説明

電子機器

【課題】電源切断後に電源が再投入された際のウォーミングアップを適正な時間に規定する。
【解決手段】ウォーミングアップに必要とされる基準時間を記憶するROM17と、電源が投入された投入時刻からの経過時間Iを計測するタイマ14と、経過時間Iが基準時間Isに到達したか否かの判別処理を行い経過時間Iが基準時間Isに到達したときにウォーミングアップの完了を表示部15に表示させる演算制御部16とを備えた漏れ電流測定装置1であって、ROM17は、電源が切断された切断時刻、および切断時刻における経過時間Iを記憶可能に構成され、演算制御部16は、電源が切断されたときに切断時刻および経過時間IをROM17に記憶させ、切断時刻から所定時間内に電源が再投入されたときに切断時刻における経過時間Iをその再投入時刻における新たな経過時間として判別処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の測定確度を確保するためのウォーミングアップに必要とされる基準時間が予め規定されると共に、電源投入時刻からの経過時間が基準時間に到達したときにウォーミングアップの完了を報知する電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、測定装置の測定確度を確保するためには、予め規定された基準時間(例えば、機種によっては数分から数時間)以上のウォーミングアップが必要とされる。この種のウォーミングアップの基準時間が予め規定されている測定装置では、電源投入時刻からの経過時間をストップウォッチ等によって計測して経過時間が基準時間に到達したか否かを長時間に亘って監視する必要があるため、作業が煩雑であるという問題点が存在する。この問題点を解決する手段として、実開平4−55573号公報には、ウォームアップ(ウォーミングアップ)の完了を表示するディジタルオシロスコープ(電子機器)が開示されている。このディジタルオシロスコープは、電源投入時刻からの経過時間を計測すると共にその経過時間がセット時間(基準時間)に到達したときにウォームアップ完了信号を出力するタイマ部7と、タイマ部7から出力されたウォームアップ完了信号に基づいてウォームアップ完了を表示する表示部6とを備え、ウォームアップ完了が自動的に表示されるように構成されている。したがって、このディジタルオシロスコープでは、煩雑な経過時間の監視を不要にしつつウォームアップ完了がユーザーに確実に報知される。
【0003】
【特許文献1】
実開平4−55573号公報(第1頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の電子機器には、以下の問題点がある。すなわち、従来の電子機器では、電源投入時刻を常に起算時として経過時間を計測して、その経過時間が基準時間に到達したときにウォームアップ完了信号を出力している。このため、例えば、ウォームアップ中に電源を切断する事情が生じて一旦切断し、その後に電源を再投入した際には、たとえ電源切断後に瞬時に再投入したとしても、既に計測した計測時間とは無関係に電源再投入時刻から新たな経過時間が計測されることとなる。したがって、最初の電源投入時刻から電源切断時刻までのウォームアップが無駄となるため、ウォームアップに要する時間がその分だけ長時間化しているという問題点がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、電源切断後に電源が再投入された際のウォーミングアップを適正な時間に規定し得る電子機器を提供することを主目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電子機器は、所定の測定確度を確保するためのウォーミングアップに必要とされる基準時間を記憶する第1の記憶部と、電源が投入された投入時刻からの経過時間を計測するタイマと、前記経過時間が前記基準時間に到達したか否かを判別する判別処理を行うと共に当該経過時間が当該基準時間に到達したときに前記ウォーミングアップの完了を報知部に報知させる制御部とを備えた電子機器であって、前記電源が切断された切断時刻、および当該切断時刻における前記経過時間を記憶可能な第2の記憶部を備え、前記制御部は、前記電源が切断されたときに前記切断時刻および前記経過時間を前記第2の記憶部に記憶させ、当該切断時刻から所定時間内に前記電源が再投入されたときに当該切断時刻における前記経過時間をその再投入時刻における新たな前記経過時間として前記判別処理を行う。
