説明

電子管と電子管の作製方法

【課題】 陰極用フィラメントや線状ダンパー等の端部を固定し、所定の高さに保持する部材に、Al線等のパッドを用いている蛍光発光管等の電子管において、フィラメント等をより高い位置に固定できるパッドを提供すること。
【解決手段】 Al線のAlパッド311は、平坦部311a,311bの間に湾曲したループ状部311cを形成してある。平坦部311a,311bは、Al薄膜211に超音波ボンディングしてある。図2(b),(c)のように、ループ状部311cにV字状の溝を形成し、その溝にフィラメントFの端部を載置し、図2(d)のように、超音波ボンディング用のツールTを駆動して、図2(e)のように、ループ状部311cにフィラメントFの端部を埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、蛍光表示管、プリンタ用蛍光発光管、平面CRT等の電子管と電子管の作製方法、特に陰極用フィラメント、線状ダンパー、線状グリッド等の線状部材を固定する金属パッドの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来蛍光発光管において、陰極用フィラメント、線状ダンパー、線状グリッド等の線状部材を所定の高さに保持して固定する部材として、Al線のパッドを用いた蛍光発光管が提案されている(特許文献1参照)。
図8、図9を用いて従来の蛍光発光管を説明する。
図8(a)は、蛍光発光管の断面図で、図8(b)のX2部分の矢印方向の断面を示し、図8(b)は、図8(a)のX1部分の矢印方向の平面図(断面図)である。
図8において、11は第1基板、12は第2基板、13〜16は側面板である。
【0003】
第1基板11には、カソード電極用のAl薄膜211,212、ダンパー電極用のAl薄膜221,222,231,232を形成してある。Al薄膜211,212には、陰極用のフィラメントFを所定の高さに保持しフィラメントFの端部を固定するAlパッド611,612を超音波ボンディングしてある。Al薄膜221,222には、ダンパーD1を所定の高さに保持しダンパーD1の端部を固定するAlパッド621,622を超音波ボンディングしてあり、Al薄膜231,232には、ダンパーD2を所定の高さに保持しダンパーD2の端部を固定するAlパッド631,632を超音波ボンディングしてある。
第2基板12には、アノードAとリブ(隔壁)の上部にグリッド電極を形成したグリッドGを形成してある。
フィラメントF、ダンパーD1,D2の端部は、Alパッド611,612,621,622,631,632に、後述するように、所定の高さに固定される。
【0004】
図9は、図8のフィラメントFとAlパッド611をAl薄膜211,212に超音波ボンディングする手順を説明する図である。なお図9は、図8における第1基板11、Al薄膜211、Alパッド611、フィラメントFの一部と超音波ボンディング用のツールTのみを示す。
図9(a)は、図8において、フィラメントFと並行する方向の断面図であり、図9(b)〜(e)は、フィラメントFの超音波ボンディング手順を示す図であり、図9(a)のX3部分の矢印方向の断面図である。
【0005】
フィラメントFは、図9(a)のように、Alパッド611と交差する方向に埋め込まれている。フィラメントFを、図9(a)のように埋め込むため、まず図9(b)のように、Alパッド611にV字状の溝を形成し、図9(c)のように、そのV字状の溝にフィラメントFを載置し、図9(d)のように、超音波ボンディング用のツールTを矢印方向に駆動する。フィラメントFは、図9(e)のように、Alパッド611に埋め込まれて固定される。同時にAlパッド611は、Al薄膜211に強固に超音波ボンディングされる。フィラメントFの高さは、図9(b)において形成するAlパッド611のV字状の溝の深さで決まる。
超音波ボンディングの手順は、ダンパーD1,D2についても同様である。
図9(f)は、フィラメントF、ダンパーD1,D2の高さの関係を示す。
