説明

電子機器のケースカバーの取付構造

【課題】本体ケース部に、ケースカバー部を簡単かつ強固に取り付ける。
【解決手段】ケースカバー部22の底面側面板部22Cの案内凸部22Cbを、本体ケース部21の本体板部21Aの案内凹溝21Abに係合させ、シールドケース20を収納した本体ケース部21に対しケースカバー部22をスライド移動させ、最終的に、本体ケース部21側の第1の係合凸部21Bdとケースカバー部22側の第1の被係合凹部22Baとを係脱可能に係合する。この状態で、ケースカバー部22の第2の被係合凹部22Ccも本体ケース部21の第2の係合凸部21Beに係脱可能に係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分配器、ブースター、コンバーター、混合器などの電子機器のケースカバーの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のケーシング構造としては、本体部に対して蓋部が回転により開放可能で、増幅器などの電子機器が収納される本体部に対し蓋部を固定ネジにて固定するようにし、設置後に電気的特性を調整する際に、蓋部を開けて内部に収納した電子機器の調整を行うようにしたものは知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−31660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、設置後に調整が必要ない電子機器もあり、そのような電子機器の機器ケーシングに前記特許文献1に記載の構造を採用すると、設置後に蓋部を開けて、内部の電子機器にいたずらされるおそれがある。また、蓋部を固定ネジにて固定し、組み立てる際にネジ止めの作業が必要となるようになっているので、そのようなネジ止めの作業をなくし、簡単かつ強固に取り付けたいという要求がある。
【0005】
この発明は、本体ケース部に、ケースカバー部を簡単かつ強固に取り付けることができる電子機器のケースカバー取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、機器ケーシングが、電子回路を内部に有するシールドケースが取り付けられる本体ケース部と、この本体ケース部に取り付けられ前記シールドケースを覆うケースカバー部とを有する電子機器のケースカバーの取付構造であって、前記ケースカバー部は、前記本体ケース部に対し前記特定方向に沿って移動させることで前記本体ケース部に取り付けられる構成とされ、前記本体ケース部は、前記本体板部の左右両側に形成され第1の係合凸部または係合凹部が形成された左右側板部を有する一方、前記ケースカバー部は、前記本体ケース部の左右側板部の外側に位置する左右側面板部を有し、この左右側面板部に、前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記第1の係合凸部または係合凹部に係脱可能に係合する第1の被係合凹部または被係合凸部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このようにすれば、本体ケース部にケースカバー部が取り付けられた状態で、ケースカバー部の側面板部の第1の被係合凹部または被係合凸部に、前記本体ケース部の左右側板部の第1の係合凸部または係合凹部に係脱可能に係合するので、本体ケース部に、ケースカバー部がシールドケースを覆う状態で簡単かつ強固に固定される。
【0008】
請求項2に記載のように、前記本体ケース部は、背面側に前記特定方向に延びる案内凹溝が形成され、前記ケースカバー部は、下方側が開放された開口を有する背面側面板部を有し、この背面側面板部の開口の両側に前記本体ケース部の案内凹溝にスライド可能に係合する案内凸部が形成されていることが望ましい。
【0009】
このようにすれば、ケースカバー部を本体ケース部に取り付ける場合に、案内凹溝と案内凸部との係合関係を利用して、スムーズに嵌め込むことができる。
【0010】
請求項3に記載のように、前記ケースカバー部は、前記背面板部の上側に、前記開口に臨む第2の被係合凹部が形成され、前記本体ケース部は、前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記ケースカバー部の第2の被係合凹部に係脱可能に係合する第2の係合凸部を有する構成とすることも可能である。
【0011】
このようにすれば、前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記本体ケース部の第2の係合凸部が前記ケースカバー部の被係合凹部に係脱可能に係合するので、本体ケース部に、ケースカバー部がシールドケースを覆う状態で強固に固定される。
