説明

電子線硬化型シリコーン剥離物質

非官能性のポリシロキサン及びシラノールで終端されたポリシロキサンの電子線硬化方法が記載される。生成された剥離物質も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第61/109,211号(2008年10月29日出願)及び同第61/109,213号(2008年10月29日出願)による優先権を主張し、これらの出願はその全体が引用により本出願に組み込まれる。
(発明の分野)
【0002】
本開示はシリコーン剥離物質、及びかかる剥離物質を組み込んだ剥離ライナーに関する。特に、本開示は、低分子量ポリシロキサン流体を含む電子線硬化型ポリシロキサンに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
簡潔に、一態様では、本開示はシリコーン剥離層を製造する方法を提供する。この方法は、ポリシロキサン物質を含む組成物を基材に塗布し、この組成物を電子線硬化してポリシロキサン物質に架橋させることを含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン物質は25℃での動粘性率が50,000センチストーク(0.05m/s)程度の、例えば、5,000〜50,000センチストーク(0.005〜0.05m/s)の1つ以上のポリシロキサン流体から本質的になる。いくつかの実施形態では、ポリシロキサン物質はポリジメチルシロキサンを含む。いくつかの実施形態では、組成物中の全てのポリシロキサン物質は非官能性のポリシロキサンである。いくつかの実施形態では、それぞれの非官能性のポリシロキサンは、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の、例えば、5,000〜50,000センチストーク(0.005〜0.05m/s)の動粘性率を有するポリシロキサン流体である。
【0005】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサン物質は、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の、例えば、5,000〜50,000センチストーク(0.005〜0.05m/s)の動粘性率を有する、シラノールで終端されたポリシロキサン流体を含む。いくつかの実施形態では、組成物中のそれぞれのポリシロキサン物質は、非官能性のポリシロキサン、シラノールで終端されたポリシロキサン、及びアルコキシで終端されたポリシロキサンよりなる群から独立して選択される。
【0006】
いくつかの実施形態では、組成物は実質的に触媒及び開始剤を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は5重量%程度の溶媒を含む。
【0007】
他の態様では、本開示は、本開示のさまざまな方法のいずれかに従って作製される、剥離剤コーティング基材を提供する。いくつかの実施形態では、電子線硬化型組成物は、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の、例えば、5,000〜50,000センチストーク(0.005〜0.05m/s)の動粘性率を有する、架橋されたポリシロキサン流体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は本質的にそれぞれが25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の、例えば、5,000〜50,000センチストーク(0.005〜0.05m/s)の動粘性率を有する1つ以上の非官能性のポリシロキサン流体からなるが、このポリシロキサン流体は架橋されている。いくつかの実施形態では、組成物は、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の、例えば、5,000〜50,000センチストーク(0.005〜0.05m/s)の動粘性率を有する、シラノールで終端された架橋されたポリシロキサン流体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は実質的に触媒及び開始剤を含まない。
【0008】
本開示の上記の概要は、本発明の各実施形態を説明することを意図したものではない。また、本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明から、また特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示のいくつかの実施形態に従う例示的な剥離ライナー。
【発明を実施するための形態】
【0010】
感圧接着剤(PSA)は重要な物質の種類である。一般的にPSAは軽い圧力(例えば、指圧)により基材に接着し、典型的には、その最大接着強度を達成するために、いかなる後硬化(例えば、熱又は照射)も要しない。例えば、アクリル、ゴム、及びシリコーンを主成分とする系などの、多種多様のPSA化学物質が入手可能である。
【0011】
