で受信されたことから、データセット内に存在するGデータは全てHiGデータと判別することができる。つまり、CPU47は、1つのデータセット内に、HiGデータと判別可能なGデータのみが存在する場合、それらGデータをHiGデータとして衝突判定に用いる。
【0032】
以上説明したGデータの判別原理を実現可能とする処理が、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理である。図4は、サンプリングデータ判別処理を表すフローチャートであり、図5及び図6は、Gデータ判別処理を表すフローチャートであり、図7は、Gデータ判別処理におけるステップS47の詳細処理を表すフローチャートであり、また、図8は、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理の理解を容易にするためのタイミングチャートである。
【0033】
既に述べたように、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理は、処理単位時間である1ms周期で実行されるものであるが、以下では、図8に示すように、前回の処理単位時間に取得されたデータセット内にLoGデータが存在し、このデータセット内の最後のサンプリングデータの取得完了タイミングから、タイマ42によって100msにセットされた受信周期カウンタのカウントダウンが開始される場合を想定する。なお、タイマ42は、1ms単位でカウントダウンを行うものとする。
【0034】
さて、図4に示すサンプリングデータ判別処理において、CPU47は、まず、Gデータ受信回数を「0」に初期化し(ステップS1)、変数nを「1」に初期化する(ステップS2)。そして、CPU47は、変数nが「5」より小さいか否かを判定し(ステップS3)、「Yes」の場合、n個目のサンプリングデータを取得する(ステップS4)。そして、CPU47は、n個目のサンプリングデータがノーコードデータか否かを判定し(ステップS5)、「Yes」の場合、変数nをインクリメントして上記ステップS3の処理に戻る(ステップS6)。
【0035】
一方、上記ステップS5において、「No」の場合、つまりn個目のサンプリングデータがノーコードデータではない場合、CPU47は、n個目のサンプリングデータがGデータか否かを判定する(ステップS7)。このステップS7において、「Yes」の場合、つまりn個目のサンプリングデータがGデータである場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「0」と等しいか否かを判定する(ステップS8)。
【0036】
CPU47は、ステップS8において「Yes」であれば、破棄候補GデータGsubとしてn個目のサンプリングデータ(Gデータ)を設定し(ステップS9)、一方、「No」であれば、ステップS10の処理に移行する。ここで、破棄候補GデータGsubとは、後述する図5のGデータ判別処理において、LoGデータと判別可能なGデータであり、且つ今回のデータセット内にHiGデータと判別可能なGデータが混在する場合に破棄されるGデータである。
【0037】
そして、CPU47は、Gデータ積算値Gsumにn個目のサンプリングデータ(Gデータ)を加算し(ステップS10)、さらに、Gデータ受信回数をインクリメントしてステップS6に移行する(ステップS11)。一方、上記ステップS7において、「No」の場合、つまりn個目のサンプリングデータがGデータではない場合、CPU47は、n個目のサンプリングデータがエラーコードデータであると判断し、エラーデータとしてn個目のサンプリングデータを設定してステップS6の処理に移行する(ステップS12)。
【0038】
上記ステップS3〜S12の処理は、上記ステップS3において「No」と判定されるまで繰り返される(つまり4回繰り返される)。これにより、今回のデータセット中に含まれる4個のサンプリングデータの判別が行われることになる。
【0039】
一方、上記ステップS3において、「No」の場合、つまり変数nが5になった場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「1」以上か否かを判定する(ステップS13)。このステップS13において、「Yes」の場合、CPU47は、Gデータ判別処理で使用する変数GaveとしてGデータ積算値Gsumを設定した後、サンプリングデータ判別処理を終了する(ステップS14)。一方、上記ステップS13において、「No」の場合、CPU47は、エラーデータが「0」か否かを判定し(ステップS15)、「Yes」であれば、変数GaveとしてGデータ積算値Gsumを設定した後、サンプリングデータ判別処理を終了し(ステップS16)、「No」であれば、そのままサンプリングデータ判別処理を終了する。
【0040】
以上のようなサンプリングデータ判別処理が1ms周期で繰り返されることにより、各データセット毎に、サンプリングデータの判別結果、Gデータ受信回数、破棄候補GデータGsub、変数Gave、及びエラーデータの各情報が得られることになる。
【0041】
続いて、図5に示すGデータ判別処理において、CPU47は、まず、Gデータ受信回数が「1」以上か否かを判定し(ステップS21)、「Yes」の場合、受信周期カウンタの残り時間が99msか否かを判定する(ステップS22)。このステップS22において、「Yes」の場合、つまり受信周期カウンタのカウントダウンが開始されてから1msが経過した場合(図8中のTA期間に該当する場合)であって、今回のデータセット内に存在する全GデータがHiGデータと判別可能である場合、CPU47は、HiG受信フラグをオンにセットしてステップS33の処理に移行する(ステップS23)。
【0042】
一方、上記ステップS22において、「No」の場合、CPU47は、受信周期カウンタの残り時間が15ms以上か否かを判定し(ステップS24)、「Yes」であれば、受信周期カウンタの残り時間が25ms以下か否かを判定する(ステップS25)。このステップS25において、「No」の場合、つまりカウントダウンが開始されてからの経過時間が1msより大きく、且つ75ms未満の場合(図8中のTB期間に該当する場合)であって、今回のデータセット内に存在する全GデータがHiGデータと判別可能である場合、CPU47は、HiG受信フラグがオフか否かを判定する(ステップS26)。
【0043】
このステップS26において、「Yes」の場合、つまりHiG受信フラグがオフの場合、CPU47は、HiG受信フラグをオンにし(ステップS27)、さらに、Gデータ受信回数を「4」にセットしてステップS33の処理に移行する(ステップS28)。一方、上記ステップS26において、「No」の場合、つまりHiG受信フラグがオンの場合、CPU47は、ステップS33の処理に移行する。