【0012】
請求項4に記載のように、前記ケースカバー部は、正面側面板部を有し、この正面側面板部の内側に前記シールドケースに当接し先端が嵌合端部である補強リブが形成され、前記本体ケース部は、前記補強リブの嵌合端部が嵌脱可能に嵌合する嵌合穴を有する底面側板部を有し、前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記補強リブの嵌合端部が嵌合穴に嵌合していることが望ましい。
【0013】
このようにすれば、ケースカバー部とシールドケース部の空間部が補強リブにて埋められ、安定した収納が実現される。また、前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記補強リブの嵌合端部が嵌合穴に嵌合しているので、前記ケースカバー部と前記本体ケース部との位置決めも確実になされる。
【0014】
請求項5に記載のように、前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記ケースカバー部の差し込み側の先端縁が、前記底面側板部よりもさらに下方に突出していることが望ましい。
【0015】
このようにすれば、ケースカバー部の差し込み側の先端縁が、前記底面側板部よりもさらに下方に突出しているので、本体ケース部にケースカバー部がどのように取り付けられているかがわかりにくくなり、ケースカバー部を不用意に取り外すことがなくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のように、前記本体ケース部に取り付けられた状態で、ケースカバー部の左右側面板部の第1の被係合凹部または被係合凸部に、前記本体ケース部の左右側板部の第1の係合凸部または係合凹部に係脱可能に係合するので、本体ケース部に、ケースカバー部を簡単かつ強固に固定することができる。
【0017】
また、本体ケース部に対し、シールドケースを取り付ける方向と同じ方向に、ケースカバー部を移動させて取り付けるようになっているので、同じ方向に沿って移動させるという同じ動作を繰り返すことで取り付けることができ、取付作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電子機器におけるシールドケースの固定構造に用いられる電子機器を正面側からみた状態を示すを斜視図である。
【図2】同電子機器を背面側からみた状態を示すを斜視図である。
【図3】前記電子機器を、マスト固定金具を取り除いた状態で示す底面図である。
【図4】前記電子機器をマストに固定した状態を、正面側から見た斜視図である。
【図5】前記電子機器をマストに固定した状態を、背面側から見た斜視図である。
【図6】前記電子機器をマストに固定した状態を、右側面上方から見た斜視図である。
【図7】前記電子機器をマストに固定した状態の平面図である。
【図8】(a)は電子機器からマスト固定金具を取り外した状態を示す分解斜視図、(b)はボルト部材の正面図である。
【図9】前記電子機器の左側面図である。
【図10】図9のA−A方向の断面図である。
【図11】図9のB−B方向の断面図である。
【図12】機器ケーシングとシールドケースとの関係を示す分解斜視図である。
【図13】図9のC−C方向の断面図である。
【図14】図3のD−D方向の断面図である。
【図15】図7のE−E方向の断面図である。
【図16】(a)(b)はそれぞれケースカバー部を下側からみた斜視図である。
【図17】(a)(b)はシールドケースを本体ケース部に取り付ける取付手順の説明図である。
【図18】(a)(b)は本体ケース部にケースカバー部を取り付ける取付手順の説明図である。
【図19】(a)〜(c)はそれぞれ電子機器の他の実施例を示す図である。
【図20】(a)(b)はそれぞれ前記電子機器の他の実施例のケースカバー部を下側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。なお、説明においては、本体部4が設けられている側を正面側として、取付部6A,6Bが設けられている側を底面側として説明する。
【0020】
図1〜図4に示すように、電子機器1(例えば2分配器)の機器本体2における機器ケーシング3は、直方体形状の本体部4と、その本体部4の背面側に突出して一体的に設けられ外周部が本体部4の外周部より内方に位置する保持部5とを備えている。この保持部5にマストMに電子機器1を取り付けるためのマスト固定金具11が取り外し可能に保持されている。本体部4の下部には、屋外のマストだけでなく、壁面等の取付面にも電子機器1を取り付けることができるように、取付部6A,6Bが設けられ、その取付部6A,6Bには電子機器を取り付けるための取付ネジ15が設けられている。
