説明

電子機器の入力装置及び入力制御方法

【課題】操作者が入力装置に対して入力操作を実行しているときに、入力操作を中断せず、入力操作の快適性や利便性を損なうことなく、入力装置のキャリブレーションを実行する。
【解決手段】入力部1から取得した入力情報が、入力操作として無効な入力情報である場合に、この入力情報に係る静電容量値が、入力装置10の使用環境の変化等に影響されて変化した静電容量値であるとして、この入力情報に係る値に加減算することにより、この入力情報に係る静電容量値が間接的に初期化されるような値に、入力情報の基準値を補正する、所謂キャリブレーションを実行する。従って、入力操作が行われている領域はキャリブレーションの実行対象外となるため、入力装置10に対する入力操作が行われているときにも、入力操作を妨げることなく、キャリブレーションを実行することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のための入力装置、及び、その入力装置の入力制御方法に関し、特に静電容量方式のタッチセンサを備えた入力装置、及び、その入力装置の入力制御方法において、誤入力を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のための入力装置において、操作者による入力操作を静電容量方式のタッチセンサを用いて検知するタイプの入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。

特許文献1に記載の家電製品ないし住宅用機器等の操作部のような入力装置は、平坦な入力操作面を実現するにあたり、静電容量方式のタッチセンサを採用することで、高感度の入力検知を可能とするものであり、入力操作部が平坦な面とされたことから、清掃がし易くなって汚れが固着し難くなり、見栄えが向上する上に、清潔な状態を保つことができ、機能性と美観とを高度に兼ね備えたものとなる。 しかし、静電容量方式のタッチセンサは、検知される静電容量の変化を拠り所として、入力操作の有無の判断をするものであることから、特有の課題を抱えるものとなっている。
【0003】
例えば、入力装置の置かれた環境の変化の影響、具体的には、温度や湿度の変化による部品の変形等が生じることを受けて、操作者が意図的に入力操作を行っていない状態でも、検知される静電容量が変化して、静電容量方式のタッチセンサに入力操作があったものと誤認され、或いは、静電容量の変化が不足して入力操作が受け付けられず、操作者が意図した入力操作を行うことが出来なくなるおそれがある。
このような、入力装置の使用環境の変化等に伴う静電容量の変化の影響を回避する目的で、本出願人は、先に、入力操作を行う指等が入力部に当接していない状態である場合、又は、当接していない領域に対して、入力操作を有効にするか、或いは、無効にするかの判定(以下、入力操作の有効・無効の判定ともいう)の基準となる、閾値の更新を行う先行技術を提案している(特許文献2参照)。
【0004】
図6は、特許文献2に係る、入力操作の判定の基準となる閾値を更新する方法を例示する図であり、閾値の更新の態様をタッチセンサの検出量の変化量曲線と共に示したものである。図示によれば、タッチセンサの静電容量の検出量が、基本閾値THに達しておらず、かつ、補正閾値Cを上回っている状態が所定時間(A1)続いた後に、入力操作の判定に係る閾値が、基本閾値THから可変閾値Hiへと更新されている。このように、入力装置の使用環境の変化等により、タッチセンサの静電容量が増加していると判別された場合には、入力操作の判定に係る閾値を高い値へと更新し、タッチセンサの検知感度を下げている。又、入力操作の判定に係る閾値が、可変閾値Hiに設定されている状態で、タッチセンサの静電容量の検出量が、補正閾値Cを下回っている状態が所定時間(A2)続いた後に、入力操作の判定に係る閾値が、可変閾値Hiから基本閾値THへと更新されている。このように、タッチセンサの検知感度を下げた状態で、タッチセンサの静電容量が減少していると判別される場合には、入力操作の判定に係る閾値を元の値へと更新し、タッチセンサの検知感度を元に戻している。以上のごとく、図6に例示する方法は、入力装置の使用環境の変化等に伴う静電容量の変化に対応して、タッチセンサの検知感度を変化させることにより、入力操作の誤認等を回避するものである。
【0005】
一方、静電容量の変化の影響を回避する別の方法として、静電容量の変化を初期状態に戻す、或いは、複数の領域の静電容量をそろえる等の、所謂キャリブレーションという方法が存在する。このキャリブレーションには、電荷の供給や放出等によって、静電容量の変化を直接的に初期化する方法(例えば、特許文献3参照)や、静電容量の変化をデジタルデータ等の管理数値として記憶し、この管理数値を用いた演算処理等で初期化を行う間接的な方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−208682号公報
【特許文献2】特願2010−244563号明細書
【特許文献3】特開昭58−191035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、静電容量方式のタッチセンサを備えた入力装置に対する、静電容量の変化の管理数値を用いた方法によるキャリブレーションは、例えば、入力装置の起動時の所定期間やキャリブレーションを実行するために設定する動作モードの期間に、入力操作が行われない、又は、入力操作が行われても入力操作の有効・無効の判定を行わない、という条件の下に実行される必要があった。その理由は、入力操作中の入力装置に対してキャリブレーションを実行した場合、入力操作が行われている領域については、入力操作により増加した静電容量を初期化することになり、以後は、このタッチセンサによる適正な入力操作の検知が行えなくなってしまうためである。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作者が入力装置に対して入力操作を実行しているときに入力操作を妨げず、入力操作の快適性や利便性を損なうことなく入力装置のキャリブレーションを実行する方法と、この方法を備えた入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
(1)電子機器の入力装置であって、操作部及び該操作部に対する入力操作を検知する静電容量方式の複数の第1のタッチセンサを備える入力部と、前記第1のタッチセンサにより検知される検知情報を入力情報として取得し、該入力情報に係る値が前記所定値を超えて前記入力操作を有効と判定した場合のみ、前記入力情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する制御回路部とを備え、前記制御回路部は、前記入力操作が行われているとの判定が未確定の時点で、前記入力情報に係る値が前記所定値を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する入力装置(請求項1)。
