説明

電子機器

【課題】実装面積を節約しつつ同一実装面上の電子回路間の電磁波ノイズを遮断可能なシールド部材を有する電子機器を提供する。
【解決手段】携帯電話機1は、第1実装面29aを有するメイン基板29と、第1実装面29aにおいて互いに離間して設けられた送信IC31E及びパワーアンプ31Gと、送信IC31E及びパワーアンプ31Gをシールドするシールドケース28とを有する。シールドケース28は、第1実装面29aに対向する対向面部28aと、対向面部28aから第1実装面29a側へ突出する隔壁28bとを有し、送信IC31E及びパワーアンプ31Gを、第1実装面29a、対向面部28a及び隔壁28bにより形成される同一の第3分割空間37Cに収容する。対向面部28aには、送信IC31E及びパワーアンプ31Gとの間にスリット39が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDA、ゲーム機等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波ノイズを遮断するシールド部材を有する電子機器が知られている。特許文献1は、回路基板と、回路基板の実装面を覆うシールドケースとを有する携帯電話機を開示している。シールドケースは、実装面に対向する対向面部と、対向面部から実装面へ突出する隔壁とを有している。隔壁は、実装面上の複数の電子部品を互いに隔離するように延びている。すなわち、複数の電子部品は、それぞれ、実装面、対向面部及び隔壁により形成される、互いに異なる部屋に収容されてシールドされる。これにより、携帯電話機の内部から外部への電磁波ノイズの放射、及び、外部から内部への電磁波ノイズの侵入が抑制されるとともに、携帯電話機内部における、一の電子部品から他の電子部品への電磁波ノイズの伝播が抑制される。
【特許文献1】特開2008−140797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回路基板上には、数多くの電子部品が配置される。従って、全ての電子部品を隔壁により互いに隔離し、別個の部屋に収容するとすれば、隔壁の実装面上の総面積が大きくなり、実質的な実装面積が減少する。一方、複数の電子部品のグループ毎に同一の部屋に配置するとすれば、ノイズにセンシティブな電子部品が、同一の部屋に配置された電子部品からの電磁波ノイズの影響を受けてしまう。同一の部屋内の電子部品間において伝播する電磁波ノイズには、部屋の天井を伝わる電磁波ノイズが含まれている。
【0004】
本発明の目的は、実装面積を節約しつつ、同一実装面上の電子回路間において伝播する電磁波ノイズを低減可能なシールド部材を有する電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点の電子機器は、実装面を有する回路基板と、前記実装面において互いに離間して設けられた第1及び第2の電子回路と、前記実装面に対向する対向部と、前記対向部から前記実装面側へ突出する側部とを有し、前記第1及び前記第2の電子回路を、前記実装面、前記対向部及び前記側部により形成される同一の空間に収容するシールド部材と、を有し、前記シールド部材は、非導電性の部材の表面に導電層が設けられて構成されており、前記対向部には、前記第1の電子回路と前記第2の電子回路との間に、前記導電層が設けられない非導電部が形成されている。
【0006】
本発明の第2の観点の電子機器は、実装面を有する回路基板と、前記実装面において互いに離間して設けられた第1及び第2の電子回路と、前記実装面に対向する対向部と、前記対向部から前記実装面側へ突出する側部とを有し、前記第1及び前記第2の電子回路を、前記実装面、前記対向部及び前記側部により形成される同一の空間に収容するシールド部材と、を有し、前記対向部には、前記第1の電子回路と前記第2の電子回路との間に孔状の非導電部が形成されている。
【0007】
好適には、前記対向部の前記実装面とは反対側に積層されるスイッチ用基板と、ドーム状金属板接点を有し、前記スイッチ用基板に実装される複数のスイッチと、を有し、前記非導電部は、前記複数のスイッチ間の位置に対向して配置される。
【0008】
好適には、前記対向部の前記実装面とは反対側に積層されるフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板に実装される押圧式の複数のスイッチと、を有し、前記非導電部は、前記複数のスイッチ間の位置に対向して配置される。
