説明

電子機器

【課題】USBホストコネクタに求められる安全性を容易かつ低いコストにて確保し、ユーザによる不適切な接続行為に対する適切な対策を行なう。
【解決手段】USBホストコネクタとして、電子機器に対する所定のメンテナンスのための装置を接続するためのUSBホストコネクタのみを備える電子機器であって、上記USBホストコネクタの電源線による電源供給を切断状態とする電源切断部を備え、上記電源切断部は、所定の接続処理を受けた場合に上記切断状態を解除する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
USB(Universal Serial Bus)デバイスとの接続のためにUSBホストコネクタを備えた電子機器が知られている。その一種として、一般ユーザがメモリカードを装着・取外し可能であるカードリーダやUSBケーブルを接続可能な外部接続端子等を備えるUSBユニットと、USBユニットを制御するUSBホストコントローラとを備えたプリンタが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、上記文献に開示されている一般ユーザ(例えば、プリンタの購入者)が任意に使用するためのUSBホストコネクタではなく、プリンタのメンテナンスのために専用されるUSBホストコネクタを備えたプリンタも存在する。この専用のUSBホストコネクタは、一般ユーザではない特定の者(例えば、プリンタのサービスマン)がプリンタのメンテナンスを行なう際に、所定のUSBデバイスを挿し込むために使用される。
【特許文献1】特開2008‐46857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
USBホストコネクタはVBUSと呼ばれる電源線を備えている。電源線を備えるコネクタにおいては、製品の安全性を確保するために過電流保護対策が求められる。一般ユーザによる使用が想定されていない上記専用のUSBホストコネクタであっても、一般ユーザが誤ってUSBメモリやUSBケーブルを接続してしまうことも有り得る。そのため、上記専用のUSBホストコネクタを備えるプリンタにおいては、当該専用のUSBホストコネクタの電源線の所定箇所にヒューズを設置したり、電源線による電流供給量の検知結果に応じて過供給であれば供給を停止する過電流保護回路を具備したり、一般ユーザが容易に外すことが出来ない蓋によって当該専用のUSBホストコネクタをプリンタ外部から覆うなどして、過電流保護対策を行なっていた。
【0005】
しかし上述の各種対策は、ヒューズや、過電流保護回路や、蓋および蓋を固定するための固定手段(ネジ等)などの追加の構成を要するため、製品にかかるコストを押し上げていた。また、当該蓋を採用する場合、ユーザが容易に開けられないようにするために特殊なネジ等で蓋を固定する必要があり、上記サービスマンは特殊なネジを外すために特殊な工具を持ち歩く必要があった。
また、上記専用のUSBホストコネクタに一般ユーザが誤ってUSBメモリやUSBケーブルを接続してしまった場合への対策も不十分であった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、USBホストコネクタに求められる安全性を容易かつ低いコストにて確保し、さらにはユーザによる不適切な接続行為に対する適切な対策を行なうことが可能な電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、USBホストコネクタとして、電子機器に対する所定のメンテナンスのための装置を接続するためのUSBホストコネクタのみを備える電子機器であって、上記USBホストコネクタの電源線による電源供給を切断状態とする電源切断部を備え、上記電源切断部は、所定の接続処理を受けた場合に上記切断状態を解除する構成としてある。本発明によれば、電源切断部は接続処理を受けた場合にのみUSBホストコネクタの電源線の切断状態を解除するため、一般ユーザによる電子機器の通常使用時は当該切断状態が保たれる。従って、上述したヒューズの設置や、過電流保護回路の設置や、蓋の取り付けなどといった高コストな過電流保護対策を行なうことなく、USBホストコネクタに求められる安全性を容易に確保することができる。
【0008】
電子機器はさらに、上記電源線による電源供給が切断状態であるか否かを検知する第一検知部と、上記USBホストコネクタに対する外部からの接続の有無を検知する第二検知部と、上記第一検知部によって切断状態が検知されておりかつ上記第二検知部によって接続が検知されている場合に、外部に対して所定の警告処理を行なう警告処理部とを備える構成としてもよい。当該構成によれば、上記電源線による電源供給が切断状態であるときにUSBホストコネクタに対して外部から接続が行なわれた場合、その接続行為が不適切であることを警告によって知らせることができる。よって、一般ユーザによるUSBホストコネクタに対する誤った接続を排除できる。
