説明

電子機器

【課題】オペレータが誤って、またはまったく気づくことなくHDDアクセス中の電源オフ操作を行ってしまうことを防止するとともに、誤って電源をオフしようとした場合でも、電源オフできないような電子機器を提供する。
【解決手段】ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構を設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、メインスイッチを露出、遮蔽するメインスイッチカバーの開閉を検知する開閉検知センサと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、システムコントローラは、開閉検知センサにより、ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチカバーが開けられたことを検出した場合、警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、メインスイッチのロックを解除しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置を搭載した電子機器に関し、特に、ハードディスクアクセス中の電源断を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、ハードディスク装置(以下、HDD)アクセス中に電源オフが原因と推定される不具合が発生している。このような不具合をなくすために、HDDアクセス中に誤って、または気付かないうちに電源オフされないような方法が提案されている。
【0003】
例えば、HDDアクセス中に誤って電源をオフしないように、HDDアクセス中を示すLEDを表示するものがある。
また、強制的に電源オフするようなメカスイッチ(完全に電源の供給を遮断するようなスイッチ)を設けずに、ソフト的な制御以外では電源をオフすることができないソフトスイッチ(制御信号により、オン・オフ制御するスイッチ)を備えるものもある。
【0004】
しかし、HDDアクセス中を示すLEDを設けた場合には、オペレータがLEDの表示に気付かないと、HDDのアクセス中に電源をオフしてしまう可能性があり、依然として不具合を解消することはできていない。
また、同様にソフトスイッチを設けた場合には、ソフトの暴走等、システムの異常な状態での制御に問題があり、電源オフしたいにも関らず電源オフできないという問題や安全上にも問題がある。
【0005】
このような問題点を解決するために、特許文献1では、オペレータがHDDアクセス中に不用意に電源断を行おうとしたことを検知し、ブザーや静電気の放電によりユーザに注意を促すようにしている。
【特許文献1】特開2004−272940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようにオペレータへの注意を喚起しても、電源オフを行ってしまう可能性が残り、以下に示すような好ましくない結果となる。
ランプロード方式のHDDの場合、正しい電源オフ時の手順を踏まないと、ハードディスクユニットの寿命が低下し、また、キャッシュデータの消失によるファイルシステムの破損を引き起こすことになる。
【0007】
ここで言うランプロード方式とは、電源オフ時にヘッドがメディア外に退避する方式を言い、輸送時の振動・衝撃耐性が高いという特長を示す方式のことである。
また、正しい電源オフの手順としては、ランプロード方式のHDDの場合、アンロードコマンドを発行した後に、コマンドの完了を待って電源をオフすることである。このようにすることにより、ハードディスクユニット内のヘッドはストレス無く退避され、また、合わせてフラッシュキャッシュ(キャッシュに一時保存されていたデータをメディアに書き込む)されることにより、データの消失を防止することが可能となる。
【0008】
上記のような正しい手順を踏まない場合には、ヘッドは「エマージェンシーアンロード(緊急退避)」の状態となり、ストレスを与えられる。スペックによると、通常のアンロードを行う場合、回数制限が30万回であるのに対し、エマージェンシーアンロードの場合には、回数制限が5万回までと少なくなる。
また、エマージェンシーアンロードの場合には、キャッシュに一時保存されていたデータは、メディアに書き込まれること無く消失してしまい、重大な問題を引き起こす要因となる。
【0009】
本発明は、上述のような実情を考慮してなされたものであって、オペレータが誤って、またはまったく気づくことなくHDDアクセス中の電源オフ操作を行ってしまうことを防止するとともに、誤って電源をオフしようとした場合でも、電源オフできないような電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構を設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、前記メインスイッチを露出、遮蔽するメインスイッチカバーの開閉を検知する開閉検知センサと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、前記システムコントローラは、前記開閉検知センサにより、前記ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチカバーが開けられたことを検出した場合、前記警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、前記メインスイッチのロックを解除しないようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構とタッチセンサとを設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、前記システムコントローラは、前記タッチセンサにより、前記ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチが触れられたことを検出した場合、前記警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、前記メインスイッチのロックを解除しないようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構を設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、前記メインスイッチ近傍に配置された赤外線センサと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、前記システムコントローラは、前記赤外線センサにより、前記ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチに指を近づけたことを検出した場合、前記警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、前記メインスイッチのロックを解除しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、HDDアクセス中にメインスイッチを操作することによる不用意なシステム電源のオフを防止することが可能になり、HDDの破壊・データ消失を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の電子機器に係る好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る電子機器の構成を示すブロック図である。