説明

電子機器

【課題】電子機器の筐体内へ液体が進入することを防ぐことができるとともに、電線の本数が異なる製品に搭載することができる。
【解決手段】止水部材15にケーブル14を挿通させるためのケーブル保持部15eに閉塞膜15gを備えたことにより、ケーブル14が挿通されていない状態では閉塞膜15gによって内壁15d側に液体が進入することを防ぐことができるので、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。すなわち、ケーブル14が挿通していない止水部材15であっても、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。また、閉塞膜15gを破ってケーブル14を挿通させたとしても、破れた閉塞膜15gがケーブル14の外周面に密着するため、閉塞膜15gが破られたことにより生じた貫通孔を密閉することができる。よって、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、防水構造を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話端末等の携帯型電子機器は、例えば屋外で使用した際に雨滴等の液体が機器内部に進入することを防ぐ構造を備えていることが多い。
【0003】
特許文献1は、フラットケーブルを挿通可能な長孔部が形成された防水ゴムを備えたコネクタを開示している。特許文献2は、電線群と防水部材を備えた防水型ケーブルハーネスおよびそれを用いた防水型電子機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−084671号公報
【特許文献2】特開2010−282774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1及び2に開示された防水部材は、挿通するフラットケーブルや電線の本数に合わせた貫通孔が予め形成されているため、フラットケーブルや電線の本数が異なる機器ごとに防水部材を作製しなければならず、コストが増大していた。
【0006】
具体的には、例えばノートパソコン等の情報処理機器やDVDレコーダー等のAV機器の場合、一つの製品で複数の仕様(搭載する機能ごとの仕様、製品の仕向地ごとの仕様等)を製造する場合がある。この場合、製品の仕様によって電線の本数が異なる場合があるが、特許文献1及び2に開示された構成では製品の仕様ごとに貫通孔の数が異なる防水部材を作製しなければならず、コストが増大していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示する電子機器は、貫通孔が形成された筐体と、前記筐体の内部に配された電気回路基板と、前記筐体の表面に配され、情報を電気信号に変換する信号変換素子と、前記電気回路基板と前記信号変換素子とを電気的に接続する信号線と、前記貫通孔を閉塞するように前記筐体に装着されている止水部材とを備え、前記止水部材は、前記信号線を挿通保持可能な信号線保持部と、前記信号線を挿通可能な突起部と、前記信号線保持部及び前記突起部の少なくともいずれか一方を閉塞する閉塞膜とを備え、前記閉塞膜は、前記信号線保持部に前記信号線を挿通する際、前記信号線が貫通する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示によれば、電子機器の筐体内へ液体が進入することを防ぐことができるとともに、電線の本数が異なる製品に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コンピューター装置の斜視図
【図2】コンピューター装置の背面側の平面図
【図3】図2におけるZ−Z部の断面図
【図4】止水部材の斜視図
【図5】止水部材の平面図
【図6】図5におけるZ−Z部の断面図
【図7】図6におけるY部の拡大断面図
【図8】図6におけるY部の拡大断面図(ケーブル挿通後)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
〔1.コンピューター装置の構成〕
図1は、本実施の形態にかかるコンピューター装置の斜視図である。図2は、本実施の形態にかかるコンピューター装置の背面図である。図3は、図2におけるZ−Z部の断面図である。
【0011】
