説明

電子機器

【課題】小型の構成で筺体の保持性とボタンの操作性に優れた電子機器を提供すること
【解決手段】筐体を保持する時に指を置くのに使用される把持部と、把持部に隣接して設けられた開口から筐体の外に動画ボタン22が露出するキートップユニット20Aと、動画ボタンの筐体の内部側に設けられたボス23と、ボスと対向する位置に設けられたメタルドームと、メタルドームが設けられた操作基板と、を備えていて、キートップユニットは、筐体の内部側に設けられ、ボスよりも把持部側に配置されたストッパー25と、動画ボタンを、把持部側の剛性が把持部と反対側の剛性よりも高くなるように支持する支持部28と、を有し、動画ボタンが押下された場合に、ボスによるメタルドームの入力が行われるよりも先にストッパーが操作基板に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの電子機器では、筺体の背面に把持部(グリップ部)と操作ボタンを隣接して配置するが、筺体の小型化のために把持部と操作ボタンの間隔が狭くなり、保持時に意図せずに操作ボタンを押してしまうおそれがある。そのため筺体の保持性と操作ボタンの操作性の両立が求められている。特に、背面に液晶表示部が配置されている場合、筺体の小型化に対して液晶表示部の大型化が要求されているので、保持性と操作性の両立は特に重要となる。
【0003】
この点、特許文献1は、操作ボタンが突出する側面を覆う筐体に形成される開口穴周縁に沿って形成される土手形状高さが操作ボタンの略半周の範囲で土手形状に段差をつけた電子機器を開示している。特許文献2は、操作ボタンの板バネをバイメタルとし、そこにヒーターを取り付けて温めることにより、操作ボタンを外観面から凹かつスイッチを押さない位置に移動させ、光センサの情報により、操作ボタンの位置を移動させる電子機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−276395号公報
【特許文献2】特開2008−130304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、把持部の幅が狭く保持性が悪く、土手形状により、操作ボタンの操作性も悪い。特許文献2は、従来の構成に追加部品を必要とし、筐体の小型化を妨げると共に高価な構成となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、小型の構成で筺体の保持性とボタンの操作性に優れた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、筐体を保持する時に指を置くのに使用される把持部と、前記把持部に隣接して設けられた開口から前記筐体の外に一部が露出する操作部材と、前記操作部材の前記開口から露出した領域の前記筐体の内部側に設けられた突起部と、前記突起部と対向する位置に設けられたスイッチと、前記スイッチが設けられた基板と、を備えた電子機器であって、前記操作部材は、前記筐体の内部側に設けられ、前記突起部よりも前記把持部側に配置されたストッパーと、前記開口から露出した領域を、前記把持部側の剛性が前記把持部と反対側の剛性よりも高くなるように支持する支持部と、を有し、前記操作部材の前記開口から露出した領域が押下された場合に、前記突起部による前記スイッチの入力が行われるよりも先に前記ストッパーが前記基板に当接すること特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型の構成で筺体の保持性とボタンの操作性に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】デジタルカメラの背面図である。
【図2】デジタルカメラの動画ボタンの周辺の部分分解斜視図である。(実施例1)
【図3】図2に示すキートップユニットの平面図と断面図である。
【図4】図1に示すデジタルカメラの背面図と断面図である。
【図5】デジタルカメラの部分平面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1のデジタルカメラ(電子機器、撮像装置)1の背面図である。デジタルカメラ1は、電子部品であるカメラアッセンブリを収納する筺体を有する。筐体は前カバー(不図示)と、後カバー10と、上カバー(不図示)と、を有する。
【0012】
筐体の上カバーの上面には撮像操作を行うレリーズボタン4と不図示のレンズ鏡筒のズーミング操作を行うズームレバー5が設けられている。筐体の背面には後カバー10が設けられ、後カバー10には把持部(グリップ部)15が設けられ、後カバー10からは、液晶表示部8、動画ボタン22、設定ボタン27、操作ダイヤル33が露出している。液晶表示部8は、撮影前のスルー画像や、撮影した画像を表示し、視認性を良くするためにできるだけ大型化にする需要がある。
