電子放出素子とこれを用いた電子線装置、画像表示装置
【課題】積層型の電子放出素子を備えた電子線装置において、電子が放出される電子放出点を制御して電子放出効率の向上を図る。
【解決手段】基板1上に、絶縁部材3、ゲート5を形成し、絶縁部材3に凹部7を形成し、絶縁部材3の側面に配置されるカソード6のゲート5に対向する端部において、凹部7の縁よりゲート5に向かって突起する突起部分を設け、該突起部分の幅方向においてゲート5との間隔が1nm以上5nm以下となる凸部を、カソード6の幅方向において10%以下の割合で有する素子とする。
【解決手段】基板1上に、絶縁部材3、ゲート5を形成し、絶縁部材3に凹部7を形成し、絶縁部材3の側面に配置されるカソード6のゲート5に対向する端部において、凹部7の縁よりゲート5に向かって突起する突起部分を設け、該突起部分の幅方向においてゲート5との間隔が1nm以上5nm以下となる凸部を、カソード6の幅方向において10%以下の割合で有する素子とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイに用いられる、電子を放出する電子放出素子を備えた電子線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カソードから出た電子の多数が対向するゲートに衝突、散乱した後に電子として取り出される電子放出素子が存在する。このような形態で電子を放出する素子として表面伝導型電子放出素子や積層型の電子放出素子が知られており、特許文献1には、積層型の電子放出素子であって、電子放出部近傍の絶縁層に凹部(リセス部)を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−167693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特許文献1に開示されたような積層型の電子放出素子を備えた電子線装置において、電子が放出される電子放出点を制御して電子放出効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、絶縁部材と、
前記絶縁部材の表面に配置されたカソードと、
前記カソードの先端と対向して前記絶縁部材の表面に配置されたゲートとを有する電子放出素子であって、
前記絶縁部材は、前記カソードの先端が位置する表面に凹部を有しており、前記カソードの先端は前記絶縁部材の表面の凹部の縁から前記ゲートに向けて突起する突起部分を有し、
前記突起部分に、前記ゲートとの間隔が1nm以上5nm以下の複数の凸部を有し、該複数の凸部の、前記突起部分の前記凹部の縁に沿った方向の長さに対する存在率が10%以下であり、該凸部の平均高さをh、隣り合う凸部同士の平均距離をλとした時、以下の関係を満たすことを特徴とする。
【0006】
2×h≦λ
【0007】
本発明の第2は、上記本発明の電子放出素子と、該電子放出素子のゲートを介在させてカソードの先端と対向配置されたアノードとを有することを特徴とする電子線装置である。
【0008】
本発明の第3は、上記本発明の電子線装置と、前記アノードと積層して位置する発光部材とを有することを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子放出素子のカソード先端の凸部から効率良く電子が放出され、アノードに達することができるため、電子放出効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電子放出素子の好ましい実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の電子放出素子の電子放出特性を測定する系を模式的に示す図である。
【図3】図1の電子放出素子の部分拡大模式図である。
【図4】本発明の電子放出素子の電子放出部の拡大模式図と、ゲートとカソードとの間隔と電子放出効率の関係を示す図である。
【図5】本発明の電子放出素子のカソードの突起部分に設けた凸部の作用効果を説明するための図である。
【図6】本発明の電子放出素子の製造工程を示す断面模式図である。
【図7】本発明の画像表示装置の一例の表示パネルの構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の電子放出素子のカソード材料の成膜量とカソードの突起部分の凹凸具合の関係、及びカソード材料のスパッタ圧力と粒塊の大きさとの関係を示す図である。
【図9】本発明の実施例1の電子放出素子のゲートとカソードとの間隔、カソード先端の凸部形状、及び凸部同士の間隔の分布を示す図である。
【図10】本発明の実施例1において得られた、ゲートとカソードとの間隔と素子抵抗との関係を示す図である。
【図11】本発明の電子放出素子の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図12】図11の電子放出素子の電子放出部の拡大模式図である。
【図13】本発明の実施例3の電子放出素子のゲートとカソードの先端形状、ゲートとカソードとの間隔、カソード先端の凸部同士の間隔の分布を示す図である。
【図14】本発明の電子放出素子の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図15】本発明の電子放出素子の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、電子放出素子内に電界強度の増す部分(強い部分)を選択的に作ることができ、その結果、好ましい形態においては電子放出部における電子放出点の位置制御を、単純な構成で実現し、かつ安定に動作されるように鋭意検討されたものである。
【0013】
最初に安定放出を可能とした本発明に係る電子放出素子の構成について、好ましい実施形態を挙げて説明する。
【0014】
本発明の電子線装置は、電子を放出する電子放出素子と、該電子放出素子から放出された電子が到達するアノードとを備えている。
【0015】
本発明の電子放出素子は、絶縁部材の表面にゲートとカソードとを互いに先端が対向するように備えている。該絶縁部材は、カソードの先端が位置する表面に凹部を有しており、前記カソードの先端は前記絶縁部材の表面の凹部の縁から前記ゲートに向けて突起する突起部分を有している。
【0016】
本発明の電子線装置は、上記本発明の電子放出素子と、該電子放出素子のゲートを介在させてカソードの先端と対向配置されたアノードとを有する。
【0017】
図1(A)は本発明の好ましい実施形態の電子放出素子の構成を模式的に示す平面模式図であり、図1(B)は図1(A)におけるA−A’線での断面模式図である。また、図1(C)は図1(A)において素子を紙面右側から見た側面図である。
【0018】
図1中、1は基板、2は電極、3は絶縁部材であって、絶縁層3aと3bの積層体からなる。5はゲート、6はカソードであって電極2に電気的に接続されている。7は絶縁部材3の凹部であって、本例では絶縁層3bの側面のみを絶縁層3aよりも内側に凹ませて形成している。8は電子放出に必要な電界が形成される間隙(カソード6の先端からゲート5の底面までの最短距離)である。
【0019】
本発明の電子放出素子においては、図1に示すように、ゲート5が絶縁部材3の表面(本例では上面)に形成されている。一方、カソード6も絶縁部材3の表面(本例では側面)に形成され、凹部7を挟んでゲート5に対向する側に凹部7の縁からゲート5に向かって突起する突起部分を有している。よって、カソード6は該突起部分において、間隙8を介してゲート5と対向している。尚、本発明においては、カソード6はゲート5よりも低電位に規定される。また、図1では不図示であるが、ゲート5を介して(介在させて)カソード6と対向する位置には、これらよりも高電位に規定されたアノードを有している(図2の20)。
【0020】
図2に、本発明の電子放出素子の電子放出特性を測定する時の電源の供給配置を示す。図2に示すように、本発明の電子線装置においては、ゲート5を介在させて、アノード20をカソード6の突起部分に対向配置させる。本例においては、絶縁部材3が基板1上に配置しているため、アノード20は該基板1の絶縁部材3が配置している側に、該基板1に対向して配置されているとも言える。
【0021】
図2において、Vfは素子のゲート5とカソード6の間に印加される電圧、Ifはこの時流れる素子電流、Vaはカソード6とアノード20の間に印加される電圧、Ieは電子放出電流である。
【0022】
ここで、電子放出効率ηとは素子に電圧を印加した時に検出される電流Ifと真空中に取り出される電流Ieを用いて、一般には効率η=Ie/(If+Ie)で与えられる。
【0023】
図3に電子放出部の拡大模式図を示す。図3において、6Aは、カソード6が、ゲート5に対向する側の先端に有する突起部分であって、該突起部分6Aは、凹部7の縁よりもゲート5に向けて突起する。10はアノードに向かって放出される電子の軌道を示す。
【0024】
図2の系で電子放出素子に駆動電圧Vfを印加した場合の電界集中の様子を図4を用いてさらに詳しく説明する。図4(A)は図1(B)の凹部7の拡大模式図であり、図4(B)は図1(C)の凹部7の拡大模式図である。図中4(A),(B)中、12,13は凹部7に形成される電気力線を模式的に示している。電界の強弱はこの電気力線の密度により決定され、電気力線の密度が高いほど電界が強い。図4(A),(B)には便宜的に二次元的な真空領域に形成される電気力線しか示していないが、実際には電気力線は三次元的に形成され、さらに絶縁層の中にも電気力線が広がっている。
【0025】
図4(A)に示すように、本発明に係るカソード6の先端の突起部分6Aは凹部7の縁からhの高さで突き出た形状となっている。図4(A)に示すように、電気力線12は凹部7内に形成された突起部分6Aに向かって電気力線13が曲がることで突起部分6Aの先端に電気力線の密度が増える。従って、突起部分6A先端の電界が凹部7内に形成される電界としては一番強くなる(Emax-A)。
【0026】
さらに、図4(B)に示すように、突起部分6Aに加えて、突起部分6Aの先端に凸部6Bが存在する部分では、凸部6Bの高さの分だけ突起部分6Aの先端からゲート5までの距離が小さくなる。従って、凸部6Bの先端ではより電界が強くなる。従って、凹部7の縁に沿った方向で見た場合、凸部6Bでの電界が一番強くなる。このため、本発明の電子放出素子では、凸部6Bが電子放出部となると考えられる。
【0027】
ここで、図4(B)におけるカソード6と、ゲート5との距離を間隔dとおく。即ち、間隔dは、図2における、カソード6とアノード20の対向方向(図中のZ方向)における、カソード6の先端とゲート5との距離である。但し、カソード6の形状によっては前述の方向(Z方向)で測長した間隔より、カソード6とゲート5との実際の間隔が大きい場合がある。その場合は、間隔dや凸部の観察・測長は、間隔8が一番広く見える角度から測長すればよい。換言すると、カソードの突起部分または凸部の先端とこれに対向するゲート部分とを結ぶ線分と直交する線分の延びる方向から側長すればよい。間隔dは、カソード6の突起部分6Aの先端に凸部6Bがあるので、凸部6Bの有無や凸部6Bの高さに応じ、場所によって異なる。本発明の電子放出素子においては、カソード6とゲート5との間隔dが1nm以上5nm以下となる凸部6が存在する。その理由について説明する。
【0028】
電子を放出させるのに必要な駆動電圧を30V以下に抑える観点から、ゲート5とカソード6との間隔dは5nm以下であることが好ましい。間隔dが5nm以下であれば、駆動電圧30Vで60MV/cm以上の電界強度が得られ、凸部6Bより電子放出すると考えられる。また、駆動時の安定性の観点から、電子放出部となる凸部6Bは間隔dが1nm以上となることが好ましい。1nmより小さい凸部6Bは、電界蒸発や放電、短絡などにより駆動時に素子が破壊する可能性がある。以下、本発明に係る凸部6Bの作用効果について詳細に説明する。
【0029】
(凸部6Bの作用効果)
(電子放出における散乱の説明)
図3においてカソード6の凸部6Bから対向するゲート5に向かって放出された電子は、一部がゲート5の先端部で等方的に散乱し、残りは衝突することなく外部に引き出される。しかしながら、多くの電子はゲート5で散乱する。本発明者等が検討した結果、カソード6とゲート5との間隔dと電子放出効率(η)に正の相関があることが分かった。図4(C)に間隔dと該効率との関係を示す。図4(C)に示すように、間隔dが小さすぎるとゲート5で電子は散乱し、殆ど取り出されない。また、ある程度間隔dが大きくなると、間隔dと電子放出効率との間に正の相関がみられることが分かる。間隔dと電子放出効率との間に正の相関がある理由は、間隔dが狭い程、ゲート5の先端部で等方的に散乱した電子が外部に飛び出しにくくなり、反対に間隔dが広い程、散乱した電子が外部に飛び出しやすくなるためと考えられる。
【0030】
本発明の如く、カソード6の突起部分6Aの先端に凸部6Bを設けた場合、該凸部6Bの周囲は間隔dが広くなり、ゲート5の先端部で等方的に散乱した電子のうち、凸部6Bの両側に散乱した電子は間隔dが広い部分を飛翔することになる。従って、凸部6Bの周囲から電子を外部に引き出しやすくなるので、凹部7の縁に沿った方向(Y方向)に関してカソード6の突起部分6Aが平坦で間隔dが均一の場合と比べて、アノード到達効率を向上させることができる。また、凸部6Bによる効率向上の効果をより大きくするためには、凸部6Bを高くするとともに、凸部6Bの周囲の間隔dを広げることが望ましいといえる。
【0031】
図5(A)に突起部分6Aの拡大模式図を示す。突起部分6A及び該突起部分6Aとゲート5との間隙8の観察及び間隔dの測長は、X方向からSEMにて観察して行う。
【0032】
凸部6Bと他の部分の切り分けは、X方向から見た突起部分6Aの外形線の中心線(図5(A)の一点鎖線A)を基準線とする。この中心線Aよりも山側を凸部6Bとする。
【0033】
また、図5(A)に示すように、隣り合う凸部6Bの距離をλi、突起部分6Aの先端に対する凸部6Bの高さ(突起部分6Aの最も低い位置Bから凸部6Bの最も高い位置までのZ方向における距離)をhiとおく。凸部6Bの距離λiや高さhiを十分な数、測定することで、これらの平均値が得られる。また、平均距離をλ、平均高さをhとおく。本発明においては、平均距離λと平均高さhは、2×h≦λの関係を満たすことが望ましい。以上のようにすることで、隣接する凸部6Bの影響を減らすことができ、電子放出効率がより一層向上する。
【0034】
