説明

電子材料用組成物及び電子材料

【課題】高い接着性を有しかつイオン成分含有量が少なくイオンマイグレーションの問題を起こし難い実用性の高い電子材料用組成物、それを用いた電子材料、およびそれを用いた電子製品を提供すること。
【解決手段】(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物、及び、(E)1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する化合物を含有する電子材料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子材料用組成物に関するものであり、更に詳しくは、高い接着性を有しかつイオン成分含有量が少なくイオンマイグレーションの問題を起こし難い実用性の高い電子材料用組成物、それを用いた電子材料、およびそれを用いた電子製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子用途に用いられる各種モールド部材、接着剤、コーティング剤等には高い接着性とともに、イオン成分含有量が少ないことが求められる。イオン成分の含有量が多い場合には、使用環境下においてそれらが接触する回路等の導体部分にイオンマイグレーションによるショートが生じる場合があり、問題となっている。
【0003】
ところが、電子用途に多用される有機材料であるエポキシ樹脂はハロゲン化物を経由して製造されていることから一般にイオン成分の含有量が高い。精製や製造方法の変更でイオン成分の含有量を低下させる方法も提案されているが製造コストがかかり、工業的利用価値を低減させる。一方で、イオン成分の含有量が比較的低い材料としてシリコーンゴム等のヒドロシリル化反応により架橋する熱硬化性の材料が提案されているが、一般に接着性が低い傾向がある。これらを改良するために種々の接着付与剤が提案されている。接着性を改良するために、ヒドロシリル化反応により架橋するシリコーン材料にエポキシシランおよびアルミキレートを添加する方法も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平05−140459号公報
【特許文献2】特開平08−183934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、高い接着性を有しかつイオン成分含有量が少なくイオンマイグレーションの問題を起こし難い実用性の高い電子材料用組成物、それを用いた電子材料、およびそれを用いた電子製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物及び(C)ヒドロシリル化触媒を含有する組成物に、(D)1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物及び(E)1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する化合物をさらに配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒、
(D)1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物、及び、
(E)1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する化合物、
を含有することを特徴とする電子材料用組成物(請求項1)であり、
金属含有化合物を含有しない、請求項1記載の電子材料用組成物(請求項2)であり、
(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものである、請求項1又は2記載の電子材料用組成物(請求項3)であり、
(A)成分が、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項4)であり、
(A)成分が、(イ)1分子中にビニル基を1〜6個含有し、(ロ)分子量が900未満であり、かつ(ハ)23℃における粘度が100Pa・s未満のものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項5)であり、
(A)成分が、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項6)であり、
(B)成分の分子量が50〜700である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子材料用組成物(請求項7)であり、
(B)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項8)であり、
(α)成分が脂肪族系化合物である、請求項8に記載の電子材料用組成物(請求項9)であり、
(β)成分が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンである、請求項8又は9に記載の電子材料用組成物(請求項10)であり、
(D)成分がエポキシシラン類である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項11)であり、
(D)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基をさらに含有する化合物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項12)であり、
(E)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基をさらに含有する化合物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項13)であり、
電子材料用組成物中のイオン性元素含有量が500ppm未満である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子材料用組成物(請求項14)であり、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子材料用組成物を硬化させて得られる電子材料(請求項15)であり、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子材料用組成物からなるモールド部材(請求項16)であり、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子材料用組成物からなる接着剤(請求項17)である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
((A)成分)
まず、本発明における(A)成分について説明する。
(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。上記有機化合物としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマー等の、シロキサン単位(Si−O−Si)を含む化合物以外のものが好ましく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がより好ましい。シロキサン単位を含む化合物の場合は、ガス透過性やはじきの問題がある。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
(A)成分は、単独で用いても良いし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0009】
(A)成分の化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系の化合物に分類できる。
有機重合体系化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物等が挙げられる。
有機単量体系化合物としては特に限定されないが、例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系;鎖状、環状等の脂肪族炭化水素系;複素環系の化合物;これらの混合物等が挙げられる。
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。上記一般式(III)で示される基のうち、原料の入手の容易さから、
【0012】
【化4】

【0013】
で示される基が特に好ましい。
さらに、(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。
【0014】
【化5】

【0015】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。2つのRは同じであってもよいし異なっていてもよい。)このうち、原料の入手の容易さから、下記式で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が好適である。
【0016】
【化6】

【0017】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していてもよい。上記2価以上の置換基としては特に限定されないが、炭素数0〜10の置換基が好ましく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない置換基がより好ましい。上記2価以上の置換基の例としては、
【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
が挙げられる。また、例示した2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
(A)成分の骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2,2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0021】
【化9】

【0022】
が挙げられる。
(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、それらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1,2比率10〜100%のもの、好ましくは1,2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
、エポキシ樹脂のグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
(A)成分としては、骨格部分と炭素−炭素二重結合とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。上記低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0026】
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0027】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の個数は、1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2個を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。ただし(A)成分が種々の化合物の混合物であり、各化合物の上記炭素−炭素二重結合の個数が同定できない場合には、上記混合物全体に関して1分子あたりの上記炭素−炭素二重結合の平均個数を求め、それを、(A)成分の上記炭素−炭素二重結合の個数とする。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0028】
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0029】
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点、並びに、原料液の糸引き性が少なく、成形性及び取扱い性が良好であるという観点からは、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0030】
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度が23℃において100Pa・s未満のものが好ましく、30Pa・s未満のものがより好ましく、3Pa・s未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0031】
(A)成分としては、着色(特に黄変)の抑制の観点からは、フェノール性水酸基およびフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基およびフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものがより好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは、上記フェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換した基を示す。
【0032】
複屈折率が低い、光弾性係数が低い等のように光学特性が良好であるとともに耐候性が良好であるという観点からは、(A)成分は、脂肪族系化合物が好ましい。この場合、脂肪族系化合物とは、芳香環を含まないか又はその含有量が少ないものをいう。具体的には、芳香環の(A)成分中の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0033】
得られる硬化物の着色が少なく、光学的透明性が高く、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0034】
(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合以外の反応性基を有していてもよい。上記反応性基としては特に限定されないが、例えば、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。上記反応性基を有している場合には得られる電子材料用組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、上記反応性基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、上記反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0035】
(一般式(I))
(A)成分としては、耐熱性および透明性が高いという観点から、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化12】

【0037】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基が好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基がより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基がさらに好ましい。好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0038】
【化13】

【0039】
等が挙げられる。
得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、上記一般式(I)の3つのRのうち少なくとも1つが、エポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0040】
【化14】

【0041】
で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。上記エポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基としては、グリシジル基、
【0042】
【化15】

【0043】
が好ましい。
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、N及びO以外の元素を含まない炭素数1〜50の一価の有機基が好ましく、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H及びO以外の元素を含まない炭素数1〜50の一価の有機基がより好ましく、炭素数1〜50の一価の炭化水素基がさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0044】
【化16】

【0045】
等が挙げられる。
反応性が良好になるという観点からは、上記一般式(I)の3つのRのうち少なくとも1つが、
【0046】
【化17】

【0047】
で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、3つのRのうち少なくとも1つが、下記一般式(III)
【0048】
【化18】

【0049】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、3つのRのうち少なくとも2つが、下記一般式(V)
【0050】
【化19】

【0051】
(式中Rは直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。複数のRおよびRはそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)で表される有機基であることがさらに好ましい。
【0052】
上記一般式(V)のRは、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基が好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基がより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基がさらに好ましい。なかでも好ましいRの例としては、
【0053】
【化20】

