電子回路およびその製造方法
【課題】 ポリイミド膜直上に形成されたボンディングパッドに導体ワイヤが良好に接続された電子回路基板を提供する。
【解決手段】 基板1に形成した第1層金属パタン3と、第1層金属パタン3の上に形成したポリイミド膜2と、ポリイミド膜2の表面に形成した第2層金属パタンとを有し、第1層金属パタンにダイボンディングした半導体チップ7と電気的接続を取るために、第2層金属パタン31の表面にボールボンディングにより形成された導体バンプ4を形成する。この導体バンプ4と半導体チップ7の電極72をワイヤボンディングにより電気的に接続する。
【解決手段】 基板1に形成した第1層金属パタン3と、第1層金属パタン3の上に形成したポリイミド膜2と、ポリイミド膜2の表面に形成した第2層金属パタンとを有し、第1層金属パタンにダイボンディングした半導体チップ7と電気的接続を取るために、第2層金属パタン31の表面にボールボンディングにより形成された導体バンプ4を形成する。この導体バンプ4と半導体チップ7の電極72をワイヤボンディングにより電気的に接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路およびその製造方法に関わり、特に樹脂絶縁膜の表層に形成されたボンディングパッドに導体ワイヤを接続する電子回路およびその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
近年の電子回路基板は、製品仕様の高度化により高密度・小形化・特性の広帯域化が要求されている。これらの要求を満たす有効な手段としては、電子回路基板上にポリイミド等の薄膜絶縁層を使用した多層配線を形成することが挙げられる。特に、高周波伝送線路をインピーダンス一定の条件で小型化するためには、層間絶縁膜を極めて薄くする必要がある。この場合、層間絶縁膜および絶縁膜の上に形成する金属膜は、薄膜の技術を使う必要がある。
【0003】
一方、電子回路基板においては、基板上に搭載された電子部品と基板と間、もしくは基板と別の部品とを電気的に接続する必要がある。これを実現する有効な手段としては、AuやAlからなる導体ワイヤ(金属ワイヤ)と電子部品上の電極パッドとを超音波溶接により接合させる、いわゆるワイヤボンディングが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、ボールボンディング後にワイヤを上方に引っ張って金ボールの先端部で切り離してバンプを形成し、このバンプにワイヤボンディングのセカンドボンディングを行うワイヤボンディング方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、卑金属の導体にボールボンディングした後、後に実施するワイヤボンディングのファーストボンディング箇所と反対方向の卑金属の導体部分にウェッジボンディングすることでバンプを形成するワイヤボンディング方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、特許文献1に記載された発明を改良する、卑金属の導体に金ボールを接触させた後キャピラリを垂直方向と同時に水平方向に移動し、接合面積の大きいバンプを形成するワイヤボンディング方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3-183139号公報
【特許文献2】特許3344235号公報
【特許文献3】特開2000−357700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリイミド等の樹脂絶縁膜上に形成されたボンディングパッド上にワイヤボンディングにより導体ワイヤをセカンドボンディングすると、図1(a)に示すようにボンディング時の超音波出力によりポリイミドとパッドとが界面剥離を起こしたり、図1(b)に示すようにポリイミド自身が破断するという問題が生じたりする問題があり、安定した接続を行うことができない。
【0009】
特許文献1に記載された発明はワイヤまたはICのリペアを対象としてなされ、特許文献2および3に記載された発明は卑金属の導体を対象としてなされているので、上述した課題について記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板に形成された樹脂絶縁膜の上に形成した金属膜にバンプを形成し、このバンプに導体ワイヤを超音波ボンディングすることにより、上記課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0011】
樹脂絶縁膜の上に金属薄膜からなるボンディングパッドが形成される構造であっても、ボンディングパッドにワイヤボンディングする際に、良好な接続状態を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1を、図2ないし図5を用いて説明する。ここで、図2ないし図5は電子回路の断面図である。
図2において、基板1の表面上には、ポリイミド膜2が形成されている。具体的には、液状のポリイミドを基板1にスピン塗布した後、350℃でキュア(熱硬化)して形成する。なお、感光性のポリイミドを用いてキュア前にパタンニングしても良いし、非感光性のポリイミドを用いて、キュア後にホトレジ工程を経てヒドラジンによるエッチングでパタンニングしても良い。基板1の部材としては、窒化アルミ(AlN)基板を用いた。ポリイミド膜2の膜厚は、2μm(キュア後)とした。発明者の知見に拠れば、絶縁樹脂膜の膜厚は0.1〜100μmの範囲の場合、効果を最大限発揮できる。
【0014】
ポリイミド膜2の表面には、金属膜をパタンニングした第一のボンディングパッド31および第二のボンディングパッド32が形成されている。ここで、金属膜は、下(基板1側)から順にTi(チタン)、Pt(白金)、Au(金)(以下Ti/Pt/Auと記載)を、1台の蒸着装置で連続して形成した。Ti/Pt/Auの積層構造をなすそれぞれの膜厚は、基板1側から0.1μm、0.2μm、0.5μmである(以降、(厚さ0.1/0.2/0.5μm)とも記載)。である。ここで、Tiは接着層の役目を、PtはAu膜に他の金属を半田で接続するときの半田バリア層(Ti膜への半田材料の拡散を防ぐ)の役目を、Auは主たる配線層で且つワイヤボンディング性を確保する役目をそれぞれ担う。この積層構造をなすTi膜、Pt膜およびAu膜は、イオンミリング装置を用いて一括でパタン化される。ボンディングパッド用金属膜のトータル膜厚に関しては、発明者の実験によれば0.02〜30μmの範囲が本実施例の効果が現れ、0.02〜5μmの範囲であればさらに効果的である。
【0015】