【0007】
請求項2記載の電子機器は、所定の測定確度を確保するためのウォーミングアップに必要とされる基準時間を記憶する第1の記憶部と、電源が投入された投入時刻からの経過時間を計測するタイマと、前記経過時間が前記基準時間に到達したか否かを判別する判別処理を行うと共に当該経過時間が当該基準時間に到達したときに前記ウォーミングアップの完了を報知部に報知させる制御部とを備えた電子機器であって、前記電源が切断された切断時刻、および当該切断時刻における前記経過時間を記憶可能な第2の記憶部を備え、前記制御部は、前記電源が切断されたときに前記切断時刻および前記経過時間を前記第2の記憶部に記憶させ、当該切断時刻から所定時間内に前記電源が再投入されたときに、当該切断時刻における前記経過時間および前記基準時間のいずれか短い時間を予め決められた短縮率で短縮させた経過時間をその再投入時刻における新たな前記経過時間として前記判別処理を行う。この場合、本発明における「短縮率」には、前記経過時間および前記基準時間のいずれか短い時間に所定の割合を乗じて短縮する短縮方式、所定の固定時間を減じて短縮する短縮方式、および両短縮方式を組み合わせた短縮方式などに従って短縮する場合の各種短縮率が含まれる。
【0008】
請求項3記載の電子機器は、請求項2記載の電子機器において、前記第1の記憶部は、互いに長さの異なる複数の前記所定時間および当該各所定時間にそれぞれ対応させた複数の前記短縮率を記憶し、前記制御部は、前記切断時刻から前記再投入時刻までの時間を超えかつ最短の前記所定時間を前記複数の所定時間の中から特定すると共に当該特定した所定時間に対応する前記短縮率でいずれか短い時間を短縮させる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電子機器の好適な実施の形態について説明する。
【0010】
最初に、漏れ電流測定装置(電子機器)1の構成について、図面を参照して説明する。
【0011】
漏れ電流測定装置1は、図1に示すように、例えば測定対象体MSの漏れ電流を測定可能に構成に構成されている。また、漏れ電流測定装置1は、電源投入時刻からの経過時間Iが予め規定された基準時間Isに到達したときにウォーミングアップ完了を報知可能に構成されている。具体的には、漏れ電流測定装置1は、同図に示すように、電圧検出部11、A/D変換部12、操作部13、タイマ14、表示部15、演算制御部(制御部)16、ROM17、RAM18およびROM19を備えて構成されている。
【0012】
電圧検出部11は、電流検出用抵抗(模擬人体インピーダンス)と、電流検出用抵抗の両端に発生した電圧を所定の利得で増幅する増幅回路とを備えている(いずれも図示せず)。A/D変換部12は、電圧検出部11によって検出された電圧をアナログ−ディジタル変換して生成した電圧値データを演算制御部16に出力する。
【0013】
操作部13は、漏れ電流測定時の条件設定キーや電源スイッチなどが配設されて構成されている。タイマ14は、演算制御部16によって出力される制御信号に従い、電源投入時刻からの経過時間Iを所定時間(例えば1秒)刻みで計測すると共に、計測した経過時間Iと、経過時間Iを計測した計測時刻Tとに関する情報を出力する。表示部15は、本発明における報知部に相当し、例えば液晶パネルを備えて構成され、ウォーミングアップ完了を表す文字や記号、および測定された漏れ電流値などを表示する。演算制御部16は、漏れ電流測定装置1を統括的に制御すると共に、A/D変換部12によって出力された電圧値データで示される電圧値と電圧検出部11内の電流検出用抵抗の抵抗値とに基づいて漏れ電流値を演算して測定すると共にその測定値を表示部15に表示させる。また、演算制御部16は、電源が投入されたときに後述する基準時間到達判別処理(本発明における判別処理)30を実行する。具体的には、この基準時間到達判別処理30では、演算制御部16は、タイマ14によって計測された経過時間Iおよび計測時刻Tに基づいて、予め決められた短縮率で経過時間Iを短縮させて新たな経過時間Iを算出すると共にその経過時間Iが基準時間Isに到達したか否かを判別して、到達したと判別したときにウォーミングアップ完了を表示部15に表示させる。
【0014】
