説明

電子血圧計、測定部位周囲長推定方法および血圧測定方法

【課題】カフ帯や当該カフ帯に対する加圧手段等に複雑な機構を設けることなく、測定部位周囲長を精度良く求めることができる電子血圧計を提供する。
【解決手段】測定部位に囲繞されるカフ帯20と、前記カフ帯20に内包される流体袋201と、前記流体袋201内を加圧する加圧手段102,111と、前記流体袋201内を減圧する電動減圧弁103と、前記電動減圧弁103の駆動エネルギー量を調整する電動減圧弁駆動回路112と、前記電動減圧弁駆動回路112が調整する駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求める周囲長推定手段124とを備えて、電子血圧計を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非観血式の血圧測定を行う電子血圧計、並びに、非観血式の血圧測定に適用する測定部位周囲長推定方法および血圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非観血式の血圧測定は、被験者または被験動物の腕、手首その他の動脈通過部位(以下、単に「測定部位」という。)にカフ帯を囲繞して行う。このとき、測定部位に囲繞するカフ帯は、当該測定部位の周囲長に適した幅(カフ帯の巻き方向と垂直方向の大きさ)のものを使うことが望ましい。なぜならば、適正でない幅のカフ帯を使った場合、カフ幅が最適値に対して狭いと血圧値の測定結果が高く観測され、逆に広いと低く観測されることが知られているからである。
ところが、全ての被験者等に対して、それぞれの測定部位の周囲長に適した幅のカフ帯を用意することは、理想的ではあるが現実的には非常に困難である。そのため、通常は、例えば図11に示すように、測定部位の周囲長を複数の範囲(図中の「適応上腕周囲長範囲」参照)に区分けして、それぞれの区分における略中心の周囲長(図中の「適応中心腕周囲長」参照)に適した幅(図中の「カフ幅W」参照)のカフ帯を、当該区分の周囲長の被験者の血圧を計測する際のカフ帯として使用することを推奨している。つまり、ある一つの「カフ幅W」のカフ帯での血圧値測定誤差が許容範囲内に収まる周囲長の範囲を当該カフ帯の「適応上腕周囲長範囲」とし、複数の「適応上腕周囲長範囲」の組み合わせによって予め想定される全ての被験者等の測定部位の周囲長範囲をカバーできるように当該複数の「カフ幅W」のカフ帯を用意しておくのである。
【0003】
ただし、上述したように、複数サイズのカフ帯を用意し、その中のいずれかを選択的に使用した場合であっても、厳密には、区分けされた各適応上腕周囲長範囲内において測定部位の周囲長が適応中心腕周囲長から離れるのに従い、血圧値の測定結果に誤差が生じていると考えられる。このことから、近年では、測定部位の周囲長とカフ帯の幅との関係から生じる測定誤差を、自動的に補正する試みがなされている。
具体的には、例えば、カフ帯が有するガス袋内を加圧する加圧ポンプの吐出量を測定し、当該ガス袋内の圧力と測定された吐出量との関係に基づいて測定部位周囲長を算出し、算出された測定部位周囲長に基づいて血圧測定結果を補正することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、測定部位の周囲長については、例えば、カフ帯に設置したスライド抵抗器の抵抗値を計測して当該周囲長を検出することや、カフ帯を所定圧まで加圧するのに要する時間から当該周囲長を推定することも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3925858号公報
【特許文献2】特開平6−245911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術によれば、測定部位の周囲長とカフ帯の幅との関係から生じる測定誤差を解消し得るようになるが、そのためにガス袋内の加圧過程で加圧ポンプの吐出量を測定する必要が生じる。さらに詳しくは、例えば加圧ポンプにフォトインタラプタを具備させ、加圧中の所定圧力値領域での加圧ポンプの回転数を当該フォトインタラプタで検出し測定してポンプ吐出量を測定するといったように、加圧ポンプに吐出量測定のための特別な検出機能を追加する必要が生じる。したがって、加圧ポンプが特別な検出機能を必要としない一般的な構成の場合に比べると、当該検出機能の分だけ、製品コストが高くなることは避けられず、故障発生のリスクも多くなる。
【0006】
また、特許文献2に開示されたように、カフ帯に設置したスライド抵抗器の抵抗値を計測して当該周囲長を検出する場合には、カフ帯にスライド抵抗器を設置することになるため、当該カフ帯の構造が複雑化してしまい、これにより故障の原因になり易くなることが想定されるとともに、製造コストも高くなることが想定される。
さらに、特許文献2に開示されたように、カフ帯を所定圧まで加圧するのに要する時間から当該周囲長を推定する場合については、加圧ポンプ個々の加圧能力のバラツキによって周囲長の推定結果に誤差が生じたり、加圧ポンプの駆動電源の電圧変動によって加圧時間が変動することに伴って正しい周囲長推定ができなかったりすることが想定される。
【0007】
本発明は、カフ帯や当該カフ帯に対する加圧手段等に複雑な機構を設けることなく測定部位の周囲長を精度良く求めることができる電子血圧計、測定部位周囲長推定方法および血圧測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。
本発明の第1の態様は、測定部位に囲繞されるカフ帯と、前記カフ帯に内包される流体袋と、前記流体袋内に流体を供給して当該流体袋内を加圧する加圧手段と、所定圧に加圧された前記流体袋内から流体を排出して当該流体袋内を減圧する電動減圧弁と、前記流体袋内の減圧を所定減圧速度で行うべく前記電動減圧弁による流体の排出流量を制御するための当該電動減圧弁の駆動エネルギー量を調整する電動減圧弁駆動回路と、前記電動減圧弁駆動回路が調整する駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求める周囲長推定手段とを備えることを特徴とする電子血圧計である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記流体袋内を減圧する過程で前記測定部位について血圧測定を行う血圧測定手段と、前記周囲長推定手段が求めた前記測定部位の周囲長に基づき前記血圧測定手段による血圧測定の結果を補正する測定結果補正手段とを備えることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、前記駆動エネルギー量は、前記電動減圧弁の駆動電流値であることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の発明において、前記電動減圧弁の駆動電流値に準ずる情報である制御信号を前記電動減圧弁駆動回路に与えることで当該電動減圧弁駆動回路に対する駆動電流値の調整指示を行う減圧制御手段を備え、前記周囲長推定手段は、前記減圧制御手段が前記電動減圧弁駆動回路に与える制御信号を用いて、前記測定部位の周囲長を求めることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか1態様に記載の発明において、前記基礎データは、所定周囲長の場合における前記流体袋内の圧力と前記電動減圧弁の駆動エネルギー量との対応関係を規定するものであり、前記流体袋内の圧力値と前記電動減圧弁の駆動エネルギー量またはこれに準ずる情報とが与えられると当該駆動エネルギー量またはこれに準ずる情報に対応する前記測定部位の周囲長を特定し得るように構成されていることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか1態様に記載の発明において、前記周囲長推定手段は、前記流体袋内を減圧する過程で複数の圧力値について前記測定部位の周囲長を求めるとともに、当該複数の圧力値における各々の周囲長から一つの基準周囲長を特定することを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれか1態様に記載の発明において、前記基礎データを記憶するデータ記憶手段と、前記基礎データを特定するための測定および当該測定によって得られた前記基礎データの前記データ記憶手段内への書き込みを行うための調整治具が接続される接続手段とを備えることを特徴とする。
