電子時計
【課題】
Liイオン二次電池の蓄電電圧が低下して時計ICが動作を停止しても、温度検出と充電制御とを継続し、Liイオン二次電池の充電許可温度範囲で安全に充電制御を行う電子時計を提供する。
【解決手段】
太陽電池5と、充電許可温度範囲に制限があるLiイオン二次電池4と、時計の動作を制御するシステム制御部2とを備える電子時計であって、システム制御部2は、Liイオン二次電池4に蓄電されている電力が所定の値以下のときに動作を停止し、太陽電池5が生成した電力で動作し、温度を検出して充電許可温度範囲でLiイオン二次電池4を充電するように制御する充電制御部3を備えた構成とした。これにより、システム制御部2と充電制御部3との電源を分離して、システム制御部2が停止してもLiイオン二次電池4の充電を安全に継続する電子時計を提供できる。
Liイオン二次電池の蓄電電圧が低下して時計ICが動作を停止しても、温度検出と充電制御とを継続し、Liイオン二次電池の充電許可温度範囲で安全に充電制御を行う電子時計を提供する。
【解決手段】
太陽電池5と、充電許可温度範囲に制限があるLiイオン二次電池4と、時計の動作を制御するシステム制御部2とを備える電子時計であって、システム制御部2は、Liイオン二次電池4に蓄電されている電力が所定の値以下のときに動作を停止し、太陽電池5が生成した電力で動作し、温度を検出して充電許可温度範囲でLiイオン二次電池4を充電するように制御する充電制御部3を備えた構成とした。これにより、システム制御部2と充電制御部3との電源を分離して、システム制御部2が停止してもLiイオン二次電池4の充電を安全に継続する電子時計を提供できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電手段と蓄電手段とを備えた電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電手段と蓄電手段とを備え、電池切れを極力無くして永続的に動作できる電子時計が製品化されている。
ここで、発電手段としては太陽電池が一般的であり、蓄電手段としてはコイン型のリチウム二次電池が一般的に使用されている。リチウム二次電池とは、電極にリチウムを用いた電池であって、近年急速に普及が進む蓄電池である。古くから知られる直流電力の放電のみができるリチウム一次電池とは異なり、充電を行うことで電気を蓄える蓄電池である。
【0003】
一方、時刻情報を含む標準電波を受信し、時刻修正を自動的に行う電波修正機能を備えた電子時計も開発され、この電波修正機能を備えると共に、前述の発電手段と蓄電手段とを備えた、いわゆるソーラー電波修正時計が製品化されている。
【0004】
このようなソーラー電波修正時計は、標準電波を手動又は所定の時刻に自動的に受信するが、この受信動作には比較的大きな電力が必要であり、電源である蓄電手段としてのリチウム二次電池に大きな負荷となる。
このリチウム二次電池は、蓄電電圧が2.5Vのタイプや1.5Vのタイプなど複数の種類が製品化されており、性能は異なるがいずれの電池も内部インピーダンスが比較的高いために、標準電波の受信時に蓄電電圧が低下して時計システムが誤動作する危険性を含んでいる。このため、ソーラー電波修正時計の蓄電手段として、内部インピーダンスの低い二次電池が求められている。
【0005】
このような要求から、ソーラー電波修正時計の蓄電手段として、高容量で且つ、内部インピーダンスが低いリチウムイオン二次電池(以下、Liイオン二次電池と略す)の使用が考えられる。Liイオン二次電池は、電極にリチウムを用いている点はリチウム二次電池と同じであるが、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う蓄電池である。
【0006】
すなわち、ソーラー電波修正時計にLiイオン二次電池を用いるならば、標準電波の受信時の電池に対する負荷の問題を軽減でき、蓄電電圧の低下による時計システムの誤動作を防止することができる。また、Liイオン二次電池は高容量であるので、長期間、時計が光に当たらない環境に置かれて充電ができなかったとしても、十分に充電された状態であれば、時計が止まることを回避することが可能である。
【0007】
しかしながら、Liイオン二次電池は安全性の面から一般に充電許可温度範囲に制限(例えば、0℃〜+45℃)が与えられている。この充電許可温度範囲から外れた環境で充電を継続すると、電池の特性によって、異常な発熱、発火、最悪の場合は破裂などの状態を引き起こす可能性がある。
従って、電子時計の蓄電手段にLiイオン二次電池を使用する場合、電子時計の内部に温度検出手段を備え、周囲の温度測定を行って温度情報を取得し、その温度情報に基づいて充電制御することが必須となる。
【0008】
以上のような背景から、従来の電子時計に用いられている温度検出及び充電制御の技術を3つの特許文献を例示して検討する。
まず、一次温度特性を有する発振回路を温度検出手段として備え、その発振周波数の変
化を温度情報として二次温度特性を有する水晶発振回路の温度特性を補償する電子時計が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この電子時計によれば、温度検出手段からの温度情報により水晶発振回路の二次温度特性を補償して、温度変化に対して安定した歩度を得ることができるので、高精度な電子時計を提供できることが示されている。
【0010】
また、水晶発振回路の温度特性を補正する歩度調整手段と、歩度調整手段の調整量を決定するための温度測定手段と、蓄電手段とを有する電子時計が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
この電子時計は、温度測定手段からの温度情報に基づいて歩度調整を行うと共に、蓄電手段の電圧が所定の電圧値より低下したとき、温度測定手段を停止し、歩度調整手段の調整量を所定の調整量として歩度調整手段を継続動作させる。これにより、蓄電手段の電圧低下時に、温度測定手段の誤動作による歩度調整手段の誤補正を回避できることが示されている。
【0012】
また、蓄電手段と、充電手段と、蓄電手段からの電力を用いて動作する計時制御回路と、表示手段と、蓄電手段の電圧を検出する電圧検出回路とを有する電子時計が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0013】
この電子時計は、蓄電手段の電圧が所定の電圧以下になった場合、所定の時間経過後に、計時制御回路の発振回路、分周回路、機能回路等を停止して時計としての動作を停止し、蓄電手段の電圧が所定の電圧以上になった場合は、時計動作の停止を解除する。これにより、蓄電手段の過放電を防ぎ、蓄電手段の電圧が回復したときの再起動性を向上できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平1−66097号公報(5−9頁、図1)
【特許文献2】特許第3753839号公報(3頁、図1)
【特許文献3】特許第3702729号公報(11頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1の電子時計は、時計IC(Integrated Circuit:集積回路)に内蔵する一次温度特性を有する発振回路を温度検出手段として備えており、この温度検出手段をLiイオン二次電池の充電制御に適用することは技術的に可能であるが、仮に、Liイオン二次電池を用いることを前提として、温度情報を取得して充電制御を行うために、温度検出手段を含む充電制御回路を時計IC(この場合、ICがマイコンである場合も含む)に内蔵したとすると、Liイオン二次電池の蓄電電圧が低下した場合、時計ICは停止し、この時計ICに内蔵する温度検出手段を含む充電制御回路も停止するので、Liイオン二次電池の蓄電電圧低下時には、充電を継続することができないという課題がある。
【0016】
また、特許文献2の電子時計は、温度測定手段からの温度情報に基づいて歩度調整手段が歩度の調整量を決定しているが、蓄電手段の充電制御には温度情報を用いていない。このため、蓄電手段として、充電許可温度範囲に制限が与えられているLiイオン二次電池を用いる場合、充電許可温度範囲を外した状態で充電動作が行われる危険性があるので、Liイオン二次電池を用いることができない。
【0017】
また、特許文献3の電子時計は、蓄電手段の電圧低下によって、時計システムを停止して蓄電手段の過放電を防いでいるが、蓄電手段の充電制御に温度情報を用いていない。このため、蓄電手段として、充電許可温度範囲に制限が与えられているLiイオン二次電池を用いる場合、充電許可温度範囲を超えた状態で充電動作が行われる危険性があるので、Liイオン二次電池を用いることができない。
【0018】
[従来のソーラー時計システムの課題の説明:図12]
以上のような従来の発電手段と蓄電手段とを備えた電子時計の課題を整理して明確にするために、特許文献1〜3で知られている技術を発展的に組み合わせたソーラー時計システムを例として、蓄電手段にLiイオン二次電池を用いた場合の課題を図12を用いて詳細に検討する。
ここで、ソーラー時計システムとは、前述したように、発電手段として太陽電池を搭載し、蓄電手段としての二次電池に太陽電池からの起電力を充電して時計の電力を得る電子時計のシステムをいう。
【0019】
図12は、従来のソーラー時計システムのブロック図であり、蓄電手段としてLiイオン二次電池を用いている。図12において、符号200は従来のソーラー時計システムとしての電子時計である。電子時計200は、複数の電子部品によって成るシステム制御部210、蓄電手段としての二次電池230、発電手段としての太陽電池240(図中は「S.C.」と表記する)、時刻を表示する表示部250などによって構成される。システム制御部210は、水晶振動子211、時計IC220、動作停止スイッチS1、充電制御スイッチS2、逆流防止のためのダイオードD1(以下、ダイオードD1と略す)などによって構成される。
【0020】
時計IC220は、低消費電力で動作する時計用マイコンで成り、水晶振動子211によって基準クロックP1を発生する水晶発振回路221、基準クロックP1を入力して時刻を計時する時計回路222、二次電池230の蓄電電圧VBTをモニタして所定の電圧以下になった場合、停止信号P2を出力する動作停止制御回路223、基準クロックP1を入力し内蔵するCR発振器224との周波数差によって温度情報を得る温度検出回路225、温度検出回路225からの温度データP3を入力して充電制御を行い、充電制御信号P4を出力する充電制御回路226によって構成される。
【0021】
太陽電池240のプラス端子は、回路のGNDに接続され、太陽電池240のマイナス端子は、発電電圧VHDとして充電制御スイッチS2の一方の端子に接続され、充電制御スイッチS2の他方の端子はダイオードD1のカソードに接続され、ダイオードD1のアノードは、動作停止スイッチS1の一方の端子に接続され、動作停止スイッチS1の他方の端子は蓄電電圧VBT´として時計IC220に供給される。
【0022】
二次電池230はLiイオン二次電池で成り、プラス端子は回路のGNDに接続され、マイナス端子は、蓄電電圧VBTとしてダイオードD1のアノードと動作停止スイッチS1の一方の端子との接続点に接続される。また、蓄電電圧VBTは、時計IC220の動作停止制御回路223にも接続される。
ここで、回路のGNDを基準とするならば、発電電圧VHDと蓄電電圧VBTは、マイナス電位の電圧である。
【0023】
また、表示部250は、時計IC220の時計回路222からの時刻データP5を入力して時刻を表示する。ここで、電子時計200がデジタル時計であれば、表示部250は液晶パネルなどによってデジタルで時刻を表示し、電子時計200がアナログ時計であれば、表示部250はステップモータと文字盤、時針、分針等によって時刻を表示する。
【0024】
次に、従来の電子時計200の動作の概略を説明する。
図12において、太陽電池240に光が照射されると起電力が発生し、所定の電圧値の発電電圧VHDが発生する。時計IC220の充電制御回路226は、充電制御信号P4によって充電制御スイッチS2を通常状態でONするので、太陽電池240のプラス端子からGNDを経て二次電池230、ダイオードD1、充電制御スイッチS2、太陽電池240のマイナス端子へと電流経路が形成され、二次電池230に太陽電池240からの充電電流Icgが流れて、二次電池230は充電される。
【0025】
時計IC220の動作停止制御回路223は、通常状態で動作停止スイッチS1をONするので、時計IC220には、動作停止スイッチS1を介して二次電池230からの蓄電電圧VBT´が供給され、水晶発振回路221は発振し、時計回路222は計時動作を行って時刻データP5を出力し、表示部250は時刻を表示する。これにより、太陽電池240に光が照射され続けるならば、二次電池230は充電が継続されると共に、時計IC220は動作を継続するので、表示部250は時刻を継続して表示することができる。
【0026】
次に、太陽電池240に光が照射されなくなると、発電電圧VHDが低下するので二次電池230への充電は停止するが、二次電池230に蓄えられた電力によって蓄電電圧VBTが供給され、時計IC220は動作を継続する。ここで、二次電池230への充電が長期間行われないと、二次電池230に蓄えられた電力が減少し、蓄電電圧VBTが低下して時計IC220の最低動作電圧以下になると、時計IC220の動作が不安定になる。
この状態を回避するために、動作停止制御回路223は、蓄電電圧VBTをモニタして、時計IC220の動作が不安定になる前の所定の電圧値で停止信号P2を出力し、動作停止スイッチS1をOFFする。これにより、蓄電電圧VBT´が零ボルトになって時計IC220への電源供給が停止するので、電子時計200は、不安定な誤動作をすることなく、安定して動作を停止することができる。
【0027】
一方、温度検出回路225は、基準クロックP1の周波数と、内蔵するCR発振器224の周波数との差で温度情報を得て温度データP3を出力する。
充電制御回路226は、温度データP3を入力して周囲温度が二次電池の充電許可温度範囲内であるかを判定し、温度が許可温度範囲から外れた場合は、充電制御信号P4を出力して充電制御スイッチS2をOFFする。
充電制御スイッチS2がOFFになると、二次電池230へ流れる充電電流Icgの電流経路が遮断されるので、二次電池220への充電は、強制的に停止される。この動作によって、二次電池230がLiイオン二次電池である場合、充電許可温度範囲から外れた温度での充電を防止することができる。
【0028】
しかし、太陽電池240への光の照射が途絶えて、二次電池230への充電が長期間行われないと、前述したように蓄電電圧VBTが低下して、動作停止スイッチS1がOFFとなり時計IC220は動作を停止する。そして、時計IC220には温度検出回路225と充電制御回路226とが内蔵されているので、温度検出動作も充電制御動作も機能停止となり、充電制御スイッチS2もOFFする。
【0029】
この時計IC220の機能停止状態において、再び太陽電池240に光が照射されるならば、二次電池230への充電が可能となるが、温度検出回路225及び充電制御回路226は時計IC220の内部にあって機能停止しているので、充電制御スイッチS2はOFF状態を継続し、この結果、二次電池230への充電が行われず、電子時計200は停止状態から抜け出せない。
【0030】
また、動作停止制御回路223及び動作停止スイッチS1が存在せず、二次電池230の電圧低下によって、時計IC220が動作停止する機能が存在しなかったとしても、温度検出回路225のCR発振器224は、蓄電電圧VBTの電圧低下によって、発振周波数が大きく変動するので、正しい温度情報を取得することができなくなる。この結果、充電制御回路226は、温度に対して正常に動作できなくなり、充電許可温度範囲から外れても充電動作を継続したり、その反対に充電許可温度範囲内であっても充電を停止したりする誤動作の危険がある。
【0031】
このように、従来の時計ICに温度検出手段や充電制御手段を組み込んだ時計システムでは、蓄電電圧VBTの電圧低下によって時計ICが停止すると、充電制御も停止してしまうので、充電を再開できないという大きな課題がある。また、時計ICが停止しないシステムでも、充電制御が誤動作する危険がある。
【0032】
つまり、高容量で低い内部インピーダンスであるLiイオン二次電池を、ソーラー電波修正時計の蓄電手段として用いたくても、上記説明したような従来の時計システムでは、充電許可温度範囲に制限があるLiイオン二次電池を用いることができないという大きな問題があった。
【0033】
本発明は上記課題を解決し、Liイオン二次電池の蓄電電圧が低下して時計ICが動作を停止しても、温度検出と充電制御とを継続し、Liイオン二次電池の充電許可温度範囲で安全に充電制御を行うことができる電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記課題を解決するために、本発明の電子時計は下記記載の構成を採用する。
【0035】
本発明の電子時計は、発電手段と、充電許可温度範囲に制限がある蓄電手段と、時計の動作を制御するシステム制御部を備える電子時計において、システム制御部は、蓄電手段に蓄電されている電力が所定の値以下のときに動作を停止し、発電手段が生成した電力で動作し、温度を検出して充電許可温度範囲で蓄電手段を充電するように制御する充電制御部を備えたことを特徴とする。
【0036】
これにより、蓄電手段に蓄電されている電力が減少してシステム制御部が動作を停止しても、充電制御部は発電手段が発電する電力で動作するので、温度を検出して充電許可温度範囲内での蓄電手段への充電を継続して安全に行うことができる。
【0037】
また、充電制御部は、互いに温度特性が異なる2つの発振回路を有する温度検出部を備え、温度検出部は、双方の発振回路が生成するクロックパルス同士を比較することで温度検出を行うようにしてもよい。
【0038】
これにより、2つの発振回路の周波数差から温度情報を取得するので、ICの製造ばらつき等による影響や電源電圧の変動の影響を受けにくい高精度な温度検出を実現できる。
【0039】
また、充電制御部に備える2つの発振回路は、一方は常時動作し他方は間欠動作し、常時動作している発振回路は、間欠動作している発振回路より発振周波数が低く、温度検出部は、常時動作している発振回路のクロックパルスに基づいて生成した検出パルスによって間欠動作している発振回路のクロックパルスのパルス数を計数し、その結果に基づいて温度検出を行うようにしてもよい。
【0040】
これにより、常時動作している一方の発振回路の周波数が低く、他方の発振回路は常時動作している発振回路のクロックパルスに基づいて生成した検出パルスによって間欠動作
するので、充電制御部の消費電力を低く抑えることができ、発電手段からの僅かな起電力で充電制御部を動作させることができる。
【0041】
また、充電制御部に備える2つの発振回路は、互いに温度係数が逆であるようにしてもよい。
【0042】
これにより、2つの発振回路は互いに温度係数が逆であるので、温度変化に対する周波数差の変化を大きくでき、感度の良い温度検出が可能となる。
【0043】
また、充電制御部は、発電手段が生成した電力を昇圧する昇圧回路を備えるようにしてもよい。
【0044】
これにより、発電手段からの起電力の電圧値が低くても、昇圧して蓄電手段に充電することが可能となる。
【0045】
また、常時動作している発振回路のクロックパルスを充電制御部のシステムクロックパルスに用いるようにしてもよい。
【0046】
これにより、充電制御部のために新たにクロックを生成する必要がないので、充電制御部の回路規模を小さくできると共に、消費電力の増加を防ぐことができる。また、昇圧回路を備えたときは、その昇圧クロックにも用いることができる。
【0047】
また、充電制御部は、蓄電手段の蓄電電圧を検出する電圧検出回路を備え、電圧検出回路は、蓄電電圧が所定の電圧以下であるとき、蓄電手段への充電を停止するように制御するようにしてもよい。
【0048】
これにより、蓄電手段の過放電を検出して充電動作を停止できるので、過放電状態の蓄電手段に充電することの危険性を排除することができる。
【0049】
また、充電制御部は、発電手段の発電電圧を検出する電圧検出回路を備え、電圧検出回路は、発電電圧が所定の電圧以下であるとき、蓄電手段への充電を停止するように制御するようにしてもよい。
【0050】
これにより、発電手段の発電電圧の低下を検出して充電動作を停止できるので、温度検出部の温度検出誤差が低電圧によって大きくなった場合に、充電制御が誤動作する危険性を排除することができる。
【0051】
電圧検出回路は、常時動作している発振回路のクロックパルスに基づいてサンプリング動作するようにしてもよい。
【0052】
これにより、電圧検出回路のサンプリング動作のために新たにクロックを生成する必要がないので、充電制御部の回路規模を小さくできる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、充電手段の電圧低下によって時計の動作を制御するシステム制御部(例えば、時計IC)の動作が停止しても、Liイオン二次電池の充電を安全に継続することができ、時計の信頼性を高めることができる。
【0054】
本発明によって、発電手段と蓄電手段とを備えた電子時計に高容量で内部抵抗の小さいLiイオン二次電池を用いることができるようになった。これにより、電子時計を頻繁に
充電せずに長時間使用できると共に、比較的大きな電流が必要となるソーラー電波修正時計における時刻情報の受信動作を安定して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の電子時計の基本概念を説明するブロック図である。