PSAを含む接着剤は、しばしば自由フィルム(free films)、又は例えば、片面及び両面コーティングフィルムなどの支持フィルムとして使用される。しばしば剥離ライナーは、取り扱い(例えば、処理、出荷、保存、及び変換)中、及び使用(例えば、基材への塗布)中の接着層の保護物に用いられている。剥離ライナーは、典型的には剥離物質によりコーティングされた基材を含む。使用時には、所望の目的の基材に接着できるように、剥離ライナーは接着層から取り除かれ、接着層を露出させる。かかる適用においては、剥離ライナーは再使用可能であるが、高い頻度で廃棄される。いくつかの適用においては、接着品目は自己巻取り型であってよい。かかる場合には、基材はその一方の側面が剥離物質によりコーティングされ、基材の他の側面には接着剤が結合されている。品目がそれ自身で巻上げる(すなわち、自己巻取り型)の場合、露出された接着剤表面は、基材の剥離剤コーティングされた側面と接触する。使用時には、このロールは巻取られず、接着剤は所望の目的基材に塗布される。
【0012】
架橋されたシリコーンは剥離物質として使用されている。従来のシリコーン剥離物質は、特定の種類の触媒を用いる熱処理により硬化される。例えば、白金触媒が付加硬化系に使用されており、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)は水素引き抜き硬化系に使用されており、スズ触媒は湿度/縮合硬化系に使用されている。
【0013】
一般的に、これらのアプローチでは、シロキサン主鎖に結合した反応性官能基を必要とする。例えば、白金により触媒される系である付加硬化は、一般的にケイ素に結合したビニル官能基とケイ素に結合した水素との間でのヒドロシリル化反応に依存する。一般に、触媒を使用せずに硬化できるシリコーン剥離系を有することが望ましいことがある。適正な硬化のために、特定の官能基を必要としない剥離コーティングを提供することも有用である。
【0014】
UV硬化型及び電子線硬化型シリコーン剥離物質が使用されている。これらの系は、触媒及び特定の官能基の使用を必要とする。特に、アクリレート−官能性及びエポキシ−官能性シリコーンは触媒存在下で照射により硬化される。
【0015】
本発明者らは、かかる剥離層を含む剥離層及び剥離物品を製造する新方法を発見した。一般的に、この方法は、架橋されたポリシロキサンのネットワークを形成するために、電子線硬化型シリコーン物質を含む。一般的に、この方法は非官能性シリコーン物質と共に使用し得る。官能性シリコーン物質も使用し得るが、典型的には、特定の官能基は架橋反応に含まれることはなく、これらの官能基の性質及び存在は決定的に重要ではない。
【0016】
硬化性シリコーン物質のための以前の方法とは反対に、本開示の方法は触媒又は開始剤の使用を必要としない。したがって、本開示の方法は、かかる触媒又は開始剤を「実質的に含まない」組成物の硬化に使用し得る。本明細書において用いられる場合には、組成物が「有効量の」触媒又は開始剤を含まないときに、組成物は「触媒及び開始剤を実質的に含まない」。よく理解されるように、「有効量」の触媒又は開始剤とは、触媒又は開始剤の種類、硬化性物質の組成、及び硬化方法(例えば、熱硬化、UV−硬化など)を含むさまざまな因子に依存する。いくつかの実施形態では、同一硬化条件下での同一組成物の触媒又は開始剤の非存在下での硬化時間に比較して、触媒又は開始剤が、組成物の硬化時間を少なくとも10%低下させない場合には、特定の触媒又は開始剤の「有効量」は存在しない。
【0017】
一般的に、本開示において有用なシリコーン物質は、ポリシロキサン、すなわち、ポリシロキサン主鎖を含む物質である。いくつかの実施形態では、非官能化されたシリコーン物質は、脂肪族及び/又は芳香族置換基を持つシロキサン主鎖を図示する以下の式で表される直鎖状物質である:
【0018】
【化1】


式中、R1、R2、R3、及びR4は、アルキル基及びアリール基よりなる群から独立して選択され、それぞれのR5はアルキル基であり、n及びmは整数であり、少なくとも1つのm又はnは0ではない。いくつかの実施形態では、1つ以上のアルキル基又はアリール基はハロゲン置換基、例えばフッ素を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のアルキル基は−CHCHであってよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、R5はメチル基であり、すなわち非官能化されたポリシロキサン物質はトリメチルシロキシ基により終端される。いくつかの実施形態では、R1及びR2はアルキル基であり、nはゼロであり、すなわち、この物質は、ポリ(ジアルキルシロキサン)である。いくつかの実施形態では、このアルキル基はメチル基、すなわち、ポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、R2はアリール基であり、nはゼロであり、すなわち、この物質はポリ(アルキルアリールシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1はメチル基であり、R2はフェニル基であり、すなわち、この物質はポリ(メチルフェニルシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1及びR2はアルキル基であり、R3及びR4はアリール基であり、すなわち、この物質はポリ(ジアルキルジアリールシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1及びR2はメチル基であり、R3及びR4はフェニル基であり、すなわち、この物質はポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、非官能化されたポリシロキサン物質は分枝してよい。例えば、1つ以上のR1、R2、R3、及び/又はR4基はアルキル又はアリール置換基(ハロゲン化されたアルキル又はアリールを含む)及び終端のR5基を持つ直鎖状又は分枝状シロキサンであってよい。
