説明

電子楽器

【課題】 ステージでの照明が演奏に従って変わって行く状態を、予めシミュレーションによって確かめることができる。
【解決手段】 メモリ6が、音楽情報と、これに対応した照明手段を制御するための照明情報とを時系列に記憶している。CPU2が、メモリ6から音楽情報を読み出し、読み出された音楽情報を視覚化するための音楽情報表示データを生成し、ディスプレイコントローラ14に供給する。CPU2は、メモリ6から照明情報も読み出し、視覚化するための照明情報表示データを生成し、ディスプレイコントローラ14に供給する。ディスプレイコントローラ14は、音楽情報表示データと照明情報表示データとに基づく音楽情報表示と照明情報表示とを、ディスプレイ34に表示する。音楽情報表示と照明情報表示とは、マーカー44、46によって同一時間軸上で視認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器に関し、特に、光による演出も行えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光による演出も行える自動演奏装置として特許文献1に開示されたものがある。特許文献1の技術では、自動演奏データに基づいて自動的に演奏を行う際に、発音されるごとに、演奏装置に設けた発光素子が発光する。発光素子は、R、G、Bそれぞれが複数設けられており、それらのいずれの色のものが、どの程度の光量で発光するかは、演奏データの音高情報と音色データとに基づいて定められる。
【0003】
【特許文献1】特許第3388530号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術を応用して、例えばステージを照明装置で照明した状態で、自動演奏を行うことも考えられる。実際にステージ等で演奏を行う前に、演奏に応じてどのように照明されるかシミュレーションを試みたいことがある。しかし、特許文献1の技術を応用したものでは、このようなシミュレーションを行うことができない。
【0005】
本発明は、演出用の照明を演奏に従って変更する場合に、予めシミュレーションを行える電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電子楽器では、音楽情報記憶手段に音楽情報を時系列に記憶してある。この音楽情報記憶手段から前記音楽情報を音楽情報読み出し手段が読み出す。読み出された前記音楽情報を視覚化するための音楽情報表示データを前記音楽情報に基づいて音楽情報視覚化手段が生成する。音楽と共に使用される演出用の照明手段を制御するための照明情報を時系列に照明情報記憶手段に記憶してある。この照明情報記憶手段から前記照明情報を照明情報読み出し手段が読み出す。読み出された前記照明情報を視覚化するための照明情報表示データを、前記照明情報に基づいて照明情報視覚化手段が生成する。前記音楽情報表示データと前記照明情報表示データとに基づき音楽情報表示と照明情報表示とが一つの表示手段に表示される。所定の演奏位置を前記音楽情報表示上と前記照明情報表示上とでマーカ表示手段が示す。
【0007】
このように構成された電子楽器では、表示手段には、時系列的に音楽情報表示が視覚的に表示され、かつ時系列的に照明情報表示が視覚的に表示されている。しかも、マーカ表示手段によって所定の演奏位置での音楽情報表示と照明情報表示との対応関係を把握した状態で視認できるので、どのような音楽情報のときに、どのような照明がなされるかを視覚によって確認することができ、例えばステージ演奏を行う前に、どのように照明されるかを事前にシミュレーションすることができる。
【0008】
前記音楽情報は、自動伴奏パターンまたは自動演奏データとすることができる。この場合、前記音楽情報視覚化手段は、前記音楽情報表示データとして楽譜表示データを生成し、表示手段には楽譜が表示される。表示される楽譜としては、例えば音符またはピアノロールを使用することができる。自動伴奏パターンや自動演奏データが楽譜表示されているので、どのような演奏が行われているかを視覚によって容易に確認することができる。
【0009】
前記音楽情報はオーディオデータとすることができる。この場合、前記音楽情報視覚化手段は、前記音楽情報表示データとして波形図表示データを生成し、表示手段には波形図が表示される。波形図を表示することにより、伴奏や演奏の音量と照明の状態との関係を容易に確認することができる。
