説明

電子機器筐体

【課題】筐体内部への液体の浸入を防止できるとともに、電子機器を収容する収容空間の開閉が容易な電子機器筐体を提供することを目的とする。
【解決手段】電子機器を収容する収容凹部10が設けられたケース本体1と、収容凹部10の開口部19に固定され収容凹部10を閉止するカバー2と、からなる電子機器筐体であって、カバー2は、板状のカバー本体20と、カバー本体20の周縁部の少なくとも一部からケース本体10の外側面121を覆うように屈曲された屈曲部21と、周方向に渡って屈曲部21の内側面から内方へ突出し外側面121と弾接する突部25と、を有することを特徴とする。突部25が外側面121と弾接するため、ケース本体1とカバー2との間からの液体の浸入が防止される。また、突部25は、ケース本体1の外側面121と弾接しているだけであるため、収容凹部10を容易に開閉できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を保護するために用いられる電子機器筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームや車室内には、車両の制御などを行うための電子制御装置が配設されている。電子制御装置は、多数の電子部品が実装された回路基板と、回路基板を収容する金属製またはプラスチック製の筐体とから構成される。車両に配設される電子制御装置では、冠水や車両の洗浄の際、また、衣服などに付着した雨水を車室内に持ち込んだ際に、筐体の内部に液体が浸入しないようにする必要がある。
【0003】
そのため、電子制御装置は、Oリングやパッキン等のシール材を用いて筐体の接合部位を閉塞するのが一般的である。たとえば、図6に示す筐体は、平板状で略長方形の側板61と、側板61の各辺から立ち上がり側板61とで回路基板80を収容する収容空間60を区画する周壁62〜65と、からなるケース本体6と、ケース本体6の開口端面691(斜線部)と当接し収容空間60を閉止するカバー7と、からなる。カバー7は、カバー取り付け螺子9を挿通する挿通孔79を周縁部に有する略長方形の平板70からなる。挿通孔79から挿通された螺子9が開口部69に形成された螺子穴699に螺合されることで、カバー7が開口部69に固定される。このとき、開口端面691には、液状パッキンが塗布され、筐体内部への液体の浸入を防いでいる。
【0004】
カバー7の周縁部とケース本体6の開口端面691とは、液状パッキンにより互いに接着された状態となる。そのため、回路基板80の故障などによりカバー7を取り外したい場合には、螺子9を外すだけではカバー7を取り外すことはできない。接着された部位を引き剥がそうとすれば、取り外しの際にカバー7が損傷を受けることがある。また、それぞれの当接面から液状パッキンを完全に取り除かないと、再度ケース本体6を閉止する際にシール性が低下する。すなわち、液状パッキンの使用は、Oリングよりも安価で形状に制約がない反面、一旦カバー7をケース本体6に固定してしまうと、分解が困難で、分解後に筐体を構成する部品を再利用できないことがある。
【0005】
また、特許文献1には、開口部を有する断面コ字形状の箱本体と、開口部を閉塞する蓋体と、からなり、開口部の周縁に外方に向かって突出する鍔部を有する筐体が開示されている。開口部の周縁に鍔部を有することで、箱本体への液体の流入が遮られる。さらに、鍔部と蓋体との間に防水用シール部材を介挿することで、筐体内部への液体の浸入を防いでいる。
【0006】
特許文献1の筐体では、箱本体から蓋体を容易に取り外すことができる。しかしながら、箱本体に蓋体を固定する際には、防水シール部材を所定の位置に介挿する作業が必要である。また、所望の防水効果を得るためには防水シール部材を所定の圧力で固定する必要がある。つまり、所望の防水効果を有する筐体を得るためには、組み立て作業や保守管理に労を要する。
【特許文献1】実開平7−11809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実状に鑑み、筐体内部への液体の浸入を防止できるとともに、電子機器を収容する収容空間の開閉が容易な電子機器筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器筐体は、電子機器を収容する収容凹部が設けられたケース本体と、該収容凹部の開口部に固定され該収容凹部を閉止するカバーと、からなる電子機器筐体であって、