本発明の第8の態様は、流体袋を内包するカフ帯を測定部位に囲繞した状態で当該流体袋内に流体を供給して当該流体袋内を加圧し、所定圧に加圧された前記流体袋内から電動減圧弁を用いて流体を排出し当該流体袋内を減圧するとともに、前記流体袋内を減圧するときの減圧速度が所定速度となるように前記電動減圧弁による流体の排出流量を制御すべく当該電動減圧弁の駆動エネルギー量を調整し、調整後の前記電動減圧弁の駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求めることを特徴とする測定部位周囲長推定方法である。
本発明の第9の態様は、流体袋を内包するカフ帯を測定部位に囲繞した状態で当該流体袋内に流体を供給して当該流体袋内を加圧し、所定圧に加圧された前記流体袋内から電動減圧弁を用いて流体を排出し当該流体袋内を減圧するとともに、前記流体袋内を減圧するときの減圧速度が所定速度となるように前記電動減圧弁による流体の排出流量を制御すべく当該電動減圧弁の駆動エネルギー量を調整し、調整後の前記電動減圧弁の駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求め、前記流体袋内を減圧する過程で前記測定部位について血圧測定を行い、前記電動減圧弁の駆動エネルギー量を利用して求めた前記測定部位の周囲長に基づいて当該測定部位についての血圧測定の結果を補正することを特徴とする血圧測定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動減圧弁の駆動エネルギー量を利用して測定部位の周囲長を求めるので、カフ帯や加圧手段等に特別な検出機能等の追加を要することなく、電子血圧計が本来的に有している機能を流用して、当該周囲長を求めることができる。したがって、特別な検出機能等を必要とする場合に比べると、故障発生のリスクが少なく、製品コスト削減も容易に実現可能である。また、流体袋内の減圧過程で測定部位の周囲長を求めるので、カフ帯の囲繞状態や加圧手段の動作変動要因等による影響を排除することができ、流体袋内の加圧過程で求める場合に比べると当該周囲長を精度良く求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電子血圧計の概略構成の一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る電子血圧計の使用態様の一例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る電子血圧計の機能構成例を示すブロック図である。
【図4】レーガン&ボードリーの補正表の一具体例を示す説明図である。
【図5】ブラダー内エアー容積と測定部位周囲長との関係の一具体例を示す説明図である。
【図6】ブラダー内圧力と測定部位周囲長と電動減圧弁駆動電流値との関係の一具体例を示す説明図である。
【図7】ブラダー内圧力と測定部位周囲長とD/A出力信号値との関係の一具体例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る電子血圧計および当該電子血圧計に接続して用いられる調整治具の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る電子血圧計にて行う前処理の一具体例を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る電子血圧計にて行う血圧測定方法の具体的な手順の一具体例を示すフローチャートである。
【図11】一般的なカフ帯におけるカフ幅の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明に係る電子血圧計、測定部位周囲長推定方法および血圧測定方法について説明する。
ここでは、先ず、本発明に係る電子血圧計の概要について簡単に説明し、次いで、当該電子血圧計の構成例を詳細に説明する。構成例の説明では、電子血圧計の機能構成について説明した後、当該電子血圧計で扱う各種装置パラメータについて説明し、さらにその後当該電子血圧計に接続して用いられる調整治具について説明する。そして、構成例の説明後は、電子血圧計の処理動作例として、当該電子血圧計を用いて行う血圧測定方法を説明する。なお、本発明に係る測定部位周囲長推定方法は、本発明に係る血圧測定方法の一部を構成しているものとする。
【0012】
<1.電子血圧計の概要>
図1は本発明に係る電子血圧計の概略構成の一例を示す説明図であり、図2は本発明に係る電子血圧計の使用態様の一例を示す説明図である。
【0013】
以下に説明する電子血圧計は、非観血式の血圧測定を行うためのもので、図1に示すように、血圧計本体10と、被験者または被験動物(以下、単に「被験者等」という。)の測定部位に囲繞されるカフ帯20と、を備えて構成されている。
カフ帯20は、ブラダー201と呼ばれる流体袋を内包している。ブラダー201には、血圧計本体10からプラグ202およびチューブ203を介して空気が送られるようになっている。ただし、空気以外の流体(所定ガスや液体等)が送られるようにしても構わない。また、カフ帯20には、当該カフ帯20を測定部位に巻き付けた後、緩まないようにするための面ファスナー204が設けられている。なお、カフ帯20とブラダー201とは、それぞれが別材料で形成されることが一般的であるが、単一の素材を溶着加工等の加工を施すことで一体に形成される場合もあり得る。
一方、血圧計本体10は、プラグ202を差し込むためのコネクタ101と、ブラダー201内に空気を送り込むための加圧ポンプ102と、血圧測定時におけるブラダー201内の微速減圧速度(スローリーク速度)を調整するための電動減圧弁103と、を備えている。また、血圧計本体10は、ブラダー201内の圧力を測定するための圧力センサ104と、上述した各種部品を連結するチューブ105および継手106と、を備えている。さらに、血圧計本体10は、その外側面に電源スイッチ107を有している。
【0014】
また、血圧計本体10は、図2に示すように、その表面に、操作釦108、スタート釦109およびLCD(Liquid Crystal Display)110を有している。
【0015】
このような構成の電子血圧計を用いて血圧測定を行う場合には、先ず、血圧計本体10の電源スイッチ107をオンにする。そして、図2に示すように、被験者等の測定部位(例えば被験者の上腕)にカフ帯20を巻き付ける。次いで、操作釦108を操作して、被験者等の大凡の最高血圧の値に応じた圧力値を、ブラダー201へ印加する目標加圧値として決定する。その後、スタート釦109を押すと、空気が血圧計本体10からチューブ203を介してブラダー201に流入して、被験者等の血圧測定が始まる。具体的には、ブラダー201内を目標加圧値まで加圧して被験者等の測定部位を圧迫し、末梢部位への血流を一旦停止させる。その後、電動減圧弁103を作動させてブラダー201内の空気を排出して当該ブラダー201内を微速減圧速度で減圧する。そして、徐々に測定部位に対する圧迫圧を減圧する過程で、動脈内の脈動の変化やコロトコフ音の出現状況を観測して、被験者等の血圧値を測定する。なお、血圧計本体10に設けられたLCD110には、測定中のブラダー201内の圧力変化や測定結果である最高血圧値および最低血圧値等が表示されるようになっている。また、血圧測定終了後は、脈拍等も表示するようにしてもよい。
【0016】
<2.電子血圧計の構成例の詳細>
次に、電子血圧計の構成例について、さらに詳しく説明する。ここでは、電子血圧計の機能構成について説明した後、当該電子血圧計で扱う各種装置パラメータについて説明し、さらにその後当該電子血圧計に接続して用いられる調整治具について説明する。
【0017】
(2−1.電子血圧計の機能構成)
図3は、本発明に係る電子血圧計の機能構成例を示すブロック図である。
【0018】
