説明

電子回路装置

【課題】信号の遅延時間を調整することにより、インピーダンス不整合によって発生するディターミニスティックジッタを低減することが可能な電子回路装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の代表的な構成は、高速シリアル伝送により伝送路106を通じてドライバ104からレシーバ108へ信号を伝達する電子回路装置100であって、伝送路106上のインピーダンス不整合点の上流側または下流側の近傍に、このインピーダンス不整合点のキャパシタンスとの間で遅延回路を構成するインダクタ112、LC回路114またはLCR回路を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速シリアル伝送により伝送路を通じてドライバからレシーバへ信号を伝達する電子回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の情報通信技術の発達は著しく、データ通信においても高速化が進む一方となっている。例えばシリアルATA、ファイバーチャネル(Fibre Channel)、ピーシーアイエクスプレス(PCI Express)等に代表される高速ディジタル・シリアル通信においてはそのビットレートは数Gbps(Gigabit per second)以上に及び、ギガヘルツ(GHz)帯域の信号が伝送されている。
【0003】
電気信号の伝送路においては、インピーダンスの不整合があると、伝達される電力の効率が低下する。さらに高速シリアル伝送のように高周波を伝送する場合には、インピーダンスの不整合点において反射が生じ、本来の信号にノイズとして重畳される。このようなノイズによって信号の立ち上がりおよび立ち下がりが時間軸方向に変動し、いわゆるディターミニスティックジッタ(以後ジッタと省略)が発生する。そのため、高速シリアル伝送ではインピーダンス整合は極めて重要であり、通常、ドライバの出力インピーダンス、伝送路の特性インピーダンスおよびレシーバの入力インピーダンスが整合するように設計されている。
【0004】
しかし、ドライバやレシーバなどのLSIに包含される保護ダイオードやトランジスタには寄生容量が存在する。一般に、寄生容量は、信号が高周波化するほどその影響が増大する。同様に、低周波域では寄生容量が問題とならなかったコネクタや回路パターンにも信号の周波数が高くなると寄生容量が発生し、インピーダンス不整合点となってしまう。高速シリアル通信において今後さらに周波数が高められていく中で、完全にインピーダンスを整合させることは事実上不可能である。
【0005】
また、伝送路の特性インピーダンスは、その線路長によって変化する。したがって、インピーダンス整合を考慮する場合には当然に線路長を設定するが、高機能化に伴って増加する素子やLSIの配置、小型化による基板の小サイズ化などの制約を受けることにより、過不足なく所望の線路長に設定することが難しい。
【0006】
そこで、従来からジッタを低減するための様々な技術が提案されている。特許文献1には、自動車等に搭載される車載機器において、ツイストペア線に中継コネクタが介在してなる伝送路の上流側に、信号の進行波を最小パルス幅のλ/4時間遅延させる反射波遅延手段を設ける技術が開示されている。特許文献1では、上記構成により中継コネクタをインピーダンス不整合点として進行波の一部が反射しても、進行波と反射波の位相(半周期)を合わせることができ、ジッタを低減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−54100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、中継コネクタのみがインピーダンス不整合点となる場合を想定している。しかし、高速シリアル伝送では寄生容量の影響が増大することから、ドライバやレシーバがインピーダンス不整合点となる可能性がある。
【0009】