【0054】
等が挙げられる。
上記一般式(V)のRとしては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、直接結合、あるいは、2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H及びO以外の元素を含まない炭素数1〜48の二価の有機基が好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基がより好ましい。なかでも好ましいRの例としては、
【0055】
【化21】

【0056】
が挙げられる。
上記一般式(V)のRは、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0057】
ただし、上記一般式(I)で表される有機化合物においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
上記一般式(I)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0058】
【化22】

【0059】
等が挙げられる。接着性向上のためには、(A)成分としてはトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
(B)成分と良好な相溶性を有するという観点、及び、(A)成分の揮発性が低くなり、得られる電子材料からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物(α1)と、SiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物も好ましい。
(α1)成分としては、上述した(A)成分が挙げられる。(α1)成分は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0060】
((β)成分)
(β)成分は、SiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンである。具体的には、例えば
【0061】
【化23】

【0062】
【化24】

【0063】
が挙げられる。
(α1)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(II)
【0064】
【化25】

【0065】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
一般式(II)で表される化合物中の置換基Rは、構成元素としてC、H及びO以外の元素を含まない置換基が好ましく、炭化水素基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
(β)成分は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0066】
((α1)成分と(β)成分の反応)
(A)成分として、(α1)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、(α1)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0067】
尚、(α1)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(A)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(A)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の電子材料用組成物を作製することもできる。
【0068】
(α1)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α1)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、反応中のゲル化が抑制できるという点においては、一般に、混合する(α1)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、X/Y≧2であることが好ましく、X/Y≧3であることがより好ましい。また(A)成分の(B)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧X/Yであることが好ましく、5≧X/Yであることがより好ましい。
【0069】
(α1)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としてはヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0070】
白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0071】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。上記触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ電子材料用組成物のコストを比較的低く抑えるため、好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0073】
上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、上記触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0074】
反応させる場合の(α1)成分、(β)成分及び触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α1)成分に触媒を混合したものを、(β)成分に混合する方法が好ましい。(α1)成分と(β)成分の混合物に触媒を混合する方法の場合、反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものに(α1)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0075】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0076】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0077】
(α1)成分と(β)成分を反応させた後に、溶媒、未反応の(α1)成分及び/又は(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(A)成分が揮発分を有さないため(B)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0078】
(α1)成分と(β)成分の反応物である(A)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、等を挙げることができる。
【0079】
((B)成分)
次に本発明における(B)成分について説明する。
(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましい。具体的には
【0080】
【化26】

【0081】
【化27】

【0082】
が挙げられる。なかでも、(A)成分との相溶性がよいという観点からは、下記一般式(II)
【0083】
【化28】

【0084】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンがより好ましい。
【0085】
一般式(II)で表される化合物中の置換基Rは、構成元素としてC、H及びO以外の元素を含まない置換基が好ましく、炭化水素基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0086】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点から、低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
(B)成分は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0087】
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、及び、(B)成分の揮発性が低くなり、得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物が好ましい。
【0088】
((α)成分)
(α)成分としては、上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物(α1)を用いることもできる。(α1)成分を用いると、得られる硬化物の架橋密度が高くなり、力学強度が高く信頼性の高い電子材料となりやすい。
【0089】
また(α)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物(α2)を用いることもできる。(α2)成分を用いると、得られる硬化物が低弾性となりやすく、低応力により信頼性の高い電子材料となりやすい。
【0090】
((α2)成分)
(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなるという点においては、有機化合物が好ましく、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマー等の、シロキサン単位(Si−O−Si)を含む化合物以外のものがより好ましく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がさらに好ましい。
【0091】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
(α2)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系の化合物に分類できる。
【0092】
重合体系化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物等が挙げられる。
【0093】
単量体系化合物としては特に限定されないが、例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系;鎖状、環状等の脂肪族炭化水素系;複素環系の化合物;シリコン系の化合物;これらの混合物等が挙げられる。
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0094】
【化29】

【0095】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。上記一般式(III)で示される基のうち、原料の入手の容易さから、
【0096】
【化30】

【0097】
で示される基が特に好ましい。
さらに、(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。
【0098】
【化31】

【0099】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。2つのRは同じであってもよいし異なっていてもよい。)このうち、原料の入手の容易さからは、下記式で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が好適である。
【0100】
【化32】

【0101】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(α2)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していてもよい。上記2価以上の置換基としては特に限定されないが、炭素数0〜10の置換基が好ましく、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなりやすいという点においては、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない置換基がより好ましい。上記2価以上の置換基の例としては、
【0102】
【化33】

【0103】
【化34】

【0104】
が挙げられる。また、例示した2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
(α2)成分の骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2,2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0105】
【化35】

【0106】
が挙げられる。
(α2)成分の具体的な例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等の鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、α−ピネン、β−ピネン等の環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、インデン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン等の芳香族炭化水素系化合物類、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン等の脂肪族系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール等の芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン等のシリコン化合物等が挙げられる。
【0107】
さらに、(α2)成分として、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂;片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;等の片末端にビニル基を有するポリマーあるいはオリゴマー類等も挙げることができる。
【0108】
構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを用いることができる。分子量分布も特に制限ないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0109】
(α2)成分のガラス転移温度が存在する場合はこれについても特に限定はなく種々のものが用いられるが、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においてはガラス転移温度は100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、0℃以下がさらに好ましい。好ましいポリマー又はオリゴマーの例としてはポリブチルアクリレート等が挙げられる。逆に得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、ガラス転移温度は100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、170℃以上が最も好ましい。ガラス転移温度は動的粘弾性測定においてtanδが極大を示す温度として求めることができる。
【0110】
(α2)成分としては、得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、炭化水素化合物であることが好ましい。この場合好ましい炭素数の下限は7であり、好ましい炭素数の上限は10である。
【0111】
(α2)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合以外の反応性基を有していてもよい。上記反応性基としては特に限定されないが、例えば、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。上記反応性基を有している場合には、得られる電子材料用組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、上記反応性基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、上記反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0112】
(α)成分は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0113】
((β)成分)
(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンである。具体的には、
【0114】
【化36】

【0115】
【化37】

【0116】
が挙げられる。
(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(II)
【0117】
【化38】