図8の場合、ダンパーD1,D2は、フィラメントFの上下に張架してあり、ダンパーD1、フィラメントF、ダンパーD2の順に高くなる(高さHD1<HF<HD2)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−200087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来フィラメントやダンパーのAlパッドは、Al線を用い、そのAl線をAl薄膜に超音波ボンディングしてあるが、Al線は、直径が大きくなると超音波ボンディングが困難になる。現在通常使用されているAl線は、直径が500μm程度までのものである。そのため図8(f)のように、Al線を用いてフィラメントF、ダンパーD1,D2の高さを、3段階に規定することは難しく、フィラメントとダンパーが接触することがある。フィラメントとダンパーが接触すると、表示不良となる。
またフィラメントF、ダンパーD1,D2を固定するAlパッドは、夫々直径が異なるAl線を用いる方法も考えられるが、直径の大きいAl線は、超音波ボンディングが困難であり、かつAl線の直径が異なると、各直径に対応する超音波ボンディングツールを用意しなければならないから、製造コストが高くなる。
【0008】
従来の蛍光発光管は、図8のように、フィラメント、ダンパーとアノードを別々の基板に設けてある。即ちフィラメント、ダンパーは、第1基板に取付け、アノードは、第2基板に形成している。その理由は、フィラメントとアノードを同じ基板に設けた場合には、Alパッドの高さ制限により、フィラメントとアノードの間隔を大きくできないために、アノードの発光に輝度むらを生じる。フィラメントとアノードが近過ぎると、フィラメントから放射された電子は、均一に分散しない状態でアノードに到達するため、輝度むらが生じる。フィラメント、ダンパーとアノードを別々の基板に設けた場合には、フィラメントやダンパーの電極用のAl薄膜とアノード電極用のAl薄膜とを別工程で形成しなければならないから、Al薄膜の形成工程が多くなる。またそれらの電極用のAl薄膜を別々の基板に形成すると、それらの電極用のAl薄膜に接続するモジュールの構造が複雑になる。
【0009】
本願発明は、フィラメント、ダンパー等の線状部材を固定するAl等の金属パッドの前記問題点に鑑み、従来と同様にAl等の金属線を用いて、フィラメント、ダンパー等の線状部材を従来よりも高い位置に固定できる金属パッドと金属パッドの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の電子管は、容器と、その容器内に配設した線状部材と、その容器内に配設した電極とを備え、その線状部材を所定の高さに保持しその線状部材を固定する金属パッドを金属層にボンディングしてある電子管において、金属線からなりループ状部を形成してある金属パッドを備えていることを特徴とする。
請求項2に記載の電子管は、容器と、その容器内に配設した線状部材と、その容器内に配設した電極とを備え、その線状部材を所定の高さに保持しその線状部材を固定する金属パッドを金属層にボンディングしてある電子管において、金属線からなりループ状部を形成してある金属パッドと金属線からなりループ状部を形成してない金属パッドを備えていることを特徴とする。
請求項3に記載の電子管は、請求項1又は請求項2に記載の電子管において、前記線状部材は、前記ループ状部を形成してある金属パッドのループ状部に固定してあることを特徴とする。
請求項4に記載の電子管は、請求項1又は請求項2に記載の電子管において、前記線状部材は、前記ループ状部を形成してある金属パッドのループ状部とループ状部を形成してない部分に異なる高さで固定してあることを特徴とする。
請求項5に記載の電子管は、請求項2に記載の電子管において、前記線状部材は、前記ループ状部を形成してある金属パッドのループ状部と前記ループ状部を形成してない金属パッドに異なる高さで固定してあることを特徴とする。
請求項6に記載の電子管の作製方法は、基板と、その基板上に配設した金属層と、その基板上に配設した線状部材と、その線状部材を所定の高さに保持しその線状部材を固定する金属パッドを金属層に超音波ボンディングしてある電子管において、金属パッドを形成する金属線を金属層に超音波ボンディングし、その金属線を移動してループ状部を形成し、その金属線のループ状部以外の部分を超音波ボンディングして金属パッドのループ状部を形成することを特徴とする。