【0009】
好適には、前記シールド部材は、前記対向部から前記実装面側へ突出して前記回路基板の基準電位層に当接するシールド側導電部を有し、前記非導電部は、前記回路基板に沿って延びる長尺状に形成されており、端部が前記シールド側導電部に隣接している。
【0010】
好適には、前記回路基板は、基準電位に電気的に接続されており、前記シールド部材側へ突出して前記シールド部材に当接する基板側導電部を有し、前記非導電部は、前記回路基板に沿って延びる長尺状に形成されており、端部が前記基板側導電部に隣接している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装面積を節約しつつ、同一実装面上の電子回路間において伝播する電磁波ノイズを低減可能なシールド部材を有する電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機1の外観を開状態で示す斜視図である。携帯電話機1は、いわゆる折り畳み式の携帯電話機として構成されており、開状態と閉状態との間で互いに回動可能に連結された送話筐体2及び受話筐体3を備えている。
【0013】
送話筐体2及び受話筐体3は、それぞれの端部が回動の中心となる連結部4により連結されることにより携帯電話機1全体の筐体を構成するようになっている。送話筐体2及び受話筐体3は、それぞれ概ね薄型直方体状に形成されており、閉状態では互いに重ねあわされて互いの輪郭が略一致する。
【0014】
送話筐体2には、例えば、通話用のマイクロフォン87(図5参照)、通信のための内蔵アンテナ81(図5参照)、ユーザの操作を受け付ける操作部6が設けられている。受話筐体3には、例えば、通話用のスピーカ83(図5参照)、報知用のスピーカ85(図5参照)、画像や文字を表示する表示部7、撮像部89(図5参照)が設けられている。
【0015】
なお、以下では、送話筐体2において、操作部6が露出する側を送話筐体2の正面側、その背面側を送話筐体2の背面側ということがある。
【0016】
図2は、送話筐体2の分解斜視図である。
【0017】
携帯電話機1は、送話筐体2の正面側部分を構成するフロントケース21と、送話筐体2の背面側を構成するリアケース22及び蓋体23とを備えている。また、携帯電話機1は、フロントケース21とリアケース22との間に、フロントケース21側から積層的に配置された、キーシート25、フレキシブルプリント配線板(FPC)27、シールドケース28、及び、メイン基板29を有している。さらに、携帯電話機1は、リアケース22と蓋体23との間にバッテリ30を有している。
【0018】
フロントケース21、リアケース22及び蓋体23は、例えば非導電性の樹脂によりそれぞれ成形されている。フロントケース21とリアケース22とは、例えば、一方に挿通されたネジが他方に設けられたネジボスに螺合されることにより互いに固定される。キーシート25、FPC27、シールドケース28、及び、メイン基板29は、フロントケース21及びリアケース22によって挟持される。蓋体23は、係合部等によりリアケース22に固定され、リアケース22に嵌合されたバッテリ30の脱落を防止する。
【0019】
キーシート25は、フロントケース21から正面側へ露出する複数のキー24を有している。FPC27には、複数のスイッチ26が実装されている。複数のスイッチ26は、ドーム状の金属板により構成された可動接点26aと、可動接点26aに覆われた不図示の固定接点とを有している。可動接点26aは、キー24を介してユーザに押圧されると、弾性変形してクリック感を生じつつ反転し、固定接点に当接する。また、可動接点26aは、押圧が解除されると、復元力により元の形状に復元し、固定接点から離間する。なお、可動接点26aは、FPC27に被せられた不図示の絶縁膜により覆われるが、本願では、当該絶縁膜の図示は省略する。また、FPC27には、複数のスイッチ26の他に、複数のLEDや複数のチップ抵抗等が設けられている。
【0020】
