説明

電子機器

【課題】 機器本体に対して可動部材を開閉及び回転可能取り付けるためのヒンジ機構の交換が容易な電子機器を提供する。
【解決手段】 例えば画像表示装置2を撮像装置本体1に取り付けるヒンジ機構3の場合、ヒンジ機構3に設けられた、ヒンジ機構3の回転量に応じた信号を出力する回転検出スイッチ32の接続線11を、画像表示装置2に着脱可能に接続する。そして、撮像装置本体1と画像表示装置2との接続線7を通じて撮像装置本体1に転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関し、特には機器本体に部材を開閉及び回転可能に取り付けるヒンジ機構を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の撮像装置などの電子機器は、機器本体に対して開閉および回転可能に支持される可動式の画像表示装置を備えているものが多い。このように、画像表示装置を可動的に機器本体に接続するための機構をヒンジ機構と呼び、画像表示装置の開閉および回転を可能にするヒンジ機構は開閉用、回転用の2つの回転軸を有する。
【0003】
このようなヒンジ機構として、従来、特許文献1の図5に記載されるようなヒンジ機構が提案されている。通常、ヒンジ機構には、画像表示装置が180度回転したことを検出するスイッチ等が設けられ、表示画像の反転制御に用いられている。例えば、回転軸の所定の位置に設定された凸部が画像表示部の回転に伴って移動し、180度回転すると凸部が検出スイッチをオンするよう、回転検出スイッチは、ヒンジ機構内の回転用の回転軸の周囲に配置される。
【0004】
ここで、撮像装置の一般的なカバー構成について説明する。
図7(a)および(b)はそれぞれ撮像装置を斜め前方、後方から見た斜視図であり、撮像装置本体101の筐体を構成するカバーユニットの構成例を示している。
150はハンドルユニット、151は右カバーユニットであり、画像表示装置102を含んでいる。152はフロントカバーユニット、153はレンズユニット、154はリアカバーユニット、155は左カバーユニット、156はボトムカバーユニットである。このように撮像装置本体101の筐体101aは、複数のカバーユニットから構成されている。
【0005】
特に、図7(a)および(b)に示すような業務用機種の場合、民生用機種と比較して大型であり、機能も多いため、筐体101aを構成するカバーユニットの数も多くなる。修理等で本体を分解する場合、カバーユニットを外す必要があるため、カバーユニットの数が多ければ分解に要する時間も長くなる。
【0006】
図8は、撮像装置の、図7(a)の切断線160における水平方向断面図である。なお、図8は、画像表示装置102と撮像装置本体101との接続に関する構造を説明することを目的としたものであり、当該構造と直接関係しない部分については必ずしも正確ではない。
【0007】
図8において、ヒンジ機構103は、撮像装置本体101の筺体101aにビス122で、画像表示装置102にビス124でそれぞれ取り付けられている。
【0008】
画像表示装置102の内部には、例えばLCDパネル等の表示パネル104と、表示パネル104を駆動する駆動基板106が設けられている。駆動基板106にはコネクタ108が実装され、第1の接続線107と接続されている。
【0009】
撮像装置本体101の内部には、基板109が固定され、基板109にはコネクタ110、112がそれぞれ実装されている。
コネクタ112は第1の接続線107の一端に接続されており、第1の接続線107の他端は、ヒンジ機構103を通じて画像表示装置102内のコネクタ108に接続される。
コネクタ110は第2の接続線111の一端と接続され、第2の接続線111の他端は、ヒンジ機構103に固定された、回転検出スイッチ132を実装した基板に接続される。この接続はコネクタを用いず、半田付けによる。
【0010】
図8における信号の流れについて説明する。回転検出スイッチ132の信号は第2の接続線111からコネクタ110を経由して基板109に与えられ、撮像装置本体101の中で制御信号として処理される。
撮像装置本体1で撮像して得られた画像信号は、撮像装置本体101で処理されたのち、基板109からコネクタ112、第1の接続線107、コネクタ108を介して駆動基板106に入力され、表示パネル104で表示される。
【0011】
(ヒンジ機構の交換手順)
以上説明したような構成のヒンジ機構103を交換する場合の手順について、図8を用いてさらに説明する。
