説明

電子機器及びその製造方法

【課題】リードと接続部との間に導通不良が発生することを抑制する。
【解決手段】本発明の電子機器10は、接続部24及び導電部28を有して構成されたターミナル12と、接続部24と電気的に接続されたリード38と、リード38を支持する本体部42とを有して構成されたコンデンサ14と、導電部28が封止されると共に接続部24、リード38及び本体部42が露出されるように、ターミナル12及びコンデンサ14と一体的に成形されたモールド樹脂18とを備えている。この構成によれば、ターミナル12と一体的にモールド樹脂18を成形する際に、コンデンサ14についても一体成形するので、リード38と接続部24との接続位置の精度を向上させることができる。これにより、リード38の基端部に応力が集中することを抑制できるので、リード38と接続部24との間に導通不良が発生することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大型電子部品の実装構造が開示されている。この大型電子部品の実装構造では、端子基板に嵌着片を備えた嵌着体が一体に形成されており、この嵌着体で電子部品を保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−312486号公報
【特許文献2】特開2007−28117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記大型電子部品の実装構造では、電子部品及び嵌着体の寸法公差などの影響により、リードと端子との接続位置が予め設定された位置からずれることがあった。そして、この場合には、例えば、リードと端子との接続後にリードの基端部に応力が集中するので、リードと端子とを接続するハンダや溶接等の接合部にクラックが生じたり、リードが折れたり、接合部が剥離したりして、リードと端子との間に導通不良が発生する虞があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、電子部品のリードとモールド樹脂に封止された導電部材の接続部との間に導通不良が発生することを抑制することができる電子機器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の電子機器は、接続部及び導電部を有して構成された導電部材と、前記接続部と電気的に接続されたリードと、前記リードを支持する本体部とを有して構成された電子部品と、前記導電部が封止されると共に前記接続部、前記リード及び前記本体部が露出されるように、前記導電部材及び前記電子部品と一体的に成形されたモールド樹脂と、を備えている。
【0007】
この電子機器によれば、導電部材と一体的にモールド樹脂を成形する際に、電子部品についても一体成形するので、従来の構成(例えば、特許文献1に記載の構成)に比して、接続部とリードとの接続位置の精度を向上させることができる。これにより、例えば、リードと接続部との接続後にリードの基端部に応力が集中することを抑制することができるので、リードと接続部との間に導通不良が発生することを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の電子機器は、請求項1に記載の電子機器において、前記モールド樹脂の表面部に、前記本体部の周囲の少なくとも一部を支持する支持壁部が形成された構成とされている。
【0009】
この電子機器によれば、本体部の周囲の少なくとも一部は、モールド樹脂の表面部に形成された支持壁部によって支持されているので、接続部とリードとの接続位置の精度をより一層向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の電子機器は、請求項1又は請求項2に記載の電子機器において、前記本体部が弾性部材を介して前記モールド樹脂と固定された構成とされている。
【0011】
この電子機器によれば、本体部は、弾性部材を介してモールド樹脂と固定されているので、振動等によってリードと接続部との間に導通不良が発生することを抑制することができる。
【0012】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載の電子機器の製造方法は、金型の内部に、接続部及び導電部を有して構成された導電部材と、前記接続部と電気的に接続されるリードと、前記リードを支持する本体部とを有して構成された電子部品とを配置する配置工程と、前記導電部が封止されると共に前記接続部、前記リード及び前記本体部が露出されるように、前記金型の内部に樹脂を充填して前記導電部材及び前記電子部品と一体的にモールド樹脂を成形する成形工程と、前記接続部と前記リードとを電気的に接続する接続工程と、を備えている。
【0013】