第一のボンディングパッド31の表面には、Auの導体バンプ4が設置されている。この導体バンプ4は、ワイヤボンディング装置を用いて、25μmのAuワイヤを溶融したAuボール(直径100μm)をボンディングパッド31にボールボンディングで形成した。導体バンプの部材に関しては、ボンディングパッド31と超音波溶接により接合が可能なものである必要があり、Auの他にAlを用いてもよい。ここで、導体バンプは高さ40〜80μmである。
【0016】
この第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ4と第二のボンディングパッドとを、Auの導体ワイヤ5を用いて電気的に接続する。ワイヤボンディングの第一回目のボンディングであるボールボンディング51は、導体バンプのない第二のボンディングパッド32に形成している。ワイヤボンディングの第二回目のボンディングであるセカンドボンディング52は、第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ4の上に形成している。
【0017】
ワイヤボンディングは、Au等の導体ワイヤと電極とを超音波によって金属を拡散させ接合するものである。ワイヤボンディングでは、接続時に印加する超音波により基板がダメージを受ける場合がある。特に、ボンディングパッドの直下がポリイミド膜のような樹脂絶縁膜の場合、前述の通り超音波によってポリイミド膜とボンディングパッドとが剥離したり、あるいはポリイミド自体が破壊したりする場合がある。ワイヤボンディングの場合、この現象は第二回目のボンディング、すなわちウェッジボンディングの際に生じる。これは、ボールボンディングの場合はボールの存在により超音波が緩和され、ポリイミドに力が掛かりにくくなっているのに対し、ウェッジボンディングの場合は超音波を緩和する部分がほとんどないためである。本実施例による構造を採ることで、セカンドボンディングの際にもボールボンディングに相当するバンプの存在によりポリイミドへ掛かる超音波が緩和され、剥離や破断といった現象を回避することができる。
【0018】
なお、本実施例による電子回路基板の構造は、図3ないし図5に示されるものであっても構わない。
図3は、第一のボンディングパッド31のみがポリイミド膜2上に形成され、第二のボンディングパッド31は、基板1上に形成されている。このような構造であっても導体バンプ4がポリイミド膜2上に形成された第一のボンディングパッド31上に設置すれば、実施例の効果は図2と同様になる。
【0019】
また、図4では、基板1上にポリイミド層21が形成され、その上層に第二のボンディングパッド32となる金属膜層とこの金属膜層の上にポリイミド層22が形成されている。第一のボンディングパッド31は、上層のポリイミド膜22上に形成されている。このような電子回路基板に対し、第一のボンディングパッド31上に導体バンプ4を形成し、導体バンプ4と第二のボンディングパッド32とをボンディングワイヤ5により電気的に接続することで、図2と同等の効果を得ることができる。
【0020】
さらに、図5は2枚の基板11、12により構成されたものである。基板11には、その上層にポリイミド膜21を形成し、その上に第一のボンディングパッド31を形成する。基板12には、ポリイミド膜22が形成され、その上に第二のボンディングパッド32を形成する。この実施例では、基板12側にもポリイミド膜22があるが、もちろん基板12上に存在しない形態でも構わない。第一のボンディングパッド31上に導体バンプ4を形成、導体バンプ4とボンディングパッド32とをボンディングワイヤ5により電気的に接続すれば、図2と同様の効果を得ることができる。
【0021】
本実施例では、基板として窒化アルミを用いたがAl2O3(アルミナ)やSiC(シリコンカーバイド)等のセラミック基板、Si(シリコン)等の半導体基板、FR−4に代表されるガラスエポキシ基板、ガラス基板などでも構わない。また、樹脂絶縁膜としてポリイミドを用いたが、ポリアミドであっても構わず、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、およびこれらを主成分とする材料を用いても構わない。
【0022】
ボンディングパッドの部材としては、Al(アルミニウム)またはAuもしくはAlを主成分とした材料でも構わない。また上述した金属膜の構成に関し、ボンディングパッドを構成するそれにおいて、導体ワイヤを接合できる前記部材は膜表面に存在すればよい。ボンディングパッドや後述する配線層をなす金属膜は、本実施例で用いたTi/Pt/Auの積層構造以外にも、Cr(クロム)/Al、Ti/Al、Ti/Ni(ニッケル)/Au、Cr/Cu(銅)/Au等の積層構造であっても良い。
【0023】
この金属膜としてCr/Cu/Auの積層構造を用いると、基板1側(基板11、12側)からCr膜、Cu膜およびAu膜(それぞれの厚さは例えば0.1/0.5/0.1μm)は、1台のスパッタリング装置で連続して順次形成できる。この積層構造において、Cr膜は接着層の役目を、Cu膜は主たる配線層の役目を、Au膜はCu表面の酸化防止とワイヤボンディング性を確保する役目をそれぞれ担い、Au膜とCu膜は、ヨウ素とヨウ化アンモンの水溶液、Cr膜はフェリシアンの水溶液でそれぞれエッチングして、パタン形成する。ボンディングパッド用金属膜として好ましい当該積層構造のトータル膜厚は、Ti/Pt/Auの積層構造のそれと同じである。
以上に記した基板、樹脂絶縁膜および金属膜(ボンディングパッド)の変形例の有用性に付いては、後述する他の実施例でも同様である。
なお、ワイヤボンディングのセカンドボンディングをステッチボンディングと呼ぶことがある。ボールボンディング、ウェッジボンディング、ステッチボンディング等は、いずれも超音波ボンディングである。また、ボンディングパッドは、結果としてボンディングする箇所であるが、配線の意味を含む。また、バンプは突起部の意味である。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の実施例2について、図6および図7を用いて説明する。ここで、図6および図7は電子回路の断面図である。
【0025】
まず、図6について説明する。実施例2においても、実施例1と同様基板1の表面にポリイミド膜2が形成されている。基板1には窒化アルミ、ポリイミド膜2にはポリイミドを用いた。ポリイミドの膜厚は2μmとした。
【0026】
ポリイミド膜2の上には、第一のボンディングパッド31および第二のボンディングパッド32が形成されている。ボンディングパッド31、32のメタライズは、Cr/Alであり、その膜厚はそれぞれ0.1/1.0μmとした。
【0027】
Cr/Alは、1台のスパッタリング装置で真空を破らずに連続して形成した。ここで、Crは接着層、Alは配線層およびワイヤボンディング層である。Alは、リン酸と酢酸と硝酸とを混合した水溶液、Crは硝酸第2セリウムアンモンと過塩素酸との水溶液でそれぞれエッチングして、パタン形成する。
【0028】
