説明

電子機器

【課題】本発明は、特性インピーダンスコントロールフレキシブルフラットケーブルを用いた電子機器に関する。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、本体側基板17とキャリッジ側基板9という回路間を接続して差動信号を伝送する特性インピーダンスコントロールFFC20として、所定幅を有する平板状であって前記差動信号の流れる複数の導体が、本体側基板17とキャリッジ側基板9間の方向に延在するとともに幅方向に所定の間隔を空けて配設されている特性インピーダンスコントロールFFCと、所定幅を有する平板状であって電源線または接地線を含む複数の導体が、本体側基板17とキャリッジ側基板9間の方向に延在するとともに所定の間隔を空けて配設されている特性インピーダンスコントロールFFCと、が該両特性インピーダンスコントロールFFCの導体が相対向する状態で積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、詳細には、特性インピーダンスコントロールフレキシブルフラットケーブルを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
複合装置、複写装置、プリンタ装置、スキャナ装置、コンピュータ等の電子機器においては、近年、処理データ量の増加と高速処理の要求が高まっており、デバイス間やユニット間のデータ転送に、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等の小振幅の高速差動信号(クロック)を利用してデータや信号を高速転送することが行われるようになってきている。
【0003】
そして、LVDSを利用したケーブルとしては、一般的に、図11に示すような特性インピーダンスコントロールFFC(フレキシブルフラットケーブル)100が用いられており、図11(a)は、FFCの平面図、図11(b)は、図11(a)のA−A矢視断面図である。一般的に、特性インピーダンスコントロールFFC100は、図11(b)に示すように、複数の導体101、導体101を囲むように配置されている絶縁性接着剤102、絶縁性接着剤102の上下に積層される誘電体103及び誘電体103の上下に積層されるアルミ等の金属層によるシールド材(GND)104で構成されている。
【0004】
このような構成の特性インピーダンスコントロールFFC100は、その特性インピーダンスZdiffが、導体間距離(導体間ピッチ)dp[mm]、誘電体103の誘電率εと真空の誘電率ε0の比である比誘電率ε(ε/ε0=ε)、シールド材104と導体101との距離d1[mm]で、決定され、これらの特性決定要因を調整することで、意図する特性値を有する特性インピーダンスコントロールFFCの製造を行っている。
【0005】
ところが、データや信号を高速で転送するためには、回路の不整合箇所を少なくする必要があり、配線の特性インピーダンスの均一性が求められる。
【0006】
そこで、従来、複数の導体が平行に配列された導体列を、接着層付き発泡絶縁体で両側から挟みこんでラミネート加工し、さらに、該接着層付き発泡絶縁体を両側から導電性接着層付き金属層で挟んで、高周波回路との整合性及び伝播遅延時間の短縮化を図ったフレキシブルフラットケーブルが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、従来、シールド材(GND)や調整材により、開口金属層の開口率を調整することで、信号線との対向面積を変化させて、特性インピーダンスやキャパシタンスを調整し、特性の調整と波形の鈍りの防止を図ったインピーダンスコントロールフィルムが提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術にあっては、デバイス間やユニット間の信号の高速伝送を、安価に、かつ、高品質で行う上で、改良の必要があった。
【0009】
すなわち、上記特許文献1記載の従来技術にあっては、信号線以外にシールド材(GND)または、調整剤を使用しているため、可動領域に用いた際に耐久性に問題が生じたり、コストが増加するという問題があった。
【0010】
また、特許文献2記載の従来技術にあっては、シールド材(GND)や調整剤により開口率を調整しているため、シールド部材や調整剤を必要とし、コストが増加するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、差動高速信号における波形品質の劣化を安価に抑制しつつ、耐久性を向上させた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、回路間を接続して差動信号を伝送する配線材として、所定幅を有する平板状であって前記差動信号の流れる複数の導体が、前記回路間方向に延在するとともに幅方向に所定の間隔を空けて配設されている第1の配線材と、所定幅を有する平板状であって電源線または接地線を含む複数の導体が、前記回路間方向に延在するとともに所定の間隔を空けて配設されている第2の配線材と、が該第1の配線材の該導体と該第2の配線材の該導体とが相対向する状態で積層されている配線材を使用することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記配線材が、前記第1の配線材の前記導体と前記第2の配線材の前記導体の相対向する面の幅が同じであることを特徴としていてもよい。