図例のように、電子血圧計は、上述したブラダー201を内包するカフ帯20、加圧ポンプ102、電動減圧弁103、圧力センサ104、操作釦108、スタート釦109およびLCD110に加えて、加圧ポンプ駆動回路111、電動減圧弁駆動回路112、不揮発性メモリ113、電源回路114およびプロセッサ部115を備えている。これらの各構成要素のうち、カフ帯20以外は、全て血圧計本体10に設けられている。
【0019】
加圧ポンプ駆動回路111は、加圧ポンプ102に対して駆動電流の印加を行う。加圧ポンプ駆動回路111からの駆動電流の印加により、加圧ポンプ102は、ブラダー201内に空気を供給して、当該ブラダー201内を加圧することになる。つまり、加圧ポンプ102および加圧ポンプ駆動回路111は、ブラダー201内を加圧する加圧手段として機能する。ただし、ブラダー201内を加圧できれば、加圧手段が加圧ポンプ102および加圧ポンプ駆動回路111に限定されることはなく、例えば手動ポンプによって構成しても構わない。
【0020】
電動減圧弁駆動回路112は、電動減圧弁103に対する駆動電流の印加を行うとともに、その駆動電流の値の大きさを調整する。ここで、駆動電流の値の大きさは、電動減圧弁103の駆動エネルギー量(当該電動減圧弁103の駆動を制御するための物理量)の一具体例に相当する。このような駆動エネルギー量の一具体例である駆動電流の印加および調整によって、電動減圧弁103は、所定圧(被験者等に対応する目標加圧値)に加圧されたブラダー201内から空気を排出して当該ブラダー201内を減圧するとともに、減圧するときの減圧速度(スローリーク速度)が所定速度となるように当該電動減圧弁103による空気の排出流量が制御されることになる。つまり、ここで例示する構成の電動減圧弁103は、所定の駆動エネルギー量を与えると全閉状態となり、排出が完全に遮断され、この状態から駆動エネルギー量を次第に減少させるにつれ開度が増し排出流量が増大し、駆動エネルギー量が更に減少し所定の値以下になると全開状態となり急速排気が行われる構成となっている。
なお、電動減圧弁駆動回路112は、定電流回路によって構成されているものとする。定電流回路とは、電源電圧や温度等の変動に左右されずに、安定した電流を流す回路のことをいう。具体的には、電動減圧弁駆動回路112は、後述するプロセッサ部115のD/A出力ポートから出力されたD/A出力信号に従い、例えば12bitの分解能でD/A出力信号値に比例した定電流を電動減圧弁103に流して、当該電動減圧弁103を制御するようになっている。
【0021】
不揮発性メモリ113は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)からなるもので、各種データの記憶保持を行う。各種データには、詳細を後述する基礎データが含まれる。つまり、不揮発性メモリ113は、基礎データを記憶するデータ記憶手段として機能する。
【0022】
電源回路114は、血圧計本体10内の各回路(加圧ポンプ駆動回路111、電動減圧弁駆動回路112、プロセッサ部115等)への電源供給を行う。電源回路114への入力電力は、血圧計本体10内に配された一次電池または二次電池からのものとすることが考えられるが、血圧計本体10の外部から供給される商用電源からのものであっても構わない。
【0023】
プロセッサ部115は、例えばCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等の組み合わせからなるもので、所定プログラムに基づいて電子血圧計全体の動作制御を行う。さらに詳しくは、プロセッサ部115は、CPUが所定プログラムを実行することによって、加圧制御手段121、計時手段122、減圧制御手段123、周囲長推定手段124、血圧測定手段125および測定結果補正手段126として機能するようになっている。
【0024】
加圧制御手段121は、スタート釦109の押下があると、加圧ポンプ102がブラダー201内を目標加圧値まで加圧するように、加圧ポンプ駆動回路111に対して指示を与える機能である。
【0025】
計時手段122は、電動減圧弁103がブラダー201内の減圧を開始すると、その減圧開始からの経過時間を計る機能である。
【0026】
減圧制御手段123は、圧力センサ104が検出するブラダー201内の圧力が所定圧(被験者等に対応する目標加圧値)になると、電動減圧弁103がブラダー201内を減圧するように、電動減圧弁駆動回路112に対して指示を与える機能である。ただし、減圧制御手段123は、ブラダー201内の減圧を所定速度で行うように、電動減圧弁103による減圧動作についてフィードバック制御を行う。具体的には、圧力センサ104での検出結果と計時手段122での計時結果とに基づき、電動減圧弁103による減圧が予め定めた一定速度となる当該電動減圧弁103の駆動電流値、すなわち電動減圧弁駆動回路112が調整すべき電動減圧弁103の駆動電流値を決定する。そして、駆動電流値を決定すると、その決定した駆動電流値に準ずる情報を電動減圧弁駆動回路112に与えることで、当該電動減圧弁駆動回路112に対する駆動電流の調整指示を行う。ここで、駆動電流値に「準ずる」情報とは、当該駆動電流値と同じ働きをする情報のことをいい、例えば当該駆動電流値を指示するために電動減圧弁駆動回路112に与える制御信号がこれに該当する。制御信号としては、プロセッサ部115側のデジタルデータをアナログデータに変換した電圧出力信号が挙げられる。以下、この制御信号の一例である電圧出力信号を「D/A出力信号」という。つまり、減圧制御手段123は、D/A出力信号を与えることで、電動減圧弁駆動回路112に対する駆動電流の調整指示を行うのである。
【0027】
周囲長推定手段124は、電動減圧弁103がブラダー201内を減圧する過程で、カフ帯20が囲繞された測定部位の周囲長を求める機能である。さらに詳しくは、周囲長推定手段124は、ブラダー201内の減圧にあたり電動減圧弁駆動回路112が調整する電動減圧弁103の駆動電流を利用して、測定部位の周囲長を求める。ここで、駆動電流の「利用」とは、測定部位の周囲長を求めるのに役立つように当該駆動電流を使うことをいい、結果的に電動減圧弁103の駆動量を利用していれば電流値そのものを利用するものでなくともよい(例えば電力量など)。このことから、周囲長推定手段124は、具体的には、駆動電流値に準ずる情報の一例であるD/A出力信号、すなわち減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に与えるD/A出力信号を用いて、測定部位の周囲長を求めるようになっている。
また、周囲長推定手段124は、測定部位の周囲長を求めるのにあたり、ブラダー201内を減圧する過程で複数の圧力値について測定部位の周囲長を求めるとともに、当該複数の圧力値における各々の周囲長から一つの基準周囲長を特定するようになっている。ここで、各々の周囲長から特定される一つの基準周囲長としては、例えば当該各々の周囲長の平均値が挙げられるが、最頻出値や中間値(最大値と最小値との中間の値)等であってもよい。
なお、周囲長推定手段124は、詳細を後述するように、予め設定されて不揮発性メモリ113内に記憶保持された基礎データを参照しつつ、測定部位の周囲長を求めるようになっている。
【0028】
血圧測定手段125は、ブラダー201内を減圧する過程で、カフ帯20が囲繞された測定部位について血圧測定を行う機能である。血圧測定は、公知の手法を用いて行えばよい。例えば、測定部位に対する圧迫圧を徐々に減圧する過程で得られる圧力センサ104での検出結果を基に、検出された圧力データに重畳する脈派成分を分別し、分別した脈派信号と圧力データとからオシロメトリック法により血圧値を決定することが考えられる。また、例えば、測定部位に対する圧迫圧を徐々に減圧する過程で発生するコロトコフ音により血圧値を決定することも考えられる。さらには、例えば、オシロメトリック法とコロトコフ音法とを併用して血圧値を決定してもよい。
【0029】
