説明

電子機器取り付け治具

【課題】パネルマウント方式の電子機器を背面側で支持固定する場合に、配線接続を容易に行い得る電子機器取り付け治具を提供する。
【解決手段】電子機器取り付け治具11は、背面に端子接続部3を備えたパネルマウント方式の電子機器10Aを例えばDINレール43に取り付けるのためのものであり、電子機器10Aの前面に備えられた表示部1及び操作部2の両方又はいずれか一方を露出させて電子機器10を嵌合支持するための大開口部21aを有する前面側支持治具20と、前面側支持治具20とは分離可能に設けられ、かつ別途に存在する背面壁41に固定されたDINレール43に取り付け可能な背面側支持治具30とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面に端子接続部を備えたパネルマウント方式の電子機器のための電子機器取り付け治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前面に表示部や操作部を備え、背面に端子接続部を備えたパネルマウント方式の電子機器は、例えば分電盤の前面蓋の開口部にその表示部を露出させた状態で、該分電盤の前面蓋に取り付けられる。
【0003】
この種のパネルマウント方式の電子機器の取り付け方法としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0004】
この特許文献1に開示された表示器機の取り付け構造は、液晶表示器のような表示器のパネルへの取り付け構造に関するものである。この表示器機の取り付け構造では、図13(a)(b)(c)に示すように、液晶表示部111とこれを制御する制御部112とを備えた表示器110をその表面外周部と背部とにおいて本体ケース120にて囲繞して保持する。液晶表示部111の周部を押さえる本体ケース120の押さえ片121の内縁から係止爪122を起立する。本体ケース120からばね片123を押さえ片121よりも表面側に突設する。パネル101に形成された表示窓101aの窓縁部に装着する略ロ字型に形成された取付枠130に保持爪131を背方に延出する。表示窓101aに装着した取付枠130の保持爪131に本体ケース120の係止爪122を係止する。ばね片123をパネル101の背面に弾接させる。
【0005】
これにより、パネルマウント方式の表示器110における液晶表示部111を、パネル101に形成された表示窓101aから直接露出させるのではなく、取付枠130を意匠性のよいものにすることによって、表示器110をパネル101に容易確実に取り付け得るようにしながら、表示器110周りの外観を高め、表示器110における表示面を広く見えるようにすることができるものとなっている。尚、液晶表示部111とこれを制御する制御部112との間には、プリント配線基板113が設けられている。そして、表示器110は、プリント配線基板113に制御部112としての電子部品が実装され、また、液晶素子(LCD)を備えた液晶表示部111が取り付けられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−13134号公報(1995年1月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された表示器機の取り付け構造では、パネルマウント方式の電子機器を背面側で支持固定する場合についてまでは、開示していない。
【0008】
すなわち、近年では、表示部の内容を遠隔制御のためのコンピュータのモニタに表示する場合があるので、必ずしも分電盤の前面蓋において分電盤の外側からその表示が見えるようになっている必要はない。したがって、この場合には、パネルマウント方式の電子機器は、分電盤の前面蓋を開けたときにその表示が見えるようにして、例えば筐体からなる治具を介してパネルマウント方式の電子機器を分電盤の内部の背面壁に取り付けておけばよい。しかし、パネルマウント方式の電子機器がその背面に端子接続部を備えている場合には、端子接続部への配線接続をするときには、筐体からなる治具が邪魔になるという問題点を有している。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、パネルマウント方式の電子機器を背面側で支持固定する場合に、配線接続を容易に行い得る電子機器取り付け治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子機器取り付け治具は、背面に端子接続部を備えたパネルマウント方式の電子機器のための電子機器取り付け治具であって、上記電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて該電子機器を嵌合支持するための開口部を有する前面側支持治具と、上記前面側支持治具とは分離可能に設けられ、かつ別途に存在する背面壁に取り付け可能な背面側支持治具とからなっていることを特徴としている。
