説明

電子楽器のLED制御装置、および、電子楽器

【課題】 少ない時分割数および少ない数の信号線で、所望の数のLEDを適切に点灯させる。
【解決手段】 Y個のコモン線およびX個のデータ線によりマトリクス状に接続されたLEDを含むLEDマトリクス回路をN時分割で制御するLED制御回路22は、N=P+QとなるP個のコモン線のそれぞれに1フェーズを割り当て、かつ、Q個の制御線のそれぞれに1フェーズを割り当て、前記P個のコモン線およびQ個の制御線を順次アクティブにするY信号(コモン線)タイミング制御部42と、Q個の制御線の出力を受け入れ、選択信号にしたがって、Qフェーズのそれぞれで(Y−P)個のコモン線のうちの何れかを選択するセレクタ44と、X本のデータ線に接続され、各フェーズにおいて、アクティブになったコモン線に接続された、点灯すべきLEDと接続されたデータ線をアクティブにするX信号(データ線)タイミング制御部46とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器の鍵盤に対応して配置されたLEDの点灯を制御するLED制御装置および電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
鍵盤の各鍵の中にLEDを取り付け、或いは、電子楽器本体において鍵の根元(可動部)付近に各鍵に対応したLEDを取り付けたような電子楽器が良く知られている。このような電子楽器においては、演奏曲のデータである演奏データが読み出され、押鍵すべき鍵のLEDが点灯して、演奏者による押鍵を促す。これにより、演奏者の練習の手助けをすることができる。
【0003】
LEDの点灯には、全てのLEDを常時点灯可能な状態としておき、かつ、全てのLEDのそれぞれのオン・オフを示すデータ線をLEDと接続し、データ線からの制御信号によりLEDの点灯を制御する方式(スタティック駆動)と、複数のコモン線と、複数のデータ線を用いて、LEDを何れかのコモン線およびデータ線と接続させてマトリクス状に配置し、複数のコモン線のうち1つをハイレベル(アクティブ)として、当該コモン線に接続されたLEDを点灯可能とし、データ線により点灯可能となったLEDのうち所定のものを点灯させ、この動作を連続して繰り返す方式(ダイナミック駆動)とが知られている。
【0004】
スタティック駆動では、LEDの数だけデータ線が必要であり、電子楽器本体に実装すると、配線数が多くなるという問題点がある。したがって、現在、ダイナミック駆動で、電子楽器の鍵に対応して配置されたLEDを点灯するのが一般的である。
【0005】
特許文献1には、8本のコモン線(C1〜C8)および6本のデータ線(L1〜L6)を用いて、8×6=48個のLEDを接続可能としたLEDマトリクスが開示されている。コモン線C1〜C8は、8つのステージで時分割駆動される。つまり、コモン線C1〜C8は8つのステージの何れかにおいてアクティブとされ(特許文献1ではアクティブはローレベルとなっている)、アクティブとなったコモン線に接続されたLEDのうち、アクティブ(ハイレベル)となったデータ線に接続されたLEDが点灯する。
【特許文献1】特公昭63−53556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイナミック駆動においては、コモン線を時分割でアクティブとするため、時分割数に応じて電流を多く流さないと、スタティック駆動と同程度のLEDの明るさを確保することが困難です。一般的には、N時分割の場合には、スタティック駆動のN倍の瞬間電流が必要である。したがって、時分割数を増やすには駆動トランジスタの能力や、LEDの耐性が影響される。
【0007】
通常の耐性のLEDで、適度な明るさで点灯させるためには、4程度の時分割数が適切であるとされている。5オクターブの鍵(トータルで61鍵)の鍵盤を有する電子楽器で、LEDマトリクスを構成するコモン線およびデータ線を最小化させると、8つのコモン線および8つのデータ線となる。
【0008】
上記8×8のLEDマトリクスを、4時分割で駆動するとなると、確実に同時に点灯可能なLEDの数は4つに限られてしまう。無論、8時分割で駆動することにより、同時に点灯可能なLED数を増やすことは可能であるが、上述したいように、適度な明るさを確保するには、駆動トランジスタの能力やLEDの耐性を向上させる必要がある。
【0009】
或いは、4×16のLEDマトリクスを4時分割で駆動すれば、同時に点灯可能なLEDの数は制限されないことになる。しかしながら、8×8のLEDマトリクスでは、8本のコモン線および8本のデータ線で足りたのに対して、4×16のLEDマトリクスでは、4本のコモン線および16本のデータ線が必要となる。また、コモン線駆動用のトランジスタやデータ線駆動用のトランジスタの個数も多くなるという問題点がある。
