説明

電子楽器

【課題】見本演奏に合わせた繰り返しの演奏練習において、演奏者の実演奏状況に応じて練習の効果の高めるように見本演奏のテンポを変更可能にする。
【解決手段】見本演奏の演奏データから現在発音すべき楽譜発音情報を取得し(S21)、見本演奏に合わせて入力された実演奏の演奏操作情報を取得する(S22)。これらの情報を元に見本演奏と実演奏のずれの個数を求め、蓄積する(S23)。これを曲が終了するまで繰り返す(S24)。曲終了の場合、それまでの見本演奏と実演奏のずれの個数を第1および第2の閾値と比較する。この比較結果に応じて次回レッスンでの見本演奏のテンポを遅く、変更しない、あるいは早く設定する(S25)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器に関し、特に、見本演奏に合わせて繰り返し演奏練習を行う場合、演奏者の実演奏状況により見本演奏のテンポを変えるようにして練習効果を高めることができるようにした電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
見本演奏を行い、これに合わせて演奏者に演奏操作させる練習機能を備えた電子楽器が存在する。この練習機能の比較判定処理では、見本演奏と演奏者による演奏(実演奏)を比較して両者のずれを算出し、このずれを元に実演奏状況を判定し、この判定結果を演奏者に提示する。
【0003】
図6は、従来の電子楽器における練習機能での実演奏状況判定処理を示すフローチャートである。ここでは、まず、予め記憶された見本演奏の演奏データから現在発音すべき楽譜発音情報を取得し(S61)、取得された楽譜発音情報による発音を行う。また、楽譜発音情報による発音に合わせて入力された演奏者の演奏操作情報(押鍵情報)を取得する(S62)。
【0004】
次に、S61で取得された楽譜発音情報とS62で取得された演奏操作情報の差異を算出し、差異情報として蓄積する(S63)。続いて曲終了か否かを判定する(S64)。S64で曲終了でないと判定された場合にはS61に戻り、S61からS63の処理を曲が終了するまで繰り返す。
【0005】
S64で、曲終了と判定された場合にはこれまでに蓄積された差異情報を計算して実演奏状況を判定し(S65)、この判定結果を演奏者に提示する。
【0006】
特許文献1には、電子楽器に予め記憶され、読み出された演奏データとこれに対して演奏手段での演奏者の演奏操作による演奏操作情報を比較して評価し、この評価結果を画像データとして表示する演奏教習装置が記載されている。この演奏演奏教習装置では、曲データの任意の範囲を選択することが可能な操作手段を備え、これにより部分的なきめ細かい評価ができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−58153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の練習機能により演奏練習を行う場合、練習に先立って予め見本演奏のテンポを設定し、該テンポでの見本演奏と実演奏を一回の演奏において比較判定し、この判定結果を提示しているだけである。
【0009】
このような練習機能を利用して練習を繰り返す場合、一回の演奏が終わったときに再びスタートから始めることになるが、繰り返しの練習でも見本演奏は予め設定されたテンポと同じテンポであり、演奏者はそれに合わせて前回と同じ練習を行うことになる。
【0010】
演奏者が明らかに練習不足である場合など、設定されたテンポに合わせて演奏することが困難な場合があり、このような場合でも繰り返し同じテンポで見本演奏が行われたのでは、練習にならず、練習効果が上がらないことがある。このような場合、新たにテンポを設定し直せばよいが、繰り返す度に一々テンポを設定し直すのは面倒であり、また、演奏者の演奏状況に合わせ、練習効果を高めるようにテンポを設定することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、見本演奏に合わせた繰り返しの演奏練習において、演奏者の実演奏状況に応じて練習の効果の高めるように見本演奏のテンポを変えることができる電子楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、見本演奏に合わせて所定のテンポで演奏者に繰り返し実演奏を行わせる練習機能を備えた電子楽器であって、見本演奏と実演奏とのずれの個数を計数する計数手段と、予め設定された第1の閾値および該第1の閾値より小さい第2の閾値と、前記計数手段が計数した前記ずれの個数を比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に応じて次回の練習時の前記所定のテンポを設定する設定手段を備え、前記設定手段は、次回の練習時の前記所定のテンポを、前記ずれの個数が第1の閾値以上の場合に今回より遅くなるように、前記ずれの個数が第1の閾値と第2の閾値の間にある場合に今回のままとして変更しないように、前記ずれの個数が第2の閾値以下の場合に今回より早くなるように設定することを特徴としている。