【0011】
上記の発明によれば、電子機器は、パネルマウント方式の電子機器であり、前面に表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を備え、かつ背面に端子接続部を備えている。このようなパネルマウント方式の電子機器は、本来、例えば分電盤又は配電盤等の盤の前面パネルにおいて、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方が露出するようにして取り付けられる。
【0012】
しかしながら、このようなパネルマウント方式の電子機器において、近年においては、表示部の内容を遠隔制御のためのコンピュータのモニタに表示する場合があるので、必ずしも分電盤等の前面蓋において分電盤等の外側からその表示が見えるようになっている必要はない。したがって、この場合には、パネルマウント方式の電子機器は、分電盤等の前面蓋を開けたときにその表示が見えるようにして、例えば筐体からなる治具を介してパネルマウント方式の電子機器を分電盤等の内部の背面壁に取り付けておけばよい。しかし、パネルマウント方式の電子機器がその背面に端子接続部を備えている場合には、端子接続部への配線接続をするときには、筐体からなる治具が邪魔になる。
【0013】
そこで、本発明では、電子機器取り付け治具は、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて該電子機器を嵌合支持するための開口部を有する前面側支持治具と、上記前面側支持治具とは分離可能に設けられ、かつ別途に存在する背面壁に取り付け可能な背面側支持治具とからなっている。
【0014】
このため、電子機器取り付け治具を用いて、パネルマウント方式の電子機器を分電盤等の内部の背面壁に取り付けるためには、まず、電子機器の背面の端子接続部での配線接続を行う。次いで、前面側支持治具の開口部において、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて該電子機器を嵌合支持する。その後、前面側支持治具と背面側支持治具とを一体に連結する。最後に、背面側支持治具を例えば分電盤等の内部の背面壁に取り付ける。
【0015】
これにより、電子機器の背面の端子接続部での配線接続を行う場合には、配線接続の邪魔になる壁面が存在しないので、電子機器の背面の端子接続部での配線接続を容易に行うことができ、作業性が高い。また、例えば分電盤等の内部の背面壁にも容易に取り付けることができる。さらに、分電盤等の内部において、分電盤等の前面蓋を開ければ、容易に前面側支持治具の開口部において、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を表示又は操作することができる。このため、パネルマウント方式の電子機器における前面での表示又は操作が可能という特性を活かすことができる。
【0016】
したがって、パネルマウント方式の電子機器を背面側で支持固定する場合に、配線接続を容易に行い得る電子機器取り付け治具を提供することができる。
【0017】
尚、特許文献1と関係においては、本発明では、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて嵌合支持するための開口部が存在し、かつ背面側支持治具は別途に存在する背面壁に取り付け可能になっているのに対して、特許文献1ではそのようになっていない点が異なっている。
【0018】
本発明の電子機器取り付け治具では、前記前面側支持治具には、少なくとも2種類の形状の開口部が形成されていることが好ましい。
【0019】
これにより、例えば、大きさの異なる2種類以上のパネルマウント方式の電子機器を、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を開口部から露出させて嵌合支持することができる。したがって、一つの電子機器取り付け治具にて、複数種類のパネルマウント方式の電子機器を取り付けることができる。
【0020】
尚、本発明においては、前面側支持治具のおける立ち上げ部材に少なくとも2種類の形状の開口部が形成されている場合の他、後述するように、L字立ち上げ部とL字水平部とに対してそれぞれ形状の異なる開口部を形成しておく場合とがある。