【0010】
前記照明情報視覚化手段は、前記照明情報表示データとして図表表示データを生成し、前記表示手段は図表を表示することができる。このように構成すると、自動伴奏や自動演奏のような音楽情報の発音タイミングと照明の変化のタイミングとの関係を容易に理解することができるし、音楽情報や照明の状態がどのように変化していくかを示した上で、所定の演奏位置での音楽情報及び照明がどのようなものであるかを把握することができる。
【0011】
本発明の他の態様の電子楽器は、上記態様の電子楽器と同様に、音楽情報記憶手段と、音楽情報読み出し手段と、音楽情報視覚化手段と、照明情報記憶手段と、照明情報読み出し手段と、照明情報視覚化手段と、を備え、前記音楽情報表示データと前記照明情報表示データとに基づく音楽情報表示と照明情報表示とが一つの表示手段に表示される。マーカ表示手段が、所定の演奏位置を前記音楽情報表示データ上で示す。前記照明情報視覚化手段は、前記照明情報表示データとして、前記照明情報で制御される各種照明手段の点灯、消灯態様を模擬するグラフィック表示データを生成する。このように構成すると、音楽情報の或る演奏状態のときには、実際の照明がどのような状態であるかを模擬して表示されているので、実際の照明の状態を確認することができ、照明状態を直感的に理解することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、演出用の照明が演奏に従って変わって行く状態を、予めシミュレーションによって確かめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態の自動伴奏装置は、例えばステージ演奏において使用されるもので、図1に示すように、制御手段、例えばCPU2を有している。CPU2は、バス4を介してメモリ6、鍵盤8、ユーザーインターフェース10、音源12、ディスプレイコントローラ14に接続されている。
【0014】
メモリ6には、自動伴奏パターンデータベースと、照明パターンデータベースとが記憶されており、自動伴奏パターン記憶手段及び照明制御パターン記憶手段として機能する。
【0015】
自動伴奏パターンデータベースには、様々な自動伴奏パターンが記憶されている。各自動伴奏パターンは、複数の基本スタイル、例えばロック1、ロック2、ポップ1、ポップ2、サンバ、ルンバごとに設けられ、各スタイルの中に、イントロ、メイン、フィルイン、エンディング等のディビジョンと、各ディビジョンに対するアレンジと呼ばれるバリエーションとが設けられ、1つのスタイルに対して、ディビジョン*アレンジ分のパターンが、自動伴奏パターンデータベースに記憶されている。これらディビジョン*アレンジ分のパターンそれぞれは、時系列的に内容が変化するものである。
【0016】
ユーザーインターフェース10は、例えば複数の選択スイッチからなり、上述したスタイル選択スイッチと、イントロ、メイン、フィルイン、エンディングのディビジョン選択スイッチと、複数、例えば二つのアレンジであるアレンジA、アレンジBの選択スイッチとを有している。これらスイッチの選択によって対応する自動演奏パターンをCPU2がメモリ6から読み出し、音源12に供給する。音源12としては、波形データを読み出して加工し出力するPCM音源や、物理現象を模擬するDSP音源などを用いることができる。音源12が、これに供給された自動演奏パターンに基づく発音データをD/A変換器16に供給する。D/A変換器16は、このデータからアナログ自動伴奏信号を生成する。このアナログ自動伴奏信号は、この自動伴奏装置の外部に設けたアンプ18で増幅され、スピーカ20に供給される。ユーザーインターフェース10が自動伴奏パターン指示手段として機能し、CPU2が自動伴奏パターン読み出し手段及び自動伴奏パターン出力手段として機能する。音源12、D/A変換器16が、自動伴奏手段、例えば楽音生成手段として機能する。
【0017】
具体的には、演奏開始前に、スタイル選択スイッチによって演奏しようとするスタイルを選択し、次に、イントロのディビジョン選択スイッチを操作すると、所定小節のイントロパターンが始まり、その後、対応するメインのディビジョンに移行する。この自動伴奏中に、ディビジョン選択スイッチを操作すると、自動伴奏パターンが切り換えられる。或いはアレンジA、Bの選択スイッチを操作すると、現在のディビジョンの別のアレンジに変更される。