請求項7に記載の電子管の作製方法は、請求項6に記載の電子管の作製方法において、前記金属パッドのループ状部に前記線状部材を固定することを特徴とする。ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の金属パッドは、金属線にループ状部を形成してあるから、従来のループ状部のない単なる金属線の金属パッドよりも、フィラメントやダンパー等の線状部材を高い位置に取付けることができる。したがってフィラメントやダンパー等の高さの規定範囲が広くなり、それらの取付け作業が容易になる。またフィラメントの上下に配置したダンパーとフィラメントとの接触を低減できる。
【0012】
本願発明は、フィラメントを高い位置に取付けることができるから、フィラメントやダンパーを第2基板(アノード基板)に取付けることもできる。フィラメントやダンパーを、第2基板に取付けた場合には、フィラメントやダンパーの電極用の金属層をアノード電極用の金属層と同じ工程で形成できるから、工程数が少なくなる。またフィラメントやダンパーを取付ける金属層による反射光の影響を低減でき、かつフィラメントとアノードの間隔を高精度で規定できるから輝度むらも低減できる。
本願発明の金属パッドのループ状部は、金属線を金属層に超音波ボンディングするだけで形成できるから、ループ状部の形成に特別の加工装置や加工工程を要せずに、簡単に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図7により本願発明の実施例に係る電子管の一種である蛍光発光管について説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例】
【0014】
図1は、蛍光発光管の断面図と蛍光発光管の第1基板、第2基板の内面の平面図である。
図1(a)は、図1(c)のY21部分の矢印方向の平面図、図1(b)は、図1(c)のY22部分の矢印方向の平面図、図1(c)は、図1(a)のY1部分の矢印方向の断面図であり、図1(d)は、図1(b)のY3部分の矢印方向の断面図である。
図1において、11はガラス等の絶縁材の第1基板(フロント基板)、12はガラス等の絶縁材の第2基板(アノード基板)、13〜16はガラス等の絶縁材の側面板(側面部材)である。第1基板11、第2基板12、側面板13〜16は、気密容器(容器)を構成している。
【0015】
第1基板11には、カソード電極用のAl薄膜(金属層)211,212、ダンパー電極用のAl薄膜(金属層)221,222,231,232を形成してある。Al薄膜211,212には、陰極用のフィラメント(線状部材)Fを所定の高さに保持しフィラメントFの端部を固定するAlパッド(金属パッド)311,312を超音波ボンディングしてある。Al薄膜221,222には、ダンパー(線状部材)D1を所定の高さに保持しダンパーD1の端部を固定するAlパッド(金属パッド)321,322を超音波ボンディングしてあり、Al薄膜231,232には、ダンパー(線状部材)D2を所定の高さに保持しダンパーD2の端部を固定するAlパッド(金属パッド)331,332を超音波ボンディングしてある。
【0016】
第2基板12には、アノード電極A1と絶縁材からなるリブ(隔壁)G1を、両者が交差するように形成してある。リブG1の上面には、グリッド電極G2を形成し、アノード電極A1には、蛍光体A2を被着してある。蛍光体A2は、リブG1によって仕切られ、その仕切られた各蛍光体A2は、画素を構成している。なおアノード電極A1とグリッド電極G2の配線は省略してある。
【0017】
フィラメントFから放出された電子は、グリッド電極G2の制御電圧により制御されて蛍光体A2に到達し、その蛍光体を励起して発光する。
Alパッド311,312,321,322,331,332は、後述するように、Al線にループ状部を形成したものを用いている。
フィラメントF、ダンパーD1,D2の端部は、Alパッド311,312,321,322,331,332に、後述するように、所定の高さに固定される。
【0018】
