説明

電子機器の放熱構造

【課題】発熱性の部品を実装した基板を筐体内に配設してなるものにおいて、基板における配線効率の悪化を抑制しながらも、良好な放熱性能を得る。
【解決手段】筐体内に配設される基板13の表面に、発熱性の部品14を実装する。基板13の表面に、部品14の端子14aが接続されるランド15や、そのランド15に接続される配線パターン16、比較的小さい電流が流れる配線パターン17を設ける。基板13に、ランド15に連続して放熱用スルーホール18を形成する。さらに第2のスルーホール19を形成する。放熱用スルーホール18を、通風可能な大きさの貫通孔18aを有し、且つ、発熱性の部品14の熱を基板13の表面から裏面に導くためのメッキ部20を有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱性の部品を実装面に実装してなる基板を、筐体内に配設して構成される電子機器における、前記発熱性の部品からの熱を放熱するための電子機器の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えばプログラマブルコントローラのユニット(CPUユニット、電源ユニット、I/Oユニット等)においては、図5に示すように、矩形箱状の筐体1内に、電子回路を実装したプリント配線基板2を配設して構成されている。図4に示すように、前記プリント配線基板2の表面には、例えば電源ICやパワートランジスタなどの大電流が流れる発熱性の部品3が実装される。また、図5に示すように、筐体1の上面部には、放熱用の開口部1aが設けられている。
【0003】
さらに、図4に一部のみ示すように、前記プリント配線基板2上には、前記部品3の端子3aが接続されるランド4が設けられると共に、そのランド4に連続する配線パターン5が設けられる(便宜上、ハッチングを付して示す)。この場合、比較的大きな電流が流れる配線パターン5については、その幅寸法が比較的大きく構成される。
【0004】
ところで、この種の電子機器にあっては、全体のコンパクト化を図るために、プリント配線基板2における部品の実装密度を高密度としてプリント配線基板2自体を極力小さくし、これと共に、プリント配線基板2が、筐体1を図5で左右に仕切るように狭いスペースに配設される事情がある。このため、発熱性の部品3からの放熱性能が十分に得られず、筐体1内に熱が溜まりやすい問題がある。
【0005】
そこで、従来では、図4、図5に示すように、筐体1の内部のプリント配線基板2に放熱用の孔6を複数個(図では2個)設けることにより、プリント配線基板2の表裏両面側での空気の流通を可能とし、放熱性能を向上させることが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−40968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、プリント配線基板2に放熱用の孔6を設けたものでは、図4に示すように、前記配線パターン5を、孔6を避けるように遠回りして形成しなければならず、その分配線パターン5が長くなり、配線効率が悪くなる不具合が生ずる。尚、上記部品3においては、パッケージだけでなく端子3a部分ひいてはランド4部分も高温となる事情があるが、従来のものでは、部品3の端子3aからの放熱に関しては、十分な考慮がなされていなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、発熱性の部品を実装した基板を筐体内に配設してなるものにおいて、前記基板における配線効率の悪化を抑制しながらも、良好な放熱性能を得ることができる電子機器の放熱構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器の放熱構造は、発熱性の部品を実装面に実装してなる基板を、筐体内に配設して構成される電子機器における、前記発熱性の部品からの熱を放熱するための構造であって、前記基板には、前記発熱性の部品が接続されるランドに連続して放熱用スルーホールが形成されていると共に、前記放熱用スルーホールは、通風可能な大きさの貫通孔を有し、且つ、前記発熱性の部品の熱を前記基板の実装面から反対側の面に導くためのメッキ部を有して構成されているところに特徴を有する。
【0009】
本発明においては、基板に形成された放熱用スルーホールは、通風可能な大きさの貫通孔を有するので、その貫通孔を通して基板の両面側での空気の流通(熱の対流)を可能とし、放熱性能を良好とすることができる。そして、放熱用スルーホールは、発熱性の部品の熱を基板の実装面から反対側の面に導くためのメッキ部を有して構成されるので、メッキ部による熱伝導により、発熱性の部品の熱を基板の反対側の面側に逃がすことが可能となる。しかも、放熱用スルーホールは、発熱性の部品が接続されるランドに連続して形成されているので、放熱用スルーホールを配線の一部とすることができ、孔を避けて配線を遠回りさせるものと異なり、配線効率の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をプログラマブルコントローラのユニットに適用した一実施例について、図1ないし図3を参照しながら説明する。まず、図2は、本実施例に係る電子機器としてのプログラマブルコントローラのユニット(CPUユニット、電源ユニット、I/Oユニット等)11の構成を概略的に示している。
【0011】
ユニット11は、例えば矩形箱状をなす筐体12内に、例えば多層配線基板或いは両面プリント配線基板からなる基板13を配設して構成されている。この場合、前記基板13は、筐体12内を図2で左右に仕切るように設けられている。また、筐体12の上面部には,放熱用の開口部12aが設けられている。この開口部12aは、前記基板13により仕切られた筐体12内の左側の空間(基板13の裏面側の空間)に連通するように設けられている。尚、ここでは、基板13の図2で右側を向く面を表面(実装面)、それとは反対側の面を裏面と称することとする。
【0012】