図5(B)に凸部6Bの高さhを固定して、隣接する凸部6B同士の距離λを変えた時の距離λと電子放出効率ηの関係を示す。図中の横軸は高さhで規格化している。また、縦軸は凹部7の縁に沿った方向(Y方向)に関してカソード6の突起部分6Aが平坦で、ゲート5との間隔dが均一の時の効率で規格化している。また、図中の一点鎖線は凸部6Bが1つだけの場合の効率を示している。図5(B)より、凸部6Bの距離λを大きくする程、電子放出効率は上昇し、凸部6Bが1つだけの場合の効率(破線)に漸近する。隣り合う凸部6Bの平均距離λが凸部6Bの平均高さhの2倍を超えると効率はほぼ一定となる。これは、隣接する凸部が十分離れたので、隣接する凸部の影響が小さくなるためと考えられる。
【0035】
また、本発明では、カソード6とゲート5との間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が、カソード6の突起部分6Aの凹部7の縁に沿った方向(Y方向)における幅の10%以下にすることが望ましい。狭い間隔dの割合を制限することで、凸部6Bとゲート5とが短絡する恐れを低減できる。以下に、狭い間隔dの割合を制限することが望ましい理由について説明する。
【0036】
製造プロセスや量産性の観点から、間隔dや凸部6Bの高さhをそれぞれ同一とするより、ある程度のばらつきを許容する方が好ましいと考えられる。図5(C)に、Y方向に関して、カソード6とゲート5との間隔dの分布の一例を示す。図5(C)の横軸はカソード6とゲート5との間隔d、縦軸は頻度をそれぞれ表している。間隔dの測定方法としては、SEMを使って凸部6B及びゲート5の形状を観察する方法である。Y方向に関して、各々のカソード6とゲート5の間隔dを測長し、その分布を調べることで、図5(C)のような分布が得られる。
【0037】
図5(C)より、間隔dの分布は正規分布に近い釣鐘型の形状となった。平均値が小さい場合や、ばらつきが大きい場合、間隔dが0となる部分、つまりカソード6とゲート5との間に流れる電流(無効電流)の増大が懸念される。言い換えると、狭い間隔dの割合が大きくなる程、カソード6とゲート5との間に流れる電流が大きくなる。本発明者等が鋭意検討した結果、間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合(存在率)が、カソード6の幅の10%を超えると、凸部6Bとゲート5との間に流れる電流が急激に増加することが分かった。
【0038】
図5(D)に間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bのカソード6の幅に対する割合と素子の抵抗の関係を示す。縦軸は複数の素子を繋いだ時の抵抗値を示している。但し、抵抗値の絶対値は素子の接続条件によっても変わるので、本例の抵抗値は一例である。図5(D)より、間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が10%以下の領域では、割合が小さい程、非線形的に高抵抗になっている。一方、間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が10%を超えると、相対的に低抵抗になる。本例の場合は、10Ω以下となった。係る割合が15%を超えるとほぼ0から数Ω程度となる。これは間隔dが0となる凸部6Bが多くあるためと考えられる。
【0039】
素子の抵抗が小さいと、駆動した時にゲート5に流れる電流が増加してしまい、電子放出効率が低くなってしまう。従って、高効率とするためには、カソード6とゲート5との間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が、Y方向における突起部分6Aの幅の10%以下にする必要がある。さらに、カソード6とゲート5との間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合は、Y方向における幅の0.3乃至10%となることが望ましい。間隔dが1乃至5nmとなる凸部6Bの割合が少なすぎると、電子放出点が得られず、十分な電流を得られなくなるためである。本発明者等が鋭意検討した結果、間隔dが1乃至5nmとなる凸部6Bの割合が0.3%以上あれば、凹部の縁に沿った方向における幅が数μm(例えば3μm)の時、確実に放出点が確認できた。よって、本発明において好ましい凸部6Bの存在率は0.3%以上10%以下である。
【0040】
以上述べた本発明に係る電子放出素子の製造方法について、図6を参照して説明する。
【0041】
基板1は素子を機械的に支えるための絶縁性基板であり、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス及び、シリコン基板である。基板1に必要な機能としては、機械的強度が高いだけでなく、ドライ或いはウェットエッチング、現像液等のアルカリや酸に対して耐性があり、ディスプレイパネルのような一体ものとして用いる場合は成膜材料や他の積層部材と熱膨張差が小さいものが望ましい。また熱処理に伴いガラス内部からのアルカリ元素等が拡散しづらい材料が望ましい。
【0042】
先ず最初に、図6(A)に示すように基板1上に絶縁層3aとなる絶縁層22、絶縁層3bとなる絶縁層23及びゲート5となる導電層24を積層する。絶縁層22,23は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、例えばSiN(SixNy)やSiO2であり、その作製方法はスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成される。絶縁層22,23の厚さとしては、それぞれ5nm乃至50μmの範囲で設定され、好ましくは50nm乃至500nmの範囲で選択される。尚、絶縁層22と23を積層した後に凹部7を形成する必要があるため、絶縁層23と絶縁層24とはエッチングに対して異なるエッチング量を持つように設定されなければならない。望ましくは絶縁層22と絶縁層23とのエッチング量の比(選択比)は10以上が望ましく、できれば50以上とれることが望ましい。具体的には、例えば、絶縁層22にはSixNyを用い、絶縁層23にはSiO2等の絶縁性材料を用いる、或いはリン濃度の高いPSG、ホウ素濃度の高いBSG膜等を用いることができる。
【0043】
導電層24は、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成されるものである。導電層24としては、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が望ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物が挙げられる。また、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物、TiN,ZrN,HfN、TaN等の窒化物、Si,Ge等の半導体、有機高分子材料も挙げられる。さらに、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等も挙げられ、これらの中から適宜選択される。
【0044】
また、導電層24の厚さとしては、5nm乃至500nmの範囲で設定され、好ましくは50nm乃至500nmの範囲で選択される。
【0045】
次に、図6(B)に示すように、積層の後にフォトリソグラフィ技術により導電層24上にレジストパターンを形成した後、エッチング手法を用いて導電層24,絶縁層23、絶縁層22を順次加工する。これにより、ゲート5と、絶縁層3b及び絶縁層3aからなる絶縁部材3が得られる。
【0046】
このようなエッチング加工では一般的にエッチングガスをプラズマ化して材料に照射することで材料の精密なエッチング加工が可能なRIE(Reactive Ion Etching)が用いられる。この時の加工ガスとしては、加工する対象部材がフッ化物を作る場合はCF4、CHF3、SF6のフッ素系ガスが選ばれる。またSiやAlのように塩化物を形成する場合はCl2、BCl3などの塩素系ガスが選ばれる。またレジストとの選択比を取るため、エッチング面の平滑性の確保或いはエッチングスピードを上げるために水素や酸素、アルゴンガスなどが随時添加される。
【0047】
図6(C)に示すようにエッチング手法を用いて、積層体の一側面において絶縁層3bの側面のみを一部除去し、凹部7を形成する。
【0048】
エッチングの手法は例えば絶縁層3bがSiO2からなる材料であれば通称バッファーフッ酸(BHF)と呼ばれるフッ化アンモニウムとフッ酸との混合溶液を用いることができる。また、絶縁層3bがSixNyからなる材料であれば熱リン酸系エッチング液でエッチングすることが可能である。
【0049】
凹部7の深さT6、即ち凹部7における絶縁層3bの側面と絶縁層3a及びゲート5の側面との距離は、素子形成後のリーク電流に深く関わり、深く形成するほどリーク電流の値が小さくなる。しかしながら、凹部7を深く形成しすぎるとゲート5が変形する等の課題が発生するため、30nm乃至200nm程度で形成される。
【0050】
尚、本例では、絶縁部材3を絶縁層3aと3bの積層体とした形態を示したが、本発明ではこれに限定されるものではなく、一層の絶縁層の一部を除去することで凹部7を形成してもかまわない。
【0051】
次に、図6(D)に示すようにゲート5表面に剥離層25を形成する。剥離層の形成は、次の工程で堆積するカソード材料26をゲート5から剥離することが目的である。このような目的のため、例えばゲート5を酸化させて酸化膜を形成する、或いは電解メッキにて剥離金属を付着させるなどの方法によって剥離層25が形成される。
【0052】
図6(E)に示すようにカソード6を構成するカソード材料26を基板1上及び絶縁部材3の側面に付着させる。この時、カソード材料26がゲート5上にも付着する。
【0053】
カソード材料26としては導電性があり、電界放出する材料であればよく、一般的には2000℃以上の高融点、5eV以下の仕事関数材料であり、酸化物等の化学反応層の形成しづらい、或いは簡易に反応層を除去可能な材料が好ましい。このような材料として例えば、Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物が挙げられる。また、TiN,ZrN,HfN、TaN等の窒化物、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等が挙げられる。
【0054】
カソード材料26の堆積方法としては蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術が用いられ、EB蒸着が好ましく用いられる。
【0055】
本発明においては、当該工程においてカソード6の先端に凸部6Bを有する突起部分6Aを形成する。カソード6の突起部分6A先端の凹凸形状は、例えば、成膜量に依存する。図8(A)に成膜量と突起部分6Aの凹凸具合の一例を示す。係る凹凸具合を表す指標の一つとして、間隔dの標準偏差σが挙げられる。標準偏差σは図5(C)に示したような間隔dの分布より算出することができる。同様に図5(C)の分布より、間隔dが1から5nmとなる割合も算出できる。図8(A)では、横軸は成膜量を表し、縦軸は間隔dの標準偏差σとした。成膜量は成膜時間や成膜回数を変えることで、制御することができる。図8(A)より、成膜量に応じて凹凸具合(間隔dの標準偏差σ)が大きくなることが分かる。また、凹凸具合を表す指標は、標準偏差以外にも平均粗さRaや最大高さなどの指標を使ってもよい。
【0056】
また、間隔dの平均値(D)は成膜量以外に第2の絶縁層3bの厚さにも依存する。従って、予め第2の絶縁層3bの厚さを成膜条件に応じて決定しておくことで、成膜条件で凹凸具合を調節しつつ、間隔dの平均値Dも調整することができる。即ち、凹凸具合(間隔dの標準偏差σであり、上記の通り成膜条件(成膜量)に依存)と間隔dの平均値Dを調整することで、間隔dが1乃至5nmとなる割合を調整することができる。
【0057】
以上で述べたように、第2の絶縁層3bの厚さと成膜条件を調整することで、カソード6の突起部分6Aの先端に所望の凸部6Bを形成する。
【0058】
また、凸部6B同士の間隔λを制御する一例として、形成時の真空度の制御により成膜後の粒塊の大きさを変える方法が挙げられる。粒塊のサイズが大きくなる程、隣接する凸部6B同士の間隔は広くなる。図8(B)にスパッタ圧力と、粒塊の凸部同士の間隔の関係を示す。図8(B)より、スパッタ圧力が高い(真空度が低い)程、凸部6B同士の間隔λが大きくなる事が分かる。
【0059】
従って、前述の成膜量や絶縁層3bの厚さの制御と組み合わせることで、カソード6とゲート5の間隔dの平均値D、凸部6Bの凹凸具合や高さh、凸部6B同士の間隔λを所望の値に制御することができる。
【0060】
図6(F)に示すように剥離層26をエッチングで取り除くことにより、ゲート5上のカソード材料26を除去する。また、基板1上及び絶縁部材3側面上のカソード材料26をフォトリソグラフィ等によりパターニングして、カソード6を形成する。
【0061】
次にカソード6と電気的な導通を取るために電極2を形成する(図6(G))。この電極2は、前記カソード6と同様に導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術、フォトリソグラフィ技術により形成される。電極2の材料としては、例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物が挙げられる。また、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物、TiN,ZrN,HfN等の窒化物、Si,Ge等の半導体、有機高分子材料が挙げられる。さらに、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等も挙げられ、これらから適宜選択される。
【0062】
電極2の厚さとしては、50nm乃至5mmの範囲で設定され、好ましくは50nm乃至5μmの範囲で選択される。
【0063】
電極2及びゲート5は、同一材料でも異種材料でも良く、また、同一形成方法でも異種方法でも良いが、ゲート5は電極2に比べてその膜厚が薄い範囲で設定される場合があり、低抵抗材料が望ましい。
【0064】
次に、上記電子放出素子の応用形態について説明する。
【0065】