【0118】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0119】
一般式(II)で表される化合物中の置換基Rは、構成元素としてC、H及びO以外の元素を含まない置換基が好ましく、炭化水素基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
(β)成分は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0120】
((α)成分と(β)成分の反応)
(B)成分として、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0121】
尚、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(B)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の電子材料用組成物を作製することもできる。
【0122】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による硬化物の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、混合する(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(B)成分の(A)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
【0123】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としてはヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0124】
白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0125】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。上記触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ電子材料用組成物のコストを比較的低く抑えるため、好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0127】
上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、上記触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0128】
反応させる場合の(α)成分、(β)成分及び触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合したものを、(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分と(β)成分の混合物に触媒を混合する方法の場合、反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものに(α)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0129】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0130】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0131】
(α)成分と(β)成分を反応させた後に、溶媒、未反応の(α)成分及び/又は(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため(A)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0132】
(α)成分と(β)成分の反応物である(B)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、等を挙げることができる。
【0133】
((A)成分と(B)成分の混合)
(A)成分と(B)成分の組み合わせについては、(A)成分の例として挙げたもの及びそれらの各種混合物/(B)成分の例として挙げたもの及びそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。
【0134】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比において、好ましい範囲の下限はY/X≧0.3、より好ましくはY/X≧0.5、さらに好ましくはY/X≧0.7であり、好ましい範囲の上限は3≧Y/X、より好ましくは2≧Y/X、さらに好ましくは1.5≧Y/Xである。好ましい範囲からはずれた場合には十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
【0135】
((C)成分)
次に本発明における(C)成分について説明する。
(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0136】
白金化合物以外のヒドロシリル化触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0137】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。上記ヒドロシリル化触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
ヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ電子材料用組成物のコストを比較的低く抑えるため、好ましい添加量の下限は、(B)成分のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は(B)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0139】
((D)成分)
次に、本発明における(D)成分について説明する。
(D)成分としては、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物であれば特に限定なく種々のものを用いることができる。このような(D)成分の例としては、エポキシシラン類、エポキシ化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0140】
(D)成分の例であるエポキシシラン類とは、分子中にエポキシ基と加水分解性ケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物のことである。加水分解性ケイ素基としては特に限定されないが、例えば、クロロシリル基、アシルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。取扱い性がよいという点でアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0141】
(D)成分の例であるエポキシシラン類としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0142】
(D)成分の例であるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、4−ビニルシクロヘキセン1,2−エポキサイド、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、4−ビニルシクロヘキセン1,2−エポキサイドと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物等を挙げることができる。
【0143】
(D)成分の例であるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートを共重合成分として含むオレフィン重合物等を挙げることができる。
【0144】
これらの1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物の内、接着性がより高くなりやすいという観点から、(D)成分としてはエポキシシラン類が好ましい。
【0145】
ヒドロシリル化反応により主鎖骨格に組みこまれることにより、接着性が高くなりやすく、あるいは硬化中の揮発が抑制されやすいという点において、(D)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基を含有する化合物が好ましい。
【0146】
(D)成分の添加量は種々設定できるが、全組成物中の好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は80重量部、より好ましくは50重量部、さらに好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れにくく、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。また、電子材料用組成物全体のうちのエポキシ基の含有量が高い方が本発明の効果がより顕著に表れる。この点において電子材料用組成物全体のうちのエポキシ基の含有量が0.5mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上となるように(D)成分を添加することが好ましい。
(D)成分は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
((E)成分)
次に本発明における(E)成分について説明する。
(E)成分としては、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する化合物であれば特に制限なく種々のものを用いることができる。このような(E)成分の例としては、
【0148】
【化39】

【0149】
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0150】
これらの(E)成分の例のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基を含有する化合物が好ましい。好ましい(E)成分としては、例えば、
【0151】
【化40】

【0152】
テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等が挙げられる。
(E)成分の使用量は種々設定できるが、(D)成分100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れにくく、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
(E)成分は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0153】
((A)〜(E)成分)
本発明における(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分については、同一の化合物を複数の成分として用いてもよい。例えば、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有し、かつ1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を含有する化合物は、(B)成分及び(D)成分の両方として用いることができる。従って、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有し、かつ1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を含有する化合物は、(A)成分となる化合物、(C)成分となる化合物、(E)成分となる化合物と組み合わせることにより、本発明の電子材料用組成物とすることができる。
【0154】
(混合)
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、電子材料用組成物の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(A)成分に(C)成分及び(E)成分を混合したものと、(B)成分と(D)成分を混合したものとを混合する方法が好ましい。(B)成分は、(C)成分の存在下及び/又は非存在下において(E)成分との反応性を有するため、これらを混合して中間原料とすると貯蔵中等に変質することもある。
【0155】
(添加剤)
次に本発明における任意成分について説明する。
(硬化遅延剤)
本発明の電子材料用組成物には、保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を配合することができる。硬化遅延剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0156】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチン、2−ヒドロキシ−2−フェニル−3−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレエート等のマレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等のトリオルガノホスフィン類、ジオルガノホスフィン類、オルガノホスホン類、トリオルガノホスファイト類等が例示される。硫黄含有化合物としては、単体硫黄、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
【0157】
上記硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレエート、2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
上記硬化遅延剤を用いる場合の添加量は特に限定されず、種々設定できるが、ヒドロシリル化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10−1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは50モルである。
また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0158】
(接着性改良剤)
本発明の電子材料用組成物には、接着性改良剤を配合してもよい。接着性改良剤としては特に限定されないが、例えば、一般に用いられている接着剤、カップリング剤、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0159】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤とは、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性ケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物である。有機基と反応性のある官能基としては特に限定されないが、取扱い性の点から、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性ケイ素基としては特に限定されないが、取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0160】
好ましいシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0161】
上記接着性改良剤を用いる場合の添加量としては特に限定されず、種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れにくく、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
上記接着性改良剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0162】
(酸無水物)
本発明の電子材料用組成物には、(D)成分による接着付与効果をさらに高めるために、酸無水物類を配合してもよい。酸無水物類としては特に限定されないが、例えば、
【0163】
【化41】

【0164】
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0165】
上記酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく、得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましい酸無水物類としては、例えば、
【0166】
【化42】

