説明

電子機器収容装置

【課題】電子機器をラックに収容してデータセンタとして使用する電子機器収容装置において、電子機器の収容方式が異なる複数種類のラックが混在しても、電子機器による発熱を適正に冷却する。
【解決手段】電子機器収容装置1は、ISO規格コンテナ2にラック11が設置され、ラック11に電子機器12が正面12aを吸気エリアA1、A2に連通させて収容されている。電子機器12の背面12bに排気チムニー3が電子機器12から排出された熱気を取り込んで排出するように設けられている。ラック11には、排気チムニー3から排出された熱気を熱交換して吸気エリアA1、A2へ冷気を供給する熱交換器17が設けられている。熱交換器17がラック11ごとに1対1で設けられているため、ISO規格コンテナ2に複数のラック11が設置されていても、ラック11単位で電子機器12の排熱処理を行え、電子機器12による発熱の適正な冷却を容易に実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ、ルータ、通信機器、ストレージなど各種の電子機器をラックに収容してデータセンタとして使用することが可能な電子機器収容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のデータセンタにおいては、電子機器による発熱を冷却するためのエネルギーコストを低減するため、データセンタと熱交換器との間で冷媒を循環させる技術が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−267707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これでは、データセンタと熱交換器とが1対1で対応しているため、データセンタに複数のラックが設置されていると、ラック単位で電子機器の排熱処理を行うことができない。その結果、とりわけ電子機器の収容方式が異なる複数種類のラックが混在する場合に、電子機器による発熱の冷却を適正に実行することが困難になるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、電子機器の収容方式が異なる複数種類のラックが混在する場合であっても、電子機器による発熱を適正に冷却することが容易な電子機器収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明者は、電子機器による発熱を適正に冷却することを容易にするべく、ラック単位で排熱処理を行うことに着目し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、筐体にラックが設置され、このラックに電子機器が吸気面を吸気エリアに連通させて収容され、この電子機器の排気面に排気チムニーが当該電子機器から排出された熱気を取り込んで排出するように設けられ、前記ラックに、前記排気チムニーから排出された熱気を熱交換して前記吸気エリアへ冷気を供給する熱交換手段が設けられている電子機器収容装置としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ラックに前記電子機器が挿入されることにより、この電子機器の正面に接して前記吸気エリアが形成されるとともに、この電子機器の背面に前記排気チムニーが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ラックに前記電子機器が2つ以上挿入されることにより、これらの電子機器の各背面に包囲されて前記排気チムニーが上下方向に形成されるとともに、これらの電子機器の各正面に接して前記吸気エリアが2つ以上、これらの電子機器および前記排気チムニーを挟んで互いに水平方向に対向するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ラックに前記電子機器が一対以上、互いに水平方向に対向するように挿入されることにより、これら一対以上の電子機器の各背面に挟まれて前記排気チムニーが上下方向に形成されるとともに、これらの電子機器の各正面に接して前記吸気エリアが2つ、これらの電子機器および前記排気チムニーを挟んで互いに水平方向に対向するように形成され、前記2つの吸気エリア間を連通する通気管が配設され、この通気管に送風手段が設けられ、前記2つの吸気エリア間の差圧に基づいて前記送風手段を駆動することにより、前記2つの吸気エリアのうち高圧側の吸気エリアから低圧側の吸気エリアへ送風するように制御する送風制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記ラックは、前記電子機器に対応する左右一対以上のC形ガイドレールを有し、これらのC形ガイドレールは、前記排気チムニーの側壁を構成していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ラックとして、前面または後面から前記電子機器が挿入される片面差し型のラックと、前面および後面から前記電子機器が一対以上、互いに水平方向に対向するように挿入される両面差し型のラックとが混在し、前記片面差し型のラックは、この片面差し型のラックに収容される前記電子機器の正面に接して前記吸気エリアが形成されるとともに、当該電子機器の背面に前記排気チムニーが設けられ、前記両面差し型のラックは、この両面差し型のラックに収容される前記一対以上の電子機器の各背面に挟まれて前記排気チムニーが上下方向に形成されるとともに、当該電子機器の各正面に接して前記吸気エリアが2つ、これらの電子機器および前記排気チムニーを挟んで互いに水平方向に対向するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記片面差し型のラックと前記両面差し型のラックとの間には、前記吸気エリアと前記排気チムニーとを遮蔽する仕切板が開閉自在に設けられていることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の構成に加え、前記筐体は、貨物用コンテナであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱交換器がラックごとに1対1で設けられているため、筐体に複数のラックが設置されていても、ラック単位で電子機器の排熱処理を行うことができる。その結果、電子機器の収容方式が異なる複数種類のラックが混在する場合であっても、電子機器による発熱の冷却を適正に実行することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子機器収容装置の斜視図である。
【図2】図1に示す電子機器収容装置の平面図である。
【図3】図2に示す電子機器収容装置のA−A線による断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電子機器収容装置の平面図である。
【図5】図4に示す電子機器収容装置のB−B線による断面図である。
【図6】図4に示す電子機器収容装置のC−C線による断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る電子機器収容装置の正面図である。
【図8】図7に示す電子機器収容装置のD−D線による断面図である。
【図9】図7に示す電子機器収容装置のラックに電子機器を収容する方法を示す斜視図である。
【図10】図7に示す電子機器収容装置のラックに対する電子機器の収容状態を示す垂直断面図である。
【図11】本発明のその他の実施の形態に係る電子機器収容装置のラックを例示する平面図であって、(a)は正方形断面のラックを示す図、(b)は正六角形断面のラックを示す図、(c)は円形断面のラックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0018】
図1乃至図3には、本発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1では、筐体の一例としてISO規格コンテナ2を用い、熱交換手段の一例として熱交換器17を用いている。なお、図1では、電子機器12の図示を省略している。
【0019】
実施の形態1に係る電子機器収容装置1は、図1に示すように、直方体のISO規格コンテナ2を具備している。このISO規格コンテナ2は、天井4、床5、左右一対の側壁6、7および前後一対の妻壁8、9から構成されており、これらの天井4、床5、側壁6、7および妻壁8、9に包囲される形で密閉空間S1が形成されている。そして、ISO規格コンテナ2は、この密閉空間S1の内外を断熱する断熱構造を備えている。なお、後部の妻壁9は開閉自在になっている。
【0020】
また、ISO規格コンテナ2の内部には、図1および図2に示すように、ISO規格コンテナ2の左右方向(矢印Y方向)のほぼ中央に直方体(長方形断面)のラック11が複数本(例えば、8本)、ISO規格コンテナ2の前後方向(矢印X方向)に沿って互いに隙間なく並んで溶接された形で設置されている。そして、ISO規格コンテナ2の内部空間は、これらのラック11によって2つ吸気エリアA1、A2に分割されている。
【0021】