インピーダンス不整合点が複数存在する場合には、特許文献1のように信号の進行波を最小パルス幅のλ/4時間遅延させたとしても、必ずしもジッタが低減されるわけではない。換言すれば、特許文献1はその明細書内に開示されている通り、中継コネクタのみがインピーダンス不整合点となる理想的なモデルでしか効果を奏するものではない。その上、特許文献1には、如何にして最小パルス幅のλ/4時間遅延させる反射波遅延手段(インダクタ)を設けるのか一切開示されていない。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、信号の遅延時間を調整することにより、インピーダンス不整合によって発生するディターミニスティックジッタを低減することが可能な電子回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討し、高速シリアル伝送では伝送路の線路長の変化に対し周期的にジッタが増減することを見出した。すなわち、様々な箇所に寄生容量が発生するものの、最終的に線路長をパラメータとして包括的にジッタの増減を制御できる可能性を見出した。しかし、上記したように、様々な制約によって線路長は所望の長さに設定することが難しい。そこで、信号の遅延時間を調整してジッタの増減周期をずらすとともに、いかにして簡易かつ確実に遅延時間を調整できるかについてさらに研究を重ねることにより、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の代表的な構成は、高速シリアル伝送により伝送路を通じてドライバからレシーバへ信号を伝達する電子回路装置であって、伝送路上のインピーダンス不整合点の上流側または下流側の近傍に、このインピーダンス不整合点のキャパシタンスとの間で遅延回路を構成するインダクタ、LC回路またはLCR回路を備えていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、遅延回路を構成する素子の値(組み合わせ)を変えることで、任意の(実際の)線路長に対してジッタの増減周期のディップとなるように調整することが可能である。よって、ジッタの低減を図ることができる。
【0014】
加えて、LC回路またはLCR回路の構成によっては、インピーダンス整合回路としても動作する回路を構成することができる。すなわち、インピーダンス整合を行いつつ、任意の(実際の)線路長に対してジッタの増減周期のディップとなるように調整することが可能である。これにより、信号の反射自体を低減させることができるため、より高いジッタ低減効果を得ることができる。
【0015】
上記遅延回路は、インピーダンス不整合点から伝送される信号の基本波波長λの1/8以下の距離に備えられているとよい。ここで、基本波波長λ=v・2/BR(vは伝送路を信号が伝播する速度、BRは信号のビットレート)の関係を満たすものとする。これにより、インピーダンス不整合点に存在する素子(LSIやコネクタなど)と、伝送路に挿入されたインダクタ、LC回路またはLCR回路とを一体の回路とみなすことができ、それぞれが独立してインピーダンス不整合点(反射点)となることを防止できる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、高速シリアル伝送により伝送路を通じてドライバからレシーバへ信号を伝達する電子回路装置であって、伝送路上のインピーダンス不整合点の上流側または下流側の近傍に、このインピーダンス不整合点のキャパシタンスとの間で遅延回路を構成するインダクタ、LC回路またはLCR回路を備え、シミュレータ解析によって、少なくとも、信号のビットレートと、インダクタ、LC回路またはLCR回路の素子の値と、インピーダンス不整合点のキャパシタンスと、伝送路の線路長と、伝送路の特性インピーダンスとを用いて、伝送路に流れる信号が遅延回路によって遅延させられることにより、線路長の変化に対して周期的に増減するジッタがこの伝送路の線路長において小さくなるように、素子の値を算定したことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、任意の(実際の)線路長において、ジッタのディップとなるように増減周期をずらすことが可能な遅延回路を構成する素子の値を適切に算定可能である。これにより、好適かつ確実にジッタを低減させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信号の遅延時間を調整することにより、インピーダンス不整合によって発生するディターミニスティックジッタを低減することが可能な電子回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる電子回路装置の第1実施形態を例示する図である。
【図2】ジッタの特性について説明する図である。
【図3】線路長105mmの伝送路のレシーバ入力波形、およびインダクタ挿入による調整後のレシーバ入力波形を例示する図である。
【図4】本発明にかかる電子回路装置の第2実施形態を例示する図である。
【図5】本発明にかかる電子回路装置の第3実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明にかかる電子回路装置の第1実施形態を例示する図である。図1(a)は電子回路装置の構成を示す概略図であって、図1(b)はインダクタ挿入による調整後の図1(a)の概略図である。電子回路装置100は、高速シリアル伝送により一定のビットレートで信号を伝送する。