【0021】
図1および図2に示す状態では、マスト固定金具11は収納状態にあり、マストMに前記電子機器を取り付ける際には、図4〜図7に示すように、マスト固定金具11を介してマストMに機器ケーシング3(電子機器)が固定される。なお、この機器ケーシング3の本体部4内には、高周波信号を処理する電子回路を内部に有するシールドケース20が収容され、本体部4の下面には信号を入出力するF型コネクタ8(接栓)が下方に突出するように複数設けられている。
【0022】
マスト固定金具11は、図8(a)に示すように、ボルト部材12、押さえ金具13(押さえ部材)および1つの蝶ナット14(ナット部材)によって構成される。
【0023】
ボルト部材12は、図8(b)に示すように、線材がコ字形状に折り曲げて形成されたもので、係止棒部12Aと、この係止棒部12Aと平行に延びるネジ棒部12Bと、係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの基端を相互に連結する連結棒部12Cとを備え、連結棒部12Cを回転軸として保持部5に対して回転可能に保持されている。係止棒部12Aには、押さえ金具13の一端部を係止可能である複数の係止凹部12Aa,12Aa、・・・が一定間隔でもって規則的に設けられている。この各係止凹部12Aaは、押さえ金具13の切り欠き13aが係合した状態で、押さえ金具13が係止棒部12Aの先端側あるいは基端側に移動するのを規制する機能を有する。
【0024】
なお、1つの係止凹部12Aaは、断面円形状の棒状部分の外周面より外方に突出する2つの突出部12Abが設けられることで、それらの間に設けられていることになる。この突出部12Abは、係止棒部12Aの一部をつぶして外方に突出させて形成したものであり、機器ケーシング3(電子機器)が固定される複数種類のマストの直径に対応する位置を含むように一定間隔で設けられている。つまり、保持部5はマストMが嵌り込む凹部5aが形成されいるので、図7に示すように、マストMの直径が例えばLの場合にはその直径Lに対応する係止凹部12Aaを選択して切り欠き13aを係合させれば、凹部5aと押さえ金具13との間にマストMを挟持して固定することができる。この係止凹部12Aaが、機器ケーシング3(電子機器)が固定されるマストMの直径に対応する位置に少なくとも設けられているからである。
【0025】
押さえ金具13は、平板状の金具本体13A(本体部)と、その金具本体13Aの上下両側において同一方向に平行に延びる2つの側板部13B,13Cとにより断面コ字形状に形成されている。そして、押さえ金具13(金具本体13A)の一方の端部側には、一方の側板部13Cまで延び係止棒部12Aに係脱可能に係合する切り欠き13aが、他方の端部側にはネジ棒部12Bが挿通される挿通穴13bがそれぞれ形成されている。そして、挿通穴13bを貫通して突出するネジ棒部12Bの雄ネジ12Baに蝶ナット14が螺合されている。また、側板部13B,13CにはマストMの外周面に接触する凹部13Ba,13Caが形成されている。なお、金具本体13Aは中央部に凹み部13cが形成され、必要な剛性が確保されている。
【0026】
ネジ棒部12Bは、マストに取り付ける際に係止棒部12Aが位置する側に蝶ナット14を回転することで締め付けられるように雄ネジ12Baが形成されており、締め付けのための蝶ナット14を回転する回転方向R1と押さえ金具13の切り欠き13aが係止凹部12Aaに係合する方向R2とが一致し、同じ方向となっている(図5参照)。
【0027】
よって、切り欠き13aがいずれかの係止凹部12Aaに係合した状態では、蝶ナット14を回転して締め付ける際に、係止凹部12Aaによって押さえ金具13が係止棒部12Aに対し軸線方向に移動したり外れたりするのが防止されるので、作業者が押さえ金具13を手で押さえたりすることなく、固定することができる。
【0028】
また、図2、図9〜図11に示すように、保持部5の上端部5eは平坦面(保持面)として形成され、下端部は、本体部4側の凹部5bとそれの外側の受け部5cとして形成されている。この受け部5cには、さらに、ボルト部材12の収納状態において、連結棒部12Cが係合する係合凹部5dが形成されている。
【0029】