ダンパーD1,D2は、フィラメントFの両側(上下)に対向配置し、フィラメントFに振動がないときはフィラメントFと接触しないように保持されている。外部の衝撃によりフィラメントFに振動が発生すると、フィラメントFは、ダンパーD1,D2に接触するため、その振動はダンパーD1,D2によって阻止され、フィラメントFがアノードAやグリッドGに接触するのを防止する。
【0019】
フィラメントF等が電圧を印加する線状電極の場合(フィラメントFは電圧を印加すると発熱する)、例えばフィラメントFがダンパーD1,D2に常時接触しているとフィラメントの熱がダンパーD1,D2に奪われ、その接触部分の電子放出が低下して表示品質を低下させるため、フィラメントFは、振動が発生したときにのみダンパーD1,D2に接触するようにダンパーD1,D2から離して配置してある。また電圧を印加しない線状部材の場合には、ダンパーと常時接触させることもできる。
【0020】
ダンパーD1,D2は、ダンパー毎にダンパー用の配線(図示せず)に接続され、その配線には、抵抗(図示せず)が接続されている。ダンパー用配線に接続した抵抗は、フィラメントFがダンパーD1又はD2に接触したとき、フィラメントFの電流がダンパーD1又はD2に流れるのを防止する。
ダンパーD1,D2の対は、フィラメントFの長手方向に沿って10〜20mm間隔で配置する。ダンパーD1,D2及びフィラメントFは、所定のテンションを付与するため少なくとも一部にコイル状部等のテンション付与部(バネ部)のあるものを用いる。
【0021】
第1基板と第2基板の板厚は、2.0〜0.9mm、両基板の間隔は、2.0〜0.9mmである。ダンパーD1,D2は、直径0.03mm(約2MG)のタングステン線(金属線)を用い、Alパッドは、直径0.1〜1.0mmのAlワイヤ(金属ワイヤ)を用いている。Al薄膜は、スパッタリング等によって形成し、その膜厚は、0.1μm〜数μm(10μm未満)にする。なおAl薄膜は、薄膜に代えて、膜厚10μm以上の厚膜を印刷法等によって形成してもよい。フィラメントFは、太さ0.4MG(直径14μm)のタングステン線やタングステン合金線からなる金属芯線に三元炭酸塩(Ba,Sr,Ca)等の電子放出材料をコーティングしたものを用いている。なおフィラメントFのタングステン線は、太さ0.3MG(直径10μm)〜7.53MG(直径50μm)の程度のものを使用できる。
【0022】
図2により本願発明の実施例に係るAlパッドとフィラメントの超音波ボンディングの手順を説明する。
図2(a)は、Alパッドの外観を示し、図2(b)〜(e)は、フィラメントの超音波ボンディングの手順を示す。ここでは、図1のAlパッド311を例に説明するが、他のAlパッドも同様である。
Alパッド311は、図2(a)のように中央に湾曲したループ状部311cを有し、両側に平坦部311a,311bを有している。ループ状部311cの頂部の高さは、平坦部311a,311bの上面よりも1mm程度高くできる。Alパッド311は、Alパッド311´のようにループ状部311cの凹部(谷部)311dを狭めることもできる。その場合、究極的には凹部(谷部)311dの内面を接触させて凹部(谷部)311dをなくしてもよい。
【0023】
Alパッド311は、まず図2(b)のように、平坦部311a,311bをAl薄膜211に超音波ボンディングし、ループ状部311cの頂部にV字状の溝を形成する。次に図2(c)のように、フィラメントFをループ状部311cのV字状の溝に載置し、図2(d)のように、超音波ボンディング用のツールTを矢印方向に駆動する。フィラメントFは、図2(e)のように、Alパッド311のループ状部311c内へ埋め込まれて固定される。
Alパッド311にループ状部311cを形成することにより、Alパッド311のループ状部311cの頂部は、Alパッド311のAl線の直径よりも高くなるから、フィラメントFを、ループ状部311cを有しないAlパッドの場合よりも高い位置に固定できる。
【0024】
図3によりAlパッドのループ状部を形成する手順を説明する。
まず図3(a)のように、Al薄膜211にAl線31を載置して平坦部311aをAl薄膜211に超音波ボンディングし、図3(b)のように、Al線31を平坦部311a側へ移動又はAl薄膜211の上に持ち上げるなどしてループ状部311cを形成し、平坦部311bをAl薄膜211に超音波ボンディングしてAlパッド311イを形成する。Al線31は、位置P1で切断し、Alパッド311イと同様にして図3(c)のように、Alパッド311ロを形成する。