この電子機器の製造方法によれば、成形工程において、導電部材と一体的にモールド樹脂を成形する際に、電子部品についても一体成形するので、従来の構成(例えば、特許文献1に記載の構成)に比して、接続部とリードとの接続位置の精度を向上させることができる。これにより、例えば、リードと端子との接続後にリードの基端部に応力が集中することを抑制することができるので、リードと接続部との間に導通不良が発生することを抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の電子機器の製造方法は、請求項4に記載の電子機器の製造方法における前記配置工程において、前記本体部を断熱材で覆い、前記成形工程において、前記本体部を前記断熱材で覆った状態で前記モールド樹脂を成形する方法である。
【0015】
この電子機器の製造方法によれば、成形工程において、本体部を断熱材で覆った状態でモールド樹脂を成形するので、モールド樹脂の成形時に発生する熱から本体部を保護することができる。
【0016】
請求項6に記載の電子機器の製造方法は、請求項4又は請求項5に記載の電子機器の製造方法における前記配置工程において、前記導電部材を前記本体部に対して前記導電部材の板厚方向に対向させた状態で配置し、前記成形工程において、前記導電部材に対する前記本体部と反対側から前記導電部材の注入孔を介して前記本体部に向けて前記樹脂を注入する方法である。
【0017】
この電子機器の製造方法によれば、成形工程において、導電部材に対する本体部と反対側から導電部材の注入孔を介して本体部に向けて樹脂を注入するので、導電部材を本体部に対して導電部材の板厚方向に対向させてあっても、本体部に樹脂を行き渡らせることができ、本体部とモールド樹脂とを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の平面図である。
【図2】図1に示される電子機器の側面図である。
【図3】(A)は図1に示されるコンデンサの周辺部の側面断面図、(B)は図1に示されるチョークコイルの周辺部の側面断面図である。
【図4】図1に示される電子機器の製造方法を説明する図である。
【図5】図1に示される電子機器の製造方法を説明する図である。
【図6】比較例に係る電子機器の一部断面を含む要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
図1〜図3に示される本発明の一実施形態に係る電子機器10は、例えば、自動車に搭載されるモータを制御するための制御装置であり、導電部材としてのターミナル12と、電子部品としてのコンデンサ14及びチョークコイル16と、モールド樹脂18とを備えている。
【0021】
ターミナル12は、金属板を加工して形成されたものであり、端子部20,22と、接続部24,26と、導電部28とを有して構成されている。端子部20,22及び接続部24,26は、モールド樹脂18から露出されており、導電部28は、モールド樹脂18によって封止されている。接続部24,26には、接続孔30,32が形成されており、導電部28におけるコンデンサ14及びチョークコイル16と対向する位置には、注入孔34,36が形成されている。
【0022】
コンデンサ14及びチョークコイル16は、電気雑音を除去するための回路を構成するものであり、それぞれリード38,40と、このリード38,40を支持する本体部42,44とを有して構成されている。コンデンサ14のリード38は、接続部24に形成された接続孔30に挿通された状態でこの接続孔30の周辺部とハンダ46により電気的に接続されており、チョークコイル16のリード40は、接続部26に形成された接続孔32に挿通された状態でこの接続孔32の周辺部とハンダ48により電気的に接続されている。
【0023】
また、コンデンサ14の本体部42の底面部には、ゴムプレート50が一体に取り付けられており、この本体部42の底面部は、このゴムプレート50を介してモールド樹脂18と固定されている。一方、チョークコイル16の本体部44の底面部は、モールド樹脂18と直接的に固定されている。そして、このコンデンサ14及びチョークコイル16は、モールド樹脂18と一体成形された状態では、モールド樹脂18から露出されている。
【0024】
また、コンデンサ14の本体部42の周囲の一部は、モールド樹脂18の表面部に形成された平面視C字状の支持壁部52によって支持されており、チョークコイル16の本体部44の周囲の一部は、同じくモールド樹脂18の表面部に形成された平面視L字状の支持壁部54によって支持されている。
【0025】
次に、上記構成からなる電子機器10の製造方法について説明する。
【0026】
(配置工程)
先ず、図4,図5の上図に示されるように、コンデンサ14の本体部42を断熱材56で覆った状態で下型58の内部に配置すると共に、チョークコイル16を下型58の内部に配置する。また、ターミナル12を下型58の上方に配置すると共に、接続孔30,32にコンデンサ14のリード38及びチョークコイル16のリード40をそれぞれ挿通する。そして、このようにすることにより、ターミナル12をコンデンサ14の本体部42及びチョークコイル16の本体部44に対してターミナル12の板厚方向に対向させた状態で配置する。