【0010】
本項に記載の入力装置において、操作部に対する入力操作を検知するために、入力部に備えられた静電容量方式の第1のタッチセンサは、静電容量値を検知情報として検知する。そして、制御回路部は、第1のタッチセンサが検知した検知情報を入力情報として取得し、予め設定されている所定値に基づき、入力操作の有効・無効の判定を行う。つまりは、入力操作の判定を行うための閾値として設定されている所定値と、入力部から取得する入力情報に係る値とを比較し、入力操作の判定を行う。そして、入力情報に係る値が閾値を超えている場合に、操作部に対する入力操作が有効であると判定し、入力情報に対応する出力情報を電子機器に対して出力するものである。
【0011】
又、本項に記載の入力装置は、制御回路部における、入力操作が行われているとの判定が未確定の時点において、入力情報に係る値が所定値(閾値)を超えていない状態をトリガとして、入力情報の基準値を、現在取得している入力情報に係る値に基づいて、最適な値に補正するものである。ここで、入力情報の基準値とは、第1のタッチセンサが検知する静電容量値が、入力装置の使用環境の変化等に影響されて変化している場合に、その変化した静電容量値を間接的に(疑似的に)初期化するために、第1のタッチセンサが検知する静電容量値に係る検知情報を、制御回路部が入力情報として取得する際に、入力情報に係る値に加減算する値である。すなわち、本項に記載の入力装置は、現在取得している入力情報が、入力操作として無効な入力情報である場合に、この入力情報に係る静電容量値が、入力装置の使用環境の変化等に影響されて変化した静電容量値であるとして、この入力情報に係る値に加減算することにより、この入力情報に係る静電容量値が間接的に初期化されるような値に、入力情報の基準値を補正する、所謂キャリブレーションを行うものである。従って、入力操作が行われている領域はキャリブレーションの実行対象外となるため、入力装置に対する入力操作が行われているときにも、入力操作を妨げることなくキャリブレーションを実行するものとなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記制御回路部は、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するとともに、前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えているか否かをトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新するか否かを決定する入力装置(請求項2)。
【0013】
本項に記載の入力装置は、制御回路部において、補正後の入力情報の基準値、すなわち、キャリブレーション実行後の入力情報の基準値を、補正基準値として記憶しておき、この補正基準値に基づいて、再度、第1のタッチセンサが検知する検知情報に係る入力情報を取得する。そして、補正基準値に基づいた入力情報に係る値が、予め設定した所定範囲を超えているか否かを判定し、この判定結果により、入力情報の基準値を、記憶した補正基準値に更新するか否かを決定する。つまりは、キャリブレーション実行後の基準値に基づいて取得した入力情報に係る値が、予め設定した所定の許容範囲内にあるか否かの検証を行うことにより、キャリブレーションの実行結果を有効にするか、或いは、無効にするかを決定する(以下、有効化又は無効化ともいう)ものである。このため、適正に実行されたキャリブレーションの結果のみを、確実に採用するものとなる。
【0014】
(3)上記(2)項において、前記制御回路部は、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するとともに、前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新することを決定する入力装置。
本項に記載の入力装置は、制御回路部において、補正基準値に基づいて取得した入力情報に係る値が、予め設定した所定範囲を超えていない場合に、入力情報の基準値を、記憶した補正基準値に更新することを決定する。つまりは、キャリブレーション実行後の基準値に基づいて取得した入力情報に係る値が、予め設定した所定の許容範囲内にあるという検証結果が得られた場合に、キャリブレーションの実行結果を有効にする決定を行うものである。このため、適正に実行されたキャリブレーションの結果のみを、確実に採用するものとなる。
【0015】
(4)上記(2)項において、前記制御回路部は、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するとともに、前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えている状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新しないことを決定する入力装置。
本項に記載の入力装置は、制御回路部において、補正基準値に基づいて取得した入力情報に係る値が、予め設定した所定範囲を超えている場合に、入力情報の基準値を、記憶した補正基準値に更新しないことを決定する。つまりは、キャリブレーション実行後の基準値に基づいて取得した入力情報に係る値が、予め設定した所定の許容範囲内にないという検証結果が得られた場合に、キャリブレーションの実行結果を無効にする決定を行うものである。この結果、前回の有効と決定されたキャリブレーションの実行結果を継続して採用することになり、適正なキャリブレーションの実行結果のみを採用するものとなる。
【0016】
(5)上記(2)から(4)項において、前記制御回路部は、記憶部とデータ処理部とを備え、前記記憶部は、前記第1のタッチセンサにより検知される前記検知情報を記憶する機能と、前記操作部に対する入力操作の有効・無効の判定に係る前記所定値、及び、前記入力情報の基準値の更新に係る前記所定範囲を記憶する機能とを具備し、前記データ処理部は、前記第1のタッチセンサにより検知される前記検知情報を前記入力情報として取得し、該入力情報に係る値が前記所定値を超えて前記入力操作が有効と判定した場合のみ、前記入力情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する機能と、前記入力操作が行われているとの判定が未確定の時点で、前記入力情報に係る値が前記所定値を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正し、前記補正後の基準値を補正基準値として前記記憶部に出力する機能と、前記補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得し、前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えているか否かをトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新するか否かを決定する機能とを具備する入力装置(請求項3)。