測定結果補正手段126は、周囲長推定手段124が求めた測定部位の周囲長に基づき、血圧測定手段125による血圧測定の結果を補正する機能である。周囲長推定手段124が一つの基準周囲長を特定する場合には、その基準周囲長に基づき血圧測定結果を補正すればよい。血圧測定結果の補正は、例えばレーガン(Ragan)&ボードリー(Bordley)の補正表またはピッカーリング(Pickering)の補正式を適用して行うことが考えられる。
図4は、レーガン&ボードリーの補正表の一具体例を示す説明図である。図例の表は、13cmの幅のブラダー201を用いた場合に、上腕周囲長に応じて最高血圧値および最低血圧値を変更するものである。例えば、上腕周囲長が240mmの被験者は、測定された最高血圧値に5mmHg加えた補正を行い、最低血圧値に対しては5mmHg差し引く。
また、ピッカーリングの補正式とは、s:d=1.27c−35.86:0.87c−15.54、s:最高血圧値(mmHg)、c:上腕周囲長(mm)、d:最低血圧値(mmHg)をいう。
なお、血圧測定結果の補正は、これらの手法に限定されるものではなく、他の公知の手法を用いて行うようにしても構わない。
【0030】
(2−2.電子血圧計における装置パラメータ)
次いで、電子血圧計で扱う各種装置パラメータと、装置パラメータ同士間の関係とについて、具体例を挙げて説明する。
【0031】
ここでいう「装置パラメータ」とは、電子血圧計を用いて血圧測定を行う場合に当該電子血圧計において可変し得る数値または指標のことである。具体的には、ブラダー201内のエアー容積、当該ブラダー201を内包するカフ帯20が囲繞された測定部位の周囲長、当該ブラダー201内の圧力、当該ブラダー201内を減圧する際の電動減圧弁103の駆動電流値、当該駆動電流値に準ずる情報の一例であるD/A出力信号等が、ここでいう「装置パラメータ」に該当する。
【0032】
一般に、カフ帯20については、全ての被験者等の測定部位の周囲長範囲をカバーできるように、複数のカフ幅(カフ帯20の巻き方向と垂直方向の大きさ)のものが用意される。また、カフ帯20およびブラダー201としては、様々な形成材料によって形成されたものが使用され得る。
ここでは、塩化ビニール製のブラダー201を内包しナイロン布によって形成されたカフ帯20であって、最も腕周囲長の分布の割合が多い「アダルトカフ」と呼ばれている適応上腕周囲長範囲240mm〜320mmのサイズのものを例に挙げて、以下の説明を行う。
【0033】
本願発明者は、アダルトカフを備える電子血圧計にて扱う各種装置パラメータについて、それぞれの間の関係を調査した。その結果、装置パラメータ同士の間には、以下に述べる関係があることが判明した。
【0034】
図5は、ブラダー内エアー容積と測定部位周囲長との関係の一具体例を示す説明図である。
アダルトカフと呼ばれるカフ帯20を適応上腕周囲長範囲の下限である240mmの腕に巻いたときのブラダー201内のエアー容積と、当該カフ帯20を適応上腕周囲長範囲の上限である320mmの腕に巻いたときのブラダー201内のエアー容積とについて、それぞれを測定したところ、エアー容積と周囲長との関係は、図5のような関係にあることが実測により確認された。図例の関係によれば、ほぼ腕周囲長に比例してエアー容積が増減していることがわかる。つまり、同一の適応上腕周囲長範囲内であればカフ幅が一定なので、測定部位の周囲長とブラダー201内の実効エアー容積とは、互いに一意に対応する比例関係にある。
【0035】
図6は、ブラダー内圧力と測定部位周囲長と電動減圧弁駆動電流値との関係の一具体例を示す説明図である。
ブラダー201内を減圧する場合は、減圧制御手段123が減圧速度についてフィードバック制御を行う。このフィードバック制御において、目標とする微速減圧速度を例えば3mmHg/秒に設定したときに、ブラダー内圧力と測定部位周囲長と電動減圧弁駆動電流値との関係は、図6のような関係にあることが実測により確認された。
図例の関係によれば、減圧速度が一定速度となるようにフィードバック制御すると、ブラダー201内のエアー容積が同一であれば、減圧を行う電動減圧弁103の駆動電流は、制御中のブラダー201内の圧力に応じて変化することがわかる。具体的には、ブラダー201内の圧力が高ければ当該ブラダー201内からのエアー排出流量を減少させ(電動減圧弁103の閉め量を大きくし)、ブラダー201内の圧力が低い領域では当該ブラダー201内からのエアー排出流量を増加させる(電動減圧弁103の閉め量を小さくする)ことによって、目標とする減圧速度を維持するように制御される。
また、図例の関係によれば、減圧速度が一定速度となるようにフィードバック制御する場合に、その減圧過程における同一圧力点について考えると、ブラダー201内のエアー容積が大きければ、減圧時の当該ブラダー201内からのエアー排出流量を大きく(電動減圧弁103の閉め量を小さく)する必要があるので、電動減圧弁103の駆動電流は小さくて済むが、ブラダー201内のエアー容積が小さいと、減圧時の当該ブラダー201内からのエアー排出流量を小さく(電動減圧弁103の閉め量を大きく)するために、大きな駆動電流が必要であることがわかる。
なお、上記説明は、本実施形態で使用する電動減圧弁103の特性に照らしたものであり、これと異なる特性の電動減圧弁を使用した場合には上記説明とは異なる制御が行われることは言うまでもない。
【0036】
本願発明者は、これら図5および図6の関係に着目し、電動減圧弁103の駆動電流値から、これに対応する測定部位の周囲長を導き出すことが可能であることを解明した。つまり、電動減圧弁103の駆動電流は減圧速度のフィードバック制御のために調整されるものであるが、図5および図6の関係に着目し、これらの関係を基にすることで、その調整後における電動減圧弁103の駆動電流を利用して、測定部位の周囲長を求めることが実現可能であるという知見に至った。
【0037】
ところで、電動減圧弁103の直流抵抗値は一定である。そのため、電動減圧弁103を駆動制御するために減圧制御手段123から電動減圧弁駆動回路112に対して与えられるD/A出力信号は、その信号値が電動減圧弁103の駆動電流値と比例関係にある。つまり、減圧制御手段123からのD/A出力信号値は、電動減圧弁103の駆動電流値と一意に対応していることになる。
【0038】
したがって、図6により説明した関係は、電動減圧弁103の駆動電流値のみならず、当該駆動電流値と一意に対応するD/A出力信号値についても、全く同様に成り立つことになる。
図7は、ブラダー内圧力と測定部位周囲長とD/A出力信号値との関係の一具体例を示す説明図である。
図例の関係によれば、減圧速度が一定速度となるようにフィードバック制御する場合に、その減圧過程における同一圧力点について考えると、ブラダー201内のエアー容積が大きければD/A出力信号値は小さくて済むが、ブラダー201内のエアー容積が小さいと大きなD/A出力信号値が必要であることがわかる。
【0039】
このように、図7の関係があることから、本願発明者は、測定部位の周囲長について、上述した電動減圧弁103の駆動電流の場合と同様に、減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に与えるD/A出力信号から導き出すことが可能であることを解明した。つまり、測定部位の周囲長については、図5および図7の関係に着目し、これらの関係を基にすることで、減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に与えるD/A出力信号を用いて求めることも実現可能であるという知見に至った。
【0040】
以上に説明した図6または図7の関係については、当該関係を特定するデータのうちの代表的なものを基礎データとして予め設定し、その設定した基礎データを不揮発性メモリ113内に記憶保持しておくことが考えられる。このようにすれば、不揮発性メモリ113から基礎データを読み出して参照することで、上述した関係についての把握が可能となるからである。
【0041】