【0022】
図1(a)に例示するように、電子回路装置100は差動構成である。すなわち、波形発生回路102で生成されドライバ104に印加された信号は、一対の差動ドライバ出力端子104aよりそれぞれが逆位相で出力される。そして、2本の伝送路106を通じて一対の差動レシーバ入力端子108aよりレシーバ108に印加され、その差をとって合成される。
【0023】
伝送路106の特性インピーダンスに、ドライバ104の出力インピーダンスやレシーバ108の入力インピーダンスが一致していない場合には、そこで信号の一部が反射して反射波となる。かかる反射波によって、ディターミニスティックジッタが発生する。
【0024】
本実施形態では、伝送路106上のインピーダンス不整合点の上流側または下流側の近傍に、インピーダンス不整合点のキャパシタンスとの間で遅延回路を構成するインダクタ112を挿入する。これにより、信号の遅延時間を調整して、ジッタの低減を図ることが可能である。
【0025】
具体的には、図1(b)に例示するように、追加で素子を挿入可能に形成された素子実装部110bに、所定のインダクタンスを持つインダクタ112を実装する。ここでは、レシーバ108上流に形成された素子実装部110bにインダクタ112を実装しているが、ドライバ104下流に形成された素子実装部110aにインダクタ112を実装してもよい。すなわち、インダクタ112の挿入位置はインピーダンス不整合点の近傍であればよく、素子実装部110a、110b双方に挿入してもよい。素子実装部110a、110bにインダクタを実装しない場合には、伝送路106を単に短絡することができる。
【0026】
なお、素子実装部110a、110bは、ドライバ104やレシーバ108(インピーダンス不整合点)から、伝送される信号の基本波波長λの1/8以下の距離に備えられているとよい。換言すれば、インピーダンス不整合点から遅延回路の端までの距離が基本波波長λの1/8以下の距離であるとよい。これより、ドライバ104やレシーバ108と実装されるインダクタ112とを一体の回路とみなすことができ、それぞれが独立して反射点となることを防止できる。
【0027】
図2は、ジッタの特性について説明する図である。図2(a)は図1(a)の電子回路装置の伝送路の線路長に対するジッタ値を例示しており、図2(b)はインダクタ挿入による調整後の図1(b)のジッタ値を例示している。
【0028】
図2(a)に例示するように、電子回路装置100では伝送路106の線路長の変化に対し、周期的にジッタが増減する。ここでは、線路長が約101mm、約105mm、約109mmのときにジッタのピーク(最大値)となり、線路長が約103mm、約107mmのときにジッタのディップ(最小値)となる。
【0029】
ジッタの増減周期は、ビットレートが一定の場合、伝送路106における信号の遅延時間に依存する。すなわち、伝送路106に挿入するインダクタ112のインダクタンスの変動に伴い、ジッタの増減周期は変遷する。なお、レシーバ108にて反射した信号の一部がバックマッチせずにドライバ104で反射し、進行波と干渉する(両端が反射点となる)場合のみを想定すると、ジッタのピークからディップまでの間隔はλ/8となる。また、ジッタのピークから次のピークまでの間隔(増減周期)はλ/4となる。
【0030】
図2(b)に例示するように、素子実装部110bにインダクタ112を実装すると、そのインダクタ112のインダクタンスの値に基づき、線路長に対するジッタの増減周期がずれる。これより、シミュレータ解析を行い、如何なる大きさのインダクタンスを持つインダクタ112を伝送路106に挿入すれば、任意の線路長においてジッタのディップとなるように増減周期をずらすことができるかを算定する。
【0031】
シミュレータ解析には、少なくとも、伝送される信号のビットレートBRと、インダクタ112のインダクタンスLと、インピーダンス不整合点のキャパシタンスCtxi(Ctxo)と、伝送路106の線路長Mと、伝送路106の特性インピーダンスZ0とが用いられる。例えば、表1に例示するようなデータテーブルを作成し、各々の数値入力によって、任意の線路長xにおいてジッタが小さくなるようにインダクタ112のインダクタンスの大きさを算定可能にするとよい。
【0032】
【表1】

【0033】
なお、表1は例示であって、シミュレータ解析に必ずしもこれらのパラメータの全てを用いる必要はない。また、当然ながらシミュレータ解析に他のパラメータを採用してもよい。他のパラメータとしては、ジッタの増減に影響を与える信号のエッジの立ち上がり周波数等が挙げられる。