詳しく図示はしないが、前記基板13には、電子回路が実装されている。図1に示すように、そのうち基板13の表面(実装面)には、例えば電源ICやパワートランジスタなどの大電流が流れる発熱性の部品14が実装される。このとき、基板13の表面には、前記部品14の端子14aが接続(はんだ付け)されるランド15が設けられると共に、そのランド15に接続される配線パターン16が設けられる。図1では、便宜上、これらランド15及び配線パターン16をハッチングを付して示している。この場合、比較的大きな電流が流れる配線パターン16については、その幅寸法が比較的大きく構成される。基板13の表面には、比較的小さい電流が流れる配線パターン17も設けられている。尚、これらランド15や配線パターン16,17は、例えば銅箔等から構成されている。
【0013】
さて、本実施例では、前記基板13には、前記ランド15のうち図1で下側に位置するものの下側に連続して、放熱用スルーホール18が形成されている。図1で下側の配線パターン16は、その放熱用スルーホール18に連続するように形成されている。さらに本実施例では、図2にも示すように、基板13のうち、図1で上部には、第2のスルーホール19が形成されている。
【0014】
前記放熱用スルーホール18は、図2,図3にも示すように、通風可能な大きさの貫通孔18aを有し、且つ、前記発熱性の部品14の熱を前記基板13の表面(実装面)から裏面に導くためのメッキ部20を有して構成されている。前記貫通孔18aは、図1でやや横方向に長い楕円形状に形成されており、このとき、貫通孔18aの直径(短径)寸法が、例えば1.5mm以上とされている。
【0015】
そして、図3に示すように、前記メッキ部20は、例えば銅メッキからなり、基板13の表面の貫通孔18aの周囲、貫通孔18aの内面、基板13の裏面の貫通孔18aの周囲部分に渡って形成されている。このとき、図1に示すように、基板13の表面においては、メッキ部20が、前記ランド15及び配線パターン16に接続されるように設けられている。
【0016】
また、前記第2のスルーホール19は、やはり、図1で横長な楕円形状に形成された通風可能な貫通孔19aの周囲に、図2に示すように、基板13の表裏に渡るようにメッキ部19bを形成して構成されている。図1に示すように、前記メッキ部19bは、基板13の表面において、前記配線パターン17に接続され、該配線パターン17の一部を構成するようになっている。
【0017】
上記構成においては、基板13に実装された発熱性の部品14(パッケージ)の発熱により、基板13の実装面(表面)側の空気が暖められる。このとき、基板13に形成された放熱用スルーホール18は、通風可能な大きさの貫通孔18aを有するので、その貫通孔18aを通して基板13の両面側での空気の流通(熱の対流)が可能となり、暖められた空気が、基板13の裏面側に流れ、筐体12の開口部12aから外部に排出されるようになる。第2のスルーホール19部分でも、同様の現象が生じ、部品14からの放熱が基板13の上部からも同様に行われるようになる。
【0018】
一方、部品14においては、パッケージだけでなく端子14a部分も高温となり、ひいてはランド部15や配線パターン16が高温となる事情がある。ところが、ランド部15に放熱用スルーホール18のメッキ部20が接続されていることにより、メッキ部20による熱伝導により、その熱が基板13の裏面側に伝えられ、そこから放熱させることができる。これらによって、部品14からの放熱が極めて良好に行われるようになる。
【0019】
この場合、前記放熱用スルーホール18は、発熱性の部品14の端子14aが接続されるランド15に連続して形成されているので、放熱用スルーホール18(メッキ部20)を配線の一部とすることができる。これにより、従来のような、孔6を避けて配線パターン5を遠回りさせるものと異なり、配線パターンが徒に長くなることなく、配線効率の悪化を抑制することができる。尚、第2のスルーホール19についても、メッキ部19bを配線パターン17の一部とすることができ、配線が不要に長くなることを防止することができる。
【0020】
このように本実施例によれば、発熱性の部品14を実装した基板13を筐体12内に配設してなるものにおいて、基板13に放熱用スルーホール18を設けたことにより、基板13における配線効率の悪化を抑制しながらも、良好な放熱性能を得ることができるという優れた効果を得ることができるものである。
【0021】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば放熱用スルーホール18の貫通孔18aを、円形状或いは多角形状に形成しても良い。第2のスルーホール19についても同様である。また、放熱用スルーホール18(及び第2のスルーホール19)を設ける個数としても、許す限り多くすることにより、より放熱性を高めることができる。その他、本発明は、プログラマブルコントローラに限らず、筐体(ケース)内に、基板を配設してなる電子機器全般に適用することができる等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、基板の概略的平面図
【図2】プログラマブルコントローラのユニットの概略的縦断正面図
【図3】放熱用スルーホール部分の拡大縦断面図
【図4】従来例を示す図1相当図
【図5】図2相当図
【符号の説明】
【0023】
図面中、11はプログラマブルコントローラのユニット(電子機器)、12は筐体、12aは開口部、13は基板、14は部品、15はランド、18は放熱用スルーホール、18aは貫通孔、19は第2のスルーホール、20はメッキ部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱性の部品を実装面に実装してなる基板を、筐体内に配設して構成される電子機器における、前記発熱性の部品からの熱を放熱するための構造であって、
前記基板には、前記発熱性の部品が接続されるランドに連続して放熱用スルーホールが形成されていると共に、
前記放熱用スルーホールは、通風可能な大きさの貫通孔を有し、且つ、前記発熱性の部品の熱を前記基板の実装面から反対側の面に導くためのメッキ部を有して構成されていることを特徴とする電子機器の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−91834(P2008−91834A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274061(P2006−274061)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】