【0014】
さらに、本発明は、前記配線材が、前記第2の配線材の前記導体が、前記第1の配線材の前記導体と対向する面において、その幅が、該第1の配線材の該導体の幅よりも大きいことを特徴としていてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記第1の配線材と前記第2の配線材が、前記導体の周囲が、接着層で埋められており、該接着層の外面が所定の誘電体で被覆されていることを特徴としていてもよい。
【0016】
さらに、本発明は、前記第1の配線材と前記第2の配線材が、前記接着層同士が直接積層されていることを特徴としていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、差動高速信号における波形品質の劣化を安価に抑制しつつ、耐久性を向上させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を適用したインクジェット記録装置の要部概略構成図。
【図2】キャリッジの移動とFFCの可動領域の関係を示す図。
【図3】本体側基板とキャリッジ側基板をFFCで接続した回路構成図。
【図4】FFCの上面斜視図と断面図。
【図5】FFC単体の平面図と断面図。
【図6】FFC間の誘電体を取り除いたFFCの断面図。
【図7】ずれ防止用のガイドを設けたFFCの断面図。
【図8】マイラーで被覆したFFCの一例を示す図。
【図9】導体幅を長くしたFFCの上面斜視図と断面図。
【図10】2本のFFC間にずれが発生したときの説明図。
【図11】従来のFFCの一例の平面図と断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施の形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
【実施例1】
【0020】
図1〜図10は、本発明の電子機器の一実施例を示す図であり、図1は、本発明の電子機器の一実施例を適用したインクジェット記録装置1の要部概略構成図である。
【0021】
図1において、インクジェット記録装置1は、一対の側板2、3の間に、ガイドロッド4と副ガイド5が張り渡されており、ガイドロッド4と副ガイド5にキャリッジ6が、図示しない軸受と副ガイド受け部7によって、該ガイドロッド4及び副ガイド5に沿って主走査方向Xに移動可能に支持されている。このキャリッジ6の下方であって、図示しないプラテン上を用紙が副走査方向Yに搬送されてくる。
【0022】
キャリッジ6は、黒(K)色のインク滴を吐出する記録ヘッド8K1、8K2、イエロー(Y)のインク滴を吐出する記録ヘッド8Y、マゼンタ(M)色のインク滴を吐出する記録ヘッド8M、シアン(C)色のインク滴を吐出する記録ヘッド8Cを搭載しているとともに、各記録ヘッド8K1、8K2、8Y、8M、8Cの駆動を制御する駆動制御回路等を搭載するキャリッジ側基板9及びエンコーダセンサ10等を搭載している。
【0023】
インクジェット記録装置1は、側板2、3の内側であって、キャリッジ6の移動する主走査方向の両端部に、駆動プーリ11と従動プーリ12が配設されており、駆動プーリ11は、駆動モータ13により回転駆動される。駆動プーリ11と従動プーリ12との間には、タイミングベルト14が張り渡されており、従動プーリ12は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ11に対して離れる方向)にテンションが架けられている。
【0024】
キャリッジ6は、その背面側に設けられているベルト保持部15によってタイミングベルト14に固定されており、タイミングベルト14が駆動プーリ11によって従動プーリ12との間を回転駆動されることで、主走査方向に往復移動する。
【0025】
キャリッジ6は、上記エンコーダセンサ10を搭載しており、インクジェット記録装置1は、キャリッジ6の主走査方向の移動時にエンコーダセンサ10が対向する位置に、エンコーダシート16が配設されている。インクジェット記録装置1は、キャリッジ6の移動時に、エンコーダセンサ10がエンコーダシート16を読み取ることで、キャリッジ6の主走査位置を検知する。
【0026】
また、インクジェット記録装置1は、キャリッジ6に主走査領域のうち、画像記録領域では、用紙が図示しない紙送り機構によってキャリッジ6の主走査方向と直交する副走査方向Yに間欠的に搬送される。
【0027】
そして、インクジェット記録装置1は、副ガイド5の後方側(反副走査方向側)に本体側基板17が配設されており、この本体側基板17とキャリッジ6のキャリッジ側基板9とが、特性インピーダンスコントロールFFC(配線材)20で電気的に接続されている。この特性インピーダンスコントロールFFC20は、キャリッジ6の主走査方向の摺動に耐えうる構成となっている。
【0028】
インクジェット記録装置1は、キャリッジ6が側板2と側板3の間をキャリッジ走査領域(移動領域)として移動する場合、図2(a)〜(c)に破線で示す可動領域FA内を、特性インピーダンスコントロールFFC20が移動する。
【0029】