【0021】
本明細書において用いられる場合、「非官能性基」とは、炭素、水素、及びいくつかの実施形態では、ハロゲン(例えば、フッ素)原子よりなるアルキル基又はアリール基のいずれかである。本明細書において用いられる、「非官能化されたポリシロキサン物質」は、そのR1、R2、R3、R4、及びR5基が非官能性基であるものである。
【0022】
一般的に、官能性シリコーン系は原料物質のポリシロキサン主鎖に結合した特定の反応性基(例えば、ヒドロキシル基及びアルコキシ基)を含む。本明細書において用いられる、「官能化されたポリシロキサン物質」は、式2中の少なくとも1つのR基が官能基であるものである。
【0023】
【化2】

【0024】
いくつかの実施形態では、官能性ポリシロキサン物質は少なくとも2つのR基が官能基であるものである。一般的に、式2のR基は独立して選択され得る。いくつかの実施形態では、全ての官能基が水酸基及び/又はアルコキシ基である。いくつかの実施形態では、官能性ポリシロキサンは、シラノールで終端されたポリシロキサン、例えば、シラノールで終端されたポリジメチルシロキサンである。いくつかの実施形態では、官能性シリコーンはアルコキシで終端されたポリジメチルシロキサン、例えば、トリメチルシロキシで終端されたポリジメチルシロキサンである。
【0025】
官能性R基に加えて、R基は非官能性基、例えば、ハロゲン化された(例えば、フッ素化された)アルキル基及びアリール基を含むアルキル基又はアリール基であってよい。いくつかの実施形態では、官能化されたポリシロキサン物質は分枝してよい。例えば、1つ以上のR基が官能性及び/又は非官能性置換基を持つ直鎖状又は分枝状シロキサンであってよい。
【0026】
一般的にシリコーン物質は、油、流体、粘性物質、エラストマー、又は樹脂、例えば、砕けやすい固体樹脂であってよい。一般的に、より低分子量、より低粘度の物質が、流体又は油と称される一方、より高分子量、より高粘度の物質が粘性物質と称されるが、これらの用語の間に厳格な区別はない。エラストマー及び樹脂は、粘性物質よりも更に高い分子量を有し、典型的には流動しない。本明細書において用いられる、用語「流体」及び「油」とは、25℃で1,000,000mPa・sec程度(例えば、600,000mPa・sec未満)の動的粘度を有する物質を称する一方、25℃で1,000,000mPa・secより大きい(例えば、少なくとも10,000,000mPa・sec)の動的粘度を有する物質は「粘性物質」と称される。
【0027】
一般的に剥離物質に望まれる薄い厚さを得るために、基材にコーティング又は塗布するため、しばしば高分子量物質を溶媒で希釈することが必要である。いくつかの実施形態では、25℃で200,000mPa・sec程度、100,000mPa・sec程度、又は更に50,000mPa・sec程度の動的粘度を有するものを含む低分子量シリコーン油又は流体を使用することが好適である。
【0028】
いくつかの実施形態では、例えば、25℃で50,000センチストーク(cSt)(0.05m/s)程度の、例えば、40,000cSt(0.04m/s)程度の、又は更に20,000cSt(0.02m/s)程度の動粘性率を有するものを含む、通常の無溶媒コーティング作業に適合する物質を用いることが有用であり得る。いくつかの実施形態では、25℃で少なくとも5,000センチストーク(cSt)、例えば、少なくとも10,000cSt(0.01m/s)、又は更に少なくとも15,000cSt(1.015m/s)の動粘性率を有する、少なくとも1つのシリコーン物質を含む、シリコーン物質の組み合わせを使用することが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、25℃で1000(0.01)〜50,000cSt(0.05m/s)、例えば、5,000(0.005)〜50,000cSt(0.05m/s)、又は更に10,000(0.01)〜50,000cSt(0.05m/s)である動粘性率を有するシリコーン物質を使用することが望ましいことがある。
【実施例】
【0029】
さまざまな電子線硬化型剥離コーティングに関連する剥離及び再接着特性の評価には、商業的に入手可能なものが使用された。接着剤(ADH)は架橋されたアクリル共重合体であった。ADHは、2ミル(51マイクロメートル)の厚さの3M Companyよりの、商品名467MPの転写テープとして入手可能である。
【0030】
非官能性シリコーン物質。以下の例は、非官能性シリコーン物質の電子線硬化により調製された。30重量%の固体溶液を製造するために、DC−200シリコーン流体(30,000cSt(0.30m/s)、Dow Chemical Companyより)をヘプタンに溶解させることによりコーティング物質が調製された。このコーティングは平坦な堅い刃により10psi(70kPa)の圧力で多層コーティングクラフト紙基材(Jencoatよりの58# PCK)に塗布された。サンプルは室温で乾燥された。生成されたサンプルは4インチ×6インチのサンプル当たり0.14〜0.20グレイン(0.6〜0.8グラム/平方メートル)の乾燥コーティング重量を有していた。
【0031】
非官能性のシリコーン物質は以下の手順に従って電子線硬化された。サンプルは、さまざまな線量水準において4.4ジュール(280keV)の加速電圧を使用して硬化された。
【0032】