【0010】
その一方、初級者向けの電子楽器では、メロディとして単音を発音するため、メロディ用の鍵域(メロディエリア)では同時には1つのLEDを点灯すればよく、また、伴奏用にコードを押鍵させるため、伴奏用の鍵域(伴奏エリア)では、最高で4つのLEDを点灯すれば足りる。しかしながら、上述した8×8のLEDマトリクスを4時分割で駆動するようなやり方では、点灯可能なLEDが足りないかった。
【0011】
本発明は、少ない時分割数で、メロディ用の鍵域および伴奏用の鍵域のそれぞれのLEDを適切に点灯させることが可能なLED制御装置、および、電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、Y個のコモン線の何れか、および、X個のコモン線の何れかと接続されたLEDを含むマトリクス状のLEDマトリクス回路を駆動し、N個の時分割フェーズの各々で何れかのコモン線をアクティブにするとともに、各フェーズにおいて何れかのデータ線をアクティブにすることで、アクティブとなったコモン線およびデータ線に接続されたLEDを点灯させるLED制御装置であって、
前記Y個のコモン線のうちN=P+QとなるP個のコモン線と接続されるとともに、Q個の制御線を出力するコモン線タイミング制御手段であって、P個のコモン線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、かつ、Q個の制御線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、1フェーズずつ前記P個のコモン線およびQ個の制御線を順次アクティブにすることにより、N時分割で前記LEDマトリクス回路を駆動するコモン線タイミング制御手段と、
前記Q個の制御線の出力を受け入れ、かつ、前記(Y−P)個のコモン線と接続されたセレクタであって、前記(Y−P)個のコモン線の何れかを割り当てるための前記コモン線タイミング制御回路からの選択信号にしたがって、前記Qフェーズのそれぞれにおいて前記(Y−P)個のコモン線のうちの何れかを選択する選択手段と、
前記X本のデータ線に接続され、前記フェーズの各々において、前記アクティブになったコモン線に接続されたLEDのうち、点灯すべきLEDと接続されたデータ線をアクティブにするデータ線タイミング制御手段と、を備えたことを特徴とするLED制御装置により達成される。
【0013】
好ましい実施態様においては、前記データ線タイミング制御手段が、前記Qフェーズのそれぞれにおいて、単一のデータ線をアクティブにするように構成されている。
【0014】
たとえば、N=4であり、かつ、P=3、Q=1である。或いは、N=4であり、かつ、P=2、Q=2であっても良い。
【0015】
また、本発明の目的は、楽曲の音高および発音タイミングを示す演奏データを記憶した記憶装置、
鍵盤、
鍵盤において、押鍵された鍵にしたがった音高の楽音を発生する楽音発生手段、
前記鍵盤の鍵の各々の内部に、或いは、当該鍵の各々に隣接して配置されたLEDであって、Y個のコモン線の何れか、および、X個のコモン線の何れかと接続されたLEDを含むマトリクス状のLEDマトリクス回路、並びに、
N個の時分割フェーズの各々で何れかのコモン線をアクティブにするとともに、各フェーズにおいて何れかのデータ線をアクティブにすることで、アクティブとなったコモン線およびデータ線に接続されたLEDを点灯させるLED制御装置であって、
前記Y個のコモン線のうちN=P+QとなるP個のコモン線と接続されるとともに、Q個の制御線を出力するコモン線タイミング制御手段であって、P個のコモン線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、かつ、Q個の制御線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、1フェーズずつ前記P個のコモン線およびQ個の制御線を順次アクティブにすることにより、N時分割で前記LEDマトリクス回路を駆動するコモン線タイミング制御手段と、
前記Q個の制御線の出力を受け入れ、かつ、前記(Y−P)個のコモン線と接続されたセレクタであって、前記(Y−P)個のコモン線の何れかを割り当てるための前記コモン線タイミング制御回路からの選択信号にしたがって、前記Qフェーズのそれぞれにおいて前記(Y−P)個のコモン線のうちの何れかを選択する選択手段と、
前記X本のデータ線に接続され、前記フェーズの各々において、前記アクティブになったコモン線に接続されたLEDのうち、点灯すべきLEDと接続されたデータ線をアクティブにするデータ線タイミング制御手段と、を有するLED制御装置、を備え、