インクジェット記録装置1は、用紙を副走査方向に搬送して画像形成位置で停止させると、キャリッジ6を主走査方向に移動させながら、画像データに基づいて記録ヘッド8K1、8K2、8Y、8M、8Cからインク滴を用紙に向かって吐出させて所定ライン分の画像を形成し、所定ライン分の画像の形成が完了すると、用紙Pを副走査方向に該所定ライン分だけ移動させて停止させて、同様に、次の所定ライン分の画像を形成するという処理を順次繰り返し行なって、1ページ分の画像を形成する。
【0030】
そして、上記特性インピーダンスコントロールFFC20は、図3に示すように、本体側基板17とキャリッジ側基板9との間の電気的接続に用いられ、LVDS等のシリアル差動信号にて伝送することにより、信号線本数の削減や消費電力の低減を図っている。
【0031】
すなわち、本体側基板17は、LVDSトランスミッター(Transmitter)17aを搭載し、キャリッジ側基板9は、LVDSレシーバー(Receiver)9aを搭載している。LVDSトランスミッター17aは、シリアライザ17bとPLL(Phase Locked Loop)回路17cを搭載しており、LVDSレシーバー9aは、デシリアライザ(Deserializer)9bとPLL9cを搭載している。特性インピーダンスコントロールFFC20は、本体側基板17のLVDSトランスミッター17aのシリアライザ17b及びPLL17cとキャリッジ側基板9のLVDSレシーバー9aのデシリアライザ9b及びPLL9cを接続しており、本体側基板17から複数のヘッド制御信号をLVDSトランスミッター17a内のシリアライザ17bでシリアル差動信号に変換して、特性インピーダンスコントロールFFC20によってキャリッジ側基板9のLVDSレシーバー9aに伝送する。LVDSレシーバー9aは、そのデシリアライザ9bがシリアル差動信号をパラレル信号に復元する。
【0032】
このように信号をシリアル化すると信号が高速化され、伝送路である特性インピーダンスコントロールFFC20における損失や反射により信号品質が劣化して、特性インピーダンスコントロールFFC20が長距離化するに従って顕著に現れるため、この問題を解決するのに、特性インピーダンスコントロールFFC20や受信側の終端を適切に整合して、信号品質を確保する必要がある。
【0033】
そこで、本実施例のインクジェット記録装置1は、特性インピーダンスコントロールFFC20が、図4(a)の上面斜視図と図4(b)の図4(a)のA−A矢視断面図に示すように構成されており、同じ構成の2つの特性インピーダンスコントロールFFC(第1の配線材)20aと特性インピーダンスコントロールFFC(第2の配線材)20bが積層されている。各特性インピーダンスコントロールFFC20a、20bは、図5(a)、(b)にその平面図とA−A矢視断面図として示すように、平板状の所定幅で必要な長さに形成されている。各特性インピーダンスコントロールFFC20a、20bは、図4(b)及び図5(b)に示すように、所定幅と所定高さを有する導体21a、21bが、所定の導体間隔(導体間ピッチ)dp[mm]だけ空けて複数配置されており、各導体21a、21bの周囲は、絶縁性接着剤で埋め尽くされた絶縁性接着層22a、22bとなっている。さらに、各特性インピーダンスコントロールFFC20a、20bは、絶縁性接着層22a、22bの表裏面が、誘電体23a、23bで被覆されており、特性インピーダンスコントロールFFC20は、特性インピーダンスコントロールFFC20aの誘電体23aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの誘電体23bが密接する状態で、かつ、各導体21aと導体21bが正確に相対向する状態で積層されている。
【0034】
そして、一方の特性インピーダンスコントロールFFC20aは、本体側基板17のLVDSトランスミッター17aのシリアライザ17bとキャリッジ側基板9のLVDSレシーバー9aのデシリアライザ9bとを接続し、他方の特性インピーダンスコントロールFFC20bは、本体側基板17のLVDSトランスミッター17aのPLL17cとキャリッジ側基板9のLVDSレシーバー9aのPLL9cとを接続している。すなわち、特性インピーダンスコントロールFFC20は、一方の特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21aに差動信号が流れ、他方の特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21bに電源線または接地線が接続される状態となっている。
【0035】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のインクジェット記録装置1は、本体側基板17とキャリッジ側基板9とを特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bを積層した特性インピーダンスコントロールFFC20で接続して、差動高速信号における波形品質の劣化を安価に抑制しつつ、耐久性を向上させている。
【0036】