また、各ラック11にはそれぞれ、図2および図3に示すように、サーバ、ルータ、通信機器、ストレージなどの平板状(薄型直方体)の電子機器12が複数対(例えば、40対)、ラック11にその前面(図2下側面)および後面(図2上側面)から挿入されることにより、ISO規格コンテナ2の上下方向(矢印Z方向)に沿って積み重ねられた形で収容されている。これらの電子機器12は、ラック11の前面側に位置する電子機器12の吸気面となる正面12aが一方の吸気エリアA1に接するとともに、ラック11の後面側に位置する電子機器12の吸気面となる正面12aが他方の吸気エリアA2に接している。また、これら複数対の電子機器12の排気面となる各背面12bに挟まれて排気チムニー3が上下方向に形成されている。
【0022】
さらに、各ラック11にはそれぞれ、図3に示すように、外気を利用することにより、排気チムニー3内の熱気を熱交換して2つ吸気エリアA1、A2へ冷気を供給する熱交換器17が装備されている。
【0023】
電子機器収容装置1は以上のような構成を有するので、この電子機器収容装置1において電子機器12を使用すると、この電子機器12の温度が上昇する。このとき、電子機器12は、図3に示すように、各吸気エリアA1、A2から冷気を取り込んで排気チムニー3へ熱気を排出する。また、熱交換器17は、排気チムニー3内の熱気を熱交換して吸気エリアA1、A2へ冷気を供給する。したがって、電子機器12は、その使用に伴う温度上昇が効率よく抑制されるため、規定の動作温度範囲内で正常に使用することができる。
【0024】
このとき、熱交換器17は、上述したとおり、ラック11ごとに1対1で設けられているため、ISO規格コンテナ2に複数対のラック11が設置されていても、ラック11単位で電子機器12の排熱処理を行うことができる。その結果、電子機器12による発熱の冷却を適正に実行することが容易となる。
【0025】
また、電子機器収容装置1では、上述したとおり、各ラック11に複数対の電子機器12が収容されているため、電子機器収容装置1全体の収容能力を高めることが可能となる。
【0026】
また、ISO規格コンテナ2は、上述したとおり、密閉空間S1の内外を断熱する断熱構造を備えているため、密閉空間S1の外部温度の高低を問わず、密閉空間S1内の電子機器12の動作を保証することができる。同時に、たとえ密閉空間S1の外部温度が低くても、密閉空間S1の内部で結露する事態の発生を回避することが可能となる。したがって、電子機器収容装置1は、その設置場所の温度の許容範囲が広がり、ひいては汎用性が高くなる。
【0027】
さらに、電子機器収容装置1は、すべての電子機器12やラック11その他の部材がISO規格コンテナ2内に納まっており、このISO規格コンテナ2が貨物用コンテナの一種である。そのため、車両や船舶などの輸送手段を用いてISO規格コンテナ2ごと輸送することにより、電子機器収容装置1を所望の場所に設置することが容易となる。また、電子機器収容装置1が用済みになったときには、この電子機器収容装置1を容易に撤去することができる。
[発明の実施の形態2]
【0028】
図4乃至図6には、本発明の実施の形態2を示す。この実施の形態2では、実施の形態1と同様、筐体の一例としてISO規格コンテナ2を用い、熱交換手段の一例として熱交換器17を用い、さらに、送風手段の一例として送風ファン21を用い、送風制御手段の一例としてコントローラ23を用いている。
【0029】
実施の形態2に係る電子機器収容装置1では、図4に示すように、片面差し型のラック11Aと両面差し型のラック11Bとが混在している。
【0030】
ここで、片面差し型のラック11Aは、図5に示すように、その設置位置がISO規格コンテナ2の左右方向(矢印Y方向)の中央やや左寄りである。各ラック11Aにはそれぞれ、サーバ、ルータ、通信機器、ストレージなどの平板状(薄型直方体)の電子機器12が複数台(例えば、40台)、ラック11Aにその前面(図5右側面)から挿入されることにより、ISO規格コンテナ2の上下方向(矢印Z方向)に沿って積み重ねられた形で収容されている。そして、各ラック11Aの正面12aは吸気エリアA1に接するとともに、各ラック11Aの背面12bには排気チムニー3が上下方向に形成されている。
【0031】
一方、両面差し型のラック11Bは、図6に示すように、実施の形態1と同様の構成を有している。さらに、各ラック11Bの下部にはそれぞれ、角筒状の通気管20が2つの吸気エリアA1、A2間を連通するように配設されており、通気管20の両端部の近傍には一対の送風ファン21が正逆回転自在に付設されている。また、2つの吸気エリアA1、A2には、それぞれ圧力センサ22が取り付けられており、これらの圧力センサ22の出力信号に基づいて一対の送風ファン21を駆動するコントローラ23が設けられている。
【0032】
また、片面差し型のラック11Aと両面差し型のラック11Bとの間には、図4に示すように、吸気エリアA2と排気チムニー3とを遮蔽するカーテンなどの仕切板24が開閉自在に設けられている。
【0033】