【0013】
ここで、前記設定手段は、前記所定のテンポを今回より遅くなるように設定する場合、今回のテンポより所定の割合だけ遅くなるように設定することが好ましい。
【0014】
また、前記設定手段は、今回のテンポが前記見本演奏の標準テンポより遅い状態にあって前記所定のテンポを今回より早くなるように設定する場合、前記所定のテンポが今回のテンポから前記見本演奏の標準テンポに徐々に近づくように設定することも好ましい。
【0015】
また、前記計数手段は、前記ずれがタイミングのずれであって、該ずれが所定以上のずれである場合、演奏者が前記見本演奏に合わせる意志がないものとして計数しないことも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、見本演奏と実演奏とのずれの個数を計数し、この個数と予め設定された第1の閾値および該第1の閾値より小さい第2の閾値を比較し、この比較結果を元に次回の練習時の見本演奏のテンポを遅く、変更しない、あるいは早く設定するので、演奏者の習熟度に応じたテンポで練習を行うことができるようになり、練習効果の向上が期待できる。
【0017】
また、見本演奏と実演奏のずれがタイミングのずれであって、該ずれが所定以上のずれである場合、演奏者が前記見本演奏に合わせる意志がないものとして計数しないようにすることにより、無用なテンポの変更をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された電子楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明における練習機能での実演奏状況判定処理を示すフローチャートである。
【図3】見本演奏を実演奏のタイミング比較の具体例を示す図である。
【図4】見本演奏のテンポ変更の概念図である。
【図5】見本曲および演奏者ごとにテンポ係数をテーブルとして保存する例を示す図である。
【図6】従来の電子楽器における練習機能での実演奏状況判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明が適用された電子楽器の構成を示すブロック図である。図1は、電子鍵盤楽器の形態を示すが、本発明が適用される電子楽器は電子鍵盤楽器に限られない。図1において、CPU1は、電子鍵盤楽器全体の制御を行う。また、ROM2は、プログラムや演奏データを記憶し、RAM3は、CPU1による処理のワークエリアおよびバッファとして使用される。CPU1、ROM2およびRAM3は、データバス4によって互いに接続されている。
【0020】
データバス4には、パネルインターフェース(I/F)5を介してパネル6やペダル7が接続され、また、鍵盤I/F8を介して鍵盤9が接続される。パネル6は、ボタンやホイール操作子、ジョグボールなどの操作子、LCD(ディスプレイ)などを備える。パネル6での操作により演奏練習モードやテンポの設定も可能となっている。演奏練習モードの設定は、別途設けたスイッチのオンオフによって行うようにすることもできる。
【0021】
演奏練習モードにおいて、演奏者がパネル操作で見本曲を選択して練習開始を指示すると、CPU1は、該見本曲の演奏データをROM2から読み出し、その楽音パラメータを音源回路10に出力する。
【0022】
また、演奏者が鍵盤9で演奏すると、それにより発生された演奏操作情報が、キーボードI/F8およびデータバス5を介しCPU1てに入力される。CPU1は、演奏操作情報に応じてノートオンイベントまたはノートオフイベントを生成し、その楽音パラメータを音源回路10に出力する。
【0023】
音源回路10は、データバス5を介してCPU1から送出されてきた楽音パラメータに基づいてそれぞれ発音用ディジタル信号を作成する。これらの発音用ディジタル信号は、オーディオ回路11に渡されてアナログ信号に変換された後、スピーカ12から外部に発音される。
【0024】
MIDI情報通信手段13は、外部MIDI機器に対してMIDI信号の入出力を行うものであり、これを通して演奏データを外部から取り込んだり、外部に送出したりすることができる。
【0025】