【0021】
本発明の電子機器取り付け治具では、前記前面側支持治具は、断面L字状に形成されており、かつL字立ち上げ部の長さとL字水平部の長さとは互いに等しいことが好ましい。
【0022】
このように、例えば、L字立ち上げ部とL字水平部とに対してそれぞれ形状の異なる開口部を形成しておくことにより、L字立ち上げ部とL字水平部とを反転して入れ替えることによって、例えば表面形状の異なる電子機器を前面側支持治具の開口部において、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて嵌合支持することができる。そして、この場合、前面側支持治具の高さ方向の寸法は変化しないので、前面側支持治具と背面側支持治具とを容易に一体に連結することができる。
【0023】
この結果、一つの電子機器取り付け治具にて、2種類のパネルマウント方式の電子機器のうちのいずれか1種類を取り付けることができる。
【0024】
本発明の電子機器取り付け治具では、前記背面側支持治具には、磁石が設けられていることが好ましい。
【0025】
これにより、前面側支持治具と背面側支持治具とを一体に連結した後、背面側支持治具に設けられている磁石にて、例えば、分電盤等の内部における鉄製の背面壁に容易に取り付け固定することができ、取り付け固定での作業性が高い。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電子機器取り付け治具は、以上のように、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて嵌合支持するための開口部を有する前面側支持治具と、上記前面側支持治具とは分離可能に設けられ、かつ別途に存在する背面壁に取り付け可能な背面側支持治具とからなっているものである。
【0027】
それゆえ、パネルマウント方式の電子機器を背面側で支持固定する場合に、配線接続を容易に行い得る電子機器取り付け治具を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における電子機器取り付け治具の実施の一形態を示すものであって、電子機器取り付け治具の構成を示す斜視図である。
【図2】上記電子機器取り付け治具によって、取り付けられる電子機器の構成を示す斜視図である。
【図3】上記前面側支持治具と背面側支持治具とを一体に連結した電子機器取り付け治具の構成を示す斜視図である。
【図4】上記電子機器取り付け治具における前面側支持治具の構成を示す斜視図である。
【図5】上記電子機器取り付け治具における背面側支持治具の構成を示す斜視図である。
【図6】上記分電盤等の背面壁に取り付けられた電子機器取り付け治具を示す側面図である。
【図7】上記電子機器取り付け治具によって、取り付けられる他の電子機器の構成を示す斜視図である。
【図8】上記前面側支持治具を回転することにより開口付きL字立ち上げ部と開口付きL字水平部とを入れ替えた前面側支持治具を示す斜視図である。
【図9】上記前面側支持治具の開口付きL字水平部の小開口部に上記他の電子機器を嵌合支持させた電子機器取り付け治具を示す側面図である。
【図10】上記背面側支持治具の変形例の構成を示す側面図である。
【図11】上記背面側支持治具における他の変形例の構成を示す側面図である。
【図12】磁石にて固定して積層した複数の電子機器取り付け治具を示す斜視図である。
【図13】(a)は従来の電子機器取り付け治具の構成を示す正面図であり、(b)は上記従来の電子機器取り付け治具の構成を示す側面断面図であり、(c)は上記従来の電子機器取り付け治具の要部の構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態について図1〜図12に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0030】
本実施の形態の電子機器取り付け治具によって分電盤や配電盤等の盤に取り付けられる電子機器は、例えば、電力量計、電圧計、電流計等の電子機器である。この電子機器10Aは、図2に示すように、前面に表示部1及び操作部2の両方を備え、かつ背面に端子接続部3を備えており、パネルマウント方式の電子機器10Aとなっている。表示部1には例えば電力量がデジタル表示されるようになっており、操作部2には例えば瞬時電力量の表示と積算電力量の表示とを切り替える切替ボタン等が設けられている。尚、本実施の形態では、電子機器10Aは、前面に表示部1及び操作部2の両方を備えているが、発明においては必ずしもこれに限らず、電子機器10Aの前面に例えば表示部1又は操作部2のいずれか一方のみが存在しているものであってもよい。