【0018】
このように自動伴奏が行われている最中に、鍵盤8の所定の領域、例えば左手の操作領域が操作されると、CPU2は、和音検出を行い、演奏中の伴奏に対してリアルタイムで変更を行う。例えば、和音情報に基づいてコードのルートに従って、パターンを移調したり、或いは和音のタイプ(メジャー、マイナー、セブンス等の種別)に基づいて種々の変更を行うことができる。或いは、コードのベースや転回形に基づいて、読み出したパターンを変更する場合もある。このように、鍵盤8が和音情報入力手段として機能し、CPU2は、自動伴奏パターン変更手段としても機能する。
【0019】
メモリ6に記憶されている照明パターンデータベースには、各自動伴奏パターンに対応して照明パターンが記憶されている。照明パターンは、照明手段、例えばプロジェクタ22、スモーク発生装置24、複数のライト26を制御するものである。これらは、予めステージの異なる位置に配置されている。プロジェクタ22は、GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)28によって制御され、GPU28は、CPU2が読み出した照明パターンに従ってプロジェクタ22を制御する。スモーク発生装置24及び複数のライト26は、照明制御用のDMX信号の形式でCPU2から制御される。複数のライト26は、ステージのそれぞれ異なった位置に配置され、様々な色で発光する。ライト26は、発光するものが制御され、また発光したものでは、発光光量が制御される。CPU2は、照明制御パターン読み出し手段及び照明制御パターン出力手段としても機能する。
【0020】
図4に複数のライト26のうちの一つを制御するための照明パターンの一部を示す。このパターンは、1小節の間の発光色の変化を制御する部分である。ここで制御対象となるライトは、赤色、緑色、青色のLEDを多数備え、同じ色のLED群ごとに0から255のDMX信号の数値で輝度を制御し、全体として様々な色での発光を可能とするものである。DMX512規格では全部で512チャンネルの制御が可能であるので、そのうち3チャンネルを使い、例えば赤色255、緑色255、青色255の数値を与えれば明るい白色光となり、赤色128、緑色128、青色0の数値を与えればやや暗い黄色の発光となる。またTPQN(1つの4分音符の長さ)は96Tickである。
【0021】
照明パターンは、それぞれ自動伴奏パターンに対応しているので、自動伴奏パターンと同様に、上述したスタイルごとに設けられ、各スタイルの中に上述したのと同様にディビジョン*バリエーションの数の照明パターンを有している。ディビジョン*バリエーションの数の照明パターンでは、上述したプロジェクタ22、スモーク発生装置24、各ライト26が予め定めた位置に配置されていることを前提とし、各ライトに対するパターンでは、いずれの位置のライト26を対応する自動伴奏パターンのどの音の発生タイミングでどのような光量でどのような色で発光させるかや、プロジェクタ22に対応する自動伴奏パターンのどの音の発生タイミングでどのような映像をプロジェクタ22に再生するかや、スモーク発生装置24に対応する自動伴奏パターンのどの音の発生タイミングでスモーク発生装置24にスモークを発生させ、どの音の発生タイミングでスモークを停止させるかが、規定されている。即ち、照明パターンも時系列で記憶されている。そして、スタイル選択スイッチによって自動伴奏のスタイルが選択されたとき、選択されたスタイルに対応する照明パターンが選択され、次に、イントロのディビジョン選択スイッチを操作すると、選択されたスタイルのイントロ用の照明パターンに従って照明が制御され、その後、選択されたスタイルのメインのディビジョンの照明パターンが実行される。
【0022】
なお、各ディビジョン*バリエーション数の自動伴奏パターンは、これらに対応する各ディビジョン*バリエーション数の照明パターンと、同じ時間長を有し、自動伴奏の進行に従って、照明の制御態様が、上述したように変更される。
【0023】
例えば、上述した図4は照明パターンの一部であり、1小節の間の発光色の変化を制御する部分であるが、全体として4小節すなわち96×4×4=1536Tickに渡って照明を制御するパターンであれば、この照明パターンが対応する自動伴奏パターンもまた同様に1536Tickに渡って自動伴奏を制御するよう構成される。図6は、図4の照明パターンが対応する自動伴奏パターンの一部であり、1小節のドラム・パートの中のバスドラムとスネアドラムの発音を指示する部分である。数値は、発音の大きさ(MIDI信号におけるノート・オン・ベロシティ値、0〜127)を表しており、発音時間はテンポに関係なく予め所定値に決められている。