コンピューター装置1は、電子機器の一例である。本実施の形態にかかる電子機器は、一例として単一筐体からなる携帯型のコンピューター装置1を挙げたが、少なくとも電気回路基板を内蔵した筐体と、その筐体に配置されたアンテナと、電気回路基板とアンテナとを電気的に接続するケーブルとを備えた機器であれば、コンピューター装置以外の機器であってもよいし、単一筐体にも限定されない。コンピューター以外の機器としては、例えばPDA(Personal Digital Assistant)、携帯型ゲーム機、携帯電話端末等がある。また、単一筐体以外の機器としては、例えばノート型パーソナルコンピューター等のようにヒンジ機構で互いに支持された2つの筐体からなる機器がある。
【0012】
コンピューター装置1は、前面1a、背面1b、上面1c、下面1d、側面1e、および側面1fを有する略直方体の筐体1mで外郭が覆われている。コンピューター装置1は、筐体1m内に中央演算処理装置(CPU)や記憶素子等の電子部品が配されている。なお、コンピューター装置1の形状は、直方体に限らず、他の形状であってもよい。
【0013】
コンピューター装置1の筐体1mは、樹脂や金属等の任意の材料で形成することができるが、堅牢性及び放熱性を向上するために金属で形成することが好ましく、例えばマグネシウムで形成することができる。
【0014】
筐体1mの上面1cの一部には、カバー部材1p及び1sが固定されている。カバー部材1p及び1sは、アンテナ基板11(図2参照)を覆うように配されている。カバー部材1p及び1sは、アンテナ基板11(図2参照)における無線電波の送受信特性を向上させるために不導体で形成されていることが好ましく、例えば樹脂で形成することが好ましい。カバー部材1pは、筐体1mの上面1cにおける側面1e近傍の一部と、前面1aにおける上面1c及び側面1eの近傍の一部と、背面1bにおける上面1c及び側面1eの近傍の一部と、側面1eにおける上面1c近傍の一部とを覆うように配置されている。カバー部材1sは、筐体1mの上面1cにおける側面1f近傍の一部と、前面1aにおける上面1c及び側面1fの近傍の一部と、背面1bにおける上面1c及び側面1fの近傍の一部と、側面1fにおける上面1c近傍の一部とを覆うように配置されている。カバー部材1p及び1sは、筐体1mにネジによる螺結や爪係合等の手段によって固定することができる。カバー部材1p及び1sと筐体1mとの接合部分は、パッキン等によって止水されていることが好ましい。カバー部材1p及び1sと筐体1mとの間には、空隙が形成されている。カバー部材1p及び1sと筐体1mとの間の空隙には、アンテナ基板(後述)が配置されている。カバー部材1p及び1sは、少なくともアンテナ基板(後述)における電波の送受信を妨害しない材料で形成されていることが好ましく、樹脂以外の材料で形成されていてもよい。
【0015】
コンピューター装置1は、前面1aにディスプレイパネル2を備えている。ディスプレイパネル2は、様々な映像を表示可能であり、例えば液晶ディスプレイパネルで構成することができる。ディスプレイパネル2は、ユーザーの指やスタイラスペン等による接触状態を検出することができるタッチパネルを備えていてもよい。
【0016】
図3に示すように、コンピューター装置1は、アンテナ基板11、電気回路基板12、コネクタ13、ケーブル14、および止水部材15を備えている。
【0017】
アンテナ基板11は、筐体1mとカバー部材1pとの間の空間に配置されている。アンテナ基板11は、筐体1mに形成されたボス1gにネジ(不図示)等の固定手段によって固定されている。なお図示は省略しているが、筐体1mとカバー部材1s(図1及び図2参照)との間の空間にも、他のアンテナ基板を配置することができる。アンテナ基板11は、アンテナ、送信回路、および受信回路等を備えている。アンテナ基板11は、例えば無線LAN(Local Area Network)の通信規格に対応した無線電波を送受信することができる。また、筐体1mとカバー部材1pとの間の空間に配置するアンテナ基板と、筐体1mとカバー部材1s(図1及び図2参照)との間の空間に配置するアンテナ基板とで、対応する無線通信規格を異ならせることができる。
【0018】
電気回路基板12は、筐体1m内に配置されている。電気回路基板12は、各種信号処理を行うことができる電気回路を備えているが、少なくともアンテナ基板11から送られる電気信号(受信信号)を復調したり、アンテナ基板11へ送る電気信号(送信信号)を生成したりする電気回路を備えている。