【0025】
Alパッド311イ,Al線31は、位置P1で切断せずに、図3(d)のように、Alパッド311イ,311ロを所定間隔で連続して形成することもできる。
Alパッド311イ,311ロは、Al線31をAl薄膜211に超音波ボンディングする際に、Al線31を湾曲させるだけでループ状部も形成できるから、ループ状部の形成に特別の加工装置や加工工程を要せずに、ループ状部を簡単に形成できる。
なおAlパッド311イ,311ロは、図3のようにAl線31をAl薄膜211に超音波ボンディングして形成する代わりに、事前にAl線31を加工して、Alパッド311イ,311ロのようにループ状部311cを有するAlパッドを作製しておき、そのAlパッドの平坦部を、Al薄膜211に超音波ボンディングすることもできる。
【0026】
図4によりフィラメントF、ダンパーD1,D2の位置関係を説明する。
図4は、フィラメントFの上側にダンパーD2を配置し、下側にダンパーD1を配置した例である。
まず図4(a)〜(c)について説明する。フィラメントFは、図4(a)のように、Alパッド311のループ状部の下部に埋め込み、ダンパーD1は、図4(b)のように、Alパッド321の平坦部に埋め込み、ダンパーD2は、図4(c)のように、Alパッド331のループ状部の上部に埋め込んである。なお図4(b)の場合、ループ状部を形成してもよいがループ状は使用しないから形成してない。
【0027】
ここでフィラメントF、ダンパーD1,D2の高さHF,HD1,HD2について説明する。直径700μmのAl線を用いた場合、HD2は600μm、HFは、500μm,HD1は、400μm程度になる。なおAl線は、超音波ボンディングすると、Al線の高さは、直径よりも20%程度低くなる。
【0028】
図4(d),(e)の例は、フィラメントFは、図4(a)と同じであるが、ダンパーD1,D2は、図4(e)のように、1個のAlパッド321を共用している。即ちダンパーD1は、Alパッド321の平坦部を使用し、ダンパーD2は、Alパッド321のループ状部を使用している。
図4(f)〜(h)の例は、フィラメントFは、図4(f)のように、Alパッド311の平坦部の上部に埋め込み、ダンパーD1は、図4(g)のように、Alパッド321の平坦部の下部に埋め込み,ダンパーD2は、図4(h)のように、Alパッド331のループ状部に埋め込んである。
【0029】
図5は、Alパッドにフィラメントを超音波ボンディングする場合の変形例を示す。
図5(a)〜(c)は、フィラメントFをAlパッド311と並行する方向に固定する例である。図5(b),(c)は、図5(a)をY5方向から見た図である。
【0030】
まず図5(b)のように、Alパッド311のループ状部311cの頂部に、Alパッド311と並行する方向のV字状の溝を形成し、その溝にフィラメントFを載置して、超音波ボンディング用のツールTを矢印方向に駆動する。フィラメントFは、図5(c)のように、Alパッド311のループ状部311cに埋め込まれる。フィラメントFをAlパッド311と並行する方向に固定する場合には、フィラメントFの間隔を狭くすることができる。
図5(d),(e)は、図5(a)〜(c)と同様にフィラメントFをAlパッド311と並行する方向に固定する例であるが、図5(b)のように、Alパッド311のループ状部311cの頂部にV字状の溝を形成せずに、フィラメントを固定する例である。この場合には、図2(d)ように、フィラメントFをAlパッド311のループ状部311cの頂部に載置し、超音波ボンディング用のツールTを駆動して、図5(e)のように、Alパッド311のループ状部311cに埋め込む。
【0031】
図5(f)は、複数のAlパッド311イ、311ロを所定間隔で一体的に連続して形成し、各Alパッドのループ状部311cの頂部にフィラメントFを埋め込む例である。フィラメントFの埋め込み方は、前記例のようにパッド311イ、311ロの頂部311cにV字状の溝を形成する方法、その溝を形成しない方法のいずれであってもよい。