【図2】本発明の電子時計の実施形態を説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の温度検出部に内蔵する発振回路の一例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態の温度検出部に内蔵する発振回路の温度特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態の温度検出部に内蔵する判断部の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態の温度検出部の発振回路OSC1に大きな温度依存性を持たせた場合の動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態の温度検出部の発振回路OSC2に大きな温度依存性を持たせた場合の動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施形態の電圧検出回路の一例を示す回路図と、その動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施形態の充電制御回路と昇圧回路の一例を示す回路図である。
【図10】本発明の実施形態の充電制御動作例1を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態の充電制御動作例2を説明するフローチャートである。
【図12】従来の電子時計の構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。始めに本発明の理解を助けるために、本発明の基本概念を図1を用いて説明する。
本発明の基本概念の特徴は、時計の動作を制御するシステム制御部と、Liイオン二次電池の充電を制御する充電制御部とを分離して、システム制御部はLiイオン二次電池で駆動し、充電制御部は太陽電池で駆動する。このような構成によって、Liイオン二次電池の電圧低下でシステム制御部が停止しても、充電制御部はLiイオン二次電池の充電を継続する構成である。
【0057】
このような、時計の動作を司るシステム制御部と、充電を制御する充電制御部とを分離する形態は、例えば、システム制御部を時計IC、充電制御部を充電制御ICとして独立したICチップ構成とすれば、Liイオン二次電池や太陽電池といった異なる電源手段で動作させることも容易になる。以後の説明にあっては、このようにICチップを分ける例を用いるものとする。
【0058】
[本発明の基本概念の構成説明:図1]
図1は本発明の基本概念を示すブロック図である。
図1において、符号1は本発明の基本概念の構成を有する電子時計である。電子時計1は前述したソーラー時計システムであり、時計の動作を制御するシステム制御部2と、蓄電手段の充電制御を行う充電制御部3と、蓄電手段としてのLiイオン二次電池4と、発電手段としての太陽電池5(図中は「S.C.」と表記する)などによって構成される。
【0059】
なお、図1に示す本発明の基本概念の構成の一部は、すでに説明した従来の電子時計200(図12参照)と共通の要素がある。そのような要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。
また、電子時計1は、もちろん時刻を表示する表示部も有しているが、本発明に直接係わらないのでその図示は省略する。
【0060】
システム制御部2は、時計IC10と外付けの動作停止スイッチS1、ダイオードD1によって構成される。なお、動作停止スイッチS1とダイオードD1は、時計IC10に内蔵しても良く、その場合は、動作停止スイッチS1は、電界効果トランジスタなどを使った半導体スイッチとすることができる。
【0061】
時計IC10は、低消費電力で動作する時計用マイコンで成り、基準クロックP10を発生する水晶発振回路11、基準クロックP10を入力して時刻を計時する時計回路12、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTをモニタして所定の電圧以下になった場合、停止信号P11を出力する動作停止制御回路13によって構成される。
この停止信号P11は、動作停止スイッチS1のコントロール端子に接続して動作停止スイッチS1のON(例えば、道通)とOFF(例えば、開放)とを制御する。なお、水晶発振回路11には、水晶振動子が接続されるが図示を省略している。
【0062】
充電制御部3は、充電制御IC20と充電制御スイッチS2によって構成される。なお、充電制御スイッチS2は、先に説明したシステム制御部2の場合と同様に、充電制御IC20に内蔵しても良く、その場合は、充電制御スイッチS2を電界効果トランジスタなどを使った半導体スイッチとすることができる。
【0063】
充電制御IC20は、温度を検出して温度検出信号P12を出力する温度検出部30と、温度検出信号P12に基づいてLiイオン二次電池4の充電を制御する充電制御信号P13を出力する充電制御回路70とによって構成される。
この充電制御信号P13は、充電制御スイッチS2のコントロール端子に接続して充電制御スイッチS2のONとOFFとを制御する。
【0064】
温度検出部30は、互いに温度係数が異なる2つの発振回路OSC1とOSC2、および、発振回路OSC1、OSC2からのクロックパルスCL1とCL2とを入力し、クロックパルスCL1とCL2とを比較して、その周波数差から温度情報に換算して温度検出信号P12を出力する判断部60によって構成される。
【0065】
また、太陽電池5のプラス端子は、電子時計1のGNDに接続され、太陽電池5のマイナス端子は、発電電圧VHDとして充電制御部3の充電制御スイッチS2の一方の端子に接続され、充電制御スイッチS2の他方の端子は、システム制御部2のダイオードD1のカソードに接続される。
【0066】
一方、Liイオン二次電池4のプラス端子は電子時計1のGNDに接続され、マイナス端子は、蓄電電圧VBTとしてダイオードD1のアノードと動作停止スイッチS1の一方の端子の接続点に接続される。また、蓄電電圧VBTは、時計IC10の動作停止制御回路13にも接続される。また、動作停止スイッチS1の他方の端子は蓄電電圧VBT´として時計IC10に供給される。また、GNDは時計IC10と充電制御IC20に接続する。ここで、電子時計1のGNDを基準電位とするならば、発電電圧VHDと蓄電電圧VBTは、マイナス電位の電圧である。
【0067】
なお、図1に示すように、蓄電電圧VBTはLiイオン二次電池4の蓄電電圧そのものであり、蓄電電圧VBT´はその電圧から動作停止スイッチS1の開閉に関る電圧低下分を差し引いた電圧となる。動作停止スイッチS1を接点抵抗の小さいスイッチで構成すれば、動作停止スイッチS1がONしているときは、蓄電電圧VBTと蓄電電圧VBT´との差は、ほとんどない。
【0068】
[本発明の基本概念の動作説明:図1]
次に本発明の基本概念の動作の概略を図1を用いて説明する。
図1において、太陽電池5に光が照射されると起電力が発生し、所定の電圧値の発電電圧VHDが発生する。充電制御部3は、周囲温度が充電許可温度範囲であれば、充電制御信号P13によって充電制御スイッチS2をONするので、太陽電池5のプラス端子からGNDを経てLiイオン二次電池4、ダイオードD1、充電制御スイッチS2、太陽電池5のマイナス端子へと電流経路が形成され、Liイオン二次電池4に太陽電池5からの充電電流Icgが流れて、Liイオン二次電池4は充電される。
【0069】
一方、時計IC10の動作停止制御回路13は、Liイオン二次電池4がある程度充電されて蓄電電圧VBTが所定電圧以上になると動作停止スイッチS1をONするので、時計IC10には、動作停止スイッチS1を介してLiイオン二次電池4からの蓄電電圧VBT´が供給される。これにより、時計IC10の水晶発振回路11は発振して32,768Hzの基準クロックP10を出力する。時計回路12は、基準クロックP10を入力して時刻を計時し、図示しない表示部を駆動して時刻を表示する。そして、太陽電池5に光が照射され続けるならば、Liイオン二次電池4は充電が継続されると共に、時計IC10は動作を継続して時刻を表示することができる。
【0070】
次に、太陽電池5に光が照射されなくなると、太陽電池5の起電力である発電電圧VHDが低下してLiイオン二次電池4への充電は停止するが、Liイオン二次電池4に蓄えられた電力によって蓄電電圧VBTが供給され、時計IC10は動作を継続する。この状態で、Liイオン二次電池4への充電が長期間行われないと、Liイオン二次電池4に蓄えられた電力が減少し、蓄電電圧VBTは低下して、時計IC10の動作が不安定になる。
【0071】
動作停止制御回路13は蓄電電圧VBTをモニタして、時計IC10の動作が不安定になる前の所定の電圧値で停止信号P11を出力し、動作停止スイッチS1をOFFする。これによって、時計IC10への電源供給が停止するので、電子時計1は、不安定な誤動作をすることなく、安定して動作を停止することができる。
【0072】
一方、太陽電池5に光がわずかでも照射されて発電電圧VHDが充電制御IC20に供給されていれば、充電制御IC20の温度検出部30は、内蔵する2つの発振回路OSC1とOSC2とのそれぞれのクロックパルスCL1とCL2との周波数差から温度情報を算出する。温度検出部30の判断部60は、取得した温度情報がLiイオン二次電池4の充電許可温度範囲内であるかを判定して温度検出信号P12を出力する。
【0073】
充電制御IC20の充電制御回路70は、温度検出信号P12を入力して温度が充電許可温度範囲から外れた場合は、充電制御信号P13を出力して充電制御スイッチS2をOFFする。充電制御スイッチS2がOFFになると、Liイオン二次電池4へ流れる充電電流Icgの電流経路が遮断されるので、Liイオン二次電池4への充電は、強制的に停止される。この動作によって、充電許可温度範囲から外れた温度での充電を防止することができる。
【0074】
このように本発明の基本概念の構成は、システム制御部2と充電制御部3とが分離しており、システム制御部2の時計IC10は、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTによって動作し、充電制御部3の充電制御IC20は、太陽電池5からの発電電圧VHDによって動作している。
このため、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTが低下して、時計IC10が動作停止しても、太陽電池5に光がわずかでも照射して発電電圧VHDが発生するならば、充電制御IC20は動作を継続して温度検出しながら充電制御を行うことができる。
【0075】
すなわち、本発明を用いれば、充電許可温度範囲から外れた環境で充電を継続すると、異常な発熱、発火、破裂などの状態を引き起こす可能性があるLiイオン二次電池を、安全に用いることができるのである。
【実施例1】
【0076】
[実施形態の電子時計の構成説明:図2]
次に、実施形態の構成を図2を用いて説明する。
本実施形態の特徴は、前述した基本概念の構成(図1参照)を含むと共に、更に実際的に必要となる制御を加えた構成であり、充電制御部に蓄電電圧VBTと発電電圧VHDのそれぞれの電圧値を検出する電圧検出回路と、発電電圧VHDを昇圧する昇圧回路とを含んでいる。
なお、実施形態の構成の大部分は、基本概念(図1)と共通しているので、同一要素には同一番号を付して重複する説明は省略し、充電制御部の構成を中心にして説明する。
【0077】
図2において、符号100は実施形態の電子時計である。電子時計100は、基本概念の電子時計1と同様にソーラー時計システムであり、時計の制御を行うシステム制御部2と、蓄電手段の充電制御を行う充電制御部110と、蓄電手段としてのLiイオン二次電池4と、発電手段としての太陽電池5などによって構成される。なお、本実施形態においても、時刻を表示する表示部は、発明に直接係わらないので図示を省略している。
【0078】
電子時計100のシステム制御部2の構成とLiイオン二次電池4の接続は、基本概念の構成(図1参照)と同様であるので説明は省略する。また基本概念の構成と同様に、システム制御部2と充電制御部110とは、2つに分離しており、システム制御部2はLiイオン二次電池4からの蓄電電圧VBTによって動作し、充電制御部110は太陽電池5が生成した電力である発電電圧VHDによって動作する。
【0079】
また、太陽電池5のプラス端子は、基本概念の構成と同様に電子時計100のGNDに接続され、太陽電池5のマイナス端子は、発電電圧VHDとして後述する昇圧回路150と電圧検出回路140とに入力される。また、システム制御部2に含まれる動作停止スイッチS1とダイオードD1との接続は、基本概念の構成と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
電子時計100の充電制御部110は、充電制御IC120によって構成される。充電制御IC120の内部構成は、基本概念の充電制御IC20の構成に対して、電圧検出回路140と昇圧回路150とが加えられている。
温度検出部30は基本概念の構成と同一であり、充電制御回路130は、基本概念の充電制御回路70に、後述する電圧検出信号P15の入力が加わった構成である。
【0081】
また、図2に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1を、充電制御IC120の全体を動作させるシステムクロックSYSCLKとして用いる場合を示している。後述するが、電圧検出回路140のサンプリング動作用、昇圧回路150の昇圧動作用のクロックパルスにも用いている。
もちろん、別の発振回路を設けてシステムクロックを生成してもよいが、発振回路OSC1のクロックパルスCL1を用いればその必要がなく、回路規模を小さくできると共に低消費電力にできる。
【0082】
充電制御IC120の電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKを入力して動作し、Liイオン二次電池4からの蓄電電圧VBTと太陽電池5からの発電電圧VHDとを入力して電圧検出信号P15を出力する。なお、電圧検出回路140は、電子時計100の仕様によって、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方の電圧を検出
するように構成しても良い。なお、電圧検出回路140の詳細は後述する。
【0083】
充電制御回路130は、温度検出信号P12と共に、電圧検出信号P15を入力し、温度情報と共に、Liイオン二次電池4及び太陽電池5の電圧情報に基づいた充電制御信号P13を出力する。なお、充電制御回路130の詳細は後述する。
【0084】
昇圧回路150は、基本概念の構成の充電制御スイッチS2(図1参照)に置き換えられて配置され、システムクロックSYSCLKを昇圧クロックパルスとして入力し、太陽電池5が生成する電力である発電電圧VHDを2倍昇圧して昇圧電圧VHD2として出力する。また、昇圧回路150は充電制御信号P13によって、昇圧の動作と停止が制御される。なお、昇圧回路150の詳細は後述する。
【0085】
昇圧回路150から出力される昇圧電圧VHD2は、ダイオードD1のカソードに接続され、これによって、太陽電池5のプラス端子、GNDを経てLiイオン二次電池4、ダイオードD1、昇圧回路150、太陽電池5のマイナス端子へと電流経路が形成されて、充電電流IcgがLiイオン二次電池4に流れて充電が行われる。
【0086】
この昇圧回路150を配置することで、太陽電池5の起電力である発電電圧VHDの電圧値が低くても、昇圧回路150によって昇圧してLiイオン二次電池4に充電することが可能となる。特に、太陽電池5を設置するスペースが少なく、太陽電池5のセル数を減らさなければならない場合などで、この昇圧回路150は有効である。なお、本実施形態においては、昇圧回路150は発電電圧VHDを2倍に昇圧しているが、昇圧の段数は任意であり、Liイオン二次電池4と太陽電池5の仕様に合わせて決定される。
【0087】
また、太陽電池5のセル数をLiイオン二次電池4の蓄電電圧VBTに合わせて配置できるならば、昇圧回路150は無くてもよく、その場合は基本概念の構成のように発電電圧VHDを遮断する充電制御スイッチS2を配置すればよい。
【0088】
また、発電手段としては太陽電池を例にして説明しているが、もちろん、これに限定するものではなく、自然エネルギを電気エネルギに変換するものであればなんでもよい。
例えば、電子時計本体を動かすことでその運動エネルギを回転錘の運動にし、これにより発電する電磁誘導型発電手段などを用いることができる。また、電子時計に加わる熱によりその熱エネルギをペルチェ素子などを用いて電気信号にし、これにより発電する熱発電手段を用いることもできる。
【0089】
一般に、電磁誘導型発電手段も熱発電手段も発電電圧が低い。構成によっては、発電電圧が1.0Vを下回る場合がある。しかし、このような発電手段を採用しても、昇圧回路150を用いることにより、その低い発電電圧VHDを昇圧できるから、Liイオン二次電池4を十分に充電することができる。
【0090】
次に、本実施形態の充電制御部110の各要素の詳細と動作を図3〜図9を用いて説明する。
【0091】
[温度検出部の発振回路の基本構成と温度特性の説明:図3、図4]
温度検出部30は、前述したように2つの発振回路OSC1とOSC2とを有しており、クロックパルス同士を比較して、その発振周波数の差から温度情報を換算している。
この2つの発振回路OSC1、OSC2の基本構成は同じなので、ここでは、発振回路OSC1の基本構成の一例を図3の回路図を用いて説明する。
【0092】
図3において、発振回路OSC1は、よく知られているCR発振回路によって構成され
ており、6つのインバータ回路IN1〜IN6と、バッファ回路BF1及び抵抗R1とコンデンサC1とによって構成される。
【0093】
6つのインバータ回路IN1〜IN6は、図示するように、それぞれが直列に接続されており、インバータ回路IN6の出力端子がコンデンサC1を介してインバータ回路IN1の入力端子にフィードバックしている。また、インバータ回路IN3の出力端子とインバータ回路IN4の入力端子の接続点と、インバータ回路IN1の入力端子が、図示するように抵抗R1を介して接続されている。
【0094】
そして、最終段のインバータ回路IN6の出力端子は、バッファ回路BF1に接続され、このバッファ回路BF1によって波形成形されて、クロックパルスCL1及びシステムクロックSYSCLKとして出力される。なお、発振回路OSC1、OSC2は、太陽電池5(図2参照)からの発電電圧VHDによって駆動される。
【0095】
2つの発振回路OSC1及びOSC2の基本構成は等しいが、それぞれの発振周波数の温度係数が異なるように設計される。例えば、発振回路OSC1の抵抗R1の材質を変えることで抵抗そのものの温度係数を変えることができることを利用して、発振周波数の温度係数を変えることができる。
【0096】
すなわち、発振回路OSC1の抵抗R1の材質を半導体基板上に形成したポリシリコン(以下、Poly−Siと称する)とする。つまり、抵抗R1をPoly−Si抵抗で構成する。
Poly−Si抵抗は、知られているように負の温度特性を有している。そうすると、発振回路OSC1の発振周波数は、正の温度係数を得ることができる。これは、抵抗R1の抵抗値が低くなると発振周波数が高くなるからである。
【0097】
また、発振回路OSC2の抵抗R1´(ここでは便宜上、このように称する)の材質を半導体基板内に形成した拡散抵抗とする。つまり、抵抗R1´を拡散抵抗で構成するのである。
拡散抵抗は、知られているように正の温度特性を有している。そうすると、発振回路OSC2の発振周波数は、負の温度係数を得ることができる。これは、抵抗R1´の抵抗値が高くなると発振周波数が低くなるからである。
【0098】
図4は、2つの発振回路OSC1とOSC2との温度特性の一例を模式的に示すグラフである。
図4(a)は、前述したように、発振回路OSC1の抵抗R1をPoly−Si抵抗によって構成して、発振回路OSC1に正の温度係数を持たせ、一方、発振回路OSC2の抵抗R1´を拡散抵抗によって構成して、発振回路OSC2に負の温度係数を持たせた例である。
この場合、2つの発振回路OSC1とOSC2との発振周波数は、互いに温度係数が逆になるので、周囲温度Tの変化に対して周波数差Δfは、比較的大きく変化することができる。
【0099】
この周囲温度Tの変化に対する周波数差Δfは、後述する理由により大きい方が検出感度が良くなる傾向にあるが、2つの発振回路OSC1とOSC2との温度係数が同じ(例えば、正)であっても構わない。その一例が、図4(b)に示す例である。
【0100】
図4(b)は、2つの発振回路OSC1とOSC2との温度係数を共に正とし、周囲温度Tに対する発振周波数の変化の傾きが異なる場合を示している。
この場合は、互いの発振周波数の変化の傾き方向が同じ(すなわち、温度係数が同じ極
性)であるので、周囲温度Tの変化に対して周波数差Δfは、図4(a)に示す例に比べて比較的小さく変化する。
【0101】
ここで、温度検出部30は、図4で示す周波数差Δfから温度情報を換算するので、周波数差Δfは周囲温度Tに対して大きく変化した方が温度変化を感度良く検出できる。図4(a)で示すように、2つの発振回路OSC1とOSC2との発振周波数の温度係数が互いに逆である方が好ましいのである。しかし、感度が良すぎると温度検出の安定性が低下する場合もあるので、温度検出の安定性を優先する場合には、図4(b)で示すように、2つの発振回路OSC1とOSC2の発振周波数の温度係数を同じ極性に設定すると良い。
【0102】
[温度検出部の判断部の構成説明:図5]
次に、温度検出部30の判断部60の構成を図5を用いて説明する。
図5において温度検出部30は、前述したように、2つの発振回路OSC1、OSC2と判断部60とによって構成される。発振回路OSC1は常時動作しており、発振回路OSC2は間欠動作している。また、発振回路OSC1の発振周波数は、発振回路OSC2の発振周波数より低く設定される(図4参照)。
これにより、発振回路OSC1が常時動作していても、発振周波数が低いので充電制御IC120の消費電力を低く抑えることができ、太陽電池5からの僅かな起電力で充電制御IC120を動作させることができる。
【0103】
判断部60は、ウインドウ生成回路61、温度センスカウンタ62、比較回路63、及び比較回路63に入力される複数テーブルの温度データT1からTnによって構成される。これらの温度データは、図示しない不揮発性記憶装置に格納されている。
判断部60のウインドウ生成回路61は、発振回路OSC1からクロックパルスCL1を基準クロックとして入力し、このクロックパルスCL1に基づいて生成した検出パルスP20を出力する。
【0104】