【0024】
自動伴奏中に、ディビジョン選択スイッチを操作すると、操作されたディビジョン選択スイッチに対応する伴奏パターンに変更されるが、同時に、照明パターンも、変更された伴奏パターンに対応するものに切り換えられる。
【0025】
また、上述したように、CPU2が和音を検出したとき、その検出された和音に従ってリアルタイムで照明パターンをCPU2が変更する。例えば、各ライト26が発生している色を変化させたり、光量を変化させたりする。従って、CPU2は照明制御パターン変更手段としても機能する。なお、ユーザーインターフェース10には、テンポの調整用の操作子も含まれており、これが調整されることによって、そのとき演奏されている自動伴奏パターンのテンポが変更され、同時に、そのとき実行されている照明パターンもテンポの変化に同期して変化する。また、テンポが速くなったときには照明の点灯回数を間引いたり、テンポが遅くなったときには点灯回数を増やしたりして、最も適正な演出効果が得られるよう、照明パターンを変更する。
【0026】
図4に示した照明パターンが照明制御パターン変更手段によって変更された結果を、図5に示す。これは、同じ照明パターンであっても、和音検出によってメジャーな和音からマイナーな和音へ変わったことが検出された場合の処理である。この場合、照明制御パターン読み出し手段によって読み出された照明パターンに対して、照明制御パターン変更手段は赤色LED群制御用のDMX信号の数値を128減じ(ただし下限値は0)、緑色LED群制御用の数値は128増やし(ただし上限値は255)、照明制御パターン出力手段が変更されたパターンを出力する。照明パターンの変更は、上述のように数値演算で行ってもよいし、テーブル参照で変換してもよい。このように構成することで、自動伴奏に対応し、より複雑に変化する照明パターンを得ることができる。
【0027】
図2に、この自動伴奏装置のCPU2が行う処理をフローチャートで示す。CPU2は、図2の左側に示す自動伴奏タスクと、右側に示す照明制御タスクとを実行する。ユーザーインターフェース10のスタイル選択スイッチ等を操作してスタイルを選択し(ステップS2)、さらに伴奏構成の選択、例えばディビジョンやバリエーションの選択を行うと(ステップS8)、自動伴奏タスクでは、メモリ6の自動伴奏パターンデータベースから対応する自動伴奏パターンを選択する(ステップS4)。同様に、照明制御タスクでは、照明パターンデータベースから対応する照明パターンを選択する(ステップS6)。
【0028】
次に、テンポの調整(ステップS10)が行われるか、または鍵盤8からの演奏入力(ステップS12)に基づく和音解析(ステップS14)が行われると、自動伴奏タスクでは伴奏パターンの変更が行われ(ステップS16)、照明制御タスクでは照明パターンの変更が行われる(ステップS18)。
【0029】
自動伴奏タスクでは、自動伴奏クロックに従って伴奏パターンが再生され(ステップS20)、照明制御タスクでは、自動伴奏クロックに従って照明パターンが再生される(ステップS22)。次に、自動伴奏タスクでは、演奏情報あるいは伴奏構成が更新されたか判断し(ステップS24)、更新されていなければ、ステップS20から再び実行し、更新されていれば、ステップS4から再び実行する。これにより伴奏パターンが変更されたり新たな伴奏パターンが選択されたりする。同じく照明制御パターンでは、演奏情報あるいは伴奏構成が更新されたか判断し(ステップS26)、更新されていなければ、ステップS22から再び実行し、更新されていれば、ステップS6から再び実行する。これにより照明パターンが変更されたり新たな照明パターンが選択されたりする。
【0030】
バス4には、上述したようにディスプレイコントローラ14が接続され、このディスプレイコントローラ14は、CPU2からの指示によって、この自動伴奏装置が備えるディスプレイ34に、図3に示すような画像を表示する。
【0031】