【0027】
(成形工程)
続いて、図4,図5の中図に示されるように、下型58の上に上型60を配置し、この上型60及び下型58からなる金型62の内部に樹脂を充填する。このとき、ターミナル12に対するコンデンサ14の本体部42と反対側から注入孔34を介してコンデンサ14の本体部42に向けて樹脂を注入する。同様に、ターミナル12に対するチョークコイル16の本体部44と反対側から注入孔36を介してチョークコイル16の本体部44に向けて樹脂を注入する。
【0028】
そして、金型62の内部に充填した樹脂を冷却固化させることにより、ターミナル12、コンデンサ14、及び、チョークコイル16と一体的にモールド樹脂18を形成する。また、このモールド樹脂18の形成に伴って、コンデンサ14の本体部42の底面部をゴムプレート50を介してモールド樹脂18と固定すると共に、チョークコイル16の本体部44の底面部をモールド樹脂18と直接的に固定する。
【0029】
(接続工程)
そして、図4,図5の下図に示されるように、コンデンサ14のリード38を接続部24とハンダ46により電気的に接続すると共に、チョークコイル16のリード40を接続部26とハンダ48により電気的に接続する。以上の要領で、電子機器10は製造される。
【0030】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
ここで、本発明の一実施形態の作用及び効果を明確にするために、比較例について説明する。
【0032】
図6に示される比較例に係る電子機器110は、次の要領で製造される。すなわち、先ず、インサート成形によりターミナル112を封止するモールド樹脂118を成形し、ターミナル112の接続部124に形成された接続孔130に電子部品114のリード138を挿通し、そして、接続部124とリード138とをハンダ146により電気的に接続する。以上の要領で、電子機器110は製造される。
【0033】
ところが、この比較例に係る電子機器110では、電子部品114が振動した場合に、リード138と接続部124との接続部分に応力が加わるため、リード138と接続部124とを接続するハンダ146にクラックが生じたり、リード138が折れたり、リード138と接続部124との接続部分に剥離が生じたりして、リード138と接続部124との間に導通不良が発生する虞がある。
【0034】
そこで、これを防止するために、電子部品114の本体部142をターミナル112の支持部152に接着材164により接着することも考えられるが、この場合には、接着材164の硬化に時間を要し、製造コストが増加するという問題がある。
【0035】
一方、モールド樹脂118に予め弾性片を形成し、この弾性片で電子部品114の本体部142を支持してから接続部124とリード138とを電気的に接続することも考えられるが、この場合には、電子部品114及び弾性片の寸法公差などの影響により、リード138と接続部124との接続位置が予め設定された位置からずれることが想定される。そして、この場合には、例えば、リード138と接続部124との接続後にリード138の基端部に応力が集中するので、上記と同様に、リード138と接続部124とを接続するハンダ146にクラックが生じるなどにより、リード138と接続部124との間に導通不良が発生する虞がある。
【0036】
これに対し、本発明の一実施形態に係る電子機器10の製造方法によれば、成形工程において、ターミナル12と一体的にモールド樹脂18を成形する際に、コンデンサ14及びチョークコイル16についても一体成形する。
【0037】
従って、コンデンサ14及びチョークコイル16が振動することを抑制することができるので、リード38,40と接続部24,26との間に導通不良が発生することを抑制することができる。
【0038】
また、コンデンサ14及びチョークコイル16をモールド樹脂18に接着する作業が不要であるので、製造コストを低減することができる。
【0039】
さらに、上述のように、モールド樹脂118に予め弾性片を形成し、この弾性片で電子部品114の本体部142を支持する場合に比して、リード38,40と接続部24,26との接続位置の精度を向上させることができる。これにより、例えば、リード38,40と接続部24,26との接続後にリード38,40の基端部に応力が集中することを抑制することができるので、リード38,40と接続部24,26との間に導通不良が発生することを抑制することができる。
【0040】
しかも、本発明の一実施形態に係る電子機器10の製造方法によれば、成形工程において、コンデンサ14の本体部42を断熱材56で覆った状態でモールド樹脂18を成形するので、モールド樹脂18の成形時に発生する熱からコンデンサ14の本体部42を保護することができる。
【0041】