検出パルスP20は、温度センスカウンタ62と発振回路OSC2とに供給される。発振回路OSC2は、検出パルスP20によって発振のONとOFFとが制御され、検出パルスP20が論理“1”の時にのみ、発振が開始されて継続し、検出パルスP20が論理“0”の時には発振が停止する。すなわち、発振回路OSC2は検出パルスP20によって間欠動作を行う。
従って発振回路OSC2は、図3で示した発振回路OSC1の回路構成に対して、検出パルスP20によって間欠動作する回路が追加されているが、このような動作をする発振回路は良く知られるものであるから、その説明は省略する。
【0105】
温度センスカウンタ62は、発振回路OSC2からのクロックパルスCL2と、検出パルスP20とを入力し、検出パルスP20が論理“1”の時に、クロックパルスCL2のパルス数を計数してカウントデータNtを出力する。ここで、検出パルスP20は、前述したように、クロックパルスCL1によって生成されるので、検出パルスP20が論理“1”となる期間は、発振回路OSC1の温度特性に沿った長さとなる。
【0106】
また、温度センスカウンタ62がカウントするクロックパルスCL2は、発振回路OSC2の温度特性によって周波数が変化するので、結果として、カウントデータNtの値は、2つの発振回路OSC1、OSC2の周波数差Δfを現すことになり、カウントデータNtは、周囲温度Tに換算することができる。
【0107】
比較回路63は、カウントデータNtを入力し、このカウントデータNtの数値と複数のテーブルの温度データT1〜Tnの数値を比較して、比較結果に応じて温度検出信号P
12を出力する。
例えば、Liイオン二次電池4の充電許可温度範囲が、例えば、0℃〜+45℃である場合、温度データT1を温度範囲の下限値の0℃に相当するテーブルの値とし、温度データT2を温度範囲の上限値の+45℃に相当するテーブルの値とする。
【0108】
そして、比較回路63は、カウントデータNtの値が温度データT1未満であるとき、温度検出信号P12を論理“0”として、カウントデータNtの値が温度データT1以上で、且つ、温度データT2未満であるとき、温度検出信号P12を論理“1”とし、カウントデータNtの値が温度データT2以上であるとき、温度検出信号P12を論理“0”とする。
この動作によって比較回路63は、カウントデータNtから得た周囲温度Tが、0℃〜+45℃の充電許可温度範囲内であるときに、温度検出信号P12を論理“1”とし、充電許可温度範囲外であるならば、温度検出信号P12を論理“0”とすることができる。
【0109】
なお、温度データT1〜Tnは、使用するLiイオン二次電池が一種類であれば、その電池の充電許可温度範囲の下限と上限との温度データのみを設定すればよいので、2つの温度データT1、T2だけで構成される。しかし、使用するLiイオン二次電池の種類が複数想定され、それぞれの電池の充電許可温度範囲が異なる場合は、使用が想定される複数のLiイオン二次電池の充電許可温度範囲の下限と上限の温度データをそれぞれ用意し、使用するLiイオン二次電池に応じて温度データを切り替えて使用するとよい。
【0110】
温度データの切り替えは、時計が製造されたあとボタン操作や非接触通信などによって行っても、製造途中で回路を切り替えるようパターニングするなどして行ってもよく、それらの手法はすでに知られているものを用いることができるから、ここでの説明は省略する。
なお、温度検出部30の判断部60も、太陽電池5からの発電電圧VHDによって駆動される。
【0111】
[温度検出部の動作説明:図5、図6、図7]
次に、温度検出部30の温度検出動作の詳細を図5及び図6と図7とを用いて説明する。
ここで、動作説明を分かりやすくするために、図6は発振回路OSC1の温度依存性が大きく、発振回路OSC2の温度依存性が小さい場合の温度検出部30の動作例を示し、図7は発振回路OSC2の温度依存性が大きく、発振回路OSC1の温度依存性が小さい場合の温度検出部30の動作例を示す。
【0112】
図6において、図6(a)は周囲温度T(図4参照)が低温のときの温度検出部30の動作の一例を示し、図6(b)は周囲温度Tが常温のときの温度検出部30の動作の一例を示し、図6(c)は周囲温度Tが高温のときの温度検出部30の動作の一例を示す。ここで、発振回路OSC1は温度依存性が大きいので、周囲温度Tが低温のときのクロックパルスCL1aの周波数は低くなり、周囲温度Tが常温のときのクロックパルスCL1bの周波数は中位となり、周囲温度Tが高いときのクロックパルスCL1aの周波数は高くなる。また、発振回路OSC2の温度依存性は小さいので、クロックパルスCL2の発振周波数は、ほとんど変化しないものとする。
【0113】
図6(a)に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1aの発振周波数が低いので、このクロックパルスCL1aに基づいて生成される検出パルスP20aの長さTw1(論理“1”の期間)は長くなる。ここで温度センスカウンタ62は、前述したように、この検出パルスP20aが論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルス
CL2のパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは多くなって、一例として値16が出力される。
【0114】
また、図6(b)に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1bの発振周波数が中位なので、このクロックパルスCL1bに基づいて生成される検出パルスP20bの長さTw2(論理“1”の期間)は中位となる。温度センスカウンタ62は、この検出パルスP20bが論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2のパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは中位となって、一例として値12が出力される。
【0115】
また、図6(c)に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1cの発振周波数が高いので、このクロックパルスCL1cに基づいて生成される検出パルスP20cの長さTw3(論理“1”の期間)は短くなる。温度センスカウンタ62は、この検出パルスP20cが論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2のパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは少なくなって、一例として値8が出力される。
【0116】
このように、発振回路OSC1の温度依存性が大きく、発振回路OSC2の温度依存性が小さい場合においては、検出パルスP20の長さTwが周囲温度Tに応じて変化することによって、温度センスカウンタ62が出力するカウントデータNtが、周囲温度Tに応じて変化するので、このカウントデータNtの値を周囲温度Tに換算することができる。
そして、判断部60の比較回路63は、このカウントデータNtの値と、温度データT1〜Tnとを比較して、温度検出信号P12を出力し、前述した充電制御回路70を制御するのである。
【0117】
次に、図7を用いて発振回路OSC2に大きな温度依存性を持たせた場合の温度検出部30の動作を説明する。
図7において、発振回路OSC1の温度依存性が小さい場合を前提とするので、クロックパルスCL1の周波数は、ほとんど変化しない。そして、検出パルスP20は、クロックパルスCL1に基づいて生成されるので、検出パルスP20の長さTw(論理“1”の期間)は、周囲温度Tに対してほぼ一定である。
【0118】
ここで、発振回路OSC2のクロックパルスCL2aは、周囲温度T(図4参照)が低温のときの状態を示しており、その発振周波数は低温によって高くなり、温度センスカウンタ62は、前述したように、検出パルスP20が論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2aのパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは多くなって、一例として値16が出力される。
【0119】
また、発振回路OSC2のクロックパルスCL2bは、周囲温度Tが常温のときの状態を示しており、その発振周波数は常温によって中位となり、温度センスカウンタ62は、検出パルスP20が論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2bのパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは中位となって、一例として値12が出力される。
【0120】
また、発振回路OSC2のクロックパルスCL2cは、周囲温度Tが高温のときの状態を示しており、その発振周波数は高温によって低くなり、温度センスカウンタ62は、検出パルスP20が論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2cのパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは少なくなって、一例として値8が出力される。
【0121】
このように、発振回路OSC2の温度依存性が大きく、発振回路OSC1の温度依存性が小さい場合においては、発振回路OSC2のクロックパルスCL2の発振周波数が周囲温度Tに応じて変化することによって、温度センスカウンタ62が出力するカウントデータNtが、周囲温度Tに応じて変化するので、このカウントデータNtの値を周囲温度Tに換算することができる。
【0122】
ここで、2つの発振回路OSC1とOSC2との実際の温度特性は、図4(a)で示したように、互いに温度係数が逆になるように設定できるので、温度検出部30の実際の動作は、図6と図7とを組み合わせた動作にすることができる。
すなわち、図6で示したように、周囲温度Tの変化に応じて検出パルスP20の長さTwを変化させると共に、図7で示したように、周囲温度Tの変化に応じて発振回路OSC2のクロックパルスCL2の発振周波数も変化させることができるので、温度検出部30の温度センスカウンタ62が出力するカウントデータNtの値は、周囲温度Tの変化を確実に捉えて、温度情報を高精度に取得することができる。
【0123】
[電圧検出回路の構成と動作の説明:図8]
次に、充電制御IC120に内蔵される電圧検出回路140の構成を図8(a)を用いて説明する。
なお、電圧検出回路140は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとのどちらか一方を検出する構成と、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方を検出する構成とが考えられる。
両方の電圧を検出する場合は、充電制御IC120に電圧検出回路140が2つ配置されるが、2つ配置された場合でも電圧検出回路140の個々の回路構成は同様であるので、ここでの説明は電圧検出回路140が1つの場合を例として説明する。
【0124】
図8(a)において、電圧検出回路140は、コンパレータ回路141、D入力フリップフロップ回路142(以下、D−FF142と略す)、検出スイッチS21、分割抵抗R2、R3、及びタイミング生成回路143等によって構成される。なお、基準電圧VREFを生成する回路も含まれるが、基準電圧VREFを生成する回路は、知られているレギュレータ回路などから生成できるため、ここでの説明及び図示は省略する。
【0125】
タイミング生成回路143は、発振回路OSC1からのシステムクロックSYSCLKを入力し、このシステムクロックSYSCLKに基づいて、イネーブル信号Enとラッチクロック信号L−CKを生成して出力する。
電圧検出回路140は、この2つのタイミング信号であるイネーブル信号Enとラッチクロック信号L−CKとによってサンプリング動作し、蓄電電圧VBT、又は発電電圧VHDを検出する。
【0126】
検出スイッチS21の一方の端子はGNDに接続され、他方の端子は分割抵抗R2の一方の端子に接続され、分割抵抗R2の他方の端子と分割抵抗R3の一方の端子とが接続され、分割抵抗R3の他方の端子は、電圧検出回路140が蓄電電圧VBTの電圧値を検出する場合は蓄電電圧VBTに接続され、電圧検出回路140が発電電圧VHDの電圧値を検出する場合は発電電圧VHDに接続される。すなわち、分割抵抗R3の他方の端子が、電圧検出回路140が検出する電圧の入力端子となる。
【0127】
また、検出スイッチS21のON、OFFを制御するコントロール端子G21は、タイミング生成回路143からのイネーブル信号Enが入力するように接続され、このイネーブル信号Enは、コンパレータ回路141の動作をイネーブル(動作許可)にする信号としても用いられる。なお、検出スイッチS21は、コントロール端子G21が論理“1”でONとなる。
【0128】
コンパレータ回路141の一方の入力端子は、基準電圧VREFに接続され、他方の入力端子は分割抵抗R2とR3との接続点Aに接続され、コンパレータ回路141の出力端子はD−FF142のD入力端子に接続される。
ここで、コンパレータ回路141は、分割抵抗R2とR3とによって分割される蓄電電圧VBT、又は発電電圧VHDの電圧値(すなわち接続点Aの電圧値)が、基準電圧VREFを越えるか越えないかを判定して出力端子からコンパレータ信号P14を出力する。
【0129】
ここで、分割抵抗R2とR3との分割比は、電圧検出回路140がLiイオン二次電池4の蓄電電圧VBTの電圧低下を検出するのであれば、その検出したい所定の電圧値と基準電圧VREFとの比率から分割抵抗R2とR3との分割比を決定する。また、電圧検出回路140が、太陽電池5の発電電圧VHDの電圧低下を検出するのであれば、その検出したい所定の電圧値と基準電圧VREFとの比率から分割抵抗R2とR3との分割比を決定する。
これにより、コンパレータ回路141は、蓄電電圧VBTまたは発電電圧VHDの電圧低下を検出することができる。
【0130】
また、D−FF142のクロック端子CLはラッチクロック信号L−CKを入力し、出力端子Qからは、電圧検出信号P15が出力する。なお、図示しないが、コンパレータ回路141とD−FF142のプラス側電源は回路のGNDに接続され、マイナス側電源は発電電圧VHDに接続されている。すなわち、電圧検出回路140は、太陽電池5からの発電電圧VHDによって駆動される。
なお、電圧検出回路140が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方を検出するために2つの回路で構成される場合は、内蔵するタイミング生成回路143と基準電圧VREFを生成する回路(図示せず)は、共用することもできる。
【0131】
次に電圧検出回路140の動作を図8(b)のタイミングチャートを用いて説明する。
図8(b)において、タイミング生成回路143から、システムクロックSYSCLKに基づいたイネーブル信号Enが所定の繰り返し周期で、所定の期間だけ論理“1”が出力される。コンパレータ回路141は、イネーブル信号Enが論理“1”である期間にイネーブル状態となって動作する。また、イネーブル信号Enによって検出スイッチS21がONするので、GNDから検出スイッチS21を介して分割抵抗R2とR3とに電流が流れて接続点Aに分割電圧が発生する。すなわち、イネーブル信号Enが論理“1”となったときのみに、コンパレータ回路141と分割抵抗R2及びR3とに動作電流が流れるので、電圧検出回路140は少ない電力で動作できる。
【0132】
ここでコンパレータ回路141はイネーブル期間中、基準電圧VREFと接続点Aの電圧値とを比較して、比較結果として、接続点Aの電圧値が基準電圧VREFより低ければ、論理“0”のコンパレータ信号P14を出力し、接続点Aの電圧値が基準電圧VREFより高ければ、論理“1”のコンパレータ信号P14を出力する。
なお、コンパレータ信号P14は、コンパレータ回路141が動作するイネーブル信号Enが論理“1”である期間のみ有効であり、他の期間は不定である。
【0133】
コンパレータ信号P14は、D−FF142のD入力端子に接続され、D−FF142は、クロック端子CLに入力されるラッチクロック信号L−CKが論理“1”から論理“0”に立ち下がるタイミングt1でコンパレータ信号P14を読み込んで記憶し、出力端子Qから記憶されたコンパレータ信号P14の論理を電圧検出信号P15として出力する。ここで、ラッチクロック信号L−CKは、イネーブル信号Enに同期して、イネーブル信号Enが論理“1”である期間に図示するように出力されるので、D−FF142はコンパレータ信号P14が有効期間中に確実に読み込むことができる。
【0134】
これにより、D−FF142は、ラッチクロック信号L−CKが立ち下がったタイミングt1で、新しく読み込んだコンパレータ信号P14の論理を出力端子Qから電圧検出信号P15として出力することができる。すなわち、電圧検出回路140は、発振回路OSC1からのシステムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧低下を検出することができる。
【0135】
ところで、電圧検出回路140の電圧検出のサンプリングは、システムクロックSYSCLKに則り行わなくてもよい場合がある。システムが決めた検出タイミングでサンプリングする場合もあるからである。そのようなときは、そのタイミングを決める公知のタイミング発生回路などを用いてサンプリングすればよい。
【0136】
[充電制御回路の説明:図9]
次に、充電制御IC120に内蔵される充電制御回路130の構成を図9を用いて説明する。
図9において、充電制御回路130は、3入力AND回路131とインバータ回路132とによって構成される。3入力AND回路131は、温度検出部30からの温度検出信号P12と、電圧検出回路140からの電圧検出信号P15と、システムクロックSYSCLKとを入力して、充電制御信号P13を出力する。インバータ回路132は、充電制御信号P13を入力して反転充電制御信号P13´を出力する。なお、充電制御回路130も太陽電池5からの発電電圧VHDによって駆動される。
【0137】
この構成によって充電制御回路130は、温度検出信号P12が充電許可温度範囲となって論理“1”、且つ、電圧検出信号P15が論理“1”となったとき、システムクロックSYSCLKが3入力AND回路131を通過して、充電制御信号P13にシステムクロックSYSCLKが現れ、反転充電制御信号P13´からは、システムクロックSYSCLKの反転信号が現れる。
【0138】
すなわち、充電制御信号P13と反転充電制御信号P13´とは、温度検出信号P12と電圧検出信号P15とが共に論理“1”となる条件でシステムクロックSYSCLKとその反転クロックとが出力されるのである。この充電制御信号P13及び反転充電制御信号P13´として出力されるシステムクロックSYSCLKが、後述する昇圧回路150を駆動する昇圧クロックパルスとなる。なお、前述した図2において、充電制御回路130と昇圧回路150を結ぶ信号線は、充電制御信号P13として示したが、詳しくは、図9で示すように反転充電制御信号P13´も含まれている。
【0139】
また、前述したように、電圧検出回路140が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方を検出するために2つの回路で構成される場合は、電圧検出信号P15も2つ出力するので、3入力AND回路131は、4入力AND回路として構成する。この場合、2つの電圧検出信号P15が共に論理“1”で、且つ温度検出信号P12が論理“1”の条件で、充電制御信号P13としてシステムクロックSYSCLKが出力される。
【0140】
[昇圧回路の構成と動作の説明:図9]
次に、引き続き図9を用いて充電制御IC120に内蔵される昇圧回路150の構成を説明する。
昇圧回路150は、入力電圧を2倍昇圧するチャージポンプ方式の昇圧回路である。図9において昇圧回路150は、4つの昇圧スイッチS11〜S14と、2つの昇圧コンデンサC11、C12とによって構成される。ここで、昇圧スイッチS11〜S14は、ONとOFFとを制御するコントロール端子G11〜G14を備えているが、コントロール端子G11〜G14に、論理“0”が入力されたときスイッチがONとなり、論理“1”
が入力されたときスイッチがOFFとなるように設計されている。
【0141】
昇圧スイッチS11〜S14は、図示するように直列接続されている。すなわち、昇圧スイッチS11の一方の端子は回路のGNDに接続され、昇圧スイッチS11の他方の端子は昇圧スイッチS12の一方の端子に接続され、以降、昇圧スイッチS13、S14へと直列接続されて、昇圧スイッチS14の他方の端子から昇圧電圧VHD2が出力される。
また、昇圧スイッチS11〜S14のコントロール端子G11、G13は、充電制御信号P13を入力し、コントロール端子G12、G14は、反転充電制御信号P13´を入力する。
【0142】
昇圧コンデンサC11の一方の端子はGNDに接続され、昇圧コンデンサC11の他方の端子は昇圧スイッチS12とS13との接続点に接続され、この接続点に太陽電池5からの発電電圧VHDが入力される。また、昇圧コンデンサC12の一方の端子は、昇圧スイッチS11とS12との接続点に接続され、昇圧コンデンサC12の他方の端子は、昇圧スイッチS13とS14との接続点に接続される。
【0143】
次に、昇圧回路150の動作の概略を図9を用いて説明する。
図9において、温度検出信号P12が論理“1”で、且つ電圧検出信号P15が論理“1”であるときに、充電制御回路130からシステムクロックSYSCLKとその反転クロックが充電制御信号P13と反転充電制御信号P13´として出力される。そして、昇圧スイッチS11とS13とのコントロール端子G11、G13に充電制御信号P13が入力し、昇圧スイッチS12とS14とのコントロール端子G12、G14に反転充電制御信号P13´が入力する。これにより、昇圧スイッチS11とS13、及び昇圧スイッチS12とS14は、システムクロックSYSCLKのタイミングで交合にONとOFFとを高速に切り替える。
【0144】