第一のボンディングパッド31および第二のボンディングパッド32上には、それぞれ第一の導体バンプ41および第二の導体バンプ42が設置されている。すなわち、本実施例と実施例1との相違点はボンディングパッド31、32の両方に導体バンプが形成されている点である。導体バンプ41、42の部材にはAuを用いた。
【0029】
第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ41と第二のボンディングパッド32上に形成された導体バンプ42とを、導体ワイヤ5を用いて電気的に接続する。本実施例ではAuワイヤを用い、ボールボンダにより形成した。ボールボンディングの第一回目のボンディングであるボールボンディング51は、導体バンプのない第二のボンディングパッド32に形成している。ボールボンディングの第二回目のボンディングであるセカンドボンディング52は、第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ4の上に形成している。但し、本実施例では両方のボンディングパッドに超音波緩和用の導体パッドを形成しているので、ボールボンディングの設置場所については上記と逆であっても構わない。このような形態をとることにより、ワイヤボンディングによる剥離や樹脂破断等の不良が発生しない、良好な接続を得ることができる。
【0030】
上述の通り、実施例2ではボンディングパッド31、32のどちらにウェッジボンディングをしても構わない。また、本構造であれば、図7に示すようにウェッジボンダを用いて導体バンプ41、42上にウェッジボンディング61、62を行うことで導体ワイヤ6を接続しても同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、電子回路基板の構造に関しては、実施例1と同様図6、7以外の、図3ないし図5の構造としても同等の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態を、実施例3として図8を用いて説明する。ここで図8は、光通信・光記録などに用いられる光モジュールの平面図および断面図である。
【0033】
図8において、窒化アルミの基板1上には、Ti/Pt/Au(厚さ0.1/0.2/0.5μm)からなる配線層3が形成されている。配線層3の上層の一部には、ポリイミド膜からなる樹脂絶縁層2(厚さ2μm)が形成されている。さらに、樹脂絶縁層2の上にはTi/Pt/Au(厚さ0.1/0.2/0.5μm)からなるボンディングパッド31が形成されている。ボンディングパッド31は配線も兼ねている。ボンディングパッド31上には、ボールボンダにより形成されたAuからなる導体バンプ4が具備されている。
【0034】
一方、基板1上の配線層3の、樹脂絶縁層2の存在しない部分には、はんだ等により、半導体レーザ7が搭載されている。半導体レーザ7は、その下部にある電極71および上部にある電極72を配線に電気的に接続し、電流を印加することで発光させる。電極71は、配線層3と、図示していないがはんだにより接合されている。
【0035】
一方、電極72は、図1における第二のボンディングパッド32に相当するものである。導体ワイヤ5を用いてボンディングパッド31上の導体パッド4と半導体レーザ7の電極71を接続する。本実施例ではAuワイヤを用い、ボールボンダにより形成した。ボールボンディングの第一回目のボンディングであるボールボンディング51を電極72に形成し、ワイヤボンディングの第二回目のボンディングであるウェッジボンディング52は、導体バンプ4の上に形成している。
【0036】
配線層3と絶縁樹脂層2と配線を兼ねたボンディングパッド31とは、マイクロストリップ伝送線路を形成しているので、10Gbit/sの電気信号を効率よく半導体レーザに伝えることができる。また、このような構造を採ることで、信頼性の高い光モジュールを得ることができる。本実施例の絶縁樹脂膜は、2μmと薄いので、インピーダンスを50Ωとすると極めて小型の伝送線路を提供できるという効果もある。
【0037】
なお、半導体レーザ以外にも、フォトダイオード、光変調器などの光半導体素子、サーミスタ、コンデンサなどのチップ部品に適用することができる。
【実施例4】
【0038】
本発明の他の実施の形態を、実施例4として図9を用いて説明する。ここで図9は、高周波伝送線路の平面図および断面図である。
【0039】
図9において、窒化アルミからなる基板1の表面にはCr/Cu/Auからなる配線層3が形成されている。配線層3の上層の一部には、ポリイミド膜からなる樹脂絶縁層2が形成されている。さらに、樹脂絶縁層3の上にはCr/Cu/Auからなる配線層81、82、83を形成する。配線層81、82、83は、電気信号配線が形成しており、81と82はグランド線、83は信号線としたコプレーナ型の伝送線路の形態を示している。
【0040】
コプレーナ線路の場合、伝送特性を良好にするためには左右のグランド線81、82の電位を等しくする必要があり、その手段として左右グランド線を導体ワイヤにより電気的に接続するという方法を採用する。すなわち、図9に示す81、82が、実施例1のボンディングパッド31および32に相当する。グランド線81の上にAuからなる導体バンプ4を形成する。導体バンプ4とグランド線82とを導体ワイヤ5で電気的に接続する。
【0041】
本実施例によるコプレーナ線路は信頼性が高く、誘電体膜が2μmと薄いので、インピーダンスを50Ωとすると極めて小型の伝送線路を提供できるという効果もある。
【実施例5】
【0042】
本発明の他の実施の形態を、実施例5として図10を用いて説明する。ここで、図10は、半導体チップ9が搭載された半導体装置の平面図および断面図である。
窒化アルミからなる基板1上には、Cr/Cu/Auからなる配線層3が形成されており、その上層の一部にはポリイミド膜2が形成されている。樹脂絶縁層2の表面には、複数のボンディングパッド31が形成されている。ここで、ボンディングパッド31は、配線層も兼ねている。ボンディングパッド31上には、ボールボンダにより形成されたAuからなる導体バンプ4が具備されている。
【0043】
一方、半導体チップ9は基板1上の配線層3にダイボンディングされている。半導体チップ9の上面には電極91が存在する。この半導体チップの電極91が、図1における第二のボンディングパッド32に相当する。導体ワイヤ5を用いてボンディングパッド31上の導体バンプ4と半導体レーザ7の電極71を接続する。導体ワイヤは、Auワイヤを用い、ワイヤボンダにより形成した。ワイヤボンディングのファーストボンディングであるボールボンディング51を電極72に形成し、セカンドボンディング52は、導体バンプ4の上に形成している。このような構造を採ることで、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【実施例6】
【0044】