前記記憶装置に記憶された演奏データに基づき、前記LED制御装置が、前記前記押鍵すべき鍵に対応するLEDを点灯し、かつ、押鍵された鍵にしたがった音高の楽音を、前記楽音発生手段が発生するように構成されたことを特徴とする電子楽器により達成される。
【0016】
好ましい実施態様においては、前記鍵盤において、前記P個のコモン線と接続されるLEDに対応する鍵の第1の鍵域と、前記Y−P個のコモン線と接続されるLEDに対応する鍵の第2の鍵域とに分割され、
前記楽音発生装置が、前記第1の鍵域については、第1の音色で、同時に複数の楽音を発生することが、前記第2の鍵域については、第2の音色で、同時にQ個の楽音を発生することが可能である。
【0017】
より好ましい実施態様においては、前記第1の鍵域が、前記鍵盤における低音側であり、前記第2の鍵域が、前記鍵盤における高音側である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少ない時分割数および少ない数の信号線で、所望の数のLEDを適切に点灯させる、たとえば、メロディ用の鍵域および伴奏用の鍵域のそれぞれのLEDを適切に点灯させることが可能なLED制御装置、および、電子楽器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。図1に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、鍵盤11、CPU12、ROM14、RAM16、楽音発生回路18、サウンドシステム20、LED駆動回路22および押鍵検出回路24を有する。CPU12、ROM14、RAM16、楽音発生回路18、LED駆動回路22および押鍵検出回路24は、バスを介して接続される。
【0020】
本実施の形態において、鍵盤の数は61であり、鍵盤11の各鍵(たとえば、符号30)には、LED32が取り付けられている。LED32は、後述するように、8つのコモン線および8つのデータ線によりマトリクス状に接続され、LED駆動回路22からのコモン線の信号およびデータ線の信号によってそれぞれの点灯が制御される。
【0021】
押鍵検出回路24は、演奏者の押鍵操作による鍵盤11の鍵30の押鍵状態を検知し、押鍵された鍵を特定する情報および押鍵された鍵のベロシティを示す情報をCPU12に伝達することができる。
【0022】
CPU12は、システム制御、押鍵された鍵に応じた音高の楽音を生成するための楽音発生回路18に与える種々の情報の生成などを実行する。ROM16は、プログラムや、プログラムの実行の際に使用されるパラメータ、楽音発生回路18により生成される楽音データのもととなる波形データ、演奏すべき楽曲の音高情報などを含む演奏データなどを記憶する。RAM18は、プログラムの実行の過程で必要な変数、パラメータ、入力データ、出力データなどを一時的に記憶する。
【0023】
楽音発生回路18は、CPU12から与えられた発音すべき楽音の音色を示す音色情報、楽音の音高を示す音高情報、大きさを示すベロシティ情報に基づいて、ROM16から所定の波形データを読み出して、所定の音高の楽音データを生成し、サウンドシステム20に出力する。
【0024】
本実施の形態においては、鍵盤11が伴奏エリア(符号101参照)およびメロディエリア(符号102参照)という2つの鍵域に分けられている。伴奏エリアに属する鍵については、CPU12は、伴奏用の音色で発音するように楽音発生回路18に情報を与え、その一方、メロディエリアに属する鍵については、CPU12は、メロディ用の音色で発音するように楽音発生回路18に情報を与える。
【0025】
サウンドシステム20は、D/A変換器、増幅回路、スピーカを備え、楽音データをアナログ信号に変換して増幅し、スピーカから楽音データに相当する楽音を発する。
【0026】
本実施の形態にかかる電子楽器においては、CPU12が、ROM16から、演奏すべき楽曲の演奏データを読み出して、LED駆動回路22を駆動して、演奏者が押鍵すべき鍵30のLED32を点灯させる。本実施の形態においては、たとえば、伴奏エリアで同時に発音される楽音は最高で4音、メロディエリアで同時に発音される楽音は1音(単音)としている。したがって、伴奏エリアの鍵のLEDは最高で同時に4つ点灯する一方、メロディエリアの鍵のLEDは、同時に1つだけ点灯する。なお、ここで同時とは、一連の時分割フェーズ(本実施の形態においては、第1フェーズから第4フェーズまでの一連の4つのフェーズ)において点灯する場合も含む。つまり、ある単一のフェーズで2つのLEDを点灯することも同時であるし、一連の4つのフェーズにおいて、第1フェーズでLEDを点灯し、かつ、第3フェーズでLEDを点灯することも、同時に点灯することに含まれる。