【0031】
このようなパネルマウント方式の電子機器10Aは、本来、例えば分電盤等の前面パネルにおいて、電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方が露出するようにして取り付けられるものである。
【0032】
しかしながら、このようなパネルマウント方式の電子機器10Aでは、近年においては、表示部1の内容を遠隔制御するための図示しないコンピュータのモニタに表示する場合がある。したがって、その場合には、必ずしも分電盤等の前面蓋において分電盤等の外側からその表示が見えるようになっている必要はない。したがって、その場合には、パネルマウント方式の電子機器10Aは、分電盤等の前面蓋を開けたときにその表示が見えるようにして、例えば筐体からなる治具を介してパネルマウント方式の電子機器10Aを分電盤等の内部の背面壁に取り付けておけばよい。しかし、パネルマウント方式の電子機器10Aがその背面に端子接続部3を備えている場合には、端子接続部3への配線接続をするときには、筐体からなる治具が邪魔になる。
【0033】
そこで、本実施の形態では、電子機器取り付け治具11は、図1に示すように、電子機器10Aの前面に備えられた表示部1及び操作部2の両方を露出させて嵌合支持するための大開口部21aを有する前面側支持治具20と、前面側支持治具20とは分離可能に設けられ、かつ例えば分電盤等の後述する背面壁41に取り付け可能な背面側支持治具30とからなっている。
【0034】
上記電子機器取り付け治具11は、該電子機器取り付け治具11を図示しない背面壁に取り付けるときには、図1及び図3に示すように、前面側支持治具20と背面側支持治具30とは一体に連結されている。しかし、この電子機器取り付け治具11に電子機器10Aを支持固定する前には、図4及び図5に示すように、分離された状態となっている。
【0035】
上記前面側支持治具20は、図4に示すように、例えば、断面L字状に形成されており、L字立ち上げ部としての開口付きL字立ち上げ部21とL字水平部としての開口付きL字水平部22とを有している。尚、前面側支持治具20は、電子機器10Aの前面を支持固定する上記開口付きL字立ち上げ部21と、電子機器10Aの上面を覆う開口付きL字水平部22とのみからなっており、側面壁は存在しない。
【0036】
上記開口付きL字立ち上げ部21には1つの大きな開口部としての大開口部21aが形成されていると共に、開口付きL字水平部22には2つの小さな開口部としての小開口部22a・22aが形成されている。上記大開口部21aは、電子機器10Aの前面に備えられた表示部1及び操作部2の両方を露出させて嵌合支持するためのものとなっている。尚、小開口部22a・22aについては、後述する。
【0037】
また、前面側支持治具20における開口付きL字立ち上げ部21及び開口付きL字水平部22の各端縁部には、係止爪23・23がそれぞれ例えば2個ずつ設けられている。
【0038】
一方、背面側支持治具30は、図5に示すように、前面側支持治具20の断面L字状に対応して、同様に、断面L字状に形成されている。この背面側支持治具30は、L字立ち上げ板31とL字水平板32とからなっており、開口部は存在しない。
【0039】
また、背面側支持治具30におけるL字立ち上げ板31及びL字水平板32の各端縁部には、内側に屈曲された折り代部31a及び折り代部32aがそれぞれ形成されており、かつ折り代部31a及び折り代部32aには、前記係止爪23・23が挿入される係止爪嵌挿穴33・33がそれぞれ2個ずつ設けられている。
【0040】
ここで、少なくとも前面側支持治具20は、弾力性を有する例えば金属板又はプラスチックからなっている。このため、それぞれ断面L字状に形成された前面側支持治具20及び背面側支持治具30は、ある程度、そのL字の内角が直角以外になるように撓ませることができる。このため、係止爪23・23を係止爪嵌挿穴33・33に容易に嵌挿することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、図1及び図6に示すように、背面側支持治具30の裏面に、分電盤等の背面壁41にねじ42にて固定されたDINレール43にワンタッチで取り付けるための市販品のレール取付用金具44が固着されている。これによって、背面側支持治具30を、レール取付用金具44を介してDINレール43に容易に取り付けることができる。
【0042】