【0044】
また、上記ステップS25において、「Yes」の場合、つまりカウントダウンが開始されてからの経過時間が75ms以上85ms以下の場合(図8中のTC期間に該当する場合)であって、今回のデータセット内において最初に受信されたGデータ(破棄候補GデータGsub)がLoGデータと判別可能である場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「1」と等しいか否かを判定する(ステップS29)。なお、LoGデータの受信周期は80msであるが、マージンを考慮して75ms以上85ms以下の近似値に相当すれば、最初のGデータをLoGデータと判別可能とする。
【0045】
上記ステップS29において、「Yes」の場合、つまりGデータ受信回数が「1」と等しい場合(換言すれば、破棄候補GデータGsubをLoGデータと判別可能であり、且つ今回のデータセット内のGデータとして破棄候補GデータGsubしか存在しない場合)、CPU47は、実際にフロントバンパ110の傾き角度の監視に使用するLoG変数として破棄候補GデータGsubを設定し(ステップS30)、さらに、HiG受信フラグをオフにしてステップS33の処理に移行する(ステップS31)。
【0046】
一方、上記ステップS29において、「No」の場合、つまりGデータ受信回数が「2」以上の場合(換言すれば、破棄候補GデータGsubをLoGデータと判別可能であり、且つ今回のデータセット内にHiGデータと判別可能なGデータが存在する場合)、CPU47は、変数Gaveから破棄候補GデータGsubを減算し(つまりLoGデータと判別可能なGデータを破棄し)、減算後の値を新たな変数Gaveとした後、ステップS27の処理に移行する(ステップS32)。
【0047】
また、上記ステップS24において、「No」の場合、つまりカウントダウンが開始されてからの経過時間が85msを越えた場合(図8中のTD期間に該当する場合)、CPU47は、ステップS33の処理に移行する。
上記のような、図8中のTA期間、TB期間、TC期間、TD期間に該当するステップS22〜S32の実行後、CPU47は、エラーデータを「0」にリセットし(ステップS33)、さらに、タイマ42の受信周期カウンタをリセットしてステップS46の処理に移行する(ステップS34)。
【0048】
一方、上記ステップS21において、「No」の場合、つまりGデータ受信回数が「0」だった場合、CPU47は、図6のステップS35に移行し、受信周期カウンタの残り時間が「0」より大きいか否かを判定する(ステップS35)。このステップS35において、「Yes」の場合(図8中のTE期間に該当する場合)、CPU47は、エラーデータを受信したか否か(エラーデータが「0」以外か否か)を判定する(ステップS36)。CPU47は、上記ステップS36において「Yes」であれば、ノーコードデータを受信したか否かを判定し(ステップS37)、上記ステップS36において「No」であれば、図5のステップS46の処理に移行する。
【0049】
そして、CPU47は、上記ステップS37において「No」であれば、LoG異常コードを受信したか否かを判定し(ステップS38)、上記ステップS37において「Yes」であれば、図5のステップS46の処理に移行する。そして、CPU47は、上記ステップS38において「No」であれば、PCSセンサ10の故障診断に使用するHiG異常フラグをオンにセットし(ステップS39)、上記ステップS38において「Yes」であれば、ステップS40の処理に移行する。そして、CPU47は、HiG受信フラグをオフにセットし(ステップS40)、さらに、タイマ42の受信周期カウンタをリセットして図5のステップS46の処理に移行する(ステップS41)。
【0050】
一方、上記ステップS35において、「No」の場合、つまりカウントダウンが開始されてから100ms以上経過してもGデータを受信できなかった場合(図8中のTF期間に該当する場合)、CPU47は、HiG異常フラグをオンにセットし(ステップS42)、HiG受信フラグをオフにセットし(ステップS43)、さらに、エラーデータを受信したか否か(エラーデータが「0」以外か否か)を判定する(ステップS44)。CPU47は、上記ステップS44において「Yes」であれば、エラーデータを記録して図5のステップS46の処理に移行し(ステップS45)、上記ステップS44において「No」であれば、図5のステップS46の処理に移行する。
【0051】
図5に戻り、ステップS34の実行後、或いは図6で説明したTE期間、TF期間に該当するステップS35〜S45の実行後、CPU47は、HiG受信フラグがオンか否かを判定し(ステップS46)、「Yes」であれば、実際の衝突判定に用いるHiG変数にセットすべき衝突判定データGの算出処理を行い(ステップS47)、「No」であれば、HiG変数に代替値として「0」をセットする(ステップS48)。
【0052】
図7は、上述したGデータ判別処理のステップS47における衝突判定データ算出処理の詳細を示すフローチャートである。この図7に示すように、まず、CPU47は、今回のデータセットの中からHiGデータと判別可能なGデータを取得し(ステップS51)、Gデータ受信回数が「4」と等しいか否かを判定する(ステップS52)。
【0053】
このステップS52において、「Yes」の場合、つまり今回のデータセットの中からHiGデータと判別可能なGデータを4個取得できた場合、CPU47は、HiG代替要求フラグをオフにセットし(ステップS53)、衝突判定データGを算出した後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS54)。具体的には、HiGデータと判別可能な4個のGデータを、それぞれD1、D2、D3、D4とすると、この時の衝突判定データGは下記(1)式で表される。
G=D1+D2+D3+D4=Gave ・・・・(1)
【0054】
一方、上記ステップS52において、「No」の場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「3」と等しいか否かを判定する(ステップS55)。このステップS55において、「Yes」の場合、つまり今回のデータセットの中からHiGデータと判別可能なGデータを3個取得できた場合、CPU47は、HiG代替要求フラグをオフにセットし(ステップS56)、衝突判定データGを算出した後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS57)。具体的には、HiGデータと判別可能な3個のGデータを、それぞれD1、D2、D3とすると、この時の衝突判定データGは下記(2)式で表される。