【0027】
図2は、本実施の形態にかかるLED駆動回路およびLEDマトリクス回路を示すブロックダイヤグラムである。図2に示すように、LED駆動回路22からは、8本のコモン線Y0〜Y7と、8本のデータ線X0〜X7がLEDマトリクス回路40に接続される。ここに、コモン線は、時分割駆動される引き込み側の制御線であり、また、データ線は、点灯させるべきLEDに対して、電流を流すための制御線である。本実施の形態においては、61個のLEDが発行されるため、Y0〜Y6には、それぞれ、8つのLEDが接続され、かつ、Y7には5つのLEDが接続される。
【0028】
図3は、本実施の形態にかかるLEDマトリクス回路の構成を示すブロックダイヤグラムである。図3に示すように、LEDマトリクス回路40は、61個のLED(符号32参照)がマトリクス状に配置され、それぞれのLED32には、何れかのコモン線および何れかのデータ線が接続される。
【0029】
コモン線Y0〜Y7は、それぞれ、電流引き込みのためのトランジスタTRbが接続され、トランジスタTRbのコレクタは、コモン線に接続されるLED32のカソードと接続される。
【0030】
データ線X0〜X7は、それぞれ、データ線に電流を流すためのトランジスタTRaと接続される。トランジスタTRaのコレクタは、抵抗Rを介して、データ線に接続されるLED32のアノードと接続されている。
【0031】
図3においてLEDに隣接して書かれている文字は、鍵の音高を示している。コモン線Y0からY7に向けて、徐々に鍵の音高が高くなる。本実施の形態においては、コモン線Y0に最低音C1〜G1、Y1にG#1〜D#2、Y2にE2〜B2、Y3にC3〜G3、Y4にG#3〜D#4、Y5にE4〜B4、Y6にC5〜G5、Y7にG#5〜最高音C6が接続される。
【0032】
図4は、本実施の形態にかかるLED駆動回路をより詳細に示すブロックダイヤグラムである。図4に示すように、本実施の形態にかかるLED駆動回路22は、Y信号(コモン線)タイミング制御部42、セレクタ44およびX信号(データ線)タイミング制御部46を有している。
【0033】
Y信号タイミング制御部42およびX信号タイミング制御部46には、CPU12から点灯すべきLEDを特定する鍵指定信号が与えられる。
【0034】
Y信号タイミング制御部42は、コモン線を順次アクティブ(本実施の形態においてはハイレベル)にして時分割駆動するとともに、時分割駆動のタイミング信号をX信号タイミング制御部46に与える。X信号タイミング制御部46は、CPU12から与えられた鍵指定信号と、Y信号タイミング制御部46から与えられたタイミング信号にしたがって、点灯すべきLEDに接続されたデータ線を所定のタイミングでアクティブ(本実施の形態においてはローレベル)にする。
【0035】
本実施の形態においては、Y信号タイミング制御部42は、3本のコモン線Y0〜Y2と接続され、セレクタ44が、残りの5本のコモン線Y3〜Y7と接続される。
【0036】
Y信号タイミング制御部42は、3本のコモン線Y0〜Y2、および、セレクタ44に接続された信号線(符号48参照)の4本の信号線を時分割に駆動することになる。Y信号タイミング制御部42は、セレクタ44に選択信号を出力し、コモン線Y3〜Y7の何れか一本のコモン線Yi(i=3〜7)を選択させる。
【0037】
図5は、本実施の形態にかかるコモン線の時分割駆動を説明するタイミングチャートである。図5に示すように、本実施の形態では時分割数は4であり、第1フェーズ(図5におけるI)から第4フェーズ(図5におけるIV)のそれぞれで、何れかのコモン線がハイレベルとなっている。
【0038】
Y信号タイミング制御部42およびセレクタ44により、第1フェーズではコモン線Y0がハイレベル、第2フェーズではコモン線Y1がハイレベル、第3フェーズではY2がハイレベル、第4フェーズでは、コモン線Y3〜Y7のうちセレクタ44で選択されたいずれかのコモン線Yi(i=3〜7)がハイレベルとなる。
【0039】
すなわち、本実施の形態においては、コモン線Y0〜Y2については、それぞれ、当該コモン線に接続された電流引き込みのためのトランジスタTRbの能力に応じて、それぞれのコモン線に接続されたLEDを点灯させることができる。たとえば、TRbが、8つ(すなわちコモン線に接続された全ての)LEDを点灯可能であれば、第1フェーズ〜第3フェーズのそれぞれで、C1〜G1、G#1〜D#2およびE2〜B2の全てのLEDを同時に点灯させることができる。
【0040】
その一方、コモン線Y3〜Y7については、第4フェーズにおいて、何れか1つのコモン線のみがハイレベルとなり、そのコモン線に接続されたLEDのみが点灯可能となる。