【0167】
テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
上記酸無水物類を用いる場合の添加量は特に限定されず、種々設定できるが、(D)成分100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れにくく、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
上記酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0168】
(熱硬化性樹脂)
本発明の電子材料用組成物には、特性を改質する等の目的で、熱硬化性樹脂を配合してもよい。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。
【0169】
上記熱硬化性樹脂を用いる場合の添加量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は電子材料用組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は電子材料用組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと、接着性等目的とする効果が得られにくいし、添加量が多いと脆くなりやすい。
上記熱硬化性樹脂は単独で用いてもよい、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0170】
上記熱硬化性樹脂を本発明の電子材料用組成物に配合する場合には、熱硬化性樹脂の樹脂原料及び/又は硬化させたものを、(A)成分及び/又は(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分及び/又は(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱硬化性樹脂を(A)成分及び/又は(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態及び/又は混合状態としてもよい。
【0171】
熱硬化性樹脂を分散させる場合、その平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、電子材料用組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0172】
(熱可塑性樹脂)
本発明の電子材料用組成物には、特性を改質する等の目的で、熱可塑性樹脂を配合してもよい。上記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体、メチルメタクリレートと他のモノマーとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体、ブチルアクリレートと他のモノマーとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂;ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等);ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、その水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等);エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等);ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類又はジエチレングリコール等のジオール類と、テレフタル酸、イソフタル酸等のフタル酸類又は脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等);ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等;天然ゴム、EPDM等のゴム状樹脂等が挙げられる。
【0173】
上記熱可塑性樹脂は、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0174】
上記熱可塑性樹脂はその他の架橋性基を有していてもよい。上記架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0175】
上記熱可塑製樹脂の分子量としては特に限定はないが、(A)成分や(B)成分との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0176】
上記熱可塑性樹脂を用いる場合の配合量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は電子材料用組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は電子材料用組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと、得られる硬化物が脆くなりやすいし、多いと、耐熱性(高温での弾性率)が低くなりやすい。
上記熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、複数のものを併用してもよい。
【0177】
上記熱可塑性樹脂を本発明の電子材料用組成物に配合する場合には、(A)成分及び/又は(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分及び/又は(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)成分及び/又は(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態及び/又は混合状態としてもよい。
【0178】
熱可塑性樹脂を分散させる場合、その平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、電子材料用組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0179】
(充填材)
本発明の電子材料用組成物には充填材を配合してもよい。
上記充填材としては特に限定されないが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材;エポキシ系等の従来のモールド部材の充填材として一般に使用及び/又は提案されている充填材等を挙げることができる。
【0180】
充填材としては、封止する半導体や電子材料へダメージを与え難いという観点からは、低放射線性のものが好ましい。
充填材は適宜表面処理したものであってもよい。表面処理としては特に限定されないが、例えば、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。
【0181】
上記カップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性ケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては特に限定されないが、取扱い性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基及びカルバメート基からなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性ケイ素基としては特に限定されないが、取扱い性の点から、アルコキシシリル基が好ましく、反応性の点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0182】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0183】
本発明の電子材料用組成物に充填材を配合する方法としては、本発明の組成物に充填剤を混合する方法以外に、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマーあるいはオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物等を、本発明の組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で充填材を生成させる方法も挙げることができる。
上記充填材のうち、硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きいという観点からは、シリカ系充填材が好ましい。
【0184】
上記充填材の平均粒径としては、モールド部材の狭い隙間への浸透性が良好となりやすいという点においては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。充填材中の粒径が50μm以上の粒子の割合としては、モールド部材の狭い隙間への浸透性が良好となりやすいという点においては、1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。充填材の平均粒子径及び充填材中の粒径が50μm以上の粒子の割合は、レーザー法マイクロトラック粒度分析計を用いて測定することができる。
【0185】
上記充填材の粒径分布については、エポキシ系等の従来のモールド部材の充填材として使用及び/又は提案されているものをはじめ、各種設定できる。例えば、24μm以上の粒子が15重量%以上かつ1μm以下の粒子が3重量%以上となるようにしてもよい。
【0186】
上記充填材の比表面積についても、エポキシ系等の従来のモールド部材の充填材として使用及び/又は提案されているものをはじめ、各種設定できる。例えば、4m/g以上、4m/g以下、10m/g以下等、任意に設定できる。比表面積はBET法モノソーブ比表面積測定装置によって測定できる。
【0187】
上記充填材のガラス化率についても、エポキシ系等の従来のモールド部材の充填材として使用及び/又は提案されているものをはじめ、各種設定できる。例えば、97%以上等、任意に設定できる。
【0188】
上記充填材の形状としては、モールド部材の粘度が低くなりやすい観点からは、球状の充填材であることが好ましい。
上記充填材は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0189】
上記充填材を配合する場合の添加量は特に限定されないが、線膨張係数の低減化効果が高く、かつ組成物の流動性が良好であるという観点から、好ましい添加量の下限は全組成物中の30重量%、より好ましくは50重量%であり、好ましい添加量の上限は全組成物中の80重量%、より好ましくは70重量%である。
【0190】
上記充填材の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、組成物の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(A)成分に(C)成分および充填材を混合したものに(B)成分を混合する方法が好ましい。(B)成分に(C)成分及び/又は充填材を混合したものに(A)成分を混合する方法をとる場合は、(C)成分の存在下及び/又は非存在下において(B)成分が環境中の水分及び/又は充填材と反応性を有するため、貯蔵中等に変質することもある。
【0191】
(老化防止剤)
本発明の電子材料用組成物には老化防止剤を配合してもよい。老化防止剤としては特に限定されず、一般に用いられている老化防止剤、例えばクエン酸、リン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。硫黄系老化防止剤としては特に限定されないが、例えば、メルカプタン類、メルカプタンの塩類;スルフィドカルボン酸エステル類、ヒンダードフェノール系スルフィド類等のスルフィド類;ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。上記老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0192】
(ラジカル禁止剤)
本発明の電子材料用組成物にはラジカル禁止剤を配合してもよい。ラジカル禁止剤としては特に限定されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤;フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N′−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。上記ラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0193】
(紫外線吸収剤)
本発明の電子材料用組成物には紫外線吸収剤を配合してもよい。紫外線吸収剤としては特に限定されないが、例えば、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0194】
(蛍光体)
本発明の電子材料用組成物には、蛍光体を配合しても良い。これにより、発光素子から放出される光を吸収し、波長変換を行い、発光素子の色調と異なる色調を有する発光ダイオードを提供することができるからである。
【0195】
発光ダイオードに使用される蛍光体は、主に、青色に発光する蛍光体、緑色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体の少なくともいずれか1以上の蛍光体を使用することができる。これらの蛍光体は、本発明に係る電子材料用組成物中に投入し、ほぼ均一になるまで混合する。この混合物を、発光素子の周辺部に載置する。この蛍光体は、発光素子から放出される光を吸収し、波長変換を行い、発光素子の光と異なる波長の光を放出する。これにより、発光素子から放出される光の一部と、蛍光体から放出される光の一部と、が混合して、白色を含む多色系の発光ダイオードを作製することができる。
【0196】
上述のような青色に発光する蛍光体、緑色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体には、種々の蛍光体がある。
緑色に発光する蛍光体として、例えば、SrAl:Eu、YSiO:Ce,Tb、MgAl1119:Ce,Tb、SrAl1225:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Ga:Euなどがある。
【0197】