すなわち、インクジェット記録装置1は、用紙を副走査方向に搬送してキャリッジ6の下方の画像形成位置で停止させると、キャリッジ6を主走査方向に移動させながら、画像データに基づいて記録ヘッド8K1、8K2、8Y、8M、8Cからインク滴を用紙に向かって吐出させて所定ライン分の画像を形成し、所定ライン分の画像の形成が完了すると、用紙Pを副走査方向に該所定ライン分だけ移動させて停止させて、同様に、次の所定ライン分の画像を形成するという処理を順次繰り返し行なって、1ページ分の画像を形成する。
【0037】
キャリッジ6は、本体側基板17とキャリッジ側基板9とが特性インピーダンスコントロールFFC20によって電気的につながれた状態で、一対の側板2、3に支持されたガイドロッド4及び副ガイド5に沿って主走査方向Xに移動され、本体側基板17とキャリッジ側基板9とは、特性インピーダンスコントロールFFC20を画像データ、信号及び電力の授受を行う。
【0038】
そして、特性インピーダンスコントロールFFC20は、同じ構成の2つの特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bが、導体21aと導体21bが相対向する状態で積層されており、特性インピーダンスコントロールFFC20aには、差動信号線を含む信号線が、特性インピーダンスコントロールFFC20bには、電源線または接地線が、それぞれ接続される。例えば、特性インピーダンスコントロールFFC20aは、本体側基板17のLVDSトランスミッター17aのシリアライザ17bとキャリッジ側基板9のLVDSレシーバー9aのデシリアライザ9bとを接続し、特性インピーダンスコントロールFFC20bは、本体側基板17のLVDSトランスミッター17aのPLL17cとキャリッジ側基板9のLVDSレシーバー9aのPLL9cとを接続する。
【0039】
この特性インピーダンスコントロールFFC20は、同じ構成の2つの特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bが、導体21aと導体21bが相対向する状態で積層されていて、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの間にシールド材が存在しないため、導体21aと導体21bとの距離d1[mm]が、特性インピーダンスコントロールFFC20の特性インピーダンスZdiffを決定する因子の1つとなっている。
【0040】
すなわち、特性インピーダンスコントロールFFC20の特性インピーダンスZdiffは、導体間距離(導体間ピッチ)dp[mm]、誘電体23a、23bの誘電率εと真空の誘電率ε0の比である比誘電率ε(ε/ε0=ε)、導体21aと導体21bとの距離d1[mm]を特性決定要因として決定され、これらの特性決定要因を適宜設定することで、意図する特性インピーダンスZdiffの特性インピーダンスコントロールFFC20を得ることができる。
【0041】
したがって、特性インピーダンスコントロールFFC20aの差動信号を伝送する差動対間で生じる容量結合による容量成分に対して、特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21aと電源線または接地線に接続される特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21b間で生じる容量結合による容量成分の方が大きくなり、また、特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体対間におけるループ電流が減少することによる誘導成分の低下により特性インピーダンスコントロールFFC20aの差動対間の特性インピーダンスZdiffが低下し、意図する特性インピーダンスZdiffの値を確実に得ることができる。
【0042】
その結果、シールド材や調整剤を使用することなく、特性インピーダンスを適宜に調整して差動高速信号における波形品質の劣化を抑制しつつ、安価に耐久性の良好な状態で差動の画像形成信号を送信することができる。
【0043】
なお、上記例では、特性インピーダンスコントロールFFC20は、同一構成の特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bを、導体21aと導体21bの位置を合わせて積層した構成となっているが、特性インピーダンスコントロールFFC20の構成としては、上記の構成に限るものではない。
【0044】
例えば、図6に示すように、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bとの間の誘電体23aと誘電体23bを取り除いて、特性インピーダンスコントロールFFC20aの絶縁性接着層22aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの絶縁性接着層22bとを直接接着して、特性インピーダンスコントロールFFC30とする構成としてもよい。
【0045】
このようにすると、図4に示したような特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bを単純に重ね合わせた場合に比較して、誘電体23a、23bを取り除いて直接絶縁性接着層22a、22bを接着した特性インピーダンスコントロールFFC30とすると、特性インピーダンスコントロールFFC30によって本体側基板17とキャリッジ側基板9とを接続してキャリッジ6が移動して、特性インピーダンスコントロールFFC30が移動したときに、相対向する導体21aと導体21bの位置ずれをより一層抑制することができ、特性を安定化させることができる。