メイン基板29は、例えば樹脂をベースとしたプリント配線基板により構成され、フロントケース21側の第1実装面29aと、その背面側の第2実装面29bとを有している。第1実装面29aには、各種の電子部品31が設けられている。また、第1実装面29aには、各実装面を複数の領域に区画するように縦横に延びるグランドパターン層33が形成されている。複数の電子部品31は、グランドパターン層33により、複数のグループに分けられている。各グループはグランドパターン層33により囲まれている。なお、第2実装面29bも同様である。
【0021】
図3は、シールドケース28をメイン基板29側から見た斜視図である。
【0022】
シールドケース28は、例えば金属により形成されている。シールドケース28は、メイン基板29の第1実装面29aに対向する対向面部28aと、対向面部28aから第1実装面29a側へ突出する隔壁28bとを有している。隔壁28bは、第1実装面29aのグランドパターン層33と同一形状に延びている。携帯電話機1が組み立てられると、隔壁28bは、グランドパターン層33に当接する。これにより、シールドケース28は、グランドパターン層33と電気的に接続される。なお、シールドケース28は、グランドパターン層33上に実装され、シールドケース28に当接する不図示のバネ端子や、シールドケース28とメイン基板29とを締結する不図示のネジにより、グランドパターン層33と電気的に接続されてもよい。複数の電子部品31は、第1実装面29a、対向面部28a及び隔壁28bにより形成された複数の空間(部屋)に収容される。ただし、複数の空間の数は、複数の電子部品31の数よりも少なく、複数の電子部品31は、複数のグループ毎に収容される。
【0023】
図4(a)は、メイン基板29を模式的に示す、送話筐体2の正面側から見た平面図である。
【0024】
第1実装面29aは、例えば、グランドパターン層33により、第1分割領域35A〜第4分割領域35Dに区分されている。
【0025】
第1分割領域35Aには、電子部品31として、例えば、音響に係る処理を実行するオーディオIC31A及び画像処理に係る処理を実行する画像処理IC31Bが実装されている。
【0026】
第2分割領域35Bには、電子部品31として、例えば、ベースバンド信号に係る処理を実行するベースバンドIC31C及び種々の情報を記憶するメモリ31Dが実装されている。
【0027】
第3分割領域35Cには、電子部品31として、例えば、送信IC31E、送信フィルタ31F、パワーアンプ31G、アイソレータ31H、デュープレクサ31I及びVC−TCXO(電圧制御機能付き温度補償水晶発振器)31Jが実装されている。送信IC31Eは、電圧制御発振器(VCO)を含んでおり、所定の情報を含む信号を変調して高周波信号を生成する。送信フィルタ31Fは、送信IC31Eが生成した高周波信号をフィルタリングする。パワーアンプ31Gは、送信フィルタ31Fによりフィルタリングされた高周波信号を増幅する。アイソレータ31Hは、パワーアンプ31Gにより増幅された高周波信号のアンテナ81側への通過を許容し、アンテナ81側からの信号のパワーアンプ31G側への侵入を阻止する。デュープレクサ31Iは、アイソレータ31Hを通過した高周波信号の受信側への侵入を防止しつつ、当該高周波信号をアンテナ81へ通過させる。
【0028】
第4分割領域35Dには、電子部品31として、例えば、受信フィルタ31K及び受信IC31Lが実装されている。受信フィルタ31Kは、アンテナ81により受信され、デュープレクサ31Iを通過した高周波信号をフィルタリングする。受信IC31Lは、受信フィルタ31Kによりフィルタリングされた高周波信号を復調する。
【0029】
図4(b)は、シールドケース28を模式的に示す、送話筐体2の正面側から見た平面図である。なお、図4(b)は、シールドケース28がメイン基板29に積層されたものと仮定して、メイン基板29上の複数の電子部品31についても一部を図示している。
【0030】
メイン基板29及びシールドケース28との間には、第1分割領域35A〜第4分割領域35Dに対応して、第1分割空間37A〜第4分割空間37Dが形成される。第1分割空間37A〜第4分割空間37Dのそれぞれには、上述した、第1分割領域35A〜第4分割領域35Dそれぞれに実装された電子部品31が収容される。
【0031】
シールドケース28の対向面部28aのうち、第3分割空間37Cにおける部分には、スリット39が形成されている。スリット39は、例えばノイズに対してセンシティブに反応するブロックを含む送信IC31Eとパワーアンプ31Gとの間に形成されている。スリット39の端部は、隔壁28bに隣接している。より具体的には、スリット39は、両端部が隔壁28bに隣接しており、パワーアンプ31Gは、第3分割空間37Cにおいて他の電子部品から区画されている。