【0019】
コネクタ13は、電気回路基板12に実装されている。コネクタ13は、ケーブル14の一方の端部が電気的に接続されている。
【0020】
ケーブル14は、アンテナ基板11と電気回路基板12とを電気的に接続している。具体的には、ケーブル14は、一方の端部がアンテナ基板11に半田11aにより電気的に接続され、他方の端部がコネクタ13に電気的に接続されている。ケーブル14は、止水部材15の側面15h(後述)を貫通して配置されている。図示は省略するが、筐体1mとカバー部材1s(図1及び図2参照)との間の空間に配置されているアンテナ基板と電気回路基板12とを電気的に接続するケーブルもさらに備えることができる。ケーブル14は、一例として線状の銅線をビニール被覆した構成としているが、線状の銅線のみのケーブルや、フレキシブルフラットケーブルで構成してもよい。
【0021】
止水部材15は、筐体1mに形成された孔部1kに嵌合している。止水部材15は、筐体1mの当接面1tとカバー部材1pの当接面1rとに当接している。止水部材15は、筐体1mの当接面1tとカバー部材1pの当接面1rとに、隙間無く密着していることが好ましい。止水部材15は、水等の液体が浸透しない材料で形成されていることが好ましく、当接面1t及び1rとの密着性を向上して止水を確実にするために弾性変形する材料で形成されていることがさらに好ましい。止水部材15は、例えばシリコンゴムで形成することができ、例えば硬度が約20度のシリコンゴムで形成することができる。なお、止水部材15の詳しい構成については、後述する。
【0022】
図3に示すように、アンテナ基板11とコネクタ13とに接続されたケーブル14は、止水部材15を貫通するように配線されている。
【0023】
〔2.止水部材15の構成〕
図4は、止水部材15の斜視図である。図5は、止水部材15の平面図である。図6は、図5におけるZ−Z部の断面図である。図7は、図6におけるY部の拡大断面図である。図8は、ケーブル保持部15eにケーブル14を挿通した状態を示す拡大断面図である。
【0024】
止水部材15は、例えば略直方体形状に形成されている。止水部材15は、上面15aに対向する下面15bに、突起部15cが形成されている。突起部15cは、筐体1mに形成された孔部1k(図3参照)に嵌合可能である。突起部15cは、筐体1m内に液体が進入することを防ぐために、筐体1mの孔部1k(図3参照)に密着嵌合することが好ましい。
【0025】
止水部材15は、側面15hに対向し、凹部を形成する内壁15d等が形成されている。内壁15d等によって形成される凹部は、ケーブル14を配置するための空間である。
【0026】
止水部材15は、上面15a及び下面15bに隣接する複数の側面のうち少なくとも一つの側面15hに、ケーブル保持部15eが形成されている。ケーブル保持部15eは、図6及び図7に示すように略円錐形状に形成されている。具体的には、ケーブル保持部15eは、側面15hにおける内径W21(図7参照)と、内壁15d側の内径W2とを、
W2<W21
とした。これにより、ケーブル14の配線作業を行う際に、ケーブル保持部15eにケーブル14の端部を挿入しやすくすることができる。なお、ケーブル保持部15eの形状は、円錐形状に限らず、角錐形状や円筒形状であってもよい。
【0027】
ケーブル保持部15eは、図4に示すように本実施の形態では5個形成されているが、個数は任意である。ケーブル保持部15eを複数個形成している理由は、コンピューター装置の複数の仕様に対応するためである。具体的には、コンピューター装置の仕様(アンテナの有無や、無線通信の種類など)が異なるとケーブルの本数が異なる場合があるが、止水部材15にケーブル保持部15eを複数個形成しておけばケーブルの本数が異なっても配線することができる。本実施の形態の場合、ケーブル保持部15eを5個設けているため、5本以下の任意の本数のケーブルを配線することができる。
【0028】
また、図4及び図5に示す構成では各ケーブル保持部15eの中心が一直線上に位置するように整列配置したが、この配置には限定されない。例えば、ケーブル保持部15eは、千鳥配置(ジグザグ配置)や格子配置(マトリクス配置)としてもよい。ケーブル保持部15eを千鳥配置とすることで、止水部材15を大幅に大型化せずにケーブル保持部15eの数を増やすことができ、保持できるケーブルの本数を増やすことができるため、好ましい。
【0029】
