説明

電子機器の防水構造

【課題】 電子機器において防水性能を向上させる。
【解決手段】 蓋3に、内周囲い壁18および外周囲い壁19によってパッキン25を収容するパッキン収容溝20が設けられている。パッキン25は両側部26,27とこれらを連結する連結部28とによって断面コ字状に形成され、各側部26,27が内周囲い壁18および外周囲い壁19のそれぞれに互いに接触している。蓋3が結合されるケースに設けられた防水用囲い壁8の先端部8aによって、パッキン25の被押し込み溝29がパッキン収容溝20の底部20a側に押し込まれる。パッキン25の側部26が矢印A方向に弾性変形して側面26bが内周囲い壁18に密着するとともに、側部27が矢印B方向に弾性変形して側面27bが外周囲い壁19に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水用空間を囲む防水用囲い壁によって、パッキンをパッキン収容溝内に押し込むようにした電子機器の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器の防水構造としては、開口端面の全周にわたってパッキン収容溝が設けられたケースと、このケースの開口を覆い周端の全周にわたってリブが設けられた底板とを備え、底板をケースに結合することにより、リブによってパッキンをパッキン収容溝内に押し込むものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−203127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の電子機器の防水構造においては、リブによってパッキン収容溝内に押し込まれるパッキンは、パッキン収容溝の底部には押し付けられるものの、パッキン収容溝の両側部には押し付けられる構造ではないため、必ずしも防水性能が十分とはいえないという問題があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、電子機器において防水性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、少なくとも一面が開口するケースと、このケースの開口を覆う蓋とを備え、これらケースと蓋とを結合することにより防水用空間が設けられた筺体を形成し、前記ケースに前記防水用空間を囲む防水用囲い壁を設け、前記蓋に、内周囲い壁および外周囲い壁によってパッキンを収容するパッキン収容溝を設け、前記防水用囲い壁によってパッキンをパッキン収容溝内に押し込む電子機器の防水構造において、前記パッキンを、互いに対向する一対の側部とこれら側部間を連結する連結部とによって断面コ字状に形成し、前記パッキンの各側部と前記内周囲い壁および外周囲い壁のそれぞれとを互いに接触させ、前記防水用囲い壁によって前記連結部を前記パッキン収容溝の底部側に押し込むものである。
【0007】
本発明は、前記発明において、前記防水用囲い壁の先端部を断面半円状に形成し、前記連結部の前記防水用囲い壁の先端部が当接する部位に、断面半円状を有する被押し込み溝を設けたものである。
【0008】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記パッキン収容溝の底部に、前記パッキンの両側部間に嵌合する位置決め用凸条体を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防水用囲い壁によってパッキンを押し込むことにより、パッキンは、パッキン収容溝の底部に押し付けられるだけではなく、内周囲い壁側および外周囲い壁側にも弾性変形するため、パッキンの各側部がこれら内周囲い壁および外周囲い壁のそれぞれに押し付けられる。このため、各側部がこれら内周囲い壁および外周囲い壁のそれぞれに密着することにより、パッキンがパッキン収容溝の全面に押し付けられるから、防水性能が向上する。
【0010】
前記発明のうちの一つの発明によれば、防水用囲い壁の先端部がパッキンの被押し込み溝内に嵌合することにより、常にパッキンがパッキン収容溝内で同じ位置に位置付けられるため、パッキンの各側部が内周囲い壁および外周囲い壁のそれぞれにむらなく均一に押し付けられる。
【0011】
前記発明のうちの一つの発明によれば、パッキン収容溝の底部にパッキンの両側部の間に嵌合する位置決め用凸条体を設けたことにより、防水用囲い壁の先端部によってパッキンがパッキン収容溝の底部側に押し込まれているとき、常にパッキンがパッキン収容溝内で同じ位置に位置付けられる。このため、パッキンの各側部が内周囲い壁および外周囲い壁のそれぞれにむらなく均一に押し付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器の平面図である。