【0046】
また、特性インピーダンスコントロールFFC20または特性インピーダンスコントロールFFC30において、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの相対向する導体21aと21bのずれを防止するために、例えば、図7に示すように、特性インピーダンスコントロールFFC20の幅方向と少なくとも誘電体23a、23b側の面を、ガイド部材40でガイドして、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bとのずれ、特に、導体21aと導体21bの幅方向の位置ずれが発生するのを防止するようにしてもよい。
【0047】
このように、ガイド部材40でガイドした特性インピーダンスコントロールFFC20によって本体側基板17とキャリッジ側基板9とを接続してキャリッジ6が移動して、特性インピーダンスコントロールFFC20が可動領域FAを移動したときに、相対向する導体21aと導体21bの位置ずれをより一層抑制することができ、特性インピーダンスコントロールFFC30の特性を安定化させることができる。
【0048】
さらに、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの相対向する導体21aと21bのずれを防止するには、さらに、例えば、図8に示すように、特性インピーダンスコントロールFFC20の外周部を、絶縁性マイラー50で被覆してもよい。
【0049】
このようにすると、絶縁性マイラー50で被覆した特性インピーダンスコントロールFFC20によって本体側基板17とキャリッジ側基板9とを接続してキャリッジ6が移動して、特性インピーダンスコントロールFFC20が可動領域FAを移動したときに、相対向する導体21aと導体21bとの間のずれをより一層抑制することができ、特性を安定化させることができる。
【0050】
なお、上記ガイド部材40及び絶縁性マイラー50は、特性インピーダンスコントロールFFC20の可動部分(可動領域FAに位置する部分)にのみ設けてもよく、このようにすると、安価に特性インピーダンスコントロールFFC20の特性を安定させることができる。
【0051】
また、図7及び図8においては、特性インピーダンスコントロールFFC20に適用した場合について説明したが、特性インピーダンスコントロールFFC30にも同様に適用することができる。
【0052】
また、上記説明においては、特性インピーダンスコントロールFFC20、30は、2つの特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bが同一の構成であるが、本発明の特性インピーダンスコントロールFFCとしては、同一の構成の特性インピーダンスコントロールFFCを2つ積層したものに限るものではない。
【0053】
例えば、図9に示す特性インピーダンスコントロールFFC60のように、シリアル差動信号の流れる側の特性インピーダンスコントロールFFC60aについては、上記特性インピーダンスコントロールFFC20aと同様に、所定幅と所定高さを有する導体61aが、所定の導体間隔(導体間ピッチ)dp[mm]だけ空けて複数配置されていて、各導体61aの周囲が、絶縁性接着剤で埋め尽くされた絶縁性接着層62aとなっており、縁性接着層62aの表裏面が、誘電体63aで被覆されている。一方、電源線または接地線に接続する側の特性インピーダンスコントロールFFC60bは、幅方向に半分弱の長さを有する2個の導体61bが、所定の間隔を空けて配設されており、各導体61bの周囲が、絶縁性接着剤で埋め尽くされた絶縁性接着層62bとなっていて、縁性接着層62bの表裏面が、誘電体63bで被覆されている。
【0054】
すなわち、特性インピーダンスコントロールFFC60aの複数(図9では、3個)の導体61aと特性インピーダンスコントロールFFC60bの1つの導体61bとが対向する状態となっており、この特性インピーダンスコントロールFFC60aの各導体61aと特性インピーダンスコントロールFFC60bの導体61bとの距離d1[mm]が、特性インピーダンスコントロールFFC20の特性インピーダンスZdiffを決定する特性決定要因の1つとなっている。
【0055】
したがって、特性インピーダンスコントロールFFC60は、特性インピーダンスコントロールFFC60aの差動信号を伝送する差動対間で生じる容量結合による容量成分に対して、特性インピーダンスコントロールFFC60aの導体61aと特性インピーダンスコントロールFFC60bの導体61b間で生じる容量結合による容量成分の方が大きくなり、また、特性インピーダンスコントロールFFC60aの導体対間におけるループ電流が減少することによる誘導成分の低下により、特性インピーダンスコントロールFFC60aの差動対間の特性インピーダンスを低下させることができる。
【0056】
さらに、特性インピーダンスコントロールFFC60bの導体61b部分が大きく、特性インピーダンスコントロールFFC60aの導体61aとの容量成分が大きくなるため、上記特性インピーダンスコントロールFFC20や特性インピーダンスコントロールFFC30に対して、特性インピーダンスコントロールFFC60aの差動対間の特性インピーダンスZdiffをより一層低下させることができ、所望の値を得ることができる。