【0041】
前述したように、本実施の形態では、伴奏エリアで同時に発音される楽音は最高で4音、メロディエリアで同時に発音される楽音は1音(単音)であり、コモン線Y0〜Y2に接続されるLEDが取り付けられた鍵(音高:C1〜B2)が伴奏エリアに属する鍵であり、コモン線Y3〜Y7に接続されるLEDが取り付けられた鍵(音高:C3〜C6)がメロディエリアに属する鍵である。
【0042】
したがって、本実施の形態によれば、メロディエリアに属する鍵、つまり、コモン線Y3〜Y7に接続された鍵については、同時に単音しか発音されず、したがって、メロディエリアに属する鍵については、同時には単一のLEDを点灯すればよい。そこで、本実施の形態においては、第4フェーズにおいて、コモン線Y3〜Y7のうち、発音すべき鍵(点灯すべき鍵)のLEDが接続されたコモン線をセレクタ44によって選択し、選択されたコモン線のみをハイレベルとする。
【0043】
以下、伴奏エリアにおいて、「Fmaj7」を押鍵させるべく、「Fmaj7」を構成する鍵(F1、A1、C2、E2)のLEDを点灯し、メロディエリアにおいて、「A4」を押鍵させるべく、「A4」の鍵のLEDを点灯する場合について、図6〜図9および図10を参照して説明する。
【0044】
図6〜図9は、第1フェーズ〜第4フェーズのそれぞれにおいて、点灯すべきLEDを説明するLEDマトリクスのブロックダイヤグラム、図10は、コモン線およびデータ線のタイミングチャートである。図6〜図9に示す第1フェーズ〜第4フェーズフェーズは、それぞれ、図10の左側のI〜IVで示すフェーズに相当する。
【0045】
図6および図10に示すように、第1フェーズにおいては、Y信号タイミング制御部42は、コモン線Y0をハイレベルとして、C1〜G1に対応するLEDを点灯可能とする(図6の符号600参照)。X信号タイミング制御部46は、第1フェーズでは、CPU12からの鍵指定情報にしたがって、F1のLED(符号601参照)を点灯させるために、データ線X5をローレベルにする。これにより、F1のLEDが点灯する。
【0046】
次いで、図7および図10に示すように、第2フェーズにおいては、Y信号タイミング制御部42は、コモン線Y1をハイレベルとして、G#1〜D#2に対応するLEDを点灯可能とする(図7の符号700参照)。X信号タイミング制御部46は、第2フェーズでは、CPU12からの鍵指定情報にしたがって、A1のLED(符号701参照)およびC2のLED(符号702参照)を点灯させるために、データ線X1およびX4をローレベルにする。これにより、A1およびC2のLEDが点灯する。
【0047】
図8および図10に示すように、第3フェーズにおいては、Y信号タイミング制御部42は、コモン線Y2をハイレベルとして、E2〜B2に対応するLEDを点灯可能とする(図8の符号800参照)。X信号タイミング制御部46は、第3フェーズでは、CPU12からの鍵指定情報にしたがって、E2のLED(符号801参照)を点灯させるために、データ線X0をローレベルにする。これにより、E2のLEDが点灯する。
【0048】
第4フェーズは、メロディエリアの鍵のLEDを点灯する。図9および図10に示すように、第4フェーズにおいては、Y信号タイミング制御部42は、発音すべき鍵のLEDが接続されたコモン線を選択して、選択信号をセレクタ44に出力する。この例では、Y信号タイミング制御部42は、Y3〜Y7のうち(符号900参照)、A4のLEDが接続されたコモン線Y5が選択されるように、制御信号をセレクタ44に出力する。これにより、セレクタからのコモン線Y3〜Y7のうち、コモン線Y5がハイレベルとなり、E4〜B4に対応するLEDが点灯可能なる(符号901参照)。X信号タイミング制御部46は、第4フェーズでは、CPU12からの鍵指定情報にしたがって、A4のLED(符号902参照)を点灯させるために、データ線X5をローレベルにする。これにより、A4のLEDが点灯する。
【0049】
図10において、次の第1フェーズから第3フェーズ(右側のI〜III)においても、伴奏エリアにおいては同様の押鍵をさせたい場合には、第1フェーズから第3フェーズでは、同様のコモン線がハイレベルになり、かつ、同様のデータ線がローレベルとなる。
【0050】
その一方、図10において、次の第4フェーズ(右側のIV)は、C5を点灯させるときのコモン線およびデータ線の状態を示している。
【0051】