また、本体部4と取付部6A,6Bとが連結部7A,7Bを介して連結され、その連結部7A,7Bによって取付部6A,6Bと保持部5との間には貫通穴9A,9Bが形成されている。この連結部7A,7Bの上側には、マストMへの取付状態で、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの基端部付近が係合し、両棒部12A,12Bを水平に支持する係合凹部7Aa,7Baが形成されている。
【0030】
そして、ボルト部材12は、連結棒部12Cが受け部5cの係合凹部5dに係合し、係止棒部12Aとネジ棒部12Bとが保持部5両側の貫通穴9A,9Bを下側から挿通している収納状態(このとき、押さえ金具13は、保持部5の上端部5e上に載せられている)と、連結棒部12Cが凹部5b内に位置し係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの基端部が連結部7A,7Bの係合凹部7Aa,7Baに係合するマスト取付状態とを取りうるようになっている。なお、このように、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bを水平に支持する際に、係合凹部7Aa,7Baに、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの基端部を係合できるように、凹部5bは、係合凹部7Aa,7Baの位置よりも上方まで深く延び、ボルト部材12を、連結棒部12Cを回転軸としての回転を許容するようになっている。
【0031】
機器ケーシング3の本体部4は、図12〜図15に示すように、保持部5が背面側に形成され正面側にシールドケース20が取り付けられる本体ケース部21と、この本体ケース部21内のシールドケース20を覆うように嵌め込まれるケースカバー部22とにより構成される。このシールドケース20の内部には、電子回路(図示せず)が収納され、複数のコネクタ8が突出している。
【0032】
この本体ケース部21は、シールドケース20の一面部が接触する本体板部21Aと、この本体板部21Aの左右両側に設けられる左右側板部21B,21Bと、左右側板部21B,21Bの一端部側および本体板部21Aとを結合する底面側板部21Cとを有し、本体ケース部21に、シールドケース20が、本体ケース部21の本体板部21Aにシールドケース20の一面部をスライドさせて取り付けられるものである。底面側板部21Cには、シールドケース20(電子回路)から突出する複数のコネクタ8が挿通される筒状部21Caおよび、LED31を覆うLEDカバー32の凸部32aが嵌め込められるLED取付穴21Cdが形成されている。また、底面側板部21Cには、シールドケース20を取り付ける際に、シールドケース20の下端面が接触して位置規制するための規制リブ21Ceが設けられている(図14参照)。
【0033】
ケースカバー部22は、本体板部21Aに沿って移動させることで本体ケース部21に嵌め込まれるものであり、その嵌め込まれた状態で本体ケース部21の本体板部21Aにシールドケース20を介して対向する正面側面板部22Aと、本体ケース部21の左右側板部21B,21Bの外側に位置する左右側面板部22B,22Bと、本体板部21Aの後側に位置する背面側面板部22Cとを有する。ここで、本体ケース部21に対し、シールドケース20を方向Xに移動させて取り付け、続いて同じ方向Xにケースカバー部22を移動させて取り付けることができ、ケースカバー部22を嵌め込むために移動させる方向と、シールドケース20を取り付けるためにスライドさせる方向とは同じ方向Xであるので、同じ動作を繰り返すことで取り付けができ、取付作業性に優れる。
【0034】
正面側面板部22Aの内側にはシールドケース20に当接する補強リブ22Aa,22Aaが形成されている。この補強リブ22Aaの先端部分は、正面側面板部22Aから離れた自由端である嵌合端部22Aaa(図16参照)となっており、ケースカバー部22が本体ケース部21に取り付けられた状態で、本体ケース部21の底面側板部21Cに形成される嵌合穴21Ccに嵌合されるようになっている。
【0035】
背面側面板部22Cは、下方側が開放された矩形状の開口22Caが形成されており、それの両側には、図13に示すように、本体ケース部21の本体板部21Aの案内凹溝21Ab,21Abにスライド可能に係合する案内凸部22Cb,22Cbが形成されている。
【0036】
左右側板部21Bは、一部が切り欠かれて、弾性片部21Baが形成されている。つまり、本体板部21Aとの結合部分を残して、左右側板部21Bには、底面側板部21C側に上方が開放される矩形状の第1の切り欠き21Bbが形成され、弾性片部21Baを挟んで上方および側方が開放される矩形状の第2の切り欠き21Bcが形成されている。よって、両切り欠き21Bb,21Bcの間に、矩形状の弾性片部21Baが形成されることになる。