青色に発光する蛍光体として、例えば、Sr(POCl:Eu、(SrCaBa)(POCl:Eu、(BaCa)(POCl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)(POCl:Eu,Mnなどがある。
【0198】
緑色から黄色に発光する蛍光体として、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦括されたイットリウム・ガドリニウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット酸化物蛍光体、及び、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・ガリウム・アルミニウム酸化物蛍光体などがある(いわゆるYAG系蛍光体)。具体的には、Ln12:R(Lnは、Y、Gd、Laから選ばれる少なくとも1以上である。Mは、Al、Caの少なくともいずれか一方を含む。Rは、ランタノイド系である。)、(Y1−xGa(Al1−yGa12:R(Rは、Ce、Tb、Pr、Sm、Eu、Dy、Hoから選ばれる少なくとも1以上である。0<R<0.5である。)を使用することができる。
【0199】
赤色に発光する蛍光体として、例えば、YS:Eu、LaS:Eu、Y:Eu、GdS:Euなどがある。
但し、緑色、青色、黄色、赤色等に発光する蛍光体は、上記の蛍光体に限定されず、種々の蛍光体を使用することができる。
【0200】
(その他の添加剤)
本発明の電子材料用組成物には、以上の成分以外に、エポキシ系等の従来のモールド部材の充填材として使用及び/又は提案されているものをはじめ、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0201】
本発明の電子材料用組成物は溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤としては特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。なかでも、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。
【0202】
溶媒を使用する場合の使用量は特に限定されず、適宜設定できるが、電子材料用組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
上記溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0203】
(発光ダイオードのための添加剤)
本発明の電子材料用組成物には、種々の発光ダイオード特性改善のための添加剤を配合してもよい。上記添加剤としては特に限定されないが、例えば、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体等の蛍光体;特定の波長を吸収するブルーイング剤等の着色剤;光を拡散させるための酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、石英ガラス等の酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、メラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の無機あるいは有機拡散材;ガラス、アルミノシリケート等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物等の熱伝導性フィラー等を挙げることができる。
【0204】
発光ダイオード特性改善のための添加剤は均一に含有させてもよいし、含有量に傾斜を付けて含有させてもよい。上記添加剤含有樹脂部は、発光面前面のモールド部材用の樹脂を型に流した後、引き続いて、上記添加剤を含有させた樹脂を流し発光面後方のモールド部材として形成させることができる。また、モールド部材形成後、リード端子を表裏両面からテープを張り付けることによって覆い、この状態でリードフレーム全体を上記添加剤含有樹脂を溜めたタンク内に発光ダイオードのモールド部材の下半分を浸漬した後、引き上げて乾燥させ上記添加剤含有樹脂部を形成させてもよい。
【0205】
(電子材料用組成物全体)
本発明の電子材料用組成物は、金属含有化合物を含有しないことが好ましい。金属含有化合物を含有すると、電子材料用組成物を硬化させて得られる電子材料がイオンマイグレーションの問題を起こしやすくなる。
金属含有化合物とは、H、He、B、C、N、O、F、Ne、Si、P、S、Cl、Ar、As、Se、Br、Kr、Te、I、Xe、At及びRn以外の原子を含有する化合物である。
【0206】
金属含有化合物の具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソフロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート類、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類等が挙げられる。
【0207】
(電子材料用組成物の性状)
本発明の電子材料用組成物としては、上記したように各種組み合わせのものが使用できるが、狭い隙間への充填性、コーティング等による作業性が良好であるという点においては、組成物の粘度が、23℃において1000Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましく、5.0Pa・s未満であることがさらに好ましく、1.0Pa・s以下であることが特に好ましく、0.1以下であることが最も好ましい。同じ理由で、100℃において10Pa・s以下であることが好ましく、1.0Pa・s以下であることがより好ましく、0.1Pa・s以下であることがさらに好ましい。粘度の温度依存性(チクソ性)についても種々のものが使用できる。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0208】
本発明の電子材料用組成物の硬化性については、任意に設定できるが、120℃におけるゲル化時間が120秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがより好ましい。また、150℃におけるゲル化時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。また、100℃におけるゲル化時間が180秒以内であることが好ましく、120秒以内であることがより好ましい。硬化性が遅い場合には組成物としての作業性が悪くなる。逆に速い場合には貯蔵安定性が悪くなりやすい場合もある。上記ゲル化時間は、以下のようにして調べることができる。設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に組成物100mgを垂らしてゲル化するまでの時間を測定してゲル化時間とする。
【0209】
イオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、電子材料用組成物中のイオン性元素含有量が1,000ppm未満であることが好ましく、500ppm未満であることがより好ましく、100ppm未満であることがさらに好ましく、10ppm未満であることが特に好ましい。
【0210】
上記イオン性元素含有量は以下のようにして調べることができる。電子材料用組成物サンプル200mgをPTFE製加圧容器に精秤し、超高純度硫酸(例えば関東化学製Ultrapur)1.0mlおよび超高純度硝酸(例えば関東化学製EL級)3.0mlを加えてマイクロウェーブ分解装置(例えばマイルストーンゼネラル社製MLS−1200MEGA)を用いて加圧酸分解を行う。得られた分解液を50mlに定容してICP質量分析法(例えば横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500)によって分析し、得られたLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Fe、Zn、Zr及びSnの含有量の値を、用いた電子材料用組成物中の濃度に換算して求める。一方で、電子材料用組成物サンプル200mgを試料燃焼装置で燃焼させ生成物を超純水25mlに吸収させる。得られた吸収液をイオンクロマト分析装置(例えばダイオネクス社製DX−500)によって分析し、得られたCl及びBrの含有量の値を、用いた電子材料用組成物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Fe、Zn、Zr、Sn、Cl及びBrの含有量を合計してイオン性元素含有量とする。
【0211】
(硬化)
本発明の電子材料用組成物は、各成分をあらかじめ混合し、組成物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合とSiH基の一部または全部を反応させることによって硬化させて電子材料として用いることができる。
【0212】
電子材料用組成物を反応させて硬化させる場合において、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)各成分の必要量を一度に混合して反応させてもよいが、一部を混合して反応させた後残量を混合してさらに反応させる方法や、混合した後反応条件の制御や置換基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応(Bステージ化)させてから成形等の処理を行いさらに硬化させる方法をとることもできる。これらの方法によれば成形時の粘度調整が容易となる。
【0213】
硬化させる方法としては、単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られやすいという観点から加熱して反応させる方法が好ましい。
【0214】
硬化温度としては特に限定されず、種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは100℃であり、好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは200℃である。硬化温度が低いと十分に反応させるための硬化時間が長くなり、反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。
【0215】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階であるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階であるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0216】
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0217】
硬化時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる。場合によって発生する揮発分を取り除きやすく、モールド部材等として用いた場合に細部への充填性が良好であるという点においては、減圧状態で硬化させることが好ましい。
【0218】
電子材料用組成物が使用される製造工程において、組成物中へのボイドの発生および組成物からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点においては、硬化中の重量減少が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。硬化中の重量減少は以下のように調べることができる。熱重量分析装置を用いて電子材料用組成物10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めることができる。また、シリコーン汚染の問題を起こし難いという点においては、この場合の揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であることが好ましい。
【0219】
(硬化物の性状)
本発明の電子材料用組成物は、耐熱性が良好であるという観点から、電子材料用組成物を硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)が100℃以上となるものが好ましく、150℃以上となるものがより好ましい。一方で、低応力であり、耐熱応力性が高いという観点から、電子材料用組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃未満であるものが好ましく、80℃以下であるものがより好ましい。
【0220】
上記Tgは以下のようにして調べることができる。3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度をTgとする。
【0221】
本発明の電子材料用組成物を電子材料として使用した場合に、接触する配線等にイオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、電子材料用組成物を硬化させて得られる硬化物からの抽出イオン含有量が10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましく、1ppm未満であることがさらに好ましい。
【0222】
上記抽出イオン含有量は以下のようにして調べることかできる。裁断した硬化物1gを超純水50mlとともにテフロン(登録商標)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。一方、同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl及びBrの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
【0223】
本発明の電子材料用組成物は、熱による着色が少ないという観点から、電子材料用組成物を硬化させて得られる硬化物を120℃で100時間空気中で保管した後の波長470nmの光線の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0224】
上記光線の透過率は以下のように測定できる。電子材料用組成物を硬化させ、3mm厚の板状サンプルを作製する。このサンプルを120℃に温度を調整した熱風(空気)循環式のオーブン中で100時間保管する。取り出したサンプルを23℃まで放冷し、分光光度計(日立U−3300型分光光度計を使用)にて波長470nmの光線の透過率を測定する。
【0225】
(電子材料)