ROM17は、本発明における第1および第2の記憶部に相当し、EPROM等の不揮発性メモリで構成され、漏れ電流測定装置1の測定確度を確保するためのウォーミングアップに必要とされる基準時間Isを記憶する。また、ROM17は、演算制御部16によって転送されたタイマ14から出力される経過時間Iおよび計測時刻Tを記憶する。この場合、ROM17は、演算制御部16によって経過時間Iおよび計測時刻Tが出力(転送)される毎に両情報(I,T)をそれぞれ書き換えて記憶する。したがって、ROM17は、タイマ14(演算制御部16)によって最後(最新)に出力された両情報(I,T)をそれぞれ記憶する。さらに、ROM17は、補正判定時間Ij1〜Ij3(本発明における所定時間に相当する。以下区別しないときは単に「補正判定時間Ij」ともいう)、および各補正判定時間Ij1〜Ij3にそれぞれ対応する係数C1〜C3(本発明における短縮率に相当する。以下区別しないときは単に「係数C」ともいう)を記憶する。ここで、補正判定時間Ij1〜Ij3は、演算制御部16が基準時間到達判別処理30を実行する際に、経過時間Iを補正するか否かの判別処理に使用される。また、係数C1〜C3は、経過時間Iを補正して補正経過時間Iaを算出する際に使用される。本実施例では、例えば、補正判定時間Ij1〜Ij3として、3分、2分および1分がそれぞれ規定され、係数C1〜C3として60%、80%および100%が各補正判定時間Ij1〜Ij3にそれぞれ対応して規定されている。RAM18は、A/D変換部12によって出力された電圧データや演算制御部16によって演算された漏れ電流の電流値などを一時的に記憶する。ROM19は、演算制御部16によって実行される各種制御プログラムや、ウォーミングアップ完了などを表示させる際の文字データおよび図形データなどを記憶する。
【0015】
次に、漏れ電流測定装置1の全体的な動作について、図面を参照して説明する。
【0016】
最初に、前回の使用から一定期間(例えば1日以上)が経過した状態で漏れ電流測定装置1を使用する際の全体的な動作について、図2を参照して説明する。
【0017】
この漏れ電流測定装置1では、電源が投入された際に、各構成要素に電源が供給されてウォーミングアップが開始される。この際に、演算制御部16が、図2に示す基準時間到達判別処理30を実行する。この基準時間到達判別処理30では、演算制御部16は、まず、ROM17に記憶されている計測時刻Tおよび経過時間Iを読み込む(ステップ31)。この場合、ROM17には、前回の使用終了時において電源が切断される直前にタイマ14によって出力された計測時刻Tおよび経過時間Iが記憶されている。したがって、読み込んだ計測時刻T(以下、読み込んだ計測時刻Tを他の計測時刻Tと区別するときは「計測時刻Te」ともいう)は、前回の使用終了時において電源が切断された時刻とほぼ同時刻(この例では最大1秒前)を表し、経過時間I(以下、読み込んだ経過時間Iを他の経過時間Iと区別するときは「経過時間Ie」ともいう)は、前回の使用終了時において電源が切断された時刻とほぼ同時刻における経過時間を表している。次に、演算制御部16は、現在時刻(電源が投入された時刻)が計測時刻Teから3分(補正判定時間Ij1)以内か否かを判別する(ステップ32)。この例では、現在時刻が計測時刻Teから1日以上経過しているため、演算制御部16は、3分を超えていると判別してステップ33を実行する。
【0018】
このステップ33では、演算制御部16は、タイマ14の計測による経過時間Iを0秒に初期化する。つまり、等価的には、演算制御部16は、経過時間Ieに0%を乗じた経過時間を新たな経過時間Iとする。次いで、表示制御部16は、電源投入時刻(ウォーミングアップの開始時刻)からの経過時間Iの計測を開始させるための制御信号をタイマ14に出力する(ステップ34)。この際に、演算制御部16は、「ウォーミングアップ中」の文字または記号を表示部15に表示させる。この場合、ウォーミングアップが終了するまでの残り時間(基準時間Isと経過時間Iとの差)や経過時間Iを表示させることもできる。この後、タイマ14が、所定時間(例えば1秒)刻みで経過時間Iを計測して、経過時間I、およびその経過時間Iを計測した計測時刻Tを演算制御部16に出力する。次に、演算制御部16は、入力した経過時間Iおよび計測時刻TをROM17に記憶させる(ステップ35)。この場合、演算制御部16は、両情報(I,T)の出力毎に、既に記憶されている両情報(I,T)に対して、新たに出力された両情報(I,T)を書き換えて(上書きして)ROM17に記憶させる。したがって、ROM17には、タイマ14によって最後(最新)に出力された経過時間Iおよび計測時刻Tが記憶される。