【0009】
上記USBホストコネクタのグランド(接地)線は抵抗を介して電源に接続されプルアップされており、上記第二検知部は、上記グランド線と接続するとともに当該グランド線の電圧レベルの変化に基づいて上記USBホストコネクタに対する外部からの接続の有無を検知する構成としてもよい。当該構成によれば、USBホストコネクタに対する外部からの接続の有無を容易かつ確実に検知することができる。
【0010】
上記電源切断部は、上記電源線と電源との途中に設けられたジャンパスイッチであり、当該ジャンパスイッチに対して所定のコネクタが挿入されることにより上記切断状態を解除する構成としてもよい。当該構成によれば、コネクタを用いた解除方法を知るサービスマン等の特定の者だけが、電源切断部に対する接続処理を行なって電源線の切断状態を解除することができる。
【0011】
なお、上述した電子装置が備える各構成によってなされる各工程からなる方法や、上述した電子装置が備える各構成によってなされる各機能をコンピュータに実行させるプログラムも、それぞれ一つの発明として把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態にかかるプリンタ10等の概略構成をブロック図によって示している。プリンタ10は、電子機器の一例である。ただし、本発明が想定する電子機器にはプリンタ10だけではなく、プリント機能やスキャナ機能を備えた複合機や、スキャナ装置等、各種電子機器が該当する。
【0013】
プリンタ10は、例えば、操作パネル11と制御部12と印刷機構部13とを備えたページプリンタである。操作パネル11は、ユーザから各種の指示を受付けるためおよびプリンタ10の状態をユーザに提示するためのユニットである。操作パネル11は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、LED、押しボタンスイッチSW等から構成されている。印刷機構部13は、プリンタ10に対するホスト装置となるパーソナルコンピュータ(PC)50から制御部12に対して送信された印刷データに基づいて、用紙上に印刷を行うユニット(いわゆる印刷エンジン)である。PC50には、プリンタ10の駆動を制御するためのプリンタドライバがインストールされている。
【0014】
制御部12は、プリンタ10の各部を制御するための、CPU21、メモリ制御ASIC22、画像処理ASIC23、I/O制御ASIC24、RAM25、ROM26等からなるユニットである。I/O制御ASIC24には、USBホストコネクタ27および外部インタフェース(I/F)28が接続している。USBホストコネクタ27は、プリンタ10に対する所定のメンテナンスのためのUSBデバイスを接続するための、いわゆるAタイプのUSBコネクタ(メス)であって、本実施形態では、プリンタ10のサービスマンが使用することを想定している。プリンタ10のメンテナンスとは、例えば、プリンタ10が格納するファームウェアのアップデート等であり、サービスマンはUSBホストコネクタ27に対し、例えば、アップデートに必要なプログラムやデータを保存したUSBメモリが備えるAタイプのUSBコネクタ(オス)を挿し込んで、メンテナンス作業を行なう。本実施形態では、プリンタ10は、USBホストコネクタ27以外のUSBホストコネクタすなわち一般ユーザによる使用を目的としたUSBホストコネクタは備えていない。
【0015】
外部I/F28は、例えば、いわゆるBタイプのUSBコネクタ(メス)や、パラレルI/Fや、ネットワークI/Fなど、一般ユーザが任意に使用可能な、外部装置との接続のための各種コネクタを含んでいる。PC50は、例えば、所定のケーブルを介して外部I/F28と接続している。メモリ制御ASIC22、画像処理ASIC23、I/O制御ASIC24は、各種デバイス(CPU21、USBホストコネクタ27、RAM25、ROM26等)間のデータの転送制御や、画像処理等を実行するためのASIC(プリンタ10用のものとして開発されたASIC)である。メモリ制御ASIC22、画像処理ASIC23およびI/O制御ASIC24は、これらを1チップ化して構成することも可能である。
【0016】
一般ユーザがPC50を操作してプリンタ10で印刷を行なう場合、PC50のプリンタドライバによって生成された印刷データ(例えば、印刷対象の画像を所定のページ記述言語で表現した印刷データ)は、PC50から外部I/F28を介して制御部12に入力され、入力された印刷データは、I/O制御ASIC24およびメモリ制御ASIC22を介して一旦RAM25に格納される。その後、印刷データに対して画像処理ASIC23による所定の画像処理(例えば、色変換処理や解像度変換処理や2値化処理等)が施された結果、ビットマップ形式のイメージデータが生成され、イメージデータが印刷機構部13に送信されることにより、印刷機構部13はイメージデータに基づく印刷を実行する。
