説明

電子機器

【課題】回転型電子機器の本体部と回転部を、ひねりを加えたフレキシブル回路基板で接続し、より薄型とする。
【解決手段】本体部10と回転部30とを電気的に接続するフレキシブル回路基板60は、回転部30の回転角度(180°)の1/2の角度(90°)にあらかじめひねられて、フレキシブル回路基板60一端61が本体部10に固定され、フレキシブル回路基板60の他端62が回転部30に固定される。回転部30は、フレキシブル回路基板のひねりが減少する方向に回転され、180°回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部に対して水平に回転する回転部を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話や携帯情報端末のような小型の電子機器においては、液晶表示画面を備える表示部のような可動部とキー入力可能なキー入力部のような本体部とが折り畳み可能となっているものが多い。しかし、近年キー入力部に対して表示部が水平に180°回転する携帯電話が現れている。表示部を閉じた状態では、表示部の下にキー入力部が配置された状態になり、装置を開くと、表示部とキーボード部とが180°開いた状態になる。いずれの場合も、折り畳みタイプとは異なり、表示部が前面を向いた状態となる。キー入力を使用しなければ、閉じたままで電話やメールが可能である。また、携帯電話にカメラ機能がついている場合には、大きな表示部がファインダ代わりにもなる。また、テレビを受信する機能がついている場合も、表示部を閉じたままで視聴可能である。したがって、今後広く使用されることが予想される。
【0003】
ところで、携帯電話の表示部とキー入力部とは、ヒンジ部を介して電気的に接続されている。折り畳み型の携帯電話では、柔軟性のある絶縁板上に多数の信号線を印刷により形成したフレキシブル回路基板(FPC)を使用していた(特許文献1参照)。しかしながら、表示部が回転する回転型では、表示部を軸支する軸支部を通る信号線を180°ひねることになる。フレキシブル回路基板では、90°を超えてひねられると、フレキシブル回路基板への負荷が増大し、断線の危険もあって、180°ひねられることになる個所にはとても使用できない。したがって、表示部とキー入力部とを接続するために、軸支部にフレキシブル回路基板を用いることは困難で、細線ケーブルからなる信号線を束ねてヒンジ部を通して接続していた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−47968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、細線ケーブルを使用すると、軸支部を通すために多数の信号線を束ねるので、フレキシブル回路基板を使用する場合より厚さ方向に空間が必要となり、装置を薄くできない要因となっている。本発明は、上記の問題点に鑑み、回転部と本体部とをフレキシブル回路基板で接続することを可能とする電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、本体部と、前記本体部の軸支部に軸支され、所定の回転角を有する回転部と、前記軸支部を通るフレキシブル回路基板とを有し、前記フレキシブル回路基板は、前記回転部の所定の回転角の1/2の角度にひねって、前記本体部と前記回転部とに固定され、前記回転部は、前記フレキシブル回路基板のひねりが減少する方向に回転することを特徴とする電子機器が提供される。
【0007】
前記回転部の所定の角度は、180°以下にすることができ、前記フレキシブル回路基板の一端と他端とは同一方向を向いて、それぞれ前記本体部と前記回転部とに接続されるようにもできる。
【0008】
さらに、前記フレキシブル回路基板は、蛇腹状に折り畳まれた蛇腹部を有し、該蛇腹部でひねられているように構成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、フレキシブル回路基板に、回転角度の1/2以上のひねりを与えることがなく、フレキシブル回路基板への負荷を減少させることができる。また、フレキシブル回路基板に蛇腹状部分を設けて、この部分にひねりを与えることによってさらに負荷を分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1(a)及び(b)に、本発明の一実施形態を適用する回転型携帯電話の外観を示す。回転型携帯電話は、キー入力部12を備える本体部10と、液晶表示画面を有する表示部32を備える回転部30とからなる。回転部30は、本体部に軸支され、本体に対して水平に回転可能である。図1(a)は、回転部30を閉じた状態を示し、(b)は、回転部30を水平に180°回転させて、開いた状態を示す。表示部32はいずれの場合も装置の前面に存在する。図1(b)の開状態ではキー入力部32が現れ、数字や文字の入力が可能である。本体部表面の下部は、閉状態にあっても露出しており、図示はしないが、ここにはテンキー入力以外の操作が行なえるような各種の操作スイッチが配置され、閉状態のまま、電話やメールの受信が可能で、また内蔵のメモリから電話番号を読み出して電話することができる。なお、このような回転型携帯電話自体は公知のもので、本体部と回転部との大きさをほぼ同じに構成してもよい。
【0012】
ここで、本発明の作用効果の理解を助けるために、回転型携帯電話の本体部10と回転部30との細線ケーブルにより電気的に接続する従来の例を、図6〜7に基づいて説明する。
【0013】