【0019】
次いで、演算制御部16は、ROM17に記憶されている基準時間Is(例えば30分)と、出力された経過時間Iとを比較して、経過時間Iが基準時間Isに到達したか否かを判別する(ステップ36)。この際に、演算制御部16は、経過時間Iが基準時間Isに到達していないときには、経過時間Iの出力毎にステップ35,36を繰り返して実行する。一方、経過時間Iが基準時間Isに到達したときには、演算制御部16は、「ウォーミングアップ中」の表示に代えて、「ウォーミングアップ完了」の文字または記号を表示部15に表示させる(ステップ37)。これにより、ウォーミングアップ完了が報知される。続いて、漏れ電流測定を開始する指示信号が操作部13を介して入力された際には、演算制御部16は、所定の測定手順に従って漏れ電流の測定を開始する。なお、経過時間Iが基準時間Isに到達するまで漏れ電流の測定開始を制限する構成を採用することもできる。
【0020】
次に、ウォーミングアップ中に電源が切断され、その後に、電源が再投入されてウォーミングアップを再開する際の漏れ電流測定装置1の全体的な動作について、図2を参照して説明する。
【0021】
ウォーミングアップ中(つまり、電源投入時刻から基準時間Isを経過する時刻よりも前の時刻(一例として、電源投入時刻から20分を経過した時刻))において、例えば、測定場所を変更する等の事情で電源を切断したときには、必然的にウォーミングアップが中断され、その後に測定場所を変更して電源が再投入されたときには、ウォーミングアップが自動的に再開(開始)される。この際に、演算制御部16は、上記した基準時間到達判別処理30を実行して、計測時刻T(計測時刻Te)および経過時間I(経過時間Ie)を読み込む(ステップ31)。この場合、ROM17には、前述したように、タイマ14によって最後に出力された計測時刻Tおよび経過時間Iが記憶されている。したがって、読み込んだ計測時刻Teおよび経過時間Ieは、ウォーミングアップが中断された時刻(電源切断時刻)とほぼ同じ時刻(この例では最大1秒前)およびその時刻における経過時間(この例では20分)をそれぞれ表している。
【0022】
次に、演算制御部16は、読み込んだ計測時刻Teと現在時刻(電源の再投入時刻)とを比較して、現在時刻が計測時刻Teから3分(補正判定時間Ij1)以内か否かを判別する(ステップ32)。この際に、現在時刻が3分を経過しているときには、20分間(経過時間Ie)で上昇した漏れ電流測定装置1の各構成要素の温度が低下しているため、ウォーミングアップを最初から実行すべきであるとして、演算制御部16は、前述したステップ33〜37を実行する。一方、現在時刻が計測時刻Teから3分以内のときには、現在時刻が計測時刻Teから2分(補正判定時間Ij2)以内か否かを判別する(ステップ38)。この際に、現在時刻が2分を経過しているときには、20分間で上昇した各構成要素の温度がウォーミングアップを最初から実行するほどには低下していないため、ウォーミングアップの時間を短縮すべきであるとして、演算制御部16は、経過時間Ie(この例では20分)に60%(係数C1)を乗じて補正経過時間Ia(この例では12分)を算出して(ステップ39)ROM17に記憶させ、その後にステップ43を実行する。
【0023】
一方、現在時刻が計測時刻Teから2分以内のときには、現在時刻が計測時刻Teから1分(補正判定時間Ij3)以内か否かを判別する(ステップ40)。この際に、現在時刻が1分を経過しているときには、現在時刻が2分を経過しているときよりも各構成要素の温度低下が少ないため、ウォーミングアップの時間をさらに短縮すべきであるとして、演算制御部16は、経過時間Ieに80%(係数C2)を乗じて補正経過時間Ia(この例では16分)を算出して(ステップ41)ROM17に記憶させ、その後にステップ43を実行する。一方、現在時刻が計測時刻Teから1分以内のときには、20分間に上昇した各構成要素の温度がほぼ低下しない状態に保たれているため、電源の再投入時刻からのウォーミングアップの時間が既に20分経過しているとみなすべきであるとして、経過時間Ieに100%(係数C3)を乗じて補正経過時間Iaを算出して(ステップ42)ROM17に記憶させる。