上記構成の電子機器取り付け治具11を用いて、パネルマウント方式の電子機器10Aを例えば、図示しない分電盤等の内部における背面壁に設けられたDINレールに固定する方法について説明する。ここで、DINレールとは、配電盤又は分電盤等等の盤の盤用構造材として用いられるドイツ規格の35mm幅の支持レールをいい、世界基準となっている。長さは1m、0.5m、その他各種のものがあり、材質は一般的にはアルミニウムからなっている。
【0043】
まず、図2に示すように、電子機器10Aの背面の端子接続部3での配線接続を行う。次いで、図1に示すように、前面側支持治具20の開口付きL字立ち上げ部21における大開口部21aに電子機器10Aの前面を挿入する。これにより、電子機器10Aは、大開口部21aによって、表示部1及び操作部2の両方が露出された状態で前面側支持治具20に嵌合支持される。次いで、この前面側支持治具20に背面側支持治具30を一体に連結する。
【0044】
このとき、図4に示す前面側支持治具20の開口付きL字水平部22の端縁部に形成された係止爪23・23が、図5に示す背面側支持治具30のL字立ち上げ板31における端縁部に形成された折り代部31aの係止爪嵌挿穴33に挿入される。そして、図4に示す前面側支持治具20の開口付きL字立ち上げ部21の端縁部に形成された係止爪23・23が、図5に示す背面側支持治具30のL字水平板32における端縁部に形成された折り代部32aの係止爪嵌挿穴33に挿入される。このとき、前面側支持治具20及び背面側支持治具30うちの少なくとも前面側支持治具20は、例えば、弾力性を有する金属板又はプラスチックからなっている。このため、断面L字状に形成された前面側支持治具20及び背面側支持治具30をそれぞれ撓ませることによって、折り代部31a及び折り代部32aを係止爪嵌挿穴33・33に容易に挿入することができる。
【0045】
尚、上記の説明では、電子機器10Aの端子接続部3への配線接続が終了した後、その配線接続した電子機器10Aを前面側支持治具20に取り付けたが、必ずしもこれに限らず、先に、電子機器10Aを前面側支持治具20に取り付けた後、電子機器10Aの配線接続を行うことも可能である。その理由は、電子機器10Aを前面側支持治具20に取り付けた場合であっても、背面側支持治具30が存在していないので、電子機器10Aの背面部が開放されているためである。
【0046】
次いで、図6に示すように、背面側支持治具30に接着されたレール取付用金具44に、DINレール43の脚43a・43aを嵌め込む。これにより、背面側支持治具30を、レール取付用金具44を介してDINレール43に容易に固定することができる。
【0047】
ところで、本実施の形態の電子機器取り付け治具11は、前述したように、前面側支持治具20の開口付きL字水平部22には、2個の小開口部22a・22aが形成されている。この理由は、例えば、図7に示すように、電子機器10Aよりも高さの低い電子機器10Bがあったとしても、この電子機器取り付け治具11にて対応可能とするためである。
【0048】
すなわち、図7に示すように、電子機器10Bは、電子機器10Aと同様に、前面に表示部1及び操作部2の両方を備え、かつ背面に端子接続部3を備えており、パネルマウント方式の電子機器10Bとなっている。しかし、電子機器10Bの高さは、電子機器10Aの高さの約半分となっている。尚、電子機器10Bにおいても、前面に表示部1及び操作部2の両方を備えているが、発明においては必ずしもこれに限らず、電子機器10Bの前面に例えば表示部1又は操作部2のいずれか一方のみが存在しているものであってもよい。
【0049】
このように、電子機器10Aとはサイズの異なる場合に、本来であれば、前面側支持治具20の開口付きL字立ち上げ部21における大開口部21aを、電子機器10Bが嵌合できる開口部を備えたものを用意しなければならず、部品点数の増加を招く。
【0050】
そこで、本実施の形態の電子機器取り付け治具11では、前面側支持治具20の開口付きL字水平部22に2個の小開口部22a・22aを設けている。尚、本実施の形態では、小開口部22aは2個であるが、必ずしもこれに限らず、1個でもよく又は3個以上であってもよい。
【0051】
そして、本実施の形態の電子機器取り付け治具11における前面側支持治具20は、開口付きL字立ち上げ部21の長さと開口付きL字水平部22の長さとが互いに等しいものとなっている。これにより、図8に示すように、開口付きL字立ち上げ部21と開口付きL字水平部22とを反転して入れ替えることにより、図9に示すように、例えば2個の電子機器10Bを前面側支持治具20の小開口部22a・22aにおいて、電子機器10Bの前面に備えられた前記表示部1及び操作部2の両方を露出させて嵌合支持することができる。