図11は、本発明の電子放出素子において、ゲート5が、カソード6に対向する部分に突出部90を有した例である。図11(A)は本例の電子放出素子の構成を模式的に示す平面模式図であり、図11(B)は図11(A)におけるA−A’線での断面模式図である。また、図11(C)は図11(A)において素子を紙面右側から見た側面図である。さらに、図12は当該素子の電子放出部の拡大模式図である。図中、90はゲート5に設けた突出部である。
【0066】
図12においてカソード6の端部から発生した電子は、対向するゲート5及び突出部90に衝突し、一部は衝突せず外部へと引き出される。多くの衝突した電子は突出部90の先端部で再び等方的に散乱する。
【0067】
尚、本例の素子では、突出部90のカソード6に対向する先端にカソード6の突起部分6Aと同様の凹凸形状が形成される。よって、カソード6とゲート5との間の間隔dは、該凹凸形状の先端とカソード6の突起部分6Aの先端の凹凸形状との距離となる。
【0068】
本例の素子の製造方法としては、図6(D)の剥離層25の作製工程を省略し、ゲート5上にも直接カソード材料26を堆積させる。そして、(F)の工程において基板1上及び絶縁部材3の側面上のカソード材料26をパターニングしてカソード6を形成すると同時にゲート5上のカソード材料26をパターニングして突出部90を形成すればよい。
【0069】
図14は、本発明の電子放出素子において、ゲート5に対してカソード6及び突出部90を複数配置した例である。図14(A)は本例の電子放出素子の構成を模式的に示す平面模式図であり、図14(B)は図14(A)におけるA−A’線での断面模式図である。また、図14(C)は図14(A)において素子を紙面右側から見た側面図である。図中、6a乃至6dはカソード、90a乃至90dは突出部であり、図1の素子とは、カソード6及び突出部90を複数の短冊状に分割し、それぞれ所定の距離を置いて配置した以外の構成は図11の素子と同じである。
【0070】
尚、本例の素子において、本発明に係る2×h≦λの条件は、短冊状のカソード6a乃至6dのそれぞれにおいて満たされるものとする。
【0071】
本例の素子の製造方法としては、図6(F)の工程において、カソード6が複数となるようにカソード材料26をパターニングすればよい。
【0072】
尚、複数のカソード6a乃至6dに対して、突出部90を図11の素子のように一つとしても構わない。
【0073】
上記本発明に係る電子放出素子の説明においては、絶縁部材3が絶縁層3aと3bとからなり、凹部7にゲート5の下面が露出した形態を示した。本発明においては、図15に示すように、ゲート5の、凹部に対向する部分(本例では凹部7に露出する面)が絶縁層3cで覆われている形態も好ましく適用される。図1の素子ではカソード6から放出された電子のうち、ゲート5の底面5aに衝突する電子は、アノード20に到達せず、効率を低減する要因(上述のIf成分)となる。しかしながら、図15のように、ゲート5の下面が絶縁層3cで覆われる構成では該Ifを低減できるので、電子放出効率が向上する。ゲート5の下面を覆う絶縁層3cとしては、例えば、膜厚20nm程度のSiN膜等が利用でき、この構成で十分に効率向上効果を得られることが確認されている。尚、図15の構成では、絶縁部材3を絶縁層3a,3b,3cからなる積層体としているが、一層の絶縁層の一部を除去することで凹部7を形成してもかまわない。
【0074】
本発明においては、図15の構成に対してさらに、図11,図14の構成を組み合わせることが可能であり、各構成における条件設定は同様であり、得られる作用効果も同様である。
【0075】
以下、本発明の電子放出素子を複数配して得られる電子源を備えた画像表示装置について、図7を用いて説明する。図7は単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像表示装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、一部を切り欠いた状態で示す。図7において、31は電子源基板、32はX方向配線、33はY方向配線であり、電子源基板31は先に説明した電子放出素子の基板1に相当する。また、34は本発明に係る電子放出素子である。尚、X方向配線32は、上述の電極2を共通に接続する配線であり、Y方向配線33は上述のゲート5を共通に接続する配線である。
【0076】
m本のX方向配線32は、Dx1,Dx2,…Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向配線33は、Dy1,Dy2,…Dynのn本の配線よりなり、X方向配線32と同様に形成される。これらm本のX方向配線32とn本のY方向配線33との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成される。例えば、X方向配線32を形成した電子源基板31の全面或いは一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線32とY方向配線33の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線32とY方向配線33は、それぞれ外部端子として引き出されている。
【0077】
電極2とゲート5(図1)は、m本のX方向配線32とn本のY方向配線33と導電性金属等からなる結線によって電気的に接続されている。配線32と配線33を構成する材料、結線を構成する材料及び電極2、ゲート5を構成する材料は、その構成元素の一部或いは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。
【0078】
X方向配線32には、X方向に配列した電子放出素子34の行を選択するための走査信号を印加する、不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線33には、Y方向に配列した電子放出素子34の各列を入力信号に応じて変調するための、不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0079】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択して、独立に駆動可能とすることができる。
【0080】
図7において、41は電子源基板31を固定したリアプレート、46はガラス基板43の内面に発光部材としての蛍光体である蛍光膜44とアノード20であるメタルバック45等が形成されたフェースプレートである。また、42は支持枠であり、この支持枠42にリアプレート41、フェースプレート46がフリットガラス等を介して取り付けられ、外囲器47を構成している。フリットガラスによる封着は、大気中或いは、窒素中で、400乃至500℃の温度範囲で10分以上焼成することにより実施される。
【0081】
外囲器47は、上述の如く、フェースプレート46、支持枠42、リアプレート41で構成される。ここで、リアプレート41は主に電子源基板31の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基板31自体で十分な強度を持つ場合には、別体のリアプレート41は不要とすることができる。即ち、電子源基板31に直接支持枠42を封着し、フェースプレート46、支持枠42及び電子源基板31とで外囲器47を構成しても良い。一方、フェースプレート46とリアプレート41との間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持たせた構成とすることもできる。
【0082】
このような画像表示装置では、放出した電子軌道を考慮して、各電子放出素子34の上部に蛍光体をアライメントして配置する。図7の蛍光膜44がカラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプ或いはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材と蛍光体とから構成すると良い。
【0083】
次に、単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に基づいたテレビジョン表示を行うための駆動回路の構成例について説明する。
【0084】
表示パネルは、端子Dx1乃至Dxm、端子Dy1乃至Dyn、及び高圧端子を介して外部の電気回路と接続している。端子Dx1乃至Dxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即ち、m行n列の行列状にマトリクス配線された電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。一方、端子Dy1乃至Dynには、走査信号により選択された一行の電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。
【0085】
高圧端子には、直流電圧源より、例えば10[kV]の直流電圧が供給されるが、これは電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0086】
上述のように走査信号、変調信号、及びアノードへの高電圧印加により、放出された電子を加速して蛍光体へと照射することによって、画像表示を実現する。
【0087】
尚、このような表示装置を本発明の電子放出素子を用いて形成することによって、電子ビームの形状の整った表示装置を構成でき、結果、良好な表示特性の表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
図1に示した構成の電子放出素子を図6の工程に沿って作製した。
【0089】
基板1としては、プラズマディスプレイ用に開発された低ナトリウムガラスであるPD200を用い、絶縁層22としてSiN(SixNy)をスパッタ法にて厚さ500nmで形成した。次いで、絶縁層23として、厚さ25nmのSiO2層をスパッタ法により形成した。さらに、絶縁層23の上に、導電層24として厚さ30nmのTaNをスパッタ法により積層した(図6(A))。
【0090】
次に、フォトリソグラフィ技術により導電層24上にレジストパターンを形成したのち、ドライエッチング手法を用いて導電層24、絶縁層23、絶縁層22を順に加工し、ゲート5及び絶縁層3aと3bからなる絶縁部材3とを形成した(図6(B))。この時の加工ガスとしては、絶縁層22、23及び導電層24にフッ化物を作る材料が選択されているため、CF4系のガスを用いた。このガスを用いてRIEを行った結果、絶縁層3a,3b、及びゲート5のエッチング後の角度は基板1の水平面に対しておよそ80°の角度で形成されていた。
【0091】
レジストを剥離した後、BHF(フッ酸/フッ化アンモニウム水溶液)を用いて深さ約70nmになるようにエッチング手法を用いて、絶縁層3bの側面をエッチングし、絶縁部材3に凹部7を形成した(図6(C))。
【0092】
ゲート5表面に電解メッキによりNiを電解析出させて剥離層25を形成した(図6(D))。
【0093】
カソード材料26であるモリブデン(Mo)をゲート5上及び絶縁部材3の側面と基板1表面に付着させた。本例では成膜方法としてスパッタ蒸着法を用いた。本形成方法では基板の角度をスパッタタ−ゲットに対して水平になるようにセットした。本件のスパッタ成膜ではスパッタ粒子が限られた角度で基板面に入射されるよう、遮蔽板を設置した。遮蔽板により、水平方向に対し入射角が90°と60°にピークを持たせた。また、アルゴンプラズマを出力3.0kW、真空度0.1Paで生成し、基板とMoターゲットの間の距離を100mm以下になるように基板を設置した。また、基板の搬送速度を420nm/minとした時、1回の成膜でMoが7nm成膜された。5回成膜を行うことで、平坦部のMoの厚さが35nmになるように成膜した(図6(E))。
【0094】
モリブデン(Mo)を成膜後、カソード6の幅が3μmになるようにフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてカソード材料26を加工し、カソード6を形成した。この時の加工ガスとしては、CF4系のガスを用いた。その後、ヨウ素とヨウ化カリウムからなるエッチング液を用いてゲート5上に析出させたNi剥離層25を除去することによりゲート5上のMo膜を剥離した(図6(F))。
【0095】
次にスパッタ法にて厚さ500nmのCuを堆積し、パターニングして電極2を形成した(図6(G))。
【0096】
以上の方法で素子を形成した後、図2に示した構成で電子放出特性を評価した。その結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流If=7.4μA、電子放出電流Ieは0.3μA、平均4%の電子放出効率となり、十分な放出電流量で且つ効率の高い電子放出素子が得られた。
【0097】
特性を確認後、カソード6とゲート5の間隙8を、SEMを用いて観察し、解析を行った。図9(A)にSEMの画像から抽出したカソード6とゲート5との間隔dを示す。図17の横軸は凹部7の縁に沿った方向での位置、縦軸はカソード6とゲート5の間隔dを示している。図中では土台となる絶縁層に起因するうねりを除去した。図よりカソード6とゲート5の間隔dは一定でなく凹凸があることが分かる。また、成膜したモリブデンの粒塊の大きさは10から20nm程度であった。
【0098】
図5(C)に間隔dのヒストグラムを示す。図5(C)では、複数のSEM画像を撮影して解析を行った。本例の素子のカソード6とゲート5との間の間隔dは、平均13.9nm、標準偏差σ3.2nmとなった。図5(C)より1乃至5nmの狭い間隔の部分が存在しており、この領域から電子放出していると考えられる。また、dが1乃至5nmとなる割合は0.5%であった。
【0099】
また、図9(B)にカソード6の突起部分6Aの粗さ曲線の測定結果の一例を示す。図9(B)の横軸は凹部7の縁に沿った方向(Y方向)での位置を、縦軸は中心線(図5(A)の一点鎖線A)を0とした時の高さhを示している。粗さ曲線は、前述のSEM観察により間隔dを測定するのと同様に、画像を解析することで得た。尚、平均値を求めるために、図9(B)のような粗さ曲線を複数箇所で測定し、解析した。
【0100】
粗さ曲線が中心線(図では0)と交差する交点から山谷を求めた。山が凸部6Bに相当する。この交点より、山谷の周期即ち、凸部6B同士の距離λを求めた。図9(C)に凸部6B同士の距離λのヒストグラムを示す。凸部6B同士の平均距離λは約24nmであった。また、図9(B)に示す粗さ曲線を複数個解析した結果、カソード6の突起部分6Aに対する凸部6Bの平均高さhを測定した結果、約6nmであった。凸部6Bの平均高さhと平均距離λの関係は2×h≦λの関係を満たしていた。