基礎データとしては、例えばアダルトカフであれば、適応上腕周囲長範囲の下限である240mmの上腕にカフ帯20を巻いたときのブラダー201内の圧力と電動減圧弁103の駆動電流の対応関係と、適応上腕周囲長範囲の上限である320mmの上腕にカフ帯20を巻いたときのブラダー201内の圧力と電動減圧弁103の駆動電流との対応関係とについて、それぞれを規定するものが挙げられる。さらに具体的には、例えば、周囲長240mmの上腕にカフ帯20を巻いたときのブラダー201内のエアー容積と、周囲長320mmの上腕にカフ帯20を巻いたときのブラダー201内のエアー容積とのそれぞれにつき、当該ブラダー201内を減圧する過程での所定の圧力点(例えば260mmHg〜40mmHg間を20mmHg毎)における電動減圧弁103の駆動電流値を計測し、これにより得られたエアー容積値と圧力値と駆動電流値またはこれに対応するD/A出力信号値とを互いに関連付けてなるデータを、基礎データとすることが考えられる。
【0042】
このように、基礎データは、電子血圧計で扱う装置パラメータ同士の関係の代表例を規定するもの、さらに詳しくは所定周囲長の場合におけるブラダー201内の圧力と電動減圧弁103の駆動電流との対応関係を規定するものである。そして、当該対応関係を規定することで、基礎データは、ブラダー201内の圧力値と電動減圧弁103の駆動電流値またはこれに対応するD/A出力信号値とが与えられると、当該駆動電流値または当該D/A出力信号値に対応する測定部位の周囲長を特定し得るように構成されている。
【0043】
なお、カフ幅が異なる複数のカフ帯20が用意されている場合、基礎データは、各カフ帯20別に予め設定しておくことが考えられる。
【0044】
また、上述したようにD/A出力信号値は駆動電流値と一意に対応しているため、基礎データとしては、駆動電流値についてのもの(図6参照)またはD/A出力信号値についてのもの(図7参照)の少なくとも一方があればよい。以下の説明では、基礎データがD/A出力信号値についてのものである場合を例に挙げる。
【0045】
(2−3.調整治具の構成)
続いて、電子血圧計に接続して用いられる調整治具について説明する。
調整治具は、基礎データを特定するための測定、および、当該測定によって得られた基礎データの不揮発性メモリ113内への書き込みを電子血圧計に行わせるために、当該電子血圧計に接続して用いられるものである。
【0046】
図8は、本発明に係る電子血圧計および当該電子血圧計に接続して用いられる調整治具の構成例を示すブロック図である。
【0047】
調整治具30を接続するために、血圧計本体10におけるプロセッサ部115には、上述した各機能121〜126の他に、調整モード機能127が設けられている。調整モード機能127は、基礎データ測定手段127aと、通信ポート127bとから構成されている。
【0048】
基礎データ測定手段127aは、プロセッサ部115のCPUでの所定プログラムの実行により、周囲長推定手段124が参照する基礎データを特定するための測定、および、当該測定によって得られた基礎データの不揮発性メモリ113内への書き込みを行うようになっている。
【0049】
通信ポート127bは、例えばパラレルポートのような双方向通信が可能な通信インタフェースであり、通信ケーブルを介して調整治具30が接続されるものである。つまり、通信ポート127bは、調整治具30が接続される接続手段として機能する。
【0050】
一方、通信ポート127bに接続される調整治具30は、第1エアータンク31、第2エアータンク32、タンク切替手段33、タンク切替制御回路34、通信ポート35、スタートスイッチ36および電源回路37を備えている。
【0051】
第1エアータンク31および第2エアータンク32は、空気を蓄える機能を有した密閉容器であり、それぞれが互いに異なるエアー容積を有しているが、いずれもカフ帯20のブラダー内エアー容積に対応したものとなっている。例えば、アダルトカフについての調整治具30を例に挙げると、第1エアータンク31は200ccのエアー容積を有しており、第2エアータンク32は500ccのエアー容積を有している。これは、アダルトカフの適応上腕周囲長範囲の下限である腕周囲長240mmの上腕にカフ帯20を巻いたときのブラダー201内のエアー容積は約200ccに相当し、適応上腕周囲長範囲の上限である腕周囲長320mmでは約500ccに相当するからである(例えば図4参照)。
このように、調整治具30は、一つのカフ帯20につき、第1エアータンク31および第2エアータンク32(すなわちエアー容積が異なる二つのエアータンク)を備えている。ただし、その設置数は二つに限定されることなく、三つ以上を備えていても構わない。
また、第1エアータンク31および第2エアータンク32は、互いに異なるエアー容積であればよく、必ずしも適応上腕周囲長範囲の下限または上限に対応してなくともよい。下限または上限に対応していなくても、互いに異なるものであれば、後述するように線形補間による測定部位周囲長の演算処理が可能だからである。
【0052】
タンク切替手段33は、例えば電磁弁のようなエアー流路切替機構からなるもので、第1エアータンク31および第2エアータンク32に対するエアー流路の切り替えを行う。さらに詳しくは、血圧計本体10におけるコネクタ101に、カフ帯20のプラグ202ではなく、調整治具30のプラグ(ただし不図示)が差し込み接続されている場合において、そのコネクタ101に繋がる血圧計本体10内の加圧ポンプ102、電動減圧弁103および圧力センサ104の接続先を、調整治具30内の第1エアータンク31と第2エアータンク32とのいずれか一方に切り替えるためのものである。
【0053】
タンク切替制御回路34は、例えば電磁弁のコントローラからなるもので、タンク切替手段33における切り替え動作を制御する。切り替え動作の制御は、タンク切替制御回路34からタンク切替手段33へ、所定の制御信号を与えることによって行えばよい。
【0054】
通信ポート35は、血圧計本体10における通信ポート127bと接続するためのものである。この通信ポート35によって血圧計本体10の通信ポート127bとの電気的接続が確保されることで、調整治具30は、血圧計本体10との間で各種信号の双方向での授受が行えるようになる。
【0055】
スタートスイッチ36は、調整治具30の使用者(調整作業者)が操作するものである。
【0056】
電源回路37は、調整治具30の各構成要素(タンク切替手段33、タンク切替制御回路34等)への電源供給を行う。電源回路37への入力電力は、調整治具30の外部から供給される商用電源を利用することが考えられるが、調整治具30内に一次電池または二次電池を配して給電可能としても構わない。
【0057】
<3.血圧測定方法の手順>
次に、電子血圧計の処理動作例、すなわち当該電子血圧計を用いて行う血圧測定方法の具体的な手順を説明する。ここでは、血圧測定のために必要となる前処理について説明した後、当該血圧測定について具体的に説明する。
【0058】
(3−1.前処理の手順)
ここでいう「前処理」は、血圧測定に必要な基礎データを特定するための測定処理と、当該測定処理によって得られた基礎データの不揮発性メモリ113内への書き込み処理とが該当する。この前処理は、遅くとも被験者等の血圧測定を行う前までに行えばよい。具体的には、電子血圧計製造の調整行程(出荷前最終工程)にて行うことが考えられる。
【0059】
図9は、本発明に係る電子血圧計にて行う前処理の一具体例を示すフローチャートである。
【0060】
前処理にあたっては、調整治具30を用意する。そして、用意した調整治具30を、調整作業者が、血圧計本体10と接続する(ステップ001、以下ステップを「S」と略す。)。さらに詳しくは、血圧計本体10における通信ポート127bと調整治具30における通信ポート35とを通信ケーブルによって接続するとともに、血圧計本体10におけるコネクタ101に調整治具30の図示しないプラグを差し込み接続する。
【0061】
血圧計本体10と調整治具30とを接続した後は、調整作業者が、血圧計本体10の電源スイッチ107やスタート釦109等にて所定の操作を行う。これにより、血圧計本体10のプロセッサ部115では、調整モード機能127が起動することになる(S002)。ただし、調整モード機能127の起動は、調整治具30から通信ポート127b,35を介した外部制御によって行うようにしてもよい。具体的には、例えば調整作業者によってスタートスイッチ36が操作されると、調整治具30は、血圧計本体10に対して、通信ポート127b,35を介して、動作モードを調整モードに切り替えるための所定信号を送る。これにより、血圧計本体10のプロセッサ部115で調整モード機能127を起動させるようにしてもよい。