その他の構成については、上述した実施の形態1と同様であるので、同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
したがって、この実施の形態2では、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0035】
すなわち、この電子機器収容装置1において電子機器12を使用すると、この電子機器12の温度が上昇する。このとき、片面差し型のラック11Aにおいては、電子機器12は、図5に示すように、吸気エリアA1から冷気を取り込んで排気チムニー3へ熱気を排出する。また、熱交換器17は、外気を利用することにより、排気チムニー3内の熱気を熱交換して吸気エリアA1へ冷気を供給する。したがって、電子機器12は、その使用に伴う温度上昇が効率よく抑制されるため、規定の動作温度範囲内で正常に使用することができる。一方、両面差し型のラック11Bにおいては、電子機器12は、図6に示すように、各吸気エリアA1、A2から冷気を取り込んで排気チムニー3へ熱気を排出する。また、熱交換器17は、排気チムニー3内の熱気を熱交換して吸気エリアA1、A2へ冷気を供給する。したがって、電子機器12は、その使用に伴う温度上昇が効率よく抑制されるため、規定の動作温度範囲内で正常に使用することができる。
【0036】
このように、熱交換器17は、ラック11ごとに1対1で設けられているため、ISO規格コンテナ2に複数のラック11が設置されていても、ラック11単位で電子機器12の排熱処理を行うことができる。その結果、電子機器12の収容方式が異なる2種類のラック(つまり、片面差し型のラック11Aおよび両面差し型のラック11B)が混在する場合であっても、電子機器12による発熱の冷却を適正に実行することが容易となる。
【0037】
その他の作用効果についても、上述した実施の形態1と同様である。
【0038】
これに加えて、実施の形態2では、電子機器12の使用中に2つの吸気エリアA1、A2で気圧に差が生じた場合、コントローラ23は、各吸気エリアA1、A2に取り付けられた圧力センサ22の出力信号に基づき、2つの吸気エリアA1、A2間の差圧を演算し、この差圧に基づいて一対の送風ファン21を適宜駆動する。このとき、2つの吸気エリアA1、A2間の差圧を演算する際に、プラスマイナス(正負)の符号も含めて演算することにより、高圧側の吸気エリアA1またはA2から低圧側の吸気エリアA2またはA1へ送風されるように送風ファン21の回転方向(正または逆)を決める。
【0039】
具体的には、例えば、2段階の負のしきい値(小さい方から、第1しきい値V1、第2しきい値V2)および2段階の正のしきい値(小さい方から、第3しきい値V3、第4しきい値V4)を予め設定しておき、2つの吸気エリアA1、A2間の差圧が第1しきい値V1未満である場合は、この差圧が大きいため、送風ファン21を高速で逆回転させ、この差圧が第1しきい値V1以上で第2しきい値V2未満である場合は、この差圧が小さいながらも存在するため、送風ファン21を低速で逆回転させる。また、この差圧が第2しきい値V2以上で第3しきい値V3未満である場合は、この差圧が無視しうるほど小さいと考えられるので、送風ファン21を駆動しない。さらに、この差圧が第3しきい値V3以上で第4しきい値V4未満である場合は、この差圧が小さいながらも存在するため、送風ファン21を低速で正回転させ、この差圧が第4しきい値V4以上である場合は、この差圧が大きいため、送風ファン21を高速で正回転させる。
【0040】
その結果、何らかの原因によって2つの吸気エリアA1、A2で気圧に差が生じても、その差が迅速に解消されることになる。したがって、すべての電子機器12をほぼ均等に冷却することができるため、これらの電子機器12を最良の状態で使用することが可能となる。
【0041】
また、片面差し型のラック11Aと両面差し型のラック11Bとの間には、上述したとおり、吸気エリアA2と排気チムニー3とを遮蔽する仕切板24が設けられているため、吸気エリアA2と排気チムニー3とが接することによって熱交換効率が低下する事態を回避することができる。しかも、この仕切板24は開閉自在であるため、各ラック11A、11Bに収容された電子機器12を点検・整備などで取り扱う際に、吸気エリアA2を通行する作業者の妨げになることはない。
[発明の実施の形態3]
【0042】
図7乃至図10には、本発明の実施の形態3を示す。
【0043】
実施の形態3に係る電子機器収容装置1では、図7および図8に示すように、熱交換器17は、外気を利用する代わりに床下空調を利用することにより、排気チムニー3内の熱気を熱交換して2つ吸気エリアA1、A2へ冷気を供給するように構成されている。
【0044】