この動作によって、昇圧スイッチS11とS13とがONするタイミングで、昇圧コンデンサC11とC12との両方に発電電圧VHDの電力が充電され、次の昇圧スイッチS12とS14とがONするタイミングで、昇圧コンデンサC11とC12とが直列接続されるので、昇圧電圧VHD2からは、発電電圧VHDが2倍に昇圧された電圧が出力される。本説明では2倍昇圧の例を用いているために昇圧電圧をVHD2と称している。
この昇圧スイッチS11〜S14のONとOFFとの動作は、システムクロックSYSCLKのタイミングで高速に繰り返されるので、昇圧電圧VHD2は、発電電圧VHDの2倍の電圧を安定して出力する。この昇圧電圧VHD2がダイオードD1を介してLiイオン二次電池4に供給され、充電電流Icgが流れて充電が行われる。
【0145】
このように、昇圧回路150は、昇圧スイッチS11〜S14を切り替えるための昇圧クロックパルスに温度検出部30の発振回路OSC1からのシステムクロックSYSCLKを用いている。このため、昇圧クロックパルスを新たに生成する必要がないので、充電制御IC120の回路規模を小さくできると共に、消費電力の増加を防ぐことができる。
【0146】
また、温度検出信号P12と電圧検出信号P15のどちらかが論理“0”であるときは、充電制御回路130からの充電制御信号P13は論理“0”、反転充電制御信号P13´は論理“1”が維持する。これによって、昇圧回路150は停止すると共に、反転充電制御信号P13´を入力する昇圧スイッチS14は継続してOFFとなるので、昇圧電圧VHD2はオープンとなり、その電位は零ボルトとなってLiイオン二次電池4への充電は禁止される。
すなわち、充電制御回路130は、温度検出信号P12と電圧検出信号P15が共にアクティブ(論理“1”)となる条件でのみ昇圧回路150を動作させてLiイオン二次電
池4への充電を行い、温度検出信号P12と電圧検出信号P15のどちらかが論理“0”であれば、充電を禁止するために昇圧回路150を停止させるのである。
言うならば、昇圧回路150に、図1に示す充電制御スイッチS2の機能を持たせているのである。
【0147】
次に、本実施形態の充電制御部110の全体的な動作の概略を説明する。
ここで、充電制御は充電制御部110が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとのどちらか一方の電圧低下を検出して充電制御を行う場合(動作例1)と、充電制御部110が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧低下を検出して充電制御を行う場合(動作例2)とがあるので、以下、動作例1と動作例2とを区別して説明する。なお、実施形態のシステム制御部2の動作は、前述した基本概念の動作(図1参照)と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0148】
[実施形態の充電制御の動作例1の説明:図10]
実施形態の充電制御部110の動作例1の概略を図10の動作フローを用いて説明する。
ここで充電制御の動作例1は、充電制御部110が太陽電池5で駆動され、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方の電圧検出と温度検出をして充電制御を行う動作である。なお、充電制御部110は図2のブロック図を参照し、充電制御IC120の内部の回路構成と動作は図3〜図9を参照する。また、動作例1においては、図2のブロック図で示す電圧検出回路140は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方を検出する構成とする。
【0149】
図10において、太陽電池5で駆動される充電制御部110の電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBT、または、太陽電池5の発電電圧VHDの電圧値を内部の基準電圧VREFと比較して、蓄電電圧VBTまたは発電電圧VHDが所定値以上であるか否かを電圧検出信号P15として出力する(ステップST1)。ここで、蓄電電圧VBTまたは発電電圧VHDが所定値以上である場合は、電圧検出信号P15を論理“1”として出力し、所定値未満である(すなわち、電圧が低下している)場合は、電圧検出信号P15を論理“0”として出力する。
【0150】
次に充電制御部110は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧値が所定値以上であるかどうかを判定し、所定値以上であれば次のステップST3へ進み、所定値未満であれば、ステップST6に進む(ステップST2)。
【0151】
ここで、充電制御部110が蓄電電圧VBTを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、Liイオン二次電池4が過放電状態であり、この状態で再充電が行われると、Liイオン二次電池4の劣化、あるいは破損が起きるため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4の劣化や破損を防止する(ステップST6)。
【0152】
また同様に、充電制御部110が発電電圧VHDを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、発電電圧VHDで動作する温度検出部30の2つの発振回路OSC1及びOSC2は、発電電圧VHDが著しく低下すると、発振周波数に電圧依存性が生じて温度検出に誤差が発生するので、正確な充電許可温度範囲内での充電制御が実施できなくなる。このため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST6)。
【0153】
また、充電制御部110が、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧値が所定値以上である(電圧検出信号P15:論理“1”)と判定した場合は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧値が正常であり、Liイオン二次電池4への充電が可能な状態であるので、温度検出部30によって周囲温度の検出が行われる(ステップST3)。ここで、温度検出部30は、2つの発振回路OSC1とOSC2との周波数差Δf(図4参照)から周囲温度を検出する。
【0154】
次に温度検出部30の判断部60は、検出した周囲温度が充電許可温度範囲内であるかどうかを比較して温度検出信号P12を出力し、充電制御部110は温度検出信号P12を判定して、充電許可温度範囲内(温度検出信号P12:論理“1”)であるならば、次のステップST5に進み、充電許可温度範囲外(温度検出信号P12:論理“0”)であるならば、ステップST6に進む(ステップST4)。
【0155】
ここで、充電制御部110が、ステップST4において、周囲温度が充電許可温度範囲外と判定した場合は、その周囲温度で充電を行うと、Liイオン二次電池4が異常な発熱、発火、最悪の場合は破裂などの状態を引き起こす可能性があるために、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST6)。
【0156】
また、充電制御部110が、ステップST4において、周囲温度が充電許可温度範囲内であると判定した場合は、充電制御回路130が論理“1”の充電制御信号P13を出力し、昇圧回路150を動作させて昇圧電圧VHD2を出力し、Liイオン二次電池4の充電を開始する(ステップST5)。なお、充電制御回路130からは、前述したように反転充電制御信号P13´も出力されるが、ここでの記述は省略する。
【0157】
充電が開始されると、充電制御部110は、次のサンプリング周期でステップST1からの動作を繰り返し、蓄電電圧VBT、または発電電圧VHDの検出(ステップST1)、及び、温度検出(ステップST3)を継続して行い、Liイオン二次電池4への充電が安全に実施されるように充電制御を継続する。
【0158】
また、充電制御部110は、ステップST6で充電が停止しても、次のサンプリングのタイミングで、再び電圧検出と温度検出を行うので、動作フローとしては、ステップST1からの動作が繰り返され、充電開始の条件が満たされたならば、ステップST5に進んで充電が開始される。
【0159】
また、図10の動作フローは、電圧検出(ST1)と温度検出(ST3)とを順次実施しているが、この2つの検出動作は同時に(平行して)実施してもよい。
【0160】
なお、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの検出の優先順位は、第1が蓄電電圧VBTの電圧低下の検出である。これは、Liイオン二次電池4が過放電状態になった場合、再充電が行われるとLiイオン二次電池4が破損する危険性があるためである。このため、充電制御の動作例1は、蓄電電圧VBTの電圧低下の検出を優先し、蓄電電圧VBTの電圧低下の検出を行うように構成することが好ましい。
【0161】
このように、充電制御の動作例1は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方の電圧検出を行うので、電圧検出回路140が1つでよく、制御も簡素化できるメリットがあるが、Liイオン二次電池4の過放電回避と、発電電圧VHDの低下による温度検出部30の誤動作回避とのどちらか一方を選択することになる。
【0162】
[実施形態の充電制御の動作例2の説明:図11]
次に、実施形態の充電制御部110の動作例2の概略を図11の動作フローを用いて説明する。
ここで充電制御部の動作例2は、充電制御部110が太陽電池5で駆動され、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧検出、及び温度検出をして充電制御を行う動作である。
【0163】
なお、充電制御部110は図2のブロック図を参照し、充電制御IC120の内部の回路構成と動作は図3〜図9を参照する。また、動作例2においては、図2のブロック図で示す電圧検出回路140は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとのそれぞれの電圧を検出する2つの電圧検出回路140によって構成する。
【0164】
図11において、充電制御部110の蓄電電圧VBTを検出する電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTの電圧値を所定値と比較して、その結果を電圧検出信号P15として出力する(ステップST11)。ここで、蓄電電圧VBTが所定値以上である場合は、電圧検出信号P15を論理“1”として出力し、所定値未満である(すなわち、電圧が低下している)場合は、電圧検出信号P15を論理“0”として出力する。
【0165】
次に充電制御部110は、蓄電電圧VBTの電圧値が所定値以上であるかどうかを判定し、所定値以上であれば次のステップST13へ進み、所定値未満であれば、ステップST18に進む(ステップST12)。
【0166】
ここで、充電制御部110が蓄電電圧VBTを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、Liイオン二次電池4が過放電状態であり、この状態で再充電が行われると、Liイオン二次電池4の劣化、あるいは破損が起きるため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4の劣化や破損を防止する(ステップST18)。
【0167】
また、ステップST12で充電制御部110が、蓄電電圧VBTを所定値以上である(電圧検出信号P15:論理“1”)と判定した場合は、発電電圧VHDを検出する電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、太陽電池5の発電電圧VHDの電圧値を所定値と比較して、その結果を電圧検出信号P15として出力する(ステップST13)。ここで、発電電圧VHDが所定値以上である場合は、電圧検出信号P15を論理“1”として出力し、所定値未満である(すなわち、電圧が低下している)場合は、電圧検出信号P15を論理“0”として出力する。
【0168】
次に充電制御部110は、発電電圧VHDの電圧値が所定値以上であるかどうかを判定し、所定値以上であれば次のステップST15へ進み、所定値未満であれば、ステップST18に進む(ステップST14)。
【0169】
ここで、充電制御部110が、発電電圧VHDを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、発電電圧VHDで動作する温度検出部30の2つの発振回路OSC1とOSC2とは、発電電圧VHDが著しく低下すると、発振周波数に電圧依存性が生じて温度検出に誤差が発生するので、正確な充電許可温度範囲内での充電制御が実施できなくなる。このため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST18)。
【0170】
また、充電制御部110が、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧値が所定値以上であると判定した場合は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの電圧値が正常であ
り、Liイオン二次電池4への充電が可能な状態であるので、温度検出部30によって周囲温度の検出が行われる(ステップST15)。ここで、温度検出部30は、2つの発振回路OSC1とOSC2との周波数差Δf(図4参照)から周囲温度を検出する。
【0171】
次に温度検出部30の判断部60は、検出した周囲温度が充電許可温度範囲内であるかどうかを比較して温度検出信号P12を出力し、充電制御部110は温度検出信号P12を判定して、充電許可温度範囲内(温度検出信号P12:論理“1”)であるならば、次のステップST17に進み、充電許可温度範囲外(温度検出信号P12:論理“0”)であるならば、ステップST18に進む(ステップST16)。
【0172】
ここで、周囲温度が充電許可温度範囲外と判定された場合は、その周囲温度で充電を行うと、Liイオン二次電池4が異常な発熱、発火、最悪の場合は破裂などの状態を引き起こす可能性があるために、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST18)。
【0173】
また、充電制御部110がステップST16において、充電許可温度範囲内であると判定した場合は、充電制御回路130が論理“1”の充電制御信号P13を出力し、昇圧回路150を動作させてLiイオン二次電池4の充電を開始する(ステップST17)。充電が開始されると、充電制御部110は、次のサンプリング周期でステップST11からの動作を繰り返し、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの検出(ステップST11とST13)、及び、温度検出(ステップST15)を継続して行い、Liイオン二次電池4への充電が安全に実施されるように充電制御を継続する。
【0174】
また、充電制御部110は、ステップST18で充電が停止しても、次のサンプリングのタイミングで、再び電圧検出と温度検出とを行うので、動作フローとしては、ステップST11からの動作が繰り返され、充電開始の条件が満たされたならば、ステップST17に進んで充電が開始される。
【0175】
なお、図11の動作フローは、蓄電電圧VBT検出(ST11)、発電電圧VHD検出(ST13)、温度検出(ST15)を順次実施しているが、この3つの検出動作は同時に(平行して)実施してもよい。
【0176】
このように、充電制御の動作例2は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧検出を行うので、電圧検出回路140を2つ配置し、充電制御も動作例1より多少複雑になるが、Liイオン二次電池4の過放電回避と、発電電圧VHDの低下による温度検出部30の誤動作回避との両方を実施するので、想定されるリスクに対応して、Liイオン二次電池の充電を更に安全に実施することができる。
【0177】
以上のように本発明の実施形態を2つの動作例を示して説明したが、いずれの動作例においても、システム制御部2と充電制御部110とが分離しており、システム制御部2の時計IC10は、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTによって動作し、充電制御部110の充電制御IC120は、太陽電池5からの発電電圧VHDによって動作している。このため、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTが低下して、時計IC10が動作停止しても、太陽電池5に光がわずかでも照射して発電電圧VHDが発生するならば、充電制御IC120は動作を継続して温度検出しながら充電制御を行うことができる。
【0178】
以上のように本発明は、時計の動作を制御するシステム制御部(時計IC)と二次電池の充電を制御する充電制御部(充電制御IC)とは、互いに関わりなく動作し、Liイオン二次電池への充電制御を実施できる。これにより、Liイオン二次電池の充電を中断す
ることなく常に充電許可温度範囲内で安全に継続することができるので、電池切れが極めて少なく永続的に動作可能な信頼性に優れた電子時計を提供できる。
【0179】
また、充電制御部は2つの発振回路の発振周波数差から温度情報を得る温度検出部を備えており、回路特性によるばらつきや電源電圧の変動の影響を受けにくい高精度な温度検出を実現できるので、充電許可温度範囲に制限があるLiイオン二次電池の充電を安全に実施することができる。
【0180】
また、充電制御部はLiイオン二次電池の蓄電電圧からLiイオン二次電池の過放電を検出して充電動作を停止できるので、過放電状態となったLiイオン二次電池に充電することの危険性を排除することができる。また、充電制御部は太陽電池の発電電圧を検出して、太陽電池の発電量が低いときに充電動作を停止できるので、充電制御部の温度検出部が、発電電圧の電圧低下によって温度検出誤差が大きくなり、充電制御が誤動作する危険性を排除することができる。
【0181】
また、本発明によって、高容量で且つ内部抵抗の小さいLiイオン二次電池を電子時計の電源として用いることができるので、充電後、時計を長時間使用できると共に、比較的大きな電流が必要となる電波修正時計における時刻情報の受信動作を安定して実施することができる。
【0182】
なお、本発明の実施形態は、システム制御部と充電制御部とを2つのICチップに分離することで、それぞれの回路を駆動する電源を分離する構成を例示したが、この構成に限定されず、図示しないがシステム制御部と充電制御部とをワンチップで構成し、チップ内部でシステム制御部と充電制御部との電源を電気的に分離する構成でも良い。
【0183】
また、すでに説明したように、発電手段は太陽電池に限定されず、知られている発電機構を有することができる。
さらにまた、実施形態に記述したブロック図、回路図、フローチャート等は限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の電子時計は、高容量のLiイオン二次電池を搭載したソーラー電子時計、及び時刻修正を自動的に行う電波修正機能を備えた電子時計などに、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0185】
1、100 電子時計
2 システム制御部
3、110 充電制御部
4 リチウムイオン二次電池(Liイオン二次電池)
5 太陽電池
10 時計IC
11 水晶発振回路
12 時計回路
13 動作停止回路
20、120 充電制御IC
30 温度検出部
60 判断部
70、130 充電制御回路
140 電圧検出回路
150 昇圧回路
S1 動作停止スイッチ
S2 充電制御スイッチ
D1 逆流防止ダイオード(ダイオード)
OSC1、OSC2 発振回路
VBT、VBT´ 蓄電電圧
VHD 発電電圧
VHD2 昇圧電圧
Icg 充電電流
CL1、CL2 クロックパルス
SYSCLK システムクロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電手段と蓄電手段とを備えた電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電手段と蓄電手段とを備え、電池切れを極力無くして永続的に動作できる電子時計が製品化されている。
ここで、発電手段としては太陽電池が一般的であり、蓄電手段としてはコイン型のリチウム二次電池が一般的に使用されている。リチウム二次電池とは、電極にリチウムを用いた電池であって、近年急速に普及が進む蓄電池である。古くから知られる直流電力の放電のみができるリチウム一次電池とは異なり、充電を行うことで電気を蓄える蓄電池である。
【0003】
一方、時刻情報を含む標準電波を受信し、時刻修正を自動的に行う電波修正機能を備えた電子時計も開発され、この電波修正機能を備えると共に、前述の発電手段と蓄電手段とを備えた、いわゆるソーラー電波修正時計が製品化されている。
【0004】
このようなソーラー電波修正時計は、標準電波を手動又は所定の時刻に自動的に受信するが、この受信動作には比較的大きな電力が必要であり、電源である蓄電手段としてのリチウム二次電池に大きな負荷となる。
このリチウム二次電池は、蓄電電圧が2.5Vのタイプや1.5Vのタイプなど複数の種類が製品化されており、性能は異なるがいずれの電池も内部インピーダンスが比較的高いために、標準電波の受信時に蓄電電圧が低下して時計システムが誤動作する危険性を含んでいる。このため、ソーラー電波修正時計の蓄電手段として、内部インピーダンスの低い二次電池が求められている。
【0005】
このような要求から、ソーラー電波修正時計の蓄電手段として、高容量で且つ、内部インピーダンスが低いリチウムイオン二次電池(以下、Liイオン二次電池と略す)の使用が考えられる。Liイオン二次電池は、電極にリチウムを用いている点はリチウム二次電池と同じであるが、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う蓄電池である。
【0006】