【0013】
図2は、実施例1のデジタルカメラの動画ボタン22の周辺の部分分解斜視図であり、図2(a)は正面側、図2(b)は背面側を示している。図2に示すように、デジタルカメラは、後カバー10と、キートップユニット20A(操作部材)と、操作基板30と、を有する。
【0014】
後カバー10は、液晶表示部8の液晶パネルを露出させる窓11、操作ダイヤル33を露出させる開口12、動画ボタン22を露出させる開口13、設定ボタン27を露出させる開口14、把持部(グリップ部)15を有する。後カバー10を不図示のシャーシに固定すると、操作基板30とキートップユニット20Aが位置決めされ、図1に示すように、液晶表示部8、操作ダイヤル33、動画ボタン22、設定ボタン27が露出する。
【0015】
把持部(グリップ部)15は、液晶表示部8と動画ボタン22の間にわずかなスペースに配置され、デジタルカメラの筐体を保持する時に指(特に親指)を置くのに使用される一対の凸部である。
【0016】
図1は、使用時にユーザーの右手で把持された状態を破線で示しており、右手人差し指は、撮像操作を行う時にはレリーズボタン4の上にあり、ズーミング操作を行う時にはズームレバー5の上にある。右手親指は把持部15の上にある。把持部15の一対の凸部によって右手親指がすべりにくく、右手中指と中指に添えた薬指と小指とで筐体正面側から筐体を支えることで、筐体をしっかり保持することができる。
【0017】
筐体背面のスペースは図1に示すように、液晶表示部8、動画ボタン22、設定ボタン27、操作ダイヤル33に多く割合を占められてしまうため、把持部15のスペースが狭くなる。把持部15が狭くなると、把持部15を押さえたはずの親指が動画ボタン22に掛かり、動画ボタン22を押す意図はないのに操作入力が行われてしまうことがある。
【0018】
キートップユニット20Aは、操作ダイヤル33を貫通させる穴21を有し、右上に筐体の外に露出する領域である動画ボタン22を有し、右下には設定ボタン27が一体に成形されている。図3(a)は、動画ボタン22の内部側を示すキートップユニット20Aの単体図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【0019】
図1に示すように、動画ボタン22は、操作ダイヤル33の上に配置され、他のモードから素早く動画撮影を開始するために入力操作時に押されるため、動画ボタン22を操作する指の大きさに見合った大きさで形成されている。動画ボタン22は、把持部15に隣接して配置されている。
【0020】
図2(b)及び図3(a)に示すように、動画ボタン22は、ボス23とストッパー25を有し、動画ボタン22は、3つの支持部28によってキートップユニット20Aに固定されている。
【0021】
ボス23は、動画ボタン22の裏面(操作基板30の側)の中心部に形成された突起部であり、動画ボタン22はボス23を介して後述するメタルドーム34を押し、メタルドーム34がたわむことで、メタルドーム34の中心の凸部が第2の電極に接触する。これにより、第1の電極と第2の電極が導通した状態となり、操作入力の信号が生成される。
【0022】
ストッパー25は、図3(a)に示すように、動画ボタン22の裏面(操作基板30の側)の輪郭部において把持部側の一対の支持部28との間に形成される。なお、ストッパー25の位置は動画ボタン22の裏面の輪郭部に限定されず、動画ボタン22から多少離れて形成されてもよい。
【0023】
図3(b)に示すように、ストッパー25の(操作基板30側の)端面25aは、ボス23の(操作基板30側の)端面23aの高さよりも高い。これにより、ユーザーが動画ボタン22を押すと、ボス23がメタルドーム34を押すよりも先に、ストッパー25が操作基板30に接触する。
【0024】
支持部28は、動画ボタン22をキートップユニット20Aに対して支持する。支持部28は、動画ボタン22が押された後、動画ボタン22を元の位置に戻す復帰力を加えるバネの役割を有し、図3(a)の右側に当たる動画ボタン22の右側に2本、左側に1本設けられている。
【0025】
このように、本実施例では、支持部28は同じ厚さを有する梁として構成されている。二本の梁によってバネ定数が約2倍になり、動画ボタン22の把持部と反対側の剛性が把持部側の方の剛性が高くなるように構成されているため、動画ボタン22の中心部を押すと、剛性が低いストッパー25の反対側に傾く。
【0026】