該カバーは、板状のカバー本体と、該カバー本体の周縁部の少なくとも一部から前記ケース本体の外側面を覆うように屈曲された屈曲部と、周方向に渡って該屈曲部の内側面から内方へ突出し該外側面と弾接する突部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の電子機器筐体では、突部がケース本体の外側面と弾接するため、突部が外側面に弾接する部位において、ケース本体とカバーとの間からの液体の浸入が防止される。また、突部は、ケース本体の外側面と弾接する構造であるため、収容凹部を容易に開閉できる。
【0010】
前記屈曲部は、少なくとも前記開口部の外側面を覆うのが好ましい。また、前記突部は、前記ケース本体の外側面と撓みを生じて弾接するのが好ましい。
【0011】
このとき、前記開口部は、開口端部から外方に張り出す堰部を有するのが好ましい。収容凹部の開口端部から外方に張り出す堰部を形成することで、ケース本体の外側面を伝う液体が収容凹部に浸入するのを防止できる。
【0012】
本発明の電子機器筐体は、前記開口部を側方に向けて設置され、少なくとも上方に位置する前記ケース本体の外側面は、前記屈曲部に覆われるとともに前記突部と弾接するのが好ましい。また、前記開口部を側方に向けて配置されたときに上方に位置する前記ケース本体の外側面は、該開口部の開口端側が最も高くなるように水平に対して傾斜しているのが好ましい。
【0013】
本発明の電子機器筐体が開口部を側方に向けて設置される場合に、少なくとも上方に位置するケース本体の外側面が屈曲部に覆われるとともに突部と弾接すれば、少なくとも上方から滴下する液体の浸入を防止できる。
【0014】
本発明の電子機器筐体が開口部を側方に向けて配置されたときに上方に位置するケース本体の外側面を、開口部の開口端側が最も高くなるように水平に対して傾斜させることで、上方に位置するケース本体の外側面を伝う液体が突部の周辺で滞るのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子機器筐体によれば、筐体内部への液体の浸入を防止できるとともに、電子機器を収容する収容空間の開閉が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の電子機器筐体を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
本発明の電子機器筐体は、主として、電子機器を収容する収容凹部が設けられたケース本体と、収容凹部を閉止するカバーと、からなる。ケース本体およびカバーの材質に特に限定はなく、設置位置や使用環境に応じて適宜選択すればよいが、金属またはプラスチックなどの剛性を有する材料が好適である。
【0018】
ケース本体には、電子機器を収容する収容凹部が設けられている。収容凹部は、収容される電子機器の形状や寸法に応じた収容空間を有すればよい。そのため、ケース本体の形状にも限定はない。たとえば、断面コ字形状の箱体が挙げられる。
【0019】
ケース本体は、電子機器筐体を車両に取り付けるための取り付け部を有してもよい。たとえば、ケース本体の外側面に形成され取り付け穴をもつ取り付け部であるのが好ましく、取り付け穴にボルト等を挿通することで、電子機器筐体と被取り付け体とを締結するとよい。
【0020】
また、通常、電子機器は、回路基板に実装されたコネクタを有する。そのため、ケース本体は、コネクタを露出する窓穴を有するとよい。コネクタ周辺でも、液体の浸入が防止されるのが望ましいため、窓穴から液体が流入するのを遮る庇状の部材を窓穴の周囲に設けてもよい。
【0021】
カバーは、収容凹部の開口部に固定され収容凹部を閉止する。カバーは、主として板状のカバー本体を有する。カバー本体の形状や寸法に特に限定はなく、カバー全体でケース本体の開口部を閉止できればよい。そのため、カバー本体は、ケース本体の開口部の開口面積および開口形状と同等程度であるのが好ましい。また、カバー本体は、平板状の板材の他、金属製の平板にプレス型を用いて張出しや曲げ加工を施した凹凸を有する板材であってもよい。