電子線硬化手順。電子線硬化は、モデルCB−300電子線発生装置(Energy Sciences,Inc.(マサチューセッツ州ウイルミントン(Wilmington)より入手可能)により遂行された。一般的に、支持フィルム(例えば、ポリエステルテレフタレート支持フィルム)を、装置の不活性化されたチャンバを通過させる。非硬化物質のサンプルは支持フィルムに取り付けられ、約20フィート/min(6.1メートル/min)の固定された速度で不活性化されたチェンバ中を搬送され、電子線照射に曝露された。18Mrad未満の電子線線量に対しては、電子線チャンバの単回通過で十分であった。より高い線量、例えば、18及び20Mradを得るためには、2回の通過が必要であった。
【0033】
「乾式積層化(Dry Lamination)」及び「湿式キャスト(Wet-Cast)」手順の両者を使用して接着剤が硬化された剥離表面に塗布された。乾式積層のサンプルに対しては、50マイクロメートル(2.0ミル)の下塗りがされたPETフィルム(三菱よりの製品3SAB)を転写接着剤に接着し、引き剥がして試験サンプルを作製した。次いで2kgのゴムローラーを2回通過させて、テープの接着剤側がそれぞれのサンプルの硬化されたシリコーンコーティング上に乾式積層された。湿式キャストのサンプルに対しては、接着剤が直接硬化されたシリコーンコーティング上にキャストされ、紫外線照射により硬化された。2.0ミル(50マイクロメートル)の下塗りがされたPETフィルム(三菱よりの製品3SAB)は、次いで試験サンプルを形成するために、硬化された接着剤に積層された。
【0034】
剥離試験手順。PETにより支持されたテープのサンプルが、180°の角度及び90インチ/min(230cm/min)の速度でライナーからはがされた。マサチューセッツ州アコード(Accord)のIMASS,Inc.から入手したIMassモデルSP2000剥離試験機が剥離力の記録のために用いられた。
【0035】
再接着試験手順。再接着の数値を評価するために、剥離試験法を使用してPETで支持された試験サンプルをライナーから引き剥がし、次いでテープを清浄なステンレス鋼のパネル表面に貼り付けた。24インチ/min(61cm/min)の速度で2kgのゴムローラーを2回(前進及び後退)通過させて、テープのサンプルをパネルに対して巻き下ろした。再接着の値は、12インチ/分(30.5cm/min)の速度にて、180°の角度で、鋼表面からテープを引き剥がすのに必要な力の測定値とした。IMassモデルSP2000剥離試験機を用いて剥離力を記録した。
【0036】
乾式積層化されたサンプルに対する電子線の線量、ライナーの剥離性及び再接着が表1Aにまとめられている。同様に、湿式キャストされたサンプルの電子線の線量、ライナーの剥離性及び再接着が表1Bにまとめられている。剥離性及び再接着は、初期、及び剥離コーティングに対して接着剤を90℃及び90%相対湿度(90/90)において5日間保存後に測定された。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
官能性シリコーン物質。以下のサンプルは、シラノールで終端された官能性シリコーン流体の電子線硬化により調製された。シラノールで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−S42、18,000cSt(0.18m/s)、Gelestより)が0.71ジュール/平方センチメートルで、窒素雰囲気下にコロナ処理された、4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナーに、平坦な堅い刃により1.3〜2.3グラム/平方メートルのコーティング重量で塗布された。コーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧を用い、不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線硬化された。
【0040】
アクリルフォームテープ(PT1100、3M Companyより入手可能)を用いて、剥離性、及び室温で3日間(3d−RT)保存後、及び70℃で3日間(3d−HT)保存後のステンレス鋼に対する再接着を評価した。接着剤はアクリル/ゴムのブレンドであった。剥離性及び再接着は乾式積層処理を用いて試験された。最初に、商品のPT1100アクリルフォームテープ上のライナーが剥離され、その剥離力が記録された。比較の目的で、これの「提供されたままの」物質としての、ステンレス鋼への再接着も測定された。
【0041】
次に、ライナーをPT1100アクリルフォームテープの追加サンプルから剥離し、露出された接着剤が試験サンプルの電子線硬化されたシリコーン表面に乾式積層化された。サンプルは調整され、剥離力及び再接着力が測定された。結果を表2に要約する。
【0042】
【表3】


)標準製品ライナーであり、電子線硬化されたシリコーンではない。
【0043】
以下のサンプルは、アルコキシで終端された官能性シリコーン流体の電子線硬化により調製された。トリメチルシロキシで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−T21、100cSt(0.0001m/s)、Gelestより)を、窒素雰囲気下に0.71ジュール/平方センチメートルでコロナ処理された、4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナー上に、平坦な堅い刃により0.70グラム/平方メートルでコーティングした。コーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧を使用して不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線硬化された。