本発明の他の実施の形態である電子回路の製造方法について、実施例6として、図11を用いて説明する。ここで、図11はワイヤボンディングの工程を説明する図である。
【0045】
図11(a)において、窒化アルミからなる基板1上には、ポリイミド膜2が形成されており、その上には第一のボンディングパッド31と第二のボンディングパッド32が形成されている。ここでボンディングパッド31、32は、Ti/Pt/Au(0.1/0.2/0.5μm)である。
【0046】
まず、第一のボンディングパッド31に導体バンプを形成する。バンプの形成には、Auワイヤを用いるワイヤボンダを使用した。第一のボンディングパッド31にワイヤボンダのキャピラリ10を近づける。図11(b)で、先端にボール53が形成されたAuワイヤ5をパッド31に接触させ、超音波出力を印加することで第一回目のボンディングを行う。これにより第一のボンディングパッド31とAuのボール53は超音波溶接される。
【0047】
次に、図11(c)でキャピラリ10を一旦上に上げ、再びパッド31に接合したボール53の直上にキャピラリ10を着地させ、第二回目のボンディングを行う(図11(d))。その後、キャピラリ10を上昇させるとAuワイヤは切断され、導体バンプ4が完成する(図11(e))。
【0048】
次に、図11(f)で第二のボンディングパッド32にキャピラリを近づけ、ボールボンディングを行いパッド32とAuのボール51とを超音波溶接させる(図11(g))。キャピラリを一旦上昇させ(図11(h))、ワイヤのループを形成ながら第一のボンディングパッド31にキャピラリ10を近づけ、第一のボンディングパッド31の表面に形成した導体バンプ4の直上にキャピラリ10を着地させ、再び超音波を印加することにより導体バンプ4と導体ワイヤ5とを接合させる(図11(i))。最後にキャピラリ10を上昇させるとAuワイヤは切断され導体バンプ4の上にボンディング52が形成される(図11(j))。
【0049】
上記の工程に従い製造することで、樹脂絶縁膜上のボンディングパッドにワイヤボンディングしても樹脂とパッドとの界面での剥離や樹脂の破断等の不良を起こさない、接続性の良好な電子回路の製造方法を提供することができる。
【0050】
なお、上述した実施例は1台のワイヤボンダで、バンプ形成とワイヤボンディングとを行ったが、図11(a)から図11(e)までのボールバンピングは、専用のボンダで行い、図11(f)から図11(j)までをワイヤボンダで実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】樹脂絶縁膜上のボンディングパッドへのセカンドボンディングの問題を説明する図である。
【図2】電子回路の断面図である。
【図3】電子回路の断面図である。
【図4】電子回路の断面図である。
【図5】電子回路の断面図である。
【図6】電子回路の断面図である。
【図7】電子回路の断面図である。
【図8】光モジュールの平面図および断面図である。
【図9】伝送線路の平面図および断面図である。
【図10】半導体装置の平面図および断面図である。
【図11A】電子回路の製造工程を説明する図(その1)である。
【図11B】電子回路の製造工程を説明する図(その2)である。
【符号の説明】
【0052】
1、11、12…基板、2、21、22…ポリイミド膜、3…配線層、31、32…ボンディングパッド(配線)、4…Auバンプ、5、6…Auワイヤ、51、52、61、62…導体ワイヤのボンディング部、7…レーザ素子、71、72…光半導体素子の電極、81、82、83…配線層、9…半導体チップ、91…半導体チップの電極、10…キャピラリ、101…ポリイミドとパッド間の剥離部、102…ポリイミドの破断部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路およびその製造方法に関わり、特に樹脂絶縁膜の表層に形成されたボンディングパッドに導体ワイヤを接続する電子回路およびその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
近年の電子回路基板は、製品仕様の高度化により高密度・小形化・特性の広帯域化が要求されている。これらの要求を満たす有効な手段としては、電子回路基板上にポリイミド等の薄膜絶縁層を使用した多層配線を形成することが挙げられる。特に、高周波伝送線路をインピーダンス一定の条件で小型化するためには、層間絶縁膜を極めて薄くする必要がある。この場合、層間絶縁膜および絶縁膜の上に形成する金属膜は、薄膜の技術を使う必要がある。
【0003】
一方、電子回路基板においては、基板上に搭載された電子部品と基板と間、もしくは基板と別の部品とを電気的に接続する必要がある。これを実現する有効な手段としては、AuやAlからなる導体ワイヤ(金属ワイヤ)と電子部品上の電極パッドとを超音波溶接により接合させる、いわゆるワイヤボンディングが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、ボールボンディング後にワイヤを上方に引っ張って金ボールの先端部で切り離してバンプを形成し、このバンプにワイヤボンディングのセカンドボンディングを行うワイヤボンディング方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、卑金属の導体にボールボンディングした後、後に実施するワイヤボンディングのファーストボンディング箇所と反対方向の卑金属の導体部分にウェッジボンディングすることでバンプを形成するワイヤボンディング方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、特許文献1に記載された発明を改良する、卑金属の導体に金ボールを接触させた後キャピラリを垂直方向と同時に水平方向に移動し、接合面積の大きいバンプを形成するワイヤボンディング方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3-183139号公報
【特許文献2】特許3344235号公報
【特許文献3】特開2000−357700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリイミド等の樹脂絶縁膜上に形成されたボンディングパッド上にワイヤボンディングにより導体ワイヤをセカンドボンディングすると、図1(a)に示すようにボンディング時の超音波出力によりポリイミドとパッドとが界面剥離を起こしたり、図1(b)に示すようにポリイミド自身が破断するという問題が生じたりする問題があり、安定した接続を行うことができない。
【0009】
特許文献1に記載された発明はワイヤまたはICのリペアを対象としてなされ、特許文献2および3に記載された発明は卑金属の導体を対象としてなされているので、上述した課題について記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板に形成された樹脂絶縁膜の上に形成した金属膜にバンプを形成し、このバンプに導体ワイヤを超音波ボンディングすることにより、上記課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0011】