G=4×{(D1+D2+D3)/3}
=4×Gave/3 ・・・・(2)
【0055】
一方、上記ステップS55において、「No」の場合、つまりGデータ受信回数が「2」、「1」、「0」のいずれかである場合、CPU47は、HiG代替要求フラグがオンにセットされているか否かを判定する(ステップS58)。このステップS58において、「Yes」の場合、つまりHiG代替要求フラグがオンの場合、CPU47は、衝突判定データGに代替値として「0」をセットした後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS59)。一方、上記ステップS58において、「No」の場合、つまりHiG代替要求フラグがオフの場合、CPU47は、衝突判定データGを前回値のまま保持し(ステップS60)、HiG代替要求フラグをオンにセットした後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS61)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態におけるECU40によれば、1つのデータセット内に(つまり処理単位時間内に取得した受信データ中に)、LoGデータと判別可能なGデータ(最初のGデータ)と、HiGデータと判別可能なGデータ(後続のGデータ)とが混在する場合、LoGデータと判別可能なGデータ、つまり最初のGデータのみを破棄するため、データセット内に存在する有効なHiGデータを衝突判定に用いることができ、衝突判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、PCS10から送信されるシリアルデータに、80ms周期で通信されるLoGデータと、250μs周期で連続通信されるHiGデータとが含まれている場合を想定して説明したが、これらの周期はあくまで一例であり、本発明はこれ以外の周期でLoGデータ及びHiGデータが送信される場合にも適用することができる。
【0058】
(2)上記実施形態では、1つのデータセット内に、LoGデータと判別可能なGデータと、HiGデータと判別可能なGデータとが混在する場合、LoGデータと判別可能なGデータ、つまり最初のGデータのみを破棄するという基本原理を実現させるために、図4〜図7に示すサンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理を用いたが、これらの処理はあくまで基本原理を実現させるための一例に過ぎず、基本原理を実現可能であれば、他の処理を用いても良い。
【0059】
(3)図9で示した歩行者保護システムは、あくまでECU40を適用可能なシステムの一例であり、車種、PCS10の種類、個数は図9のシステムに限定されず、様々なシステム構成に対して本発明に係る電子制御装置を適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
100…車両、110…フロントバンパ、130…エンジンフード、150…セーフティプレート、10L、10C、10R、10…歩行者衝突センサ(PCS)、20…車速センサ、30、40…ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)、41…通信インタフェース、42…タイマ、43…ROM(Read Only Memory)、44…RAM(Random Access Memory)、46…パワーユニット駆動回路、47…CPU(Central Processing Unit:データ処理部)、80…パワーユニット、180…エンジンフード
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両が歩行者に衝突した場合、車両のフロントバンパと歩行者の下半身とが衝突するため、歩行者は車両のエンジンフード上に跳ね上げられて頭部を強打してしまい、深刻な傷害を負う恐れがある。近年では、歩行者との衝突が発生した場合に、エンジンフードの後端部を持ち上げることにより、エンジンフードとエンジンルーム内に配置された部品との間に空間を生じさせ、歩行者の頭部への衝撃を緩和する歩行者保護システム(いわゆるポップアップフードシステム)を搭載した車両も実用化されている。
【0003】
図9は、従来における歩行者保護システムの構成概略図である。図9(a)は、歩行者保護システムが搭載された車両100の側面図であり、図9(b)は、この車両100の上面図である。また、図9では、車両100としてフロントエンジンタイプの車両を想定しており、エンジンルーム上にはエンジンフード130が開閉自在に設けられている。
【0004】
この図9に示すように、歩行者保護システムは、車両100におけるフロントバンパ110の車幅方向に沿って左側、中央、右側の各々に設置された3つの歩行者衝突センサ(PCS:Pedestrian Crash Sensor)10L、10C、10Rと、車両100の前輪120に設置された車速センサ20と、ECU(Electronic Control Unit)30と、エンジンフード130の後端部を持ち上げるためのパワーユニット80とから構成されている。
【0005】
フロントバンパ110の内部には、バンパビーム140と、歩行者脚部保護用のセーフティプレート150とが設けられており、PCS10L、10C、10Rは、セーフティプレート150の下部に設置されている。一般的にフロントバンパ110は樹脂製であるが、セーフティプレート150は衝突時に変形して衝突エネルギーを吸収しやすいような形状(例えば図9(a)に示すような「くの字」型)に成形された鉄板が用いられる。
【0006】
図10に示すように、各PCS10L、10C、10Rは、高感度(例えば±100G)の衝突検出用の加速度センサ(HiGセンサ)11と、低感度(例えば±1.5G)のフロントバンパ110の傾き角度検出用の加速度センサ(LoGセンサ)12と、LoGセンサ12の出力信号を80ms周期でデジタル変換して加速度データ(LoGデータ)を生成すると共に、HiGセンサ11の出力信号が閾値を越えた場合に、その出力信号を250μs周期でデジタル変換して加速度データ(HiGデータ)を生成するマイコン13と、当該マイコン13とECU30との間でシリアルデータの通信を行う通信IC14とを備えている。
【0007】