【0044】
アクリルフォームテープ(EX4011、3M Companyより入手可能)が、剥離性、及び室温で7日間(7d−RT)保存後のステンレス鋼に対する再接着の評価に用いられた。接着剤はゴム/アクリルのブレンドであった。剥離性及び再接着は乾式積層処理を使用して試験された。最初に、商品のEX4011アクリルフォームテープ上のライナーが剥離され、その剥離力が記録された。比較の目的で、これの「提供されたままの」物質としての、ステンレス鋼への再接着も測定された。
【0045】
次に、ライナーをEX4011アクリルフォームテープの追加サンプルから剥離し、露出された接着剤が試験サンプルの電子線硬化されたシリコーン表面に乾式積層化された。サンプルは調整され、剥離力及び再接着力が測定された。結果は、表3にまとめられている。
【0046】
【表4】


)標準製品ライナーであり、電子線硬化されたシリコーンではない。
【0047】
このトリメチルシロキシで終端されたポリジメチルシロキサンでは、いくらかの硬化があったが、低い再接着値は系の硬化不足を示している。
【0048】
EX4011アクリルフォームテープ接着剤は、シラノールで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−S42、18,000cSt(0.018m/s)、Gelestより)が平坦な堅い刃により1.8グラム/平方メートルのコーティング重量でコーティングされた、窒素雰囲気下に0.71ジュール/平方センチメートルでコロナ処理された4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナーのサンプルにも乾式積層化された。コーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧、及び16Mradを使用して不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線硬化された。7d−RT剥離は221g/2.54cmであった。7d−RT再接着は4560gm/2.54cmであった。
【0049】
他の官能基。
【0050】
以下の比較例は、ハイドライド官能性シリコーン流体の電子線硬化の試みにより調製された。ハイドライドで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−H25、500cSt(0.0005m/s)、Gelestより)が、窒素雰囲気下に0.71ジュール/平方センチメートルでコロナ処理された4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナーに、平坦な堅い刃によりコーティングされた。コーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧及び16Mradの線量を用いて不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線照射に曝露された。サンプルは硬化しなかった。
【0051】
以下の比較例は、ビニル官能性シリコーン流体の電子線硬化の試みにより調製された。ビニルで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−V42、20,000cSt(0.02m/s)、Gelestより)が、窒素雰囲気下に0.71ジュール/平方センチメートルでコロナ処理された4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナーに、平坦な堅い刃によりコーティングされた。コーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧及び16Mradの線量を使用して不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線照射に曝露された。サンプルは硬化したが、下層のポリエチレンのライナーには固着しなかった。硬化したシロキサンは、ライナーからこすり落とすことができた。
【0052】
以下の比較例は、カルボキシアルキル官能性シリコーン流体の電子線硬化の試みにより調製された。カルボキシアルキルで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−B31、800〜1200cSt(0.008〜0.0012m/s)、Gelestより)が、窒素雰囲気下に0.71ジュール/平方センチメートルでコロナ処理された4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナーに、平坦な堅い刃によりコーティングされた。コーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧及び16Mradの線量を使用して不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線照射に曝露された。サンプルは硬化しなかった。
【0053】