パネル6での操作で演奏練習モードが設定された場合、CPU1は、ROM2から見本曲の演奏データを読み出し、該演奏データに基づく発音をスピーカ12に行わせる。すなわち見本演奏を再生させる。見本演奏のテンポはパネル操作で予め設定することができるが、パネル操作がなければ曲ごとの推奨テンポとなる。この推奨テンポは、演奏データに予め含まれている。演奏練習モードでは、後述するように、練習が繰り返される度に実演奏状況に応じてテンポが変更される。
【0026】
ROM2には、難易度などに応じて複数の見本曲の演奏データが格納されており、演奏者はパネル操作で見本曲を選択できる。演奏者が見本演奏に合わせて鍵盤9で実演奏を行うと、この実演奏に従って発生される演奏操作情報による発音もスピーカ12でなされる。
【0027】
CPU1は、見本曲の演奏データと実演奏による演奏操作情報を比較して見本演奏と実演奏のずれを算出し、一回(一曲)の演奏が終了したとき、算出されたずれに基づいて実演奏状況を判定し、この判定結果をパネル6に表示させる。曲の途中でレッスン終了が指示された場合には、それまでの見本演奏と実演奏のずれに基づいて実演奏状況を判定を判定する。
【0028】
見本演奏は、パネル操作でレッスン終了が指示されるまで自動的に繰り返され、演奏者は繰り返し練習ができる。この繰り返しの練習では、判定された実演奏状況に応じて見本演奏のテンポが変更される。
【0029】
見本演奏のテンポの変更は、実演奏状況が悪いと判定された場合、練習ごとに例えば推奨テンポを一定割合ずつ徐々に遅くするように行い、実演奏状況がよいと判定された場合には、元の推奨テンポあるいは推奨テンポより一定割合速いテンポに徐々に戻すようにして行う。
【0030】
図2は、本発明における練習機能での実演奏状況判定処理(実演奏状況の判定およびテンポ変更処理)を示すフローチャートである。ここでは、まず、予め記憶された見本演奏の演奏データから現在発音すべき楽譜発音情報を取得し(S21)、取得された楽譜発音情報による発音(見本演奏)を行う。また、見本演奏に合わせて行われた演奏者の実演奏による演奏操作情報(押鍵情報)を取得する(S22)。
【0031】
次に、S21で取得された楽譜発音情報とS22で取得された演奏操作情報の差異を算出し、差異情報として蓄積する(S23)。続いて曲終了か否かを判定する(S24)。S24で曲終了でないと判定された場合にはS21に戻り、S21からS23の処理を曲が終了するまで繰り返す。S24で、曲終了と判定された場合にはS25に進む。
【0032】
S25では、これまでに蓄積された差異情報を元に実演奏状況の判定を行い、この判定結果をパネル表示して演奏者に知らせる。S25で、例えばS23で蓄積された差異情報を累積し、この累積に基づいて判定を行えば、判定結果は、曲全体での見本演奏と実演奏のずれの程度の実演奏状況を表すことになる。
【0033】
以上の処理を、演奏者がパネル操作でレッスン終了を指示するまで繰り返し行うが、本発明では、効果的な練習ができるように、S25で、実演奏状況の判定を行うとともに、この判定結果に応じて繰り返しの練習での見本演奏のテンポを変更するようにしている。
【0034】
そのために、実演奏状況の判定結果に応じて見本演奏のテンポ変更を指示(S25)した後、パネル操作でレッスン終了が指示されたかどうかを判定し(S26)、レッスン終了が指示されなければS21に戻ってS21からS25の処理を繰り返す。また、レッスン終了が指示されれば、処理を終了する。
【0035】
次に、見本演奏と実演奏のずれの算出、および実演奏状況の判定および見本演奏のテンポ変更について説明する。
【0036】
見本演奏と実演奏のずれの算出では、一演奏(一曲)内で、見本演奏と実演奏のずれの個数を求める。見本演奏と実演奏のずれには、押鍵のタイミングのずれ、押鍵する鍵の相違、押鍵し忘れや余分な押鍵などがある。
【0037】
実演奏状況の判定では、第1の閾値とそれより小さい第2の閾値を予め設定しておき、一演奏(一曲)内でのずれの個数が第1の閾値と第2の閾値の間にあるか、第1の閾値以上であるか、第2の閾値以下であるかを調べる。そして、一演奏(一曲)内でのずれの個数が第1の閾値と第2の閾値の間にある場合には現在のテンポが演奏者の習熟度に合っていると判定し、第1の閾値以上である場合には現在のテンポが早すぎて演奏者の習熟度に合っていないと判定し、第2の閾値以下である場合には現在のテンポでは演奏者が十分に習熟していると判定する。
【0038】
見本演奏のテンポ変更では、現在のテンポが演奏者の習熟度に合っていると判定された場合には見本演奏のテンポを変更しない。また、現在のテンポが早すぎて演奏者の習熟度に合っていないと判定された場合には見本演奏のテンポを一定割合、例えば現在のテンポを推奨される標準テンポの10%分だけ遅くし、現在のテンポで演奏者が十分に習熟したと判定された場合には見本演奏のテンポを徐々に標準テンポに戻す。標準テンポより一定割合速いテンポに向かって徐々に戻すようにしてもよい。