【0022】
カバー本体は、その周縁部の少なくとも一部に屈曲部を有する。「周縁部の少なくとも一部」とは、カバー本体が矩形平板であれば、周縁部である4辺のうちの少なくとも1辺の他、1辺のうちの一部も含む。このとき、屈曲部は、隣接する辺を跨ぐようにしてカバー本体の周縁部に沿って連続的に形成されてもよいし、各辺に部分的に形成されてもよい。屈曲部は、カバーがプラスチック製であれば一体成形、カバーが金属製であれば板状体に絞り加工や曲げ加工を施すことで、カバー本体と一体的に形成されるとよい。
【0023】
収容凹部の開口部に固定されたカバーの屈曲部は、カバー本体の周縁部の少なくとも一部からケース本体の外側面を覆うように屈曲される。屈曲部は、少なくとも収容凹部の開口部の外側面を覆うことができればよく、ケース本体の外側面の全てが屈曲部に覆われる必要はない。このとき、屈曲部は、ケース本体の外側面や開口部の端面と当接する必要はなく、間隔を有してもよい。
【0024】
屈曲部は、周方向に渡って、その内側面から内方へ突出する突部を有する。「周方向」は、電子機器筐体の周方向である。屈曲部の内側面においては、屈曲部が屈曲されて立ち上がる方向に対して略垂直な方向と一致する。突部は、周方向に渡って連続的に屈曲部の内側面から突出していれば、その位置に特に限定はないが、屈曲部の先端部に位置するのが好ましい。
【0025】
そして、突部は、ケース本体の外側面と弾接する。このとき、突部は、撓みを生じてケース本体の外側面と弾接するとよい。すなわち、突部は、弾性変形が可能で可撓性を有する弾性体であるのが好ましい。特に好ましいのは、ゴム状の弾性を示すエラストマー材料からなる弾性体である。エラストマー材料は、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム:NBR)、エチレン−プロピレンゴム(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、第三成分を含む三元重合体(EPDM)等)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、フッ素ゴム(フッ化ビニリデン系(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)等)、シリコーンゴム(ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)、フッ素化シリコーンゴム(FVMQ)等)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ノルボルネンゴム(NOR)、熱可塑性エラストマー(TPE)のうちのいずれか一種以上を含むのが好ましい。特に、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴムおよびシリコーンゴムは、成形が容易であるため、突部を構成する材料として好ましい。
【0026】
本発明の電子機器筐体では、突部がケース本体の外側面と弾接する。そのため、カバーの外側面やケース本体の外側面に接触する液体は、突部によりケース本体とカバーとの間からの収容凹部への浸入を遮られる。その結果、突部がケース本体の外側面と弾接する部位は、シール性に優れる。また、ケース本体とカバーとのシール部分は、突部により弾接するのみであるため、カバーの着脱が容易である。
【0027】
突部をケース本体の外側面に良好に弾接させるためには、少なくとも突部周辺では、屈曲部の内面と、屈曲部に覆われるケース本体の外側面と、の間に間隔を設けるとよい。屈曲部の内面からケース本体の外側面までの対向面間隔に特に限定はないが、少なくとも突部周辺では3〜6mmであるのが望ましい。一方、突部の長さは、その材質や形状にもよるが、対向面間隔が上記範囲にあれば、屈曲部の内面からの突部の先端までの長さ(弾接により変形する前の突出量)を7mm以上さらには10mm以上(ただし、突部を弾接させるために対向面間隔よりも突出量の方を長くする)とするとよい。上記の所定の寸法で作製された本発明の電子機器筐体は、突部と外側面とが適度に弾接するため、優れたシール性を示す。さらに、上記の所定の寸法で作製された本発明の電子機器筐体は、カバーを取り外した後ふたたび取り付けても、その前後で突部の弾接の度合いに変化が生じず、シール性は一定に保たれる。