【0032】
図4(c)は、FPC27を模式的に示す、送話筐体2の正面側から見た平面図である。なお、図4(c)は、FPC27が、メイン基板29及びシールドケース28に積層されたものと仮定して、メイン基板29上の複数の電子部品31の一部及びスリット39についても図示している。
【0033】
スリット39は、複数の可動接点26a間に位置している。また、FPC27の、スイッチ26等の電気信号を伝達する信号線41は、スリット39に重ならないように配置されている。
【0034】
図5は、携帯電話機1の信号処理系の構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
携帯電話機1は、CPU71、メモリ31D、通信処理部75、音響処理部77及び画像処理部79を有している。これら各部は、メイン基板29に設けられたIC等により構成されている。
【0036】
CPU71及びメモリ31Dは、操作部6等の各種手段からの信号に基づいて所定の演算を行い、画像処理部79等の各種手段の制御を実行する制御部として機能する。
【0037】
通信処理部75は、上述の第3分割領域35C及び第4分割領域35Dに設けられた各種の電子部品(電子回路)等により構成されている。通信処理部75は、電波を利用した無線通信により、通信システム(電話網やインターネット)を介した他の携帯端末装置やサーバとの通信を行うために、CPU71で処理された音響データ、画像データ等の各種データを変調して、変調された信号をアンテナ81を介して送信する。また、通信処理部75は、アンテナ81を介して受信した信号を復調し、復調したデータをCPU71に出力する。
【0038】
音響処理部77は、上述のオーディオIC31A等により構成される。音響処理部77は、CPU71からの音響データを電気信号に変換して、その信号を、通話用のスピーカ83、又は、報知音等を出力するスピーカ85に出力する。スピーカ83及びスピーカ85は、音響処理部77からの電気信号を音響に変換し、その音響を出力する。一方、マイクロフォン87は、入力された音響を電気信号に変換し、その信号を音響処理部77に出力する。音響処理部77は、マイクロフォン87からの電気信号を音響データに変換し、その音響データをCPU71に出力する。
【0039】
画像処理部79は、上述の画像処理IC31B等により構成される。画像処理部79は、CPU71からの画像データを画像信号に変換し、その信号を表示部7へ出力する。また、画像処理部79は、撮像部89から出力される撮像信号(画像データ)を所定のフォーマットの画像データに変換し、その画像データをCPU71へ出力する。
【0040】
以上の実施形態によれば、携帯電話機1は、メイン基板29の第1実装面29aにおいて互いに離間して設けられた送信IC31E及びパワーアンプ31Gを覆うシールドケース28を有している。シールドケース28は、第1実装面29aに対向する対向面部28aと、対向面部28aから第1実装面29a側へ突出する隔壁28bとを有している。送信IC31E及びパワーアンプ31Gは、第1実装面29a、対向面部28a及び隔壁28bにより形成される同一の空間(第3分割空間37C)に収容されている。そして、対向面部28aには、送信IC31Eとパワーアンプ31Gとの間に、スリット39、すなわち、非導電部が形成されている。従って、パワーアンプ31Gにおいて発生したノイズが、ノイズにセンシティブなブロックを含む送信IC31Eへ伝播することが抑制される。
【0041】
図6は、携帯電話機1の効果を説明する断面図である。図6(c)は、図4(b)のVIc−VIc線における断面図である。図6(a)及び図6(b)は、比較例における図6(c)に対応する断面図である。
【0042】
図6(a)に示すように、パワーアンプ31G及び送信IC31Eが、シールドケース128により同一の空間に収容されている場合、パワーアンプ31Gにおいて発生したノイズは、対向面部128aを伝わって送信IC31Eへ伝播する。また、対向面部128aを伝わったノイズが、隔壁128bを介して送信IC31Eへ伝播するおそれもある。
【0043】