ケーブル保持部15eの最も小さい内径を有する部分(最小内径部)の内径寸法W2(図7参照)と、ケーブル14の外径寸法W12(図8参照)とは、
W2≦W12
の寸法関係を有することが好ましい。上記関係式において「W2<W12」の寸法関係とすることにより、ケーブル保持部15eに挿入されたケーブル14の外周面とケーブル保持部15eの最小内径部とを密着させることができ、ケーブル保持部15e側から進入した液体が内壁15d側へ移動するのを防ぐことができる。また、ケーブル14の外径寸法W12は、大きすぎると止水部材15におけるケーブル保持部15eの近傍に亀裂が入る等の損傷を受ける可能性があり、止水が不十分になる可能性があるため、例えばケーブル保持部15eの最小内径部が復元可能な寸法とすることが好ましい。なお、図8では、ケーブル保持部15eの最小内径部とケーブル14との位置関係を明確に図示するために、ケーブル保持部15eの最小内径部の内径がケーブル14の外径よりも大きくなるように図示しているが、実際は上記関係式に示す寸法関係を有することが好ましい。
【0030】
ケーブル保持部15eと内壁15dとの間、すなわちケーブル保持部15eの最奥部には、閉塞膜15gが形成されている。閉塞膜15gは、ケーブル保持部15eと内壁15dで形成された凹部とを空間的に分離している。閉塞膜15gは、ケーブル保持部15e側から進入した液体が内壁15d側へ移動するのを防ぐことができ、ケーブル保持部15eと内壁15dで形成された凹部との間を閉塞している。閉塞膜15gの厚さW1は、ケーブル14を配線する際にケーブル14の先端によって貫通させることができる厚さであることが好ましく、本実施の形態では一例として厚さW1を約0.2ミリメートルとした。
【0031】
止水部材15は、図5及び図6に示すように、内壁15d等によって形成される凹部の底面15jに孔部15fが形成されている。孔部15fは、底面15jからそれに対向する外面まで突起部15cを貫通するように形成されている。孔部15fは、底面15jにおける開口の内径W31と、底面15jに対向する面における開口の内径W32とを、
W32<W31
の寸法関係を有する円錐形状とした。これにより、ケーブル14の配線作業を行う際に、底面15j側から孔部15fにケーブル14の端部を挿入しやすくすることができる。なお、孔部15fの形状は一般的に挿通するケーブル14の外形の相似形が好ましく、円錐形状に限らず、角錐形状や円筒形状や角柱形状であってもよいが、ケーブル14を孔部15fに挿入しやすくするために円錐形状または角錐形状とすることが好ましい。孔部15fは、図4に示すように本実施の形態では5個形成されているが、個数は任意であり、少なくともケーブル保持部15eの個数と同じであればよい。
【0032】
〔3.ケーブル14の配線方法〕
以下、ケーブル14の配線方法について説明するが、図1に示すカバー部材1p側のケーブル14の配線方法を一例として挙げて説明する。カバー部材1s側のケーブルも同様の方法により配線することができる。
【0033】
まず、図3に示すカバー部材1pが装着されていない筐体1mに、アンテナ基板11を固定する。具体的には、筐体1mに形成されたボス1gに、アンテナ基板11をネジで螺結する。アンテナ基板11には、ケーブル14の一端が半田11aにより電気的に接続されている。
【0034】
次に、止水部材15を筐体1mに装着する。具体的には、止水部材15の突起部15cを、筐体1mに形成された孔部1kに嵌合する。このとき、止水部材15に形成された全てのケーブル保持部15eは、閉塞膜15gによって閉塞され、貫通していない。本実施の形態の止水部材15は、弾性変形可能な材料で形成されているため、弾性変形を伴いながら孔部1kに嵌合させることにより止水を確実にすることができ、好ましい。
【0035】
なお、本実施の形態では、アンテナ基板11を固定した後、止水部材15を装着する手順としたが、止水部材15を装着した後、アンテナ基板11を固定する手順としてもよい。
【0036】
次に、図6及び図7に示すように、ケーブル14(図3参照)を矢印Aに示す方向へ移動させ、ケーブル14の他端を止水部材15のケーブル保持部15eに挿入する。
【0037】