この場合には、Y信号タイミング制御部42は、C5のLEDが接続されたコモン線Y6が選択されるように、制御信号をセレクタ44に出力する。これにより、セレクタからのコモン線Y3〜Y7のうち、コモン線Y6がハイレベルとなり、C5〜G5に対応するLEDが点灯可能なる。また、X信号タイミング制御部46は、第4フェーズでは、CPU12からの鍵指定情報にしたがって、C5のLED(符号902参照)を点灯させるために、データ線X0をローレベルにする。これにより、C5のLEDが点灯する。
【0052】
本発明においては、Y個のコモン線よりも少ないN個のフェーズで、時分割数をNとしてコモン線を駆動するときに、N=P+QとなるようなP個のフェーズでは、P個のコモン線を順次駆動し、かつ、Q=P−NであるQ個のフェーズで、Y−P個のコモン線の何れかを駆動する。
【0053】
これにより、LEDマトリクス回路において、同時に点灯される数を確保すべきLEDは、上記P個のコモン線に接続し、その一方、同時に点灯させる数が制限できるLEDについては、残りのY−P個のコモン線に接続することで、マトリクス回路に接続されるコモン線を増大させることなく、適切にLEDを点灯させることが可能となる。
【0054】
たとえば、Y=8、N=4、P=3、Q=1としたものが第1の実施の形態である。第1の実施の形態によれば、複数のLEDを同時に点灯しなければならない鍵域のLEDについては、1つのコモン線に1フェーズを与え、その一方、単一のLEDを点灯させれば良い鍵域のLEDについては、複数のコモン線に1フェーズを与え、当該複数のコモン線から1つのコモン線を選択する。
【0055】
つまり、本実施の形態においては、電子楽器の鍵盤が2つの鍵域に分割され、同時に点灯すべきLED数を制限しない第1の鍵域(伴奏エリア)については、当該鍵のLEDに接続されたコモン線のそれぞれに1フェーズを与える。その一方、同時に点灯すべきLED数が制限された(たとえば、同時に点灯するLED数が1)第2の鍵域(メロディエリア)については、LEDに接続されたコモン線の数より少ないフェーズを与え、与えられたフェーズにおいて、選択されたコモン線のみをハイレベルとして、コモン線に接続されたLEDを点灯可能とする。
【0056】
これにより、時分割数を多くすることなく、かつ、多数のLEDを点灯させる鍵域の鍵について適切にLEDを点灯させることが可能となる。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態においては、Y=8(8つのコモン線)、N=4(4つのフェーズ)、P=3(3つのコモン線にそれぞれ1つのフェーズを与える)およびQ=1(残りの5つのコモン線の何れかに1つのフェーズを与える)とした。第2の実施の形態においては、Y=8、N=4とする点は第1の実施の形態と同様であるが、P=2(2つのコモン線のそれぞれに1フェーズを与える)およびQ=2(残りの6本のコモン線に2つのフェーズを与える)としている。
【0058】
図11は、第2の実施の形態にかかるLED駆動回路の構成を示すブロックダイヤグラムである。図11に示すように、第2の実施の形態にかかる駆動回路22も、Y信号(コモン線)タイミング制御部142、セレクタ144およびX信号(データ線)タイミング制御部46を有する。
【0059】
第2の実施の形態においては、Y信号タイミング制御部142は、2本のコモン線Y0、Y1と接続され、セレクタ144が、残りの6本のコモン線Y2〜Y7と接続される。
【0060】
Y信号タイミング制御部142は、2本のコモン線Y0〜Y1、および、セレクタ44に接続された2つの信号線(符号148、149参照)の4本の信号線を時分割に駆動することになる。Y信号タイミング制御部142は、セレクタ44に選択信号を出力し、第3フェーズおよび第4フェーズのそれぞれにおいて、コモン線Y2〜Y7の何れか一本のコモン線を選択させる。
【0061】
図12は、第2の実施の形態にかかるコモン線の時分割駆動を説明するタイミングチャートである。図12に示すように、第2の実施の形態においても時分割数は4であり、第1フェーズ(図12におけるI)から第4フェーズ(図12におけるIV)のそれぞれで、Y2〜Y7の何れかのコモン線がハイレベルとなっている。
【0062】
Y信号タイミング制御部42およびセレクタ44により、第1フェーズではコモン線Y0がハイレベル、第2フェーズではコモン線Y1がハイレベル、第3フェーズでは、Y2〜Y7のうち、セレクタ144で選択されたいずれかのコモン線Yi(i=2〜7)がハイレベル、第4フェーズでは、コモン線Y2〜Y7のうちセレクタ144で選択されたいずれかのコモン線Yj(j=2〜7)がハイレベルとなる。ここで、YiとYjは、同じコモン線であっても良いし、異なるコモン線であっても良い。
【0063】