【0062】
調整モード機能127が起動すると、血圧計本体10からは、基礎データ測定手段127aによって、通信ポート127b,35を介して調整治具30に対し、血圧計本体10に接続するエアータンクを指定する情報が送られる(S003)。この情報を受けて、調整治具30では、タンク切替制御回路34がタンク切替手段33に対し動作指示を与える。その結果、調整治具30では、血圧計本体10から指定されたエアー容積のエアータンクとして、第1エアータンク31と第2エアータンク32のいずれか一方が、血圧計本体10と連通状態になる。
【0063】
ここで、アダルトカフの適応上腕周囲長範囲の上限に対応する500ccのエアー容積を有した第2エアータンク32が、血圧計本体10と連通状態になった場合を例に挙げる。第2エアータンク32が連通状態になると、その旨の切替情報が、タンク切替制御回路34から通信ポート127b,35を介して血圧計本体10へ通知される。
【0064】
この切替情報を受けて、血圧計本体10では、基礎データ測定手段127aが基礎データの測定処理を開始する。具体的には、血圧計本体10は、基礎データ測定手段127aによる制御に従いつつ、自動的に、圧力センサ104による検出圧力のゼロセット(基準合わせ)を行った後(S004)、電動減圧弁103を閉じるとともに、加圧ポンプ102を駆動して、調整治具30の第2エアータンク32内の加圧を開始する(S005)。そして、タンク内圧力を所定値(例えば280mmHg)まで加圧すると、加圧ポンプ102の駆動を停止する(S006)。このときの所定値は、血圧測定の際に設定され得る目標加圧値よりも大きく設定されていれば、その具体的な値が特に限定されるものではない。
ポンプ停止後、血圧計本体10は、基礎データ測定手段127aによる制御に従いつつ、電動減圧弁103を徐々に開き、調整治具30の第2エアータンク32内を減圧する。このとき、血圧計本体10におけるプロセッサ部115の減圧制御手段123は、所定時間毎の圧力降下量に基づき、減圧を所定速度(例えば3mmHg/秒)で行うように制御する(S007)。具体的には、例えば目標とする減圧速度である3mmHg/秒に対して、減圧が速ければ電動減圧弁103の駆動電流を増やし、その逆に遅ければ駆動電流を減らすように、減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に指示を与える。このような制御を行うことで、通常は、加圧点(例えば280mmHg)から20mmHg程度減圧するまでの間に目標の減圧速度になり、その後安定する。
【0065】
減圧速度が安定領域に入った後、血圧計本体10は、第2エアータンク32内を減圧する過程での所定の圧力点(例えば260mmHg〜40mmHg間を20mmHg毎)における電動減圧弁103の駆動電流値に対応するD/A出力信号値を認識し、その結果を不揮発性メモリ113内の所定記憶領域に書き込む(S008)。具体的には、先ず、例えば260mmHgのときに減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に与えるD/A出力信号値を不揮発性メモリ113に記憶させ、その後20mmHg圧力が降下する毎に各圧力点におけるD/A出力信号値を不揮発性メモリ113に記憶させる。そして、測定範囲下限の例えば40mmHgにおけるD/A出力信号値についての不揮発性メモリ113への記憶後は、第2エアータンク32内を急速排気して、当該第2エアータンク32についての処理を終了する(S007〜S009)。
【0066】
以上の手順を経ることで、不揮発性メモリ113内には、第2エアータンク32が接続された場合(すなわち腕周囲長320mmの場合)の各圧力点におけるD/A出力信号値群が記憶保持される。そして、これらのD/A出力信号値群が、不揮発性メモリ113内に記憶保持される基礎データを構成することになる。
なお、不揮発性メモリ113内の基礎データは、各圧力点におけるD/A出力信号値そのものであってもよいし、各圧力点間について線形補間を行ってグラフ状にしたもの(図7参照)であってもよい。つまり、基礎データは、圧力値とD/A出力信号値とから当該D/A出力信号値に対応する測定部位の周囲長を特定し得るものであれば、そのデータ形態が特に限定されるものではない。
【0067】
以上のような基礎データの測定および書き込みを終了した後、基礎データ測定手段127aは、調整治具30における全タンクについての処理が終了していなければ(S010)、血圧計本体10と連通状態にあるエアータンクの切り替えを調整治具30に対して指示する(S011)。すなわち、血圧計本体10からは、基礎データ測定手段127aによって、通信ポート127b,35を介して調整治具30に対し、二つのうちの他方のエアータンクを指定する情報が送られることになる。この情報を受けて、調整治具30では、タンク切替制御回路34がタンク切替手段33に対し動作指示を与える。その結果、調整治具30では、血圧計本体10と連通状態にあるエアータンクが、第2エアータンク32ではなく、アダルトカフの適応上腕周囲長範囲の下限に対応する200ccのエアー容積を有した第1エアータンク31へ切り替えられることになる。
【0068】
第1エアータンク31が連通状態になると、その旨の切替情報が、タンク切替制御回路34から通信ポート127b,35を介して血圧計本体10へ通知される。この切替情報を受けて、血圧計本体10は、再び、第2エアータンク32の場合と同様の手順で、第1エアータンク31を用いた基礎データの計測および不揮発性メモリ113内への書き込みを行う(S004〜S009)。
【0069】
これにより、不揮発性メモリ113内には、第2エアータンク32が接続された場合(すなわち腕周囲長320mmの場合)についての基礎データに加えて、第1エアータンク31が接続された場合(すなわち腕周囲長240mmの場合)についての基礎データが記憶保持されることになる。
この基礎データについても、上述した第2エアータンク32の場合と同様に、各圧力点におけるD/A出力信号値そのものであってもよいし、各圧力点間について線形補間を行ってグラフ状にしたもの(図7参照)であってもよく、そのデータ形態が特に限定されるものではない。ただし、第1エアータンク31および第2エアータンク32の各場合の間では、同一のデータ形態であることが望ましい。
【0070】
このようにして、一つのカフ帯20につき少なくとも二つの腕周囲長の基礎データの計測および不揮発性メモリ113内への記憶を終了したら、当該カフ帯20に関しての前処理を完了する。ただし、使用が想定される他のカフ帯20がある場合には、当該カフ帯20に関しても、全く同様にして基礎データの計測および不揮発性メモリ113内への記憶を行う。そして、使用が想定される全てのカフ帯20に関して、基礎データの計測および記憶が終了したら、前処理を完了する。
【0071】
なお、ここでは、第2エアータンク32についての処理後に第1エアータンク31についての処理を行う場合を例に挙げたが、その処理順が特に限定されることはなく、逆の処理順で行うことも可能である。
【0072】
(3−2.血圧測定の手順)
次に、前処理で得た基礎データを用いて行う血圧測定の手順、特に当該血圧測定の際に血圧計本体10のプロセッサ部115が行う動作制御手順について、詳しく説明する。
【0073】
ここでは、被験者の血圧値が最高血圧値150mmHg、最低血圧値90mmHgであり、これに対応してブラダー201へ印加する目標加圧値が180mmHgに設定された場合を例に挙げる。ただし、ここで挙げる数値は、単なる一具体例に過ぎず、これに限定されるものでない。
【0074】
図10は、本発明に係る電子血圧計にて行う血圧測定方法の具体的な手順の一具体例を示すフローチャートである。
【0075】
カフ帯20が被験者の測定部位に巻き付けられ、操作釦108にて目標加圧値が180mmHgに設定された状態で、スタート釦109の押下があると、プロセッサ部115は、以下に述べる動作制御を開始する。
【0076】