次に、図8に示すように、ケーブル保持部15eに挿入したケーブル14の他端で閉塞膜15gを突き破り、ケーブル14の他端を内壁15dで形成される凹部内に挿入する。これにより、ケーブル14は、ケーブル保持部15eを挿通した状態となる。このとき、ケーブル14は、その外周円筒面がケーブル保持部15eの最小内径部に密着していることにより、ケーブル保持部15e側から内壁15d側へ液体が移動することを防ぐことができるため、好ましい。なお、ケーブル14の外周円筒面にケーブル保持部15eの最小内径部が密着していなくても、ケーブル14によって突き破られた閉塞膜15gがケーブル14の外周円筒面に密着することにより、ケーブル保持部15e側から内壁15d側へ液体が移動することを防ぐことができる。また、ケーブル14によって突き破られた閉塞膜15gは、ケーブル14の外周円筒面に当接または密着していることにより、ケーブル保持部15e側から内壁15d側へ液体が移動することを防ぐことができるため、好ましい。
【0038】
次に、ケーブル14の他端を、図6の矢印Bに示すように内壁15dで形成される凹部内から孔部15fに挿通して、矢印Cに示すように止水部材15から露出させ、筐体1mの内部へと移動させる。
【0039】
次に、ケーブル14の他端を、図3に示すようにコネクタ13に接続する。
【0040】
最後に、カバー部材1pを筐体1mに固定する。カバー部材1pを筐体1mに固定する際は、ネジによる螺結固定方法や、爪係合による固定方法を採用することができる。
【0041】
カバー部材1pを筐体1mに固定することで、止水部材15は、カバー部材1pと筐体1mとに挟持された状態となる。具体的には、図3に示すように、止水部材15の下面15bと筐体1mの当接面1tとが密着し、止水部材15の上面15aとカバー部材1pの当接面1rとが密着する。止水部材15の下面15bと筐体1mの当接面1tとが密着することで、筐体1mの孔部1kが止水部材15で密閉された状態となるため、止水部材15の下面15bと筐体1mの当接面1tとの間を介して筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。また、止水部材15の上面15aとカバー部材1pの当接面1rとが密着することで、内壁15dで形成された凹部がカバー部材1pによって密閉された状態となるため、止水部材15の上面15aとカバー部材1pの当接面1rとの間を介して内壁15dで形成された凹部内に液体が進入することを防ぐことができる。
【0042】
なお、止水部材15をカバー部材1pと筐体1mによって挟持する際に、止水部材15を弾性変形させることにより、さらに止水部材15の下面15bと筐体1mの当接面1tとの密着性が向上し、止水部材15の上面15aとカバー部材1pの当接面1rとの密着性が向上するため、好ましい。
【0043】
〔4.止水構造〕
本実施の形態では、アンテナ基板11における無線電波の送受信特性の低下を防ぐため、アンテナ基板11を金属製の筐体1mの外側に配置するとともに、カバー部材1p及び1sによって覆っている。筐体1mは、金属製であるため落下等によって外部から衝撃が加わったとしても容易に破損することはないが、カバー部材1p及び1sは、樹脂で形成されているため、金属に比べて外部からの衝撃に対する耐性が低く、誤ってコンピューター装置1を床等に落下させてしまい、カバー部材1p及び1sが床面に衝突すると、カバー部材1p及び1sが破損してしまう可能性がある。カバー部材1p及び1sに割れ等の破損が生じたコンピューター装置1を、屋外の雨中等で使用すると、アンテナ基板11が配置されている空間内に雨滴等の液体が進入してしまう可能性がある。
【0044】
本実施の形態では、筐体1mに形成されたケーブル14を配線するための孔部1kを、止水部材15で密閉し、筐体1m内に液体が進入するのを防ぐ構成とした。さらに、止水部材15は、ケーブル14を配線するためのケーブル保持部15eを備え、そのケーブル保持部15eはケーブル14を配線していないときは閉塞膜15gで閉塞し、止水部材15の内壁15dで形成された凹部内に液体が進入するのを防ぐ構成とした。また、止水部材15のケーブル保持部15eは、閉塞膜15gを破ってケーブル14を挿通させたとき、破れた閉塞膜15gがケーブル14の外周面に密着し、止水部材15の内壁15dで形成された凹部内に液体が進入するのを防ぐ構成とした。また、止水部材15の内壁15dで形成された凹部は、カバー部材1p及び1sによって密閉し、その凹部内に液体が進入するのを防ぐ構成とした。
【0045】