この場合、ステップ32,38〜42を実行することにより、計測時刻Teから現在時刻までの時間(つまり、電源の切断時刻から再投入時刻までの時間)を超えかつ最短の補正判定時間Ijが特定され、特定された補正判定時間Ijに対応する係数Cを乗算することで補正経過時間Iaが算出される。このため、計測時刻Teから現在時刻(再投入時刻)までの時間に応じて、測定確度を確保し得る最適な補正経過時間Iaが算出される。次いで、演算制御部16は、タイマ14の計測値としての経過時間Iを補正経過時間Iaに初期化する(ステップ43)。続いて、表示制御部16は、電源投入時刻(ウォーミングアップの開始時刻)からの経過時間Iを計測させるための制御信号をタイマ14に出力すると共に(ステップ34)、「ウォーミングアップ中」の文字または記号を表示部15に表示させる。
【0024】
続いて、演算制御部16は、タイマ14によって出力された経過時間Iおよび計測時刻TをROM17に記憶させた後に(ステップ35)、経過時間Iと基準時間Isとを比較して経過時間Iが基準時間Isに到達したか否かを判別する(ステップ36)。この際に、経過時間Iが基準時間Isに到達していないと判別したときには、演算制御部16は、経過時間Iの出力毎にステップ35,36を繰り返して実行する。一方、経過時間Iが基準時間Isに到達したと判別したときには、演算制御部16は、「ウォーミングアップ中」の表示に代えて、「ウォーミングアップ完了」の文字または記号を表示部15に表示させる(ステップ37)。これにより、ウォーミングアップ完了が報知される。この場合、タイマ14による計測値としての経過時間Iを補正経過時間Iaで初期化することで、ウォーミングアップ完了までの時間が補正経過時間Iaの分だけ短縮されて適正な時間に規定されている。
【0025】
このように、この漏れ電流測定装置1によれば、電源の切断時刻から補正判定時間Ij内に電源が再投入されたときに、演算制御部16が補正経過時間Iaを算出すると共にその補正経過時間Iaを再投入時刻における新たな経過時間Iとして、その経過時間Iが基準時間Isに到達したときにウォーミングアップの完了を表示部15に表示させることにより、電源を切断して短時間のうちに再投入する使用形態において、電源の再投入時刻からウォーミングアップを最初からし直す従来の電子機器と比較して、測定確度を低下させることなく、ウォーミングアップに要する時間を補正経過時間Ia分だけ短縮して適正な時間に規定することができる。したがって、測定作業の効率化を図ることができる。
【0026】
また、演算制御部16が切断時刻から再投入時刻までの時間を超えかつ最短の補正判定時間Ijを特定して特定した補正判定時間Ijに対応する補正経過時間Iaを算出することにより、計測時刻Teから現在時刻までの時間に応じた補正経過時間Ia分だけ短縮することができるため、測定確度を確保しつつ、ウォーミングアップに要する時間を最適な時間に規定することができる。
【0027】
なお、本発明は、上記した本発明の実施の形態に限定されない。例えば、上記した実施の形態では、電子機器として漏れ電流測定装置1を例に挙げて説明したが、本発明は、記録装置や表示装置などの各種測定装置を含むのは勿論のこと、ジェネレータ、校正器および電源等の各種信号発生器のほか、ウォーミングアップを必要とする各種機器に適用が可能である。
【0028】
また、上記した実施の形態では、ウォーミングアップ中に電源を1回切断したときに基準時間到達判別処理30を行う例について説明したが、電源を再投入してウォーミングアップ中に電源をさらに何回か切断した場合にも、電源投入後のその都度、基準時間到達判別処理30を行い得るのは勿論である。加えて、ウォーミングアップ中に電源を切断した例について説明したが、測定を終了して電源を切断し、その後に短時間のうちに電源を再投入して測定を再開する使用形態においても、電源の再投入後のウォーミングアップ時間を短縮して適正な時間に規定することができる。この場合、演算制御部16は、基準時間到達判別処理30のステップ39,41,42において、経過時間Ieおよび基準時間Isのいずれか短い時間に係数C1〜C3をそれぞれ乗じて補正経過時間Iaを算出する。ここで、例えば、最初の測定(電源を投入してから切断するまで)に100分を要して電源の切断から再投入までの時間が2分30秒のときに、上記した実施の形態では、補正経過時間Iaが60分(100分×60%)と算出されるため、ウォーミングアップが不足であるにも拘わらず電源の再投入後に直ちにウォーミングアップ完了が表示されることもある。これに対して、この基準時間到達判別処理30によれば、補正経過時間Iaとして18分(30分×60%)が算出される。したがって、この使用形態であってもウォーミングアップ不足を生じさせることなくウォーミングアップ時間を適正な時間に規定することができる。