そこで、図6(b)に示すように、パワーアンプ31G及び送信IC31Eとの間に隔壁228bを設けることが考えられる。すなわち、シールドケース228により、パワーアンプ31G及び送信IC31Eを別個の空間に収容することが考えられる。しかし、この場合、メイン基板29は、第1実装面29a上に、パワーアンプ31G及び送信IC31Eとの間の隔壁228bを配置する面積が必要となる。その結果、メイン基板29の実質的な実装面積が減少してしまう。また、シールドケース228は、追加した隔壁28bの重量により、全体の重量が増加する。
【0044】
図6(c)に示す、本実施形態の携帯電話機1では、パワーアンプ31Gにおいて生じたノイズが、対向面部28aを送信IC31Eへ伝わることが、スリット39によって阻止される。従って、第1実装面29aの実質的な実装面積を減少させることなく、パワーアンプ31Gから送信IC31Eへのノイズの電波を抑制できる。また、シールドケース28の軽量化、ひいては、携帯電話機1の軽量化が図られる。
【0045】
携帯電話機1は、対向面部28aの第1実装面29aとは反対側に積層されるFPC27と、FPC27に実装される複数のスイッチ26とを有する。スイッチ26は、ドーム状の金属板により構成された可動接点26aを有する。ここで、可動接点26aは、比較的広い面積を有する導電体であることから、パワーアンプ31Gにおいて生じたノイズを送信IC31E側へ伝播させるおそれがある。しかし、スリット39が、複数のスイッチ26間に位置することから、可動接点26aによるノイズの伝播が抑制される。
【0046】
スイッチ26は、押圧式のスイッチであり、また、フレキシブル基板(FPC27)に実装されていることから、スイッチ26の直下にスリット39が形成されると、スイッチ26の操作性が損なわれるおそれがある。例えば、押圧に伴ってFPC27がスリット39に入り込み、スイッチ26のクリック感が損なわれるおそれがある。しかし、スリット39が、複数のスイッチ26間に位置することから、このような操作性が損なわれるおそれが低減される。
【0047】
シールドケース28は、対向面部28aから第1実装面29a側へ突出してメイン基板29のグランドパターン層33に当接する隔壁28bを有している。スリット39は、メイン基板29に沿って延びる長尺状に形成されており、端部が隔壁28bに隣接している。従って、パワーアンプ31Gから送信IC31E側へ、対向面部28aを伝わるとともに、スリット39の端部を回り込むノイズは、当該隔壁28bを介してグランドパターン層33に流れやすい。その結果、送信IC31Eへ侵入するノイズの低減がより効果的になされる。
【0048】
なお、以上の実施形態において、携帯電話機1は本発明の電子機器の一例であり、メイン基板29は本発明の回路基板の一例であり、送信IC31E及びパワーアンプ31Gは本発明の第1及び第2の電子回路の一例であり、シールドケース28は本発明のシールド部材の一例であり、対向面部28aは本発明の対向部の一例であり、隔壁28bは本発明の側部及びシールド側導電部の一例であり、スリット39は本発明の孔状の非導電部の一例であり、FPC27は本発明のスイッチ用基板及びフレキシブル基板の一例であり、可動接点26aは本発明のドーム状金属板接点の一例である。
【0049】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0050】
電子機器は、携帯電話機に限定されない。例えば、電子機器は、PDA、ノートパソコン、音楽プレーヤー、ゲーム機であってもよい。電子機器の筐体は、折り畳み式のものに限定されない。スライド式等の他の開閉式の筐体であってもよいし、開閉しないストレートタイプの筐体であってもよい。
【0051】
第1及び第2の電子回路が設けられる回路基板は、リジッド式のものに限定されず、フレキシブル基板であってもよい。また、スイッチを有するスイッチ用基板がシールド部材に積層される場合、当該スイッチ用基板は、フレキシブル基板に限定されず、リジッド基板であってもよい。
【0052】
第1及び第2の電子回路は、パワーアンプ及び送信ICに限定されない。第1及び第2の電子回路は、一方の電子回路において生じる電磁波が、他方の電子回路においてノイズとなるものであればよい。例えば、第1及び第2の電子回路は、送信回路及び受信回路であってもよいし、デジタル回路(デジタル回路ブロック)及び高周波回路(高周波回路ブロック)であってもよい。