すなわち、ラック11には、複数対の電子機器12が積み重ねられた形で収容されており、これらの電子機器12の両側には2つのダクト26が上下方向に形成されている。また、ラック11の下側には、図7に示すように、床下空調設備25が2つのダクト26に冷気を供給しうるように設けられている。
【0045】
ここで、各ダクト26は、図7に示すように、上面26aが開口して熱交換器17に連通しているとともに、下面26bが開口して床下空調設備25に連通している。また、各ダクト26は、4つの側面26cが閉塞されている。
【0046】
また、ラック11には、図9および図10に示すように、電子機器12に対応する左右一対以上(例えば、左右40対)のC形ガイドレール27が上下方向に隙間なく積み重ねられている。各電子機器12は、ほぼ直方体の機器本体12cの左右両側面にそれぞれ突設された係止部12dがC形ガイドレール27に係合することにより、ラック11に収容された状態になる。そして、これらのC形ガイドレール27に複数対の電子機器12が収容されると、これらの電子機器12の背面12bおよびC形ガイドレール27により、排気チムニー3の4つの側壁が構成される。
【0047】
その他の構成については、上述した実施の形態1と同様である。したがって、この実施の形態3では、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0048】
これに加えて、実施の形態3では、上述したとおり、外気ではなく床下空調を利用して熱交換を行うため、外気温の高低の影響を受けることなく電子機器12による発熱を適正に冷却することができる。したがって、外気温の高い地域にも電子機器収容装置1を設置して使用することが可能となり、電子機器収容装置1の汎用性が向上する。
[発明のその他の実施の形態]
【0049】
なお、上述した実施の形態1〜3では、長方形断面のラック11に対して、その前面や後面から1台または2台の電子機器12を挿入する場合について説明した。しかし、電子機器12の挿入方法については、電子機器12の各背面12bに包囲されて排気チムニー3が形成される限り、この他にも種々の方法が考えられる。
【0050】
例えば、図11(a)に示すように、正方形断面のラック11に対して、その前面、後面および両側面から4台の電子機器12を挿入することにより、正方形断面の排気チムニー3を形成することもできる。また、図11(b)に示すように、正六角形断面のラック11に対して、その6つの側面から6台の電子機器12を挿入することにより、正六角形断面の排気チムニー3を形成することも可能である。さらに、図11(c)に示すように、円形断面のラック11に対して、その周面から6台の電子機器12を挿入することにより、正六角形断面の排気チムニー3を形成することもできる。或いはまた、正三角形断面のラック(図示せず)に対して、その3つの側面から3台の電子機器12を挿入することにより、正三角形断面の排気チムニー3を形成することも可能である。
【0051】
また、上述した実施の形態1〜3では、複数本のラック11が互いに溶接されて設置されている場合について説明したが、溶接以外の接合方法(例えば、ボルト接合など)を代用または併用することもできる。
【0052】
また、上述した実施の形態1〜3では、筐体の一例としてISO規格コンテナ2を用いる場合について説明した。しかし、ISO規格コンテナ2以外の貨物用コンテナを代用してもよく、さらに、貨物用コンテナ以外の筐体を代用しても構わない。
【0053】
また、上述した実施の形態1〜3では、熱交換手段の一例として熱交換器17を用いる場合について説明したが、熱交換器17以外の熱交換手段を代用することもできる。
【0054】
また、上述した実施の形態2では、送風手段の一例として送風ファン21を用いる場合について説明したが、送風ファン21以外の送風手段を代用することも可能である。
【0055】
また、上述した実施の形態2では、送風制御手段の一例としてコントローラ23を用いる場合について説明したが、コントローラ23以外の送風制御手段を代用することもできる。
【0056】
さらに、上述した実施の形態1〜3では、両面差し型のラック11、11Bにおいて、複数対の電子機器12の各背面12bに挟まれた空間を排気チムニー3、つまり熱気通路として利用する場合について説明した。しかし、電子機器12から排気された熱気の流れを逆向きにして、この空間を冷気通路として利用することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、データセンタやサーバ室その他の用途に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1……電子機器収容装置
2……ISO規格コンテナ(筐体)