【0017】
本項に記載の入力装置は、制御回路部が、記憶部とデータ処理部とを備えることにより、上記(1)(2)項に記述した制御回路部が行う処理動作を、分担して行うものとなる。具体的には、記憶部が、第1のタッチセンサにより検知される検知情報、補正基準値、入力操作の判定に係る閾値、及び、入力情報の基準値の更新に係る所定の許容範囲等を記憶する。そして、データ処理部が、記憶部により記憶された各データを取得する、或いは、記憶部が記憶する各データを出力する等の、記憶部との各データの受け渡しを実行するとともに、記憶部が行う記憶に係る処理動作以外の処理動作を行う。このため、制御回路部が行う処理動作を分担して効率良く行いながら、上記(1)(2)項と同様の作用を奏するものとなる。
【0018】
(6)上記(2)から(5)項において、前記制御回路部は、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する処理動作と、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得する処理動作と、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定する処理動作とを、前記第1のタッチセンサ毎に、或いは、予め設定された所定の複数の第1のタッチセンサ毎に、順番に行う入力装置(請求項4)。
【0019】
本項に記載の入力装置は、キャリブレーションの実行からキャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化までの一連の処理動作を、入力部に備えられた第1のタッチセンサ毎に、或いは、予め設定された所定の複数の第1のタッチセンサ毎に、順番に行うことにより、制御回路部の演算処理負担の軽減を図るものである。なお、入力装置が、例えば、パーソナルコンピュータの入力操作用のキーボードのように、多数のキースイッチを備える装置である場合は、第1のタッチセンサがキースイッチ毎に設けられるため、この場合には1キー毎に順番に、或いは、複数のキー毎に順番に、上述した一連の処理動作が行われることになる。
【0020】
(7)上記(2)から(5)項において、前記制御回路部は、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する処理動作と、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得する処理動作と、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定する処理動作とを、予め設定された時間間隔毎に行う入力装置(請求項5)。
本項に記載の入力装置は、キャリブレーションの実行からキャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化までの一連の処理動作を、予め設定された時間間隔毎に行うことにより、制御回路部の演算処理負担の軽減を図るものである。更に、この時間間隔を、入力装置の使用環境の変化等の影響により、静電容量が変化していく時間スケールを考慮して設定することにより、必要なタイミングでキャリブレーションを効率良く行うものとなる。
【0021】
(8)上記(2)から(7)項において、前記入力部は、入力装置の特定領域への人体の接触又は近接を検知する静電容量方式の第2のタッチセンサを更に備え、前記制御回路部は、前記第2のタッチセンサの検知情報に基づいて前記特定領域に対する人体の接触又は近接の有無を判別し、該接触又は近接がないと判別される場合には、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する処理動作と、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得する処理動作と、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定する処理動作とを、行う入力装置(請求項6)。
【0022】
本項に記載の入力装置によれば、制御回路部が、第2のタッチセンサの検知情報に基づいて入力装置の特定領域に対する人体の接触又は近接の有無を判別し、その接触又は近接が無い場合にのみ、キャリブレーションの実行からキャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化までの一連の処理動作を行う。すなわち、第1のタッチセンサの検知情報を拠り所とすることなく、第2のタッチセンサの検知情報に基づき、操作者が入力装置に対して入力操作を行っていないと判別される場合にのみ、キャリブレーションを行うことになるため、入力操作中であることによりキャリブレーションの実行対象外となる領域が無くなり、キャリブレーションを効率良く行うものとなる。
ここで、本項に記載の入力装置において、入力装置の特定領域は、入力操作を検知する領域と異なる領域であるとともに、操作者が操作部に対して通常の入力操作を実行するための姿勢(以下、入力姿勢ともいう)を取ったときに、操作者の体のいずれかの部分(典型的には、操作者の掌、手首等)が接触又は近接する蓋然性が高い箇所に設けられることが望ましく、更に、その箇所は、操作者が入力姿勢を取っていないときには、操作者の体のいずれの部分も接触又は近接しない蓋然性が高い箇所であることが望ましい。これによって、操作者が入力姿勢を取っていない、すなわち、入力操作中ではないことが正確に判別されるため、キャリブレーションを効率良く行うものとなる。
【0023】
(9)操作部及び該操作部に対する入力操作を検知する静電容量方式の複数の第1のタッチセンサを備える入力部と、前記第1のタッチセンサにより検知される検知情報を入力情報として取得し、該入力情報に係る値が前記所定値を超えて前記入力操作が有効と判定した場合のみ、前記入力情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する制御回路部とを備える、前記電子機器の入力装置の入力制御方法であって、前記入力操作が行われているとの判定が未確定の時点で、前記入力情報に係る値が前記所定値を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップを含む入力制御方法(請求項7)。