【0028】
また、突部は、突部と屈曲部とが互いに嵌合するような嵌合部を設けたり、接着剤で接着したりすることで、屈曲部の内側面に接合されてもよい。たとえば、突部は、屈曲部の先端部に嵌合する嵌合部に一体的に形成される突条であるとよい。突部が嵌合部に一体的に形成された突条であれば、ケース本体とカバーとの間のシール性がさらに向上する。嵌合部は、屈曲部の先端部を覆うようにして屈曲部の先端に嵌り込む嵌合部や、屈曲部の先端部に形成された凹部(または凸部)に嵌り込む凸部(または凹部)をもつ嵌合部であるとよい。嵌合部に一体的に形成される突条の形状に特に限定はないが、たとえば、中空部を形成して弾性変形の変形抵抗を少なくした中空体や、撓みの生じやすい平板状の突条が挙げられる。
【0029】
突部が嵌合部に一体的に形成される突条からなる場合には、嵌合部および突条は、屈曲部の先端部を嵌合部に相当する部分に埋め込んだ状態で一体的に成形(アウトサート成形)することで、突部がカバーの一部を成してもよいし、嵌合部が屈曲部に着脱可能に嵌合する別部品としてもよい。屈曲部と一体的に成形された突部は、ケース本体とカバーとからなる簡単な構成で、組み立てが容易となる。一方、突部が別部材で着脱可能であれば、ケース本体にカバーを固定した状態であっても突部を着脱することが可能となる。なお、屈曲部の先端部をアウトサート成形により嵌合部に相当する部分に埋め込む場合には、密着性をよくするために、先端部に貫通孔を設けてもよい。
【0030】
収容凹部への液体の浸入のさらなる防止のために、開口部は、その開口端部から外方に張り出す堰部を有してもよい。堰部により、ケース本体の外側面を伝う液体が収容凹部に浸入するのを堰き止めることができる。堰部は、ケース本体の開口端部の全周に渡って形成されてもよいし、特に液体を堰き止める必要がある部位にのみ形成してもよい。この際、堰部がカバーの屈曲部に覆われるとともに突部が屈曲部の先端側に位置すれば、突部のシール性と堰部の遮断効果により、収容凹部への液体の浸入がさらに効果的に防止される。このとき、堰部の先端は、屈曲部と当接していてもよいし、当接しなくてもよい。また、堰部は、開口部の端面に沿ってケース本体と一体的に形成されているとよい。
【0031】
突部は、本発明の電子機器筐体を所定の方向で配置する際に、液体が滴下したり浸水したりする可能性のある部分に、少なくとも位置すればよい。たとえば、本発明の電子機器筐体が開口部を側方に向けて設置される場合、少なくとも上方に位置するケース本体の外側面が、屈曲部に覆われるとともに突部と弾接するとよい。この構成により、上方からの液体の滴下による液体の浸入を防止することができる。
【0032】
また、開口部を側方に向けて配置されたときに上方に位置するケース本体の外側面は、開口部の開口端側が最も高くなるように水平に対して傾斜しているとよい。この構成により、上方から滴下する液体は重力により傾斜に沿って流れ落ちるため、開口部からの液体の浸入が防止される。
【0033】
以上説明したケース本体およびカバーは、螺子などにより互いに締結され固定されるとよい。このとき、カバーは、カバーの内側面の少なくとも一部がケース本体と当接した状態で、ケース本体に固定されるとよい。たとえば、カバー本体の内面側の少なくとも一部がケース本体の開口部の端面と当接された状態で固定されるとよい。ケース本体の開口部の端面に螺子穴を設け、カバー本体の外側面より螺子で締め付けることで、開口部は良好に閉止される。また、突部をもたない屈曲部(第二屈曲部)を形成し、ケース本体の外側面と接触させることでカバーを固定してもよい。
【0034】
以上、本発明の電子機器筐体の実施形態を説明したが、本発明の電子機器筐体は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の電子機器筐体は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の電子機器筐体の実施例を図1〜図5を用いて説明する。なお、以下の実施例の電子機器筐体は、主に、筐体の上方からの液体の滴下により生じる液体の浸入を防止する。
