説明

電子線殺菌システム

【課題】容器2が結露することによって電子線による殺菌効果が低下することを防止する。
【解決手段】殺菌ボックス18内に容器搬送装置24が設けられ、外部から搬入された容器2を搬送して照射室30に導入し、電子線照射装置28からこの容器2に電子線を照射して殺菌を行う。電子線の照射により殺菌ボックス18内の温度が上昇するため、外部から搬入された常温の容器2が結露を生じてしまうおそれがあるが、殺菌ボックス18に空調手段84を設けて、内部温度を外部よりも低温にしているため、容器2の外面に結露が生じることがない

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌室内で容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線殺菌システムに係り、特に、殺菌室内に供給される容器が結露することを防止するようにした電子線殺菌システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
殺菌室内に供給された容器を容器搬送装置によって搬送している間に、電子線照射装置から電子線を照射して殺菌を行う容器殺菌装置は従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された発明は、クリーンルーム内に供給されたペットボトルを容器搬送装置によって搬送し、電子線殺菌部を通る過程で、スキャンホーン(電子線をペットボトルに照射する装置)から電子線がペットボトルに照射されて殺菌されるようになっている。
【0004】
電子線の照射を行う際に、電子線の照射部をチャンバーで取り囲んで外部と区画した場合には、電子線が照射されることによりチャンバー内部の温度が42〜43℃程度まで上昇する。一方、外部からこのチャンバー内に搬入される容器は、外部雰囲気が常温域(15〜25℃)であれば、同程度の温度になっているため、搬入された容器の外面に結露を生じるおそれがある。例えば、容器の温度が20℃であり、この容器が搬入されるチャンバー内の温度が前記42〜43℃であれば、チャンバー内の湿度が30%程度であっても、チャンバー内に搬入された容器に結露が発生してしまう。冬季のように容器の温度がもっと低い場合には、一層結露が生じやすくなる。
【特許文献1】特開2006−61558号公報(第6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように電子線を照射して殺菌する容器が結露していると、容器に付着している水分に電子線のエネルギーが吸収されて容器に対する殺菌力が低下してしまい、充分な殺菌が行われないおそれがあるという問題があった。前記特許文献1に記載された発明やその他の電子線殺菌装置では、容器の結露に関して対策を講じたものは存在しない。
【0006】
本発明は、殺菌室内を冷却することにより、この殺菌室内に搬入された容器に結露が生じることを防止するようにした電子線殺菌システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、殺菌室内に供給された容器に電子線照射装置から電子線を照射して殺菌する電子線殺菌システムにおいて、前記殺菌室内の温度を低下させる冷却手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載した発明は、前記殺菌室内の温度を監視する内部温度センサを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、請求項3に記載した発明は、前記殺菌室外の温度を監視する外部温度センサを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載した発明は、前記殺菌室内の温度を監視する内部温度センサと、殺菌室外の温度を監視する外部温度センサとを設け、これら温度センサの検出結果に基づいて冷却手段による低下温度を制御することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載した発明は、殺菌室と、この殺菌室内に設置された容器搬送手段と、殺菌室内の容器に電子線を照射する電子線照射手段とを備え、殺菌室内に供給された容器を容器搬送手段によって照射部まで搬送し、この照射部で電子線を照射する電子線殺菌システムにおいて、殺菌室内の空間を所定の状態に調整する空調手段を設け、殺菌室内の温度または湿度の少なくともいずれか一方を、所定の状態に調整することにより、殺菌室に供給され、容器搬送手段によって前記照射部へ搬送される容器の結露を防止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子線殺菌システムは、殺菌室内を冷却して温度を低下させておく、または、殺菌室内の空間を所定の状態に調整することにより、殺菌室内に搬入された容器に結露が生じることを防止できるので、容器に照射された電子線が水分に吸収されることなく確実に殺菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