【0037】
この弾性片部21Ba(側板部21B)の内側には、先端縁側において所定幅でもって突出する規制凸部21Baa(係合部)が形成されている。この規制凸部21Baaは、シールドケース20のスライド方向Xに直交する、シールドケース20の厚さ方向Zの移動を規制する係合部として機能する。また、第1の切り欠き21Bbに臨む、弾性片部21Baの端面21Bab(前記スライド方向Xに直交する方向Zに延びる端面)が、前記スライド方向Xの移動を規制する係合部として機能する。そして、弾性片部21Ba自体は、シールドケース20のスライド方向Xに直交する、シールドケース20の幅方向Yの移動を規制するようになっている。
【0038】
また、シールドケース20の左右側面部には、弾性片部21Baの規制凸部21Baaおよび端面21Babとの係合関係で前記スライド方向Xに直交する方向Zおよび前記スライド方向Xの移動を規制するための被係止部として突条部20aおよび係止凸部20bが形成されている。突条部20aは、規制凸部21Baaとの係合関係でスライド方向Xに直交する方向Zの移動を規制する被係止部として、係止凸部20bは、端面21Babとの係合関係で前記スライド方向Xの移動を規制する被係止部として機能する。突条部20aは、シールドケース20の側面部に沿って延びシールドケース20のスライド移動の際に規制凸部21Baaの基端部側を摺動するようになっており、係止凸部20bは、弾性片部21Baの端面21Babに接触して前記スライド方向Xの移動を規制するようになっている。この係止凸部20bは、側方からみて先端側になるほど高さが低く末端が前記スライド方向Xに直交する方向Zに延びる三角形状であって、突条部20aと一体に形成されている。そして、この突条部20aと係止凸部20bの、シールドケース20の表面からの突出量は同じ量となっている。
【0039】
また、本体ケース部21の左右側板面部21Bには、図14に示すように、第1の係合凸部21Bdが形成される一方、ケースカバー部22の左右側面板部22Bには、ケースカバー部22が本体ケース部21に取り付けられた状態で、第1の係合凸部21Bdに係脱可能に係合する第1の被係合凹部22Baが形成されている。そして、ケースカバー部22が本体ケース部21に取り付けられた状態では、ケースカバー部22の差し込み側の先端縁が、底面側板部21Cよりもさらに下方に突出し、その状態で係合凸部21Bdが被係合凹部22Baに係合している。ここで、本体ケース部21の左右側板面部21Bに被係合凹部が、ケースカバー部22の左右側面板部22Bに係合凸部がそれぞれ形成されているようにすることも可能である。
【0040】
また、図15に示すように、本体ケース部21の本体板部21Aの上端部にも第2の係合凸部21Beが形成され、ケースカバー部22の背面側面板部22Cの上側に、開口22Caに臨む第2の被係合凹部22Ccが形成されている。ケースカバー部22が本体ケース部21に取り付けられた状態で、被係合凹部22Ccに第2の係合凸部21Beが係脱可能に係合する。
【0041】
続いて、機器ケーシング3内にシールドケース20(電子回路)を収納する手順について説明する。
【0042】
まず、図17(a)(b)に示すように、シールドケース20の一面部を本体ケース部21の本体板部21Aの内面に沿わせて、開放端側から底面側板部21Cが設けられている側に方向Xに沿ってスライド移動させる。このスライド移動の際、シールドケース20側の突条部20aは、本体ケース部21側の規制凸部21Baaによってケース厚さ方向Zの移動を規制されつつスライド移動する。第2の係止凸部20bが、規制凸部21Baa上を通過する際には、弾性片部21Baが弾性変形により外側に広がり、通過が許容され、通過後、底面側板部21Cの規制リブ21Ceにシールドケース20の下端面が接触するとともに弾性片部21Baが元の位置に復帰し、その端面21Babにおいて係止凸部20bのスライド方向Xの移動が規制される。
【0043】
これによりシールドケース20が本体ケース部21の本体部21Aから不用意に外れないように取り付けられる。この状態では、シールドケース20(電子回路)から突出するコネクタ8が底面側板部21Cの筒状部21Caに挿通されている。
【0044】
このシールドケース20を取り付ける際に、まず、LED31を覆うLEDカバー32の凸部32aがLED取付穴21Cdに嵌め込まれ、それからシールドケース20が取り付けられる。このようにLEDカバー32を一緒に取り付けるようにしている関係で、コネクタ8間の間隔が左右で異なっており、シールドケース20(電子回路)を左右反転した状態で挿入するという誤挿入が回避される。