3……排気チムニー
4……天井
5……床
6、7……側壁
8、9……妻壁
11……ラック
12……電子機器
12a……正面
12b……背面
12c……機器本体
12d……係止部
17……熱交換器(熱交換手段)
20……通気管
21……送風ファン(送風手段)
22……圧力センサ
23……コントローラ(送風制御手段)
24……仕切板
25……床下空調設備
26……ダクト
26a……上面
26b……下面
26c……側面
27……C形ガイドレール
A1、A2……吸気エリア
S1……密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体にラックが設置され、
このラックに電子機器が吸気面を吸気エリアに連通させて収容され、
この電子機器の排気面に排気チムニーが当該電子機器から排出された熱気を取り込んで排出するように設けられ、
前記ラックに、前記排気チムニーから排出された熱気を熱交換して前記吸気エリアへ冷気を供給する熱交換手段が設けられていることを特徴とする電子機器収容装置。
【請求項2】
前記ラックに前記電子機器が挿入されることにより、この電子機器の正面に接して前記吸気エリアが形成されるとともに、この電子機器の背面に前記排気チムニーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収容装置。
【請求項3】
前記ラックに前記電子機器が2つ以上挿入されることにより、これらの電子機器の各背面に包囲されて前記排気チムニーが上下方向に形成されるとともに、これらの電子機器の各正面に接して前記吸気エリアが2つ以上、これらの電子機器および前記排気チムニーを挟んで互いに水平方向に対向するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収容装置。
【請求項4】
前記ラックに前記電子機器が一対以上、互いに水平方向に対向するように挿入されることにより、これら一対以上の電子機器の各背面に挟まれて前記排気チムニーが上下方向に形成されるとともに、これらの電子機器の各正面に接して前記吸気エリアが2つ、これらの電子機器および前記排気チムニーを挟んで互いに水平方向に対向するように形成され、
前記2つの吸気エリア間を連通する通気管が配設され、この通気管に送風手段が設けられ、前記2つの吸気エリア間の差圧に基づいて前記送風手段を駆動することにより、前記2つの吸気エリアのうち高圧側の吸気エリアから低圧側の吸気エリアへ送風するように制御する送風制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収容装置。
【請求項5】
前記ラックは、前記電子機器に対応する左右一対以上のC形ガイドレールを有し、これらのC形ガイドレールは、前記排気チムニーの側壁を構成していることを特徴とする請求項4に記載の電子機器収容装置。
【請求項6】
前記ラックとして、前面または後面から前記電子機器が挿入される片面差し型のラックと、前面および後面から前記電子機器が一対以上、互いに水平方向に対向するように挿入される両面差し型のラックとが混在し、
前記片面差し型のラックは、この片面差し型のラックに収容される前記電子機器の正面に接して前記吸気エリアが形成されるとともに、当該電子機器の背面に前記排気チムニーが設けられ、
前記両面差し型のラックは、この両面差し型のラックに収容される前記一対以上の電子機器の各背面に挟まれて前記排気チムニーが上下方向に形成されるとともに、当該電子機器の各正面に接して前記吸気エリアが2つ、これらの電子機器および前記排気チムニーを挟んで互いに水平方向に対向するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収容装置。
【請求項7】
前記片面差し型のラックと前記両面差し型のラックとの間には、前記吸気エリアと前記排気チムニーとを遮蔽する仕切板が開閉自在に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器収容装置。
【請求項8】
前記筐体は、貨物用コンテナであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子機器収容装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−256122(P2012−256122A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127663(P2011−127663)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(507225562)株式会社アイピーコア研究所 (3)
【Fターム(参考)】