すなわち、ソーラー電波修正時計にLiイオン二次電池を用いるならば、標準電波の受信時の電池に対する負荷の問題を軽減でき、蓄電電圧の低下による時計システムの誤動作を防止することができる。また、Liイオン二次電池は高容量であるので、長期間、時計が光に当たらない環境に置かれて充電ができなかったとしても、十分に充電された状態であれば、時計が止まることを回避することが可能である。
【0007】
しかしながら、Liイオン二次電池は安全性の面から一般に充電許可温度範囲に制限(例えば、0℃〜+45℃)が与えられている。この充電許可温度範囲から外れた環境で充電を継続すると、電池の特性によって、異常な発熱、発火、最悪の場合は破裂などの状態を引き起こす可能性がある。
従って、電子時計の蓄電手段にLiイオン二次電池を使用する場合、電子時計の内部に温度検出手段を備え、周囲の温度測定を行って温度情報を取得し、その温度情報に基づいて充電制御することが必須となる。
【0008】
以上のような背景から、従来の電子時計に用いられている温度検出及び充電制御の技術を3つの特許文献を例示して検討する。
まず、一次温度特性を有する発振回路を温度検出手段として備え、その発振周波数の変
化を温度情報として二次温度特性を有する水晶発振回路の温度特性を補償する電子時計が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この電子時計によれば、温度検出手段からの温度情報により水晶発振回路の二次温度特性を補償して、温度変化に対して安定した歩度を得ることができるので、高精度な電子時計を提供できることが示されている。
【0010】
また、水晶発振回路の温度特性を補正する歩度調整手段と、歩度調整手段の調整量を決定するための温度測定手段と、蓄電手段とを有する電子時計が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
この電子時計は、温度測定手段からの温度情報に基づいて歩度調整を行うと共に、蓄電手段の電圧が所定の電圧値より低下したとき、温度測定手段を停止し、歩度調整手段の調整量を所定の調整量として歩度調整手段を継続動作させる。これにより、蓄電手段の電圧低下時に、温度測定手段の誤動作による歩度調整手段の誤補正を回避できることが示されている。
【0012】
また、蓄電手段と、充電手段と、蓄電手段からの電力を用いて動作する計時制御回路と、表示手段と、蓄電手段の電圧を検出する電圧検出回路とを有する電子時計が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0013】
この電子時計は、蓄電手段の電圧が所定の電圧以下になった場合、所定の時間経過後に、計時制御回路の発振回路、分周回路、機能回路等を停止して時計としての動作を停止し、蓄電手段の電圧が所定の電圧以上になった場合は、時計動作の停止を解除する。これにより、蓄電手段の過放電を防ぎ、蓄電手段の電圧が回復したときの再起動性を向上できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平1−66097号公報(5−9頁、図1)
【特許文献2】特許第3753839号公報(3頁、図1)
【特許文献3】特許第3702729号公報(11頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1の電子時計は、時計IC(Integrated Circuit:集積回路)に内蔵する一次温度特性を有する発振回路を温度検出手段として備えており、この温度検出手段をLiイオン二次電池の充電制御に適用することは技術的に可能であるが、仮に、Liイオン二次電池を用いることを前提として、温度情報を取得して充電制御を行うために、温度検出手段を含む充電制御回路を時計IC(この場合、ICがマイコンである場合も含む)に内蔵したとすると、Liイオン二次電池の蓄電電圧が低下した場合、時計ICは停止し、この時計ICに内蔵する温度検出手段を含む充電制御回路も停止するので、Liイオン二次電池の蓄電電圧低下時には、充電を継続することができないという課題がある。
【0016】
また、特許文献2の電子時計は、温度測定手段からの温度情報に基づいて歩度調整手段が歩度の調整量を決定しているが、蓄電手段の充電制御には温度情報を用いていない。このため、蓄電手段として、充電許可温度範囲に制限が与えられているLiイオン二次電池を用いる場合、充電許可温度範囲を外した状態で充電動作が行われる危険性があるので、Liイオン二次電池を用いることができない。
【0017】
また、特許文献3の電子時計は、蓄電手段の電圧低下によって、時計システムを停止して蓄電手段の過放電を防いでいるが、蓄電手段の充電制御に温度情報を用いていない。このため、蓄電手段として、充電許可温度範囲に制限が与えられているLiイオン二次電池を用いる場合、充電許可温度範囲を超えた状態で充電動作が行われる危険性があるので、Liイオン二次電池を用いることができない。
【0018】
[従来のソーラー時計システムの課題の説明:図12]
以上のような従来の発電手段と蓄電手段とを備えた電子時計の課題を整理して明確にするために、特許文献1〜3で知られている技術を発展的に組み合わせたソーラー時計システムを例として、蓄電手段にLiイオン二次電池を用いた場合の課題を図12を用いて詳細に検討する。
ここで、ソーラー時計システムとは、前述したように、発電手段として太陽電池を搭載し、蓄電手段としての二次電池に太陽電池からの起電力を充電して時計の電力を得る電子時計のシステムをいう。
【0019】
図12は、従来のソーラー時計システムのブロック図であり、蓄電手段としてLiイオン二次電池を用いている。図12において、符号200は従来のソーラー時計システムとしての電子時計である。電子時計200は、複数の電子部品によって成るシステム制御部210、蓄電手段としての二次電池230、発電手段としての太陽電池240(図中は「S.C.」と表記する)、時刻を表示する表示部250などによって構成される。システム制御部210は、水晶振動子211、時計IC220、動作停止スイッチS1、充電制御スイッチS2、逆流防止のためのダイオードD1(以下、ダイオードD1と略す)などによって構成される。
【0020】
時計IC220は、低消費電力で動作する時計用マイコンで成り、水晶振動子211によって基準クロックP1を発生する水晶発振回路221、基準クロックP1を入力して時刻を計時する時計回路222、二次電池230の蓄電電圧VBTをモニタして所定の電圧以下になった場合、停止信号P2を出力する動作停止制御回路223、基準クロックP1を入力し内蔵するCR発振器224との周波数差によって温度情報を得る温度検出回路225、温度検出回路225からの温度データP3を入力して充電制御を行い、充電制御信号P4を出力する充電制御回路226によって構成される。
【0021】
太陽電池240のプラス端子は、回路のGNDに接続され、太陽電池240のマイナス端子は、発電電圧VHDとして充電制御スイッチS2の一方の端子に接続され、充電制御スイッチS2の他方の端子はダイオードD1のカソードに接続され、ダイオードD1のアノードは、動作停止スイッチS1の一方の端子に接続され、動作停止スイッチS1の他方の端子は蓄電電圧VBT´として時計IC220に供給される。
【0022】
二次電池230はLiイオン二次電池で成り、プラス端子は回路のGNDに接続され、マイナス端子は、蓄電電圧VBTとしてダイオードD1のアノードと動作停止スイッチS1の一方の端子との接続点に接続される。また、蓄電電圧VBTは、時計IC220の動作停止制御回路223にも接続される。
ここで、回路のGNDを基準とするならば、発電電圧VHDと蓄電電圧VBTは、マイナス電位の電圧である。
【0023】
また、表示部250は、時計IC220の時計回路222からの時刻データP5を入力して時刻を表示する。ここで、電子時計200がデジタル時計であれば、表示部250は液晶パネルなどによってデジタルで時刻を表示し、電子時計200がアナログ時計であれば、表示部250はステップモータと文字盤、時針、分針等によって時刻を表示する。
【0024】
次に、従来の電子時計200の動作の概略を説明する。
図12において、太陽電池240に光が照射されると起電力が発生し、所定の電圧値の発電電圧VHDが発生する。時計IC220の充電制御回路226は、充電制御信号P4によって充電制御スイッチS2を通常状態でONするので、太陽電池240のプラス端子からGNDを経て二次電池230、ダイオードD1、充電制御スイッチS2、太陽電池240のマイナス端子へと電流経路が形成され、二次電池230に太陽電池240からの充電電流Icgが流れて、二次電池230は充電される。
【0025】
時計IC220の動作停止制御回路223は、通常状態で動作停止スイッチS1をONするので、時計IC220には、動作停止スイッチS1を介して二次電池230からの蓄電電圧VBT´が供給され、水晶発振回路221は発振し、時計回路222は計時動作を行って時刻データP5を出力し、表示部250は時刻を表示する。これにより、太陽電池240に光が照射され続けるならば、二次電池230は充電が継続されると共に、時計IC220は動作を継続するので、表示部250は時刻を継続して表示することができる。
【0026】
次に、太陽電池240に光が照射されなくなると、発電電圧VHDが低下するので二次電池230への充電は停止するが、二次電池230に蓄えられた電力によって蓄電電圧VBTが供給され、時計IC220は動作を継続する。ここで、二次電池230への充電が長期間行われないと、二次電池230に蓄えられた電力が減少し、蓄電電圧VBTが低下して時計IC220の最低動作電圧以下になると、時計IC220の動作が不安定になる。
この状態を回避するために、動作停止制御回路223は、蓄電電圧VBTをモニタして、時計IC220の動作が不安定になる前の所定の電圧値で停止信号P2を出力し、動作停止スイッチS1をOFFする。これにより、蓄電電圧VBT´が零ボルトになって時計IC220への電源供給が停止するので、電子時計200は、不安定な誤動作をすることなく、安定して動作を停止することができる。
【0027】
一方、温度検出回路225は、基準クロックP1の周波数と、内蔵するCR発振器224の周波数との差で温度情報を得て温度データP3を出力する。
充電制御回路226は、温度データP3を入力して周囲温度が二次電池の充電許可温度範囲内であるかを判定し、温度が許可温度範囲から外れた場合は、充電制御信号P4を出力して充電制御スイッチS2をOFFする。
充電制御スイッチS2がOFFになると、二次電池230へ流れる充電電流Icgの電流経路が遮断されるので、二次電池220への充電は、強制的に停止される。この動作によって、二次電池230がLiイオン二次電池である場合、充電許可温度範囲から外れた温度での充電を防止することができる。
【0028】
しかし、太陽電池240への光の照射が途絶えて、二次電池230への充電が長期間行われないと、前述したように蓄電電圧VBTが低下して、動作停止スイッチS1がOFFとなり時計IC220は動作を停止する。そして、時計IC220には温度検出回路225と充電制御回路226とが内蔵されているので、温度検出動作も充電制御動作も機能停止となり、充電制御スイッチS2もOFFする。
【0029】
この時計IC220の機能停止状態において、再び太陽電池240に光が照射されるならば、二次電池230への充電が可能となるが、温度検出回路225及び充電制御回路226は時計IC220の内部にあって機能停止しているので、充電制御スイッチS2はOFF状態を継続し、この結果、二次電池230への充電が行われず、電子時計200は停止状態から抜け出せない。
【0030】
また、動作停止制御回路223及び動作停止スイッチS1が存在せず、二次電池230の電圧低下によって、時計IC220が動作停止する機能が存在しなかったとしても、温度検出回路225のCR発振器224は、蓄電電圧VBTの電圧低下によって、発振周波数が大きく変動するので、正しい温度情報を取得することができなくなる。この結果、充電制御回路226は、温度に対して正常に動作できなくなり、充電許可温度範囲から外れても充電動作を継続したり、その反対に充電許可温度範囲内であっても充電を停止したりする誤動作の危険がある。
【0031】
このように、従来の時計ICに温度検出手段や充電制御手段を組み込んだ時計システムでは、蓄電電圧VBTの電圧低下によって時計ICが停止すると、充電制御も停止してしまうので、充電を再開できないという大きな課題がある。また、時計ICが停止しないシステムでも、充電制御が誤動作する危険がある。
【0032】
つまり、高容量で低い内部インピーダンスであるLiイオン二次電池を、ソーラー電波修正時計の蓄電手段として用いたくても、上記説明したような従来の時計システムでは、充電許可温度範囲に制限があるLiイオン二次電池を用いることができないという大きな問題があった。
【0033】
本発明は上記課題を解決し、Liイオン二次電池の蓄電電圧が低下して時計ICが動作を停止しても、温度検出と充電制御とを継続し、Liイオン二次電池の充電許可温度範囲で安全に充電制御を行うことができる電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記課題を解決するために、本発明の電子時計は下記記載の構成を採用する。
【0035】
本発明の電子時計は、発電手段と、充電許可温度範囲に制限がある蓄電手段と、時計の動作を制御するシステム制御部を備える電子時計において、システム制御部は、蓄電手段に蓄電されている電力が所定の値以下のときに動作を停止し、発電手段が生成した電力で動作し、温度を検出して充電許可温度範囲で蓄電手段を充電するように制御する充電制御部を備えたことを特徴とする。
【0036】
これにより、蓄電手段に蓄電されている電力が減少してシステム制御部が動作を停止しても、充電制御部は発電手段が発電する電力で動作するので、温度を検出して充電許可温度範囲内での蓄電手段への充電を継続して安全に行うことができる。
【0037】
また、充電制御部は、互いに温度特性が異なる2つの発振回路を有する温度検出部を備え、温度検出部は、双方の発振回路が生成するクロックパルス同士を比較することで温度検出を行うようにしてもよい。
【0038】
これにより、2つの発振回路の周波数差から温度情報を取得するので、ICの製造ばらつき等による影響や電源電圧の変動の影響を受けにくい高精度な温度検出を実現できる。
【0039】
また、充電制御部に備える2つの発振回路は、一方は常時動作し他方は間欠動作し、常時動作している発振回路は、間欠動作している発振回路より発振周波数が低く、温度検出部は、常時動作している発振回路のクロックパルスに基づいて生成した検出パルスによって間欠動作している発振回路のクロックパルスのパルス数を計数し、その結果に基づいて温度検出を行うようにしてもよい。
【0040】
これにより、常時動作している一方の発振回路の周波数が低く、他方の発振回路は常時動作している発振回路のクロックパルスに基づいて生成した検出パルスによって間欠動作
するので、充電制御部の消費電力を低く抑えることができ、発電手段からの僅かな起電力で充電制御部を動作させることができる。
【0041】
また、充電制御部に備える2つの発振回路は、互いに温度係数が逆であるようにしてもよい。
【0042】
これにより、2つの発振回路は互いに温度係数が逆であるので、温度変化に対する周波数差の変化を大きくでき、感度の良い温度検出が可能となる。
【0043】
また、充電制御部は、発電手段が生成した電力を昇圧する昇圧回路を備えるようにしてもよい。
【0044】
これにより、発電手段からの起電力の電圧値が低くても、昇圧して蓄電手段に充電することが可能となる。
【0045】
また、常時動作している発振回路のクロックパルスを充電制御部のシステムクロックパルスに用いるようにしてもよい。
【0046】
これにより、充電制御部のために新たにクロックを生成する必要がないので、充電制御部の回路規模を小さくできると共に、消費電力の増加を防ぐことができる。また、昇圧回路を備えたときは、その昇圧クロックにも用いることができる。
【0047】
また、充電制御部は、蓄電手段の蓄電電圧を検出する電圧検出回路を備え、電圧検出回路は、蓄電電圧が所定の電圧以下であるとき、蓄電手段への充電を停止するように制御するようにしてもよい。
【0048】
これにより、蓄電手段の過放電を検出して充電動作を停止できるので、過放電状態の蓄電手段に充電することの危険性を排除することができる。
【0049】
また、充電制御部は、発電手段の発電電圧を検出する電圧検出回路を備え、電圧検出回路は、発電電圧が所定の電圧以下であるとき、蓄電手段への充電を停止するように制御するようにしてもよい。
【0050】
これにより、発電手段の発電電圧の低下を検出して充電動作を停止できるので、温度検出部の温度検出誤差が低電圧によって大きくなった場合に、充電制御が誤動作する危険性を排除することができる。
【0051】
電圧検出回路は、常時動作している発振回路のクロックパルスに基づいてサンプリング動作するようにしてもよい。
【0052】
これにより、電圧検出回路のサンプリング動作のために新たにクロックを生成する必要がないので、充電制御部の回路規模を小さくできる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、充電手段の電圧低下によって時計の動作を制御するシステム制御部(例えば、時計IC)の動作が停止しても、Liイオン二次電池の充電を安全に継続することができ、時計の信頼性を高めることができる。
【0054】
本発明によって、発電手段と蓄電手段とを備えた電子時計に高容量で内部抵抗の小さいLiイオン二次電池を用いることができるようになった。これにより、電子時計を頻繁に
充電せずに長時間使用できると共に、比較的大きな電流が必要となるソーラー電波修正時計における時刻情報の受信動作を安定して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の電子時計の基本概念を説明するブロック図である。
【図2】本発明の電子時計の実施形態を説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の温度検出部に内蔵する発振回路の一例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態の温度検出部に内蔵する発振回路の温度特性を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態の温度検出部に内蔵する判断部の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態の温度検出部の発振回路OSC1に大きな温度依存性を持たせた場合の動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態の温度検出部の発振回路OSC2に大きな温度依存性を持たせた場合の動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施形態の電圧検出回路の一例を示す回路図と、その動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施形態の充電制御回路と昇圧回路の一例を示す回路図である。
【図10】本発明の実施形態の充電制御動作例1を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態の充電制御動作例2を説明するフローチャートである。
【図12】従来の電子時計の構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。始めに本発明の理解を助けるために、本発明の基本概念を図1を用いて説明する。
本発明の基本概念の特徴は、時計の動作を制御するシステム制御部と、Liイオン二次電池の充電を制御する充電制御部とを分離して、システム制御部はLiイオン二次電池で駆動し、充電制御部は太陽電池で駆動する。このような構成によって、Liイオン二次電池の電圧低下でシステム制御部が停止しても、充電制御部はLiイオン二次電池の充電を継続する構成である。
【0057】
このような、時計の動作を司るシステム制御部と、充電を制御する充電制御部とを分離する形態は、例えば、システム制御部を時計IC、充電制御部を充電制御ICとして独立したICチップ構成とすれば、Liイオン二次電池や太陽電池といった異なる電源手段で動作させることも容易になる。以後の説明にあっては、このようにICチップを分ける例を用いるものとする。
【0058】
[本発明の基本概念の構成説明:図1]
図1は本発明の基本概念を示すブロック図である。
図1において、符号1は本発明の基本概念の構成を有する電子時計である。電子時計1は前述したソーラー時計システムであり、時計の動作を制御するシステム制御部2と、蓄電手段の充電制御を行う充電制御部3と、蓄電手段としてのLiイオン二次電池4と、発電手段としての太陽電池5(図中は「S.C.」と表記する)などによって構成される。
【0059】
なお、図1に示す本発明の基本概念の構成の一部は、すでに説明した従来の電子時計200(図12参照)と共通の要素がある。そのような要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。
また、電子時計1は、もちろん時刻を表示する表示部も有しているが、本発明に直接係わらないのでその図示は省略する。
【0060】
システム制御部2は、時計IC10と外付けの動作停止スイッチS1、ダイオードD1によって構成される。なお、動作停止スイッチS1とダイオードD1は、時計IC10に内蔵しても良く、その場合は、動作停止スイッチS1は、電界効果トランジスタなどを使った半導体スイッチとすることができる。
【0061】
時計IC10は、低消費電力で動作する時計用マイコンで成り、基準クロックP10を発生する水晶発振回路11、基準クロックP10を入力して時刻を計時する時計回路12、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTをモニタして所定の電圧以下になった場合、停止信号P11を出力する動作停止制御回路13によって構成される。
この停止信号P11は、動作停止スイッチS1のコントロール端子に接続して動作停止スイッチS1のON(例えば、道通)とOFF(例えば、開放)とを制御する。なお、水晶発振回路11には、水晶振動子が接続されるが図示を省略している。
【0062】