上記の止水構造により、たとえカバー部材1p及び1sが破損し、アンテナ基板11が配された空間内に液体が進入したとしても、筐体1m内へ液体が進入することを防ぐことができるため、筐体1m内に配された電気回路基板12に液体が付着することによる故障を防ぐことができる。
【0046】
なお、アンテナ基板11は、電気回路基板12に比べて安価な部品であるため、カバー部材1p及び1sが破損することで液体が付着して故障したとしても、低い修理コスト及び部品コストで新品のアンテナ基板に交換することができる。
【0047】
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、筐体1mの内部に配された電気回路基板12と筐体1mの外部に配されたアンテナ基板11とをケーブル14で接続する際に、筐体1mの孔部1kを止水部材15の突起部15cで密閉したことにより、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。
【0048】
本実施の形態によれば、止水部材15の内壁15dで形成された凹部をカバー部材1pで密閉したことにより、その凹部内に液体が進入することを防ぐことができる。
【0049】
本実施の形態によれば、止水部材15にケーブル14を挿通させるためのケーブル保持部15eに閉塞膜15gを備えたことにより、ケーブル14が挿通されていない状態では閉塞膜15gによって内壁15d側に液体が進入することを防ぐことができるので、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。すなわち、ケーブル14が挿通していない止水部材15であっても、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。
【0050】
また、閉塞膜15gを破ってケーブル14を挿通させたとしても、破れた閉塞膜15gがケーブル14の外周面に密着するため、閉塞膜15gが破られたことにより生じた貫通孔を密閉することができる。よって、筐体1m内に液体が進入することを防ぐことができる。
【0051】
また、閉塞膜15gは、ケーブル14の端部によって破られることが可能な厚さ及び材料で形成したことにより、ケーブル14を止水部材15内に配線する際の作業性を向上することができる。
【0052】
本実施の形態によれば、止水部材15を弾性変形可能な材料で形成したことにより、止水部材15をカバー部材1pと筐体1mとで挟持する際に止水部材15を弾性変形させることにより、筐体1mの孔部1kの密閉性と止水部材15の内壁15dで形成された凹部の密閉性を向上することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、止水部材15のケーブル保持部15eに閉塞膜15gを備えたが、ケーブル保持部15eに代えて凹部15fに閉塞膜を備えることにより、筐体1m内に液体が進入するのを防ぐことができる。この場合、ケーブル保持部15eが貫通孔となり、ケーブル保持部15eを通って止水部材15の凹部に液体が進入する可能性があるが、凹部15fの閉塞膜によって筐体1m内に液体が進入しないため、止水部材15の上面15aとカバー部材1pの当接面1rとの密着性は必須でなくなる。
【0054】
また、本実施の形態の凹部15fは、貫通孔として形成されているが、ケーブル14が挿通された状態ではケーブル14の外周面に凹部15fの内壁が密着するため、止水することができる。しかし、ケーブル14が挿通していない凹部15fは、止水が不十分である。そこで、ケーブル14が挿通していない凹部15fが存在する場合には、凹部15fを閉塞する構成を備えることが好ましい。凹部15fを閉塞する構成としては、例えば、筐体1mの貫通孔1kに突起部15cを嵌合させたときに、止水部材15の弾性復元力を用いて凹部15fを塞ぐ構成が考えられる。
【0055】
また、本実施の形態では、止水部材15のケーブル保持部15eに閉塞膜15gを備えたが、さらに孔部15fに閉塞膜を備えることにより、止水性能をさらに向上することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、ケーブル14として線材を挙げて説明したが、複数の銅線を薄膜フィルムで挟持したフレキシブルフラットケーブル(FPC)であってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、アンテナ基板11を筐体1mとカバー部材1p及び1sとの間に配置する構成としたが、筐体1mとカバー部材1p及び1sとの間に配置する電気部品はアンテナ基板に限らない。