なお、本実施例では、支持部28を複数設けてその数によって剛性を調節しているが、動画ボタン22の把持部側と把持部と反対側の支持部の数をそれぞれ一つにして両者の厚さや材質を変えて剛性を異ならせてもよい。
【0027】
従って、動画ボタン22の把持部15側を押して、操作力の大半が把持部15側に分力されたとしても把持部15の反対側に傾きながら押し込まれてメタルドーム34を押す。ストッパー25は一定幅を有して動画ボタン22のほぼ上下方向に長く設定され、操作基板30に当接後は動画ボタン22が上下方向にガタつかないようにしている。
【0028】
設定ボタン27は、図1に示すように、操作ダイヤル33の下に配置され、各種の設定を行う。設定ボタン27も操作する指の大きさに見合った大きさで形成されている。動画ボタン22と設定ボタン27の真下にメタルドームスイッチが配置される。
【0029】
操作基板30は、基板の地板30aに回路基板30bを貼り付けたものである。回路基板30bには、皿状の導電体であるメタルドーム34が3箇所に取り付けられ、中央に操作ダイヤル33が設けられている。操作基板30は、シャーシ(不図示)に固定されている。
【0030】
メタルドーム34は、ボス23に対向する位置に配置されたドーム形状を有するスイッチである。メタルドーム34の外周円弧部の下に外周円弧部にあわせた円弧状の第1の電極(不図示)が設けられている。メタルドーム34の中心には凸部が形成され、凸部直下の操作基板30上には、第2の電極(不図示)が形成され、第2の電極を取り囲むように円弧状の第1の電極が配置されている。メタルドーム34、第1の電極および第2の電極でメタルドームスイッチを構成する。操作基板30の上側に設置されたメタルドームスイッチは動画ボタン22用で、下側に設置されたメタルドームスイッチは設定ボタン27用である。
【0031】
操作ダイヤル33は、液晶表示部8の横に配置され、各種パラメータの設定等を行うダイヤルと中央のボタンから構成されている。操作ダイヤル33も操作性を良くするためにできるだけ大きいサイズの需要がある。操作ダイヤル33が穴21を貫通して開口12から露出する。
【0032】
図4(a)は、動画ボタン22、操作基板30、後カバー10の組立状態図であり、図4(b)〜4(d)は、図4(a)におけるB−B断面図であり、動画ボタン22を押下した時の状態遷移図である。
【0033】
図4(b)は、動画ボタン22を押圧していない状態を示す断面図であり、ストッパー25は操作基板30に対してクリアランスを持っている状態を示している。ボス23もメタルドーム34に対してクリアランスを持っている状態なので、操作入力は行われていない。
【0034】
図4(c)は、ストッパー25が操作基板30に当接するまで動画ボタン22を押し込んだ状態を示す断面図であり、意図せずに動画ボタン22に指をおいた状態を示している。メタルドーム34が第2の電極と接触するまで、ボス23がメタルドーム34を押し込んでいない状態であり、操作入力はまだ行われていない。
【0035】
図4(d)は、意図して動画ボタン22を押した状態を示す断面図である。図4(c)の状態からストッパー25が支点となり、動画ボタン22の把持部15の反対側が引き続き押し込まれていき、メタルドーム34が第2の電極と接触している。この状態で操作入力が行われる。
【0036】
この構成により、把持部15に親指を置いた状態で、動画ボタン22の把持部15側に親指が掛かってしまう場合でも、支持部28の把持部15側の剛性が高いため、強い操作力が必要となる。また、親指がストッパー25の投影上であれば、図4(c)の状態から支点を押すことになるため、動画ボタン22の把持部15の反対側は押し込まれず、メタルドーム34が押し込まれない。その結果、把持部15に親指を置いた状態での誤操作を防ぐことができる。
【0037】
また、ボス23とストッパー25の位置・高さの関係を調整することにより、例えば、動画ボタン22の外観面の把持部15の反対側半分を押したときのみ、操作入力可能とすることができる。
【0038】
更に、図4(b)に示すように、動画ボタン22と把持部15の境となる部分が谷となるように形状を設定している。これによって、把持部15に親指を置くことで動画ボタン22の把持部15側に親指が掛かってしまう場合でも、先に指が当たる把持部15に力が加わりやすく、動画ボタン22に力が加わりづらくなるため、誤操作を防止することができる。
【0039】
以上、本実施例では、動画ボタン22に接続する支持部28の把持部15側の剛性を高くすると共に、動画ボタン22の把持部側にストッパー25を設け、動画ボタン22のスイッチがONされるよりも先にストッパー25を操作基板30と接触させる。これによって、デジタルカメラ1を保持している際に動画ボタン22の誤入力を防止することができる。