電子線照射装置とこの電子線照射装置から電子線の照射を受ける殺菌室を備えており、殺菌室内に搬入した容器に電子線を照射して殺菌を行う装置であり、特に、電子線の照射で温度が上昇した殺菌室内を冷却する冷却手段を設ける、または、殺菌室内の空間を所定の状態に調整する空調手段を設けるという構成により、外部から搬入された容器が結露することを防止するという目的を達成する。
【実施例1】
【0014】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る電子線殺菌システムの全体の構成を示す平面図である。この実施例に係る電子線殺菌システムにおいて殺菌され液体等の内容物が充填される容器2はペットボトルであり、この容器2はエア搬送コンベヤ4によって連続的に搬送され、インフィードスクリュー6によって所定の間隔に切り離されつつ導入チャンバー内に搬入される。エア搬送コンベヤ4は、推進用ブロア4aによって外気を取り入れて容器2の後方側から吹き付けることによりこの容器を前進させる。
【0015】
前記導入チャンバーは2つのチャンバー(第1導入チャンバー8と第2導入チャンバー10)に分かれており、各チャンバー8、10内にそれぞれ、容器保持手段(図示せず)を備えたロータリホイール(第1ロータリホイール12と第2ロータリホイール14)が配置されている。これら導入チャンバー8、10内に搬入された容器2は、各導入チャンバー8、10内のロータリホイール12、14に順次受け渡されて回転搬送される。前記エア搬送コンベヤ4から第1導入チャンバー8内へ容器2が搬入される部分のチャンバー壁面には、容器2が通過可能な開口(図示せず)が形成され、また、第1ロータリホイール12から第2ロータリホイール14への受け渡し部の仕切壁16には、容器2の受け渡しが可能な開口(図示せず)が形成されている。
【0016】
第2導入チャンバー10に続いて、容器2を電子線の照射により殺菌する際に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製壁面から成る殺菌ボックス(殺菌室)18が設置されている。この殺菌ボックス18内は、供給ホイール20が配置されている入口側の供給室22と、供給ホイール20から受け取った容器2を搬送するとともに、反転区間Aにおいて上下を反転させる容器搬送装置24が設けられたメイン室26と、電子線照射装置28の前面側に位置し、搬送される容器2が電子線の照射を受ける照射室30と、この照射室30の出口側(図1の右側)に連続して設けられ、電子線の照射により殺菌された容器2を無菌状態を維持したまま下流側に送る排出室32に区画されている。
【0017】
殺菌ボックス18の壁面の、第2導入チャンバー10のロータリホイール14から供給室22内の供給ホイール20へ容器2の受け渡しを行う部分には、容器2が通過可能な開口(図示せず)が形成されている。第2ロータリホイール14から容器2を受け取った供給ホイール20は、メイン室26の容器搬送装置24に容器2を引き渡す。供給室22とメイン室26との間の仕切壁34にも、容器2の受け渡しが可能な開口(図示せず)が形成されている。メイン室26に設置された容器搬送装置24は、詳細な図示および説明は省略するが、多数の容器保持手段としての容器グリッパが連続して設けられた無端状の容器搬送体である容器保持帯24aと、この無端状の容器保持帯24aが掛け回されて容器グリッパを循環搬送させる移送回転体として2つのスプロケット24b、24cを備えている。
【0018】
各容器グリッパは、上下一対の容器保持部を有しており、同時に2個の容器2を保持して搬送するとともに、搬送方向に沿った軸線を中心に180°回転して反転することができる。そして、この容器搬送装置24は、容器グリッパが両スプロケット24bと24cの間で直線的に移送される直線経路と、各スプロケット24b、24cに沿って周回される周回経路から構成され、一方のスプロケット24cから他方のスプロケット24bへ至る直線経路に前記反転区間Aが設定され、容器2を1周搬送する間に1回反転させて容器2の上下を入れ替えるようになっている。一方のスプロケット24cの周回経路には、容器グリッパの移送方向における下流側に容器2の供給位置Bが設定され。上流側に排出位置Cが設定されており、一つの容器2は、供給位置Bで一方の容器保持部に保持されて2周搬送され、その間に2回上下が反転され、供給時の状態に戻った後、排出位置Cから排出室32の受け渡しホイール36に引き渡される。前記第1導入チャンバー8、第2導入チャンバー10、供給室22およびこのメイン室26内は、外部から殺菌前の容器2が導入され搬送されているので、外部よりも陽圧に管理されているが完全な無菌状態が維持されてはいない。
【0019】