先ず、プロセッサ部115では、圧力センサ104による検出圧力のゼロセット(基準合わせ)を行った後(S021)、電動減圧弁103を閉じた状態で、加圧制御手段121が加圧ポンプ駆動回路111に対して動作指示を与え、加圧ポンプ102によるブラダー201内の加圧を行わせる(S022)。そして、ブラダー201内の圧力が加圧目標値の180mmHgに達したことを圧力センサ104が検出すると、加圧制御手段121は、加圧ポンプ102の動作を停止させる(S023)。
【0077】
続いて、プロセッサ部115では、電動減圧弁103がブラダー201内を減圧するように、減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に対して指示を与える。ただし、このとき、減圧制御手段123は、ブラダー201内の減圧を所定速度(例えば3mmHg/秒)で行うように、電動減圧弁103による減圧動作についてフィードバック制御を行う(S024)。具体的には、減圧制御手段123は、圧力センサ104での検出結果と計時手段122での計時結果とに基づき、目標とする減圧速度である3mmHg/秒に対して減圧が速ければ電動減圧弁103の駆動電流を増やし、その逆に遅ければ駆動電流を減らすように、電動減圧弁103の駆動電流値を決定し、その決定した駆動電流値に一意に対応するD/A出力信号値を電動減圧弁駆動回路112に与える。これにより、電動減圧弁103によるブラダー201内の減圧は、その速度が目標値の3mmHg/秒に制御されることになる。
【0078】
以上のような所定減圧速度での減圧の過程にて、減圧速度が目標値に対して安定に制御されるようになったら(具体的には速度変動が所定許容範囲内となったら)、プロセッサ部115における血圧測定手段125は、カフ帯20が囲繞された測定部位についての血圧測定を行う(S025)。具体的には、例えばオシロメトリック法を用いる場合であれば、測定部位に対する圧迫圧を徐々に減圧する過程で得られる圧力検出結果を基に、検出された圧力データに重畳する脈派成分を分別する。そして、これを測定終了条件となるまで行い(S027)、その後に分別した脈派信号と圧力データとから血圧値を演算により求める(S028)。その結果、例えば、被験者の血圧値が最高血圧値150mmHg、最低血圧値90mmHgであれば、減圧制御手段123は、所定減圧速度での減圧を、最低血圧値より所定量だけ低い圧力値、例えば70mmHg付近で終了し、その後はブラダー201内を急速排気する。
【0079】
ところで、このような減圧過程において、プロセッサ部115では、血圧測定手段125による血圧測定と並行して、周囲長推定手段124が測定部位の周囲長を求めるための処理を行う。これらの処理は並行して行うことが処理迅速化のために望ましいが、並行ではなく各処理を前後して行うようにしても構わない。
【0080】
測定部位周囲長を求めるための処理に際して、先ず、周囲長推定手段124は、減圧過程における複数の圧力値のそれぞれに対応するD/A出力信号値を、プロセッサ部115におけるRAM内に記録する(S026)。具体的には、ブラダー201内を180mmHgまで加圧した後、減圧速度が目標値に対して安定に制御される160mmHgから測定部位周囲長を求める処理を開始したとして、当該160mmHgとなった時点から、所定間隔毎(例えば20mmHg減圧する毎)に、減圧終了(例えば70mmHg付近)に至る前の例えば80mmHgの時点まで、電動減圧弁103の駆動電流値に対応するD/A出力信号値を、当該D/A出力信号値を得た圧力値と関連付けて、プロセッサ部115におけるRAM内に記録する。これにより、RAM内には、ブラダー201内の複数の圧力値のそれぞれに対応するD/A出力信号値が記録されることになる。
【0081】
そして、周囲長推定手段124は、RAM内にD/A出力信号値を記録すると、不揮発性メモリ113内から読み出した基礎データを用いて、当該D/A出力信号値に対応する測定部位周囲長を演算により求める(S029)。具体的には、RAM内に記録したうちのある一つのD/A出力信号値(以下「演算対象信号値」という)に着目し、当該演算対象信号値を得た圧力値を認識するとともに、適応上腕周囲長範囲の上限である周囲長320mmの場合(すなわち第2エアータンク32の場合)の基礎データにおいて当該圧力値に対応するD/A出力信号値(以下「範囲上限信号値」という)と、適応上腕周囲長範囲の下限である周囲長240mmの場合(すなわち第1エアータンク31の場合)の基礎データにおいて当該圧力値に対応するD/A出力信号値(以下「範囲下限信号値」という)とを、それぞれ認識する。このとき、基礎データが各圧力点におけるD/A出力信号値そのものによって構成されていれば、各圧力点間について線形補間を行って範囲上限信号値および範囲下限信号値の認識を行えばよい。そして、範囲上限信号値および範囲下限信号値を認識したら、演算対象信号値がこれら範囲上限信号値および範囲下限信号値の間のどの点(何cmの腕周囲長)に該当するか、すなわち演算対象信号値に対応する測定部位周囲長を、演算により求める。このときの演算は、範囲上限信号値および範囲下限信号値(すなわち、互いに異なるエアー容積についての各信号値)を基にした線形補間によって行えばよい。ただし、各信号値を基にしつつ予め設定された演算式を用いて演算対象信号値に対応する測定部位周囲長を求めるのであれば、他の公知の演算手法によるものであっても構わない。このような測定部位周囲長を求めるための演算処理を、周囲長推定手段124は、RAM内に記録した複数の圧力値のそれぞれに対応するD/A出力信号値の全てについて行う。このようにして測定部位周囲長を求めたら、周囲長推定手段124は、その結果をプロセッサ部115におけるRAM内に記録する。これにより、RAM内には、当該RAM内に記録された複数のD/A出力信号値(演算対象信号値)のそれぞれに対応する測定部位周囲長が記録されることになる。
測定部位周囲長の演算およびRAM内への記録は、周囲長推定手段124が演算対象信号値を当該RAM内に記録する都度行うことが考えられる。ただし、都度行うのではなく、複数の演算対象信号値の全てについて当該RAM内への記録が終了した後に、各演算対象信号値について纏めて測定部位周囲長の演算およびRAM内への記録を行うようにしても構わない。
【0082】
周囲長推定手段124が測定部位周囲長の演算およびRAM内への記録を行うと、当該RAM内には、ブラダー201内の減圧過程における複数の圧力値毎の測定部位周囲長の演算結果が存在することになる。
このように、複数の測定部位周囲長の演算結果を得た場合、周囲長推定手段124は、次いで、各々の演算結果から一つの基準周囲長を特定する(S029)。具体的には、各々の演算結果の平均値、最頻出値または中間値等を算出して、その算出結果を当該一つの基準周囲長とする。これにより、例えば各々の演算結果に生じ得るバラツキ等の悪影響を排除して、周囲長推定手段124が求める測定部位周囲長の高精度化が図れるようになる。
なお、平均算出等による一つの基準周囲長の特定は、周囲長推定手段124が複数の演算結果を得た場合に行うものとする。例えば、周囲長推定手段124がブラダー201内の減圧過程における複数の圧力値についての測定部位周囲長を求めるのではなく、当該減圧過程において予め設定された一つの圧力値についてのみ測定部位周囲長を求めるよう設定された場合には、当該一つの圧力値についての測定部位周囲長をそのまま一つの基準周囲長とすればよい。
【0083】
周囲長推定手段124が一つの基準周囲長を特定したら、その後、測定結果補正手段126は、特定された基準周囲長に基づき、血圧測定手段125による血圧測定の結果を補正する(S030)。例えば、レーガン&ボードリーの補正表(図4参照)を適用して行う場合であれば、当該補正表により基準周囲長に対応する補正値を特定し、その補正値を血圧の測定結果に加算または減算することにより、当該測定結果の補正を行う。さらに具体的には、基準周囲長が240mmである場合を例にあげて考えると、レーガン&ボードリーの補正表に基づいて、測定された最高血圧値150mmHgに5mmHgを加える補正を行い、最低血圧値90mmHgに対しては5mmHgを差し引く補正を行う。
【0084】