【0036】
[実施例1]
実施例1の電子機器筐体は、アルミニウム合金製のケース本体1と、鋼製のカバー2と、からなり、電子部品(図示せず)が実装された回路基板30を主に収容する筐体である。はじめに、ケース本体1およびカバー2のそれぞれの構成を、ケース本体1にカバー2が固定された図1〜図4を参照して説明する。なお、図1は、実施例1の電子機器筐体の外観を示す斜視図であって、コネクタ側から見た側面図を図2に示す。また、図3および図4は、実施例1の電子機器筐体の断面図であって、電子機器筐体を中央部で長手方向に対し垂直に切断した切断面をコネクタ側から見た図である。
【0037】
ケース本体1は、平板状で長方形の背面板11(112mm×240mm×2.2mm)と、背面板11の各辺から立ち上がり背面板11とで回路基板30を収容する収容空間10を区画する周壁12〜15と、からなる。すなわち、背面板11と周壁12〜15により、一面に開口部19を有するとともに収容空間(10)をもつ断面コ字形状の収容凹部10が構成される。なお、周壁12〜15が背面板11から立ち上がる高さは最大で44mm、厚みは2.2mmである。周壁12〜15は、背面板11の長辺から立ち上がり互いに対向する上部周壁12および下部周壁14、背面板11の短辺から立ち上がり互いに対向する側部周壁13および15である。なお、側部周壁13は、回路基板30にはんだ付けされたコネクタ31を導出するコネクタ窓穴131を有するコネクタ側周壁13である。背面板11および周壁12〜15は、金型を用いた鋳造により一体的に成形されている。なお、背面板11および周壁12〜15の境界部は、面取りが施された曲面からなる。
【0038】
周壁部12〜15のうち、下部周壁14は、本実施例の電子機器筐体を車両に設置した際に底部に位置する。外側面121は、水平方向に対して角度θを有する(図4参照)。なお、本実施例では、θ=2°としたが、θの角度は2°以上であるのが望ましい。
【0039】
また、コネクタ側周壁13は、既に述べたように、その中央部に、コネクタ31よりも大きく開口する方形のコネクタ窓穴131を有する。コネクタ窓穴131の上側には、コネクタ側周壁13の高さと同じ幅をもってケース外方に突出する板状の庇部133を有する。この庇部133の上面は、幅方向に傾斜する。上面の傾斜は、開口部19側が最も高く、背面板11側が最も低い。
【0040】
開口部19は、その開口端から外方に張り出す堰部195をもつ。堰部195は、上部側壁12の開口端ならびにそれに連続するコネクタ側周壁13および側部周壁15の開口端の一部に一体的に形成されている。すなわち、堰部195は、コネクタ側周壁13の庇部133の上面を起点とし、コネクタ側周壁13の開口端、上部周壁12の開口端および側部周壁15の開口端に沿って外方に張り出し、側部周壁15の上方を終点とするU字形状を呈する。
【0041】
カバー2は、収容凹部10と外縁とほぼ同一の長方形で厚さ0.8mmの平板20と、平板20の周縁部から屈曲されて立ち上がる屈曲部21と、を有する。屈曲部21は、平板20の一方の長辺およびそれと隣り合う二つの短辺の一部から連続的に立ち上がる。なお、屈曲部21は、平板材に絞り加工を施すことで、平板20と一体的に形成される。
【0042】
屈曲部21の先端部は、シリコーンゴム製の嵌合部26により、ほぼ全長に渡って覆われる。嵌合部26は、同じくシリコーンゴム製で厚さ2mmの平板状の突条25を有する。なお、突条25および嵌合部26の断面形状を図5Aに示す。突条25および嵌合部26は、アウトサート成形により屈曲部21の先端に一体成形されている。このとき、突条25は、屈曲部21の内側面から周方向に渡って一定の長さL(7mm)で内方へ突出する。
【0043】
また、カバー2の平板20には、螺子4を挿通する複数の挿通孔(図示せず)が形成されている。カバー2は、複数の螺子4によりケース本体1に固定される。以下に、ケース本体1とカバー2とが固定された状態を図1〜図4を用いて説明する。
【0044】
ケース本体1の収容凹部10には、回路基板30およびコネクタ31が収容される。この際、コネクタ31は、コネクタ側周壁13に形成されたコネクタ窓穴131から露出する。回路基板30およびコネクタ31を所定の位置に固定した後、ケース本体1にカバー2を装着する。