同図において、電子機器は、ハードディスク装置(HDD)1、ブザー装置(警報装置)2、電源装置3、ロック機構付メインスイッチ4、開閉検知センサ5を備えたメインスイッチカバー6、それらを制御するシステムコントローラ7よりなる。
また、ロック機構付メインスイッチ4の位置は、電源装置3の入力の手前でなく、例えば、電源装置3〜システムコントローラ7間に位置していてもよい。
以下、オペレータがHDDアクセス中に電源オフしようとした場合を例に、本実施形態1の動作を説明する。
【0015】
電源オン時、メインスイッチカバー6は実線で示すように閉じた状態にあり、ロック機構付メインスイッチ4が操作できない状態となっている。オペレータが電源装置3をオフするためには、メインスイッチカバー6を開ける必要がある。
ここで、オペレータが電源オフするためにメインスイッチカバー6を開けた場合(点線状態)、メインスイッチカバー6が開けられたことを開閉検知センサ5が検知し、システムコントローラ7に開閉検知信号を送出することにより、メインスイッチカバー6が開けられたことがシステムコントローラ7に伝わる。
【0016】
この時、システムがHDD1にアクセス中等ではなく、電源をオフしても問題が発生しない状態の場合には、システムコントローラ7からロック制御信号を送出することによりロック機構付メインスイッチ4のロック解除を行う。それにより、オペレータは電源をオフすることができる。
【0017】
しかし、システムがHDD1にアクセス中であったり、またその他要因でこのまま電源をオフされるとシステム上重大な問題が発生する可能性がある場合、システムコントローラ7はブザー装置2にブサーON信号を与えブザーを鳴らすとともに、ロック機構付メインスイッチ4のロックを解除しない。ブザーが鳴ることにより、オペレータはHDDアクセス中であることに気づき、また、ロックが解除されないため電源オフが防止される。
【0018】
なお、ブザー装置2とは、音や音声による警報を行う装置の総称であり、ブザー音以外の警告音、音声等も含む聴覚的な警報装置である。
また、聴覚的な警報装置以外にも視覚にうったえる警報を画面や、表示ランプ等によって行うようにしてもよい。
【0019】
図2は、開閉検知センサ5の一例を示す図である。開閉検知センサ5は、リミットスイッチ5のみで構成される。通常メインスイッチカバー6が閉じた状態では、リミットスイッチ5のスイッチ部分は押し込まれた状態だが、メインスイッチカバー6を開けた状態では、スイッチ部分が開放される。これにより開閉を検知することが可能である。
【0020】
図3は、ロック機構付メインスイッチ4の一例を示す図である。回動中心11を中心として回動することにより、オン・オフ状態が同図(A)に実線と点線で示すように切り替わるスイッチ片10に、同図(B)に示すようなソレノイド12を追加する。このソレノイド12は、ロック制御信号によりプランジャ13の状態を制御する。本実施形態1の場合、プランジャ13が押し出された状態のときにメカ的なロック機構が作動していることになる。
【0021】
従って、システムがHDD1にアクセス中のときは、ロック制御信号を送出することによりソレノイド12を作動させてプランジャ13を突出させて、スイッチ片10を操作できない状態となっている。そのため、オペレータがHDDアクセス中に電源オフしようとしても、ロック機構付メインスイッチ4を操作することはできない。
【0022】
このように、強制的に電源供給を絶つことが可能なスイッチにカバーと電気的に制御可能なロック機構を設け、HDDアクセス中のカバー開閉時、すなわち電源オフ操作をしようとした場合、ブザーを鳴らすことにより、オペレータが誤って、またはまったく気づくことなくHDDアクセス中の電源オフ操作を行ってしまうことを防止するとともに、誤って電源をオフしようとした場合でも、スイッチをロックして電源のオフを防止することが可能になり、HDDの破壊・データ消失を防止することができる。
【0023】
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図4は、本発明の実施形態2に係る電子機器の構成を示すブロック図である。同図において、電子機器は、ハードディスク装置(HDD)1、ブザー装置(警報装置)2、電源装置3、ロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ8、それらを制御するシステムコントローラ7よりなる。図4において、図1と同じ機能の場合には同じ符号を付し、その説明を省略する。以下、オペレータがHDDアクセス中に電源オフしようとした場合を例に、本実施形態2の動作を説明する。
【0024】
オペレータが電源オフしようとする場合、ロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ8を操作しようと手で触れる。このロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ8は、タッチセンサを備えているため、手で触れるとシステムコントローラ7に信号が送出され、オペレータがロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ8に手を触れたとの情報がシステムコントローラ7に伝わる。
【0025】
この時、システムがHDD1にアクセス中等ではなく、電源をオフしても問題が発生しない状態の場合には、システムコントローラ7からロック制御信号を送出することによりロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ8のロックを解除し、オペレータは電源をオフにすることができる。
【0026】