【0053】
シールド部材は、全体が導電体により形成されるものに限定されない。例えば、シールド部材は、非導電性の部材の表面に導電層が設けられて構成されていてもよい。例えば、シールド部材は、非導電性の樹脂基体に、金属膜が蒸着され、又は、導電性塗料が塗布されて形成されてもよい。
【0054】
非導電部は、孔状のものに限定されない。例えば、上述のように、非導電性の部材の表面に導電層が設けられたシールド部材においては、導電層が設けられない部分を形成することにより、非導電部を形成することができる。
【0055】
図7は、そのようなシールド部材における、図6の領域VIIに相当する断面図を示している。シールド部材328は、非導電性部材328cの表面に導電層328dが設けられて構成されている。シールド部材328は、導電層328dが設けられない非導電部339を有している。非導電部339の平面形状(対向面部を平面視したときの形状)は、例えば、スリット39と同様である。非導電部339は、例えば、蒸着や塗布により導電層328dを形成する際に、非導電性部材328cの一部がマスキングされることにより形成される。図7の変形例は、非導電部339を形成するために、マスキングを行うだけでよく、非導電性部材328c自体の形状は変更しなくてよいことから、シールド部材の設計変更が少なく、本発明を安価に実現可能というメリットがある。
【0056】
実施形態では、ノイズが長尺状の非導電部(スリット39)の端部を回り込むことを抑制するために、非導電部の端部を隔壁28b(シールド側導電部)に隣接させた。しかし、シールド側導電部は、隔壁に限定されない。シールド側導電部は、柱状部であってもよい。非導電部の端部は、シールド部材に形成されたシールド側導電部に代えて、シールド部材と回路基板とを締結するネジに隣接してもよいし、回路基板に設けられ、シールド部材に当接する基板側導電部に隣接してもよい。
【0057】
図8は、基板側導電部を設けた変形例を示す、図4に相当する平面図である。
【0058】
図8(a)に示すように、メイン基板29の第1実装面29aの第3分割領域35Cには、実装タブ43が実装されている。実装タブ43は、グランドパターン層33と電気的に接続されている。実装タブ43は、例えば、バネ端子により構成され、シールドケース428がメイン基板29に積層されると、シールドケース428に当接する。このときの接触圧は実装タブ43の復元力により得られる。
【0059】
図8(b)に示すように、非導電部339は、一端が隔壁428に隣接し、他端が実装タブ43に隣接している。パワーアンプ31Gにおいて生じ、対向面部428aを伝わり、非導電部339の実装タブ43側の端部を回り込むおそれのあるノイズは、実装タブ43からグランドパターン層33に流れ込む。これにより、実施形態と同様の効果が得られる。さらに、実装タブ43は、隔壁428に比較して配置の自由度が高いことから、非導電部339の設計の自由度が向上する。
【0060】
非導電部の平面形状及び位置は、適宜に設定されてよく、第1及び第2の電子回路を仕切るように延びる長尺状のものに限定されない。例えば、正方形や円形のものであってもよい。ただし、長尺状のものであれば、スイッチの操作性を損なう等の不都合を生じることなく、且つ、長い距離に亘って第1及び第2の電子回路間における電磁波の伝播を遮断できる。
【0061】
非導電部の大きさも適宜に設定されてよい。非導電部は、幅(第1電子回路及び第2電子回路の配列方向の大きさ。実施形態では、スリット39の幅)が非常に小さくても、シールド部材の対向部を伝わる電磁波を遮断できる。換言すれば、非導電部の幅を大きくしても、対向部を伝わる電磁波の遮断の程度はあまり変化しない。従って、非導電部の幅は、できるだけ小さくすることが好ましい。非導電部の幅は、例えば、100μm〜1mmである。
【0062】
非導電部を大きくし過ぎると、シールド部材によって遮断すべき、電子機器の内部から外部へ放射される電磁波、若しくは、電子機器の外部から内部へ侵入する電磁波、又は、その双方が、非導電部を通過してしまうおそれがある。従って、非導電部は、電子機器に要求される電磁波の遮蔽能力を考慮して大きさが設定される必要がある。例えば、非導電部は、第1又は第2の電子回路の発生する電磁波の波長の1/2未満の大きさであることが好ましい。例えば、電子機器が携帯電話機であり、通信用の電波の周波数が1〜2GHzであるとすると、その電波の波長は15〜30cmであるから、非導電部は、7.5cm〜15cm未満であることが好ましい。なお、電子機器が携帯端末である場合には、非導電部は、無理なく、若しくは、略必然的に、この要件を満たすものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態の携帯電話機を開状態で示す外観斜視図。