【0045】
ケース本体1にカバー2を装着する際には、カバー2の突条25を上部周壁12の外側面121、コネクタ側周壁13および側部周壁15の外側面と弾接させる。カバー2の屈曲部21の内面とケース本体1の外側面との間には4mmの間隔が周方向に渡って一定に設けてあるため、突条25は、ケース本体1の外側面と当接するとともに撓みを生じる。また、堰部195は、屈曲部21に覆われる。
【0046】
このとき、カバー2の内側面は、平板20において、コネクタ側周壁13、下部周壁14および側部周壁15の開口端面191と当接する。平板20の挿通孔より螺子4を挿通し、開口端面191に形成された螺子穴と螺合させることで、カバー2がケース本体1に固定される。こうして、収容凹部10は、カバー2により閉止される。
【0047】
収容凹部10を開放したいときには、螺子4の螺合を全て解除するだけで、ケース本体1からカバー2を容易に取り外すことができる。再びカバー2をケース本体1に取り付けるときには、前述のように螺子4によりカバー2を固定すれば、カバー2の屈曲部21の内面とケース本体1の外側面とが上記の所定の間隔をもって配置される。そのため、突条25において、カバー2を取り外す前と同じ弾接の度合いが再現される。
【0048】
また、カバー2は、屈曲部21とは別に、突条をもたない第二屈曲部22を有する。第二屈曲部22は、平板20の短辺の一部から屈曲されて立ち上がり、屈曲部21の起点および終点に隣接して形成される。第二屈曲部22は、コネクタ側周壁13および側部周壁15の外側面と開口部の中程で接触し、ケース本体1を保持する。
【0049】
以上説明した本実施例の電子機器筐体では、カバー2の突条25が、上部周壁12の外側面121ならびにコネクタ側周壁13および側部周壁15の外側面と弾接する。そのため、電子機器筐体の上方より水滴が滴下すると、カバー2の表面に付着した水は、図4の矢印Xに示す方向に流れる。すなわち、カバー2の表面に付着した水が、カバー2の内側面を伝って収容凹部10へ浸入するのを防止できる。また、突条25はケース本体1の外側面に弾接するため、シール性が高い。また、万一、突条25から水が浸入しても、堰部195により収容凹部10への水の流れが堰き止められる。
【0050】
さらに、本実施例の電子機器筐体では、上部周壁12の外側面121が水平方向に対して角度θを有するため、電子機器筐体の上方より滴下した水滴は重力により背面板11側に流れ落ちる。そのため、突部25の周辺に長時間水が溜まることがない。また、突条をもたない平板20の周縁部に水が伝うのを防止できる。
【0051】
また、コネクタ窓穴131の上側に形成された庇部133により、上方から滴下する水滴がコネクタ窓穴131から浸入するのを防止することができる。さらに、庇部133は、その上面が、開口部19側から背面板11側へゆくにしたがって下方に傾斜するため、水滴が留まることなく背面板11側へと流れ落ちる。
【0052】
[実施例2〜4]
実施例2〜4の電子機器筐体は、突条の形状を変更した以外は、実施例1の電子機器筐体と同様の構成である。
【0053】
実施例2の電子機器筐体は、屈曲部21の先端部のほぼ全長を覆う嵌合部26bと一体的に形成された突条25bを有する(図5B参照)。突条25bは、平板状であるが、その先端の断面形状は円形である。突条25bは、その先端の曲面がケース本体1の外側面に当接した状態で弾接する。その結果、実施例1と同様の効果が得られる。
【0054】
実施例3の電子機器筐体は、屈曲部21の先端部のほぼ全長を覆う嵌合部26cと一体的に形成された2つの突条251cおよび252cを有する(図5C参照)。突条251cおよび252cは平板状で、周方向に対してそれぞれ平行となるように位置する。実施例3の電子機器筐体では、弾接する部位が2箇所となるので、シール性が向上する。
【0055】
実施例4の電子機器筐体は、屈曲部21の先端部のほぼ全長を覆う嵌合部26dと一体的に形成され、中空部24dを有する突条25dを有する(図5D参照)。突条25dは、中空部24dを有するため、実施例1の突部25よりも幅が広くても弾性変形しやすい。その結果、ケース本体1の外側面と弾接する面積が多くなりシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明を適用した実施例1の電子機器筐体の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子機器筐体の側面図であって、コネクタ側から見た側面図である。