【0039】
以上にように、変更し得るテンポの最高値は、標準テンポ値あるいはそれより一定割合だけ速いテンポ値に制限されるようにしておくが、それに加えて、変更し得るテンポの最低値に制限を設けておくようにしてもよい。
【0040】
見本演奏と実演奏のずれは、例えば、以下に示す(1)〜(3)のうちの1つあるいは複数の判断基準に基づいて判断することができる。
(1)見本演奏と実演奏のタイミングを比較して、見本演奏と一定ステップ数の差の範囲内あるいは範囲外で実演奏があるかどうかにより例えば下記(1-1),(1-2)のように判断する。
(1-1)一定ステップ数の差の範囲内で実演奏があった場合、演奏ずれがなかったと判断する。
(1-2)一定ステップ数の差の範囲外で実演奏があった場合、そのタイミングで演奏ずれ(ミスタッチ)があったと判断する。
(1-3)一定ステップ数の差の範囲内で実演奏がなかった場合、そのタイミングで演奏ずれ(演奏忘れ)があったと判断する、あるいは判断の対象から除外する。
(2)一定のステップ数内の見本演奏と実演奏の音程を比較して、音程が合っているかどうかにより下記(2-1)〜(2-3)のように判断する。
(2-1)音程が合っている場合、演奏ずれがないと判断する。
(2-2)音程が合っていなかった場合、演奏ずれ(ミスタッチ)があったものと判断する。
(2-3)実演奏の一定ステップ数内に音程の異なる複数の音が混じっていた場合、音程の合っている音があれば演奏ずれがないと判断し、それ以外の音は判断の対象から除外する、あるいは演奏ずれ(ミスタッチ)があったと判断する。ただし、見本演奏が和音であった場合には和音を構成する全ての音について上記の判断を行う。
(3)見本演奏と実演奏のタイミングを比較して、ステップのずれが予め定められた閾値以上である場合、演奏者は見本演奏に合わせる意志がないものとして演奏ずれ判断の対象としない。この場合の閾値は、演奏者が明らかに見本演奏に合わせる意志がないと想定されるほどのステップずれを判断するためのものである。
【0041】
図3は、見本演奏を実演奏のタイミング比較の具体例を示す。図3において、実演奏の第1音(a),第2音(b),第3音(c)のタイミングは、見本演奏の第1音(A),第2音(B),第3音(C)に対してそれぞれt1、t2、t3だけずれており、これらが一定ステップ数tの差の範囲内にある(t1,t2,t3≦t)場合、上記(1-1)の判断基準によれば演奏ずれがなかったと判断される。
【0042】
また、実演奏の第3音(c)に続いて、見本演奏の第3音(C)に対してt4(t4>t)だけずれた第4音(d)が余計に演奏された場合、上記(1-2)の判断基準によればそのタイミングで演奏ずれ(ミスタッチ)があったと判断される。
【0043】
また、実演奏の第3音(c)の代わりに第4音(d)が演奏された場合、上記(1-2)の判断基準によれば演奏ずれ(ミスタッチ)があったと判断される。この場合には、一定ステップ数の差の範囲内で実演奏がなかったことにもなるので、上記(1-3)の判断基準によれば、これもそのタイミングで演奏ずれ(演奏忘れ)があったと判断される、あるいは判断の対象から除外される。
【0044】
見本演奏と実演奏のずれの判断基準は、演奏者が初心者かどうかや演奏曲目によって変えてもよいし、判定結果により演奏者の習熟度を判断し、その習熟度に従って変えるようにしてもよい。例えば、初心者に対してはタイミングのずれのみを判断基準としたり、演奏者の習熟度が低いと判断された場合には判断基準を比較的緩くし、習熟度が高いと判断された場合には判断基準を厳しくしたりすることができる。
【0045】
見本演奏のテンポの変更は、見本演奏の演奏データに含まれるテンポ値に係数(テンポ係数)を掛ける処理で行い、演奏データそのものを直接変化させないようにするのが好ましい。
【0046】
図4は、見本演奏のテンポ変更の概念図である。見本演奏の演奏データは、以降の演奏区間でのテンポを設定するためのテンポ値(TEMPO)を含んでいる。テンポ変更は、同図(a)に示すように、演奏データに含まれるテンポ値に、例えば1.1,1.0,0.9,・・・,0.5などのテンポ係数を掛けて得られる値を見本演奏のテンポ値として設定する。
【0047】
また、実演奏のずれを元に判断された実演奏状況に対する見本演奏のテンポ値変更の形態は、種々考えられる。同図(b)の実線は、実演奏状況に対して見本演奏のテンポ値変更を同じ割合で増減させる例であり、破線は、実演奏状況に対して上限および下限テンポ値付近でテンポ値変更の割合を少なくした例である。
【0048】