【0052】
そして、この場合、前面側支持治具20の高さ方向の寸法は変化しないので、背面側支持治具30も変わりなく使用することができる。
【0053】
この結果、一つの電子機器取り付け治具11にて、2種類のパネルマウント方式の電子機器10A・10Bのうちのいずれか1種類を取り付けることができる。
【0054】
このように、本実施の形態の電子機器取り付け治具11は、背面に端子接続部3を備えたパネルマウント方式の電子機器10A・10Bのための電子機器取り付け治具であって、電子機器10A・10Bの前面に備えられた表示部1及び操作部2の両方又はいずれか一方を露出させて電子機器10A・10Bを嵌合支持するための大開口部21a及び小開口部22a・22aを有する前面側支持治具20と、前面側支持治具20とは分離可能に設けられ、かつ別途に存在する背面壁41に取り付け可能な背面側支持治具30とからなっている。
【0055】
これにより、電子機器10A・10Bの背面の端子接続部3での配線接続を行う場合には、配線接続の邪魔になる壁面が存在しないので、電子機器10A・10Bの背面の端子接続部3での配線接続を容易に行うことができ、作業性が高い。また、分電盤等の内部の背面壁41にも容易に取り付けることができる。さらに、分電盤等の内部において、分電盤等の前面蓋を開ければ、容易に前面側支持治具20の大開口部21a又は小開口部22a・22aにおいて、電子機器10A・10Bの前面に備えられた表示部1及び操作部2の両方又はいずれか一方を表示若しくは操作することができる。例えば、表示部1に表示された電力量を容易に見ることができ、かつ操作部2が露出しているので、例えば瞬時電力量の表示と積算電力量の表示とを切替ボタンにてボタン操作して切り替えることができる。このため、パネルマウント方式の電子機器10A・10Bにおける前面での表示又は操作が可能という特性を活かすことができる。
【0056】
したがって、パネルマウント方式の電子機器10A・10Bを背面側で支持固定する場合に、配線接続を容易に行い得る電子機器取り付け治具11を提供することができる。
【0057】
また、波及効果として、電子機器10A・10Bを保守点検する場合においても、電子機器10A・10Bを電子機器取り付け治具11から容易に外して保守点検することができる。
【0058】
また、本実施の形態の電子機器取り付け治具11では、前面側支持治具20には、少なくとも2種類の形状の開口部が形成されている。
【0059】
これにより、例えば、大きさの異なる2種類以上のパネルマウント方式の電子機器10A・10Bを、電子機器10A・10Bの前面に備えられた表示部1及び操作部2の両方又はいずれか一方を大開口部21a又は小開口部22a・22aから露出させて電子機器10A・10Bを嵌合支持することができる。したがって、一つの電子機器取り付け治具11にて、複数種類のパネルマウント方式の電子機器10A・10Bを取り付けることができる。
【0060】
尚、本実施の形態においては、前面側支持治具20のおける開口付きL字立ち上げ部21に少なくとも2種類の形状の開口部が形成されている場合の他、開口付きL字立ち上げ部21と開口付きL字水平部22とに対してそれぞれ形状の異なる大開口部21a及び小開口部22a・22aをそれぞれ形成しておく場合とがある。
【0061】
また、本実施の形態の電子機器取り付け治具11では、前面側支持治具20は、断面L字状に形成されており、かつ開口付きL字立ち上げ部21の長さと開口付きL字水平部22の長さとは互いに等しい。
【0062】
この結果、一つの電子機器取り付け治具11にて、2種類のパネルマウント方式の電子機器10A・10Bのうちのいずれか1種類を取り付けることができる。すなわち、開口付きL字立ち上げ部21と開口付きL字水平部22とに対してそれぞれ形状の異なる大開口部21a及び小開口部22a・22aをそれぞれ形成した場合には、開口付きL字立ち上げ部21の長さと開口付きL字水平部22の長さとは互いに等しいという要件が必要となる。
【0063】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、上記の説明では、図1に示すように、DINレール43に固定するための市販品のレール取付用金具44が、背面側支持治具30の外側表面に接着されていた。しかしながら、特にこれに限定するものではなく、例えば、図10に示すように、背面側支持治具30の前記L字立ち上げ板31にレール取付部54を直接形成したL字立ち上げ板51とすることができる。
