説明

電子機器の冷却装置

【課題】 電子機器内部の冷却機構を少数の部品で簡単かつ小型に構成し、液漏れのおそれを解消し、既存機器への適用を容易にする。
【解決手段】 サーバ1の発熱部3に奪熱部材12を装着し、奪熱部材12に冷却液Cの流通路14を形成する。流通路14の上流端16を給液配管17でポンプ13に接続し、流通路14の下流端18を排液配管19で排出口20に接続する。ポンプ13および排出口20をベース21上に設置し、ベース21を筺体2の背面2aに分解可能に取り付ける。コントローラは、奪熱部材12に設けた温度センサ15の出力が閾値を超えたときに、ポンプ13を駆動し、サーバ1に既設の空冷ファン4を停止する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筺体内部に設置された発熱部を冷却液によって冷却する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビネットラックに収納されるサーバに液冷方式の冷却装置を装備した技術が知られている。例えば、特許文献1に記載された冷却装置は、図3に示すように、サーバ51のCPU52にジャケット53を被せ、冷却液Cをポンプ54により供給配管55を介してジャケット53に供給し、CPU52を冷却した後に、戻し配管56を通してラジエータ57に戻し、筺体58の内部で循環させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の冷却装置によると、冷却液Cを筺体58の内部で循環させているので、ポンプ54やラジエータ57がサーバ51内に大きなスペースを占有するばかりでなく、筺体58内部における冷却液Cの循環通路も長くなり、配管部品の接続箇所が増え、液漏れの可能性が高まるという問題点があった。また、既存のサーバでは、筺体58内に冷却機器を増設できないため、冷却機能を追加したり、冷却方式を空冷から液冷に変更したりするなどの、改修作業が困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、筺体内部の冷却機構を少数の部品で簡単かつ小型に構成し、液漏れのおそれを解消できるとともに、既存機器に容易に適用できる電子機器冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の冷却装置は、電子機器の筺体内部に設置された発熱部を冷却液により冷却する装置において、冷却液が流通する奪熱部材を発熱部に装着し、冷却液を給送するポンプおよび冷却液を排出する排出口を筺体の外面に設置し、ポンプを給液配管で奪熱部材に接続し、奪熱部材を排液配管で排出口に接続したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の冷却装置は、既存の電子機器を容易に改修できるように、ポンプおよび排出口を共通のベース上に設置し、このベースを電子機器の筺体外面に分解可能に取り付けたことを特徴とする。
【0008】
より好ましくは、発熱部を送風により冷却する空冷ファン等の送風器を備えた電子機器において、ポンプおよび送風器を制御するコントローラを備え、ポンプによる冷却液の給送量と送風器による冷気の送風量とを協調制御することができる。また、ポンプおよび送風器を、冷却液と冷気が電子機器の筺体内部で熱交換可能となる位置に配設するのが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷却装置によれば、冷却液を筺体の外部から内部の発熱部に供給し、発熱部から筺体の外部に排出するので、筺体内部の冷却機構を少数の部品で簡単かつ短小に構成し、液漏れのおそれを解消できるとともに、既存機器への適用が容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すサーバ冷却装置の斜視図である。
【図2】図1の冷却装置を装備したサーバのラック収納形態を示す斜視図である。
【図3】従来の冷却装置を示すサーバの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、電子機器としてのサーバ1は、筺体2の内部にCPUやLSI等の発熱部3と、発熱部3を送風により冷却する送風器としての空冷ファン4と、メモリや電源ユニットを含む各種の電子部品5とを装備している。サーバ冷却装置11は、筺体2の内部で発熱部3の熱を奪う奪熱部材12と、筺体2の外部から冷却液Cを奪熱部材12に給送するポンプ13とを備えている。そして、空冷ファン4とポンプ13が、筺体2の内部において、冷却液と冷気の熱交換が可能な位置に配設されている。
【0012】
奪熱部材12は、銅、アルミニウム等の高伝熱性材料で成形され、発熱部3に着脱可能に装着されている。奪熱部材12の内部には冷却液Cの流通路14が蛇行状に形成され、奪熱部材12の外面に発熱部3の温度を検出する温度センサ15が取り付けられている。流通路14の上流端16は給液配管17によりポンプ13の吐出口(図示略)に接続され、流通路14の下流端18が排液配管19によって排出口20に接続されている。
【0013】
ポンプ13および排出口20はベース21の上に設置され、ベース21が筺体2の背面2aに分解可能に取り付けられている。ポンプ13の吸込口(図示略)は逆止弁22を介して冷却液Cの供給側外部配管23に接続され、排出口20が冷却液Cの回収側外部配管24に接続されている。そして、外部配管23,24の先端にプラグ25が設けられ、サーバラック31(図2参照)のダクト32,33にワンタッチで着脱される。なお、ベース21を筺体2の前面または側面に取り付けてもよい。