充電制御部3は、充電制御IC20と充電制御スイッチS2によって構成される。なお、充電制御スイッチS2は、先に説明したシステム制御部2の場合と同様に、充電制御IC20に内蔵しても良く、その場合は、充電制御スイッチS2を電界効果トランジスタなどを使った半導体スイッチとすることができる。
【0063】
充電制御IC20は、温度を検出して温度検出信号P12を出力する温度検出部30と、温度検出信号P12に基づいてLiイオン二次電池4の充電を制御する充電制御信号P13を出力する充電制御回路70とによって構成される。
この充電制御信号P13は、充電制御スイッチS2のコントロール端子に接続して充電制御スイッチS2のONとOFFとを制御する。
【0064】
温度検出部30は、互いに温度係数が異なる2つの発振回路OSC1とOSC2、および、発振回路OSC1、OSC2からのクロックパルスCL1とCL2とを入力し、クロックパルスCL1とCL2とを比較して、その周波数差から温度情報に換算して温度検出信号P12を出力する判断部60によって構成される。
【0065】
また、太陽電池5のプラス端子は、電子時計1のGNDに接続され、太陽電池5のマイナス端子は、発電電圧VHDとして充電制御部3の充電制御スイッチS2の一方の端子に接続され、充電制御スイッチS2の他方の端子は、システム制御部2のダイオードD1のカソードに接続される。
【0066】
一方、Liイオン二次電池4のプラス端子は電子時計1のGNDに接続され、マイナス端子は、蓄電電圧VBTとしてダイオードD1のアノードと動作停止スイッチS1の一方の端子の接続点に接続される。また、蓄電電圧VBTは、時計IC10の動作停止制御回路13にも接続される。また、動作停止スイッチS1の他方の端子は蓄電電圧VBT´として時計IC10に供給される。また、GNDは時計IC10と充電制御IC20に接続する。ここで、電子時計1のGNDを基準電位とするならば、発電電圧VHDと蓄電電圧VBTは、マイナス電位の電圧である。
【0067】
なお、図1に示すように、蓄電電圧VBTはLiイオン二次電池4の蓄電電圧そのものであり、蓄電電圧VBT´はその電圧から動作停止スイッチS1の開閉に関る電圧低下分を差し引いた電圧となる。動作停止スイッチS1を接点抵抗の小さいスイッチで構成すれば、動作停止スイッチS1がONしているときは、蓄電電圧VBTと蓄電電圧VBT´との差は、ほとんどない。
【0068】
[本発明の基本概念の動作説明:図1]
次に本発明の基本概念の動作の概略を図1を用いて説明する。
図1において、太陽電池5に光が照射されると起電力が発生し、所定の電圧値の発電電圧VHDが発生する。充電制御部3は、周囲温度が充電許可温度範囲であれば、充電制御信号P13によって充電制御スイッチS2をONするので、太陽電池5のプラス端子からGNDを経てLiイオン二次電池4、ダイオードD1、充電制御スイッチS2、太陽電池5のマイナス端子へと電流経路が形成され、Liイオン二次電池4に太陽電池5からの充電電流Icgが流れて、Liイオン二次電池4は充電される。
【0069】
一方、時計IC10の動作停止制御回路13は、Liイオン二次電池4がある程度充電されて蓄電電圧VBTが所定電圧以上になると動作停止スイッチS1をONするので、時計IC10には、動作停止スイッチS1を介してLiイオン二次電池4からの蓄電電圧VBT´が供給される。これにより、時計IC10の水晶発振回路11は発振して32,768Hzの基準クロックP10を出力する。時計回路12は、基準クロックP10を入力して時刻を計時し、図示しない表示部を駆動して時刻を表示する。そして、太陽電池5に光が照射され続けるならば、Liイオン二次電池4は充電が継続されると共に、時計IC10は動作を継続して時刻を表示することができる。
【0070】
次に、太陽電池5に光が照射されなくなると、太陽電池5の起電力である発電電圧VHDが低下してLiイオン二次電池4への充電は停止するが、Liイオン二次電池4に蓄えられた電力によって蓄電電圧VBTが供給され、時計IC10は動作を継続する。この状態で、Liイオン二次電池4への充電が長期間行われないと、Liイオン二次電池4に蓄えられた電力が減少し、蓄電電圧VBTは低下して、時計IC10の動作が不安定になる。
【0071】
動作停止制御回路13は蓄電電圧VBTをモニタして、時計IC10の動作が不安定になる前の所定の電圧値で停止信号P11を出力し、動作停止スイッチS1をOFFする。これによって、時計IC10への電源供給が停止するので、電子時計1は、不安定な誤動作をすることなく、安定して動作を停止することができる。
【0072】
一方、太陽電池5に光がわずかでも照射されて発電電圧VHDが充電制御IC20に供給されていれば、充電制御IC20の温度検出部30は、内蔵する2つの発振回路OSC1とOSC2とのそれぞれのクロックパルスCL1とCL2との周波数差から温度情報を算出する。温度検出部30の判断部60は、取得した温度情報がLiイオン二次電池4の充電許可温度範囲内であるかを判定して温度検出信号P12を出力する。
【0073】
充電制御IC20の充電制御回路70は、温度検出信号P12を入力して温度が充電許可温度範囲から外れた場合は、充電制御信号P13を出力して充電制御スイッチS2をOFFする。充電制御スイッチS2がOFFになると、Liイオン二次電池4へ流れる充電電流Icgの電流経路が遮断されるので、Liイオン二次電池4への充電は、強制的に停止される。この動作によって、充電許可温度範囲から外れた温度での充電を防止することができる。
【0074】
このように本発明の基本概念の構成は、システム制御部2と充電制御部3とが分離しており、システム制御部2の時計IC10は、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTによって動作し、充電制御部3の充電制御IC20は、太陽電池5からの発電電圧VHDによって動作している。
このため、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTが低下して、時計IC10が動作停止しても、太陽電池5に光がわずかでも照射して発電電圧VHDが発生するならば、充電制御IC20は動作を継続して温度検出しながら充電制御を行うことができる。
【0075】
すなわち、本発明を用いれば、充電許可温度範囲から外れた環境で充電を継続すると、異常な発熱、発火、破裂などの状態を引き起こす可能性があるLiイオン二次電池を、安全に用いることができるのである。
【実施例1】
【0076】
[実施形態の電子時計の構成説明:図2]
次に、実施形態の構成を図2を用いて説明する。
本実施形態の特徴は、前述した基本概念の構成(図1参照)を含むと共に、更に実際的に必要となる制御を加えた構成であり、充電制御部に蓄電電圧VBTと発電電圧VHDのそれぞれの電圧値を検出する電圧検出回路と、発電電圧VHDを昇圧する昇圧回路とを含んでいる。
なお、実施形態の構成の大部分は、基本概念(図1)と共通しているので、同一要素には同一番号を付して重複する説明は省略し、充電制御部の構成を中心にして説明する。
【0077】
図2において、符号100は実施形態の電子時計である。電子時計100は、基本概念の電子時計1と同様にソーラー時計システムであり、時計の制御を行うシステム制御部2と、蓄電手段の充電制御を行う充電制御部110と、蓄電手段としてのLiイオン二次電池4と、発電手段としての太陽電池5などによって構成される。なお、本実施形態においても、時刻を表示する表示部は、発明に直接係わらないので図示を省略している。
【0078】
電子時計100のシステム制御部2の構成とLiイオン二次電池4の接続は、基本概念の構成(図1参照)と同様であるので説明は省略する。また基本概念の構成と同様に、システム制御部2と充電制御部110とは、2つに分離しており、システム制御部2はLiイオン二次電池4からの蓄電電圧VBTによって動作し、充電制御部110は太陽電池5が生成した電力である発電電圧VHDによって動作する。
【0079】
また、太陽電池5のプラス端子は、基本概念の構成と同様に電子時計100のGNDに接続され、太陽電池5のマイナス端子は、発電電圧VHDとして後述する昇圧回路150と電圧検出回路140とに入力される。また、システム制御部2に含まれる動作停止スイッチS1とダイオードD1との接続は、基本概念の構成と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
電子時計100の充電制御部110は、充電制御IC120によって構成される。充電制御IC120の内部構成は、基本概念の充電制御IC20の構成に対して、電圧検出回路140と昇圧回路150とが加えられている。
温度検出部30は基本概念の構成と同一であり、充電制御回路130は、基本概念の充電制御回路70に、後述する電圧検出信号P15の入力が加わった構成である。
【0081】
また、図2に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1を、充電制御IC120の全体を動作させるシステムクロックSYSCLKとして用いる場合を示している。後述するが、電圧検出回路140のサンプリング動作用、昇圧回路150の昇圧動作用のクロックパルスにも用いている。
もちろん、別の発振回路を設けてシステムクロックを生成してもよいが、発振回路OSC1のクロックパルスCL1を用いればその必要がなく、回路規模を小さくできると共に低消費電力にできる。
【0082】
充電制御IC120の電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKを入力して動作し、Liイオン二次電池4からの蓄電電圧VBTと太陽電池5からの発電電圧VHDとを入力して電圧検出信号P15を出力する。なお、電圧検出回路140は、電子時計100の仕様によって、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方の電圧を検出
するように構成しても良い。なお、電圧検出回路140の詳細は後述する。
【0083】
充電制御回路130は、温度検出信号P12と共に、電圧検出信号P15を入力し、温度情報と共に、Liイオン二次電池4及び太陽電池5の電圧情報に基づいた充電制御信号P13を出力する。なお、充電制御回路130の詳細は後述する。
【0084】
昇圧回路150は、基本概念の構成の充電制御スイッチS2(図1参照)に置き換えられて配置され、システムクロックSYSCLKを昇圧クロックパルスとして入力し、太陽電池5が生成する電力である発電電圧VHDを2倍昇圧して昇圧電圧VHD2として出力する。また、昇圧回路150は充電制御信号P13によって、昇圧の動作と停止が制御される。なお、昇圧回路150の詳細は後述する。
【0085】
昇圧回路150から出力される昇圧電圧VHD2は、ダイオードD1のカソードに接続され、これによって、太陽電池5のプラス端子、GNDを経てLiイオン二次電池4、ダイオードD1、昇圧回路150、太陽電池5のマイナス端子へと電流経路が形成されて、充電電流IcgがLiイオン二次電池4に流れて充電が行われる。
【0086】
この昇圧回路150を配置することで、太陽電池5の起電力である発電電圧VHDの電圧値が低くても、昇圧回路150によって昇圧してLiイオン二次電池4に充電することが可能となる。特に、太陽電池5を設置するスペースが少なく、太陽電池5のセル数を減らさなければならない場合などで、この昇圧回路150は有効である。なお、本実施形態においては、昇圧回路150は発電電圧VHDを2倍に昇圧しているが、昇圧の段数は任意であり、Liイオン二次電池4と太陽電池5の仕様に合わせて決定される。
【0087】
また、太陽電池5のセル数をLiイオン二次電池4の蓄電電圧VBTに合わせて配置できるならば、昇圧回路150は無くてもよく、その場合は基本概念の構成のように発電電圧VHDを遮断する充電制御スイッチS2を配置すればよい。
【0088】
また、発電手段としては太陽電池を例にして説明しているが、もちろん、これに限定するものではなく、自然エネルギを電気エネルギに変換するものであればなんでもよい。
例えば、電子時計本体を動かすことでその運動エネルギを回転錘の運動にし、これにより発電する電磁誘導型発電手段などを用いることができる。また、電子時計に加わる熱によりその熱エネルギをペルチェ素子などを用いて電気信号にし、これにより発電する熱発電手段を用いることもできる。
【0089】
一般に、電磁誘導型発電手段も熱発電手段も発電電圧が低い。構成によっては、発電電圧が1.0Vを下回る場合がある。しかし、このような発電手段を採用しても、昇圧回路150を用いることにより、その低い発電電圧VHDを昇圧できるから、Liイオン二次電池4を十分に充電することができる。
【0090】
次に、本実施形態の充電制御部110の各要素の詳細と動作を図3〜図9を用いて説明する。
【0091】
[温度検出部の発振回路の基本構成と温度特性の説明:図3、図4]
温度検出部30は、前述したように2つの発振回路OSC1とOSC2とを有しており、クロックパルス同士を比較して、その発振周波数の差から温度情報を換算している。
この2つの発振回路OSC1、OSC2の基本構成は同じなので、ここでは、発振回路OSC1の基本構成の一例を図3の回路図を用いて説明する。
【0092】
図3において、発振回路OSC1は、よく知られているCR発振回路によって構成され
ており、6つのインバータ回路IN1〜IN6と、バッファ回路BF1及び抵抗R1とコンデンサC1とによって構成される。
【0093】
6つのインバータ回路IN1〜IN6は、図示するように、それぞれが直列に接続されており、インバータ回路IN6の出力端子がコンデンサC1を介してインバータ回路IN1の入力端子にフィードバックしている。また、インバータ回路IN3の出力端子とインバータ回路IN4の入力端子の接続点と、インバータ回路IN1の入力端子が、図示するように抵抗R1を介して接続されている。
【0094】
そして、最終段のインバータ回路IN6の出力端子は、バッファ回路BF1に接続され、このバッファ回路BF1によって波形成形されて、クロックパルスCL1及びシステムクロックSYSCLKとして出力される。なお、発振回路OSC1、OSC2は、太陽電池5(図2参照)からの発電電圧VHDによって駆動される。
【0095】
2つの発振回路OSC1及びOSC2の基本構成は等しいが、それぞれの発振周波数の温度係数が異なるように設計される。例えば、発振回路OSC1の抵抗R1の材質を変えることで抵抗そのものの温度係数を変えることができることを利用して、発振周波数の温度係数を変えることができる。
【0096】
すなわち、発振回路OSC1の抵抗R1の材質を半導体基板上に形成したポリシリコン(以下、Poly−Siと称する)とする。つまり、抵抗R1をPoly−Si抵抗で構成する。
Poly−Si抵抗は、知られているように負の温度特性を有している。そうすると、発振回路OSC1の発振周波数は、正の温度係数を得ることができる。これは、抵抗R1の抵抗値が低くなると発振周波数が高くなるからである。
【0097】
また、発振回路OSC2の抵抗R1´(ここでは便宜上、このように称する)の材質を半導体基板内に形成した拡散抵抗とする。つまり、抵抗R1´を拡散抵抗で構成するのである。
拡散抵抗は、知られているように正の温度特性を有している。そうすると、発振回路OSC2の発振周波数は、負の温度係数を得ることができる。これは、抵抗R1´の抵抗値が高くなると発振周波数が低くなるからである。
【0098】
図4は、2つの発振回路OSC1とOSC2との温度特性の一例を模式的に示すグラフである。
図4(a)は、前述したように、発振回路OSC1の抵抗R1をPoly−Si抵抗によって構成して、発振回路OSC1に正の温度係数を持たせ、一方、発振回路OSC2の抵抗R1´を拡散抵抗によって構成して、発振回路OSC2に負の温度係数を持たせた例である。
この場合、2つの発振回路OSC1とOSC2との発振周波数は、互いに温度係数が逆になるので、周囲温度Tの変化に対して周波数差Δfは、比較的大きく変化することができる。
【0099】
この周囲温度Tの変化に対する周波数差Δfは、後述する理由により大きい方が検出感度が良くなる傾向にあるが、2つの発振回路OSC1とOSC2との温度係数が同じ(例えば、正)であっても構わない。その一例が、図4(b)に示す例である。
【0100】
図4(b)は、2つの発振回路OSC1とOSC2との温度係数を共に正とし、周囲温度Tに対する発振周波数の変化の傾きが異なる場合を示している。
この場合は、互いの発振周波数の変化の傾き方向が同じ(すなわち、温度係数が同じ極
性)であるので、周囲温度Tの変化に対して周波数差Δfは、図4(a)に示す例に比べて比較的小さく変化する。
【0101】
ここで、温度検出部30は、図4で示す周波数差Δfから温度情報を換算するので、周波数差Δfは周囲温度Tに対して大きく変化した方が温度変化を感度良く検出できる。図4(a)で示すように、2つの発振回路OSC1とOSC2との発振周波数の温度係数が互いに逆である方が好ましいのである。しかし、感度が良すぎると温度検出の安定性が低下する場合もあるので、温度検出の安定性を優先する場合には、図4(b)で示すように、2つの発振回路OSC1とOSC2の発振周波数の温度係数を同じ極性に設定すると良い。
【0102】
[温度検出部の判断部の構成説明:図5]
次に、温度検出部30の判断部60の構成を図5を用いて説明する。
図5において温度検出部30は、前述したように、2つの発振回路OSC1、OSC2と判断部60とによって構成される。発振回路OSC1は常時動作しており、発振回路OSC2は間欠動作している。また、発振回路OSC1の発振周波数は、発振回路OSC2の発振周波数より低く設定される(図4参照)。
これにより、発振回路OSC1が常時動作していても、発振周波数が低いので充電制御IC120の消費電力を低く抑えることができ、太陽電池5からの僅かな起電力で充電制御IC120を動作させることができる。
【0103】
判断部60は、ウインドウ生成回路61、温度センスカウンタ62、比較回路63、及び比較回路63に入力される複数テーブルの温度データT1からTnによって構成される。これらの温度データは、図示しない不揮発性記憶装置に格納されている。
判断部60のウインドウ生成回路61は、発振回路OSC1からクロックパルスCL1を基準クロックとして入力し、このクロックパルスCL1に基づいて生成した検出パルスP20を出力する。
【0104】
検出パルスP20は、温度センスカウンタ62と発振回路OSC2とに供給される。発振回路OSC2は、検出パルスP20によって発振のONとOFFとが制御され、検出パルスP20が論理“1”の時にのみ、発振が開始されて継続し、検出パルスP20が論理“0”の時には発振が停止する。すなわち、発振回路OSC2は検出パルスP20によって間欠動作を行う。
従って発振回路OSC2は、図3で示した発振回路OSC1の回路構成に対して、検出パルスP20によって間欠動作する回路が追加されているが、このような動作をする発振回路は良く知られるものであるから、その説明は省略する。
【0105】
温度センスカウンタ62は、発振回路OSC2からのクロックパルスCL2と、検出パルスP20とを入力し、検出パルスP20が論理“1”の時に、クロックパルスCL2のパルス数を計数してカウントデータNtを出力する。ここで、検出パルスP20は、前述したように、クロックパルスCL1によって生成されるので、検出パルスP20が論理“1”となる期間は、発振回路OSC1の温度特性に沿った長さとなる。
【0106】
また、温度センスカウンタ62がカウントするクロックパルスCL2は、発振回路OSC2の温度特性によって周波数が変化するので、結果として、カウントデータNtの値は、2つの発振回路OSC1、OSC2の周波数差Δfを現すことになり、カウントデータNtは、周囲温度Tに換算することができる。
【0107】
比較回路63は、カウントデータNtを入力し、このカウントデータNtの数値と複数のテーブルの温度データT1〜Tnの数値を比較して、比較結果に応じて温度検出信号P
12を出力する。
例えば、Liイオン二次電池4の充電許可温度範囲が、例えば、0℃〜+45℃である場合、温度データT1を温度範囲の下限値の0℃に相当するテーブルの値とし、温度データT2を温度範囲の上限値の+45℃に相当するテーブルの値とする。
【0108】
そして、比較回路63は、カウントデータNtの値が温度データT1未満であるとき、温度検出信号P12を論理“0”として、カウントデータNtの値が温度データT1以上で、且つ、温度データT2未満であるとき、温度検出信号P12を論理“1”とし、カウントデータNtの値が温度データT2以上であるとき、温度検出信号P12を論理“0”とする。
この動作によって比較回路63は、カウントデータNtから得た周囲温度Tが、0℃〜+45℃の充電許可温度範囲内であるときに、温度検出信号P12を論理“1”とし、充電許可温度範囲外であるならば、温度検出信号P12を論理“0”とすることができる。
【0109】
なお、温度データT1〜Tnは、使用するLiイオン二次電池が一種類であれば、その電池の充電許可温度範囲の下限と上限との温度データのみを設定すればよいので、2つの温度データT1、T2だけで構成される。しかし、使用するLiイオン二次電池の種類が複数想定され、それぞれの電池の充電許可温度範囲が異なる場合は、使用が想定される複数のLiイオン二次電池の充電許可温度範囲の下限と上限の温度データをそれぞれ用意し、使用するLiイオン二次電池に応じて温度データを切り替えて使用するとよい。
【0110】
温度データの切り替えは、時計が製造されたあとボタン操作や非接触通信などによって行っても、製造途中で回路を切り替えるようパターニングするなどして行ってもよく、それらの手法はすでに知られているものを用いることができるから、ここでの説明は省略する。
なお、温度検出部30の判断部60も、太陽電池5からの発電電圧VHDによって駆動される。
【0111】
[温度検出部の動作説明:図5、図6、図7]
次に、温度検出部30の温度検出動作の詳細を図5及び図6と図7とを用いて説明する。
ここで、動作説明を分かりやすくするために、図6は発振回路OSC1の温度依存性が大きく、発振回路OSC2の温度依存性が小さい場合の温度検出部30の動作例を示し、図7は発振回路OSC2の温度依存性が大きく、発振回路OSC1の温度依存性が小さい場合の温度検出部30の動作例を示す。
【0112】