【0101】
(比較例1)
次に、カソード6とゲート5の間隔dに1乃至5nmとなる凸部6Bが無い例を示す。基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。
【0102】
本例においては、カソード材料26として付着させるモリブデンの成膜量を減らして凸部6Bの成長を抑制した。本例では、基板の搬送速度を380nm/minとして、1回の成膜を7.7nmとなるようにし、3回成膜を行うことで、平坦部のMoの厚さが23nmとなるように成膜した。また、カソード6とゲート5との間隔dの平均値が、実施例1と同様になるように第2の絶縁層3bの厚さを20μmとした。
【0103】
実施例1と同様にして、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは0.07μA、電子放出電流Ieは0.004μA、平均5%の電子放出効率が得られた。効率は高いものの、十分な放出電流が得られなかった。
【0104】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均13.2nm、標準偏差σ2.1nmとなった。また、5nm以下となる狭い間隔dの凸部6Bはみられなかった。また、粗さ曲線より、カソード6の突起部分6Aに見られる凸形状同士の平均距離λは24nm、凸形状の平均高さhは4nmであった。比較例1では、1乃至5nmとなる狭い間隔dとなる凸部6Bがないため(カソード6とゲート5の間隔dが5nmを超えるため)、効率は高いが、十分な電流が得られなかったと考えられる。
【0105】
(比較例2)
比較例2として、カソード6とゲート5の間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えた例を示す。基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。本例では、第2の絶縁層3bの厚さを30nmに、また、カソード材料26として付着させるモリブデンの成膜量を60nmに増やして素子を作製した。第2の絶縁層3bの厚さやモリブデンの成膜量を変えることは、間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えることに相当する。
【0106】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、低抵抗な素子となり、ゲート5に電流が流れ、電子放出が得られなかった。そのため、電子放出効率も0%となった。
【0107】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均9.7nm、標準偏差σ4.0nmとなった。また、1乃至5nmとなる部分の割合は、11%であった。観察の結果、カソード6とゲート5とが凸部の一部で接触している部分が認められた。また、短絡により、素子が破壊している部分も認められた。
【0108】
図10にカソード6とゲート5の間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えて試作した時の、割合と抵抗の関係を示す。図10より1乃至5nmとなる部分の割合が10%を超える場合は低抵抗な素子となってしまった。一方、1乃至5nmとなる部分の割合が10%以下の場合は高抵抗な素子が得られた。
【0109】
(実施例2)
実施例2として、第2の絶縁層3bの厚さを変えた場合について説明する。基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。本例では、第3の絶縁層3bの厚さを20nmに、また、カソード材料26として付着させるモリブデンの成膜量を25nmにして素子を作製した。第2の絶縁層3bの厚さやモリブデンの成膜量を変えることは、間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えることに相当する。
【0110】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した。その結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは15.6μA、電子放出電流Ieは0.78μA、平均5%の電子放出効率となり、十分な放出電流量で且つ効率の高い電子放出素子を得られた。
【0111】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均10.7nm、標準偏差σ3.0nmとなった。また、1乃至5nmとなる狭い間隔dの割合は3%であった。また、粗さ曲線より、凸部6B同士の平均距離λは24nm、凸部6Bの平均高さhは4nmで、2×h≦λの関係を満たしていた。
【0112】
(比較例3)
比較例3として、カソード6の凸部6B同士の平均距離λと凸部6Bの平均高さhとが2×h≦λの関係を満たさない例について説明する。本例では、第2の絶縁層3bの厚さを35nmにした。また、カソード材料26として付着させるモリブデンは、スパッタ圧力を0.05Pa、成膜量を60nmにして作製した。
【0113】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは14.5μA、電子放出電流Ieは0.44μA、平均3%の電子放出効率となり、効率が低い電子放出素子であった。
【0114】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均11.7nm、標準偏差σ3.6nmとなった。また、1乃至5nmとなる狭い間隔dの割合は3%であった。また、粗さ曲線より、凸部6B同士の平均距離λは約13nm、凸部の平均高さhは約8nmであった。本例においては、凸部の平均高さhと平均距離λの関係が、2×h≦λを満たさなかったために、電子放出効率が低下したと考えられる。
【0115】
(実施例3)
図11に示す構成の電子放出素子を作製した。本例では、図6(D)の工程で剥離層25を形成せず、ゲート5上に付着したカソード材料26であるモリブデン(Mo)を除去せずに突出部90を形成した以外は実施例1と同様にして素子を作製した。
【0116】
モリブデン(Mo)を成膜後、カソード6及び突出部90の幅が3μmになるようにフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてカソード6及び突出部90を加工した。この時の加工ガスとしては、CF4系のガスを用いた。
【0117】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは8.4μA、電子放出電流Ieは0.34μA、平均4%の電子放出効率が得られた。
【0118】
特性を確認後、カソード6とゲート5の間隙8をSEMを用いて観察し、解析を行った。図13(A)にSEMの画像から抽出したカソード6と突出部90の外形線を示す。尚、突出部90の外形線は間隔dの平均値分だけ上側にオフセットさせている。図13(A)よりカソード6だけでなく、突出部90にも凹凸があることが分かる。図13(A)で示したカソード6と突出部90との間隔dを、図13(B)に示す。図13(B)よりカソード6と突出部90との間隔dは一定ではなく、凹凸があることが分かる。図13(C)に間隔dのヒストグラムを示す。図13(C)では、複数のSEM画像を撮影して解析を行った。
【0119】
本例の素子のカソード6と突出部90との間の間隔dは、平均14.1nm、標準偏差σ3.2nmとなった。図13(B)、(C)より1乃至5nmの狭い間隔の部分が存在しており、この領域から電子放出していると考えられる。また、1乃至5nmとなる割合は0.2%であった。また、粗さ曲線より、凸部6B同士の平均距離λは約24nm、凸部6Bの平均高さhは約6nmであった。
【0120】
(実施例4)
図14に示す構成の電子放出素子を作製した。本例では、モリブデン(Mo)を成膜後、カソード6及び突出部90のY方向の幅及び間隙が3μmのライン・スペースになるようにフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてカソード6及び突出部90を加工した。この時の加工ガスとしては、カソード材料26として用いたモリブデンはフッ化物を作る材料が選択されているためCF4系のガスを用いた。当該工程以外は実施例3と同様にして素子を作製した。
【0121】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは33.4μA、電子放出電流Ieは1.3μA、平均4%の電子放出効率が得られた。
【0122】
この特性から考察すると、カソード6を短冊形状にすることで、電子放出電流が短冊の本数分、言い換えると短冊の合計長さ分だけ増加したように推測される。同様な製法で、短冊の本数を100倍に増やした場合には約100倍の電子放出量が得られた。また、短冊数は同一で、幅を変えた場合においても、短冊の幅に比例した電子放出量が得られた。
また、特性を確認後、カソード6とゲート5の間隙8をSEMを用いて観察し、解析を行った。カソード6と突出部90との間の間隔dは、平均14.1nm、標準偏差σ3.2nmとなった。本素子には1乃至5nmの狭い間隔の部分が存在しており、この領域から電子放出していると考えられる。また、1乃至5nmとなる割合は0.2%であった。また、粗さ曲線より、各短冊において、凸部6B同士の平均距離λは約24nm、凸部6Bの平均高さhは約6nmで2×h≦λを満足していた。
【0123】
(実施例5)
本例では、実施例1と同様の製造方法によって電子放出素子を多数基板上にマトリクス状に配列して電子源基板を形成し、この電子源基板を用いて図7に示した画像表示装置を作作製した。以下に製造工程を説明する。
【0124】
〈電極作製工程〉
ガラス基板31上にSiN/SiO2/TaN/Mo膜を順次成膜した後、実施例1と同様にして凹部7を有する絶縁部材3をエッチング加工した。本例では櫛歯状の加工を1素子当たり100本として1画素当たり100本の短冊状カソードを配置することとした。
【0125】
〈カソード形成〉
カソード材料26であるモリブデン(Mo)を、ゲート5上にも付着させる。本例では成膜方法としてスパッタ蒸着法を用いた。本形成方法では基板の角度をスパッタタ−ゲットに対して水平になるようにセットした。本件のスパッタ成膜ではスパッタ粒子が限られた角度で基板面に入射されるよう、アルゴンプラズマを真空度0.1Paで生成し、基板とMoターゲットの間の距離を100mm以下になるように基板を設置した。平坦部のMoの厚さが35nmになるように10nm/minの蒸着速度で形成した。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングにより100本の短冊状Mo加工を行って電子放出素子を形成した。
【0126】
〈Y方向配線形成工程〉
Y方向配線33をゲート5に接続するように配置した。このY方向配線33は変調信号が印加される配線として機能する。
【0127】
〈絶縁層形成工程〉
次の工程で作製するX方向配線32と前述のY方向配線33とを絶縁するために、酸化シリコンからなる絶縁層を配置した。後述するX方向配線32の下であって、且つ、先に形成したY方向配線33を覆うように、絶縁層を配置し、X方向配線32と前述カソード6の電極2の電気的接続が可能なように、絶縁層の一部にコンタクトホールを開けて形成した。
【0128】
〈X方向配線形成工程〉
銀を主成分とするX方向配線32を、先に形成した絶縁層の上に形成した。X方向配線32は絶縁層を挟んでY方向配線33と交差しており、絶縁層のコンタクトホール部分で電極2に接続される。このX方向配線32は走査信号が印加される配線として機能する。このようにしてマトリクス配線を有する基板が形成された。
【0129】
次いで、図7に示したように、上記基板31の2mm上方に、ガラス基板43の内面に蛍光体膜44とメタルバック45とが積層されたフェースプレート46を、支持枠47を介して配置した。尚、図7においてはリアプレート41を基板31の補強部材として設けた例を示しているが、本例では、このリアプレート41を省いている。そして、フェースプレート46、支持枠42、基板31の接合部を、低融点金属であるインジウム(In)を加熱し冷却することによって封着した。また、この封着工程は、真空チャンバー中で行ったため、排気管を用いずに、封着と封止を同時に行った。
【0130】
本例では、画像形成部材であるところの蛍光体膜44は、カラーを実現するために、ストライプ形状の蛍光体とし、先にブラックストライプ(不図示)を形成し、その間隙部にスラリー法により各色蛍光体(不図示)を塗布して蛍光膜44を作製した。ブラックストライプの材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分とする材料を用いた。また、蛍光膜44の内面側(電子放出素子側)にはアルミニウムからなるメタルバック45を設けた。メタルバック45は、蛍光体膜44の内面側に、Alを真空蒸着することで作製した。
【0131】
本例の画像表示装置においては、良好な画像表示が実現できた。
【符号の説明】
【0132】
1:基板、3:絶縁部材、5:ゲート、6:カソード、7:凹部、20:アノード
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイに用いられる、電子を放出する電子放出素子を備えた電子線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カソードから出た電子の多数が対向するゲートに衝突、散乱した後に電子として取り出される電子放出素子が存在する。このような形態で電子を放出する素子として表面伝導型電子放出素子や積層型の電子放出素子が知られており、特許文献1には、積層型の電子放出素子であって、電子放出部近傍の絶縁層に凹部(リセス部)を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−167693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特許文献1に開示されたような積層型の電子放出素子を備えた電子線装置において、電子が放出される電子放出点を制御して電子放出効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、絶縁部材と、