また、成形工程において、ターミナル12に対する本体部42,44と反対側から注入孔34,36を介して本体部42,44に向けて樹脂を注入するので、ターミナル12を本体部42,44に対してターミナル12の板厚方向に対向させてあっても、本体部42,44に樹脂を行き渡らせることができ、本体部42,44とモールド樹脂18とを固定することができる。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係る電子機器10によれば、コンデンサ14及びチョークコイル16の本体部42,44の周囲の一部は、モールド樹脂18の表面部に形成された支持壁部52,54によってそれぞれ支持されているので、リード38,40と接続部24,26との接続位置の精度をより一層向上させることができる。
【0043】
また、コンデンサ14の本体部42は、ゴムプレート50を介してモールド樹脂18と固定されているので、振動等によってリード38と接続部24との間に導通不良が発生することをより一層抑制することができる。
【0044】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0045】
上記実施形態において、電子機器10は、電子部品として、コンデンサ14及びチョークコイル16を備えていたが、その他の電子部品を備えていても良い。
【0046】
また、上記実施形態において、コンデンサ14及びチョークコイル16の本体部42,44は、その周囲の一部が支持壁部52,54に支持されていたが、支持壁部52,54に全周に亘って支持されていても良い。
【0047】
また、上記実施形態において、リード38,40は、ハンダ46,48により接続部24,26と接続されていたが、例えば、溶接等により接続部24,26と接続されていても良い。
【0048】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10・・・電子機器、12・・・ターミナル(導電部材)、14・・・コンデンサ(電子部品)、16・・・チョークコイル(電子部品)、18・・・モールド樹脂、20,22・・・端子部、24,26・・・接続部、28・・・導電部、30,32・・・接続孔、34,36・・・注入孔、38,40・・・リード、42,44・・・本体部、46,48・・・ハンダ、50・・・ゴムプレート(弾性部材)、52,54・・・支持壁部、56・・・断熱材、58・・・下型、60・・・上型、62・・・金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部及び導電部を有して構成された導電部材と、
前記接続部と電気的に接続されたリードと、前記リードを支持する本体部とを有して構成された電子部品と、
前記導電部が封止されると共に前記接続部、前記リード及び前記本体部が露出されるように、前記導電部材及び前記電子部品と一体的に成形されたモールド樹脂と、
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記モールド樹脂の表面部には、前記本体部の周囲の少なくとも一部を支持する支持壁部が形成されている、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記本体部は、弾性部材を介して前記モールド樹脂と固定されている、
請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
金型の内部に、接続部及び導電部を有して構成された導電部材と、前記接続部と電気的に接続されるリードと、前記リードを支持する本体部とを有して構成された電子部品とを配置する配置工程と、
前記導電部が封止されると共に前記接続部、前記リード及び前記本体部が露出されるように、前記金型の内部に樹脂を充填して前記導電部材及び前記電子部品と一体的にモールド樹脂を成形する成形工程と、
前記接続部と前記リードとを電気的に接続する接続工程と、
を備えた電子機器の製造方法。
【請求項5】
前記配置工程において、前記本体部を断熱材で覆い、
前記成形工程において、前記本体部を前記断熱材で覆った状態で前記モールド樹脂を成形する、
請求項4に記載の電子機器の製造方法。
【請求項6】
前記配置工程において、前記導電部材を前記本体部に対して前記導電部材の板厚方向に対向させた状態で配置し、
前記成形工程において、前記導電部材に対する前記本体部と反対側から前記導電部材の注入孔を介して前記本体部に向けて前記樹脂を注入する、
請求項4又は請求項5に記載の電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−40686(P2011−40686A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189368(P2009−189368)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】