(1)まず、不図示のビスを外して化粧カバー113を取り外す。
(2)不図示のビスを外して撮像装置本体101の各カバーユニット150〜156を分解し、基板109上のコネクタを露出させる。
(3)コネクタ110から第2の接続線111を外す。
(4)ビス123と124をはずして画像表示装置102の上カバー102aと下カバー102bを分離する。
(5)コネクタ108から第1の接続線107を外し、第1の接続線107をヒンジ機構103から抜き取る。
(6)ビス122を外してヒンジ機構103を取り外す
(7)回転検出スイッチ132をヒンジ機構103から取り除くことで、ヒンジ機構103を分離する。
(8)新しいヒンジ機構を上記の逆の手順で撮像装置本体に組み込んで、交換作業を完了する。
【0012】
以上のように、ヒンジ機構103の交換の際には、ヒンジ機構103内部の回転検出スイッチ132に接続された第2の接続線111を撮像装置本体101内の基板109のコネクタ110から外す必要がある。そのため、撮像装置101本体のカバーユニット150〜156まで分解する作業が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−51970号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら上述したような従来技術では以下のような問題点があった。
すなわち、ヒンジ機構103は可動部品であるため、頻繁に操作されたり、負荷のかかる操作がなされたり、画像表示装置102への不用意な荷重を受けたりすることにより比較的故障しやすい部品である。ヒンジ機構103が故障した場合、ヒンジ機構103のみの交換ですむ場合であっても、上述の通り撮像装置101の本体内の基板109を露出させる必要があるため、多くの作業時間を要し、作業性が劣っていた。
【0015】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、機器本体に対して開閉及び回転可能な部材を取り付けるヒンジ機構の交換が容易な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、機器本体と、可動部材と、前記可動部材を前記機器本体に対して開閉及び回転可能に取り付けるヒンジ機構であって、前記可動部材の回転に応じた信号を出力する回転検出手段を有するヒンジ機構とを有し、前記機器本体から前記可動部材に対する信号を供給するために用いられる接続線を含む第1の接続線が、前記機器本体から、前記ヒンジ機構の開閉用の回転軸に設けられた第1の貫通穴および回転用の回転軸に設けられた第2の貫通穴を通じて、前記可動部材に着脱可能に接続され、 前記回転検出手段が出力する信号を供給する第2の接続線が、前記回転検出手段から前記ヒンジ機構の前記回転用の回転軸を通じて前記可動部材に着脱可能に接続され、前記可動部材が、前記第2の接続線から供給される信号を、前記第1の接続線を通じて前記機器本体に転送する転送手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような構成により、本発明によれば、電子機器本体に対して開閉及び回転可能な部材を取り付けるヒンジ機構の交換が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置の内部構成例を示す水平断面図。
【図3】本発明による実施形態を説明した内部構成図
【図4】本発明の実施形態に係る撮像装置のヒンジ交換手順を説明する図。
【図5】本発明の実施形態に係る撮像装置のヒンジ交換手順を説明する図。
【図6】本発明の実施形態に係る撮像装置のヒンジ交換手順を説明する図。
【図7】従来の撮像装置の斜視図。
【図8】従来の撮像装置の内部構成例を示す水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器の一例である撮像装置を右斜め後ろから見た斜視図であり、撮像装置本体1にヒンジ機構を介して開閉および回転可能に取り付けられた部材の一例としての画像表示装置2を開いた状態を示している。図1において、1aは画像表示装置(画像表示部)2を取りつけるための筐体、4は画像表示のための表示パネル、23は表示パネル4を覆うように構成したときの画像表示装置2のカバー類を締結するビスで、13はヒンジ機構を覆う化粧カバーである。
【0020】
図2は、画像表示装置2を閉じたときの撮像装置内部の構成を図8と同様に簡略化して示す水平断面図である。大略して撮像装置本体1、ヒンジ機構3、画像表示装置2の3つの部分から構成される。