本発明でいう電子材料とは、電気・電子用途一般に用いられる材料である。特に限定されないが、例えば、半導体周辺材料、回路基板周辺材料、液晶等の表示装置周辺材料、各種電池周辺材料等の他、有機EL(エレクトロルミネッセンス)周辺材料、光通信・光回路周辺材料、光記録周辺材料等も含む。
【0226】
上記半導体周辺材料としては、半導体前工程に使用される層間絶縁膜、レジスト、パッシベーション膜、ジャンクションコート膜、バッファコート膜等の各種保護膜、半導体後工程に使用されるダイボンド剤、ダイボンドフィルム、アンダーフィル、異方導電性接着剤(ACP)、異方導電性フィルム(ACF)、ダイオード・水晶振動子等の接続等に用いられる導電性接着剤、熱伝導性接着剤、モールド部材の他、仮止め、固定用フィルム等が挙げられる。この場合半導体とは各種のものを含み、例えば、トランジスタ、ダイオード等の素子、半導体レーザー、発光ダイオード等の発光素子、光センサー等の受光素子、太陽電池、メモリー、論理回路等のIC、LSI等が挙げられる。具体的には、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI、センサー等のダイボンド剤やポッティング、ディッピング、トランスファーモールド、コーティング、スクリーン印刷等によるモールド部材、IC、LSI類のCOB、COF、TAB等といったポッティングモールド部材、フリップチップ等のアンダーフィル、BGA、CSP等のICパッケージ類実装時のモールド部材(補強用アンダーフィル)、スタックドIC用のダイボンドフィルム、ウェハレベルCSP用のモールド部材、ハンダ代替接続材料等を挙げることができる。
【0227】
上記回路基板周辺材料としては、例えば、片面・両面・多層のリジッドプリント基板・フレキシブルプリント基板材料・ビルドアップ基板や樹脂付き銅箔の層間絶縁材、基板と銅箔の接着剤、レジスト、ビアホールの穴埋め剤、基板の保護コーティング剤、基板と素子や基板と基板や基板とケーブル等の接点保護(コーティング)剤、ソルダーレジスト等が挙げられる。基板の用途としてもマザーボード用、BGA・CSP・MCM等のインターポーザー用の他、可動部分等の接続用や液晶接続用等の周辺部品も含まれる。また、メンブレンスイッチ等に用いられる導電ペーストも挙げられる。
【0228】
上記液晶等の表示装置周辺材料としては、例えば、基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、反射防止フィルム、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、カラーフィルタ保護膜(平坦化膜)、TFTの保護膜(平坦化膜)等の液晶用フィルム、コーティング剤、接着剤等が挙げられる。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)のモールド部材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が挙げられる。さらに、発光ダイオード表示装置に使用される発光素子のモールド部材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。その他、プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。
【0229】
上記各種電池周辺材料としては、例えば、太陽電池の基板材料、保護コーティング剤、モールド部材、リチウムイオン電池、燃料電池等のセパレータ、モールド部材、保護剤等が挙げられる。
【0230】
上記有機EL(エレクトロルミネッセンス)周辺材料としては、基板材料、各種保護コーティング剤、保護フィルム、接着剤等が挙げられる。
【0231】
上記光通信・光回路周辺材料としては、光電子集積回路、光スイッチ、光コネクタ等に用いられる基板材料、ファイバー材料、レンズ、導波路、モールド部材、接着剤、フェルール等が挙げられる。
【0232】
上記光記録周辺材料としては、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用等のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、モールド部材、接着剤等が挙げられる。
【0233】
その他、次世代の光・電子機能有機材料として、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子のモールド部材、接着剤等が挙げられる。
さらに自動車の電子部品周辺の保護剤、コーティング剤、モールド部材、接着剤等も挙げられる。
その他、当該用途に用いられている他樹脂等への添加剤等も挙げられる。
なお本明細書におけるモールド部材は、モールド剤、又は、封止剤のことも含む概念である。
【0234】
(LEDの製造)
本発明の電子材料用組成物を用いて発光ダイオードを製造することができる。この場合、発光ダイオードは本発明の電子材料用組成物によって発光素子を被覆することによって製造することができる。
【0235】
上記発光素子としては特に限定されず、発光ダイオードに用いられ得る発光素子を用いることができる。例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法といった各種方法によって、必要に応じてGaN、AlN等のバッファー層を設けた基板上に半導体材料を積層して作製したもの等が挙げられる。
【0236】
上記基板としては特に限定されないが、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。これらのうち、結晶性の良好なGaNを容易に形成でき、工業的利用価値が高いという観点からは、サファイアが好ましい。
【0237】
積層される上記半導体材料としては特に限定されないが、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。これらのうち、高輝度が得られるという観点からは、窒化物系化合物半導体(InGaAlN)が好ましい。上記半導体材料は付活剤等を含んでいてもよい。
【0238】
上記発光素子の構造としては特に限定されないが、例えば、MIS接合、pn接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合、ダブルへテロ構造等が挙げられる。また、単一あるいは多重量子井戸構造とすることもできる。
上記発光素子はパッシベーション層を設けていてもよいし、設けなくてもよい。
上記発光素子には従来知られている方法によって電極を形成することができる。
【0239】
発光素子上の電極は種々の方法でリード端子等と電気接続できる。電気接続部材としては特に限定されないが、発光素子の電極とのオーミック性機械的接続性等がよいものが好ましく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、これらの合金等を用いたボンディングワイヤー等が挙げられる。銀、カーボン等の導電性フィラーを樹脂に充填した導電性接着剤等を用いることもできる。これらのうち、作業性が良好であるという観点からは、アルミニウム線又は金線が好ましい。
【0240】
本発明においては、垂直方向の光度が1cd以上を示す発光素子が好ましい。垂直方向の光度が2cd以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果がより顕著であり、3cd以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果がさらに顕著である。
【0241】
上記発光素子の発光出力としては特に限定されず、20mAにおいて1mW以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果が顕著であり、20mAにおいて4mW以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果がより顕著であり、20mAにおいて5mW以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果がさらに顕著である。
【0242】
上記発光素子の発光波長は紫外域から赤外域まで特に限定されないが、主発光ピーク波長が550nm以下のものを用いた場合に本発明の効果が特に顕著である。上記発光素子は一種類を用いて単色発光させてもよいし、複数を用いて単色又は多色発光させてもよい。
【0243】
本発明の発光ダイオードに用いられるリード端子としては特に限定されないが、ボンディングワイヤー等の電気接続部材との密着性、電気伝導性等が良好なものが好ましい。リード端子の電気抵抗としては特に限定されないが、300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは3μΩ・cm以下である。上記リード端子の材料としては特に限定されないが、例えば、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅、これらに銀、ニッケル等をメッキしたもの等が挙げられる。上記リード端子は良好な光の広がりを得るために適宜光沢度を調整してもよい。
【0244】
本発明の発光ダイオードは、本発明の電子材料用組成物によって上記発光素子を被覆することによって製造することができる。上記被覆とは、上記発光素子を直接封止するものに限らず、間接的に被覆する場合も含む。具体的には、上記発光素子を本発明の電子材料用組成物で直接、従来用いられる種々の方法で封止してもよいし、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等の封止樹脂やガラスで発光素子を封止した後に、その上あるいは周囲を本発明の電子材料用組成物で被覆してもよい。また、上記発光素子を本発明の電子材料用組成物で封止した後、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等でモールディング(封止ともいう)してもよい。これらの方法によって、屈折率や比重の差を利用してレンズ効果等の種々の効果を持たせることも可能である。
【0245】
封止の方法としても各種方法を適用することができる。例えば、底部に発光素子を配置させたカップ、キャビティ、パッケージ凹部等に液状の組成物をディスペンサーその他の方法にて注入して加熱等により硬化させてもよいし、固体状あるいは高粘度液状の組成物を加熱する等して流動させ同様にパッケージ凹部等に注入してさらに加熱する等して硬化させてもよい。上記パッケージは種々の材料を用いて作製することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂等を挙げることができる。また、モールド型枠中に組成物をあらかじめ注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後硬化させる方法も適用することができるし、発光素子を挿入した型枠中にディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等により組成物による封止層を成形、硬化させてもよい。単に液状または流動状態とした組成物を発光素子状に滴下あるいはコーティングして硬化させてもよい。発光素子上に孔版印刷、スクリーン印刷、あるいはマスクを介して塗布すること等により硬化性樹脂を成形させて硬化させることもできる。あらかじめ板状、あるいはレンズ形状等に部分硬化あるいは硬化させた組成物を発光素子上に固定する方法によってもよい。さらには、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド剤として用いることもできるし、発光素子上のパッシベーション膜として用いることもできる。また、パッケージ基板として用いることもできる。
【0246】
被覆部分の形状も特に限定されず種々の形状をとることができる。例えば、レンズ形状、板状、薄膜状、特開平6−244458記載の形状等が挙げられる。これらの形状は組成物を成形硬化させることによって形成してもよいし、組成物を硬化した後に後加工により形成してもよい。
【0247】
本発明の発光ダイオードは、種々のタイプとすることができ、例えば、ランプタイプ、SMDタイプ、チップタイプ等いずれのタイプでもよい。SMDタイプ、チップタイプのパッケージ基板としては、種々のものが用いられ、例えば、エポキシ樹脂、BTレジン、セラミック等が挙げられる。
【0248】
本発明の発光ダイオードには種々の方式が適用できる。例えば、発光素子背面に光を反射あるいは集光する層を設ける方式、封止樹脂の黄変に対応して補色着色部を底部に形成させる方式、主発光ピークより短波長の光を吸収する薄膜を発光素子上に設ける方式、発光素子を軟質あるいは液状のモールド部材で封止した後周囲を硬質材料でモールディングする方式、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す蛍光体を含む材料で発光素子を封止した後周囲をモールディングする方式、蛍光体を含む材料をあらかじめ成形してから発光素子とともにモールドする方式、特開平6−244458に記載のとおりモールド部材を特殊形状として発光効率を高める方式、輝度むらを低減させるためにパッケージを2段状の凹部とする方式、発光ダイオードを貫通孔に挿入して固定する方式、発光素子表面に主発光波長より短い波長の光を吸収する薄膜を形成する方式、発光素子をはんだバンプ等を用いたフリップチップ接続等によってリード部材等と接続して基板方向から光を取出す方式等を挙げることができる。
【0249】
本発明の発光ダイオードは従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、バックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0250】
本発明の電子材料用組成物は、高い接着性を有しかつイオン成分含有量が少なくイオンマイグレーションの問題を起こし難い実用性の高い電子材料用組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0251】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0252】
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった(反応物Aと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いてH−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、8.08mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0253】
【化43】