図6(a)は、閉状態の従来の携帯電話の本体部10と回転部30との電気的接続関係がよくわかるように、その部分のみを透視的に記載した概略図であり、図6(b)は、図6(a)の開口20を通る長手方向断面を示す概略断面図である。本体部10に配置された本体側基板11に、一方が接続された細線ケーブルの束50は、回転部30を軸支する軸支部に設けられた開口20を通って回転部30の回転部側基板31に接続されている。なお、13は、装置に内蔵された電子回路あるいはバッテリなどの一般電子部品を示す。
【0014】
図7(a)は、開状態の携帯電話の本体部10と回転部30との電気的接続関係がよくわかるように、その部分のみを透視的に記載した概略図であり、図7(b)は、図7(a)の開口20を通る長手方向断面を示す概略断面図である。図7(a)は、図6(a)の閉状態から回転部を180回転させて開状態にしたものである。このように、従来は、本体部10と回転部30とを細線ケーブルの束50により電気的に接続して、回転体の180°の回転を可能にしている。しかし、図6(b)及び図7(b)から明らかなように、本体部10及び回転部30に、細線ケーブルの束50を収納するための空間が必要で、本体部10及び回転部30の高さを低くして、より小型の携帯電話を実現することは困難である。
【0015】
本発明は、前述のように、より小型の携帯電話を実現するために、フレキシブル回路基板を用いるようにするものである。
【0016】
図2(a)及び(b)に、フレキシブル回路基板を用いた本発明の第1の実施形態を示す。図2(a)は、図1(a)に対応し、携帯電話を閉じた状態を示し、図2(b)は、図1(b)に対応し、携帯電話を開いた状態を示す。閉じた状態から開いた状態へは、反時計回りに180°回転して移動する。本実施形態は、本体部10と回転部30とを電気的に接続するために、フレキシブル回路基板60を用いる。図2(a)に示すように、携帯電話を閉じた状態で、フレキシブル回路基板60は、本体部10と回転部30とに連通する開口20において、90°ひねられて、フレキシブル回路基板60の一端61は、本体部に配置された本体基板11に例えばコネクタを使用して接続固定され、他端62は、回転部に配置された基板(図示せず)に同様に接続固定されている。本例ではフレキシブル回路基板60の一端61と他端62とは90°の角度をもって配置されている。
【0017】
次に、回転部が反時計回りに180°回転してキー入力部が開状態となるときには、図2(b)に示されるように、可動側に接続固定されたフレキシブル回路基板60の一端は、図2(a)の位置から180°回転した位置に移動して、フレキシブル回路基板60は図2(a)の状態とは逆に90°ひねられた状態になっている。図2(a)から図2(b)の状態への移動は、フレキシブル回路基板60が90°ひねられた状態から、そのひねりが解消していく方向に回転し、回転部30が本体部10に対して90°になった状態でひねりがまったくなくなり、さらに回転部が回転すると逆にひねりが加わっていくが、180°回転して最後に図2(b)の状態になっても、フレキシブル回路基板60は図2(a)の状態とは逆に90°ひねられた状態になるだけである。開状態から閉状態に戻すには、逆に時計回りに180°回転すればよい。
【0018】
このように、本実施形態では、本体部10と回転部30を電気的に接続するフレキシブル回路基板60を、回転部30の回転角(180°)のちょうど半分に相当する角度(90°)だけあらかじめひねって配置しておき、ひねりがなくなる方向に回転部30を180°回転する。こうすると、本体部と回転部とをフレキシブル回路基板60で接続して回転部を180°回転しても、フレキシブル回路基板60は高々90°しかひねられることがないので、フレキシブル回路基板60が断線するようなおそれはない。このようにして、フレキシブル回路基板を使用して、より小型の回転型携帯電話が実現できる。
【0019】
フレキシブル回路基板のひねりの角度は、回転部の回転角の1/2となるので、回転部の回転角に依存して決まる。したがって、もし本体部に対して回転部が90°回転する装置があれば、回転部の回転前の状態で、フレキシブル回路基板を90°の1/2である45°だけひねって配置しておき、ひねりが解消する方向に90°回転して、逆に45°だけひねられた状態となって回転を終了するようにできる。なお、フレキシブル回路基板を90°より大きなひねりを与えると、前述のようにフレキシブル回路基板への負荷が増大するが、場合によっては回転部が180°を超えて回転する装置に本発明を適用して、フレキシブル回路基板を90°より大きくひねるようにすることもできる。
【0020】
また、フレキシブル回路基板のひねりの方向を逆にすれば、回転部30を時計回りに回転して閉状態から開状態に移行させることができる。例えば、図2(a)において、本体側基板11に接続されているフレキシブル回路基板60の一端61を、可動側に接続されている他端62の左方で基板11に固定して図2(a)とは逆に90°ひねるようにすればよい。
【0021】
さらに、フレキシブル回路基板60は、本体部10と回転部30とを接続するために、まずU字状に折り曲げられ、その後90°ひねられている状態となっている。しかし、フレキシブル回路基板60は、S字状に折り曲げてから90°ひねるようにしてもよい。その場合もひねりが解消する方向に180°回転することができる。
【0022】
図3(a)及び(b)は、第2の実施形態の閉じた状態と開いた状態を示す。第1の実施形態では、フレキシブル回路基板60の一端61と他端62とは90°の角度をもって配置されているが、フレキシブル回路基板60が開口20で90°ひねられていれば、フレキシブル回路基板60の一端と他端とをどのように配置するかは設計上の事項といえる。図3(a)及び(b)では、第1の実施形態と同様に、開口20において、フレキシブル回路基板60は90°ひねられているが、本体部に固定されたフレキシブル回路基板60の一端61と、回転部30に固定された他端62とは同一方向に向いて配置されている。この例でわかるように、フレキシブル回路基板60は、本体部及び回転部の任意の場所で本体部及び回転部の回路と接続することができる。