また、見本曲が変更された場合、曲の小節ごとの音数およびテンポ、曲変更前の練習でのテンポ係数を元に算出されたテンポを新たな曲に対して設定するようにすることができる。これにより曲の難易度および演奏者の習熟度が考慮されたテンポ値を新たな曲に対して設定できる。例えば、前の見本曲に比較して曲の小節ごとの音数が多い場合、変更前の練習でのテンポ係数より一定値だけ小さいテンポ係数を新たな見本曲の標準テンポ値に掛けるようにする。
【0049】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、種々の変形が可能である。例えば、見本演奏は、実際に楽音を発生させて行わなくてもよく、パネル6に楽譜および演奏の進行を表示させたり、鍵盤9に付随して配置したLEDによる押鍵指示であってもよい。本発明の見本演奏とは、そのようなものも含む。
【0050】
また、見本演奏と実演奏のずれの判断基準は、予め装置内に種々のものを記憶させておき、演奏者がそれらを適宜選択して設定できるようにすることができる。また、判定基準にベロシティなどを含ませることもできる。
【0051】
また、電源が切られた場合でもテンポ係数が保存されるようにしておき、次回の練習のときに保存されたテンポ係数を用いて習熟度に応じたテンポで練習を開始できるようにすることもできる。
【0052】
図5は、見本曲および演奏者ごとにテンポ係数をテーブルとして保存する例を示す図である。このようなテーブルを用いれば、演奏者は、練習に先立ってユーザIDなどを入力して今までの練習の習熟度に応じた自己のテンポ係数を読み出し、設定することができる。例えば、演奏練習モードにおいてユーザBがパネル操作で見本曲(2)を選択すると、見本曲(2)の練習で自動的にテンポ係数0.8が設定される。このテーブルの値は、習熟度に従って更新される。
【0053】
さらに、変更し得る最低のテンポや最高のテンポ、テンポ変更の程度は、演奏者が予め任意に設定できるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・CPU、2・・・ROM、3・・・RAM、4・・・データバス、5・・・パネルI/F、6・・・パネル、7・・・ペダル、8・・・鍵盤I/F、9・・・鍵盤、10・・・音源回路、11・・・オーディオ回路、12・・・スピーカ、13・・・MIDI情報通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
見本演奏に合わせて所定のテンポで演奏者に繰り返し実演奏を行わせる練習機能を備えた電子楽器であって、
見本演奏と実演奏とのずれの個数を計数する計数手段と、
予め設定された第1の閾値および該第1の閾値より小さい第2の閾値と、前記計数手段が計数した前記ずれの個数を比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に応じて次回の練習時の前記所定のテンポを設定する設定手段を備え、
前記設定手段は、次回の練習時の前記所定のテンポを、前記ずれの個数が第1の閾値以上の場合に今回より遅くなるように、前記ずれの個数が第1の閾値と第2の閾値の間にある場合に今回のままとして変更しないように、前記ずれの個数が第2の閾値以下の場合に今回より早くなるように設定することを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
前記設定手段は、前記所定のテンポを今回より遅くなるように設定する場合、今回のテンポより所定の割合だけ遅くなるように設定することを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記設定手段は、今回のテンポが前記見本演奏の標準テンポより遅い状態にあって前記所定のテンポを今回より早くなるように設定する場合、前記所定のテンポが今回のテンポから前記見本演奏の標準テンポに徐々に近づくように設定することを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記計数手段は、前記ずれがタイミングのずれであって、該ずれが所定以上のずれである場合、演奏者が前記見本演奏に合わせる意志がないものとして計数しないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−150351(P2011−150351A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29519(P2011−29519)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【分割の表示】特願2006−108595(P2006−108595)の分割
【原出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】