鉛製の殺菌ボックス18に隣接して電子線照射装置28が配置されている。この電子線照射装置28は、容器2に電子線を照射する照射ユニット29を備えており、載置台38に載置されている。電子線照射装置28の構成は周知であるので図示および詳細な説明は省略するが、照射ユニット29内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにしてから、照射窓29aに取り付けたTi等の窓箔29bを通して大気中に取り出して被処理物(容器2)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う装置である。
【0020】
この実施例では、電子線照射装置28を載置した載置台38はレール38a上を移動可能になっており、殺菌ボックス18に対して接近、離隔させることができる。この電子線殺菌システムを運転する際には、載置台38を殺菌ボックス18に接近させ、照射ユニット29の照射窓29aを殺菌ボックス18の壁面に形成された開口18aに一致させて、これら両者18、29を連結する。殺菌ボックス18の内部に、前記照射ユニット29が連結された開口18aを囲むようにして照射室30が設けられている。前記容器搬送装置24はスプロケット24bから24cへ至る直線経路が照射室30を貫通しており、この貫通する部分に照射位置(照射部)Dが設定され、容器グリッパに保持された2本の容器2は、上下に垂直な状態でこの照射室30内を通過し、各容器2は、この照射位置Dで電子線照射装置28から電子線の照射を受けて殺菌される。
【0021】
照射室30の入口側と出口側の壁面には容器グリッパに保持された上下2本の容器2が通過可能な開口(図示せず)が形成されている。この照射室30の出口側の壁面に連続して排出室32が形成されている。容器搬送装置24の一方のスプロケット(図1の右側のスプロケット24c)は、排出室32の内部に入り込んでおり、容器グリッパに保持されて上下位置で1回ずつ2回の電子線照射を受けた容器2は、排出室32内で、容器グリッパの下方に位置する容器保持部からこの排出室32に設置された受け渡しホイール36に引き渡される。排出室32は、スプロケット24cの回転を妨げずに、照射室30の出口側の開口から受け渡しホイール36までの容器搬送装置24の搬送経路、および受け渡しホイール36の搬送経路を、メイン室26および供給室22から区画する仕切壁32aと、仕切壁32aと対向し受け渡しホイール36の上下空間から区画する仕切壁32b、および殺菌ボックス18の床面と天面とで取り囲まれている。この排出室32以降の各チャンバーは、電子線の照射により殺菌された容器2の処理を行うので、無菌状態が維持されている。なお、さらに照射室30の出口側の開口から受け渡しホイール36までの容器搬送装置24の搬送経路を、容器2の搬送を妨げないようにして上方の搬送空間と下方の搬送空間とに仕切壁を設けて区画し、受け渡しホイール36の搬送経路についても、容器2を受け取る容器搬送装置24の下方の搬送空間と連通させて、上方の搬送空間とは仕切壁により区画するようにしても良い。この場合には、下方の搬送空間と受け渡しホイール36の搬送経路を取り囲む空間が排出室32となる。
【0022】
殺菌ボックス18内の最も下流側に位置している排出室32に隣接して中間チャンバー40が設置されている。そして、この中間チャンバー40の下流側にフィラ(充填手段)42を収容したチャンバー(充填室)44が設置されている。中間チャンバー40内には、容器保持手段(図示せず)を備えたロータリホイール(ネックホイール)46が設けられており、このネックホイール46が前記排出室32内の受け渡しホイール36から受け取った容器2を、回転搬送した後、フィラ42が設置されたチャンバー44内の供給ホイール48に引き渡す。
【0023】
前記排出室32内の受け渡しホイール36は、中間リジェクトホイールを兼ねており、後に説明する各種センサ等の情報により容器2が正常に殺菌されていると判定された場合には、容器搬送装置24から受け取った容器2を次の中間チャンバー40のネックホイール46に引き渡して次の工程に送るが、電子線が照射されなかった場合や、温度センサ、結露センサ等により殺菌が不完全であると判定された場合には、中間チャンバー40のネックホイール46に引き渡さずに、殺菌ボックス18に隣接して配置されているリジェクト室41に排出する。
【0024】
前記殺菌ボックス18の排出室32から中間チャンバー40に排出された容器2は、フィラ42が設置されたチャンバー44内の入口側に配置されている供給ホイール48に受け渡された後、フィラ42に供給される。供給ホイール48から容器2を受け取ったフィラ42は、この容器2を保持して回転搬送する間に液体等の内容物の充填を行う。充填が終了した容器2は、フィラ42のチャンバー44に隣接して配置されているキャッパ54が設置されたチャンバー56内に搬入される。このキャッパ54が設置されたチャンバー56内の入口側には、フィラ42から容器2を受け取ってキャッパ54にこの容器2を引き渡す中間ホイール58が配置されている。また、キャッパ54の下流側には、キャッピングが終了した容器2を排出コンベヤ60に引き渡す排出ホイール62が設けられている。