前記絶縁部材の表面に配置されたカソードと、
前記カソードの先端と対向して前記絶縁部材の表面に配置されたゲートとを有する電子放出素子であって、
前記絶縁部材は、前記カソードの先端が位置する表面に凹部を有しており、前記カソードの先端は前記絶縁部材の表面の凹部の縁から前記ゲートに向けて突起する突起部分を有し、
前記突起部分に、前記ゲートとの間隔が1nm以上5nm以下の複数の凸部を有し、該複数の凸部の、前記突起部分の前記凹部の縁に沿った方向の長さに対する存在率が10%以下であり、該凸部の平均高さをh、隣り合う凸部同士の平均距離をλとした時、以下の関係を満たすことを特徴とする。
【0006】
2×h≦λ
【0007】
本発明の第2は、上記本発明の電子放出素子と、該電子放出素子のゲートを介在させてカソードの先端と対向配置されたアノードとを有することを特徴とする電子線装置である。
【0008】
本発明の第3は、上記本発明の電子線装置と、前記アノードと積層して位置する発光部材とを有することを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子放出素子のカソード先端の凸部から効率良く電子が放出され、アノードに達することができるため、電子放出効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電子放出素子の好ましい実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の電子放出素子の電子放出特性を測定する系を模式的に示す図である。
【図3】図1の電子放出素子の部分拡大模式図である。
【図4】本発明の電子放出素子の電子放出部の拡大模式図と、ゲートとカソードとの間隔と電子放出効率の関係を示す図である。
【図5】本発明の電子放出素子のカソードの突起部分に設けた凸部の作用効果を説明するための図である。
【図6】本発明の電子放出素子の製造工程を示す断面模式図である。
【図7】本発明の画像表示装置の一例の表示パネルの構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の電子放出素子のカソード材料の成膜量とカソードの突起部分の凹凸具合の関係、及びカソード材料のスパッタ圧力と粒塊の大きさとの関係を示す図である。
【図9】本発明の実施例1の電子放出素子のゲートとカソードとの間隔、カソード先端の凸部形状、及び凸部同士の間隔の分布を示す図である。
【図10】本発明の実施例1において得られた、ゲートとカソードとの間隔と素子抵抗との関係を示す図である。
【図11】本発明の電子放出素子の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図12】図11の電子放出素子の電子放出部の拡大模式図である。
【図13】本発明の実施例3の電子放出素子のゲートとカソードの先端形状、ゲートとカソードとの間隔、カソード先端の凸部同士の間隔の分布を示す図である。
【図14】本発明の電子放出素子の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図15】本発明の電子放出素子の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、電子放出素子内に電界強度の増す部分(強い部分)を選択的に作ることができ、その結果、好ましい形態においては電子放出部における電子放出点の位置制御を、単純な構成で実現し、かつ安定に動作されるように鋭意検討されたものである。
【0013】
最初に安定放出を可能とした本発明に係る電子放出素子の構成について、好ましい実施形態を挙げて説明する。
【0014】
本発明の電子線装置は、電子を放出する電子放出素子と、該電子放出素子から放出された電子が到達するアノードとを備えている。
【0015】
本発明の電子放出素子は、絶縁部材の表面にゲートとカソードとを互いに先端が対向するように備えている。該絶縁部材は、カソードの先端が位置する表面に凹部を有しており、前記カソードの先端は前記絶縁部材の表面の凹部の縁から前記ゲートに向けて突起する突起部分を有している。
【0016】
本発明の電子線装置は、上記本発明の電子放出素子と、該電子放出素子のゲートを介在させてカソードの先端と対向配置されたアノードとを有する。
【0017】
図1(A)は本発明の好ましい実施形態の電子放出素子の構成を模式的に示す平面模式図であり、図1(B)は図1(A)におけるA−A’線での断面模式図である。また、図1(C)は図1(A)において素子を紙面右側から見た側面図である。
【0018】
図1中、1は基板、2は電極、3は絶縁部材であって、絶縁層3aと3bの積層体からなる。5はゲート、6はカソードであって電極2に電気的に接続されている。7は絶縁部材3の凹部であって、本例では絶縁層3bの側面のみを絶縁層3aよりも内側に凹ませて形成している。8は電子放出に必要な電界が形成される間隙(カソード6の先端からゲート5の底面までの最短距離)である。
【0019】
本発明の電子放出素子においては、図1に示すように、ゲート5が絶縁部材3の表面(本例では上面)に形成されている。一方、カソード6も絶縁部材3の表面(本例では側面)に形成され、凹部7を挟んでゲート5に対向する側に凹部7の縁からゲート5に向かって突起する突起部分を有している。よって、カソード6は該突起部分において、間隙8を介してゲート5と対向している。尚、本発明においては、カソード6はゲート5よりも低電位に規定される。また、図1では不図示であるが、ゲート5を介して(介在させて)カソード6と対向する位置には、これらよりも高電位に規定されたアノードを有している(図2の20)。
【0020】
図2に、本発明の電子放出素子の電子放出特性を測定する時の電源の供給配置を示す。図2に示すように、本発明の電子線装置においては、ゲート5を介在させて、アノード20をカソード6の突起部分に対向配置させる。本例においては、絶縁部材3が基板1上に配置しているため、アノード20は該基板1の絶縁部材3が配置している側に、該基板1に対向して配置されているとも言える。
【0021】
図2において、Vfは素子のゲート5とカソード6の間に印加される電圧、Ifはこの時流れる素子電流、Vaはカソード6とアノード20の間に印加される電圧、Ieは電子放出電流である。
【0022】
ここで、電子放出効率ηとは素子に電圧を印加した時に検出される電流Ifと真空中に取り出される電流Ieを用いて、一般には効率η=Ie/(If+Ie)で与えられる。
【0023】
図3に電子放出部の拡大模式図を示す。図3において、6Aは、カソード6が、ゲート5に対向する側の先端に有する突起部分であって、該突起部分6Aは、凹部7の縁よりもゲート5に向けて突起する。10はアノードに向かって放出される電子の軌道を示す。
【0024】
図2の系で電子放出素子に駆動電圧Vfを印加した場合の電界集中の様子を図4を用いてさらに詳しく説明する。図4(A)は図1(B)の凹部7の拡大模式図であり、図4(B)は図1(C)の凹部7の拡大模式図である。図中4(A),(B)中、12,13は凹部7に形成される電気力線を模式的に示している。電界の強弱はこの電気力線の密度により決定され、電気力線の密度が高いほど電界が強い。図4(A),(B)には便宜的に二次元的な真空領域に形成される電気力線しか示していないが、実際には電気力線は三次元的に形成され、さらに絶縁層の中にも電気力線が広がっている。
【0025】
図4(A)に示すように、本発明に係るカソード6の先端の突起部分6Aは凹部7の縁からhの高さで突き出た形状となっている。図4(A)に示すように、電気力線12は凹部7内に形成された突起部分6Aに向かって電気力線13が曲がることで突起部分6Aの先端に電気力線の密度が増える。従って、突起部分6A先端の電界が凹部7内に形成される電界としては一番強くなる(Emax-A)。
【0026】
さらに、図4(B)に示すように、突起部分6Aに加えて、突起部分6Aの先端に凸部6Bが存在する部分では、凸部6Bの高さの分だけ突起部分6Aの先端からゲート5までの距離が小さくなる。従って、凸部6Bの先端ではより電界が強くなる。従って、凹部7の縁に沿った方向で見た場合、凸部6Bでの電界が一番強くなる。このため、本発明の電子放出素子では、凸部6Bが電子放出部となると考えられる。
【0027】
ここで、図4(B)におけるカソード6と、ゲート5との距離を間隔dとおく。即ち、間隔dは、図2における、カソード6とアノード20の対向方向(図中のZ方向)における、カソード6の先端とゲート5との距離である。但し、カソード6の形状によっては前述の方向(Z方向)で測長した間隔より、カソード6とゲート5との実際の間隔が大きい場合がある。その場合は、間隔dや凸部の観察・測長は、間隔8が一番広く見える角度から測長すればよい。換言すると、カソードの突起部分または凸部の先端とこれに対向するゲート部分とを結ぶ線分と直交する線分の延びる方向から側長すればよい。間隔dは、カソード6の突起部分6Aの先端に凸部6Bがあるので、凸部6Bの有無や凸部6Bの高さに応じ、場所によって異なる。本発明の電子放出素子においては、カソード6とゲート5との間隔dが1nm以上5nm以下となる凸部6が存在する。その理由について説明する。
【0028】
電子を放出させるのに必要な駆動電圧を30V以下に抑える観点から、ゲート5とカソード6との間隔dは5nm以下であることが好ましい。間隔dが5nm以下であれば、駆動電圧30Vで60MV/cm以上の電界強度が得られ、凸部6Bより電子放出すると考えられる。また、駆動時の安定性の観点から、電子放出部となる凸部6Bは間隔dが1nm以上となることが好ましい。1nmより小さい凸部6Bは、電界蒸発や放電、短絡などにより駆動時に素子が破壊する可能性がある。以下、本発明に係る凸部6Bの作用効果について詳細に説明する。
【0029】
(凸部6Bの作用効果)
(電子放出における散乱の説明)
図3においてカソード6の凸部6Bから対向するゲート5に向かって放出された電子は、一部がゲート5の先端部で等方的に散乱し、残りは衝突することなく外部に引き出される。しかしながら、多くの電子はゲート5で散乱する。本発明者等が検討した結果、カソード6とゲート5との間隔dと電子放出効率(η)に正の相関があることが分かった。図4(C)に間隔dと該効率との関係を示す。図4(C)に示すように、間隔dが小さすぎるとゲート5で電子は散乱し、殆ど取り出されない。また、ある程度間隔dが大きくなると、間隔dと電子放出効率との間に正の相関がみられることが分かる。間隔dと電子放出効率との間に正の相関がある理由は、間隔dが狭い程、ゲート5の先端部で等方的に散乱した電子が外部に飛び出しにくくなり、反対に間隔dが広い程、散乱した電子が外部に飛び出しやすくなるためと考えられる。
【0030】
本発明の如く、カソード6の突起部分6Aの先端に凸部6Bを設けた場合、該凸部6Bの周囲は間隔dが広くなり、ゲート5の先端部で等方的に散乱した電子のうち、凸部6Bの両側に散乱した電子は間隔dが広い部分を飛翔することになる。従って、凸部6Bの周囲から電子を外部に引き出しやすくなるので、凹部7の縁に沿った方向(Y方向)に関してカソード6の突起部分6Aが平坦で間隔dが均一の場合と比べて、アノード到達効率を向上させることができる。また、凸部6Bによる効率向上の効果をより大きくするためには、凸部6Bを高くするとともに、凸部6Bの周囲の間隔dを広げることが望ましいといえる。
【0031】
図5(A)に突起部分6Aの拡大模式図を示す。突起部分6A及び該突起部分6Aとゲート5との間隙8の観察及び間隔dの測長は、X方向からSEMにて観察して行う。
【0032】
凸部6Bと他の部分の切り分けは、X方向から見た突起部分6Aの外形線の中心線(図5(A)の一点鎖線A)を基準線とする。この中心線Aよりも山側を凸部6Bとする。
【0033】
また、図5(A)に示すように、隣り合う凸部6Bの距離をλi、突起部分6Aの先端に対する凸部6Bの高さ(突起部分6Aの最も低い位置Bから凸部6Bの最も高い位置までのZ方向における距離)をhiとおく。凸部6Bの距離λiや高さhiを十分な数、測定することで、これらの平均値が得られる。また、平均距離をλ、平均高さをhとおく。本発明においては、平均距離λと平均高さhは、2×h≦λの関係を満たすことが望ましい。以上のようにすることで、隣接する凸部6Bの影響を減らすことができ、電子放出効率がより一層向上する。
【0034】
図5(B)に凸部6Bの高さhを固定して、隣接する凸部6B同士の距離λを変えた時の距離λと電子放出効率ηの関係を示す。図中の横軸は高さhで規格化している。また、縦軸は凹部7の縁に沿った方向(Y方向)に関してカソード6の突起部分6Aが平坦で、ゲート5との間隔dが均一の時の効率で規格化している。また、図中の一点鎖線は凸部6Bが1つだけの場合の効率を示している。図5(B)より、凸部6Bの距離λを大きくする程、電子放出効率は上昇し、凸部6Bが1つだけの場合の効率(破線)に漸近する。隣り合う凸部6Bの平均距離λが凸部6Bの平均高さhの2倍を超えると効率はほぼ一定となる。これは、隣接する凸部が十分離れたので、隣接する凸部の影響が小さくなるためと考えられる。
【0035】
また、本発明では、カソード6とゲート5との間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が、カソード6の突起部分6Aの凹部7の縁に沿った方向(Y方向)における幅の10%以下にすることが望ましい。狭い間隔dの割合を制限することで、凸部6Bとゲート5とが短絡する恐れを低減できる。以下に、狭い間隔dの割合を制限することが望ましい理由について説明する。
【0036】
製造プロセスや量産性の観点から、間隔dや凸部6Bの高さhをそれぞれ同一とするより、ある程度のばらつきを許容する方が好ましいと考えられる。図5(C)に、Y方向に関して、カソード6とゲート5との間隔dの分布の一例を示す。図5(C)の横軸はカソード6とゲート5との間隔d、縦軸は頻度をそれぞれ表している。間隔dの測定方法としては、SEMを使って凸部6B及びゲート5の形状を観察する方法である。Y方向に関して、各々のカソード6とゲート5の間隔dを測長し、その分布を調べることで、図5(C)のような分布が得られる。
【0037】