【図2】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器における上方の蓋の底面図である。
【図3】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器を分解して示す斜視図である。
【図4】図1におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】本発明に係る蓋の取付構造において、パッキンの弾性変形を説明するための図4におけるV部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。図3に全体を符号1で示す電子機器は、上下に開口2a,2bを有する略枠状に形成されたケース2と、このケース2の上下の開口2a,2bをそれぞれ覆う上下の蓋3,4とを備え、上下の蓋3,4をケース2に結合することにより、筺体5が形成される。
【0014】
本実施例では、上下に蓋3,4が設けられ、筺体5内に上下のそれぞれに後述する防水構造が採用されているが、各防水構造とも同じ構造を呈しているので、以下、上方の防水構造についてのみ詳細に説明し、下方の防水構造については必要に応じて適宜説明する。
【0015】
ケース2の上方の開口端7には、電池9等を収容する第1の防水用空間10を囲む枠状に形成された防水用囲い壁8が図中上方に向かって一体に突設されており、この防水用囲い壁8の両側には、ねじ止め用のスタッド11,11が図中上方に向かって一体に突設されている。防水用囲い壁8の先端部8aは、図5に示すように断面半円状に形成されている。
【0016】
蓋2は、図3に示すように上板13とこの上板13を囲むように上板13の周端から一体に突設された囲い壁14とによって、図中下方が開口しているとともに囲い壁13の右方が開口している。蓋2の上板13の両端部には、上記したスタッド11に螺合させるねじ15を挿通させる挿通孔16,16が設けられている。
【0017】
この蓋2の上板13の裏面には、図2および図4に示すように、防水用囲い壁8に対応する枠状に形成された内周囲い壁18と、この内周囲い壁18の周囲に設けられ囲い壁14とともに枠状に形成された外周囲い壁19とが突設されている。これら内周囲い壁18と外周囲い壁19と上板13とによって後述するパッキン25を収容する平面視長方形のパッキン収容溝20が防水用囲い壁8に対向するように形成されている。
【0018】
このパッキン収容溝20の底部20aには、内周囲い壁18と外周囲い壁19とから等距離に位置し、平面視長方形に形成された位置決め用凸条体21が一体に突設されている。
【0019】
パッキン25は弾性変形可能なゴム材によって、図3に示すように全体が枠状に形成されており、図5に示すように互いに対向する一対の側部26,27とこれら側部26,27間を連結する連結部28とによって断面コ字状に形成されており、連結部28の外面の中央部には、被押し込み溝29が連結部28の全周にわたって設けられている。
【0020】
この被押し込み溝29は断面半円状に形成されており、この曲率半径は、上記した防水用囲い壁8の先端部8aの曲率半径よりも大きく形成されている。
【0021】
このように形成されたパッキン25を、側部26,27の先端26a,27aをパッキン収容溝20の底部20a側に向けてパッキン収容溝20内に嵌入させると、図5に示すように各側部26,27の側面26b,27bと、内周囲い壁18および外周囲い壁19のそれぞれとが互いに接触し、位置決め用凸条体21に両側部18,19間が嵌合された状態で、パッキン25がパッキン収容溝20内に収容される。
【0022】
パッキン25がパッキン収容溝20内に収容された蓋3の開口端14aを、図3に示すようにケース2の開口端7に突き合わせるようにして、ケース2の開口2aを蓋3によって覆い、挿通孔16を挿通させたねじ15をスタッド11に螺合させることにより、蓋3がケース2に結合されて筺体5が形成される。
【0023】
蓋3がケース2に結合されると、ケース2の防水用囲い壁8の先端部8aが、図5に示すようにパッキン25の被押し込み溝29に当接し、パッキン25を図中上方に押し上げる。このため、パッキン25の両側部26,27の先端26a,27aがパッキン収容溝20の底部20aに押し付けられる。
【0024】
また、パッキン25が断面コ字状に形成されていることにより、防水用囲い壁8の先端部8aが当接している被押し込み溝29の上方である両側部26,27の間はパッキンが存在しない空間33となっている。