【0014】
図2に示すように、サーバラック31の内部には、複数台のサーバ1が規定の間隔をあけて格納され、サーバ1の背面側に供給ダクト32と回収ダクト33が立設されている。供給ダクト32の入口34は循環ポンプ35に接続され、回収ダクト33の出口36がタンク37に接続されている。タンク37には熱交換器38が付設され、熱交換後の低温冷却液Cが循環ポンプ35により供給ダクト32を介して各サーバ1に供給され、サーバ1を通過した高温冷却液Cが回収ダクト33を介してタンク37に還流する。
【0015】
サーバラック31の最上部にはコントローラ41が設置されている。コントローラ41の背面には、各サーバ1の温度センサ15から発熱部3の温度情報を入力する入力端子42と、空冷ファン4およびポンプ13に制御信号を出力する出力端子43と、データセンターの集中管理コンピュータ(図示略)に接続されるネットワーク端子44とが設けられている。なお、データセンターでは、複数基のサーバラック31がタンク37を個別に装備してもよく、一台のタンク37を共用してもよい。
【0016】
上記構成のサーバラック31では、コントローラ41が、常時、温度センサ15からの信号に基づいて、すべてのサーバ1の温度状態を監視している。温度センサ15の出力が閾値を超えると、コントローラ41はそのサーバ1において、ポンプ13を駆動し、空冷ファン4を停止または回転数を落とす制御を行う。そして、ポンプ13の駆動により、冷却液Cが筺体2の外部から給液配管17を通って筺体2内部の奪熱部材12に供給され、発熱部3を冷却した後に、排液配管19を通って排出口20より筺体2の外部に排出される。
【0017】
なお、発熱部3を短時間に冷却する必要がある場合は、空冷ファン4とポンプ13を同時に動作させ、奪熱部材12での熱交換によって作り出した冷気を筺体2内部で循環し、液冷と空冷の相乗効果を得る。また、奪熱部材12の上面に、空冷ファン4からの送風を受ける冷却フィンを設けて、奪熱部材12における熱交換効率をより一層高めることも可能である。さらに、筺体2の適所に送風口を設け、送風口を筺体外部のブロアまたはコンプレッサー等の外部送風器に接続し、外部からの冷気を筺体2の送風口より奪熱部材12上の冷却フィンに向けて送るように構成してもよい。この場合、空冷ファン4と外部送風器を併用してもよく、外部送風器を単独で使用してもよい。
【0018】
したがって、この実施形態のサーバ冷却装置11によれば、筺体2内部の冷却機構を奪熱部材12、給液配管17、排液配管19の3部品で簡単かつ小型に構成できる。このため、筺体2内部の冷却液通路を短縮し、冷却液Cの漏れによる電子部品の破損を未然に防止でき、既存サーバへの後付けや改造を容易に行うことができる。また、発熱部3の温度が閾値を超えたサーバ1のみポンプ13を駆動するので、特に、大規模データセンターにおいて電力利用効率を高め、節電効果を上げることができ、しかも、ポンプ13と空冷ファン4の協調制御によって発熱温度に合わせた木目細やかな冷却を行うことができる。
【0019】
なお、本発明の冷却装置は、サーバに限定されるものではなく、サーバ機能を備えないコンピュータ、例えば、パーソナルコンピュータやデータベース用コンピュータなど、発熱部の冷却を必要とする各種電子機器に適用することができる。また、ラック31およびタンク37は、図2に示す構成に限定されず、電子機器の種類や台数に応じて任意に変更することができる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 サーバ
2 筺体
3 発熱部
4 空冷ファン
11 サーバ冷却装置
12 奪熱部材
13 ポンプ
15 温度センサ
17 給液配管
19 排液配管
20 排出口
21 ベース
41 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筺体内部に設置された発熱部を冷却液により冷却する装置において、
冷却液が流通する奪熱部材を前記発熱部に装着し、冷却液を給送するポンプおよび冷却液を排出する排出口を前記筺体の外面に設置し、ポンプを給液配管で奪熱部材に接続し、奪熱部材を排液配管で排出口に接続したことを特徴とする電子機器冷却装置。
【請求項2】
前記ポンプおよび排出口を共通のベース上に設置し、ベースを筺体の外面に分解可能に取り付けた請求項1記載の電子機器冷却装置。
【請求項3】
前記発熱部を送風により冷却する送風器と、前記ポンプおよび送風器を制御するコントローラを備え、ポンプによる冷却液の給送量と送風器による冷気の送風量とを協調制御する請求項1又は2記載の電子機器冷却装置。
【請求項4】
前記ポンプおよび送風器を、冷却液と冷気が電子機器の筺体内部で熱交換可能となる位置に配設した請求項3記載の電子機器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−54498(P2012−54498A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197762(P2010−197762)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(503207913)株式会社SOHKi (13)
【Fターム(参考)】