【図3】図1に示す電子機器筐体の断面図であって、電子機器筐体を中央部で長手方向に垂直に切断した切断面を示す。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【図5】本発明を適用した電子機器筐体の突出部の形状を示す断面図であって、図5Aは図1に示す電子機器筐体の突部、図5B〜図5Dは他の形態の突部を示す断面図である。
【図6】従来技術の筐体の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1:ケース本体
10:収容凹部(収容空間)
19:開口部
2:カバー
20:カバー本体
21:屈曲部
25、25b、251c、252c、25d:突条(突部)
26、26b、26c、26d:嵌合部
30:回路基板
31:コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容する収容凹部が設けられたケース本体と、該収容凹部の開口部に固定され該収容凹部を閉止するカバーと、からなる電子機器筐体であって、
該カバーは、板状のカバー本体と、該カバー本体の周縁部の少なくとも一部から前記ケース本体の外側面を覆うように屈曲された屈曲部と、周方向に渡って該屈曲部の内側面から内方へ突出し該外側面と弾接する突部と、
を有することを特徴とする電子機器筐体。
【請求項2】
前記屈曲部は、少なくとも前記開口部の外側面を覆う請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項3】
前記突部は、前記ケース本体の外側面と撓みを生じて弾接する請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項4】
前記開口部は、開口端部から外方に張り出す堰部を有する請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項5】
前記開口部を側方に向けて設置され、
少なくとも上方に位置する前記ケース本体の外側面は、前記屈曲部に覆われるとともに前記突部と弾接する請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項6】
前記開口部を側方に向けて配置されたときに上方に位置する前記ケース本体の外側面は、該開口部の開口端側が最も高くなるように水平に対して傾斜している請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項7】
前記カバー本体は、少なくとも一部が前記開口部の端面と当接されて固定される請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項8】
前記突部は、エラストマー材料からなる請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項9】
前記エラストマー材料は、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴムおよびシリコーンゴムのうちのいずれか一種以上を含む請求項8記載の電子機器筐体。
【請求項10】
前記突部は、前記屈曲部の先端部に嵌合する嵌合部に一体的に形成される突条からなる請求項1記載の電子機器筐体。
【請求項11】
前記突条は、平板状である請求項10記載の電子機器筐体。
【請求項12】
前記嵌合部は、前記屈曲部の先端部に着脱可能に嵌合する請求項10記載の電子機器筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−250905(P2007−250905A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73390(P2006−73390)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】