図6において、図6(a)は周囲温度T(図4参照)が低温のときの温度検出部30の動作の一例を示し、図6(b)は周囲温度Tが常温のときの温度検出部30の動作の一例を示し、図6(c)は周囲温度Tが高温のときの温度検出部30の動作の一例を示す。ここで、発振回路OSC1は温度依存性が大きいので、周囲温度Tが低温のときのクロックパルスCL1aの周波数は低くなり、周囲温度Tが常温のときのクロックパルスCL1bの周波数は中位となり、周囲温度Tが高いときのクロックパルスCL1aの周波数は高くなる。また、発振回路OSC2の温度依存性は小さいので、クロックパルスCL2の発振周波数は、ほとんど変化しないものとする。
【0113】
図6(a)に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1aの発振周波数が低いので、このクロックパルスCL1aに基づいて生成される検出パルスP20aの長さTw1(論理“1”の期間)は長くなる。ここで温度センスカウンタ62は、前述したように、この検出パルスP20aが論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルス
CL2のパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは多くなって、一例として値16が出力される。
【0114】
また、図6(b)に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1bの発振周波数が中位なので、このクロックパルスCL1bに基づいて生成される検出パルスP20bの長さTw2(論理“1”の期間)は中位となる。温度センスカウンタ62は、この検出パルスP20bが論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2のパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは中位となって、一例として値12が出力される。
【0115】
また、図6(c)に示す例では、発振回路OSC1のクロックパルスCL1cの発振周波数が高いので、このクロックパルスCL1cに基づいて生成される検出パルスP20cの長さTw3(論理“1”の期間)は短くなる。温度センスカウンタ62は、この検出パルスP20cが論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2のパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは少なくなって、一例として値8が出力される。
【0116】
このように、発振回路OSC1の温度依存性が大きく、発振回路OSC2の温度依存性が小さい場合においては、検出パルスP20の長さTwが周囲温度Tに応じて変化することによって、温度センスカウンタ62が出力するカウントデータNtが、周囲温度Tに応じて変化するので、このカウントデータNtの値を周囲温度Tに換算することができる。
そして、判断部60の比較回路63は、このカウントデータNtの値と、温度データT1〜Tnとを比較して、温度検出信号P12を出力し、前述した充電制御回路70を制御するのである。
【0117】
次に、図7を用いて発振回路OSC2に大きな温度依存性を持たせた場合の温度検出部30の動作を説明する。
図7において、発振回路OSC1の温度依存性が小さい場合を前提とするので、クロックパルスCL1の周波数は、ほとんど変化しない。そして、検出パルスP20は、クロックパルスCL1に基づいて生成されるので、検出パルスP20の長さTw(論理“1”の期間)は、周囲温度Tに対してほぼ一定である。
【0118】
ここで、発振回路OSC2のクロックパルスCL2aは、周囲温度T(図4参照)が低温のときの状態を示しており、その発振周波数は低温によって高くなり、温度センスカウンタ62は、前述したように、検出パルスP20が論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2aのパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは多くなって、一例として値16が出力される。
【0119】
また、発振回路OSC2のクロックパルスCL2bは、周囲温度Tが常温のときの状態を示しており、その発振周波数は常温によって中位となり、温度センスカウンタ62は、検出パルスP20が論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2bのパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは中位となって、一例として値12が出力される。
【0120】
また、発振回路OSC2のクロックパルスCL2cは、周囲温度Tが高温のときの状態を示しており、その発振周波数は高温によって低くなり、温度センスカウンタ62は、検出パルスP20が論理“1”の時に、発振回路OSC2のクロックパルスCL2cのパルス数を計数するので、その計数値であるカウントデータNtは少なくなって、一例として値8が出力される。
【0121】
このように、発振回路OSC2の温度依存性が大きく、発振回路OSC1の温度依存性が小さい場合においては、発振回路OSC2のクロックパルスCL2の発振周波数が周囲温度Tに応じて変化することによって、温度センスカウンタ62が出力するカウントデータNtが、周囲温度Tに応じて変化するので、このカウントデータNtの値を周囲温度Tに換算することができる。
【0122】
ここで、2つの発振回路OSC1とOSC2との実際の温度特性は、図4(a)で示したように、互いに温度係数が逆になるように設定できるので、温度検出部30の実際の動作は、図6と図7とを組み合わせた動作にすることができる。
すなわち、図6で示したように、周囲温度Tの変化に応じて検出パルスP20の長さTwを変化させると共に、図7で示したように、周囲温度Tの変化に応じて発振回路OSC2のクロックパルスCL2の発振周波数も変化させることができるので、温度検出部30の温度センスカウンタ62が出力するカウントデータNtの値は、周囲温度Tの変化を確実に捉えて、温度情報を高精度に取得することができる。
【0123】
[電圧検出回路の構成と動作の説明:図8]
次に、充電制御IC120に内蔵される電圧検出回路140の構成を図8(a)を用いて説明する。
なお、電圧検出回路140は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとのどちらか一方を検出する構成と、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方を検出する構成とが考えられる。
両方の電圧を検出する場合は、充電制御IC120に電圧検出回路140が2つ配置されるが、2つ配置された場合でも電圧検出回路140の個々の回路構成は同様であるので、ここでの説明は電圧検出回路140が1つの場合を例として説明する。
【0124】
図8(a)において、電圧検出回路140は、コンパレータ回路141、D入力フリップフロップ回路142(以下、D−FF142と略す)、検出スイッチS21、分割抵抗R2、R3、及びタイミング生成回路143等によって構成される。なお、基準電圧VREFを生成する回路も含まれるが、基準電圧VREFを生成する回路は、知られているレギュレータ回路などから生成できるため、ここでの説明及び図示は省略する。
【0125】
タイミング生成回路143は、発振回路OSC1からのシステムクロックSYSCLKを入力し、このシステムクロックSYSCLKに基づいて、イネーブル信号Enとラッチクロック信号L−CKを生成して出力する。
電圧検出回路140は、この2つのタイミング信号であるイネーブル信号Enとラッチクロック信号L−CKとによってサンプリング動作し、蓄電電圧VBT、又は発電電圧VHDを検出する。
【0126】
検出スイッチS21の一方の端子はGNDに接続され、他方の端子は分割抵抗R2の一方の端子に接続され、分割抵抗R2の他方の端子と分割抵抗R3の一方の端子とが接続され、分割抵抗R3の他方の端子は、電圧検出回路140が蓄電電圧VBTの電圧値を検出する場合は蓄電電圧VBTに接続され、電圧検出回路140が発電電圧VHDの電圧値を検出する場合は発電電圧VHDに接続される。すなわち、分割抵抗R3の他方の端子が、電圧検出回路140が検出する電圧の入力端子となる。
【0127】
また、検出スイッチS21のON、OFFを制御するコントロール端子G21は、タイミング生成回路143からのイネーブル信号Enが入力するように接続され、このイネーブル信号Enは、コンパレータ回路141の動作をイネーブル(動作許可)にする信号としても用いられる。なお、検出スイッチS21は、コントロール端子G21が論理“1”でONとなる。
【0128】
コンパレータ回路141の一方の入力端子は、基準電圧VREFに接続され、他方の入力端子は分割抵抗R2とR3との接続点Aに接続され、コンパレータ回路141の出力端子はD−FF142のD入力端子に接続される。
ここで、コンパレータ回路141は、分割抵抗R2とR3とによって分割される蓄電電圧VBT、又は発電電圧VHDの電圧値(すなわち接続点Aの電圧値)が、基準電圧VREFを越えるか越えないかを判定して出力端子からコンパレータ信号P14を出力する。
【0129】
ここで、分割抵抗R2とR3との分割比は、電圧検出回路140がLiイオン二次電池4の蓄電電圧VBTの電圧低下を検出するのであれば、その検出したい所定の電圧値と基準電圧VREFとの比率から分割抵抗R2とR3との分割比を決定する。また、電圧検出回路140が、太陽電池5の発電電圧VHDの電圧低下を検出するのであれば、その検出したい所定の電圧値と基準電圧VREFとの比率から分割抵抗R2とR3との分割比を決定する。
これにより、コンパレータ回路141は、蓄電電圧VBTまたは発電電圧VHDの電圧低下を検出することができる。
【0130】
また、D−FF142のクロック端子CLはラッチクロック信号L−CKを入力し、出力端子Qからは、電圧検出信号P15が出力する。なお、図示しないが、コンパレータ回路141とD−FF142のプラス側電源は回路のGNDに接続され、マイナス側電源は発電電圧VHDに接続されている。すなわち、電圧検出回路140は、太陽電池5からの発電電圧VHDによって駆動される。
なお、電圧検出回路140が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方を検出するために2つの回路で構成される場合は、内蔵するタイミング生成回路143と基準電圧VREFを生成する回路(図示せず)は、共用することもできる。
【0131】
次に電圧検出回路140の動作を図8(b)のタイミングチャートを用いて説明する。
図8(b)において、タイミング生成回路143から、システムクロックSYSCLKに基づいたイネーブル信号Enが所定の繰り返し周期で、所定の期間だけ論理“1”が出力される。コンパレータ回路141は、イネーブル信号Enが論理“1”である期間にイネーブル状態となって動作する。また、イネーブル信号Enによって検出スイッチS21がONするので、GNDから検出スイッチS21を介して分割抵抗R2とR3とに電流が流れて接続点Aに分割電圧が発生する。すなわち、イネーブル信号Enが論理“1”となったときのみに、コンパレータ回路141と分割抵抗R2及びR3とに動作電流が流れるので、電圧検出回路140は少ない電力で動作できる。
【0132】
ここでコンパレータ回路141はイネーブル期間中、基準電圧VREFと接続点Aの電圧値とを比較して、比較結果として、接続点Aの電圧値が基準電圧VREFより低ければ、論理“0”のコンパレータ信号P14を出力し、接続点Aの電圧値が基準電圧VREFより高ければ、論理“1”のコンパレータ信号P14を出力する。
なお、コンパレータ信号P14は、コンパレータ回路141が動作するイネーブル信号Enが論理“1”である期間のみ有効であり、他の期間は不定である。
【0133】
コンパレータ信号P14は、D−FF142のD入力端子に接続され、D−FF142は、クロック端子CLに入力されるラッチクロック信号L−CKが論理“1”から論理“0”に立ち下がるタイミングt1でコンパレータ信号P14を読み込んで記憶し、出力端子Qから記憶されたコンパレータ信号P14の論理を電圧検出信号P15として出力する。ここで、ラッチクロック信号L−CKは、イネーブル信号Enに同期して、イネーブル信号Enが論理“1”である期間に図示するように出力されるので、D−FF142はコンパレータ信号P14が有効期間中に確実に読み込むことができる。
【0134】
これにより、D−FF142は、ラッチクロック信号L−CKが立ち下がったタイミングt1で、新しく読み込んだコンパレータ信号P14の論理を出力端子Qから電圧検出信号P15として出力することができる。すなわち、電圧検出回路140は、発振回路OSC1からのシステムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧低下を検出することができる。
【0135】
ところで、電圧検出回路140の電圧検出のサンプリングは、システムクロックSYSCLKに則り行わなくてもよい場合がある。システムが決めた検出タイミングでサンプリングする場合もあるからである。そのようなときは、そのタイミングを決める公知のタイミング発生回路などを用いてサンプリングすればよい。
【0136】
[充電制御回路の説明:図9]
次に、充電制御IC120に内蔵される充電制御回路130の構成を図9を用いて説明する。
図9において、充電制御回路130は、3入力AND回路131とインバータ回路132とによって構成される。3入力AND回路131は、温度検出部30からの温度検出信号P12と、電圧検出回路140からの電圧検出信号P15と、システムクロックSYSCLKとを入力して、充電制御信号P13を出力する。インバータ回路132は、充電制御信号P13を入力して反転充電制御信号P13´を出力する。なお、充電制御回路130も太陽電池5からの発電電圧VHDによって駆動される。
【0137】
この構成によって充電制御回路130は、温度検出信号P12が充電許可温度範囲となって論理“1”、且つ、電圧検出信号P15が論理“1”となったとき、システムクロックSYSCLKが3入力AND回路131を通過して、充電制御信号P13にシステムクロックSYSCLKが現れ、反転充電制御信号P13´からは、システムクロックSYSCLKの反転信号が現れる。
【0138】
すなわち、充電制御信号P13と反転充電制御信号P13´とは、温度検出信号P12と電圧検出信号P15とが共に論理“1”となる条件でシステムクロックSYSCLKとその反転クロックとが出力されるのである。この充電制御信号P13及び反転充電制御信号P13´として出力されるシステムクロックSYSCLKが、後述する昇圧回路150を駆動する昇圧クロックパルスとなる。なお、前述した図2において、充電制御回路130と昇圧回路150を結ぶ信号線は、充電制御信号P13として示したが、詳しくは、図9で示すように反転充電制御信号P13´も含まれている。
【0139】
また、前述したように、電圧検出回路140が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方を検出するために2つの回路で構成される場合は、電圧検出信号P15も2つ出力するので、3入力AND回路131は、4入力AND回路として構成する。この場合、2つの電圧検出信号P15が共に論理“1”で、且つ温度検出信号P12が論理“1”の条件で、充電制御信号P13としてシステムクロックSYSCLKが出力される。
【0140】
[昇圧回路の構成と動作の説明:図9]
次に、引き続き図9を用いて充電制御IC120に内蔵される昇圧回路150の構成を説明する。
昇圧回路150は、入力電圧を2倍昇圧するチャージポンプ方式の昇圧回路である。図9において昇圧回路150は、4つの昇圧スイッチS11〜S14と、2つの昇圧コンデンサC11、C12とによって構成される。ここで、昇圧スイッチS11〜S14は、ONとOFFとを制御するコントロール端子G11〜G14を備えているが、コントロール端子G11〜G14に、論理“0”が入力されたときスイッチがONとなり、論理“1”
が入力されたときスイッチがOFFとなるように設計されている。
【0141】
昇圧スイッチS11〜S14は、図示するように直列接続されている。すなわち、昇圧スイッチS11の一方の端子は回路のGNDに接続され、昇圧スイッチS11の他方の端子は昇圧スイッチS12の一方の端子に接続され、以降、昇圧スイッチS13、S14へと直列接続されて、昇圧スイッチS14の他方の端子から昇圧電圧VHD2が出力される。
また、昇圧スイッチS11〜S14のコントロール端子G11、G13は、充電制御信号P13を入力し、コントロール端子G12、G14は、反転充電制御信号P13´を入力する。
【0142】
昇圧コンデンサC11の一方の端子はGNDに接続され、昇圧コンデンサC11の他方の端子は昇圧スイッチS12とS13との接続点に接続され、この接続点に太陽電池5からの発電電圧VHDが入力される。また、昇圧コンデンサC12の一方の端子は、昇圧スイッチS11とS12との接続点に接続され、昇圧コンデンサC12の他方の端子は、昇圧スイッチS13とS14との接続点に接続される。
【0143】
次に、昇圧回路150の動作の概略を図9を用いて説明する。
図9において、温度検出信号P12が論理“1”で、且つ電圧検出信号P15が論理“1”であるときに、充電制御回路130からシステムクロックSYSCLKとその反転クロックが充電制御信号P13と反転充電制御信号P13´として出力される。そして、昇圧スイッチS11とS13とのコントロール端子G11、G13に充電制御信号P13が入力し、昇圧スイッチS12とS14とのコントロール端子G12、G14に反転充電制御信号P13´が入力する。これにより、昇圧スイッチS11とS13、及び昇圧スイッチS12とS14は、システムクロックSYSCLKのタイミングで交合にONとOFFとを高速に切り替える。
【0144】
この動作によって、昇圧スイッチS11とS13とがONするタイミングで、昇圧コンデンサC11とC12との両方に発電電圧VHDの電力が充電され、次の昇圧スイッチS12とS14とがONするタイミングで、昇圧コンデンサC11とC12とが直列接続されるので、昇圧電圧VHD2からは、発電電圧VHDが2倍に昇圧された電圧が出力される。本説明では2倍昇圧の例を用いているために昇圧電圧をVHD2と称している。
この昇圧スイッチS11〜S14のONとOFFとの動作は、システムクロックSYSCLKのタイミングで高速に繰り返されるので、昇圧電圧VHD2は、発電電圧VHDの2倍の電圧を安定して出力する。この昇圧電圧VHD2がダイオードD1を介してLiイオン二次電池4に供給され、充電電流Icgが流れて充電が行われる。
【0145】
このように、昇圧回路150は、昇圧スイッチS11〜S14を切り替えるための昇圧クロックパルスに温度検出部30の発振回路OSC1からのシステムクロックSYSCLKを用いている。このため、昇圧クロックパルスを新たに生成する必要がないので、充電制御IC120の回路規模を小さくできると共に、消費電力の増加を防ぐことができる。
【0146】
また、温度検出信号P12と電圧検出信号P15のどちらかが論理“0”であるときは、充電制御回路130からの充電制御信号P13は論理“0”、反転充電制御信号P13´は論理“1”が維持する。これによって、昇圧回路150は停止すると共に、反転充電制御信号P13´を入力する昇圧スイッチS14は継続してOFFとなるので、昇圧電圧VHD2はオープンとなり、その電位は零ボルトとなってLiイオン二次電池4への充電は禁止される。
すなわち、充電制御回路130は、温度検出信号P12と電圧検出信号P15が共にアクティブ(論理“1”)となる条件でのみ昇圧回路150を動作させてLiイオン二次電
池4への充電を行い、温度検出信号P12と電圧検出信号P15のどちらかが論理“0”であれば、充電を禁止するために昇圧回路150を停止させるのである。
言うならば、昇圧回路150に、図1に示す充電制御スイッチS2の機能を持たせているのである。
【0147】
次に、本実施形態の充電制御部110の全体的な動作の概略を説明する。
ここで、充電制御は充電制御部110が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとのどちらか一方の電圧低下を検出して充電制御を行う場合(動作例1)と、充電制御部110が蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧低下を検出して充電制御を行う場合(動作例2)とがあるので、以下、動作例1と動作例2とを区別して説明する。なお、実施形態のシステム制御部2の動作は、前述した基本概念の動作(図1参照)と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0148】
[実施形態の充電制御の動作例1の説明:図10]
実施形態の充電制御部110の動作例1の概略を図10の動作フローを用いて説明する。
ここで充電制御の動作例1は、充電制御部110が太陽電池5で駆動され、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方の電圧検出と温度検出をして充電制御を行う動作である。なお、充電制御部110は図2のブロック図を参照し、充電制御IC120の内部の回路構成と動作は図3〜図9を参照する。また、動作例1においては、図2のブロック図で示す電圧検出回路140は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方を検出する構成とする。
【0149】
図10において、太陽電池5で駆動される充電制御部110の電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBT、または、太陽電池5の発電電圧VHDの電圧値を内部の基準電圧VREFと比較して、蓄電電圧VBTまたは発電電圧VHDが所定値以上であるか否かを電圧検出信号P15として出力する(ステップST1)。ここで、蓄電電圧VBTまたは発電電圧VHDが所定値以上である場合は、電圧検出信号P15を論理“1”として出力し、所定値未満である(すなわち、電圧が低下している)場合は、電圧検出信号P15を論理“0”として出力する。