【0032】
図6は、フィラメントF、ダンパーD1,D2を第2基板(アノード基板)12に取付けた蛍光発光管の例である。図6(a)は、蛍光発光管のフィラメントFと並行する方向の断面図であり、図6(b)は、図6(a)のY3部分の矢印方向の断面図である。
図6の第2基板12は、フィラメントF、ダンパーD1,D2を配設した他は図1の第2基板12と同じである。図6のアノードAは、図1のアノード電極A1、蛍光体A2からなり、グリッドGは、図1のリブG1、グリッド電極G2からなる。
ダンパーD2は、Alパッド331のループ状部の上部(一番高い位置)に埋め込み、フィラメントFは、Alパッド311のループ状部の下部に埋め込み、ダンパーD1は、Alパッド321の平坦部に埋め込んである。アノードAの表面(蛍光体の表面)とダンパーD1の間隔は、230mm程度である。
【0033】
図6の場合には、ダンパーD2やフィラメントFは、ループ状部を有しない従来のAlパッドを用いる場合よりも高い位置に埋め込むことができる。したがってフィラメントFとアノードAの間隔は、ループ状部を有しない従来のAlパッドを用いる場合よりも大きくすることができるから、フィラメントから放射された電子は、均一に分散してアノードAに到達する。そのためアノードAの発光の輝度むらは、低減する。また図6の場合には、カソード電極用のAl薄膜211,212やダンパー電極用のAl薄膜も第2基板に形成するから、それらのAl薄膜は、アノード電極用のAl薄膜(図示せず)やグリッド電極用のAl薄膜(図示せず)と同じ工程で形成できる。
第1基板11に、カソード電極用のAl薄膜やダンパー電極用のAl薄膜を形成した場合、アノードAの発光を第1基板11側から観察するときは、それらのAl薄膜の反射光が目障りとなり、表示品質が低下するが、図6の場合には、その反射光の影響は小さくなる。
【0034】
フィラメントFを第1基板11に取付けた場合には、フィラメントFとアノードAの間隔(距離)は、第1基板11と第2基板12の間に介在する側面板(側面部材)の厚さによって規定しなければならないため、高精度で規定することは困難で、輝度むらを生じ易い。それに対して図6の場合には、フィラメントFとアノードAの間隔は、Alパッド311,312によって規定するから、その間隔を高精度で規定でき、輝度むらを低減できる。
【0035】
図7は、図6の第2基板の配線例を説明する図である。
図7(a)は、第2基板12の平面図、図7(b)は、図7(a)のY4部分の矢印方向の断面図である。
第2基板12には、ダンパー電極用のAl薄膜2311,2312、Al薄膜2311に接続するAl薄膜の配線W1、アノード電極等に接続するAl薄膜の配線W2、W3等を形成してある。Alパッド331は、平坦部をAl薄膜2311,2312に超音波ボンディングしてあるが、ループ状部は、第2基板12から離れているから、Alパッド331を配設する部分にも配線W2、W3等を形成することができる。
【0036】
前記実施例のAlパッドは、断面形状が円形または楕円形のものについて説明したが、四角形等の多角形、その他の形状であってもよい。
前記実施例は、AlパッドとAl薄膜について説明したが、Alに限らず、加工が容易で超音波ボンディングし易いCu、Au、Ag、Ni、Pt、V等の金属又はそれらの合金からなる金属パッドでよい。またAl薄膜等の金属薄膜は、薄膜に限らず厚膜等の金属層であってもよい。金属層は、絶縁材部品又は金属部品等の基材に形成したものであってもよいし、金属基材自体であってもよい。金属パッドと金属層は、超音波ボンディングの場合、異種の金属であってもよいが、同種の金属(例えばAlパッドとAl薄膜、Al合金パッドとAl合金薄膜)が好ましい。同種の金属の場合、特にAl合金が好ましい。
【0037】
前記実施例は、AlパッドをAl薄膜に超音波ボンディングする例について説明したが、従来慣用されているレーザ加熱等によるボンディングであってもよい。
前記実施例は、フィラメントやダンパーについて説明したが、それらに限らず、ワイヤーグリッド等の線状部材であればよい。