第2の実施の形態においても、電子楽器の鍵盤が2つの鍵域に分割され、同時に点灯すべきLED数を制限しない鍵域については、当該鍵のLEDに接続されたコモン線のそれぞれに1フェーズを与える。その一方、同時に点灯すべきLED数が制限された鍵域については、LEDに接続されたコモン線の数より少ないフェーズを与え、与えられたフェーズにおいて、選択されたコモン線のみをハイレベルとして、コモン線に接続されたLEDを点灯可能とする。
【0064】
これにより、時分割数を多くすることなく、かつ、多数のLEDを点灯させる鍵域の鍵について適切にLEDを点灯させることが可能となる。特に、第2の実施の形態では、点灯すべきLED数が制限される第2の鍵域のLEDについても、複数のフェーズを与えているため、第1の実施の形態と比較してより多く(たとえば、2つ)のLEDを同時に点灯することが可能となる。
【0065】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0066】
たとえば、上記実施の形態においては、コモン線がハイレベルであるときにアクティブであり、かつ、データ線がローレベルであるときにアクティブであったがこれに限定されるものではなく、双方がハイレベル或いは双方がローレベルであるときにアクティブであるように構成しても良く、また、コモン線がローレベルでアクティブ、かつ、データ線がハイレベルのときにアクティブであるように構成しても良い。
【0067】
また、第1の実施の形態においては、Y=8、N=4、P=3、Q=1であり、第2の実施の形態においては、Y=8、N=4、P=2、Q=2であるが、時分割数Nや、1フェーズが与えられるコモン線の数Pなどはこれに限定されるものではない。また、コモン線の数(Y=8)や、データ線の数(X=8)も、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0068】
さらに、前記実施の形態においては、LED駆動回路22を別途設けているが、CPU12にLED駆動回路22の機能を実現させても良い。押鍵検出回路24についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】図2は、本実施の形態にかかるLED駆動回路およびLEDマトリクス回路を示すブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、本実施の形態にかかるLEDマトリクス回路の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図4】図4は、本実施の形態にかかるLED駆動回路をより詳細に示すブロックダイヤグラムである。
【図5】図5は、本実施の形態にかかるコモン線の時分割駆動を説明するタイミングチャートである。
【図6】図6は、第1フェーズにおいて、点灯すべきLEDを説明するLEDマトリクスのブロックダイヤグラムである。
【図7】図7は、第2フェーズにおいて、点灯すべきLEDを説明するLEDマトリクスのブロックダイヤグラムである。
【図8】図8は、第3フェーズにおいて、点灯すべきLEDを説明するLEDマトリクスのブロックダイヤグラムである。
【図9】図9は、第4フェーズにおいて、点灯すべきLEDを説明するLEDマトリクスのブロックダイヤグラムである。
【図10】図10は、コモン線およびデータ線のタイミングチャートである。
【図11】図11は、第2の実施の形態にかかるLED駆動回路の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図12】図12は、第2の実施の形態にかかるコモン線の時分割駆動を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10 電子楽器
11 鍵盤
12 CPU
14 ROM
16 RAM
18 楽音発生回路
20 サウンドシステム
22 LED駆動回路
24 押鍵検出回路
30 鍵
32 LED
40 LEDマトリクス回路
42 Y信号(コモン線)タイミング制御部
44 セレクタ
46 X信号(コモン線)タイミング制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y個のコモン線の何れか、および、X個のコモン線の何れかと接続されたLEDを含むマトリクス状のLEDマトリクス回路を駆動し、N個の時分割フェーズの各々で何れかのコモン線をアクティブにするとともに、各フェーズにおいて何れかのデータ線をアクティブにすることで、アクティブとなったコモン線およびデータ線に接続されたLEDを点灯させるLED制御装置であって、