【0025】
この電子線殺菌システムでは、エア搬送コンベヤ4によって搬送されてきた容器2が、殺菌ボックス18内で電子線照射装置28から電子線の照射を受けて殺菌された後、フィラ42で内容物が充填され、キャッパ54でキャッピングが行われ、その後、排出コンベヤ60によって排出されて次の工程に送られる。なお、殺菌ボックス18内の排出室32に配置された受け渡しホイール36から中間チャンバー40のロータリホイール46に容器2を受け渡す位置、中間チャンバー40内のロータリホイール46からフィラ42の設置されたチャンバー44内の供給ホイール48へ容器2を受け渡す位置、フィラ42からキャッパ54の設置されたチャンバー56内の中間ホイール58に受け渡す位置等のチャンバー壁面には、それぞれ容器2が通過可能な開口が形成されている。また、殺菌ボックス18の各開口にはシャッタが備えられており、連通する他のチャンバー内を洗浄する際に閉鎖して水滴や湿気の流入を防止するようになっている。
【0026】
前記第1の導入チャンバー8と、鉛製の殺菌ボックス18のメイン室26およびキャッパ54の設けられたチャンバー56には、それぞれ排気ブロア64、66、68が接続されて各チャンバー8、26、56内のエアを排出できるようになっている。また、中間チャンバー40と、フィラ42が設置されているチャンバー44には、それぞれ加圧エアの供給手段70、72が無菌フィルター74、76を介して接続されており、各チャンバー40、44内に無菌エアを供給できるようになっている。これら各排気ブロア64、66、68、加圧エア供給手段70、72およびこれらの排気量と給気量を制御する制御装置(図示せず)によって圧力制御手段が構成されており、この圧力制御手段によって、前記各チャンバー8、10、22、26、30、32、40、44、56内の圧力を制御できるようになっている。なお、図中の実線の矢印は、エア搬送コンベヤ4による容器2の搬入方向および排出コンベヤ60による容器2の排出方向を示し、破線の矢印は、排気ブロア64、66、68および加圧エア供給手段70、72等によるエアの流れ方向を示す。
【0027】
この実施例では、電子線の照射により容器2の殺菌を行う照射室30を含む殺菌ボックス18と、フィラ42が設置されたチャンバー44との間に配置さている中間チャンバー40内が最も高圧になるようにコントロールされている。そして、フィラ42の設置されているチャンバー44内は、中間チャンバー40と同圧かあるいはやや低い圧力になっている。このフィラ42が設置されたチャンバー44の下流側の、キャッパ54が設置されているチャンバー56は、フィラー42のチャンバー44よりも低圧になっている。一方、中間チャンバー40よりも上流側の、殺菌ボックス18内の排出室32は、中間チャンバー40よりも低圧であり、さらに、照射室30、メイン室26は排出室32よりも低圧になっている。また、メイン室26よりもさらに上流側の供給室22、第2導入チャンバー10および第1導入チャンバー8は、外部よりは陽圧であるが上流側に向かうほど次第に低い圧力になるように制御されている。
【0028】
前記殺菌ボックス18のメイン室26内にこの室内の温度を検出する内部温度センサ78が設置されている。また、この電子線殺菌システムの外部の温度を検出する外部温度センサ80が設置されている。この殺菌システムは全体が屋内に設置されており、殺菌システムの外部の温度は一般的に10〜30℃程度である。
【0029】
さらに、殺菌ボックス18内の照射室30の入口の直前に結露センサ82が設置されており、照射室30内で電子線が照射される前に容器2が結露した状態になっていないか確認する。容器2の外表面に結露が生じていると、付着している水分に電子線のエネルギーが吸収されてしまい完全な殺菌ができないので、この結露センサ82によって結露の有無を検出し、容器2に結露が生じていた場合には、前記受け渡しホイール(中間リジェクトホイール)36を介してその容器2をリジェクト室41へ排出する。なお、結露センサ82としては、例えば、電子線照射前の容器2に検査光を照射して、反射光や透過光の光量に基づき光学的に容器2の透明度を測定し、これに基づいて結露の発生を検出するもの等を使用することができる。また、容器2の結露を検出した時には警報を出力するようにすることもできる。
【0030】
殺菌ボックス18のメイン室26に空調手段84が接続されている。電子線の照射により殺菌される容器2が結露を生じないように、この空調手段84によってメイン室26内を冷却し、あるいは除湿を行うようになっている。また、殺菌ボックス18内の照射室30に、除湿手段86が接続されている。この除湿手段86によって除湿することにより、照射室30内の水分量を減少させて露点温度を例えば−40℃程度まで低下させる。
【0031】