図5(C)より、間隔dの分布は正規分布に近い釣鐘型の形状となった。平均値が小さい場合や、ばらつきが大きい場合、間隔dが0となる部分、つまりカソード6とゲート5との間に流れる電流(無効電流)の増大が懸念される。言い換えると、狭い間隔dの割合が大きくなる程、カソード6とゲート5との間に流れる電流が大きくなる。本発明者等が鋭意検討した結果、間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合(存在率)が、カソード6の幅の10%を超えると、凸部6Bとゲート5との間に流れる電流が急激に増加することが分かった。
【0038】
図5(D)に間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bのカソード6の幅に対する割合と素子の抵抗の関係を示す。縦軸は複数の素子を繋いだ時の抵抗値を示している。但し、抵抗値の絶対値は素子の接続条件によっても変わるので、本例の抵抗値は一例である。図5(D)より、間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が10%以下の領域では、割合が小さい程、非線形的に高抵抗になっている。一方、間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が10%を超えると、相対的に低抵抗になる。本例の場合は、10Ω以下となった。係る割合が15%を超えるとほぼ0から数Ω程度となる。これは間隔dが0となる凸部6Bが多くあるためと考えられる。
【0039】
素子の抵抗が小さいと、駆動した時にゲート5に流れる電流が増加してしまい、電子放出効率が低くなってしまう。従って、高効率とするためには、カソード6とゲート5との間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合が、Y方向における突起部分6Aの幅の10%以下にする必要がある。さらに、カソード6とゲート5との間隔dが1乃至5nm以下となる凸部6Bの割合は、Y方向における幅の0.3乃至10%となることが望ましい。間隔dが1乃至5nmとなる凸部6Bの割合が少なすぎると、電子放出点が得られず、十分な電流を得られなくなるためである。本発明者等が鋭意検討した結果、間隔dが1乃至5nmとなる凸部6Bの割合が0.3%以上あれば、凹部の縁に沿った方向における幅が数μm(例えば3μm)の時、確実に放出点が確認できた。よって、本発明において好ましい凸部6Bの存在率は0.3%以上10%以下である。
【0040】
以上述べた本発明に係る電子放出素子の製造方法について、図6を参照して説明する。
【0041】
基板1は素子を機械的に支えるための絶縁性基板であり、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス及び、シリコン基板である。基板1に必要な機能としては、機械的強度が高いだけでなく、ドライ或いはウェットエッチング、現像液等のアルカリや酸に対して耐性があり、ディスプレイパネルのような一体ものとして用いる場合は成膜材料や他の積層部材と熱膨張差が小さいものが望ましい。また熱処理に伴いガラス内部からのアルカリ元素等が拡散しづらい材料が望ましい。
【0042】
先ず最初に、図6(A)に示すように基板1上に絶縁層3aとなる絶縁層22、絶縁層3bとなる絶縁層23及びゲート5となる導電層24を積層する。絶縁層22,23は、加工性に優れる材料からなる絶縁性の膜であり、例えばSiN(SixNy)やSiO2であり、その作製方法はスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法で形成される。絶縁層22,23の厚さとしては、それぞれ5nm乃至50μmの範囲で設定され、好ましくは50nm乃至500nmの範囲で選択される。尚、絶縁層22と23を積層した後に凹部7を形成する必要があるため、絶縁層23と絶縁層24とはエッチングに対して異なるエッチング量を持つように設定されなければならない。望ましくは絶縁層22と絶縁層23とのエッチング量の比(選択比)は10以上が望ましく、できれば50以上とれることが望ましい。具体的には、例えば、絶縁層22にはSixNyを用い、絶縁層23にはSiO2等の絶縁性材料を用いる、或いはリン濃度の高いPSG、ホウ素濃度の高いBSG膜等を用いることができる。
【0043】
導電層24は、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術により形成されるものである。導電層24としては、導電性に加えて高い熱伝導率があり、融点が高い材料が望ましい。例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物が挙げられる。また、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物、TiN,ZrN,HfN、TaN等の窒化物、Si,Ge等の半導体、有機高分子材料も挙げられる。さらに、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等も挙げられ、これらの中から適宜選択される。
【0044】
また、導電層24の厚さとしては、5nm乃至500nmの範囲で設定され、好ましくは50nm乃至500nmの範囲で選択される。
【0045】
次に、図6(B)に示すように、積層の後にフォトリソグラフィ技術により導電層24上にレジストパターンを形成した後、エッチング手法を用いて導電層24,絶縁層23、絶縁層22を順次加工する。これにより、ゲート5と、絶縁層3b及び絶縁層3aからなる絶縁部材3が得られる。
【0046】
このようなエッチング加工では一般的にエッチングガスをプラズマ化して材料に照射することで材料の精密なエッチング加工が可能なRIE(Reactive Ion Etching)が用いられる。この時の加工ガスとしては、加工する対象部材がフッ化物を作る場合はCF4、CHF3、SF6のフッ素系ガスが選ばれる。またSiやAlのように塩化物を形成する場合はCl2、BCl3などの塩素系ガスが選ばれる。またレジストとの選択比を取るため、エッチング面の平滑性の確保或いはエッチングスピードを上げるために水素や酸素、アルゴンガスなどが随時添加される。
【0047】
図6(C)に示すようにエッチング手法を用いて、積層体の一側面において絶縁層3bの側面のみを一部除去し、凹部7を形成する。
【0048】
エッチングの手法は例えば絶縁層3bがSiO2からなる材料であれば通称バッファーフッ酸(BHF)と呼ばれるフッ化アンモニウムとフッ酸との混合溶液を用いることができる。また、絶縁層3bがSixNyからなる材料であれば熱リン酸系エッチング液でエッチングすることが可能である。
【0049】
凹部7の深さT6、即ち凹部7における絶縁層3bの側面と絶縁層3a及びゲート5の側面との距離は、素子形成後のリーク電流に深く関わり、深く形成するほどリーク電流の値が小さくなる。しかしながら、凹部7を深く形成しすぎるとゲート5が変形する等の課題が発生するため、30nm乃至200nm程度で形成される。
【0050】
尚、本例では、絶縁部材3を絶縁層3aと3bの積層体とした形態を示したが、本発明ではこれに限定されるものではなく、一層の絶縁層の一部を除去することで凹部7を形成してもかまわない。
【0051】
次に、図6(D)に示すようにゲート5表面に剥離層25を形成する。剥離層の形成は、次の工程で堆積するカソード材料26をゲート5から剥離することが目的である。このような目的のため、例えばゲート5を酸化させて酸化膜を形成する、或いは電解メッキにて剥離金属を付着させるなどの方法によって剥離層25が形成される。
【0052】
図6(E)に示すようにカソード6を構成するカソード材料26を基板1上及び絶縁部材3の側面に付着させる。この時、カソード材料26がゲート5上にも付着する。
【0053】
カソード材料26としては導電性があり、電界放出する材料であればよく、一般的には2000℃以上の高融点、5eV以下の仕事関数材料であり、酸化物等の化学反応層の形成しづらい、或いは簡易に反応層を除去可能な材料が好ましい。このような材料として例えば、Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物が挙げられる。また、TiN,ZrN,HfN、TaN等の窒化物、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等が挙げられる。
【0054】
カソード材料26の堆積方法としては蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術が用いられ、EB蒸着が好ましく用いられる。
【0055】
本発明においては、当該工程においてカソード6の先端に凸部6Bを有する突起部分6Aを形成する。カソード6の突起部分6A先端の凹凸形状は、例えば、成膜量に依存する。図8(A)に成膜量と突起部分6Aの凹凸具合の一例を示す。係る凹凸具合を表す指標の一つとして、間隔dの標準偏差σが挙げられる。標準偏差σは図5(C)に示したような間隔dの分布より算出することができる。同様に図5(C)の分布より、間隔dが1から5nmとなる割合も算出できる。図8(A)では、横軸は成膜量を表し、縦軸は間隔dの標準偏差σとした。成膜量は成膜時間や成膜回数を変えることで、制御することができる。図8(A)より、成膜量に応じて凹凸具合(間隔dの標準偏差σ)が大きくなることが分かる。また、凹凸具合を表す指標は、標準偏差以外にも平均粗さRaや最大高さなどの指標を使ってもよい。
【0056】
また、間隔dの平均値(D)は成膜量以外に第2の絶縁層3bの厚さにも依存する。従って、予め第2の絶縁層3bの厚さを成膜条件に応じて決定しておくことで、成膜条件で凹凸具合を調節しつつ、間隔dの平均値Dも調整することができる。即ち、凹凸具合(間隔dの標準偏差σであり、上記の通り成膜条件(成膜量)に依存)と間隔dの平均値Dを調整することで、間隔dが1乃至5nmとなる割合を調整することができる。
【0057】
以上で述べたように、第2の絶縁層3bの厚さと成膜条件を調整することで、カソード6の突起部分6Aの先端に所望の凸部6Bを形成する。
【0058】
また、凸部6B同士の間隔λを制御する一例として、形成時の真空度の制御により成膜後の粒塊の大きさを変える方法が挙げられる。粒塊のサイズが大きくなる程、隣接する凸部6B同士の間隔は広くなる。図8(B)にスパッタ圧力と、粒塊の凸部同士の間隔の関係を示す。図8(B)より、スパッタ圧力が高い(真空度が低い)程、凸部6B同士の間隔λが大きくなる事が分かる。
【0059】
従って、前述の成膜量や絶縁層3bの厚さの制御と組み合わせることで、カソード6とゲート5の間隔dの平均値D、凸部6Bの凹凸具合や高さh、凸部6B同士の間隔λを所望の値に制御することができる。
【0060】
図6(F)に示すように剥離層26をエッチングで取り除くことにより、ゲート5上のカソード材料26を除去する。また、基板1上及び絶縁部材3側面上のカソード材料26をフォトリソグラフィ等によりパターニングして、カソード6を形成する。
【0061】
次にカソード6と電気的な導通を取るために電極2を形成する(図6(G))。この電極2は、前記カソード6と同様に導電性を有しており、蒸着法、スパッタ法等の一般的真空成膜技術、フォトリソグラフィ技術により形成される。電極2の材料としては、例えば、Be,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属または合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物が挙げられる。また、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物、TiN,ZrN,HfN等の窒化物、Si,Ge等の半導体、有機高分子材料が挙げられる。さらに、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等も挙げられ、これらから適宜選択される。
【0062】
電極2の厚さとしては、50nm乃至5mmの範囲で設定され、好ましくは50nm乃至5μmの範囲で選択される。
【0063】
電極2及びゲート5は、同一材料でも異種材料でも良く、また、同一形成方法でも異種方法でも良いが、ゲート5は電極2に比べてその膜厚が薄い範囲で設定される場合があり、低抵抗材料が望ましい。
【0064】
次に、上記電子放出素子の応用形態について説明する。
【0065】
図11は、本発明の電子放出素子において、ゲート5が、カソード6に対向する部分に突出部90を有した例である。図11(A)は本例の電子放出素子の構成を模式的に示す平面模式図であり、図11(B)は図11(A)におけるA−A’線での断面模式図である。また、図11(C)は図11(A)において素子を紙面右側から見た側面図である。さらに、図12は当該素子の電子放出部の拡大模式図である。図中、90はゲート5に設けた突出部である。
【0066】
図12においてカソード6の端部から発生した電子は、対向するゲート5及び突出部90に衝突し、一部は衝突せず外部へと引き出される。多くの衝突した電子は突出部90の先端部で再び等方的に散乱する。
【0067】
尚、本例の素子では、突出部90のカソード6に対向する先端にカソード6の突起部分6Aと同様の凹凸形状が形成される。よって、カソード6とゲート5との間の間隔dは、該凹凸形状の先端とカソード6の突起部分6Aの先端の凹凸形状との距離となる。
【0068】
本例の素子の製造方法としては、図6(D)の剥離層25の作製工程を省略し、ゲート5上にも直接カソード材料26を堆積させる。そして、(F)の工程において基板1上及び絶縁部材3の側面上のカソード材料26をパターニングしてカソード6を形成すると同時にゲート5上のカソード材料26をパターニングして突出部90を形成すればよい。
【0069】
図14は、本発明の電子放出素子において、ゲート5に対してカソード6及び突出部90を複数配置した例である。図14(A)は本例の電子放出素子の構成を模式的に示す平面模式図であり、図14(B)は図14(A)におけるA−A’線での断面模式図である。また、図14(C)は図14(A)において素子を紙面右側から見た側面図である。図中、6a乃至6dはカソード、90a乃至90dは突出部であり、図1の素子とは、カソード6及び突出部90を複数の短冊状に分割し、それぞれ所定の距離を置いて配置した以外の構成は図11の素子と同じである。
【0070】
尚、本例の素子において、本発明に係る2×h≦λの条件は、短冊状のカソード6a乃至6dのそれぞれにおいて満たされるものとする。
【0071】
本例の素子の製造方法としては、図6(F)の工程において、カソード6が複数となるようにカソード材料26をパターニングすればよい。
【0072】