【0045】
さらに、図18(a)(b)に示すように、ケースカバー部22の背面側面板部22Cの案内凸部22Cbを、本体ケース部21の本体板部21Aの案内凹溝21Abに係合させ、シールドケース20の取付けの場合と同様に、方向Xに沿ってスライド移動させる。このスライド移動のとき、本体ケース部21Aの案内凹溝21Abにケースカバー部22の案内凸部22Cbが係合した状態でスライド移動させるので、ケースカバー部22が浮き上がることもなく、安定したスライド移動となる。そして、最終的に、本体ケース部21側の係合凸部21Bdとケースカバー部22側の被係合凹部22Baとが係脱可能に係合することになる。
【0046】
このように、本体ケース部21に対し、シールドケース20、ケースカバー部22を順に方向Xに沿って移動させて取り付けるようになっているので、方向Xに沿って移動させるという同じ動作を繰り返すことで取り付けることができ、取付作業性に優れる。
【0047】
ケースカバー部22が本体ケース部21に取り付けられた状態で、ケースカバー部22の側面板部22Bの被係合凹部22Baに、本体ケース部21の左右側板部21Bの係合凸部21Bdに係脱可能に係合し、補強リブ22Aa先端の嵌合端部22Aaaが底面側板部21Cの嵌合穴21Ccに嵌合している。
【0048】
この状態では、本体ケース部21にケースカバー部22が強固に固定され、防水も確保される。弾性片部21Baはケースカバー部22によって外側から押さえられ、弾性片部21Baの係合が解除されにくくなっている。つまり、弾性片部21Baを介してケースカバー部22によってシールドケース20の幅方向Yの移動が規制される。
【0049】
また、ケースカバー部22が本体ケース部21に取り付けられた状態で、ケースカバー部22の差し込み側の先端縁22aが、底面側板部21Cよりもさらに下方に突出しているので、ケースカバー部22を本体ケース部21にどのように取り付けているかがわかりにく、不用意にケースカバー部22が開放されるのを防止できる。
【0050】
前記実施の形態のほか、本発明は次のように変更して実施することができる。
【0051】
(i)前記実施の形態では、電気機器としての2分配器に適用したものであるが、図19(a)〜(c)に示すように、4分配器である電子機器1Aにも適用できるのはもちろん、ブースター、コンバーター、混合器にも適用することができる。この場合、図20(a)(b)に示すように、ケースカバー部22’の正面側面板部22A’の内側にはシールドケース(図示せず)に当接する4つの補強リブ22Aa’,22Aa’,22Ab,22Abが形成されている。この補強リブうち中央に位置する2つの補強リブ22Aa’の先端部分にのみ、正面側面板部22A’から離れた自由端である嵌合端部22Aaa’となっており、前記2分配器の場合と同様に、ケースカバー部22’が本体ケース部に取り付けられた状態で、本体ケース部の底面側板部に形成される嵌合穴に嵌合されるようになっている。
【0052】
(ii)前記実施の形態では、直径が異なる複数種類のマストに固定することができるように係止凹部を係止棒部12Aに一定の間隔で複数設けているが、電子部品が固定されるマストが一種類でマストの直径が一定である場合には、係止凹部を複数設ける必要はなく、1つだけ設ければよいのはもちろんである。また、取付けが予定されているマストの直径に対応する複数位置にのみ、係止凹部を設けることもできる。
【0053】
(iii)前記実施の形態では、係止凹部(突出部)を、例えば転造により係止棒部12Aの一部をつぶすことで形成しているが、そのような押しつぶして形成する係止部に制限されることなく、他の加工方法で形成することができる係止部としてもよいのはいうまでもない。また、突出部の形状は、円板形状である必要はなく、切り欠きに係合して押さえ金具を係止できる形状であればよい。よって、係止凹部を全周に形成する必要はなく、一部にのみ形成するだけでも、押さえ金具の軸線方向の移動を規制できる形状であればよい。
【0054】
(iv)前記実施の形態では、押さえ金具13の、ネジ棒部12Bが挿通される挿通部を挿通穴13bとしているが、それに限定されるものではなく、切り欠きとして、ボルト部材の一側からボルト部材に対し差し込めるようにすることも可能である。この場合、この係止棒部12Aが挿通される切り欠きは、ネジ棒部12Bが挿通される切り欠きの延びる方向は平行である必要はない。
【0055】
(v)前記実施の形態では、係止棒部12Aやネジ棒部12Bは直線状であるが,必ずしもその必要はなく、マストの外周面に対応させて屈曲形状や湾曲形状とすることも可能である。