【0017】
次に、USBホストコネクタ27における電源供給の切断および当該切断の解除について説明する。
図2は、USBホストコネクタ27とI/O制御ASIC24との接続関係を例示している。図2に示すように、USBホストコネクタ27は、USBホストコネクタ27に接続されるUSBメモリ等のUSBデバイス60に電源を供給するためのVBUS(電源)線27a、差動信号を伝達するためのD+線27b,D−線27c、GND(グランド)線27d、および外来ノイズをシールドするためのFG(フレームグランド)線27eを有している。VBUS線27aと+5Vの電源との間には、ジャンパスイッチ27a1(電源切断部)が介在している。ジャンパスイッチ27a1の存在で電源とVBUS線27aとの接続が切断されることによって、VBUS線27aによる電源供給が遮断されている。GND線27dは、抵抗Rを介して+5Vの電源に接続してプルアップされている。
【0018】
VBUS線27a、D+線27b、D−線27cおよび、GND線27dは、それぞれI/O制御ASIC24の各ポート24a〜24dと接続している。制御部12(CPU21)は、ポーリングまたはI/O制御ASIC24からの割り込みによって、ポート24aを介してのVBUS線27aの電圧レベルの検知と、ポート24dを介してのGND線27dの電圧レベルの検知とを繰り返し行なう。
【0019】
制御部12は、ポート24aを介して検知されるVBUS線27aの電圧レベルの変化(HレベルまたはLレベル)に応じて、USBホストコネクタ27が通常モードであるかメンテナンスモードであるかを判定する。具体的には、制御部12は、ポート24aを介してLレベルが検知されている場合には、VBUS線27aによる電源供給が切断状態であるとして、通常モードと判定する。一方、制御部12は、ポート24aを介してHレベルが検知されている場合には、上記切断状態が解除されているとして、メンテナンスモードと判定する。
【0020】
本実施形態では、図3に示すように、ジャンパスイッチ27a1を構成する離間した2本のジャンパ端子の間に金属性の接続片(ジャンパコネクタ40。以下、単にコネクタ40と呼ぶ。)が挿入されることにより、ジャンパスイッチ27a1が導通して、VBUS線27aにおける電源供給の切断状態が解除され(電源供給がなされ)、その結果、ポート24aを介してHレベルが検知される。コネクタ40は、基本的にはサービスマンによって所持されており、サービスマンは、プリンタ10の筺体に収められたジャンパスイッチ27a1にコネクタ40を挿すことで、通常モードからメンテナンスモードへの変更を実現する。
【0021】
制御部12は、ポート24dを介して検知されるGND線27dの電圧レベルの変化(HレベルまたはLレベル)に応じて、USBホストコネクタ27に対する外部からの接続の有無を検知する。上述したように、GND線27dはプルアップされており、USBホストコネクタ27が外部と未接続状態であればポート24dで検知される電圧レベルはHレベルとなる。そのため、制御部12は、ポート24dにおける検知がHレベルを示していればUSBホストコネクタ27は外部と未接続状態と判定し、ポート24dにおける検知がLレベルを示していればUSBホストコネクタ27は外部と接続状態であると判定する。このように制御部12は、VBUS線27aによる電源供給が切断状態であるか否かを検知する第一検知部や、USBホストコネクタ27に対する外部からの接続の有無を検知する第二検知部として機能すると言える。
【0022】
上記構成において、制御部12は、通常モードと判定しかつUSBホストコネクタ27に対する外部からの接続を検知した場合には、外部に対して所定の警告処理を行なう。つまり、通常モード中にUSBホストコネクタ27に対して外部から接続がされたということは、ジャンパスイッチ27a1へのコネクタ40の挿入による通常モードからメンテナンスモードへの変更処理をすることができない者(一般ユーザ)が、誤ってUSBホストコネクタ27にUSBデバイス60を接続したとみなせるため、制御部12は、USBホストコネクタ27への接続が不適切である旨を外部に警告する。当該警告としては、制御部12は例えば、操作パネル11のLCDに「このプリンタでサポートされていないUSBデバイスが接続されました。」等といったメッセージを表示させる。このような警告を実行可能な点で、制御部12(あるいはプリンタ10)は警告処理部として機能すると言える。
【0023】