尚、複数のカソード6a乃至6dに対して、突出部90を図11の素子のように一つとしても構わない。
【0073】
上記本発明に係る電子放出素子の説明においては、絶縁部材3が絶縁層3aと3bとからなり、凹部7にゲート5の下面が露出した形態を示した。本発明においては、図15に示すように、ゲート5の、凹部に対向する部分(本例では凹部7に露出する面)が絶縁層3cで覆われている形態も好ましく適用される。図1の素子ではカソード6から放出された電子のうち、ゲート5の底面5aに衝突する電子は、アノード20に到達せず、効率を低減する要因(上述のIf成分)となる。しかしながら、図15のように、ゲート5の下面が絶縁層3cで覆われる構成では該Ifを低減できるので、電子放出効率が向上する。ゲート5の下面を覆う絶縁層3cとしては、例えば、膜厚20nm程度のSiN膜等が利用でき、この構成で十分に効率向上効果を得られることが確認されている。尚、図15の構成では、絶縁部材3を絶縁層3a,3b,3cからなる積層体としているが、一層の絶縁層の一部を除去することで凹部7を形成してもかまわない。
【0074】
本発明においては、図15の構成に対してさらに、図11,図14の構成を組み合わせることが可能であり、各構成における条件設定は同様であり、得られる作用効果も同様である。
【0075】
以下、本発明の電子放出素子を複数配して得られる電子源を備えた画像表示装置について、図7を用いて説明する。図7は単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像表示装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、一部を切り欠いた状態で示す。図7において、31は電子源基板、32はX方向配線、33はY方向配線であり、電子源基板31は先に説明した電子放出素子の基板1に相当する。また、34は本発明に係る電子放出素子である。尚、X方向配線32は、上述の電極2を共通に接続する配線であり、Y方向配線33は上述のゲート5を共通に接続する配線である。
【0076】
m本のX方向配線32は、Dx1,Dx2,…Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向配線33は、Dy1,Dy2,…Dynのn本の配線よりなり、X方向配線32と同様に形成される。これらm本のX方向配線32とn本のY方向配線33との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成される。例えば、X方向配線32を形成した電子源基板31の全面或いは一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線32とY方向配線33の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線32とY方向配線33は、それぞれ外部端子として引き出されている。
【0077】
電極2とゲート5(図1)は、m本のX方向配線32とn本のY方向配線33と導電性金属等からなる結線によって電気的に接続されている。配線32と配線33を構成する材料、結線を構成する材料及び電極2、ゲート5を構成する材料は、その構成元素の一部或いは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。
【0078】
X方向配線32には、X方向に配列した電子放出素子34の行を選択するための走査信号を印加する、不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線33には、Y方向に配列した電子放出素子34の各列を入力信号に応じて変調するための、不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0079】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択して、独立に駆動可能とすることができる。
【0080】
図7において、41は電子源基板31を固定したリアプレート、46はガラス基板43の内面に発光部材としての蛍光体である蛍光膜44とアノード20であるメタルバック45等が形成されたフェースプレートである。また、42は支持枠であり、この支持枠42にリアプレート41、フェースプレート46がフリットガラス等を介して取り付けられ、外囲器47を構成している。フリットガラスによる封着は、大気中或いは、窒素中で、400乃至500℃の温度範囲で10分以上焼成することにより実施される。
【0081】
外囲器47は、上述の如く、フェースプレート46、支持枠42、リアプレート41で構成される。ここで、リアプレート41は主に電子源基板31の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基板31自体で十分な強度を持つ場合には、別体のリアプレート41は不要とすることができる。即ち、電子源基板31に直接支持枠42を封着し、フェースプレート46、支持枠42及び電子源基板31とで外囲器47を構成しても良い。一方、フェースプレート46とリアプレート41との間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持たせた構成とすることもできる。
【0082】
このような画像表示装置では、放出した電子軌道を考慮して、各電子放出素子34の上部に蛍光体をアライメントして配置する。図7の蛍光膜44がカラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプ或いはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材と蛍光体とから構成すると良い。
【0083】
次に、単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に基づいたテレビジョン表示を行うための駆動回路の構成例について説明する。
【0084】
表示パネルは、端子Dx1乃至Dxm、端子Dy1乃至Dyn、及び高圧端子を介して外部の電気回路と接続している。端子Dx1乃至Dxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即ち、m行n列の行列状にマトリクス配線された電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。一方、端子Dy1乃至Dynには、走査信号により選択された一行の電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。
【0085】
高圧端子には、直流電圧源より、例えば10[kV]の直流電圧が供給されるが、これは電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0086】
上述のように走査信号、変調信号、及びアノードへの高電圧印加により、放出された電子を加速して蛍光体へと照射することによって、画像表示を実現する。
【0087】
尚、このような表示装置を本発明の電子放出素子を用いて形成することによって、電子ビームの形状の整った表示装置を構成でき、結果、良好な表示特性の表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
図1に示した構成の電子放出素子を図6の工程に沿って作製した。
【0089】
基板1としては、プラズマディスプレイ用に開発された低ナトリウムガラスであるPD200を用い、絶縁層22としてSiN(SixNy)をスパッタ法にて厚さ500nmで形成した。次いで、絶縁層23として、厚さ25nmのSiO2層をスパッタ法により形成した。さらに、絶縁層23の上に、導電層24として厚さ30nmのTaNをスパッタ法により積層した(図6(A))。
【0090】
次に、フォトリソグラフィ技術により導電層24上にレジストパターンを形成したのち、ドライエッチング手法を用いて導電層24、絶縁層23、絶縁層22を順に加工し、ゲート5及び絶縁層3aと3bからなる絶縁部材3とを形成した(図6(B))。この時の加工ガスとしては、絶縁層22、23及び導電層24にフッ化物を作る材料が選択されているため、CF4系のガスを用いた。このガスを用いてRIEを行った結果、絶縁層3a,3b、及びゲート5のエッチング後の角度は基板1の水平面に対しておよそ80°の角度で形成されていた。
【0091】
レジストを剥離した後、BHF(フッ酸/フッ化アンモニウム水溶液)を用いて深さ約70nmになるようにエッチング手法を用いて、絶縁層3bの側面をエッチングし、絶縁部材3に凹部7を形成した(図6(C))。
【0092】
ゲート5表面に電解メッキによりNiを電解析出させて剥離層25を形成した(図6(D))。
【0093】
カソード材料26であるモリブデン(Mo)をゲート5上及び絶縁部材3の側面と基板1表面に付着させた。本例では成膜方法としてスパッタ蒸着法を用いた。本形成方法では基板の角度をスパッタタ−ゲットに対して水平になるようにセットした。本件のスパッタ成膜ではスパッタ粒子が限られた角度で基板面に入射されるよう、遮蔽板を設置した。遮蔽板により、水平方向に対し入射角が90°と60°にピークを持たせた。また、アルゴンプラズマを出力3.0kW、真空度0.1Paで生成し、基板とMoターゲットの間の距離を100mm以下になるように基板を設置した。また、基板の搬送速度を420nm/minとした時、1回の成膜でMoが7nm成膜された。5回成膜を行うことで、平坦部のMoの厚さが35nmになるように成膜した(図6(E))。
【0094】
モリブデン(Mo)を成膜後、カソード6の幅が3μmになるようにフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてカソード材料26を加工し、カソード6を形成した。この時の加工ガスとしては、CF4系のガスを用いた。その後、ヨウ素とヨウ化カリウムからなるエッチング液を用いてゲート5上に析出させたNi剥離層25を除去することによりゲート5上のMo膜を剥離した(図6(F))。
【0095】
次にスパッタ法にて厚さ500nmのCuを堆積し、パターニングして電極2を形成した(図6(G))。
【0096】
以上の方法で素子を形成した後、図2に示した構成で電子放出特性を評価した。その結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流If=7.4μA、電子放出電流Ieは0.3μA、平均4%の電子放出効率となり、十分な放出電流量で且つ効率の高い電子放出素子が得られた。
【0097】
特性を確認後、カソード6とゲート5の間隙8を、SEMを用いて観察し、解析を行った。図9(A)にSEMの画像から抽出したカソード6とゲート5との間隔dを示す。図17の横軸は凹部7の縁に沿った方向での位置、縦軸はカソード6とゲート5の間隔dを示している。図中では土台となる絶縁層に起因するうねりを除去した。図よりカソード6とゲート5の間隔dは一定でなく凹凸があることが分かる。また、成膜したモリブデンの粒塊の大きさは10から20nm程度であった。
【0098】
図5(C)に間隔dのヒストグラムを示す。図5(C)では、複数のSEM画像を撮影して解析を行った。本例の素子のカソード6とゲート5との間の間隔dは、平均13.9nm、標準偏差σ3.2nmとなった。図5(C)より1乃至5nmの狭い間隔の部分が存在しており、この領域から電子放出していると考えられる。また、dが1乃至5nmとなる割合は0.5%であった。
【0099】
また、図9(B)にカソード6の突起部分6Aの粗さ曲線の測定結果の一例を示す。図9(B)の横軸は凹部7の縁に沿った方向(Y方向)での位置を、縦軸は中心線(図5(A)の一点鎖線A)を0とした時の高さhを示している。粗さ曲線は、前述のSEM観察により間隔dを測定するのと同様に、画像を解析することで得た。尚、平均値を求めるために、図9(B)のような粗さ曲線を複数箇所で測定し、解析した。
【0100】
粗さ曲線が中心線(図では0)と交差する交点から山谷を求めた。山が凸部6Bに相当する。この交点より、山谷の周期即ち、凸部6B同士の距離λを求めた。図9(C)に凸部6B同士の距離λのヒストグラムを示す。凸部6B同士の平均距離λは約24nmであった。また、図9(B)に示す粗さ曲線を複数個解析した結果、カソード6の突起部分6Aに対する凸部6Bの平均高さhを測定した結果、約6nmであった。凸部6Bの平均高さhと平均距離λの関係は2×h≦λの関係を満たしていた。
【0101】
(比較例1)
次に、カソード6とゲート5の間隔dに1乃至5nmとなる凸部6Bが無い例を示す。基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。
【0102】
本例においては、カソード材料26として付着させるモリブデンの成膜量を減らして凸部6Bの成長を抑制した。本例では、基板の搬送速度を380nm/minとして、1回の成膜を7.7nmとなるようにし、3回成膜を行うことで、平坦部のMoの厚さが23nmとなるように成膜した。また、カソード6とゲート5との間隔dの平均値が、実施例1と同様になるように第2の絶縁層3bの厚さを20μmとした。
【0103】
実施例1と同様にして、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは0.07μA、電子放出電流Ieは0.004μA、平均5%の電子放出効率が得られた。効率は高いものの、十分な放出電流が得られなかった。
【0104】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均13.2nm、標準偏差σ2.1nmとなった。また、5nm以下となる狭い間隔dの凸部6Bはみられなかった。また、粗さ曲線より、カソード6の突起部分6Aに見られる凸形状同士の平均距離λは24nm、凸形状の平均高さhは4nmであった。比較例1では、1乃至5nmとなる狭い間隔dとなる凸部6Bがないため(カソード6とゲート5の間隔dが5nmを超えるため)、効率は高いが、十分な電流が得られなかったと考えられる。
【0105】
(比較例2)
比較例2として、カソード6とゲート5の間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えた例を示す。基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。本例では、第2の絶縁層3bの厚さを30nmに、また、カソード材料26として付着させるモリブデンの成膜量を60nmに増やして素子を作製した。第2の絶縁層3bの厚さやモリブデンの成膜量を変えることは、間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えることに相当する。