図11は、HiGセンサ11及びLoGセンサ12の出力信号と、通信IC14からECU30へ送信されるシリアルデータ(換言すればECU30で受信されるシリアルデータ)の時間的関係を示すタイミングチャートである。この図11に示すように、ECU30で受信されるシリアルデータには、80ms周期で通信されるLoGデータと、HiGセンサ11の出力信号が閾値を越えた場合に、250μs周期で連続通信されるHiGデータとが含まれている。なお、上記シリアルデータにおいて、LoGデータやHiGデータが通信されない期間では、ノーコードデータ(無効データ)が通信される(この他、あるタイミングでエラーコードデータが通信される場合もある)。
【0008】
このようにPCS10L、10C、10RからECU30へ送信されるシリアルデータには、LoGデータとHiGデータとの2種類のGデータが含まれるが、両者を区別するためのユニークコード等の識別情報は含まれていない。そこで、ECU30は、LoGデータとHiGデータとの受信周期の違いを利用して2種類のGデータを判別する。つまり、ECU30は、80ms周期で受信したGデータをLoGデータと判別し、250μs周期で受信したGデータをHiGデータと判別する。
【0009】
そして、ECU30は、LoGデータに基づいてフロントバンパ110の傾き角度を監視する一方、HiGデータと車速センサ20から送信される車速データに基づいてパワーユニット80を制御することで、エンジンフード130のポップアップ動作を制御する。具体的には、ECU30は、車速が一定速度(例えば25km/h)以上であって、HiGデータが衝突判定閾値を越えた場合に歩行者との衝突が発生したと判定し、パワーユニット80を作動させてエンジンフード130をポップアップさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−248270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、従来のECU30は、80ms周期で受信したGデータをLoGデータと判別し、250μs周期で受信したGデータをHiGデータと判別していた。しかしながら、図12に示すように、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後にHiGデータの連続通信が開始された場合、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後に連続的に受信したGデータの内、最初に受信したGデータは80ms周期で受信されたためLoGデータと判別可能であるが、後続のGデータが250μs周期で受信されたため、結局、最初に受信したGデータの判別は不可能となる。
【0012】
図12に示すように、従来のECU30は、受信したシリアルデータをHiGデータの受信周期と同じ250μs周期でサンプリングし、処理単位時間である1ms毎に4個のサンプリングデータを1組のデータセットとしてグループ化し、1つのデータセット内において、上記の理由でLoGデータと判別可能なGデータ(最初のGデータ)と、HiGデータと判別可能なGデータ(後続のGデータ)とが混在する場合(パターンA〜Dのケースが考えられる)、最初のGデータの判別が不可能となるため、そのデータセットを無効データとして破棄していた。
【0013】
つまり、従来のECU30は、データセット内に存在する4個のサンプリングデータの全てがHiGデータと判別可能なGデータである場合のみ、そのデータセットを衝突判定用の有効データとして使用していた。この場合、図12のパターンA〜Cに示すように、1つのデータセット内に有効なHiGデータが存在するにも関わらず、そのデータセットを破棄してしまうことになり、衝突判定精度の低下を招く虞があった。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両と歩行者との衝突判定精度の向上を図ることが可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子制御装置は、第1周期で受信した加速度データを低加速度データと判別し、前記第1周期より短い第2周期で受信した加速度データを高加速度データと判別する電子制御装置であって、処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データと、前記高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するデータ処理部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る電子制御装置において、前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データから前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄した後、残った加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電子制御装置において、前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記低加速度データとして用いることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る電子制御装置において、前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記高加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電子制御装置によれば、処理単位時間内に取得した受信データ中に、低加速度データと判別可能な加速度データと、高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するため、従来のように、処理単位時間内に取得した受信データ中に存在する有効な高加速度データを破棄することなく、衝突判定に用いることができる。すなわち、本発明に係る電子制御装置によれば、車両と歩行者との衝突判定精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子制御装置(ECU30)のブロック構成図である。
【図2】本実施形態におけるGデータの判別原理に関する第1説明図である。
【図3】本実施形態におけるGデータの判別原理に関する第2説明図である。
【図4】ECU30のCPU47が実行するサンプリングデータ判別処理を表すフローチャートである。
【図5】ECU30のCPU47が実行するGデータ判別処理を表すフローチャートである。
【図6】ECU30のCPU47が実行するGデータ判別処理を表すフローチャートである。
【図7】Gデータ判別処理におけるステップS47の詳細処理を表すフローチャートである。