上記警告が表示されることで、一般ユーザが誤った接続行為に気付き、USBホストコネクタ27から自己が挿入したUSBデバイス60を外すことができる。むろん、このような警告がなされる場合には、USBホストコネクタ27から接続されているUSBデバイス60に対して電源は供給されていないため安全である。一方、制御部12は、メンテナンスモードと判定している期間においては上記警告は行なわない。メンテナンスモード中にUSBホストコネクタ27に対してUSBデバイス60の接続があった場合には、接続されたUSBデバイス60へ電源供給がなされるとともに、所定のシーケンスに従って、USBデバイス60からプリンタ10へ供給されるデータに基づくメンテナンス処理が実行される。
【0024】
このように本実施形態のプリンタ10では、USBホストコネクタ27のVBUS線27aの電源供給経路に電源切断部を設置し、電源切断部に対する特殊な接続処理(コネクタ40の挿入)がされない限り、VBUS線27aによる電源供給を切断状態にするとした。つまり、プリンタ10の通常使用時においてはVBUS線27aによる電源供給が遮断されているため、従来のようなヒューズの設置や、過電流保護回路の設置や、USBホストコネクタを蓋で覆う等といった高コストな過電流保護対策が不要となり、非常に少ないコストにてUSBホストコネクタ27に求められる安全性を確保することが可能となった。
【0025】
また、USBホストコネクタ27に所定のUSBデバイスを接続してメンテナンスを行なおうとするサービスマンは、コネクタ40をジャンパスイッチ27a1に挿入するだけでVBUS線27aによる電源供給を開始させることができるため、メンテナンス作業が非常に楽である。また、USBホストコネクタ27を使用することが想定されていない立場の者(VBUS線27aにおける電源供給の切断状態を解除することができない一般ユーザ)が、USBデバイス60をUSBホストコネクタ27に接続した場合であっても、上記警告によって当該接続が不適切である旨を知らせることができる。そのため、上記メンテナンスに用いられるものではないUSBデバイス60が誤ってUSBホストコネクタ27に接続された状況を極力少なくすることができ、またこのように一般ユーザのUSBデバイス60が接続されることを排除する構成とすることで、USBホストコネクタ27について第三者機関による認証(製品性能についての認証)を受ける必要も無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態のプリンタ等の概略構成を示したブロック図である。
【図2】USBホストコネクタとI/O制御ASICとの接続関係を示した図である。
【図3】ジャンパスイッチにコネクタが挿入された様子を示した図である。
【符号の説明】
【0027】
10…プリンタ、11…操作パネル、12…制御部、13…印刷機構部、21…CPU、22…メモリ制御ASIC、23…画像処理ASIC、24…I/O制御ASIC、24a〜24d…ポート、25…RAM、26…ROM、27…USBホストコネクタ、27a…VBUS線、27a1…ジャンパスイッチ、27d…GND線、40…コネクタ、50…PC、60…USBデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBホストコネクタとして、電子機器に対する所定のメンテナンスのための装置を接続するためのUSBホストコネクタのみを備える電子機器であって、
上記USBホストコネクタの電源線による電源供給を切断状態とする電源切断部を備え、
上記電源切断部は、所定の接続処理を受けた場合に上記切断状態を解除することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
上記電源線による電源供給が切断状態であるか否かを検知する第一検知部と、
上記USBホストコネクタに対する外部からの接続の有無を検知する第二検知部と、
上記第一検知部によって切断状態が検知されておりかつ上記第二検知部によって接続が検知されている場合に、外部に対して所定の警告処理を行なう警告処理部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
上記USBホストコネクタのグランド線は抵抗を介して電源に接続されプルアップされており、上記第二検知部は、上記グランド線と接続するとともに当該グランド線の電圧レベルの変化に基づいて上記USBホストコネクタに対する外部からの接続の有無を検知することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
上記電源切断部は、上記電源線と電源との途中に設けられたジャンパスイッチであり、当該ジャンパスイッチに対して所定のコネクタが挿入されることにより上記切断状態を解除することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−113436(P2010−113436A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283920(P2008−283920)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】