【0024】
(10)上記(9)項において、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えているか否かをトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新するか否かを決定するステップとを含む入力制御方法(請求項8)。
【0025】
(11)上記(10)項において、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップと、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定するステップとを、前記第1のタッチセンサ毎に、或いは、予め設定された所定の複数の第1のタッチセンサ毎に、順番に行う入力制御方法(請求項9)。
【0026】
(12)上記(10)項において、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップと、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定するステップとを、予め設定された時間間隔毎に行う入力制御方法(請求項10)。
【0027】
(13)上記(10)から(12)項において、前記入力部は、入力装置の特定領域への人体の接触又は近接を検知する静電容量方式の第2のタッチセンサを更に備え、前記第2のタッチセンサの検知情報に基づいて前記特定領域に対する人体の接触又は近接の有無を判別し、該接触又は近接がないと判別される場合には、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップと、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定するステップとを、行う入力制御方法(請求項11)。
そして、上記(9)から(13)項に記載の入力制御方法は、上記ステップを実行することにより、各々、上記(1)から(8)項の入力装置に対応する作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明はこのように構成したので、操作者が入力装置に対して入力操作を実行しているときに、入力操作を妨げず、入力操作の快適性や利便性を損なうことなく、入力装置のキャリブレーションを実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力装置の要部を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る入力装置において、キャリブレーションの一実行例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る入力装置において、キャリブレーションの別の実行例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る入力装置における、電子機器の入力装置の入力制御方法を示すフローチャートであり、キャリブレーションの実行に関するものである。
【図5】本発明の一実施形態に係る入力装置において、第2のタッチセンサの配置態様の一例を模式的に示す上面図である。
【図6】静電容量方式のタッチセンサを備えた入力装置において、タッチセンサの検知感度を更新する方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。以下の説明において、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1に示すように、本発明の実施の形態における入力装置10は、電子機器6用の入力装置であって、操作部(図5の符号14参照)及び操作部に対する入力操作を検知する静電容量方式の第1のタッチセンサ7を備える入力部1と、入力部1からの入力操作の検知情報が入力される制御回路部2とを備えている。入力部1は、更に、入力装置10上の特定領域への人体の接触又は近接を検知する静電容量方式の第2のタッチセンサ8を備えていてもよい。なお、第2のタッチセンサ8と、第2のタッチセンサ8を利用した場合の入力制御方法については後述する。
【0031】
ここで、本実施形態における入力装置10では、操作部上に複数の区画が設けられており、第1のタッチセンサ7は、各々の区画毎に設けられることで、各区画がキースイッチとして機能するものとなっている(図5参照)。従って、本入力装置10の操作者は、操作部上の各キースイッチ(区画)を指等により触れることで、入力操作を実行するものであり、本実施形態における入力装置10では、入力操作の対象となる領域とは、具体的には、第1のタッチセンサ7が対応する各キースイッチを示すものである。なお、各第1のタッチセンサ7は、例えば、各々の区画の直下に配置されるように、操作部の下部に配置される基板上に設けられるものであれば良い。
【0032】
又、入力装置10において、制御回路部2は、その機能ブロックとして、記憶部5及びデータ処理部4を含んでいる。記憶部5は、第1のタッチセンサ7により検知される検知情報、補正後の入力情報の基準値、入力操作の判定に係る閾値、及び、入力情報の基準値の更新に係る所定の許容範囲等の各データを記憶し、或いは、適宜それらのデータを更新して記憶するものである。
データ処理部4は、入力部1において検知された検知情報を、基準値に基づいて入力情報として取得し、この入力情報に係る値と、記憶部5に記憶されている入力操作の判定に係る閾値とを比較し、入力操作の有効・無効の判定を行う。そして、入力情報に係る値が入力操作の判定に係る閾値を越えている場合に、入力操作が行われていると判定し、入力部1から入力される入力操作の検知情報に対応する出力情報を、電子機器6に対して出力する。更に、データ処理部4は、所謂キャリブレーションの実行に係る処理動作を行うが、この処理動作については後述する。
【0033】
なお、入力装置10において、制御回路部2は、中央演算処理装置、メモリ、入出力回路等を備えた周知のマイクロコンピュータシステムとして構成されるものであっても良い。その際、制御回路部2がその構成要素として備える記憶部5及びデータ処理部4は、本説明における機能を果たす限り、任意のハードウェア又はソフトウェア、更にはその組み合わせにより実装することが出来る。