【図8】サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理の理解を容易にするためのタイミングチャートである。
【図9】従来における歩行者保護システムの構成概略図である。
【図10】歩行者保護システムで使用される歩行者衝突センサ(PCS)の内部構成図である。
【図11】PCSから送信されるシリアルデータに含まれるLoGデータ及びHiGデータに関する説明図である。
【図12】従来の問題点に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、本発明に係る電子制御装置として、図9に示した歩行者保護システムで用いられるECUを例示して説明する。ただし、図9のECU30と区別するために、本実施形態におけるECUの符号を40とする。
【0022】
図1は、本実施形態におけるECU40のブロック構成図である。この図1に示すように、ECU40は、通信インタフェース41、タイマ42、ROM(Read Only Memory)43、RAM(Random Access Memory)44、パワーユニット駆動回路46、及びCPU(Central Processing Unit)47を備えている。なお、図1では、図9に示したPCS10L、10C、10RをPCS10と総称している。
【0023】
通信インタフェース41は、PCS10とのシリアル通信を実現可能とするインタフェースである。具体的には、この通信インタフェース41は、PCS10から受信したシリアルデータを、CPU47から250μs周期で入力されるサンプリング要求に応じてサンプリングし、そのサンプリングデータをCPU47に出力する。なお、図11で説明したように、PCS10から送信されるシリアルデータには、80ms周期(第1周期)で通信されるLoGデータ(低加速度データ)と、HiGセンサ11の出力信号が閾値を越えた場合に、250μs周期(第2周期)で連続通信されるHiGデータ(高加速度データ)とが含まれている(ノーコードデータやエラーコードデータも含まれる)。
【0024】
タイマ42は、CPU47による制御に応じて計時動作を行うものであり、具体的には100msにセットされた受信周期カウンタのカウントダウンを行う。ROM43は、CPU47によって実行される制御プログラムや各種設定データを予め記憶している不揮発性メモリである。RAM44は、CPU47が制御プログラムを実行して各種動作を行う際に、データの一時保存先に用いられる揮発性のワーキングメモリである。パワーユニット駆動回路46は、CPU47から入力されるパワーユニット作動指令信号に応じて、パワーユニット80を作動させるための駆動信号を生成し、当該駆動信号をパワーユニット80に出力する。
【0025】
CPU47(データ処理部)は、ROM43に記憶されている制御プログラムに従って歩行者保護システムを統括制御するものである。具体的には、このCPU47は、通信インタフェース41から取得したサンプリングデータ(LoGデータやHiGデータ等)、及び車速センサ20から取得した車速データに基づいて、フロントバンパ110の傾き角度の監視、及び歩行者との衝突判定を行い、衝突が発生したと判定した場合にパワーユニット作動指令信号をパワーユニット駆動回路46に出力することで、パワーユニット80を作動させる。なお、フロントバンパ110の傾き角度の監視にはLoGデータが用いられ、歩行者との衝突判定にはHiGデータ及び車速データが用いられる。
【0026】
詳細は後述するが、このCPU47は、通信インタフェース41から250μs周期で取得したサンプリングデータを、処理単位時間である1ms毎にグループ化することで、4個のサンプリングデータを1組のデータセットとし、処理単位時間毎に得られるデータセット内に含まれるサンプリングデータが、加速度データ(以下、Gデータと称す)なのか、ノーコードデータなのか、或いはエラーコードデータなのかを判別するためのサンプリングデータ判別処理を行う。
【0027】
さらに、このCPU47は、処理単位時間毎に実行される(つまり1ms周期で実行される)上記サンプリングデータ判別処理の結果と、タイマ42の計時結果(つまり受信周期カウンタの残り時間)とに基づき、現在のデータセットに存在するGデータがLoGデータなのか、或いはHiGデータなのかを判別するためのGデータ判別処理を行う。つまり、このGデータ判別処理も処理単位時間毎に実行される(つまり1ms周期で実行される)処理である。
【0028】
次に、上記のように構成された本実施形態におけるECU40の動作、特にCPU47が実行するサンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理について詳細に説明する。
まず、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理の詳細説明に入る前に、その前提として、本実施形態におけるGデータの判別原理について説明する。
【0029】
図2は、HiGセンサ11及びLoGセンサ12の出力信号と、ECU40で受信されるシリアルデータの時間的関係を示すタイミングチャートである。ここで、図2に示すように、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後にHiGデータの連続通信が開始された場合を想定する。つまり、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms経過後に連続的に受信したGデータの内、最初に受信したGデータは80ms周期で受信されたためLoGデータと判別可能であるが、後続のGデータが250μs周期で受信されたため、結局、最初に受信したGデータの判別は不可能となる。
【0030】
本実施形態におけるCPU47は、1つのデータセット内に(つまり処理単位時間内に取得した受信データ中に)、上記の理由でLoGデータと判別可能なGデータ(最初のGデータ)と、HiGデータと判別可能なGデータ(後続のGデータ)とが混在する場合、LoGデータと判別可能なGデータ、つまり最初のGデータのみを破棄する。この時、図2中のパターンA〜Dのケースが考えられるが、データセット内に存在する有効なHiGデータを破棄することなく衝突判定に用いることができ、衝突判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0031】
図3は、前回のLoGデータ受信タイミングから80ms未満でHiGデータの連続通信が開始された場合を想定したタイミングチャートである。この場合、最初のGデータはLoGデータと判別可能なGデータに該当せず、後続のGデータが250μs周期で受信されたことから、データセット内に存在するGデータは全てHiGデータと判別することができる。つまり、CPU47は、1つのデータセット内に、HiGデータと判別可能なGデータのみが存在する場合、それらGデータをHiGデータとして衝突判定に用いる。