前記Y個のコモン線のうちN=P+QとなるP個のコモン線と接続されるとともに、Q個の制御線を出力するコモン線タイミング制御手段であって、P個のコモン線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、かつ、Q個の制御線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、1フェーズずつ前記P個のコモン線およびQ個の制御線を順次アクティブにすることにより、N時分割で前記LEDマトリクス回路を駆動するコモン線タイミング制御手段と、
前記Q個の制御線の出力を受け入れ、かつ、前記(Y−P)個のコモン線と接続されたセレクタであって、前記(Y−P)個のコモン線の何れかを割り当てるための前記コモン線タイミング制御回路からの選択信号にしたがって、前記Qフェーズのそれぞれにおいて前記(Y−P)個のコモン線のうちの何れかを選択する選択手段と、
前記X本のデータ線に接続され、前記フェーズの各々において、前記アクティブになったコモン線に接続されたLEDのうち、点灯すべきLEDと接続されたデータ線をアクティブにするデータ線タイミング制御手段と、を備えたことを特徴とするLED制御装置。
【請求項2】
前記データ線タイミング制御手段が、前記Qフェーズのそれぞれにおいて、単一のデータ線をアクティブにするように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のLED制御装置。
【請求項3】
N=4であり、かつ、P=3、Q=1であることを特徴とする請求項1または2に記載のLED制御装置。
【請求項4】
N=4であり、かつ、P=2、Q=2であることを特徴とする請求項1または2に記載のLED制御装置。
【請求項5】
楽曲の音高および発音タイミングを示す演奏データを記憶した記憶装置、
鍵盤、
鍵盤において、押鍵された鍵にしたがった音高の楽音を発生する楽音発生手段、
前記鍵盤の鍵の各々の内部に、或いは、当該鍵の各々に隣接して配置されたLEDであって、Y個のコモン線の何れか、および、X個のコモン線の何れかと接続されたLEDを含むマトリクス状のLEDマトリクス回路、並びに、
N個の時分割フェーズの各々で何れかのコモン線をアクティブにするとともに、各フェーズにおいて何れかのデータ線をアクティブにすることで、アクティブとなったコモン線およびデータ線に接続されたLEDを点灯させるLED制御装置であって、
前記Y個のコモン線のうちN=P+QとなるP個のコモン線と接続されるとともに、Q個の制御線を出力するコモン線タイミング制御手段であって、P個のコモン線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、かつ、Q個の制御線のそれぞれに時分割フェーズの1フェーズを割り当て、1フェーズずつ前記P個のコモン線およびQ個の制御線を順次アクティブにすることにより、N時分割で前記LEDマトリクス回路を駆動するコモン線タイミング制御手段と、
前記Q個の制御線の出力を受け入れ、かつ、前記(Y−P)個のコモン線と接続されたセレクタであって、前記(Y−P)個のコモン線の何れかを割り当てるための前記コモン線タイミング制御回路からの選択信号にしたがって、前記Qフェーズのそれぞれにおいて前記(Y−P)個のコモン線のうちの何れかを選択する選択手段と、
前記X本のデータ線に接続され、前記フェーズの各々において、前記アクティブになったコモン線に接続されたLEDのうち、点灯すべきLEDと接続されたデータ線をアクティブにするデータ線タイミング制御手段と、を有するLED制御装置、を備え、
前記記憶装置に記憶された演奏データに基づき、前記LED制御装置が、前記前記押鍵すべき鍵に対応するLEDを点灯し、かつ、押鍵された鍵にしたがった音高の楽音を、前記楽音発生手段が発生するように構成されたことを特徴とする電子楽器。
【請求項6】
前記鍵盤において、前記P個のコモン線と接続されるLEDに対応する鍵の第1の鍵域と、前記Y−P個のコモン線と接続されるLEDに対応する鍵の第2の鍵域とに分割され、
前記楽音発生装置が、前記第1の鍵域については、第1の音色で、同時に複数の楽音を発生することが、前記第2の鍵域については、第2の音色で、同時にQ個の楽音を発生することが可能であることを特徴とする請求項5に記載の電子楽器。
【請求項7】
前記第1の鍵域が、前記鍵盤における低音側であり、前記第2の鍵域が、前記鍵盤における高音側であることを特徴とする請求項6に記載の電子楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−25590(P2009−25590A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189124(P2007−189124)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】