【0106】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、低抵抗な素子となり、ゲート5に電流が流れ、電子放出が得られなかった。そのため、電子放出効率も0%となった。
【0107】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均9.7nm、標準偏差σ4.0nmとなった。また、1乃至5nmとなる部分の割合は、11%であった。観察の結果、カソード6とゲート5とが凸部の一部で接触している部分が認められた。また、短絡により、素子が破壊している部分も認められた。
【0108】
図10にカソード6とゲート5の間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えて試作した時の、割合と抵抗の関係を示す。図10より1乃至5nmとなる部分の割合が10%を超える場合は低抵抗な素子となってしまった。一方、1乃至5nmとなる部分の割合が10%以下の場合は高抵抗な素子が得られた。
【0109】
(実施例2)
実施例2として、第2の絶縁層3bの厚さを変えた場合について説明する。基本的な作製方法は実施例1と同様であるので、ここでは実施例1との違いだけ述べる。本例では、第3の絶縁層3bの厚さを20nmに、また、カソード材料26として付着させるモリブデンの成膜量を25nmにして素子を作製した。第2の絶縁層3bの厚さやモリブデンの成膜量を変えることは、間隔dが1乃至5nmとなる部分の割合を変えることに相当する。
【0110】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した。その結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは15.6μA、電子放出電流Ieは0.78μA、平均5%の電子放出効率となり、十分な放出電流量で且つ効率の高い電子放出素子を得られた。
【0111】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均10.7nm、標準偏差σ3.0nmとなった。また、1乃至5nmとなる狭い間隔dの割合は3%であった。また、粗さ曲線より、凸部6B同士の平均距離λは24nm、凸部6Bの平均高さhは4nmで、2×h≦λの関係を満たしていた。
【0112】
(比較例3)
比較例3として、カソード6の凸部6B同士の平均距離λと凸部6Bの平均高さhとが2×h≦λの関係を満たさない例について説明する。本例では、第2の絶縁層3bの厚さを35nmにした。また、カソード材料26として付着させるモリブデンは、スパッタ圧力を0.05Pa、成膜量を60nmにして作製した。
【0113】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは14.5μA、電子放出電流Ieは0.44μA、平均3%の電子放出効率となり、効率が低い電子放出素子であった。
【0114】
特性を確認後、実施例1と同様に、SEMにより間隙8の観察を行った。カソード6とゲート5との間の間隔dは、平均11.7nm、標準偏差σ3.6nmとなった。また、1乃至5nmとなる狭い間隔dの割合は3%であった。また、粗さ曲線より、凸部6B同士の平均距離λは約13nm、凸部の平均高さhは約8nmであった。本例においては、凸部の平均高さhと平均距離λの関係が、2×h≦λを満たさなかったために、電子放出効率が低下したと考えられる。
【0115】
(実施例3)
図11に示す構成の電子放出素子を作製した。本例では、図6(D)の工程で剥離層25を形成せず、ゲート5上に付着したカソード材料26であるモリブデン(Mo)を除去せずに突出部90を形成した以外は実施例1と同様にして素子を作製した。
【0116】
モリブデン(Mo)を成膜後、カソード6及び突出部90の幅が3μmになるようにフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてカソード6及び突出部90を加工した。この時の加工ガスとしては、CF4系のガスを用いた。
【0117】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは8.4μA、電子放出電流Ieは0.34μA、平均4%の電子放出効率が得られた。
【0118】
特性を確認後、カソード6とゲート5の間隙8をSEMを用いて観察し、解析を行った。図13(A)にSEMの画像から抽出したカソード6と突出部90の外形線を示す。尚、突出部90の外形線は間隔dの平均値分だけ上側にオフセットさせている。図13(A)よりカソード6だけでなく、突出部90にも凹凸があることが分かる。図13(A)で示したカソード6と突出部90との間隔dを、図13(B)に示す。図13(B)よりカソード6と突出部90との間隔dは一定ではなく、凹凸があることが分かる。図13(C)に間隔dのヒストグラムを示す。図13(C)では、複数のSEM画像を撮影して解析を行った。
【0119】
本例の素子のカソード6と突出部90との間の間隔dは、平均14.1nm、標準偏差σ3.2nmとなった。図13(B)、(C)より1乃至5nmの狭い間隔の部分が存在しており、この領域から電子放出していると考えられる。また、1乃至5nmとなる割合は0.2%であった。また、粗さ曲線より、凸部6B同士の平均距離λは約24nm、凸部6Bの平均高さhは約6nmであった。
【0120】
(実施例4)
図14に示す構成の電子放出素子を作製した。本例では、モリブデン(Mo)を成膜後、カソード6及び突出部90のY方向の幅及び間隙が3μmのライン・スペースになるようにフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した。その後、ドライエッチング手法を用いてカソード6及び突出部90を加工した。この時の加工ガスとしては、カソード材料26として用いたモリブデンはフッ化物を作る材料が選択されているためCF4系のガスを用いた。当該工程以外は実施例3と同様にして素子を作製した。
【0121】
実施例1と同様に、本例の素子の特性を評価した結果、駆動電圧Vf=24V、アノード印加電圧Va=11.8kVで、平均の素子電流Ifは33.4μA、電子放出電流Ieは1.3μA、平均4%の電子放出効率が得られた。
【0122】
この特性から考察すると、カソード6を短冊形状にすることで、電子放出電流が短冊の本数分、言い換えると短冊の合計長さ分だけ増加したように推測される。同様な製法で、短冊の本数を100倍に増やした場合には約100倍の電子放出量が得られた。また、短冊数は同一で、幅を変えた場合においても、短冊の幅に比例した電子放出量が得られた。
また、特性を確認後、カソード6とゲート5の間隙8をSEMを用いて観察し、解析を行った。カソード6と突出部90との間の間隔dは、平均14.1nm、標準偏差σ3.2nmとなった。本素子には1乃至5nmの狭い間隔の部分が存在しており、この領域から電子放出していると考えられる。また、1乃至5nmとなる割合は0.2%であった。また、粗さ曲線より、各短冊において、凸部6B同士の平均距離λは約24nm、凸部6Bの平均高さhは約6nmで2×h≦λを満足していた。
【0123】
(実施例5)
本例では、実施例1と同様の製造方法によって電子放出素子を多数基板上にマトリクス状に配列して電子源基板を形成し、この電子源基板を用いて図7に示した画像表示装置を作作製した。以下に製造工程を説明する。
【0124】
〈電極作製工程〉
ガラス基板31上にSiN/SiO2/TaN/Mo膜を順次成膜した後、実施例1と同様にして凹部7を有する絶縁部材3をエッチング加工した。本例では櫛歯状の加工を1素子当たり100本として1画素当たり100本の短冊状カソードを配置することとした。
【0125】
〈カソード形成〉
カソード材料26であるモリブデン(Mo)を、ゲート5上にも付着させる。本例では成膜方法としてスパッタ蒸着法を用いた。本形成方法では基板の角度をスパッタタ−ゲットに対して水平になるようにセットした。本件のスパッタ成膜ではスパッタ粒子が限られた角度で基板面に入射されるよう、アルゴンプラズマを真空度0.1Paで生成し、基板とMoターゲットの間の距離を100mm以下になるように基板を設置した。平坦部のMoの厚さが35nmになるように10nm/minの蒸着速度で形成した。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングにより100本の短冊状Mo加工を行って電子放出素子を形成した。
【0126】
〈Y方向配線形成工程〉
Y方向配線33をゲート5に接続するように配置した。このY方向配線33は変調信号が印加される配線として機能する。
【0127】
〈絶縁層形成工程〉
次の工程で作製するX方向配線32と前述のY方向配線33とを絶縁するために、酸化シリコンからなる絶縁層を配置した。後述するX方向配線32の下であって、且つ、先に形成したY方向配線33を覆うように、絶縁層を配置し、X方向配線32と前述カソード6の電極2の電気的接続が可能なように、絶縁層の一部にコンタクトホールを開けて形成した。
【0128】
〈X方向配線形成工程〉
銀を主成分とするX方向配線32を、先に形成した絶縁層の上に形成した。X方向配線32は絶縁層を挟んでY方向配線33と交差しており、絶縁層のコンタクトホール部分で電極2に接続される。このX方向配線32は走査信号が印加される配線として機能する。このようにしてマトリクス配線を有する基板が形成された。
【0129】
次いで、図7に示したように、上記基板31の2mm上方に、ガラス基板43の内面に蛍光体膜44とメタルバック45とが積層されたフェースプレート46を、支持枠47を介して配置した。尚、図7においてはリアプレート41を基板31の補強部材として設けた例を示しているが、本例では、このリアプレート41を省いている。そして、フェースプレート46、支持枠42、基板31の接合部を、低融点金属であるインジウム(In)を加熱し冷却することによって封着した。また、この封着工程は、真空チャンバー中で行ったため、排気管を用いずに、封着と封止を同時に行った。
【0130】
本例では、画像形成部材であるところの蛍光体膜44は、カラーを実現するために、ストライプ形状の蛍光体とし、先にブラックストライプ(不図示)を形成し、その間隙部にスラリー法により各色蛍光体(不図示)を塗布して蛍光膜44を作製した。ブラックストライプの材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分とする材料を用いた。また、蛍光膜44の内面側(電子放出素子側)にはアルミニウムからなるメタルバック45を設けた。メタルバック45は、蛍光体膜44の内面側に、Alを真空蒸着することで作製した。
【0131】
本例の画像表示装置においては、良好な画像表示が実現できた。
【符号の説明】
【0132】
1:基板、3:絶縁部材、5:ゲート、6:カソード、7:凹部、20:アノード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材と、
前記絶縁部材の表面に配置されたカソードと、
前記カソードの先端と対向して前記絶縁部材の表面に配置されたゲートとを有する電子放出素子であって、
前記絶縁部材は、前記カソードの先端が位置する表面に凹部を有しており、前記カソードの先端は前記絶縁部材の表面の凹部の縁から前記ゲートに向けて突起する突起部分を有し、
前記突起部分に、前記ゲートとの間隔が1nm以上5nm以下の複数の凸部を有し、該複数の凸部の、前記突起部分の前記凹部の縁に沿った方向の長さに対する存在率が10%以下であり、該凸部の平均高さをh、隣り合う凸部同士の平均距離をλとした時、以下の関係を満たすことを特徴とする電子放出素子。
2×h≦λ
【請求項2】
前記複数の凸部の、前記突起部分の前記凹部の縁に沿った方向の長さに対する存在率が0.3%以上10%以下である請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子放出素子と、該電子放出素子のゲートを介在させてカソードの先端と対向配置されたアノードとを有することを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子線装置と、前記アノードと積層して位置する発光部材とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
絶縁部材と、
前記絶縁部材の表面に配置されたカソードと、
前記カソードの先端と対向して前記絶縁部材の表面に配置されたゲートとを有する電子放出素子であって、
前記絶縁部材は、前記カソードの先端が位置する表面に凹部を有しており、前記カソードの先端は前記絶縁部材の表面の凹部の縁から前記ゲートに向けて突起する突起部分を有し、
前記突起部分に、前記ゲートとの間隔が1nm以上5nm以下の複数の凸部を有し、該複数の凸部の、前記突起部分の前記凹部の縁に沿った方向の長さに対する存在率が10%以下であり、該凸部の平均高さをh、隣り合う凸部同士の平均距離をλとした時、以下の関係を満たすことを特徴とする電子放出素子。
2×h≦λ
【請求項2】
前記複数の凸部の、前記突起部分の前記凹部の縁に沿った方向の長さに対する存在率が0.3%以上10%以下である請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子放出素子と、該電子放出素子のゲートを介在させてカソードの先端と対向配置されたアノードとを有することを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子線装置と、前記アノードと積層して位置する発光部材とを有することを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−18491(P2011−18491A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161326(P2009−161326)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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