低動粘性率サンプル。以下の比較例は、低粘度、低分子量のシラノール官能性シリコーン流体の電子線硬化の試みにより調製された。シラノールで終端されたポリジメチルシロキサン(DMS−S12、20cSt(0.00002m/s)、Gelestより)が、窒素雰囲気下に0.71ジュール/平方センチメートルでコロナ処理された4.5ミル(115マイクロメートル)の厚さのポリエチレンのライナーに、平坦な堅い刃によりコーティングされたコーティングされたサンプルは、4.005ジュール(250keV)の加速電圧及び16Mradの線量を使用して不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)下で電子線照射に曝露された。サンプルは硬化しなかった。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態に従う例示的剥離ライナーが図1に図示されている。剥離ライナー100は、1つの主表面に付随する電子線硬化されたシリコーン剥離コーティング130を有する基材120を含む。いくつかの実施形態では、第二の電子線硬化された剥離層が、第一の電子線硬化されたシリコーン剥離コーティングの反対側の基材の第二の主表面に付随することができる。
【0055】
本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン剥離層を作製する方法であって、1つ以上のポリシロキサン物質を基材上に含む組成物を塗布することと、前記組成物を電子線硬化して前記ポリシロキサン物質を架橋させることと、を含み、前記ポリシロキサン物質が非官能性のポリシロキサン、シラノールで終端されたポリシロキサン、及びアルコキシで終端されたポリシロキサンよりなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記ポリシロキサン物質が、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の動粘性率を有する、本質的に1つ以上のポリシロキサン流体よりなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシロキサン物質がポリジメチルシロキサンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物中の全てのポリシロキサン物質が非官能性のポリシロキサンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
それぞれの非官能性のポリシロキサンが、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の動粘性率を有するポリシロキサン流体である、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサン物質が、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の動粘性率を有する、シラノールで終端された及び/又はアルコキシで終端されたポリシロキサン流体を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物中のそれぞれのポリシロキサンが、非官能性のポリシロキサン、シラノールで終端されたポリシロキサン、及びアルコキシで終端されたポリシロキサンよりなる群から独立して選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が実質的に触媒又は開始剤を含まない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が5重量%程度の溶媒を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に従って作製された、剥離剤コーティング基材。
【請求項11】
前記電子線硬化型組成物が、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の動粘性率を有する、架橋されたポリシロキサン流体を含む、電子線硬化型組成物を含む、剥離コーティング。
【請求項12】
前記組成物が、それぞれ25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の動粘性率を有する、本質的に1つ以上の非官能性のポリシロキサン流体よりなり、前記ポリシロキサン流体が架橋されている、請求項11に記載の剥離コーティング。
【請求項13】
前記組成物が、25℃で50,000センチストーク(0.05m/s)程度の動粘性率を有する、シラノールで終端された架橋されたポリシロキサン流体及び/又はアルコキシで終端された架橋されたポリシロキサンを含む、請求項11に記載の剥離コーティング。
【請求項14】
前記組成物が実質的に触媒及び開始剤を含まない、請求項11〜13のいずれか一項に記載の剥離コーティング。

【図1】
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【公表番号】特表2012−507609(P2012−507609A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534778(P2011−534778)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062608
【国際公開番号】WO2010/056546
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】