【0034】
図2(a)を参照して例示すれば、素子配置等の制限から伝送路106の線路長が105mmになってしまった場合には、ジッタがピークとなる。しかし、上述したシミュレータ解析によって、線路長が105mmのときにジッタのディップがくるように、ジッタの増減周期を移動させるインダクタ112のインダクタンス(ここでは0.6nH)を算定することができる。これより、0.6nHのインダクタ112を素子実装部110bに実装し、ジッタを好適かつ確実に低減可能となる。ここでは、ジッタ値を13ps_ppから5ps_ppまで低減可能である(図2(b)参照)。
【0035】
なお、素子実装部110bは、例えばプリント基板上に形成されたインダクタ112を追加可能な部品パッドとして形成することができる。勿論、素子実装部110bは、インダクタ112をワイヤボンディングによって伝送路106に挿入するものでもよい。
【0036】
図3は、線路長105mmの伝送路のレシーバ入力波形、およびインダクタ挿入による調整後のレシーバ入力波形を例示する図である。図3(a)では、線路長105mmの図1(a)の電子回路装置のレシーバ入力波形を例示している。図3(b)では、伝送路に0.6nHのインダクタを挿入した図1(b)の電子回路装置のレシーバ入力波形を例示している。
【0037】
図3(a)と図3(b)とを比較すると、図3(b)ではレシーバ入力波形のゼロクロスポイントが明らかにそろっていることが分かる。故に、シミュレータ解析に基づくインダクタ112の挿入により、ジッタが低減され、ビットエラーレートが向上することが証明された。
【0038】
上記説明したごとく、本実施形態にかかる電子回路装置100によれば、遅延回路を構成するインダクタ112のインダクタンスの値を変えることでジッタのピークおよびディップの位置を変動させることができ、実際の線路長に対してジッタがディップとなるように調整することが可能である。したがって、回路の各所に生じる寄生容量を正確に把握しなくても、また伝送路106の線路長を所望の長さに設定できなくても、インダクタンスを適宜調整するだけでジッタを低減させることができる。
【0039】
[第2実施形態]
図4は、本発明にかかる電子回路装置の第2実施形態を例示する図である。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0040】
第1実施形態では、伝送路106にインダクタ112を挿入し、インピーダンス不整合点のキャパシタンスとインダクタ112とで、信号の遅延時間を調整する遅延回路を構成した。一方、第2実施形態では、伝送路106にLC回路114を挿入し、インピーダンス不整合点のキャパシタンスとLC回路114とで、信号の遅延時間を調整する遅延回路を構成する。
【0041】
すなわち、図4に例示するように、追加で素子を挿入可能に形成された素子実装部110bに、インダクタ112やコンデンサ116を実装して、伝送路106にLC回路114を挿入する。当然ながら、これらをドライバ104の下流側の素子実装部110aに実装してもよいし、レシーバ108の上流側の素子実装部110bと双方に実装してもよい。
【0042】
本実施形態の特徴の1つとして、LC回路114をインピーダンス整合回路としても動作させることが可能である。すなわち、シミュレータ解析によって、インピーダンスを整合させ、かつ、任意の線路長においてジッタのディップとなるように増減周期をずらすインダクタ112とコンデンサ116の組み合わせを決定することができる。これにより、信号の反射自体を低減させることができるため、より高いジッタ低減効果を得ることができる。
【0043】
なお、LC回路114によるインピーダンス整合は、既知の素子のインピーダンスに対し計算式上で整合させるものである。したがって、寄生容量の影響が問題となる高速シリアル伝送において、反射波を完全に無くすことは事実上不可能である。加えて、インピーダンス整合において、LC回路114のカットオフ周波数が信号の周波数よりも低い場合には、計算式の上ではインピーダンス整合していても、実際にはインピーダンス整合しなくなる問題も存在する。このようにインピーダンス整合が不完全であっても、本発明のように任意の線路長においてジッタのディップとなるように増減周期をずらすことにより、極めて効果的にジッタの低減を図ることができる。
【0044】
以上、本実施形態にかかる電子回路装置100について説明した。なお、上記説明では、LC回路114を伝送路106に挿入する場合について詳述したが、これに換えてLCR回路を伝送路106に挿入してもよい。当然ながら、LCR回路もその素子の組み合わせにより、インピーダンス整合回路として動作させつつ、任意の線路長においてジッタのディップとなるように増減周期をずらすことが可能である。