【0029】
また、経過時間Ieに係数Cを乗じて補正経過時間Iaを算出する算出方法に代えて、経過時間Ieから予め規定された固定時間を減じて経過時間Ieを短縮させることによって補正経過時間Iaを算出する算出方法を採用することもでき、この構成であっても、上記の基準時間到達判別処理30と同様にして、ウォーミングアップ不足を生じさせることなくウォーミングアップに要する時間を補正経過時間Ia分だけ短縮して適正な時間に規定することができる。この場合、ROM17は、係数Cに代えて各補正判定時間Ijにそれぞれ対応する固定時間を記憶する。また、演算制御部16は、基準時間到達判別処理30におけるステップ39,41,42において、経過時間Ieから固定時間を減じて補正経過時間Iaを算出する基準時間到達判別処理を実行する。具体的には、例えば、本発明における所定時間としての補正判定時間Ij1,Ij2,Ij3にそれぞれ5分、3分および0分の固定時間をそれぞれ予め対応させる。そして、演算制御部16は、経過時間Ieが補正判定時間Ij1を超えるときには、上記ステップ33において経過時間Iを0秒に初期化し、経過時間Ieが補正判定時間Ij1以内で補正判定時間Ij2を超えるときには、経過時間Ieから5分を減じて(ステップ39)、その減じた時間を新たな経過時間Iとし(ステップ43)、経過時間Ieが補正判定時間Ij2以内で補正判定時間Ij3を超えるときには、経過時間Ieから3分を減じて(ステップ41)、その減じた時間を新たな経過時間Iとし(ステップ43)、経過時間Ieが補正判定時間Ij3以内のときには、経過時間Ieから0分を減じて(ステップ42)、つまり経過時間Ieそのものを新たな経過時間Iとする(ステップ43)。この場合、経過時間Ieに所定の割合を乗じて短縮する短縮方式と、経過時間Ieから固定の時間を減じて短縮する短縮方式とを併せて実行する方式を採用することもできる。また、本発明は、これらの短縮方式に限定されず、ウォーミングアップ不足を生じさせることなくウォーミングアップ時間を適正な時間に規定することができる限り、任意の短縮方式を採用することができる。
【0030】
さらに、上記した実施の形態では、3分、2分および1分の3つの補正判定時間Ijを規定した例について説明したが、補正判定時間Ijとしては、1つ以上の任意の数を採用することができ、補正判定時間Ijの長さ、および補正判定時間Ijに対応する係数Cについても各電子機器に適した他の値を設定することができる。この場合、補正判定時間Ijを1つに規定したときには、演算制御部16は、基準時間到達判別処理30のステップ38〜42を省き、かつステップ43において経過時間Ie(または、経過時間Ieに固定の割合を乗じた補正経過時間Ia、あるいは経過時間Ieから固定の時間を減じた補正経過時間Ia)でタイマ14を初期化する。この構成であっても、ウォーミングアップに要する時間を切断時刻における経過時間Ieまたは補正経過時間Iaの分だけ短縮することができるため、測定確度を低下させることなく適正な時間に規定することができる。さらに、上記した実施の形態では、ウォーミングアップ完了を表示部15に文字や記号で表示して報知する例について説明したが、例えば、音声やランプの点灯およびこれらを組み合わせてウォーミングアップ完了を報知する方法を採用することもできる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の電子機器によれば、電源の切断時刻から所定時間内に電源が再投入されたときに、切断時刻における経過時間を再投入時刻における新たな経過時間としてその新たな経過時間が基準時間に到達したか否かを判別する判別処理を制御部が実行することにより、電源を切断して短時間のうちに再投入する使用形態において、電源の再投入時刻からウォーミングアップを最初からし直す従来の電子機器と比較して、ウォーミングアップに要する時間を切断時刻における経過時間分だけ短縮することができるため、測定確度を低下させることなくウォーミングアップに要する時間を適正な時間に規定することができる。したがって、測定作業の効率化を図ることができる。