更に、必要に応じ、第1のタッチセンサ7により検知される入力操作の検知情報であるアナログ値、及び、第2のタッチセンサ8により検知される入力装置10上の特定領域への人体の接触又は近接の検知情報であるアナログ値をA/D変換して、デジタル値として制御回路部2へと出力する入力情報検出回路3(図1では、入力部1に含むものとして例示)を備えることとしても良い。こうすることにより、制御回路部2は、各タッチセンサにより検知される検知情報を、デジタル値として扱うことができるため、より信頼性のある一連の処理動作を行うことが可能となる。
【0034】
次に、図2から図4を参照しながら、これら各機能ブロックの機能と共に、本実施形態における入力装置10の入力制御方法である、キャリブレーションの実行に関する入力制御方法について説明する。なお、図2及び図3に示す図において、検出値は、第1のタッチセンサ7が検知情報として検知する静電容量値の変化を、データ処理部4が入力情報として取得した値を示し、基本値LSは、入力情報の取得等に係るデータ処理上の基準となる基準値を示し、基本閾値THは、入力操作の判定に係る閾値を示し、更に、許容範囲RPは、キャリブレーションの実行結果の有効化・無効化の判定に係る許容範囲を示している。
【0035】
本実施形態における入力装置10の入力制御方法は、概略的には、図2の例で示すと、データ処理部4において、検出値を取得していない初期状態(図2(a))から、入力操作が行われているか否かの判定が未確定の時点で、入力部1から取得した検出値が、基本閾値THを越えていない状態(図2(b))をトリガとして、検出値と同じ大きさの値(ΔS)を、基本値LSから減算(−ΔS)することにより、基本値LSを補正する(図2(c))ステップ、すなわち、キャリブレーションを実行するステップを含んでいる。
又、図3の例では、データ処理部4において、検出値を取得していない初期状態(図3(a))から、入力操作が行われているか否かの判定が未確定の時点で、入力部1から取得した検出値が、基本閾値THを越えていない状態(図3(b))をトリガとして、検出値と同じ大きさの値(−ΔS)を、基本値LSに加算(+ΔS)することにより、基本値LSを補正する(図3(c))、キャリブレーション実行のステップを含んでいる。
【0036】
更に、本実施形態における入力装置10の入力制御方法は、上記のステップに加えて、データ処理部4において、キャリブレーション実行後の基本値LSを記憶部5に記憶させ、このキャリブレーション実行後の基本値LSに基づいて、再度、入力部1から検出値を取得するステップと、再度取得した検出値が許容範囲RPを超えているか否かをトリガとして、キャリブレーションの実行結果を有効にするか、或いは、無効にするかを決定するステップとを含んでいる。
【0037】
以下、図2及び図3の例について、図4のフローチャートも参照しながら、詳細に説明する。
ステップS100:データ処理部4は、現在設定されている基本値LS(入力情報の基準値)を基準として、入力部1から検出値(入力情報に係る値)SIを取得する。
ステップS110:データ処理部4は、上記ステップS100で取得した検出値(入力情報に係る値)SIが、基本閾値TH(入力操作の判定に係る閾値)を上回っているか否かを監視する。
ステップS120:上記ステップS110のデータ処理部4の判断において、上記ステップS100で取得した検出値(入力情報に係る値)SIが、基本閾値TH(入力操作の判定に係る閾値)を上回っていると判断された場合には(Yes)、制御回路部2は、入力情報に対応する出力情報(キー入力ON)を電子機器6に対して出力する。すなわち、この場合には、上記ステップS100で取得した検出値を検知した、第1のタッチセンサ7が対応するキースイッチが、現在は入力操作中であると判断し、データ処理部4は、このキースイッチを今回のキャリブレーションの実行対象外として、上記ステップS100へと復帰する。
【0038】
ステップS130:上記ステップS110のデータ処理部4の判断において、上記ステップS100で取得した検出値(入力情報に係る値)SIが、基本閾値TH(入力操作の判定に係る閾値)を上回っていないと判断された時点で(No)、データ処理部4は、現在設定されている基本値LS(入力情報の基準値)に、上記ステップS100で取得した検出値(入力情報に係る値)SIと同じ大きさの値を加減算し、基本値LS(入力情報の基準値)を補正する。すなわち、この場合には、上記ステップS100で取得した検出値を検知した、第1のタッチセンサ7が対応するキースイッチが現在は入力操作中ではなく、この検出値は入力装置10の使用環境の変化等に影響されて変化した静電容量値であると判断して、この変化した静電容量値の大きさが、次回に取得する検出値(入力情報に係る値)に加算されないように、キャリブレーションを実行する。
【0039】
ステップS140:データ処理部4は、上記ステップS130で実行したキャリブレーションの結果として得られる、補正後の基本値LSを記憶部5に出力した後、この補正後の基本値LSを基準として、再度、入力部1から検出値(入力情報に係る値)SIn+1を取得する。そして、記憶部5は、データ処理部4から入力された補正後の基本値LSを、補正基準値として記憶する。
ステップS150:データ処理部4は、上記ステップS140で取得した検出値(入力情報に係る値)SIn+1が、許容範囲RP(キャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化に係る許容範囲)の範囲内にあるか否かを監視する。これにより、キャリブレーションの実行結果を有効にするか、或いは、無効にするかを決定(判定)する前に、入力操作が行われた否かを監視する。なお、許容範囲RPは、上記ステップS140で補正後の基本値LSを基準として取得した検出値SIn+1が、入力操作を伴う静電容量値の変化ではない限り、基本閾値THよりはるかに小さい値になることを考慮して、図2及び図3で示す許容範囲RPのように、基本閾値THと基本値LSとの差分よりも小さな幅で、基本値LSを対称に上下それぞれに広がる範囲に設定することが望ましい。
【0040】
ステップS160:上記ステップS150のデータ処理部4の判断において、上記ステップS140で取得した検出値(入力情報に係る値)SIn+1が、許容範囲RP(キャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化に係る許容範囲)の範囲内にあると判断された場合は(Yes)、データ処理部4は、上記ステップS130で実行した今回のキャリブレーションの結果を有効であると決定する。
ステップS170:データ処理部4は、補正後の基準値LS(補正基準値)を、新たに基本値LS(入力情報の基準値)として設定し、この値を記憶部5に出力する。そして、記憶部5は、データ処理部4から入力された補正後の基本値LSを、基本値LS(入力情報の基準値)として記憶する。その後、上記ステップS100へと復帰する。