【0057】
すなわち、図10(a)に示すように、同一の構成の特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bを積層して特性インピーダンスコントロールFFC20を構成した場合、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bとの間で幅方向にずれが発生すると、特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21bとの間の距離d1に影響が発生し、特性インピーダンスZdiffに影響が発生する恐れがある。
【0058】
ところが、図9に示したように、特性インピーダンスコントロールFFC60の電源線または接地線に接続される特性インピーダンスコントロールFFC60bの導体61bを幅方向に長くすると、図10(b)に示すように、特性インピーダンスコントロールFFC60aと特性インピーダンスコントロールFFC60bとが、幅方向にずれが発生しても、特性インピーダンスコントロールFFC60aの導体61aと特性インピーダンスコントロールFFC60bの導体61bが常に相対向する状態となり、特性インピーダンスコントロールFFC60aの導体61aと特性インピーダンスコントロールFFC60bの導体61bとの間の距離d1に影響が発生することを防止することができ、特性インピーダンスZdiffに影響が発生することを適切に防止して、意図する特性インピーダンスZdiffを確保することができる。
【0059】
このように、本実施例のインクジェット記録装置1は、本体側基板17とキャリッジ側基板9という回路間を接続して差動信号を伝送する特性インピーダンスコントロールFFC(配線材)20として、所定幅を有する平板状であって前記差動信号の流れる複数の導体21aが、本体側基板17とキャリッジ側基板9間の方向に延在するとともに幅方向に所定の間隔(導体間ピッチdp)を空けて配設されている特性インピーダンスコントロールFFC(第1の配線材)20aと、所定幅を有する平板状であって電源線または接地線を含む複数の導体21bが、本体側基板17とキャリッジ側基板9間の方向に延在するとともに所定の間隔を空けて配設されている特性インピーダンスコントロールFFC(第2の配線材)20bと、が該特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21aと該特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21bとが相対向する状態で積層されている。
【0060】
したがって、シールド材や調整剤を使用することなく、特性インピーダンスを適宜に調整して差動高速信号における波形品質の劣化を抑制しつつ、安価に耐久性の良好な状態で差動の画像形成信号を送信することができる。
【0061】
また、本実施例のインクジェット記録装置1は、特性インピーダンスコントロールFFC20が、特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21bの相対向する面の幅が同じ、すなわち、同じ構成の特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bを積層したものを使用している。
【0062】
したがって、同じ構成の特性インピーダンスコントロールFFCを積層されているため、差動高速信号における波形品質の劣化を抑制しつつ、より一層安価に耐久性の良好な状態で差動の画像形成信号を送信することができる。
【0063】
さらに、本実施例のインクジェット記録装置1は、特性インピーダンスコントロールFFC20が、特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21bが、特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21と対向する面において、その幅が、該特性インピーダンスコントロールFFC20aの該導体21aの幅よりも大きくなっている。
【0064】
したがって、積層された特性インピーダンスコントロールFFC20の幅方向へのずれが生じても電気的特性を維持することができ、差動の画像形成信号をより一層劣化を抑制しつつ送信することができる。
【0065】
また、本実施例のインクジェット記録装置1は、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bが、導体21a、21bの周囲が、接着層22a、22bで埋められており、該接着層22a、22bの外面が所定の誘電体23a、23bで被覆されている。
【0066】
したがって、特性インピーダンスコントロールFFC20の可動時に積層されている特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの対向する導体21a、21bが幅方向にずれるのを抑制することができ、電気的特性を維持して、差動の画像形成信号を、より一層劣化を抑制しつつ送信することができる。
【0067】