【0058】
また、本実施の形態では、筐体1mの外部に配置し電気回路基板12と接続する電気部品をアンテナ基板11としたが、アンテナ基板に限らず、少なくとも情報を電気信号に変換する信号変換素子であればよい。信号変換素子は、例えば、電気信号を音声に変換する発音素子(スピーカー等)、音声を電気信号に変換する集音素子(マイクロホン等)、光信号を電気信号に変換する撮像素子(CCD等)、光信号を電気信号へ変換する受信素子(フォトダイオード等)、電気信号を光信号へ変換する送信素子(発光ダイオード等)、電気信号を画像信号へ変換する表示素子(液晶ディスプレイ等)などで実現することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、コンピューター装置は、図1に示すように単一筐体からなる構成としたが、ノート型パーソナルコンピューター等のように複数の筐体からなる構成としてもよい。その場合、筐体1mの外部に配置し電気回路基板12と接続する電気部品は、アンテナ基板11に限らず、ディスプレイパネルとすることができる。また、その場合のケーブル14は、ディスプレイパネルと電気回路基板12とを接続するケーブルとすることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、閉塞膜15gは、図7等に示すように厚さを略均一としたが、ケーブル14の端部によって容易に突き破られるような構成としてもよい。例えば、閉塞膜15gの中心が最も薄くなるように不均一な厚さとしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態における筐体1mは、筐体の一例である。孔部1kは、貫通孔の一例である。電気回路基板12は、電気回路基板の一例である。アンテナ基板11は、信号変換素子の一例である。ケーブル14は、信号線の一例である。止水部材15は、止水部材の一例である。ケーブル保持部15eは、孔部の一例である。閉塞膜15gは、閉塞膜の一例である。カバー部材1p及び1sは、カバー部材の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願の開示は、止水部材を備えた電子機器に関する。
【符号の説明】
【0063】
1m 筐体
1p、1s カバー部材
14 ケーブル
15 止水部材
15e ケーブル保持部
15g 閉塞膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された筐体と、
前記筐体の内部に配された電気回路基板と、
前記筐体の表面に配され、情報を電気信号に変換する信号変換素子と、
前記電気回路基板と前記信号変換素子とを電気的に接続する信号線と、
前記貫通孔を閉塞するように前記筐体に装着されている止水部材とを備え、
前記止水部材は、前記信号線を挿通保持可能な信号線保持部と、前記信号線を挿通可能な突起部と、前記信号線保持部及び前記突起部の少なくともいずれか一方を閉塞する閉塞膜とを備え、
前記閉塞膜は、前記信号線保持部に前記信号線を挿通する際、前記信号線が貫通する、電子機器。
【請求項2】
前記信号変換素子を覆うように前記筐体に装着されているカバー部材を、さらに備え、
前記カバー部材は、不導体で形成されている、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記止水部材は、弾性変形可能な材料で形成されている、請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記止水部材は、弾性変形可能な材料で形成され、前記筐体と前記カバー部材とに挟持されている、請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
前記閉塞膜は、前記信号線が貫通した後、前記信号線に止水可能な状態で密着する、請求項1電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248621(P2012−248621A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118186(P2011−118186)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】