樹脂絶縁膜の上に金属薄膜からなるボンディングパッドが形成される構造であっても、ボンディングパッドにワイヤボンディングする際に、良好な接続状態を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1を、図2ないし図5を用いて説明する。ここで、図2ないし図5は電子回路の断面図である。
図2において、基板1の表面上には、ポリイミド膜2が形成されている。具体的には、液状のポリイミドを基板1にスピン塗布した後、350℃でキュア(熱硬化)して形成する。なお、感光性のポリイミドを用いてキュア前にパタンニングしても良いし、非感光性のポリイミドを用いて、キュア後にホトレジ工程を経てヒドラジンによるエッチングでパタンニングしても良い。基板1の部材としては、窒化アルミ(AlN)基板を用いた。ポリイミド膜2の膜厚は、2μm(キュア後)とした。発明者の知見に拠れば、絶縁樹脂膜の膜厚は0.1〜100μmの範囲の場合、効果を最大限発揮できる。
【0014】
ポリイミド膜2の表面には、金属膜をパタンニングした第一のボンディングパッド31および第二のボンディングパッド32が形成されている。ここで、金属膜は、下(基板1側)から順にTi(チタン)、Pt(白金)、Au(金)(以下Ti/Pt/Auと記載)を、1台の蒸着装置で連続して形成した。Ti/Pt/Auの積層構造をなすそれぞれの膜厚は、基板1側から0.1μm、0.2μm、0.5μmである(以降、(厚さ0.1/0.2/0.5μm)とも記載)。である。ここで、Tiは接着層の役目を、PtはAu膜に他の金属を半田で接続するときの半田バリア層(Ti膜への半田材料の拡散を防ぐ)の役目を、Auは主たる配線層で且つワイヤボンディング性を確保する役目をそれぞれ担う。この積層構造をなすTi膜、Pt膜およびAu膜は、イオンミリング装置を用いて一括でパタン化される。ボンディングパッド用金属膜のトータル膜厚に関しては、発明者の実験によれば0.02〜30μmの範囲が本実施例の効果が現れ、0.02〜5μmの範囲であればさらに効果的である。
【0015】
第一のボンディングパッド31の表面には、Auの導体バンプ4が設置されている。この導体バンプ4は、ワイヤボンディング装置を用いて、25μmのAuワイヤを溶融したAuボール(直径100μm)をボンディングパッド31にボールボンディングで形成した。導体バンプの部材に関しては、ボンディングパッド31と超音波溶接により接合が可能なものである必要があり、Auの他にAlを用いてもよい。ここで、導体バンプは高さ40〜80μmである。
【0016】
この第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ4と第二のボンディングパッドとを、Auの導体ワイヤ5を用いて電気的に接続する。ワイヤボンディングの第一回目のボンディングであるボールボンディング51は、導体バンプのない第二のボンディングパッド32に形成している。ワイヤボンディングの第二回目のボンディングであるセカンドボンディング52は、第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ4の上に形成している。
【0017】
ワイヤボンディングは、Au等の導体ワイヤと電極とを超音波によって金属を拡散させ接合するものである。ワイヤボンディングでは、接続時に印加する超音波により基板がダメージを受ける場合がある。特に、ボンディングパッドの直下がポリイミド膜のような樹脂絶縁膜の場合、前述の通り超音波によってポリイミド膜とボンディングパッドとが剥離したり、あるいはポリイミド自体が破壊したりする場合がある。ワイヤボンディングの場合、この現象は第二回目のボンディング、すなわちウェッジボンディングの際に生じる。これは、ボールボンディングの場合はボールの存在により超音波が緩和され、ポリイミドに力が掛かりにくくなっているのに対し、ウェッジボンディングの場合は超音波を緩和する部分がほとんどないためである。本実施例による構造を採ることで、セカンドボンディングの際にもボールボンディングに相当するバンプの存在によりポリイミドへ掛かる超音波が緩和され、剥離や破断といった現象を回避することができる。
【0018】
なお、本実施例による電子回路基板の構造は、図3ないし図5に示されるものであっても構わない。
図3は、第一のボンディングパッド31のみがポリイミド膜2上に形成され、第二のボンディングパッド31は、基板1上に形成されている。このような構造であっても導体バンプ4がポリイミド膜2上に形成された第一のボンディングパッド31上に設置すれば、実施例の効果は図2と同様になる。
【0019】
また、図4では、基板1上にポリイミド層21が形成され、その上層に第二のボンディングパッド32となる金属膜層とこの金属膜層の上にポリイミド層22が形成されている。第一のボンディングパッド31は、上層のポリイミド膜22上に形成されている。このような電子回路基板に対し、第一のボンディングパッド31上に導体バンプ4を形成し、導体バンプ4と第二のボンディングパッド32とをボンディングワイヤ5により電気的に接続することで、図2と同等の効果を得ることができる。
【0020】
さらに、図5は2枚の基板11、12により構成されたものである。基板11には、その上層にポリイミド膜21を形成し、その上に第一のボンディングパッド31を形成する。基板12には、ポリイミド膜22が形成され、その上に第二のボンディングパッド32を形成する。この実施例では、基板12側にもポリイミド膜22があるが、もちろん基板12上に存在しない形態でも構わない。第一のボンディングパッド31上に導体バンプ4を形成、導体バンプ4とボンディングパッド32とをボンディングワイヤ5により電気的に接続すれば、図2と同様の効果を得ることができる。
【0021】
本実施例では、基板として窒化アルミを用いたがAl2O3(アルミナ)やSiC(シリコンカーバイド)等のセラミック基板、Si(シリコン)等の半導体基板、FR−4に代表されるガラスエポキシ基板、ガラス基板などでも構わない。また、樹脂絶縁膜としてポリイミドを用いたが、ポリアミドであっても構わず、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、およびこれらを主成分とする材料を用いても構わない。
【0022】
ボンディングパッドの部材としては、Al(アルミニウム)またはAuもしくはAlを主成分とした材料でも構わない。また上述した金属膜の構成に関し、ボンディングパッドを構成するそれにおいて、導体ワイヤを接合できる前記部材は膜表面に存在すればよい。ボンディングパッドや後述する配線層をなす金属膜は、本実施例で用いたTi/Pt/Auの積層構造以外にも、Cr(クロム)/Al、Ti/Al、Ti/Ni(ニッケル)/Au、Cr/Cu(銅)/Au等の積層構造であっても良い。