【0041】
ステップS180:上記ステップS150のデータ処理部4の判断において、上記ステップS140で取得した検出値(入力情報に係る値)SIn+1が、許容範囲RP(キャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化に係る許容範囲)の範囲内にないと判断された場合は(No)、データ処理部4は、上記ステップS130で実行した今回のキャリブレーションの結果を無効であると決定する。
ステップS190:データ処理部4は、現在設定されている基本値LS(入力情報の基準値)、つまりは、直近に有効とされたキャリブレーションの実行結果として得られた基本値LSを、そのまま継続して使用するために、基本値LS(入力情報の基準値)として再設定し、この値を記憶部5に出力する。そして、記憶部5は、データ処理部4から入力された現在の基本値LSを、基本値LS(入力情報の基準値)として再度記憶する。その後、上記ステップS100へと復帰する。
【0042】
ここで、図4のフローチャートに示すような本実施形態における入力装置10の入力制御方法による、キャリブレーション実行のタイミングについて言及する。本入力制御方法によるキャリブレーションは、必ずしも、第1のタッチセンサ7により静電容量の変化が検知される度に、検知された全てのキースイッチに対して同時に実行する必要はなく、静電容量が変化していく時間スケールを考慮して、キャリブレーションの実行頻度を抑えつつも、キャリブレーションの効果が充分に発揮されるようなタイミングで実行することが望ましい。
例えば、入力装置10が、パーソナルコンピュータ用のキーボード装置のように多数のキースイッチを備えるような入力装置である場合には、1つのキースイッチ毎に順番に、或いは、予め設定された複数のキースイッチ毎に順番に、キャリブレーションを実行してもよい。又、入力装置10の使用環境の変化等の影響により、静電容量が変化していく時間スケールを、例えば、入力装置10を構成するハードウェアに実装したタイマカウンタ等により計測し、この時間スケールを考慮したタイミングでキャリブレーションを実行してもよい。
【0043】
次に、図5を参照しながら、入力部1に備えられた第2のタッチセンサ8と、第2のタッチセンサ8を利用した場合の入力装置10の入力制御方法について説明する。
まず、図5において、操作部14上の各キースイッチSW00〜SW36は、第1のタッチセンサ7が対応する入力操作の対象となる領域であり、これらの領域よりも操作者側に位置する左右2箇所(本実施形態における特定領域)には、第2のタッチセンサ8が対応する操作者検知スイッチSW40、SW45が設けられている。この第2のタッチセンサ8は、第1のタッチセンサ7と同様に、各操作者検知スイッチSW40、SW45の直下に配置されるように、入力操作面の下部に配置される基板上に設けられるものであってよい。
【0044】
ここで、図5に示すような、操作者検知スイッチSW40、SW45(及び対応する第2のタッチセンサ8)が設けられる位置は、入力操作の対象とはならない位置であって、特に、パーソナルコンピュータ用のキーボード装置のような、操作者が両手の複数本の指を用いて比較的高速に入力操作を実行することが想定される入力装置において好適な位置の例であり、この場合、操作者が入力姿勢を取ったときに、例えば、操作者検知スイッチSW40に対して操作者の左手の掌又は手首、及び、操作者検知スイッチSW45に対して操作者の右手の掌又は手首が接触又は近接する蓋然性が高く、かつ、操作者が入力姿勢を取っていないときには、操作者の体のどの一部も接触又は近接しない蓋然性の高い箇所である。又、操作者検知スイッチSW40及びSW45のサイズ(言い換えれば、対応する第2のタッチセンサ8による静電容量の検知が及ぶ範囲)も、上記のような蓋然性を勘案して適切に設定されるものである。
【0045】
そして、データ処理部4は、入力部1から、第2のタッチセンサ8において検知された検知情報を取得し、この検知情報に基づいて、操作者検知スイッチSW40、SW45への人体の接触又は近接が発生したか否かを判別する。
従って、第2のタッチセンサ8により検知される検知情報を、図4のフローチャートに示すような本実施形態における入力装置10の入力制御方法に利用することとすれば、例えば、操作者検知スイッチSW40及びSW45への人体の接触又は近接が発生していない場合にのみ、キャリブレーションを実行する、といった入力制御方法に応用が可能となる。
【0046】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、図1に示すような要部を有する、本実施形態に係る入力装置10において、操作部14に対する入力操作を検知するために、入力部1に備えられた静電容量方式の第1のタッチセンサ7は、静電容量値を検知情報として検知する。そして、制御回路部2は、第1のタッチセンサ7が検知した検知情報を入力情報として取得し、予め設定されている所定値(基本閾値TH)に基づき、入力操作の有効・無効の判定を行う。つまりは、入力操作の判定を行うための閾値として設定されている所定値(基本閾値TH)と、入力部1から取得する入力情報に係る値(検出値)とを比較し、入力操作の判定を行う。そして、入力情報に係る値(検出値)が閾値(基本閾値TH)を超えている場合に、操作部14に対する入力操作が有効であると判定し、入力情報に対応する出力情報を電子機器6に対して出力するものである。
【0047】
又、本実施形態に係る入力装置10は、図2から図4に示すように、制御回路部2における、入力操作が行われているとの判定が未確定の時点において、入力情報に係る値(検出値SI)が所定値(基本閾値TH)を超えていない状態(図2(b)、図3(b)、図4のステップS110で「No」の場合)をトリガとして、入力情報の基準値(基本値LS)を、現在取得している入力情報に係る値(検出値SI)に基づいて、最適な値に補正する(図2(c)、図3(c)、図4のステップS130)ことができる。すなわち、現在取得している入力情報が、入力操作として無効な入力情報である場合に、この入力情報に係る静電容量値が、入力装置10の使用環境の変化等に影響されて変化した静電容量値であるとして、この入力情報に係る値(検出値SI)に加減算することにより、この入力情報に係る静電容量値が間接的に初期化されるような値に、入力情報の基準値(基本値LS)を補正する、所謂キャリブレーションを行うことができる。従って、入力操作が行われている領域はキャリブレーションの実行対象外となるため、入力装置10に対する入力操作が行われているときにも、入力操作を妨げず、入力操作の快適性や利便性を損なうことなく、キャリブレーションを実行することが可能となる。
【0048】