さらに、本実施例のインクジェット記録装置1は、特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bが、接着層22a、22b同士が直接積層されていてもよい。
【0068】
したがって、特性インピーダンスコントロールFFC20の可動時に積層されている特性インピーダンスコントロールFFC20aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの対向する導体21a、21bが幅方向にずれるのを抑制することができ、電気的特性を維持して、差動の画像形成信号を、より一層劣化を抑制しつつ送信することができる。
【0069】
また、本実施例のインクジェット記録装置1は、少なくとも一方の回路であるキャリッジ側基板9が、所定の移動範囲を移動して、特性インピーダンスコントロールFFC20が該キャリッジ側基板9の移動に伴って所定の移動領域FAを移動し、少なくとも該移動領域FAの特性インピーダンスコントロールFFC20をガイドするガイド部材40を備えていてもよい。
【0070】
このようすると、特性インピーダンスコントロールFFC20の可動にともなって、特性インピーダンスコントロールFFC20aの導体21aと特性インピーダンスコントロールFFC20bの導体21bが位置ずれすることをより一層適切に防止することができ、信号の伝送品質をより一層向上させることができる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、特性インピーダンスコントロールフレキシブルフラットケーブルを用いたプリンタ装置、複合装置、コンピュータ等の電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェット記録装置
2、3 側板
4 ガイドロッド
5 副ガイド
6 キャリッジ
7 副ガイド受け部
8K1、8K2、8Y、8M、8C 記録ヘッド
9 キャリッジ側基板
10 エンコーダセンサ
11 駆動プーリ
12 従動プーリ
13 駆動モータ
14 タイミングベルト
15 ベルト保持部
16 エンコーダシート
17 本体側基板
17a LVDSトランスミッター
17b シリアライザ
17c PLL
FA 可動領域
20 特性インピーダンスコントロールFFC
20a、20b 特性インピーダンスコントロールFFC
21a、21b 導体
22a、22b 絶縁性接着層
23a、23b 誘電体
30 特性インピーダンスコントロールFFC
40 ガイド部材
50 絶縁性マイラー
60 特性インピーダンスコントロールFFC
60a、60b 特性インピーダンスコントロールFFC
61a、61b 導体
62a、62b 絶縁性接着層
63a、63b 誘電体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2003−31033号公報
【特許文献2】特開2006−24824号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路間が所定の配線材で接続されて少なくとも1対の差動信号を該回路間で伝送する電子機器であって、
前記配線材は、
所定幅を有する平板状であって前記差動信号の流れる複数の導体が、前記回路間方向に延在するとともに幅方向に所定の間隔を空けて配設されている第1の配線材と、
所定幅を有する平板状であって電源線または接地線を含む複数の導体が、前記回路間方向に延在するとともに幅方向に所定の間隔を空けて配設されている第2の配線材と、
を有し、
前記第1の配線材と前記第2の配線材が、該第1の配線材の前記導体と該第2の配線材の前記導体が相対向する状態で積層されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記配線材は、
前記第1の配線材の前記導体と前記第2の配線材の前記導体の相対向する面の幅が同じであることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記配線材は、
前記第2の配線材の前記導体が、前記第1の配線材の前記導体と対向する面において、その幅が、該第1の配線材の該導体の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の配線材と前記第2の配線材は、
前記導体の周囲が、接着層で埋められており、該接着層の外面が所定の誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1の配線材と前記第2の配線材は、
前記接着層同士が直接積層されていることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器は、
少なくとも一方の前記回路が、所定の移動範囲を移動して、前記配線材が該回路の移動に伴って所定の移動領域を移動し、少なくとも該移動領域の該配線材をガイドするガイド部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−195245(P2012−195245A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59993(P2011−59993)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】