【0023】
この金属膜としてCr/Cu/Auの積層構造を用いると、基板1側(基板11、12側)からCr膜、Cu膜およびAu膜(それぞれの厚さは例えば0.1/0.5/0.1μm)は、1台のスパッタリング装置で連続して順次形成できる。この積層構造において、Cr膜は接着層の役目を、Cu膜は主たる配線層の役目を、Au膜はCu表面の酸化防止とワイヤボンディング性を確保する役目をそれぞれ担い、Au膜とCu膜は、ヨウ素とヨウ化アンモンの水溶液、Cr膜はフェリシアンの水溶液でそれぞれエッチングして、パタン形成する。ボンディングパッド用金属膜として好ましい当該積層構造のトータル膜厚は、Ti/Pt/Auの積層構造のそれと同じである。
以上に記した基板、樹脂絶縁膜および金属膜(ボンディングパッド)の変形例の有用性に付いては、後述する他の実施例でも同様である。
なお、ワイヤボンディングのセカンドボンディングをステッチボンディングと呼ぶことがある。ボールボンディング、ウェッジボンディング、ステッチボンディング等は、いずれも超音波ボンディングである。また、ボンディングパッドは、結果としてボンディングする箇所であるが、配線の意味を含む。また、バンプは突起部の意味である。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の実施例2について、図6および図7を用いて説明する。ここで、図6および図7は電子回路の断面図である。
【0025】
まず、図6について説明する。実施例2においても、実施例1と同様基板1の表面にポリイミド膜2が形成されている。基板1には窒化アルミ、ポリイミド膜2にはポリイミドを用いた。ポリイミドの膜厚は2μmとした。
【0026】
ポリイミド膜2の上には、第一のボンディングパッド31および第二のボンディングパッド32が形成されている。ボンディングパッド31、32のメタライズは、Cr/Alであり、その膜厚はそれぞれ0.1/1.0μmとした。
【0027】
Cr/Alは、1台のスパッタリング装置で真空を破らずに連続して形成した。ここで、Crは接着層、Alは配線層およびワイヤボンディング層である。Alは、リン酸と酢酸と硝酸とを混合した水溶液、Crは硝酸第2セリウムアンモンと過塩素酸との水溶液でそれぞれエッチングして、パタン形成する。
【0028】
第一のボンディングパッド31および第二のボンディングパッド32上には、それぞれ第一の導体バンプ41および第二の導体バンプ42が設置されている。すなわち、本実施例と実施例1との相違点はボンディングパッド31、32の両方に導体バンプが形成されている点である。導体バンプ41、42の部材にはAuを用いた。
【0029】
第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ41と第二のボンディングパッド32上に形成された導体バンプ42とを、導体ワイヤ5を用いて電気的に接続する。本実施例ではAuワイヤを用い、ボールボンダにより形成した。ボールボンディングの第一回目のボンディングであるボールボンディング51は、導体バンプのない第二のボンディングパッド32に形成している。ボールボンディングの第二回目のボンディングであるセカンドボンディング52は、第一のボンディングパッド31上に形成された導体バンプ4の上に形成している。但し、本実施例では両方のボンディングパッドに超音波緩和用の導体パッドを形成しているので、ボールボンディングの設置場所については上記と逆であっても構わない。このような形態をとることにより、ワイヤボンディングによる剥離や樹脂破断等の不良が発生しない、良好な接続を得ることができる。
【0030】
上述の通り、実施例2ではボンディングパッド31、32のどちらにウェッジボンディングをしても構わない。また、本構造であれば、図7に示すようにウェッジボンダを用いて導体バンプ41、42上にウェッジボンディング61、62を行うことで導体ワイヤ6を接続しても同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、電子回路基板の構造に関しては、実施例1と同様図6、7以外の、図3ないし図5の構造としても同等の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態を、実施例3として図8を用いて説明する。ここで図8は、光通信・光記録などに用いられる光モジュールの平面図および断面図である。
【0033】
図8において、窒化アルミの基板1上には、Ti/Pt/Au(厚さ0.1/0.2/0.5μm)からなる配線層3が形成されている。配線層3の上層の一部には、ポリイミド膜からなる樹脂絶縁層2(厚さ2μm)が形成されている。さらに、樹脂絶縁層2の上にはTi/Pt/Au(厚さ0.1/0.2/0.5μm)からなるボンディングパッド31が形成されている。ボンディングパッド31は配線も兼ねている。ボンディングパッド31上には、ボールボンダにより形成されたAuからなる導体バンプ4が具備されている。
【0034】
一方、基板1上の配線層3の、樹脂絶縁層2の存在しない部分には、はんだ等により、半導体レーザ7が搭載されている。半導体レーザ7は、その下部にある電極71および上部にある電極72を配線に電気的に接続し、電流を印加することで発光させる。電極71は、配線層3と、図示していないがはんだにより接合されている。
【0035】
一方、電極72は、図1における第二のボンディングパッド32に相当するものである。導体ワイヤ5を用いてボンディングパッド31上の導体パッド4と半導体レーザ7の電極71を接続する。本実施例ではAuワイヤを用い、ボールボンダにより形成した。ボールボンディングの第一回目のボンディングであるボールボンディング51を電極72に形成し、ワイヤボンディングの第二回目のボンディングであるウェッジボンディング52は、導体バンプ4の上に形成している。
【0036】
配線層3と絶縁樹脂層2と配線を兼ねたボンディングパッド31とは、マイクロストリップ伝送線路を形成しているので、10Gbit/sの電気信号を効率よく半導体レーザに伝えることができる。また、このような構造を採ることで、信頼性の高い光モジュールを得ることができる。本実施例の絶縁樹脂膜は、2μmと薄いので、インピーダンスを50Ωとすると極めて小型の伝送線路を提供できるという効果もある。
【0037】
なお、半導体レーザ以外にも、フォトダイオード、光変調器などの光半導体素子、サーミスタ、コンデンサなどのチップ部品に適用することができる。
【実施例4】
【0038】
本発明の他の実施の形態を、実施例4として図9を用いて説明する。ここで図9は、高周波伝送線路の平面図および断面図である。
【0039】