【0032】
以上説明したGデータの判別原理を実現可能とする処理が、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理である。図4は、サンプリングデータ判別処理を表すフローチャートであり、図5及び図6は、Gデータ判別処理を表すフローチャートであり、図7は、Gデータ判別処理におけるステップS47の詳細処理を表すフローチャートであり、また、図8は、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理の理解を容易にするためのタイミングチャートである。
【0033】
既に述べたように、サンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理は、処理単位時間である1ms周期で実行されるものであるが、以下では、図8に示すように、前回の処理単位時間に取得されたデータセット内にLoGデータが存在し、このデータセット内の最後のサンプリングデータの取得完了タイミングから、タイマ42によって100msにセットされた受信周期カウンタのカウントダウンが開始される場合を想定する。なお、タイマ42は、1ms単位でカウントダウンを行うものとする。
【0034】
さて、図4に示すサンプリングデータ判別処理において、CPU47は、まず、Gデータ受信回数を「0」に初期化し(ステップS1)、変数nを「1」に初期化する(ステップS2)。そして、CPU47は、変数nが「5」より小さいか否かを判定し(ステップS3)、「Yes」の場合、n個目のサンプリングデータを取得する(ステップS4)。そして、CPU47は、n個目のサンプリングデータがノーコードデータか否かを判定し(ステップS5)、「Yes」の場合、変数nをインクリメントして上記ステップS3の処理に戻る(ステップS6)。
【0035】
一方、上記ステップS5において、「No」の場合、つまりn個目のサンプリングデータがノーコードデータではない場合、CPU47は、n個目のサンプリングデータがGデータか否かを判定する(ステップS7)。このステップS7において、「Yes」の場合、つまりn個目のサンプリングデータがGデータである場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「0」と等しいか否かを判定する(ステップS8)。
【0036】
CPU47は、ステップS8において「Yes」であれば、破棄候補GデータGsubとしてn個目のサンプリングデータ(Gデータ)を設定し(ステップS9)、一方、「No」であれば、ステップS10の処理に移行する。ここで、破棄候補GデータGsubとは、後述する図5のGデータ判別処理において、LoGデータと判別可能なGデータであり、且つ今回のデータセット内にHiGデータと判別可能なGデータが混在する場合に破棄されるGデータである。
【0037】
そして、CPU47は、Gデータ積算値Gsumにn個目のサンプリングデータ(Gデータ)を加算し(ステップS10)、さらに、Gデータ受信回数をインクリメントしてステップS6に移行する(ステップS11)。一方、上記ステップS7において、「No」の場合、つまりn個目のサンプリングデータがGデータではない場合、CPU47は、n個目のサンプリングデータがエラーコードデータであると判断し、エラーデータとしてn個目のサンプリングデータを設定してステップS6の処理に移行する(ステップS12)。
【0038】
上記ステップS3〜S12の処理は、上記ステップS3において「No」と判定されるまで繰り返される(つまり4回繰り返される)。これにより、今回のデータセット中に含まれる4個のサンプリングデータの判別が行われることになる。
【0039】
一方、上記ステップS3において、「No」の場合、つまり変数nが5になった場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「1」以上か否かを判定する(ステップS13)。このステップS13において、「Yes」の場合、CPU47は、Gデータ判別処理で使用する変数GaveとしてGデータ積算値Gsumを設定した後、サンプリングデータ判別処理を終了する(ステップS14)。一方、上記ステップS13において、「No」の場合、CPU47は、エラーデータが「0」か否かを判定し(ステップS15)、「Yes」であれば、変数GaveとしてGデータ積算値Gsumを設定した後、サンプリングデータ判別処理を終了し(ステップS16)、「No」であれば、そのままサンプリングデータ判別処理を終了する。
【0040】
以上のようなサンプリングデータ判別処理が1ms周期で繰り返されることにより、各データセット毎に、サンプリングデータの判別結果、Gデータ受信回数、破棄候補GデータGsub、変数Gave、及びエラーデータの各情報が得られることになる。
【0041】
続いて、図5に示すGデータ判別処理において、CPU47は、まず、Gデータ受信回数が「1」以上か否かを判定し(ステップS21)、「Yes」の場合、受信周期カウンタの残り時間が99msか否かを判定する(ステップS22)。このステップS22において、「Yes」の場合、つまり受信周期カウンタのカウントダウンが開始されてから1msが経過した場合(図8中のTA期間に該当する場合)であって、今回のデータセット内に存在する全GデータがHiGデータと判別可能である場合、CPU47は、HiG受信フラグをオンにセットしてステップS33の処理に移行する(ステップS23)。
【0042】
一方、上記ステップS22において、「No」の場合、CPU47は、受信周期カウンタの残り時間が15ms以上か否かを判定し(ステップS24)、「Yes」であれば、受信周期カウンタの残り時間が25ms以下か否かを判定する(ステップS25)。このステップS25において、「No」の場合、つまりカウントダウンが開始されてからの経過時間が1msより大きく、且つ75ms未満の場合(図8中のTB期間に該当する場合)であって、今回のデータセット内に存在する全GデータがHiGデータと判別可能である場合、CPU47は、HiG受信フラグがオフか否かを判定する(ステップS26)。
【0043】
このステップS26において、「Yes」の場合、つまりHiG受信フラグがオフの場合、CPU47は、HiG受信フラグをオンにし(ステップS27)、さらに、Gデータ受信回数を「4」にセットしてステップS33の処理に移行する(ステップS28)。一方、上記ステップS26において、「No」の場合、つまりHiG受信フラグがオンの場合、CPU47は、ステップS33の処理に移行する。