【0045】
[第3実施形態]
図5は、本発明にかかる電子回路装置の第3実施形態を例示する図である。なお、第3実施形態では、上記第1実施形態と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0046】
図5に例示するように、伝送路106にインピーダンス不整合点となる中継コネクタ118が存在していても、本発明を適用可能である。すなわち、追加で素子を挿入可能に形成された中継コネクタ118近傍の素子実装部110c、110dに、所定のインダクタンスを持つインダクタ112を実装し、ジッタの低減を図ることができる。
【0047】
なお、図示しないが、中継コネクタ118の近傍に加えて、ドライバ104やレシーバ108の近傍の素子実装部110a、110bにもインダクタ112を実装してよい。すなわち、インピーダンス不整合点ごとに、換言すれば反射波が発生する箇所ごとに、ジッタがディップとなるように遅延させる遅延回路を構成させることが好ましい。また、インダクタ112に換えて、LC回路114またはLCR回路を伝送路106に挿入しても同様の効果を奏することが可能である。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明した。上述した電子回路装置100によれば、製造上のばらつき等によって伝送路106の線路長がジッタのピークに相当するものにできあがってしまった場合でも、後からインダクタ112やLC回路114あるいはLCR回路を追加して、ジッタの低減を図ることができる。そのため、線路長のずれが予め想定されたり、伝送路106の単位長さあたりの信号の遅延時間が設計値通りにならない場合に特に有効である。
【0049】
なお、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。すなわち、上記実施形態では、差動構成の電子回路装置100について例示したが、シングルエンド構成のものも本発明に包含される。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、高速シリアル伝送により伝送路を通じてドライバからレシーバへ信号を伝達する電子回路装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
100 …電子回路装置
102 …波形発生回路
104 …ドライバ
104a …差動ドライバ出力端子
106 …伝送路
108 …レシーバ
108a …差動レシーバ入力端子
110a〜110d …素子実装部
112 …インダクタ
114 …LC回路
116 …コンデンサ
118 …中継コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速シリアル伝送により伝送路を通じてドライバからレシーバへ信号を伝達する電子回路装置であって、
前記伝送路上のインピーダンス不整合点の上流側または下流側の近傍に、該インピーダンス不整合点のキャパシタンスとの間で遅延回路を構成するインダクタ、LC回路またはLCR回路を備えていることを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記遅延回路は、前記インピーダンス不整合点から伝送される信号の基本波波長λの1/8以下の距離に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
高速シリアル伝送により伝送路を通じてドライバからレシーバへ信号を伝達する電子回路装置であって、
前記伝送路上のインピーダンス不整合点の上流側または下流側の近傍に、該インピーダンス不整合点のキャパシタンスとの間で遅延回路を構成するインダクタ、LC回路またはLCR回路を備え、
シミュレータ解析によって、少なくとも、
前記信号のビットレートと、
前記インダクタ、LC回路またはLCR回路の素子の値と、
前記インピーダンス不整合点のキャパシタンスと、
前記伝送路の線路長と、
前記伝送路の特性インピーダンスとを用いて、
前記伝送路に流れる信号が前記遅延回路によって遅延させられることにより、線路長の変化に対して周期的に増減するジッタが該伝送路の線路長において小さくなるように、前記素子の値を算定したことを特徴とする電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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