この実施例では、殺菌ボックス18のメイン室26内と殺菌ボックス18の外部にそれぞれ温度センサ78、80が設けられており、これら温度センサ78、80からの検出値により、殺菌ボックス18の内部の温度が外部の温度よりも低くなるように前記空調手段84により冷風を供給して冷却する。また、空調手段84によって殺菌ボックス18内を乾燥、除湿して露点が外部温度以下となるように制御するようにしても良い。この場合には、殺菌ボックス18内の温度が外部温度以上でも、容器2の結露を防止することができる。あるいは、内部温度センサ78により監視して、予め設定した温度を維持するように空調手段84によって冷却するようにしても良い。また、前記内部温度センサ78による測定温度が設定温度等から外れた場合に、警報手段によって警報を出力するようにしても良い。
【0032】
以上の構成に係る電子線殺菌システムの作動について説明する。このシステムで殺菌、充填される容器2はペットボトルであり、エア搬送コンベヤ4の支持レール(図示せず)に、ネック部に形成されたフランジの下面側を支持され、推進用ブロア4aによって後方からエアを吹き付けられて搬送される。エア搬送コンベヤ4によって搬送されてきた容器2は、第1導入チャンバー8内に入り、インフィードスクリュー6によって一定の間隔に切り離されて、第1ロータリホイール12の容器保持手段に引き渡される。第1ロータリホイール12によって回転搬送された後、第2導入チャンバー10内の第2ロータリホイール14に引き渡される。外部のエア搬送コンベヤ4から第1導入チャンバー8内に搬入された時点では、容器2は外気温とほぼ同じ温度になっている。
【0033】
容器2は第2ロータリホイール14から鉛製の殺菌ボックス18の供給室22内に設置された供給ホイール20に引き渡され、供給ホイール20の容器保持手段に保持されて回転搬送されて、容器搬送装置24のグリッパに引き渡される。グリッパは上下二つの容器保持部を有しており、その下側の容器保持部に保持された容器2は、反転区間Aにおいてグリッパが反転することにより上方に移動して倒立した状態になる。倒立した容器グリッパがスプロケット24bの周囲を回転移動して照射室30に入る。照射室30には、その外側に配置されている電子線照射装置28から電子線が照射されるようになっており、搬送されているこの容器2は、照射ユニット29の窓箔29bの前方(照射区間D)を通過する間に、電子線が照射されて殺菌される。
【0034】
殺菌ボックス18内では、密閉された室内で電子線の照射による殺菌が行われているため、そのままの状態では内部の温度が42〜43℃まで上昇してしまう。一方、外部から導入チャンバー8、10を経て殺菌ボックス18内に搬入されてきた容器2は、外部雰囲気とほぼ同じ程度の温度である。従って、例えば外気温が20℃程度であれば容器2の温度も20℃程度であり、殺菌ボックス18内の温度と容器2の温度との差がこのように大きいと、殺菌ボックス18内の湿度が30パーセント程度であっても、容器2の外表面に結露が発生してしまう。特に冬季のように外気温が低い場合には、容器2の温度がさらに低く、一層結露が生じやすくなってしまう。そこで、この実施例では、空調手段84によって殺菌ボックス18内を冷却している。この実施例では、殺菌ボックス18の内部(メイン室26内)と外部とにそれぞれ温度センサ78、80が設置されており、これら温度センサ78、80により温度を検出して、殺菌ボックス18内の温度が外部の温度と同程度かそれよりも低くなるように冷却する。このように殺菌ボックス18内を冷却することにより容器2の外表面に結露が生じることを防止できる。その結果、従来のように結露により生じた水分のために殺菌効果が低下することがなく、容器2を確実に殺菌することができる。
【0035】
1回目の照射を終えて照射室30を抜け出した容器2は、排出室32内に入り、スプロケット24cの周囲を回転移動して再び供給ホイール20からの供給位置Bに戻る。前回この供給ホイール20から下側の容器保持部が受け取った容器2は、反転して上方に移動しており、下方に位置している他方の容器保持部が供給ホイール20から容器2を受け取る。その後、グリッパが反転区間Aで再度反転して、上下が入れ替わり、前回上方で電子線の照射を受けた容器2が下側に移動し、電子線の照射を受けていない面が容器搬送装置24の回転移動方向の外側を向く。2つの容器2を保持したグリッパが再び照射室30に入ると、すでに1回目の照射を受けた容器2は前回とは逆側から2回目の電子線の照射を受けて内外面全域が殺菌される。また、同時に他方の新たに保持された上方の容器2は1回目の照射を受ける。
【0036】
照射室30で2回目の電子線の照射を受けて内外面全体が殺菌された容器2は、排出室32内の排出位置Cで受け渡しホイール36に引き渡され、さらに、次の中間チャンバー40内のネックホイール46に引き渡されて鉛製の殺菌ボックス18から排出される。この実施例では、殺菌ボックス18内の温度の調節を行っているので、結露の発生するおそれはないが、その他の理由等により完全な殺菌が行われていない場合には、受け渡しホイール(中間リジェクトホイール)36によってその容器2をリジェクトチャンバー41に排出する。また、前記照射室30の直前に結露センサ82が設けられており、温度調整がうまく行われず容器2に結露が生じていた場合や、内部温度センサ78による測定温度が異常に高温であった場合には、この容器2は、リジェクトホイール36によってリジェクトされる。