【0044】
また、上記ステップS25において、「Yes」の場合、つまりカウントダウンが開始されてからの経過時間が75ms以上85ms以下の場合(図8中のTC期間に該当する場合)であって、今回のデータセット内において最初に受信されたGデータ(破棄候補GデータGsub)がLoGデータと判別可能である場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「1」と等しいか否かを判定する(ステップS29)。なお、LoGデータの受信周期は80msであるが、マージンを考慮して75ms以上85ms以下の近似値に相当すれば、最初のGデータをLoGデータと判別可能とする。
【0045】
上記ステップS29において、「Yes」の場合、つまりGデータ受信回数が「1」と等しい場合(換言すれば、破棄候補GデータGsubをLoGデータと判別可能であり、且つ今回のデータセット内のGデータとして破棄候補GデータGsubしか存在しない場合)、CPU47は、実際にフロントバンパ110の傾き角度の監視に使用するLoG変数として破棄候補GデータGsubを設定し(ステップS30)、さらに、HiG受信フラグをオフにしてステップS33の処理に移行する(ステップS31)。
【0046】
一方、上記ステップS29において、「No」の場合、つまりGデータ受信回数が「2」以上の場合(換言すれば、破棄候補GデータGsubをLoGデータと判別可能であり、且つ今回のデータセット内にHiGデータと判別可能なGデータが存在する場合)、CPU47は、変数Gaveから破棄候補GデータGsubを減算し(つまりLoGデータと判別可能なGデータを破棄し)、減算後の値を新たな変数Gaveとした後、ステップS27の処理に移行する(ステップS32)。
【0047】
また、上記ステップS24において、「No」の場合、つまりカウントダウンが開始されてからの経過時間が85msを越えた場合(図8中のTD期間に該当する場合)、CPU47は、ステップS33の処理に移行する。
上記のような、図8中のTA期間、TB期間、TC期間、TD期間に該当するステップS22〜S32の実行後、CPU47は、エラーデータを「0」にリセットし(ステップS33)、さらに、タイマ42の受信周期カウンタをリセットしてステップS46の処理に移行する(ステップS34)。
【0048】
一方、上記ステップS21において、「No」の場合、つまりGデータ受信回数が「0」だった場合、CPU47は、図6のステップS35に移行し、受信周期カウンタの残り時間が「0」より大きいか否かを判定する(ステップS35)。このステップS35において、「Yes」の場合(図8中のTE期間に該当する場合)、CPU47は、エラーデータを受信したか否か(エラーデータが「0」以外か否か)を判定する(ステップS36)。CPU47は、上記ステップS36において「Yes」であれば、ノーコードデータを受信したか否かを判定し(ステップS37)、上記ステップS36において「No」であれば、図5のステップS46の処理に移行する。
【0049】
そして、CPU47は、上記ステップS37において「No」であれば、LoG異常コードを受信したか否かを判定し(ステップS38)、上記ステップS37において「Yes」であれば、図5のステップS46の処理に移行する。そして、CPU47は、上記ステップS38において「No」であれば、PCSセンサ10の故障診断に使用するHiG異常フラグをオンにセットし(ステップS39)、上記ステップS38において「Yes」であれば、ステップS40の処理に移行する。そして、CPU47は、HiG受信フラグをオフにセットし(ステップS40)、さらに、タイマ42の受信周期カウンタをリセットして図5のステップS46の処理に移行する(ステップS41)。
【0050】
一方、上記ステップS35において、「No」の場合、つまりカウントダウンが開始されてから100ms以上経過してもGデータを受信できなかった場合(図8中のTF期間に該当する場合)、CPU47は、HiG異常フラグをオンにセットし(ステップS42)、HiG受信フラグをオフにセットし(ステップS43)、さらに、エラーデータを受信したか否か(エラーデータが「0」以外か否か)を判定する(ステップS44)。CPU47は、上記ステップS44において「Yes」であれば、エラーデータを記録して図5のステップS46の処理に移行し(ステップS45)、上記ステップS44において「No」であれば、図5のステップS46の処理に移行する。
【0051】
図5に戻り、ステップS34の実行後、或いは図6で説明したTE期間、TF期間に該当するステップS35〜S45の実行後、CPU47は、HiG受信フラグがオンか否かを判定し(ステップS46)、「Yes」であれば、実際の衝突判定に用いるHiG変数にセットすべき衝突判定データGの算出処理を行い(ステップS47)、「No」であれば、HiG変数に代替値として「0」をセットする(ステップS48)。
【0052】
図7は、上述したGデータ判別処理のステップS47における衝突判定データ算出処理の詳細を示すフローチャートである。この図7に示すように、まず、CPU47は、今回のデータセットの中からHiGデータと判別可能なGデータを取得し(ステップS51)、Gデータ受信回数が「4」と等しいか否かを判定する(ステップS52)。
【0053】
このステップS52において、「Yes」の場合、つまり今回のデータセットの中からHiGデータと判別可能なGデータを4個取得できた場合、CPU47は、HiG代替要求フラグをオフにセットし(ステップS53)、衝突判定データGを算出した後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS54)。具体的には、HiGデータと判別可能な4個のGデータを、それぞれD1、D2、D3、D4とすると、この時の衝突判定データGは下記(1)式で表される。
G=D1+D2+D3+D4=Gave ・・・・(1)
【0054】
一方、上記ステップS52において、「No」の場合、CPU47は、Gデータ受信回数が「3」と等しいか否かを判定する(ステップS55)。このステップS55において、「Yes」の場合、つまり今回のデータセットの中からHiGデータと判別可能なGデータを3個取得できた場合、CPU47は、HiG代替要求フラグをオフにセットし(ステップS56)、衝突判定データGを算出した後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS57)。具体的には、HiGデータと判別可能な3個のGデータを、それぞれD1、D2、D3とすると、この時の衝突判定データGは下記(2)式で表される。