この画像では、自動伴奏される自動伴奏パターンの楽譜を表示する楽譜表示窓36と、この自動伴奏パターンに対応して行われる照明パターンを表示する照明パターン表示窓38と、自動伴奏されている自動伴奏音の波形表示窓40と、選択されている照明パターンによってどのように照明が変更されるかを表示する照明シミュレーション窓42とが、表示される。
【0032】
照明シミュレーション窓42には、ステージが模式的に示され、図3では、このステージ上の異なる位置に、合計6つのライト26が、それぞれ符号1乃至6を付して示されている。この例では、ステージの天井側に符号1乃至3を付されたライト26が間隔をおいて、ステージに向けて照明するように配置され、ステージ側に天井側を向いて符号4乃至6が付されたライト26が並べて配置されていることが示されている。これらライト26が発光している状態で、どのように照明がなされているかも、この照明シミュレーション窓42に表示されている。図3の例では、天井側の符号2、3が付されたライト26が異なる色でステージ側を照明し、ステージ側の符号4、6が付されたライト26が天井側を照明していることを示している。即ち、照明状態がグラフィック的に視覚化されて表示されている。
【0033】
符号1乃至6のライト26がどのように照明を行うかを、照明パターン表示窓38に、符号1乃至6のライト26にそれぞれ対応させて、図形表示的に、具体的には表形式で表示されている。また、自動伴奏楽譜表示窓36には、自動伴奏で使用される例えばコードとベースとドラムとの楽譜が表示されている。照明パターン表示窓38の照明パターンの各要素と自動伴奏楽譜表示窓の楽譜の各音符とは、対応しており、例えば符号1、2が付されたライト26は、それぞれバスドラムとスネアドラムの発音タイミングに同期して照明状態が変化し、例えば斜線を付した期間だけ発光し、符号3が付されたライト26は、ベースの発音タイミングに同期して照明状態が変化、例えば斜線を付した期間だけ発光する。また、符号4、5、6が付されたライト26は、コードに応じて照明状態が変化し、例えば縦線の密度の変化で図示しているように光量が変化する。なお、符号1、2、3が付されたライト26では、発光期間を斜線を付して示したが、これらの期間を対応するライト26の発光色で示してもよい。また、符号4、5、6を付したライト26の光量の変化は、縦線の密度の変化で示したが、対応するライトの光量の変化に合わせて対応するライトの発光色の明度を変化させてもよい。
【0034】
照明パターン表示窓38と自動伴奏楽譜表示窓36と波形表示窓40とには、実行位置表示手段、例えばマーカ44、46、48が表示され、これらは、自動伴奏の進行に従って、その表示位置が連動して変更され、マーカ44は、符号1乃至6を付したライト26が現在どのような照明状態であるかを示し、マーカ46は、自動伴奏が現在楽譜上のどの位置を演奏しているかを示し、マーカ48は、自動伴奏波形のどの部分が演奏されているかを示している。これらマーカ44、46、48は、時間経過に従って同期して移動する。また、マーカ44の移動に従って、照明シミュレーション窓42では、照明状態が、マーカ44の位置の照明パターンに対応するように変化していく。例えば、図3では、マーカ44は、符号2、3、4、6が付されたライト26が照明していることを表しているが、照明シミュレーション窓42も、符号2、3、4、6が付されたライト26が照明している状態を表している。
【0035】
なお、図示していないが、和音情報、テンポまたはバリエーションの変更による自動伴奏音及び照明パターンが変更されると、照明パターン表示窓38と自動伴奏楽譜表示窓36と波形表示窓40と照明シミュレーション窓42とにおける表示も、変更されたものに修正される。従って、実際にステージで演奏を行う前に、テンポ、バリエーションの変更前と変更後の照明状態をシミュレーションしたり、和音情報の有無による照明状態の変化を、事前に確認することができる。実際に演奏する前にシミュレーションする場合、スモーク発生装置24やライト26へCPU2からDMX信号を供給する必要はない。
【0036】
このような表示は、CPU2が、メモリ6から自動伴奏パターン及び照明パターンを読み出したとき、この自動伴奏パターン及び照明パターンから視覚化可能な処理を行い、この処理されたデータをディスプレイコントローラ14に与えることによって、行われる。即ち、CPU2は、演奏情報及び照明情報の視覚化手段、マーカ表示手段として機能している。
【0037】