図9において、窒化アルミからなる基板1の表面にはCr/Cu/Auからなる配線層3が形成されている。配線層3の上層の一部には、ポリイミド膜からなる樹脂絶縁層2が形成されている。さらに、樹脂絶縁層3の上にはCr/Cu/Auからなる配線層81、82、83を形成する。配線層81、82、83は、電気信号配線が形成しており、81と82はグランド線、83は信号線としたコプレーナ型の伝送線路の形態を示している。
【0040】
コプレーナ線路の場合、伝送特性を良好にするためには左右のグランド線81、82の電位を等しくする必要があり、その手段として左右グランド線を導体ワイヤにより電気的に接続するという方法を採用する。すなわち、図9に示す81、82が、実施例1のボンディングパッド31および32に相当する。グランド線81の上にAuからなる導体バンプ4を形成する。導体バンプ4とグランド線82とを導体ワイヤ5で電気的に接続する。
【0041】
本実施例によるコプレーナ線路は信頼性が高く、誘電体膜が2μmと薄いので、インピーダンスを50Ωとすると極めて小型の伝送線路を提供できるという効果もある。
【実施例5】
【0042】
本発明の他の実施の形態を、実施例5として図10を用いて説明する。ここで、図10は、半導体チップ9が搭載された半導体装置の平面図および断面図である。
窒化アルミからなる基板1上には、Cr/Cu/Auからなる配線層3が形成されており、その上層の一部にはポリイミド膜2が形成されている。樹脂絶縁層2の表面には、複数のボンディングパッド31が形成されている。ここで、ボンディングパッド31は、配線層も兼ねている。ボンディングパッド31上には、ボールボンダにより形成されたAuからなる導体バンプ4が具備されている。
【0043】
一方、半導体チップ9は基板1上の配線層3にダイボンディングされている。半導体チップ9の上面には電極91が存在する。この半導体チップの電極91が、図1における第二のボンディングパッド32に相当する。導体ワイヤ5を用いてボンディングパッド31上の導体バンプ4と半導体レーザ7の電極71を接続する。導体ワイヤは、Auワイヤを用い、ワイヤボンダにより形成した。ワイヤボンディングのファーストボンディングであるボールボンディング51を電極72に形成し、セカンドボンディング52は、導体バンプ4の上に形成している。このような構造を採ることで、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【実施例6】
【0044】
本発明の他の実施の形態である電子回路の製造方法について、実施例6として、図11を用いて説明する。ここで、図11はワイヤボンディングの工程を説明する図である。
【0045】
図11(a)において、窒化アルミからなる基板1上には、ポリイミド膜2が形成されており、その上には第一のボンディングパッド31と第二のボンディングパッド32が形成されている。ここでボンディングパッド31、32は、Ti/Pt/Au(0.1/0.2/0.5μm)である。
【0046】
まず、第一のボンディングパッド31に導体バンプを形成する。バンプの形成には、Auワイヤを用いるワイヤボンダを使用した。第一のボンディングパッド31にワイヤボンダのキャピラリ10を近づける。図11(b)で、先端にボール53が形成されたAuワイヤ5をパッド31に接触させ、超音波出力を印加することで第一回目のボンディングを行う。これにより第一のボンディングパッド31とAuのボール53は超音波溶接される。
【0047】
次に、図11(c)でキャピラリ10を一旦上に上げ、再びパッド31に接合したボール53の直上にキャピラリ10を着地させ、第二回目のボンディングを行う(図11(d))。その後、キャピラリ10を上昇させるとAuワイヤは切断され、導体バンプ4が完成する(図11(e))。
【0048】
次に、図11(f)で第二のボンディングパッド32にキャピラリを近づけ、ボールボンディングを行いパッド32とAuのボール51とを超音波溶接させる(図11(g))。キャピラリを一旦上昇させ(図11(h))、ワイヤのループを形成ながら第一のボンディングパッド31にキャピラリ10を近づけ、第一のボンディングパッド31の表面に形成した導体バンプ4の直上にキャピラリ10を着地させ、再び超音波を印加することにより導体バンプ4と導体ワイヤ5とを接合させる(図11(i))。最後にキャピラリ10を上昇させるとAuワイヤは切断され導体バンプ4の上にボンディング52が形成される(図11(j))。
【0049】
上記の工程に従い製造することで、樹脂絶縁膜上のボンディングパッドにワイヤボンディングしても樹脂とパッドとの界面での剥離や樹脂の破断等の不良を起こさない、接続性の良好な電子回路の製造方法を提供することができる。
【0050】
なお、上述した実施例は1台のワイヤボンダで、バンプ形成とワイヤボンディングとを行ったが、図11(a)から図11(e)までのボールバンピングは、専用のボンダで行い、図11(f)から図11(j)までをワイヤボンダで実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】樹脂絶縁膜上のボンディングパッドへのセカンドボンディングの問題を説明する図である。
【図2】電子回路の断面図である。
【図3】電子回路の断面図である。
【図4】電子回路の断面図である。
【図5】電子回路の断面図である。
【図6】電子回路の断面図である。
【図7】電子回路の断面図である。
【図8】光モジュールの平面図および断面図である。
【図9】伝送線路の平面図および断面図である。
【図10】半導体装置の平面図および断面図である。
【図11A】電子回路の製造工程を説明する図(その1)である。
【図11B】電子回路の製造工程を説明する図(その2)である。
【符号の説明】
【0052】
1、11、12…基板、2、21、22…ポリイミド膜、3…配線層、31、32…ボンディングパッド(配線)、4…Auバンプ、5、6…Auワイヤ、51、52、61、62…導体ワイヤのボンディング部、7…レーザ素子、71、72…光半導体素子の電極、81、82、83…配線層、9…半導体チップ、91…半導体チップの電極、10…キャピラリ、101…ポリイミドとパッド間の剥離部、102…ポリイミドの破断部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜上に形成した金属膜とを含む電子回路であって、
前記金属膜上には、導体ワイヤを超音波ボンディングするバンプが更に形成されていることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜の表面に形成された金属膜からなる第1のボンディングパッドと、この第1のボンディングパッド上に形成されたバンプと、前記第1のボンディングパッドと電気的接続をされた第2のボンディングパッドとからなる電子回路であって、
前記電気的接続は、前記第2のボンディングパッドと前記バンプとの間の接続する金属ワイヤによりなされていることを特徴とする電子回路。