又、本実施形態に係る入力装置10は、制御回路部2において、補正後の入力情報の基準値、すなわち、キャリブレーション実行後の入力情報の基準値を、補正基準値として記憶しておき、この補正基準値に基づいて、再度、第1のタッチセンサ7が検知する検知情報に係る入力情報を取得する(図4のステップS140)。そして、補正基準値に基づいた入力情報に係る値(検出値SIn+1)が、予め設定した所定範囲(許容範囲RP)を超えているか否かを判定し、この判定結果により、入力情報の基準値(基本値LS)を、記憶した補正基準値に更新するか否かを決定する。つまりは、キャリブレーション実行後の基準値に基づいて取得した入力情報に係る値(検出値SIn+1)が、予め設定した所定の許容範囲(許容範囲RP)内にあるか否かの検証を行うことにより、キャリブレーションの実行結果を有効にするか、或いは、無効にするかを決定するものである。このため、適正に実行したキャリブレーションの実行結果のみを、確実に採用することができる。
【0049】
更に、図4に示すように、制御回路部2において、キャリブレーション実行後の基準値に基づいて取得した入力情報に係る値(検出値SIn+1)が、予め設定した所定の許容範囲(許容範囲RP)内にあるという検証結果が得られた場合(図4のステップS150で「Yes」の場合)には、キャリブレーションの実行結果を有効にする決定を行い(図4のステップS160)、キャリブレーションの実行結果を更新する(図4のステップS170)こととし、更に、予め設定した所定の許容範囲(許容範囲RP)内にないという検証結果が得られた場合(図4のステップS150で「No」の場合)には、キャリブレーションの実行結果を無効にする決定を行い(図4のステップS180)、前回の有効とされたキャリブレーションの実行結果を継続して採用する(図4のステップS190)こととすれば、本実施形態に係る入力装置10は、検証結果に基づいた適正なキャリブレーションの実行結果のみを採用することが可能となる。
【0050】
又、本実施形態に係る入力装置10は、図1に示すように、制御回路部2が、記憶部5とデータ処理部4とを備えることにより、制御回路部2が行う処理動作を、分担して行うことができる。具体的には、記憶部5が、第1のタッチセンサ7により検知される検知情報、補正基準値、入力操作の判定に係る閾値(基本閾値TH)、及び、入力情報の基準値の更新に係る所定の許容範囲(許容範囲RP)等を記憶する。そして、データ処理部4が、記憶部5により記憶された各データを取得する、或いは、記憶部5が記憶する各データを出力する等の、記憶部5との各データの受け渡しを実行するとともに、記憶部5が行う記憶に係る処理動作以外の処理動作を行う。このため、制御回路部2が行う処理動作を分担して効率良く行いながら、入力装置10に対する入力操作が行われているときにも、正確なキャリブレーションを実行することが可能となる。
【0051】
又、本実施形態に係る入力装置10は、図4に示すような、キャリブレーションの実行からキャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化までの一連の処理動作を、入力部1に備えられた第1のタッチセンサ7が対応するキースイッチ毎に、或いは、予め設定された所定の複数の第1のタッチセンサ7が対応するキースイッチ毎に、順番に行うことにより、制御回路部2の演算処理負担の軽減を図ることができる。
一方、本実施形態に係る入力装置10は、図4に示すような、キャリブレーションの実行からキャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化までの一連の処理動作を、予め設定された時間間隔毎に行うこととすれば、制御回路部2の演算処理負担の更なる軽減を図ることが可能となる。更に、この時間間隔を、入力装置10の使用環境の変化等の影響により、静電容量が変化していく時間スケールを考慮して設定することにより、必要なタイミングでキャリブレーションを効率良く実行することが可能となる。
【0052】
又、本実施形態に係る入力装置10において、制御回路部2が、第2のタッチセンサ8の検知情報に基づいて特定領域に対する人体の接触又は近接の有無を判別し、その接触又は近接が無い場合にのみ、図4に示すような、キャリブレーションの実行からキャリブレーションの実行結果の有効化又は無効化までの一連の処理動作を行うこととすれば、キャリブレーションを効率良く行うことができる。すなわち、第1のタッチセンサ7の検知情報を拠り所とすることなく、第2のタッチセンサ8の検知情報に基づき、操作者が入力装置10に対して入力操作を行っていないと判別される場合にのみ、キャリブレーションを行うことになるため、入力操作中であることによりキャリブレーションの実行対象外となる領域が無くなり、より効率的にキャリブレーションを実行することが可能となる。
【0053】
又、上述した実施形態では、本発明に係る入力装置10を、主としてパーソナルコンピュータ用キーボード装置等の、操作者が複数本の指を用いて各キースイッチに対する入力操作を高速で実行することが想定される入力装置として好適な態様を例として説明したが、本発明に係る入力装置は、ゲーム機器の入力操作部、携帯通信端末の入力操作部、各種電子機器の操作パネル、及び、各種電子機器のリモコン装置等を含む、電子機器用の任意の入力装置に対して適用可能なものである。
【符号の説明】
【0054】
1:入力部、2:制御回路部、3:入力情報検出回路、4:データ処理部、5:記憶部、6:電子機器、7:第1のタッチセンサ、8:第2のタッチセンサ、10:入力装置、14:操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の入力装置であって、
操作部及び該操作部に対する入力操作を検知する静電容量方式の複数の第1のタッチセンサを備える入力部と、
前記第1のタッチセンサにより検知される検知情報を入力情報として取得し、該入力情報に係る値が前記所定値を超えて前記入力操作が有効と判定した場合のみ、前記入力情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する制御回路部とを備え、
前記制御回路部は、前記入力操作が行われているとの判定が未確定の時点で、前記入力情報に係る値が前記所定値を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するとともに、
前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えているか否かをトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新するか否かを決定することを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御回路部は、記憶部とデータ処理部とを備え、