前記実施例の蛍光発光管は、フィラメントとアノードの間にグリッドを1個設けた3極管構造の蛍光発光管について説明したが、2極管構造やグリッドが2個以上の蛍光発光管であってもよい。また蛍光発光管は、蛍光表示管、プリンタ用蛍光発光管、平面CRT等の電子管でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本願発明の実施例に係る蛍光発光管の平面図と断面図である。
【図2】本願発明の実施例に係るAlパッドを説明する図である。
【図3】本願発明の実施例に係るAlパッドのループ状部を形成する手順を説明する図である。
【図4】本願発明の実施例に係るフィラメント、ダンパーの位置関係を説明する図である。
【図5】Alパッドにフィラメントを超音波ボンディングする場合の変形例を示す図である。
【図6】本願発明の実施例に係るフィラメント、ダンパーを第2基板に取付けた蛍光発光管の断面図である。
【図7】図6の第2基板の配線例を説明する図である。
【図8】従来の蛍光発光管の平面図と断面図である。
【図9】図8のフィラメント、AlパッドをAl薄膜に超音波ボンディングする手順を説明する図である
【符号の説明】
【0039】
11 第1基板
12 第2基板
13〜16 側面板(側面部材)
211,212,221,222,231,232 Al薄膜
311,311´,312,321,322,331,332 Alパッド
A アノード
A1 アノード電極
A2 蛍光体
D1,D2 ダンパー
F フィラメント
G グリッド
G1 リブ
G2 グリッド電極
T 超音波ボンディング用のツール
W1、W2、W3 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、その容器内に配設した線状部材と、その容器内に配設した電極とを備え、その線状部材を所定の高さに保持しその線状部材を固定する金属パッドを金属層にボンディングしてある電子管において、金属線からなりループ状部を形成してある金属パッドを備えていることを特徴とする電子管。
【請求項2】
容器と、その容器内に配設した線状部材と、その容器内に配設した電極とを備え、その線状部材を所定の高さに保持しその線状部材を固定する金属パッドを金属層にボンディングしてある電子管において、金属線からなりループ状部を形成してある金属パッドと金属線からなりループ状部を形成してない金属パッドを備えていることを特徴とする電子管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子管において、前記線状部材は、前記ループ状部を形成してある金属パッドのループ状部に固定してあることを特徴とする電子管。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子管において、前記線状部材は、前記ループ状部を形成してある金属パッドのループ状部とループ状部を形成してない部分に異なる高さで固定してあることを特徴とする電子管。
【請求項5】
請求項2に記載の電子管において、前記線状部材は、前記ループ状部を形成してある金属パッドのループ状部と前記ループ状部を形成してない金属パッドに異なる高さで固定してあることを特徴とする電子管。
【請求項6】
基板と、その基板上に配設した金属層と、その基板上に配設した線状部材と、その線状部材を所定の高さに保持しその線状部材を固定する金属パッドを金属層に超音波ボンディングしてある電子管において、金属パッドを形成する金属線を金属層に超音波ボンディングし、その金属線を移動してループ状部を形成し、その金属線のループ状部以外の部分を超音波ボンディングして金属パッドのループ状部を形成することを特徴とする電子管の作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子管の作製方法において、前記金属パッドのループ状部に前記線状部材を固定することを特徴とする電子管の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−202498(P2006−202498A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9682(P2005−9682)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【Fターム(参考)】