【0056】
(vi)前記実施の形態では、押さえ金具は、金具本体が平板状となっているが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば特開2007−12800号公報に記載されるように、くの字形状に屈曲されていてもよいのはいうまでもない。また、ボルト部材を保持する構造も、前記実施の形態のように貫通穴9A,9Bに下側から貫通して保持するものに限らず、特開2007−12800号公報に記載されるように、保持部に形成される幅方向の貫通孔にボルト部材を挿通して保持させる構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
M マスト
1 電子機器
2 機器本体
3 機器ケーシング
4 本体部
5 保持部
8 コネクタ(接栓)
11 マスト固定金具
12 ボルト部材
12B ネジ棒部
12C 連結棒部
13 押さえ金具
14 蝶ナット(ナット部材)
20 シールドケース
21 本体ケース部
21A 本体板部
21Ab 案内凹溝
21B 側板部
21Bd 第1の係合凸部
21Be 第2の係合凸部
21C 底面側板部
21Ca 筒状部
22 ケースカバー部
22a 先端縁
22A 正面側面板部
22B 側面板部
22Ba 第1の被係合凹部
22C 背面側面板部
22Ca 開口
22Cb 案内凸部
22Cc 第2の被係合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケーシングが、電子回路を内部に有するシールドケースが取り付けられる本体ケース部と、この本体ケース部に取り付けられ前記シールドケースを覆うケースカバー部とを有する電子機器のケースカバーの取付構造であって、
前記ケースカバー部は、前記本体ケース部に対し前記特定方向に沿って移動させることで前記本体ケース部に取り付けられる構成とされ、
前記本体ケース部は、前記本体板部の左右両側に形成され第1の係合凸部または係合凹部が形成された左右側板部を有する一方、前記ケースカバー部は、前記本体ケース部の左右側板部の外側に位置する左右側面板部を有し、この左右側面板部に、前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記第1の係合凸部または係合凹部に係脱可能に係合する第1の被係合凹部または被係合凸部が形成されていることを特徴とする電子機器のケースカバーの取付構造。
【請求項2】
前記本体ケース部は、背面側に前記特定方向に延びる案内凹溝が形成され、
前記ケースカバー部は、下方側が開放された開口を有する背面側面板部を有し、この背面側面板部の開口の両側に前記本体ケース部の案内凹溝にスライド可能に係合する案内凸部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器のケースカバーの取付構造。
【請求項3】
前記ケースカバー部は、前記背面板部の上側に、前記開口に臨む第2の被係合凹部が形成され、
前記本体ケース部は、前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記ケースカバー部の第2の被係合凹部に係脱可能に係合する第2の係合凸部を有することを特徴とする請求項2記載の電子機器のケースカバーの取付構造。
【請求項4】
前記ケースカバー部は、正面側面板部を有し、この正面側面板部の内側に前記シールドケースに当接し先端が嵌合端部である補強リブが形成され、
前記本体ケース部は、前記補強リブの嵌合端部が嵌脱可能に嵌合する嵌合穴を有する底面側板部を有し、
前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記補強リブの嵌合端部が嵌合穴に嵌合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子機器のケースカバーの取付構造。
【請求項5】
前記ケースカバー部が前記本体ケース部に取り付けられた状態で、前記ケースカバー部の差し込み側の先端縁が、前記底面側板部よりもさらに下方に突出していることを特徴とする請求項4記載の電子機器のケースカバーの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−138988(P2011−138988A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299226(P2009−299226)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】