前記記憶部は、前記第1のタッチセンサにより検知される前記検知情報を記憶する機能と、前記操作部に対する入力操作の有効・無効の判定に係る前記所定値、及び、前記入力情報の基準値の更新に係る前記所定範囲を記憶する機能とを具備し、
前記データ処理部は、前記第1のタッチセンサにより検知される前記検知情報を前記入力情報として取得し、該入力情報に係る値が前記所定値を超えて前記入力操作が有効と判定した場合のみ、前記入力情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する機能と、
前記入力操作が行われているとの判定が未確定の時点で、前記入力情報に係る値が前記所定値を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正し、前記補正後の基準値を補正基準値として前記記憶部に出力する機能と、
前記補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得し、前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えているか否かをトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新するか否かを決定する機能とを具備することを特徴とする請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する処理動作と、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得する処理動作と、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定する処理動作とを、前記第1のタッチセンサ毎に、或いは、予め設定された所定の複数の第1のタッチセンサ毎に、順番に行うことを特徴とする請求項2又は3記載の入力装置。
【請求項5】
前記制御回路部は、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する処理動作と、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得する処理動作と、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定する処理動作とを、予め設定された時間間隔毎に行うことを特徴とする請求項2又は3記載の入力装置。
【請求項6】
前記入力部は、入力装置の特定領域への人体の接触又は近接を検知する静電容量方式の第2のタッチセンサを更に備え、
前記制御回路部は、前記第2のタッチセンサの検知情報に基づいて前記特定領域に対する人体の接触又は近接の有無を判別し、該接触又は近接がないと判別される場合には、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正する処理動作と、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得する処理動作と、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定する処理動作とを、行うことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の入力装置。
【請求項7】
操作部及び該操作部に対する入力操作を検知する静電容量方式の複数の第1のタッチセンサを備える入力部と、
前記第1のタッチセンサにより検知される検知情報を入力情報として取得し、該入力情報に係る値が前記所定値を超えて前記入力操作が有効と判定した場合のみ、前記入力情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する制御回路部とを備える、前記電子機器の入力装置の入力制御方法であって、
前記入力操作が行われているとの判定が未確定の時点で、前記入力情報に係る値が前記所定値を超えていない状態をトリガとして、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップを含むことを特徴とする入力制御方法。
【請求項8】
前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、
前記入力情報に係る値が予め設定した所定範囲を超えているか否かをトリガとして、前記入力情報の基準値を前記補正基準値に更新するか否かを決定するステップとを含むことを特徴とする請求項7記載の入力制御方法。
【請求項9】
前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップと、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定するステップとを、前記第1のタッチセンサ毎に、或いは、予め設定された所定の複数の第1のタッチセンサ毎に、順番に行うことを特徴とする請求項8記載の入力制御方法。
【請求項10】
前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップと、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定するステップとを、予め設定された時間間隔毎に行うことを特徴とする請求項8記載の入力制御方法。
【請求項11】
前記入力部は、入力装置の特定領域への人体の接触又は近接を検知する静電容量方式の第2のタッチセンサを更に備え、
前記第2のタッチセンサの検知情報に基づいて前記特定領域に対する人体の接触又は近接の有無を判別し、該接触又は近接がないと判別される場合には、前記入力情報の基準値を、前記所定値を超えていない前記入力情報に係る値に基づいて補正するステップと、前記補正後の基準値を補正基準値として記憶し、該補正基準値に基づいて前記検知情報に係る入力情報を取得するステップと、前記入力情報の基準値を更新するか否かを決定するステップとを、行うことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項記載の入力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97510(P2013−97510A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238640(P2011−238640)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】