【0025】
このため、防水用囲い壁8の先端部8aによってパッキン25の被押し込み溝29が上方に押し上げられると、側部26は、側面26bが内周囲い壁18側に押し付けられるように矢印A方向に弾性変形し、側部27は、側面27bが外周囲い壁19側に押し付けられるように矢印B方向に弾性変形する。
【0026】
このように、パッキン25の各側部26,27が内周囲い壁18および外周囲い壁19のそれぞれに押し付けられて密着し、両側部26,27の先端がパッキン収容溝20の底部20aに押し付けられて密着するから、防水性能が向上する。
【0027】
また、防水用囲い壁8の先端部8aが断面半円状に形成され、パッキン25の被押し込み溝29が断面半円状に形成されているため、先端部8aが被押し込み溝29内に嵌合する。したがって、常にパッキン25がパッキン収容溝20内で同じ位置に位置付けられるため、パッキン25の各側部26,27が内周囲い壁18および外周囲い壁19のそれぞれにむらなく均一に押し付けられる。
【0028】
さらに、被押し込み溝29の曲率半径が、先端部8aの曲率半径よりも大きく形成されていることにより、先端部8aによる被押し込み溝29の上方への押し上げによって、側部26の矢印A方向への弾性変形および側部27の矢印B方向への弾性変形がより大きくなるから、各側部26,27が内周囲い壁18および外周囲い壁19へより強く密着する。
【0029】
さらに、パッキン収容溝20の底部20aにパッキン25の両側部26,27の間に嵌合する位置決め用凸条体21を設けたことにより、防水用囲い壁8の先端部8aによってパッキン25がパッキン収容溝20の底部20a側に押し上げられているとき、常にパッキン25がパッキン収容溝20内で同じ位置に位置付けられる。このため、パッキン25の各側部26,27が内周囲い壁18および外周囲い壁19のそれぞれにむらなく均一に押し付けられる。
【0030】
なお、ケース2の下方側の開口端39にも、下方側の第2の防水用空間40を囲む防水用囲い壁41が形成され、蓋4に形成されたパッキン収容溝20内に上記したパッキン25が収容されており、これら防水用囲い壁41とパッキン25とで、上記した上側の第1の防水用空間10と同様に、第2の防水用空間40の防水が行われる。
【0031】
なお、本実施例においては、筺体5を上下に二つの開口2a,2bを有するケース2の例を説明したが、上下のいずれか一方に開口を有するケースにも適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1…電子機器、2…ケース、3,4…蓋、5…筺体、8…防水用囲い壁、10…防水用空間、18…内周囲い壁、19…外周囲い壁、20…パッキン収容溝、21…位置決め用凸条体、25…パッキン、26,27…側部、29…被押し込み溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面が開口するケースと、このケースの開口を覆う蓋とを備え、これらケースと蓋とを結合することにより防水用空間が設けられた筺体を形成し、前記ケースに前記防水用空間を囲む防水用囲い壁を設け、前記蓋に、内周囲い壁および外周囲い壁によってパッキンを収容するパッキン収容溝を設け、前記防水用囲い壁によってパッキンをパッキン収容溝内に押し込む電子機器の防水構造において、
前記パッキンを、互いに対向する一対の側部とこれら側部間を連結する連結部とによって断面コ字状に形成し、
前記パッキンの各側部と前記内周囲い壁および外周囲い壁のそれぞれとを互いに接触させ、前記防水用囲い壁によって前記連結部を前記パッキン収容溝の底部側に押し込むことを特徴とする電子機器の防水構造。
【請求項2】
前記防水用囲い壁の先端部を断面半円状に形成し、前記連結部の前記防水用囲い壁の先端部が当接する部位に、断面半円状を有する被押し込み溝を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項3】
前記パッキン収容溝の底部に、前記パッキンの両側部間に嵌合する位置決め用凸条体を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の電子機器の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−77099(P2011−77099A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224109(P2009−224109)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】