【図2】図1の携帯電話機の送話筐体の分解斜視図。
【図3】図2の送話筐体内のシールドケースを示す斜視図。
【図4】図2の送話筐体内において積層される部材を模式的に示す平面図。
【図5】図1の携帯電話機の信号処理系の構成を示すブロック図。
【図6】図1の携帯電話機の効果を説明する図。
【図7】本発明の変形例における図6(c)の領域VIIに相当する断面図。
【図8】本発明の他の変形例における図4に相当する平面図。
【符号の説明】
【0064】
1…携帯電話機(電子機器)、29…メイン基板(回路基板)、29A…第1実装面(実装面)、31E…送信IC(第1の電子回路)、31G…パワーアンプ(第2の電子回路)、28…シールドケース(シールド部材)、28a…対向面部(対向部)、28b…隔壁(側部)、37C…第3分割空間(空間)、39…スリット(非導電部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する回路基板と、
前記実装面において互いに離間して設けられた第1及び第2の電子回路と、
前記実装面に対向する対向部と、前記対向部から前記実装面側へ突出する側部とを有し、前記第1及び前記第2の電子回路を、前記実装面、前記対向部及び前記側部により形成される同一の空間に収容するシールド部材と、
を有し、
前記シールド部材は、非導電性の部材の表面に導電層が設けられて構成されており、前記対向部には、前記第1の電子回路と前記第2の電子回路との間に、前記導電層が設けられない非導電部が形成されている
電子機器。
【請求項2】
実装面を有する回路基板と、
前記実装面において互いに離間して設けられた第1及び第2の電子回路と、
前記実装面に対向する対向部と、前記対向部から前記実装面側へ突出する側部とを有し、前記第1及び前記第2の電子回路を、前記実装面、前記対向部及び前記側部により形成される同一の空間に収容するシールド部材と、
を有し、
前記対向部には、前記第1の電子回路と前記第2の電子回路との間に孔状の非導電部が形成されている
電子機器。
【請求項3】
前記対向部の前記実装面とは反対側に積層されるスイッチ用基板と、
ドーム状金属板接点を有し、前記スイッチ用基板に実装される複数のスイッチと、
を有し、
前記非導電部は、前記複数のスイッチ間の位置に対向して配設される
請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記対向部の前記実装面とは反対側に積層されるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に実装される押圧式の複数のスイッチと、
を有し、
前記非導電部は、前記複数のスイッチ間の位置に対向して配設される
請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記シールド部材は、前記対向部から前記実装面側へ突出して前記回路基板の基準電位層に当接するシールド側導電部を有し、
前記非導電部は、前記回路基板に沿って延びる長尺状に形成されており、端部が前記シールド側導電部に隣接している
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記回路基板は、基準電位に電気的に接続されており、前記シールド部材側へ突出して前記シールド部材に当接する基板側導電部を有し、
前記非導電部は、前記回路基板に沿って延びる長尺状に形成されており、端部が前記基板側導電部に隣接している
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−56826(P2010−56826A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219063(P2008−219063)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】