ヒンジ機構3は、撮像装置本体1の筐体1aにビス22で、また、画像表示装置2にビス24でそれぞれ取り付けられている。
【0021】
画像表示装置2の内部には、表示パネル4と表示パネル4に画像を表示するための駆動基板6が設けられている。駆動基板6にはコネクタ8、10が実装され、コネクタ8は第1の接続線7の一端に、コネクタ10は第2の接続線11の一端にそれぞれ接続されている。このように、第1及び第2の接続線7,11は、着脱可能に駆動基板6に接続されている。第2の接続線11のもう一方の端はヒンジ機構3に固定された、回転検出スイッチ32を実装した基板に接続される。この接続はコネクタを用いず、半田付けによるため、着脱可能ではない。なお、回転検出スイッチ32は、180度回転時にのみオンするスイッチである必要はなく、回転量に応じた出力信号を供給可能な任意なセンサーであってよい。
【0022】
撮像装置本体1の内部には、基板9が固定され、基板9にはコネクタ12が実装されている。コネクタ12には、第1の接続線7の他端が接続されている。上述の通り、第1の接続線7の一端はヒンジ機構3を介して画像表示装置2内部のコネクタ8に接続されている。
【0023】
図2の信号の流れについて説明する。回転検出スイッチ32の信号は第2の接続線11からコネクタ10を経由して駆動基板6に与えられる。
撮像装置本体1で撮像して得られた画像信号は、撮像装置本体1で処理されたのち、基板9からコネクタ12、第1の接続線7、コネクタ8を介して駆動基板6に入力され、表示パネル4で表示される。
【0024】
本実施形態において、第1の接続線7には、撮像装置本体1から画像表示装置2への画像信号だけでなく、回転検出スイッチ32から第2の接続線11を通じてコネクタ10に供給される信号が、駆動基板6及びコネクタ8を介して供給される。つまり、回転検出スイッチ32の信号は、画像信号とは逆のルートをたどって撮像装置本体1の基板9に実装されたコネクタ12に供給され、撮像装置本体1の中で制御信号として処理される。
【0025】
なお、第1の接続線7は、画像信号を伝達するための線と、回転検出スイッチからの信号を伝達するための線とを含む複数の接続線から構成されていても良いし、同一の線で両方向の伝送を行ってもよい。いずれの場合も、駆動基板6は、回転検出スイッチ32からコネクタ10に供給される信号を、第1の接続線7に含まれる適切な接続線に接続されたコネクタ8の端子に供給することによって撮像装置本体に転送する転送手段として機能する。
【0026】
図3は、接続線の配線構造の具体例を説明するための斜視図である。
図3において、第1の接続線7はヒンジ機構3の開閉用の回転軸の中心、回転用の回転軸の中心部にそれぞれ構成された第1及び第2の貫通穴20,21を通るように配線されている。このような配線構造により、第1の接続線7は撮像装置本体1の内部に配置されたコネクタ12と、画像表示装置2内部のコネクタ8を接続している。
また、回転検出スイッチ32とコネクタ10とを接続する第2の接続線11は、貫通穴21を通るように配線されている。
【0027】
なお、第1の貫通穴20の内径は、第1の接続線7がヒンジ機構3から除去可能な大きさに設定される。同様に、第2の貫通穴21の内径は、第1及び第2の接続線7,11がヒンジ機構3から除去可能な大きさに設定される。
より具体的には、第1の貫通穴20の内径は、第1の接続線7(コネクタ8との接続部分を含む)が通り抜け可能な大きさに設定される。また、第2の貫通穴21の内径は、第1及び第2の接続線7、11が同時に通り抜け可能で、かつ、一方の接続線が貫通穴21を通っている状態で他方の接続線が通り抜け可能な大きさに設定される。
【0028】
(ヒンジ機構の交換手順)
次に、本実施形態に係る撮像装置においてヒンジ機構3を交換する場合の手順について、図4〜図6を用いて説明する。
図4(a)は画像表示装置2を開いた状態、図4(b)は化粧カバー13を外した状態、図5(a)は画像表示装置2とヒンジ機構3を取り外した状態、図5(b)は画像表示装置2の外側のカバー2aを取り外した状態をそれぞれ示す斜視図である。また、図6はヒンジ機構3に回転検出スイッチ32および第2の接続線11取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0029】
(1)図4(a)の状態でビス19を外し、化粧カバー13を取り外す。これにより、図4(b)の状態となる。