上記の実施形態では、照明制御用のDMX信号の形式でCPU2からスモーク発生装置24、ライト26を制御したが、スモーク発生装置と照明駆動電源とを電源スイッチを介して接続しCPU2が照明パターンに従って電源スイッチを制御してもよいし、ライトと照明駆動電源とを電圧調整器を介して接続しCPU2が照明パターンに従って電圧調整器を制御することもできる。また、プロジェクタ22、スモーク発生装置24、ライト26のうち少なくとも1つだけを制御するようにすることもできる。また、上記の実施形態26では、ライト26は、その照明する範囲を変更することの無い例を示したが、例えばライト26にパン、チルト機能を持たせ、照明する範囲を変更することもできる。更に、上記の実施形態では、自動伴奏パターンに基づく音の発生タイミングごとに照明の制御を変化させる例を示したが、或る自動伴奏パターンの間には、特定のライト26を点灯し続け、次に演奏される自動伴奏パターンの間には、別のライト26を点灯し続けるというような音の発生と無関係に照明を制御することもできる。また、上記の実施形態では、和音情報の入力に従って、自動伴奏パターンと照明パターンとを変更したが、自動伴奏パターンのみを変更し、照明パターンは変更しないようにすることもできる。
【0038】
上記の実施形態では、楽譜表示窓36と、照明パターン表示窓38と、波形表示窓40と、照明シミュレーション窓42とを表示したが、楽譜表示窓36及び波形表示窓40のいずれか一方と、照明パターン表示窓38及び照明シミュレーション窓42のいずれか一方とだけを、表示するように構成することもできる。また、楽譜表示窓36に代えてピアノロール表示窓を表示することもできる。上記の実施形態では、照明制御パターンや自動伴奏パターンは、予め作成されて記憶されているものを示したが、適当なユーザーインターフェース(入力手段)と記憶手段を追加して、ユーザが照明パターンや自動伴奏を作成したり編集したりできるような構成にしてもよい。
【0039】
上記の実施形態では、CPU2が和音を検出したとき、その検出された和音情報に従ってリアルタイムで自動伴奏パターンおよび照明パターンを変更したが、これに限らず、例えば演奏された特定のメロディやフレーズ、和音の進行パターンの検出により得られた情報に従って、自動伴奏パターンあるいは照明パターンを変更することもできる。このように構成することにより、演奏者の演奏表現を複雑な照明演出に反映できるという効果がある。
【0040】
上記の実施形態では、照明制御パターン出力手段が制御しようとするライトの数と実際に外部に設けられた複数のライトの数は一致していたが、これに限らず、ライトの数を減らすこともできる。この場合、DMX形式で出力される信号の中に、どのライトにも受信されない信号が含まれることになる。逆にライトの数を増やすこともできる。この場合、同じ受信チャンネル設定を施された複数のライトが存在することになり、それらが同じ仕様のライトであれば同じように発光するよう制御される。
【0041】
また、外部に設定される照明手段、例えばライトの数が異なるケースに対応するため複数の出力モードを、この自動伴奏装置に備え、設定されるライトの構成に応じてこれらを切り替えられるよう構成してもよい。例えば、第一の出力モードではライト2基を、第二の出力モードではライト4基を、第三の出力モードでは8基のライトを制御するものとし、予め出力モードによって異なる照明パターンを記憶しておき、出力モードに対応した照明パターンを読み出すこともできる。あるいは、一つの出力モードの照明パターン例えば第三の出力モードのための照明パターンのみを記憶するようにし、読み出した後に所定のルールに従って第二の出力モード用や第一の出力モード用に変更を加えてから出力してもよい。この変更は照明パターン読み出し手段で行われてもよいし、照明パターン変更手段で行われてもよい。これらのように構成すれば、自動伴奏と同期するだけでなく、ウォッシャー・ライトのみの小規模なステージから、ムービング・ヘッドやレーザーまで加わった大規模なステージまで、それぞれに最適化された照明演出が容易に得られるという効果がある。
【0042】
上記の実施形態では、自動伴奏パターンに1対1で対応した照明制御パターンを記憶させたが、これに限らず、照明パターンの数をディビジョン*バリエーションの数よりも少なくし、複数の自動伴奏パターンを同じ照明パターンに対応付けるようにしてもよい。このように構成すれば、照明パターンの記憶容量が大きくない場合にも対応できるという効果がある。