【0150】
次に充電制御部110は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧値が所定値以上であるかどうかを判定し、所定値以上であれば次のステップST3へ進み、所定値未満であれば、ステップST6に進む(ステップST2)。
【0151】
ここで、充電制御部110が蓄電電圧VBTを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、Liイオン二次電池4が過放電状態であり、この状態で再充電が行われると、Liイオン二次電池4の劣化、あるいは破損が起きるため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4の劣化や破損を防止する(ステップST6)。
【0152】
また同様に、充電制御部110が発電電圧VHDを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、発電電圧VHDで動作する温度検出部30の2つの発振回路OSC1及びOSC2は、発電電圧VHDが著しく低下すると、発振周波数に電圧依存性が生じて温度検出に誤差が発生するので、正確な充電許可温度範囲内での充電制御が実施できなくなる。このため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST6)。
【0153】
また、充電制御部110が、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧値が所定値以上である(電圧検出信号P15:論理“1”)と判定した場合は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDの電圧値が正常であり、Liイオン二次電池4への充電が可能な状態であるので、温度検出部30によって周囲温度の検出が行われる(ステップST3)。ここで、温度検出部30は、2つの発振回路OSC1とOSC2との周波数差Δf(図4参照)から周囲温度を検出する。
【0154】
次に温度検出部30の判断部60は、検出した周囲温度が充電許可温度範囲内であるかどうかを比較して温度検出信号P12を出力し、充電制御部110は温度検出信号P12を判定して、充電許可温度範囲内(温度検出信号P12:論理“1”)であるならば、次のステップST5に進み、充電許可温度範囲外(温度検出信号P12:論理“0”)であるならば、ステップST6に進む(ステップST4)。
【0155】
ここで、充電制御部110が、ステップST4において、周囲温度が充電許可温度範囲外と判定した場合は、その周囲温度で充電を行うと、Liイオン二次電池4が異常な発熱、発火、最悪の場合は破裂などの状態を引き起こす可能性があるために、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST6)。
【0156】
また、充電制御部110が、ステップST4において、周囲温度が充電許可温度範囲内であると判定した場合は、充電制御回路130が論理“1”の充電制御信号P13を出力し、昇圧回路150を動作させて昇圧電圧VHD2を出力し、Liイオン二次電池4の充電を開始する(ステップST5)。なお、充電制御回路130からは、前述したように反転充電制御信号P13´も出力されるが、ここでの記述は省略する。
【0157】
充電が開始されると、充電制御部110は、次のサンプリング周期でステップST1からの動作を繰り返し、蓄電電圧VBT、または発電電圧VHDの検出(ステップST1)、及び、温度検出(ステップST3)を継続して行い、Liイオン二次電池4への充電が安全に実施されるように充電制御を継続する。
【0158】
また、充電制御部110は、ステップST6で充電が停止しても、次のサンプリングのタイミングで、再び電圧検出と温度検出を行うので、動作フローとしては、ステップST1からの動作が繰り返され、充電開始の条件が満たされたならば、ステップST5に進んで充電が開始される。
【0159】
また、図10の動作フローは、電圧検出(ST1)と温度検出(ST3)とを順次実施しているが、この2つの検出動作は同時に(平行して)実施してもよい。
【0160】
なお、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの検出の優先順位は、第1が蓄電電圧VBTの電圧低下の検出である。これは、Liイオン二次電池4が過放電状態になった場合、再充電が行われるとLiイオン二次電池4が破損する危険性があるためである。このため、充電制御の動作例1は、蓄電電圧VBTの電圧低下の検出を優先し、蓄電電圧VBTの電圧低下の検出を行うように構成することが好ましい。
【0161】
このように、充電制御の動作例1は、蓄電電圧VBT又は発電電圧VHDのどちらか一方の電圧検出を行うので、電圧検出回路140が1つでよく、制御も簡素化できるメリットがあるが、Liイオン二次電池4の過放電回避と、発電電圧VHDの低下による温度検出部30の誤動作回避とのどちらか一方を選択することになる。
【0162】
[実施形態の充電制御の動作例2の説明:図11]
次に、実施形態の充電制御部110の動作例2の概略を図11の動作フローを用いて説明する。
ここで充電制御部の動作例2は、充電制御部110が太陽電池5で駆動され、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧検出、及び温度検出をして充電制御を行う動作である。
【0163】
なお、充電制御部110は図2のブロック図を参照し、充電制御IC120の内部の回路構成と動作は図3〜図9を参照する。また、動作例2においては、図2のブロック図で示す電圧検出回路140は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとのそれぞれの電圧を検出する2つの電圧検出回路140によって構成する。
【0164】
図11において、充電制御部110の蓄電電圧VBTを検出する電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTの電圧値を所定値と比較して、その結果を電圧検出信号P15として出力する(ステップST11)。ここで、蓄電電圧VBTが所定値以上である場合は、電圧検出信号P15を論理“1”として出力し、所定値未満である(すなわち、電圧が低下している)場合は、電圧検出信号P15を論理“0”として出力する。
【0165】
次に充電制御部110は、蓄電電圧VBTの電圧値が所定値以上であるかどうかを判定し、所定値以上であれば次のステップST13へ進み、所定値未満であれば、ステップST18に進む(ステップST12)。
【0166】
ここで、充電制御部110が蓄電電圧VBTを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、Liイオン二次電池4が過放電状態であり、この状態で再充電が行われると、Liイオン二次電池4の劣化、あるいは破損が起きるため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4の劣化や破損を防止する(ステップST18)。
【0167】
また、ステップST12で充電制御部110が、蓄電電圧VBTを所定値以上である(電圧検出信号P15:論理“1”)と判定した場合は、発電電圧VHDを検出する電圧検出回路140は、システムクロックSYSCLKに基づいて所定の周期でサンプリング動作し、太陽電池5の発電電圧VHDの電圧値を所定値と比較して、その結果を電圧検出信号P15として出力する(ステップST13)。ここで、発電電圧VHDが所定値以上である場合は、電圧検出信号P15を論理“1”として出力し、所定値未満である(すなわち、電圧が低下している)場合は、電圧検出信号P15を論理“0”として出力する。
【0168】
次に充電制御部110は、発電電圧VHDの電圧値が所定値以上であるかどうかを判定し、所定値以上であれば次のステップST15へ進み、所定値未満であれば、ステップST18に進む(ステップST14)。
【0169】
ここで、充電制御部110が、発電電圧VHDを所定値未満である(電圧検出信号P15:論理“0”)と判定した場合は、発電電圧VHDで動作する温度検出部30の2つの発振回路OSC1とOSC2とは、発電電圧VHDが著しく低下すると、発振周波数に電圧依存性が生じて温度検出に誤差が発生するので、正確な充電許可温度範囲内での充電制御が実施できなくなる。このため、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST18)。
【0170】
また、充電制御部110が、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧値が所定値以上であると判定した場合は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの電圧値が正常であ
り、Liイオン二次電池4への充電が可能な状態であるので、温度検出部30によって周囲温度の検出が行われる(ステップST15)。ここで、温度検出部30は、2つの発振回路OSC1とOSC2との周波数差Δf(図4参照)から周囲温度を検出する。
【0171】
次に温度検出部30の判断部60は、検出した周囲温度が充電許可温度範囲内であるかどうかを比較して温度検出信号P12を出力し、充電制御部110は温度検出信号P12を判定して、充電許可温度範囲内(温度検出信号P12:論理“1”)であるならば、次のステップST17に進み、充電許可温度範囲外(温度検出信号P12:論理“0”)であるならば、ステップST18に進む(ステップST16)。
【0172】
ここで、周囲温度が充電許可温度範囲外と判定された場合は、その周囲温度で充電を行うと、Liイオン二次電池4が異常な発熱、発火、最悪の場合は破裂などの状態を引き起こす可能性があるために、充電制御回路130は充電制御信号P13を論理“0”として昇圧回路150を停止し、充電を禁止してLiイオン二次電池4を保護する(ステップST18)。
【0173】
また、充電制御部110がステップST16において、充電許可温度範囲内であると判定した場合は、充電制御回路130が論理“1”の充電制御信号P13を出力し、昇圧回路150を動作させてLiイオン二次電池4の充電を開始する(ステップST17)。充電が開始されると、充電制御部110は、次のサンプリング周期でステップST11からの動作を繰り返し、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの検出(ステップST11とST13)、及び、温度検出(ステップST15)を継続して行い、Liイオン二次電池4への充電が安全に実施されるように充電制御を継続する。
【0174】
また、充電制御部110は、ステップST18で充電が停止しても、次のサンプリングのタイミングで、再び電圧検出と温度検出とを行うので、動作フローとしては、ステップST11からの動作が繰り返され、充電開始の条件が満たされたならば、ステップST17に進んで充電が開始される。
【0175】
なお、図11の動作フローは、蓄電電圧VBT検出(ST11)、発電電圧VHD検出(ST13)、温度検出(ST15)を順次実施しているが、この3つの検出動作は同時に(平行して)実施してもよい。
【0176】
このように、充電制御の動作例2は、蓄電電圧VBTと発電電圧VHDとの両方の電圧検出を行うので、電圧検出回路140を2つ配置し、充電制御も動作例1より多少複雑になるが、Liイオン二次電池4の過放電回避と、発電電圧VHDの低下による温度検出部30の誤動作回避との両方を実施するので、想定されるリスクに対応して、Liイオン二次電池の充電を更に安全に実施することができる。
【0177】
以上のように本発明の実施形態を2つの動作例を示して説明したが、いずれの動作例においても、システム制御部2と充電制御部110とが分離しており、システム制御部2の時計IC10は、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTによって動作し、充電制御部110の充電制御IC120は、太陽電池5からの発電電圧VHDによって動作している。このため、Liイオン二次電池4の蓄電電圧VBTが低下して、時計IC10が動作停止しても、太陽電池5に光がわずかでも照射して発電電圧VHDが発生するならば、充電制御IC120は動作を継続して温度検出しながら充電制御を行うことができる。
【0178】
以上のように本発明は、時計の動作を制御するシステム制御部(時計IC)と二次電池の充電を制御する充電制御部(充電制御IC)とは、互いに関わりなく動作し、Liイオン二次電池への充電制御を実施できる。これにより、Liイオン二次電池の充電を中断す
ることなく常に充電許可温度範囲内で安全に継続することができるので、電池切れが極めて少なく永続的に動作可能な信頼性に優れた電子時計を提供できる。
【0179】
また、充電制御部は2つの発振回路の発振周波数差から温度情報を得る温度検出部を備えており、回路特性によるばらつきや電源電圧の変動の影響を受けにくい高精度な温度検出を実現できるので、充電許可温度範囲に制限があるLiイオン二次電池の充電を安全に実施することができる。
【0180】
また、充電制御部はLiイオン二次電池の蓄電電圧からLiイオン二次電池の過放電を検出して充電動作を停止できるので、過放電状態となったLiイオン二次電池に充電することの危険性を排除することができる。また、充電制御部は太陽電池の発電電圧を検出して、太陽電池の発電量が低いときに充電動作を停止できるので、充電制御部の温度検出部が、発電電圧の電圧低下によって温度検出誤差が大きくなり、充電制御が誤動作する危険性を排除することができる。
【0181】
また、本発明によって、高容量で且つ内部抵抗の小さいLiイオン二次電池を電子時計の電源として用いることができるので、充電後、時計を長時間使用できると共に、比較的大きな電流が必要となる電波修正時計における時刻情報の受信動作を安定して実施することができる。
【0182】
なお、本発明の実施形態は、システム制御部と充電制御部とを2つのICチップに分離することで、それぞれの回路を駆動する電源を分離する構成を例示したが、この構成に限定されず、図示しないがシステム制御部と充電制御部とをワンチップで構成し、チップ内部でシステム制御部と充電制御部との電源を電気的に分離する構成でも良い。
【0183】
また、すでに説明したように、発電手段は太陽電池に限定されず、知られている発電機構を有することができる。
さらにまた、実施形態に記述したブロック図、回路図、フローチャート等は限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の電子時計は、高容量のLiイオン二次電池を搭載したソーラー電子時計、及び時刻修正を自動的に行う電波修正機能を備えた電子時計などに、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0185】
1、100 電子時計
2 システム制御部
3、110 充電制御部
4 リチウムイオン二次電池(Liイオン二次電池)
5 太陽電池
10 時計IC
11 水晶発振回路
12 時計回路
13 動作停止回路
20、120 充電制御IC
30 温度検出部
60 判断部
70、130 充電制御回路
140 電圧検出回路
150 昇圧回路
S1 動作停止スイッチ
S2 充電制御スイッチ
D1 逆流防止ダイオード(ダイオード)
OSC1、OSC2 発振回路
VBT、VBT´ 蓄電電圧
VHD 発電電圧
VHD2 昇圧電圧
Icg 充電電流
CL1、CL2 クロックパルス
SYSCLK システムクロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電手段と、
充電許可温度範囲に制限がある蓄電手段と、
時計の動作を制御するシステム制御部を備える電子時計において、
前記システム制御部は、前記蓄電手段に蓄電されている電力が所定の値以下のときに動作を停止し、
前記発電手段が生成した電力で動作し、温度を検出して前記充電許可温度範囲で前記蓄電手段を充電するように制御する充電制御部を備えたことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記充電制御部は、互いに温度特性が異なる2つの発振回路を有する温度検出部を備え、
前記温度検出部は、双方の前記発振回路が生成するクロックパルス同士を比較することで温度検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記充電制御部に備える2つの発振回路は、一方は常時動作し他方は間欠動作し、常時動作している前記発振回路は、間欠動作している前記発振回路より前記発振周波数が低く、
前記温度検出部は、常時動作している前記発振回路のクロックパルスに基づいて生成した検出パルスによって間欠動作している前記発振回路のクロックパルスのパルス数を計数し、その結果に基づいて温度検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記充電制御部に備える2つの発振回路は、互いに温度係数が逆であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記充電制御部は、前記発電手段が生成した電力を昇圧する昇圧回路を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項6】
常時動作している前記発振回路のクロックパルスを前記充電制御部のシステムクロックパルスに用いることを特徴とする請求項2から5のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項7】
前記充電制御部は、前記蓄電手段の蓄電電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記電圧検出回路は、前記蓄電電圧が所定の電圧以下であるとき、前記蓄電手段への充電を停止するように制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項8】
前記充電制御部は、前記発電手段の発電電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記電圧検出回路は、前記発電電圧が所定の電圧以下であるとき、前記蓄電手段への充電を停止するように制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項9】
前記電圧検出回路は、常時動作している前記発振回路のクロックパルスに基づいてサンプリング動作することを特徴とする請求項7又は8に記載の電子時計。
【請求項1】
発電手段と、
充電許可温度範囲に制限がある蓄電手段と、
時計の動作を制御するシステム制御部を備える電子時計において、
前記システム制御部は、前記蓄電手段に蓄電されている電力が所定の値以下のときに動作を停止し、
前記発電手段が生成した電力で動作し、温度を検出して前記充電許可温度範囲で前記蓄電手段を充電するように制御する充電制御部を備えたことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記充電制御部は、互いに温度特性が異なる2つの発振回路を有する温度検出部を備え、
前記温度検出部は、双方の前記発振回路が生成するクロックパルス同士を比較することで温度検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記充電制御部に備える2つの発振回路は、一方は常時動作し他方は間欠動作し、常時動作している前記発振回路は、間欠動作している前記発振回路より前記発振周波数が低く、
前記温度検出部は、常時動作している前記発振回路のクロックパルスに基づいて生成した検出パルスによって間欠動作している前記発振回路のクロックパルスのパルス数を計数し、その結果に基づいて温度検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記充電制御部に備える2つの発振回路は、互いに温度係数が逆であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記充電制御部は、前記発電手段が生成した電力を昇圧する昇圧回路を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項6】
常時動作している前記発振回路のクロックパルスを前記充電制御部のシステムクロックパルスに用いることを特徴とする請求項2から5のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項7】
前記充電制御部は、前記蓄電手段の蓄電電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記電圧検出回路は、前記蓄電電圧が所定の電圧以下であるとき、前記蓄電手段への充電を停止するように制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項8】
前記充電制御部は、前記発電手段の発電電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記電圧検出回路は、前記発電電圧が所定の電圧以下であるとき、前記蓄電手段への充電を停止するように制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか1つに記載の電子時計。
【請求項9】
前記電圧検出回路は、常時動作している前記発振回路のクロックパルスに基づいてサンプリング動作することを特徴とする請求項7又は8に記載の電子時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−44639(P2013−44639A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182460(P2011−182460)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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