【0065】
これにより、L字立ち上げ板31に市販のレール取付用金具44を接着する手間が省けるので、部品点数の増加、及び工数の低減を図ることができる。
【0066】
また、図11に示すように、背面側支持治具30に磁石55を設けておくことが可能である。これにより、磁石55にて、分電盤等の内部における鉄製の背面壁41に容易に取り付け固定することができ、取り付け固定での作業性が高い。また、DINレール43が無くても鉄製の背面壁41に容易に取り付け固定することができる。さらに、レール取付用金具44やレール取付部54が設けられている場合には、電子機器取り付け治具11の背面壁41への取り付け強度を向上させることができる。
【0067】
また、図12に示すように、複数の電子機器取り付け治具11を積み上げて使用する場合においても、背面側支持治具30に磁石55を設けておくことによって、前面側支持治具20を鉄製にて形成しておけば、積み上げられた複数の電子機器取り付け治具11同士を容易に固定することができる。
【0068】
さらに、背面壁41が、木製にてなっている場合には、背面側支持治具30をネジにて背面壁41に取り付けることも可能である。
【0069】
また、上記の説明では、前面側支持治具20及び背面側支持治具30は、いずれも断面L字形状となっている。しかし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、例えば、前面側支持治具20が開口付き平板からなっており、背面側支持治具30がこの開口付き平板からなる前面側支持治具20に一体に連結されるコの字状に形成されたものであって、分離可能となっている構成であってもよい。
【0070】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、背面に端子接続部を備えたパネルマウント方式の電子機器を例えば分電盤配電盤等の盤に取り付ける電子機器取り付け治具に適用できる。電子機器としては、前面に表示部及び操作部の両方又はいずれかが存在し、背面に端子接続部を備えたパネルマウント方式の電子機器であれば適用でき、例えば、電力量計、電圧計、電流計、その他の盤に取り付けられる電子機器に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 表示部
2 操作部
3 端子接続部
10A 電子機器
10B 電子機器
11 電子機器取り付け治具
20 前面側支持治具
21 開口付きL字立ち上げ部(L字立ち上げ部)
21a 大開口部(開口部)
22 開口付きL字水平部(L字水平部)
22a 小開口部(開口部)
23 係止爪
30 背面側支持治具
31 L字立ち上げ板
32 L字水平板
33 係止爪嵌挿穴
41 背面壁
43 DINレール
44 レール取付用金具
54 レール取付部
55 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に端子接続部を備えたパネルマウント方式の電子機器のための電子機器取り付け治具であって、
上記電子機器の前面に備えられた表示部及び操作部の両方又はいずれか一方を露出させて該電子機器を嵌合支持するための開口部を有する前面側支持治具と、
上記前面側支持治具とは分離可能に設けられ、かつ別途に存在する背面壁に取り付け可能な背面側支持治具とからなっていることを特徴とする電子機器取り付け治具。
【請求項2】
前記前面側支持治具には、少なくとも2種類の形状の開口部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器取り付け治具。
【請求項3】
前記前面側支持治具は、断面L字状に形成されており、かつL字立ち上げ部の長さとL字水平部の長さとは互いに等しいことを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器取り付け治具。
【請求項4】
前記背面側支持治具には、磁石が設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電子機器取り付け治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−146934(P2012−146934A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6236(P2011−6236)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】