【0023】
図4及び図5に、第3の実施形態を示す。第3の実施形態は、フレキシブル回路基板60のひねり部分の負荷をさらに軽減するために、フレキシブル回路基板60に蛇腹状に折り畳んだ蛇腹部を設け、この蛇腹部にひねりを与えて、さらにひねり部分の負荷の分散を図るものである。図4(a)は、第3の実施形態の閉状態を示すもので、図3(a)に示す第2の実施形態のフレキシブル回路基板60の開口20を通過する部分を蛇腹状に折り畳んで蛇腹部70を形成し、蛇腹部70を90°ひねって構成したものである、図4(b)はその部分拡大図である。図5(a)は、第3の実施形態の開状態を示すもので、図5(b)はその部分拡大図である。このように構成すると、フレキシブル回路基板60のひねられる部分が、蛇腹状に折り畳まれて蛇腹部70を形成しているので、フレキシブル回路基板60への負荷がさらに分散され、フレキシブル回路基板60が損傷したり断線したりするおそれはさらに減少する。
【0024】
上記実施形態では、本発明を携帯電話に適用した例を説明したが、本発明は、携帯電話に限らず、携帯情報端末、携帯テレビ等に適用できる。また、本発明は、回転部が本体の上に重なるものに限定されず、本体部に回転部が軸支されている電子機器であれば、本発明を適用することができる。
【0025】
以上述べた本発明の実施の態様は、以下の付記のとおりである。
(付記1)
本体部と、
前記本体部の軸支部に軸支され、所定の回転角を有する回転部と、
前記軸支部を通るフレキシブル回路基板とを有し、
前記フレキシブル回路基板は、前記回転部の所定の回転角の1/2の角度にひねって、前記本体部と前記回転部とに固定され、
前記回転部は、前記フレキシブル回路基板のひねりが減少する方向に回転することを特徴とする電子機器。
(付記2)
前記回転部の所定の角度は、180°以下である付記1に記載の電子機器。
(付記3)
前記回転部の所定の角度は、180°である付記2に記載の電子機器。
(付記4)
前記フレキシブル回路基板の一端と他端とは同一方向を向いて、それぞれ前記本体部と前記回転部とに接続される付記1〜4のいずれか1項に記載の電子機器。
(付記5)
前記フレキシブル回路基板は、蛇腹状に折り畳まれた蛇腹部を有し、該蛇腹部でひねられている付記1〜4のいずれか1項に記載の電子機器。
(付記6)
前記フレキシブル回路基板は、U字上に折り曲げられて、前記本体部と前記回転部とにその両端を固定されている付記1〜5に記載の電子機器。
(付記7)
前記フレキシブル回路基板は、S字上に折り曲げられて、前記本体部と前記回転部とにその両端を固定されている付記1〜5に記載の電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の1実施形態が適用される回転型携帯電話の閉状態を示す外観図であり、(b)は、その開状態を示す外観図である。
【図2】(a)は、本発明の1実施形態である携帯電話の閉状態を示す概略図であり、(b)は、開状態を示す概略図である。
【図3】(a)は、本発明の他の実施形態である携帯電話の閉状態を示す概略図であり、(b)は、開状態を示す概略図である。
【図4】(a)は、本発明のさらに他の実施形態である携帯電話の閉状態を示す概略図であり、(b)は、その部分拡大図である。
【図5】(a)は、図3の携帯電話の開状態を示す概略図であり、(b)は、その部分拡大図である。
【図6】(a)は、従来の細線ケーブルを用いた回転型携帯電話の閉状態の部分透視図であり、(b)は、その概略断面図である。
【図7】(a)は、従来の細線ケーブルを用いた回転型携帯電話の開状態の部分透視図であり、(b)は、その概略断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 本体部
11 本体側基板
12 キー入力部
30 回転部
32 表示部
20 開口
60 プリント配線基板
61 プリント配線基板の本体部に接続される一端
60 プリント配線基板の回転部に接続される一端
70 蛇腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の軸支部に軸支され、所定の回転角を有する回転部と、
前記軸支部を通るフレキシブル回路基板とを有し、
前記フレキシブル回路基板は、前記回転部の所定の回転角の1/2の角度にひねって、前記本体部と前記回転部とに固定され、
前記回転部は、前記フレキシブル回路基板のひねりが減少する方向に回転することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記回転部の所定の角度は、180°以下である請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記フレキシブル回路基板の一端と他端とは同一方向を向いて、それぞれ前記本体部と前記回転部とに接続される請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記フレキシブル回路基板は、蛇腹状に折り畳まれた蛇腹部を有し、該蛇腹部でひねられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−108209(P2006−108209A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289711(P2004−289711)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】