G=4×{(D1+D2+D3)/3}
=4×Gave/3 ・・・・(2)
【0055】
一方、上記ステップS55において、「No」の場合、つまりGデータ受信回数が「2」、「1」、「0」のいずれかである場合、CPU47は、HiG代替要求フラグがオンにセットされているか否かを判定する(ステップS58)。このステップS58において、「Yes」の場合、つまりHiG代替要求フラグがオンの場合、CPU47は、衝突判定データGに代替値として「0」をセットした後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS59)。一方、上記ステップS58において、「No」の場合、つまりHiG代替要求フラグがオフの場合、CPU47は、衝突判定データGを前回値のまま保持し(ステップS60)、HiG代替要求フラグをオンにセットした後、衝突判定データ算出処理を終了する(ステップS61)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態におけるECU40によれば、1つのデータセット内に(つまり処理単位時間内に取得した受信データ中に)、LoGデータと判別可能なGデータ(最初のGデータ)と、HiGデータと判別可能なGデータ(後続のGデータ)とが混在する場合、LoGデータと判別可能なGデータ、つまり最初のGデータのみを破棄するため、データセット内に存在する有効なHiGデータを衝突判定に用いることができ、衝突判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、PCS10から送信されるシリアルデータに、80ms周期で通信されるLoGデータと、250μs周期で連続通信されるHiGデータとが含まれている場合を想定して説明したが、これらの周期はあくまで一例であり、本発明はこれ以外の周期でLoGデータ及びHiGデータが送信される場合にも適用することができる。
【0058】
(2)上記実施形態では、1つのデータセット内に、LoGデータと判別可能なGデータと、HiGデータと判別可能なGデータとが混在する場合、LoGデータと判別可能なGデータ、つまり最初のGデータのみを破棄するという基本原理を実現させるために、図4〜図7に示すサンプリングデータ判別処理及びGデータ判別処理を用いたが、これらの処理はあくまで基本原理を実現させるための一例に過ぎず、基本原理を実現可能であれば、他の処理を用いても良い。
【0059】
(3)図9で示した歩行者保護システムは、あくまでECU40を適用可能なシステムの一例であり、車種、PCS10の種類、個数は図9のシステムに限定されず、様々なシステム構成に対して本発明に係る電子制御装置を適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
100…車両、110…フロントバンパ、130…エンジンフード、150…セーフティプレート、10L、10C、10R、10…歩行者衝突センサ(PCS)、20…車速センサ、30、40…ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)、41…通信インタフェース、42…タイマ、43…ROM(Read Only Memory)、44…RAM(Random Access Memory)、46…パワーユニット駆動回路、47…CPU(Central Processing Unit:データ処理部)、80…パワーユニット、180…エンジンフード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周期で受信した加速度データを低加速度データと判別し、前記第1周期より短い第2周期で受信した加速度データを高加速度データと判別する電子制御装置であって、
処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データと、前記高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するデータ処理部を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データから前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄した後、残った加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記低加速度データとして用いることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記高加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項1】
第1周期で受信した加速度データを低加速度データと判別し、前記第1周期より短い第2周期で受信した加速度データを高加速度データと判別する電子制御装置であって、
処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データと、前記高加速度データと判別可能な加速度データとが混在する場合、前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄するデータ処理部を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データから前記低加速度データと判別可能な加速度データを破棄した後、残った加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記低加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記低加速度データとして用いることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記処理単位時間内に取得した受信データ中に、前記高加速度データと判別可能な加速度データのみが存在する場合、当該加速度データを前記高加速度データとして用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−98694(P2011−98694A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256125(P2009−256125)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】
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