【0254】
(合成例2)
1Lの四つ口フラスコに、磁気攪拌子、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン200g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン200gを入れ、窒素雰囲気下オイルバス中で50℃に加熱、攪拌した。アリルグリシジルエーテル95.0g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)31.5μL、トルエン50gの混合物を滴下漏斗から、30分かけて滴下した。1時間同温で加熱した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテルとヒドロシリル化反応したものであることがわかった(反応物Bと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いてH−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、6.63mmol/gのSiH基および3.64mmol/gのエポキシ基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0255】
【化44】

【0256】
(実施例1及び2並びに比較例1及び2)
(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート又はビスフェノールAジアリルエーテルを用い、(B)成分として合成例1又は2で合成した反応物A又はBを用い、(C)成分として白金ビニルシロキサン錯体を用い、(D)成分として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又は合成例2で合成した反応物Bを用い、(E)成分としてウンデシレン酸を用いて、表1に示した配合で電子材料用組成物を作製した。尚、比較例1では(E)成分を用いず、比較例2では(E)成分に該当しない接着付与剤としてアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)を用いた。
これらの電子材料用組成物を用いて接着性およびイオン性元素含有量を調べた。
【0257】
【表1】

【0258】
接着性:
作製した電子材料用組成物をアルミニウム板上に100μmの厚みに塗布し、120℃/1時間の条件で加熱硬化させた。得られた塗膜を気相熱衝撃試験機(を使用)を用いて−40℃/5分⇔100℃/5分の条件で500回熱衝撃試験した。JISK5400に規定されている方法によって碁盤目テープ法で接着性を調べた。碁盤目としては1mm角の10x10のマスを用いた。剥がれたマスが50%以上のものを×、50%未満30%以上のものを△、30%未満のものを○とした。
【0259】
イオン性元素含有量:
電子材料用組成物サンプル200mgをPTFE製加圧容器に精秤し、超高純度硫酸(関東化学製Ultrapur)1.0mlおよび超高純度硝酸(関東化学製EL級)3.0mlを加えてマイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製MLS−1200MEGA)を用いて加圧酸分解を行った。得られた分解液を50mlに定容してICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500)によって分析し、得られたLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Fe、Zn、Zr及びSnの含有量の値を、用いた電子材料用組成物中の濃度に換算して求めた。一方で、電子材料用組成物サンプル200mgを試料燃焼装置で燃焼させ生成物を超純水25mlに吸収させた。得られた吸収液をイオンクロマト分析装置(ダイオネクス社製DX−500)によって分析し、得られたCl及びBrの含有量の値を、用いた電子材料用組成物中の濃度に換算して求めた。以上のように得られたLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Fe、Zn、Zr、Sn、Cl及びBrの含有量を合計してイオン性元素含有量とした。
【0260】
(参考例1)
洗浄したサファイヤ基板上にMOCVD(有機金属気相成長)法により、アンドープの窒化物半導体であるn型GaN層、Siドープのn型電極が形成されn型コンタクト層となるGaN層、アンドープの窒化物半導体であるn型GaN層、次に発光層を構成するバリア層となるGaN層、井戸層を構成するInGaN層、バリア層となるGaN層(量子井戸構造)、発光層上にMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるGaN層を順次積層させる。エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、pn各コンタクト層表面を露出させる。各コンタクト層上に、スパッタリング法を用いてAlを蒸着し、正負各電極をそれぞれ形成させる。出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子を形成させる。
【0261】
表面に銀でメッキされた鉄入り銅から構成されるマウントリードのカップ底面上に、ダイボンド樹脂としてエポキシ樹脂組成物を利用して上記発光素子をダイボンドする。これを170℃で75分加熱しエポキシ樹脂組成物を硬化させ発光素子を固定する。次に、発光素子の正負各電極と、マウントリード及びインナーリードとをAu線によりワイヤーボンディングさせ電気的導通を取る。
【0262】
実施例1と同様にして調製した組成物を砲弾型の型枠であるキャスティングケース内に注入させる。上記の発光素子がカップ内に配置されたマウントリード及びインナーリードの一部をキャスティングケース内に挿入し100℃/時間の初期硬化を行う。キャスティングケースから発光ダイオードを抜き出し、窒素雰囲気下において120℃/1時間で硬化を行う。これにより砲弾型等のランプタイプの発光ダイオードを作製することができる。
【0263】
(参考例2)
実施例1に記載の方法で組成物を作製する。
エッチングにより一対の銅箔パターンをガラスエポキシ樹脂上に形成させることによって、リード電極を持った基板を形成する。発光素子をエポキシ樹脂を用いてガラスエポキシ樹脂上にダイボンドする。発光素子の各電極と、各リード電極とをそれぞれAu線でワイヤーボンディングし電気的導通を取る。基板上にマスク兼側壁として貫通孔があいたガラスエポキシ樹脂をエポキシ樹脂により固定配置させる。この状態で真空装置内に配置させると共に発光素子が配置されたガラスエポキシ樹脂基板上に組成物をディスペンスし、貫通孔を利用したキャビティ内に組成物を充填する。この状態で、100℃/1時間、さらに150℃/1時間硬化させる。各発光ダイオードチップごとに分割させることでチップタイプ発光ダイオードを作製することができる。
【0264】
(参考例3)
実施例1に記載の方法で組成物を作製する。
インサート成形によりPPS樹脂を用いてチップタイプ発光ダイオードのパッケージを形成させる。パッケージ内は、発光素子が配される開口部を備え、銀メッキした銅板を外部電極として配置させる。パッケージ内部で発光素子をエポキシ樹脂を用いてダイボンドして固定する。導電性ワイヤーであるAu線を発光素子の各電極とパッケージに設けられた各外部電極とにそれぞれワイヤーボンディングし電気的に接続させる。パッケージ開口部内にモールド部材として組成物を充填する。この状態で、100℃/1時間、さらに150℃/1時間硬化させる。この様にして、チップタイプ発光ダイオードを作製することができる。
【0265】
(参考例4)
実施例1に記載の方法で組成物を作製する。
参考例4の発光ダイオードは、青色系に発光する発光素子と、該発光素子が配置される底面と側壁とからなる開口部を有するパッケージと、該開口部を封止するモールド部材と、を備える。このモールド部材には、実施例1に記載の方法で作製された組成物と、(Y0.8Gd0.2Al12:CeのYAG系蛍光体と、を用いる。この実施例1の組成物と、YAG系蛍光体とを均一に混合した後、この混合物を、発光素子を配置するパッケージの開口部内に注入する。この混合物を注入した後、熱風乾燥機中で60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間加熱し硬化させた。これにより白色系に発光する発光ダイオードを作製した。
【0266】
(比較参考例1)
参考例4の発光ダイオードと同一の方法により、本発明の光学材料用組成物の代わりにエポキシ樹脂を用いて発光ダイオードの作製を行った。該エポキシ樹脂は、ダイセル化学工業株式会社製(セロキサイド2021P)30g、ジャパンエポキシレジン株式会社製(YX8000)70g、三新化学工業株式会社製(サンエイドSI−100L)1gを配合して使用した。このエポキシ樹脂と、上記組成のYAG系蛍光体を均一に混合した後、この混合物を、発光素子を配置するパッケージの開口部内に、注入する。エポキシ樹脂を注入した後、熱風乾燥機中で90℃/3時間、150℃/4時間加熱し硬化させた。これにより、比較参考例1の発光ダイオードを作製した。