【0037】
中間チャンバー40のネックホイール46から、次のフィラ42を収容したチャンバー44内に設置された供給ホイール48に容器2の受け渡しが行われ、その後、この供給ホイール48からフィラ42に供給される。フィラ42で回転搬送される間に内容物が充填された容器2は、中間ホイール58によってフィラ42から取り出され、次のキャッパ54が配置されたチャンバー56内に搬入される。中間ホイール58からキャッパ54に受け渡されてキャッピングが行われた後、排出ホイール62を介して排出コンベヤ60上に排出されて次の工程に送られる。
【0038】
以上述べたようにこの実施例では、空調手段84によって殺菌ボックス18内のメイン室26の空間の温度を、外部温度と同程度かそれよりも低くなるように冷却しているので、容器2に結露が生じるおそれがなく、電子線の照射によって確実に殺菌することができ、電子線殺菌システムの信頼性を向上させることができる。なお、結露を防止する方法は空調手段84により殺菌ボックス18内の温度を冷却することに限るものではなく、空調手段84によって除湿を行うようにしても良く、この場合には外部よりも高い温度であっても結露を防止することができる。要するに冷却および除湿を行い、あるいは冷却または除湿のいずれかを行うことにより、容器2の結露を防止することができればよい。また、殺菌ボックス18の内部と外部とにそれぞれ温度センサ78、80を配置したが、内部温度センサ78だけの検出結果に基づいて内部の温度管理を行うことにより結露を防止することもできる。また、外部温度センサ80だけを設置し、その検出結果に基づいて空調手段84を制御するようにしても良い。なお、内部温度センサ78は、実施例のように個別に設けたものに限らず、空調手段84の一部として備えられたものも含むものである。さらに、この実施例では、照射室30に除湿手段86を接続してこの照射室30内を除湿して露点を−40℃まで低下させており、容器2に結露が発生することを一層効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】電子線殺菌システムの全体の構成を示す平面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0040】
2 容器
18 殺菌室(殺菌ボックス)
24 容器搬送手段(容器搬送装置)
28 電子線照射装置
30 照射部(照射室)
78 内部温度センサ
80 外部温度センサ
84 冷却手段(空調手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌室内に供給された容器に電子線照射装置から電子線を照射して殺菌する電子線殺菌システムにおいて、
前記殺菌室内の温度を低下させる冷却手段を設けたことを特徴とする電子線殺菌装置。
【請求項2】
前記殺菌室内の温度を監視する内部温度センサを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子線殺菌システム。
【請求項3】
前記殺菌室外の温度を監視する外部温度センサを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子線殺菌システム。
【請求項4】
前記殺菌室内の温度を監視する内部温度センサと、殺菌室外の温度を監視する外部温度センサとを設け、これら温度センサの検出結果に基づいて冷却手段による低下温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の電子線殺菌システム。
【請求項5】
殺菌室と、この殺菌室内に設置された容器搬送手段と、殺菌室内の容器に電子線を照射する電子線照射手段とを備え、
殺菌室内に供給された容器を容器搬送手段によって照射部まで搬送し、この照射部で電子線を照射する電子線殺菌システムにおいて、
殺菌室内の空間を所定の状態に調整する空調手段を設け、殺菌室内の温度または湿度の少なくともいずれか一方を、所定の状態に調整することにより、殺菌室に供給され、容器搬送手段によって前記照射部へ搬送される容器の結露を防止することを特徴とする電子線殺菌システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−201434(P2008−201434A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38204(P2007−38204)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】