【請求項3】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜の表面に形成された金属膜をパタンニングすることによって第1配線、第2配線、第3配線が形成され、前記第2配線を間に挟んだ前記第1配線と前記第3配線とが電気的に接続されてなる電子回路であって、
前記第1配線にはバンプが形成され、このバンプと前記第3配線とが金属ワイヤにより接続されていることを特徴とする電子回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電子回路であって、
前記樹脂絶縁膜はポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂のいずれかを主成分とする部材であることを特徴とする電子回路。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電子回路であって、
前記バンプがAu、Alのいずれか、あるいはこれらのいずれかを主成分とする部材であることを特徴とする電子回路。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電子回路であって、
前記金属膜の表層がAu、Alのいずれか、もしくはこれらのいずれかを主成分とする部材であることを特徴とする電子回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電子回路であって、
前記金属膜の膜厚は0.02μmを超え30μm以下であることを特徴とする電子回路。
【請求項8】
基板に樹脂絶縁膜を形成する工程と、
前記樹脂絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜をパタンニングする工程と、
パタンニングされた金属膜に導体ワイヤを超音波ボンディングするバンプを形成する工程と、
からなる電子回路の製造方法。
【請求項9】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜の表面に形成された金属膜からなる第一のボンディングパッドと第二のボンディングパッドとを具備してなる電子回路の製造方法であって、
前記第一のボンディングパッドに導体バンプを形成する工程と、
前記第二のボンディングパッドにワイヤボンディングの第一回目のボンディングを行う工程と
前記導体バンプにワイヤボンディングの第二回目のボンディングを行い、前記第一のボンディングパッドと前記第二のボンディングパッドとを電気的に接続する工程と、
を含む電子回路の製造方法。
【請求項1】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜上に形成した金属膜とを含む電子回路であって、
前記金属膜上には、導体ワイヤを超音波ボンディングするバンプが更に形成されていることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜の表面に形成された金属膜からなる第1のボンディングパッドと、この第1のボンディングパッド上に形成されたバンプと、前記第1のボンディングパッドと電気的接続をされた第2のボンディングパッドとからなる電子回路であって、
前記電気的接続は、前記第2のボンディングパッドと前記バンプとの間の接続する金属ワイヤによりなされていることを特徴とする電子回路。
【請求項3】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜の表面に形成された金属膜をパタンニングすることによって第1配線、第2配線、第3配線が形成され、前記第2配線を間に挟んだ前記第1配線と前記第3配線とが電気的に接続されてなる電子回路であって、
前記第1配線にはバンプが形成され、このバンプと前記第3配線とが金属ワイヤにより接続されていることを特徴とする電子回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電子回路であって、
前記樹脂絶縁膜はポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂のいずれかを主成分とする部材であることを特徴とする電子回路。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電子回路であって、
前記バンプがAu、Alのいずれか、あるいはこれらのいずれかを主成分とする部材であることを特徴とする電子回路。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の電子回路であって、
前記金属膜の表層がAu、Alのいずれか、もしくはこれらのいずれかを主成分とする部材であることを特徴とする電子回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電子回路であって、
前記金属膜の膜厚は0.02μmを超え30μm以下であることを特徴とする電子回路。
【請求項8】
基板に樹脂絶縁膜を形成する工程と、
前記樹脂絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜をパタンニングする工程と、
パタンニングされた金属膜に導体ワイヤを超音波ボンディングするバンプを形成する工程と、
からなる電子回路の製造方法。
【請求項9】
基板と、この基板に形成された樹脂絶縁膜と、この樹脂絶縁膜の表面に形成された金属膜からなる第一のボンディングパッドと第二のボンディングパッドとを具備してなる電子回路の製造方法であって、
前記第一のボンディングパッドに導体バンプを形成する工程と、
前記第二のボンディングパッドにワイヤボンディングの第一回目のボンディングを行う工程と
前記導体バンプにワイヤボンディングの第二回目のボンディングを行い、前記第一のボンディングパッドと前記第二のボンディングパッドとを電気的に接続する工程と、
を含む電子回路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2006−253289(P2006−253289A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65431(P2005−65431)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000233228)日立協和エンジニアリング株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000233228)日立協和エンジニアリング株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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