【0267】
(発光ダイオード駆動試験)
参考例4及び比較参考例1において作製された発光ダイオードを用いて、駆動試験を行った。
表面実装型のプラスチック・パッケージは、以下の問題を有している。表面実装型のプラスチック・パッケージを吸湿させた後、リフローを行うことにより、そのリフロー時に水蒸気爆発が起きる。この水蒸気爆発により、発光素子とパッケージとの界面に、剥離が生じる。この剥離により、発光素子とパッケージとの界面に隙間が生じる。通常、発光素子とパッケージとの界面に隙間がない状態では、発光素子を通電させたとき、発光素子から発生する熱がパッケージを介して放熱される。そのため、発光素子の劣化は、ほとんど生じない。これに対し、剥離により発光素子とパッケージとの界面に隙間が生じた場合では、発光素子を通電させたとき、発光素子から発生する熱がパッケージに十分伝達されない。そのため、発光素子から発生した熱が外部に放出されにくくなる。これによって、発光素子周辺の樹脂部の熱劣化が促進され光出力が低下する。また、剥離によって生じた隙間に水分や不純物が侵入し、発光素子を腐食させる。また、パッケージ・クラックがパッケージ表面まで達したり、パッケージが膨れて変形したりすると、外観不良となり、商品価値が失われる。
【0268】
従来、発光素子を保護するためのモールド部材には、エポキシ樹脂を用いて発光ダイオードを作製していた。該エポキシ樹脂は、接着性、光透過性、強度、硬度などの点で優れている。しかし、該エポキシ樹脂は、吸湿しやすいという性質を持つ。このため、発光素子を保護しているエポキシ樹脂の外部表面から水分が透過してくる。上述のように、このモールド部材からの透水は、パッケージの電極の腐食や、通電に伴う発光素子の発熱による発光素子の剥離などの問題を生じている。特に、発光ダイオードのリフロー実装時に、水蒸気爆発が起こり、剥離が生じ易かった。このように、樹脂封止型発光素子における耐湿性の問題は、極めて重要である。
【0269】
高温/多湿地域では、パッケージを大気中に放置しておくだけで、クラックを引き起こすに充分な量の水分を吸湿する。30℃/70%で168時間、発光ダイオードを放置、吸湿させた後、リフローを行い実装させた。その実装後、所定の温度及び湿度の下、発光ダイオードの駆動試験を行った。
【0270】
従来、発光素子を保護するためのモールド部材には、エポキシ樹脂を用いて発光ダイオードを作製していた。該エポキシ樹脂は、ハロゲン化物を経由して製造されていることから一般にイオン成分の含有量が高い。
【0271】
エポキシ樹脂は、このイオン成分の含有量が高いため、高温高湿の条件下では、電極が腐食して、発光ダイオードが不灯に到るという問題がある。このように、樹脂封止型発光素子における耐湿性の問題は、極めて重要である。
そのため、所定の温度及び湿度の下、発光ダイオードの駆動試験を行った。
【0272】
発光ダイオードの駆動試験は、プレッシャクッカテストを行った。発光ダイオードの駆動試験を概説すると、発光ダイオードを所定の温度及び湿度において、順方向電流をある一定量投下し、点灯の有無、光出力と経過時間との関係を測定した。
【0273】
まず、参考例4で得られた発光ダイオードと比較参考例1の発光ダイオードを、高温/高湿(温度約121℃、2気圧の水蒸気釜に入れる)下において順方向電流を10mAで、300時間投下した。20時間毎に点灯の有無を測定した。その結果、本発明の発光ダイオードは、300時間後でも、点灯していた。それに対し、比較参考例1の発光ダイオードは、20時間、40時間では、点灯していたが、60時間後では、比較参考例1の発光ダイオードの幾つかは不灯に到っており、80時間後では、全ての発光ダイオードが不灯に到った。これは、エポキシ樹脂が高い吸収性を有するため、該エポキシ樹脂中を水分が通過するためである。また、上述のように、エポキシ樹脂は、イオン成分の含有量が高いためである。このように気密が不完全であれば、モールド部材から水分が侵入し、リーク電流の過大や配線の腐食断線が起こる。これに対し、本発明に係る電子材料用組成物は、イオン成分の含有量が低いため、パッケージの電極の腐食が起こりにくい。
【0274】
以上の試験結果から、本発明の発光ダイオードは、厳しい保管条件や実装条件、及び使用条件においても高い信頼性を維持することができるが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本発明の電子材料用組成物は、高い接着性を有しかつイオン成分含有量が少なくイオンマイグレーションの問題を起こし難い実用性の高い電子材料用組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒、
(D)1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を含有する化合物、及び、
(E)1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する化合物、
を含有することを特徴とする電子材料用組成物。
【請求項2】
金属含有化合物を含有しない、請求項1記載の電子材料用組成物。
【請求項3】
(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものである、請求項1又は2記載の電子材料用組成物。
【請求項4】
(A)成分が、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項5】
(A)成分が、(イ)1分子中にビニル基を1〜6個含有し、(ロ)分子量が900未満であり、かつ(ハ)23℃における粘度が100Pa・s未満のものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項6】
(A)成分が、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項7】
(B)成分の分子量が50〜700である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子材料用組成物。
【請求項8】
(B)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項9】
(α)成分が脂肪族系化合物である、請求項8に記載の電子材料用組成物。
【請求項10】
(β)成分が、下記一般式(II)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンである、請求項8又は9に記載の電子材料用組成物。
【請求項11】
(D)成分がエポキシシラン類である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項12】
(D)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基をさらに含有する化合物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項13】
(E)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/又はSiH基をさらに含有する化合物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項14】
電子材料用組成物中のイオン性元素含有量が500ppm未満である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子材料用組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子材料用組成物を硬化させて得られる電子材料。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子材料用組成物からなるモールド部材。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子材料用組成物からなる接着剤。

【公開番号】特開2006−183061(P2006−183061A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98627(P2006−98627)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【分割の表示】特願2003−98522(P2003−98522)の分割
【原出願日】平成15年4月1日(2003.4.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】