(2)図4(b)の状態で、撮像装置本体1の外側からヒンジ機構3を締結しているビス22を取り外して、ヒンジ機構3と画像表示装置2を撮像装置本体1から分離する。これにより、図5(a)の状態となる。なお、図5(a)では接続線の図示を省略している。
(3)図5(a)の状態で、ビス23,24を外して画像表示装置2の上カバー2aを外す。これにより、図5(b)の状態となる。
(4)図5(b)の状態で、コネクタ8,10から第1及び第2の接続線7,11を外し、ヒンジ機構3を画像表示装置2から紙面手前側にスライドさせて画像表示装置2から分離する。
(5)第1の接続線7を貫通穴21、20を通じてヒンジ機構3から取り除く。これにより、図6の状態となる。
(5)図6の状態で、第2の接続線11を貫通穴21を通し、回転検出スイッチ32が設けられた基板をヒンジ機構から取り外す。これにより、ヒンジ機構3のみが分離される。
(6)新しいヒンジ機構を上記の逆の手順で撮像装置本体1に組み込んで、交換作業を完了する。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、ヒンジ機構3内部に設けた回転検出スイッチ32からの接続線が画像表示装置2の内部に接続され、画像信号と同じ経路の配線によって撮像装置本体1へ供給される。そのため、ヒンジ機構3を交換する場合に、撮像装置本体1と画像表示装置2とを分離するだけですみ、撮像装置本体1のカバーユニットを外す必要がない。従って、ヒンジ機構3の交換作業に要する時間を短縮することができる。
【0031】
なお、上述の実施形態においては、撮像装置本体に開閉及び回転可能に取り付けられる可動部材が画像表示装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の構成は画像表示装置の取り付け構造に限定されない。少なくとも、電子機器における、機器本体との間で信号を通信可能な接続線が設けられ、回転量に応じた信号を機器本体に供給することが必要な任意の可動部材の取り付け構造に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と、
可動部材と、
前記可動部材を前記機器本体に対して開閉及び回転可能に取り付けるヒンジ機構であって、前記可動部材の回転に応じた信号を出力する回転検出手段を有するヒンジ機構とを有し、
前記機器本体から前記可動部材に対する信号を供給するために用いられる接続線を含む第1の接続線が、前記機器本体から、前記ヒンジ機構の開閉用の回転軸に設けられた第1の貫通穴および回転用の回転軸に設けられた第2の貫通穴を通じて、前記可動部材に着脱可能に接続され、
前記回転検出手段が出力する信号を供給する第2の接続線が、前記回転検出手段から前記ヒンジ機構の前記回転用の回転軸を通じて前記可動部材に着脱可能に接続され、
前記可動部材が、前記第2の接続線から供給される信号を、前記第1の接続線を通じて前記機器本体に転送する転送手段を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1の貫通穴の内径が、前記第1の接続線の一端を前記可動部材から外して前記ヒンジ機構から除去可能な大きさを有し、
前記第2の貫通穴の内径が、前記第1及び第2の接続線の一端を前記可動部材から外して前記ヒンジ機構から除去可能な大きさを有することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の接続線は、前記機器本体から前記可動部材に対する信号を供給するために用いられる接続線と、前記回転検出手段が出力する信号を供給するために用いられる接続線とをそれぞれ含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2の接続線は、一方の端が前記ヒンジ機構に固定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記可動部材は、画像表示部を有し、
前記第1の接続線は、前記画像表示部に表示させる画像を表す画像信号を、前記機器本体から前記可動部材に対して供給するために用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−44422(P2012−44422A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183394(P2010−183394)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】