しかし、システムがHDD1にアクセス中であったり、またその他要因でこのまま電源をオフされるとシステム上重大な問題が発生する可能性がある場合、システムコントローラ7はブザー装置2にブサーON信号を与えブザーを鳴らすとともに、ロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ8のロックを解除しない。ブザーが鳴ることにより、オペレータはHDDアクセス中であることに気づき、ロックが解除されないため電源オフが防止される。
【0027】
これにより、メインスイッチにタッチセンサと電気的に制御可能なロック機構を設け、HDDアクセス中にメインスイッチに触れた場合、即ち電源オフ操作をしようとした場合、ブザーを鳴らすことにより、オペレータが誤って、またはまったく気づくことなくHDDアクセス中の電源オフ操作を行ってしまうことを防止するとともに、誤って電源をオフしようとした場合でも、スイッチをロックして電源のオフを防止することが可能になり、HDDの破壊・データ消失を防止することができる。
【0028】
次に、本発明の実施形態3について説明する。
図5は、本発明の実施形態3に係る電子機器の構成を示すブロック図である。同図において、電子機器は、ハードディスク装置(HDD)1、ブザー装置(警報装置)2、電源装置3、ロック機構付メインスイッチ4、赤外線センサ9、それらを制御するシステムコントローラ7よりなる。図5において、図1と同じ機能の場合には同じ符号を付し、その説明を省略する。以下、オペレータがHDDアクセス中に電源オフしようとした場合を例に、本実施形態3の動作を説明する。
【0029】
オペレータが電源オフしようとする場合、ロック機構付メインスイッチ4を操作しようと手を近づける。このロック機構付メインスイッチ4の近傍に赤外線センサ9を備えることにより、ロック機構付メインスイッチ4に手を近づけるとシステムコントローラ7に検知信号が送出され、オペレータがロック機構付メインスイッチ4に手を近づけたとの情報がシステムコントローラ7に伝わる。
【0030】
この時、システムがHDDにアクセス中等ではなく、電源をオフしても問題が発生しない状態の場合は、システムコントローラ7からロック制御信号を送出することによりロック機構付メインスイッチのロック解除を行う。それにより、オペレータは電源をオフすることができる。
【0031】
しかし、システムがHDD1にアクセス中であったり、またその他要因でこのまま電源をオフされるとシステム上重大な問題が発生する可能性がある場合、システムコントローラ7はブザー装置2にブサーON信号を与えブザーを鳴らすとともに、ロック機構付メインスイッチ4のロックを解除しない。
ブザーが鳴ることにより、オペレータはHDDアクセス中であることに気づき、ロックが解除されないため電源オフが防止される。
【0032】
これにより、メインスイッチに赤外線センサと電気的に制御可能なロック機構を設け、HDDアクセス中にメインスイッチに指を近づけた場合、すなわち電源オフ操作をしようとした場合、ブザーを鳴らすことにより、オペレータが誤って、またはまったく気づくことなくHDDアクセス中の電源オフ操作を行ってしまうことを防止するとともに、誤って電源をオフしようとした場合でも、スイッチをロックして電源のオフを防止することが可能になり、HDDの破壊・データ消失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】開閉検知センサの一例を示す図である。
【図3】ロック機構付メインスイッチの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
1…ハードディスク装置(HDD)、2…ブザー装置(警報装置)、3…電源装置、4…ロック機構付メインスイッチ、5…開閉検知センサ(リミットスイッチ)、6…メインスイッチカバー、7…システムコントローラ、8…ロック機構・タッチセンサ付メインスイッチ、9…赤外線センサ、10…スイッチ片、11…回動中心、12…ソレノイド、13…プランジャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構を設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、前記メインスイッチを露出、遮蔽するメインスイッチカバーの開閉を検知する開閉検知センサと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、前記システムコントローラは、前記開閉検知センサにより、前記ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチカバーが開けられたことを検出した場合、前記警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、前記メインスイッチのロックを解除しないようにしたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構とタッチセンサとを設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、前記システムコントローラは、前記タッチセンサにより、前記ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチが触れられたことを検出した場合、前記警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、前記メインスイッチのロックを解除しないようにしたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
ハードディスク装置と、システム上問題が発生する可能性のある場合に警報を鳴らす警報装置と、電気的に制御可能なロック機構を設け、電源供給を絶つことが可能なメインスイッチと、前記メインスイッチ近傍に配置された赤外線センサと、それらを制御するシステムコントローラとを備え、前記システムコントローラは、前記赤外線センサにより、前記ハードディスク装置のアクセス中に前記メインスイッチに指を近づけたことを検出した場合、前記警報装置によって警報を鳴らすことでオペレータに注意を促すとともに、前記メインスイッチのロックを解除しないようにしたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−228096(P2006−228096A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43628(P2005−43628)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】