【実施例2】
【0040】
図5は、実施例2のキートップユニット20Bと操作基板30を重ねた状態の平面図であり、部品が重なっている一部分のみ隠れ線を用いて示している。本実施例のキートップユニット20Bは、実施例1のキートップユニット20Aの構成に加え、動画ボタン22の表面の外観部分に、ユーザーが動画ボタン22を押すための目印として機能する指標24を設けている。この指標24はボス23の位置に対して把持部15と反対側(図右側)に配置される。実施例1で説明したように、動画ボタン22の誤操作を防止するために動画ボタン22の把持部15側を押してもメタルドーム34が押し込まれにくい構成としているため、指標24によりメタルドーム34を押し込みやすい位置をわかるようにしている。このような位置に配置された指標24によりユーザーが動画ボタン22を押す箇所の目標として利用することができ、感触良く動画ボタン22を押せるように導く。
【0041】
また、図5に示すように、メタルドーム34の中心位置をボス23の中心位置に対して把持部15と反対側(図右側)にずらすことで、メタルドーム34の頂点がボス23に関して把持部15と反対側にずれ、メタルドーム34のたわみ量が減少する。このため、最低限の押し感は保持しつつ、動画ボタン22を押したときの音が軽減される。特に、動画操作に関わるボタンなので、スイッチの操作音を小さくし録画中の録音に影響しにくくすることに有効である。更に、ボス23とメタルドーム34のクリアランスが大きくなるため、把持部15に親指を置き、動画ボタン22の把持部15側に親指が掛かってしまう場合でも、操作入力が行われづらく、動画ボタン22の誤入力を防止することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、本発明が適用可能な電子機器はデジタルカメラに限定されず、PDA、ノート型PC、ゲーム機など他の電子機器を含む。本発明は液晶表示部が筺体の背面に設けられている場合には特に効果が大きいが、液晶表示部がなくても筺体の小型化を維持した状態で操作性と保持性を簡単に達成できるので効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0043】
電子機器は電子的な処理の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 デジタルカメラ
10 後カバー
15 把持部
20A、20B キートップユニット
22 動画ボタン
23 ボス
24 指標
25 ストッパー
28 支持部
30 操作基板
34 メタルドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を保持する時に指を置くのに使用される把持部と、
前記把持部に隣接して設けられた開口から前記筐体の外に一部が露出する操作部材と、
前記操作部材の前記開口から露出した領域の前記筐体の内部側に設けられた突起部と、
前記突起部と対向する位置に設けられたスイッチと、
前記スイッチが設けられた基板と、を備えた電子機器であって、
前記操作部材は、
前記筐体の内部側に設けられ、前記突起部よりも前記把持部側に配置されたストッパーと、
前記開口から露出した領域を、前記把持部側の剛性が前記把持部と反対側の剛性よりも高くなるように支持する支持部と、を有し、
前記操作部材の前記開口から露出した領域が押下された場合に、前記突起部による前記スイッチの入力が行われるよりも先に前記ストッパーが前記基板に当接すること特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記スイッチはドーム形状を有し、前記ドーム形状の頂点が前記突起部よりも前記把持部の反対側に位置するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記支持部は複数あって、前記把持部側の数が前記把持部と反対側の数よりも多いことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記操作部材の前記開口から露出した領域には、押下するときの目標となる指標が設けられていて、前記指標は、前記突起部よりも前記把持部の反対側に位置するように配置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−18275(P2012−18275A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155146(P2010−155146)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】