【0043】
上記の実施形態では、本発明を自動伴奏装置に実施したが、これに限ったものではなく、例えば自動演奏装置のような電子楽器に実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態の自動伴奏装置のブロック図である。
【図2】図1の自動伴奏装置のフローチャートである。
【図3】図1の自動伴奏装置が備えるディスプレイの表示を示す図である。
【図4】図1の自動伴奏装置において使用される照明パターンの一部を示す図である。
【図5】図4の照明パターンが和音検出に基づいて変更された状態を示す図である。
【図6】図4の照明パターンが対応する自動伴奏パターンの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
2 CPU(音楽情報読み出し手段、照明情報読み出し手段、音楽情報視覚化手段、照明情報視覚化手段、マーカ表示手段)
6 メモリ(音楽情報記憶手段、照明情報記憶手段)
34 ディスプレイ(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽情報を時系列に記憶した音楽情報記憶手段と、
この音楽情報記憶手段から前記音楽情報を読み出す音楽情報読み出し手段と、
読み出された前記音楽情報を視覚化するための音楽情報表示データを前記音楽情報に基づいて生成する音楽情報視覚化手段と、
音楽とともに使用される演出用の照明手段を制御するための照明情報を時系列に記憶した照明情報記憶手段と、
この照明情報記憶手段から前記照明情報を読み出す照明情報読み出し手段と、
読み出された前記照明情報を視覚化するための照明情報表示データを前記照明情報に基づいて生成する照明情報視覚化手段と、
を備え、
前記音楽情報表示データと前記照明情報表示データとに基づき音楽情報表示と照明情報表示とを一つの表示手段に表示するとともに、所定の演奏位置を前記音楽情報表示上と前記照明情報表示上とで示すマーカ表示手段を備えたことを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
請求項1記載の電子楽器において、
前記音楽情報は、自動伴奏パターンまたは自動演奏データであり、前記音楽情報視覚化手段は、前記音楽情報表示データとして楽譜表示データを生成するとともに、前記表示手段は前記楽譜表示データに基づいて楽譜を表示することを特徴とする電子楽器。
【請求項3】
請求項1記載の電子楽器において、
前記音楽情報はオーディオデータであり、前記音楽情報視覚化手段は、前記音楽情報表示データとして波形図表示データを生成するとともに、前記表示手段は前記波形図表示データに基づいて波形図を表示することを特徴とする電子楽器。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の電子楽器において、前記照明情報視覚化手段は、前記照明情報表示データとして図表表示データを生成するとともに、前記表示手段は前記図表表示データに基づいて図表を表示することを特徴とする電子楽器。
【請求項5】
音楽情報を時系列に記憶した音楽情報記憶手段と、
この音楽情報記憶手段から前記音楽情報を読み出す音楽情報読み出し手段と、
読み出された前記音楽情報を視覚化するための音楽情報表示データを前記音楽情報に基づいて生成する音楽情報視覚化手段と、
音楽とともに使用される演出用の照明手段を制御するための照明情報を時系列に記憶した照明情報記憶手段と、
この照明情報記憶手段から前記照明情報を読み出す照明情報読み出し手段と、
読み出された前記照明情報を視覚化するための照明情報表示データを前記照明情報に基づいて生成する照明情報視覚化手段と、
を備え、
前記音楽情報表示データと前記照明情報表示データとに基づき前記音楽情報表示と前記照明情報表示とを一つの表示手段に表示するとともに、所定の演奏位置を前記音楽情報表示データ上で示すマーカ表示手段を備え、
前記照明情報視覚化手段は、前記照明情報表示データとして、前記照明情報で制御される前記照明手段の該所定の演奏位置における点灯、消灯態様を模擬したグラフィック表示データを生成することを特徴とする電子楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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