【0032】
また、請求項2記載の電子機器によれば、制御部が切断時刻における経過時間および基準時間のいずれか短い時間を予め決められた短縮率で短縮させた経過時間をその再投入時刻における新たな経過時間として判別処理を行うことにより、測定終了後の短時間のうちに電源を再投入して測定を再開する使用形態であっても、ウォーミングアップ不足を生じさせることなくウォーミングアップ時間を適正な時間に規定することができる。
【0033】
また、請求項3記載の電子機器によれば、制御部が切断時刻から再投入時刻までの時間を超えかつ最短の所定時間を複数の所定時間の中から特定してその所定時間に対応する短縮率で上記のいずれか短い時間を短縮させることにより、計測時刻から再投入時刻までの時間に応じた経過時間分だけ短縮することができるため、測定確度を確保しつつ、ウォーミングアップに要する時間を最適な時間に規定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る漏れ電流測定装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】漏れ電流測定装置1の演算制御部16によって実行される基準時間到達判別処理30のフローチャートである。
【符号の説明】
1 漏れ電流測定装置
14 タイマ
15 表示部
16 演算制御部
17 ROM
30 基準時間到達判別処理
C1〜C3 係数
I 経過時間
Ia 補正経過時間
Ie 経過時間
Ij1〜Ij3 補正判定時間
Is 基準時間
T 計測時刻
Te 計測時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定確度を確保するためのウォーミングアップに必要とされる基準時間を記憶する第1の記憶部と、電源が投入された投入時刻からの経過時間を計測するタイマと、前記経過時間が前記基準時間に到達したか否かを判別する判別処理を行うと共に当該経過時間が当該基準時間に到達したときに前記ウォーミングアップの完了を報知部に報知させる制御部とを備えた電子機器であって、
前記電源が切断された切断時刻、および当該切断時刻における前記経過時間を記憶可能な第2の記憶部を備え、
前記制御部は、前記電源が切断されたときに前記切断時刻および前記経過時間を前記第2の記憶部に記憶させ、当該切断時刻から所定時間内に前記電源が再投入されたときに当該切断時刻における前記経過時間をその再投入時刻における新たな前記経過時間として前記判別処理を行う電子機器。
【請求項2】
所定の測定確度を確保するためのウォーミングアップに必要とされる基準時間を記憶する第1の記憶部と、電源が投入された投入時刻からの経過時間を計測するタイマと、前記経過時間が前記基準時間に到達したか否かを判別する判別処理を行うと共に当該経過時間が当該基準時間に到達したときに前記ウォーミングアップの完了を報知部に報知させる制御部とを備えた電子機器であって、
前記電源が切断された切断時刻、および当該切断時刻における前記経過時間を記憶可能な第2の記憶部を備え、
前記制御部は、前記電源が切断されたときに前記切断時刻および前記経過時間を前記第2の記憶部に記憶させ、当該切断時刻から所定時間内に前記電源が再投入されたときに、当該切断時刻における前記経過時間および前記基準時間のいずれか短い時間を予め決められた短縮率で短縮させた経過時間をその再投入時刻における新たな前記経過時間として前記判別処理を行う電子機器。
【請求項3】
前記第1の記憶部は、互いに長さの異なる複数の前記所定時間および当該各所定時間にそれぞれ対応させた複数の前記短縮率を記憶し、
前記制御部は、前記切断時刻から前記再投入時刻までの時間を超えかつ最短の前記所定時間を前記複数の所定時間の中から特定すると共に当該特定した所定時間に対応する前記短縮率でいずれか短い時間を短縮させる請求項2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−125729(P2004−125729A)
【公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−293493(P2002−293493)
【出願日】平成14年10月7日(2002.10.7)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】