測定結果補正手段126が血圧測定結果を補正すると、血圧計本体10のプロセッサ部115は、その補正結果(すなわち、補正後の最高血圧値および最低血圧値)について、当該血圧計本体10に設けられたLCD110に表示出力させる(S031)。そして、LCD110が補正後の最高血圧値および最低血圧値についての表示出力を行うと、プロセッサ部115は、測定対象となった被験所についての血圧測定を終了する。
【0085】
<4.本実施形態における作用効果>
次に、本実施形態における作用効果について説明する。
【0086】
(i)本実施形態では、ブラダー201内を減圧する際に電動減圧弁駆動回路112が調整する電動減圧弁103の駆動電流と、不揮発性メモリ113内に予め設定された基礎データとを利用して、カフ帯20が囲繞された測定部位の周囲長を求める。ここで、電動減圧弁103の駆動電流は、当該電動減圧弁103の駆動エネルギーの一具体例に相当するものであり、ブラダー201内の減圧を所定速度(スローリーク速度)で行うために調整される。ブラダー201内の減圧を所定速度で行うことは、電子血圧計において非観血式の血圧測定のために必要である。つまり、ブラダー201内の減圧を所定速度で行うために電動減圧弁103の駆動電流を調整する機能は、電子血圧計が本来的に有しているべき機能である。したがって、電動減圧弁103の駆動電流を利用して測定部位の周囲長を求めれば、カフ帯20や当該カフ帯20のブラダー201内を加圧する加圧ポンプ102等に特別な検出機能等の追加を要することなく、電子血圧計が本来的に有している機能(スローリーク速度の制御機能)を流用して、当該周囲長を求めることができる。したがって、特別な検出機能等を必要とする場合に比べると、故障発生のリスクが少なく、製品コスト削減も容易に実現可能である。
【0087】
ところで、測定部位の周囲長は、例えば特許文献1に開示された従来技術のように、ブラダー201内を加圧する過程で得られる情報(例えば、ブラダー201内への空気吐出量)を基にして求めることが考えられる。しかしながら、その場合には、カフ帯20の囲繞状態(例えば、カフ帯20が測定部位に隙間なく巻かれているか、緩めに巻かれているか)によって加圧過程に相違が生じてしまい、その影響が周囲長の推定結果に及んでしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態で説明したように、電動減圧弁103の駆動電流を利用して測定部位の周囲長を求めれば、ブラダー201内が所定圧に加圧されてカフ帯20が測定部位の周りに密着した状態から当該ブラダー201内を減圧する過程で得られる情報を基にすることになるので、当該カフ帯20の囲繞状態の影響が及んでしまうのを回避可能となる。したがって、電動減圧弁103の駆動電流を利用すれば、ブラダー201内の加圧過程で得られる情報を基にする場合に比べて、測定部位の周囲長を精度良く求めることが可能になる。
【0088】
また、ブラダー201内の加圧過程で測定部位の周囲長を求めるのであれば、例えば所定圧までの加圧時間を基にして当該周囲長を求めることが考えられる。しかしながら、その場合には、所定圧までの加圧時間が加圧ポンプ102や加圧ポンプ駆動回路111等の動作変動要因(例えば、個々の加圧能力のバラツキや駆動電圧の変化等)によって変動し得るため、その変動の影響が当該周囲長の推定結果に及んでしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態で説明したように、電動減圧弁103の駆動電流を利用すれば、所定速度での減圧のためにブラダー201内からの排出流量制御が行われている状態、すなわち当該駆動電流の調整によって電動減圧弁103の動作変動要因が排除されている状態で、測定部位の周囲長を求めることになる。したがって、電動減圧弁103の駆動電流を利用すれば、ブラダー201内の加圧過程で測定部位の周囲長を求める場合に比べて、当該測定部位の周囲長を精度良く求めることが可能になる。つまり、加圧ポンプ102等の性能や加圧能力の差による腕周囲長推定誤差が発生しない。
【0089】
(ii)本実施形態では、電動減圧弁103の駆動電流を利用して求めた測定部位の周囲長の長短に応じて、当該測定部位についての血圧値の測定結果が補正される。したがって、様々な被験者等に対応するために、複数サイズのカフ帯20を用意しておき、その中のいずれかを選択的に使用する場合であっても、測定部位の周囲長とカフ帯20の幅との不適合に起因する血圧値の測定誤差が解消されて、正確な血圧値の測定結果が得られるようになる。つまり、多様なカフ帯20が存在していても、血圧値の測定結果について精度良く補正を実行することができる。
【0090】
(iii)本実施形態では、電動減圧弁103の駆動エネルギー量のうち、特にその一具体例に相当する駆動電流値を利用して、カフ帯20が囲繞された測定部位の周囲長を求める。電動減圧弁103の駆動電流値は、ブラダー201内の圧力およびエアー容積に対して、図6に示して説明したような一意な対応関係にある。したがって、本実施形態で説明したように、電動減圧弁103の駆動電流を利用して測定部位の周囲長を求めれば、当該測定部位の周囲長を一意に(すなわち確実かつ精度良く)導き出すことが可能である。
また、電動減圧弁103の駆動電流を利用する場合、電動減圧弁駆動回路112が定電流回路によって構成されていれば、当該駆動電流として電源電圧や温度等の変動に左右されない安定した電流が流れることになる。例えば、定電流回路への供給電圧が変動しても、その供給電圧の動作範囲内で電動減圧弁103を制御すれば、電動減圧弁103は電源電圧変動の影響を受けない。したがって、測定部位の周囲長を求めるのにあたって、電源電圧や温度等の変動の悪影響が及ぶのを未然に回避することができる。この点においても、電動減圧弁103の駆動エネルギー量として駆動電流値を利用することは好ましい。つまり、腕周囲長の計測において、電源電圧の影響を受けないようにすることができる。
【0091】
(iv)本実施形態では、測定部位の周囲長を求めるのにあたって、具体的には電動減圧弁103の駆動電流値に準ずる情報の一例であるD/A出力信号値を用いる。D/A出力信号値から測定部位の周囲長を求めるようにすれば、電動減圧弁103の駆動電流を利用して当該周囲長を求める場合であっても、電動減圧弁駆動回路112が調整する駆動電流値の検出を要することがない。つまり、プロセッサ部115における周囲長推定手段124は、電動減圧弁駆動回路112が調整する駆動電流をモニタリングしなくても、当該プロセッサ部115の減圧制御手段123が電動減圧弁駆動回路112に与えるD/A出力信号値を認識するだけで、測定部位の周囲長を求めることができる。しかも、その場合であっても、D/A出力信号値は駆動電流値と一意に対応しているので、駆動電流値を検出した場合と同様の結果が得られる。
【0092】
(v)本実施形態では、測定部位の周囲長を求める際に、電動減圧弁103の駆動電流に加えて、予め設定された基礎データを利用する。この基礎データは、所定周囲長の場合におけるブラダー201内の圧力と電動減圧弁103の駆動電流との対応関係を規定するものである。そして、ブラダー201内の圧力値と電動減圧弁103の駆動電流値またはこれに準ずる情報の一例であるD/A出力信号値とが与えられると、これらに対応する測定部位の周囲長を特定し得るように構成されている。このように、基礎データは、測定部位の周囲長を特定し得るもの、すなわちブラダー201内の圧力値と電動減圧弁103の駆動電流値またはD/A出力信号値とから測定部位の周囲長を導き出すのに必要十分なものであればよい。換言すると、測定部位の周囲長、ブラダー201のエアー容積、ブラダー201内を減圧するときの当該ブラダー201内の圧力、および、電動減圧弁103の駆動電流は、それぞれが互いに対応する関係にあるが、そのうちの代表例となる対応関係について、基礎データが規定していればよい。したがって、基礎データについては、予め設定しておく場合であっても、そのデータ量が膨大になってしまうのを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態で説明したように、基礎データを予め用意しておき、その用意した基礎データを参照して測定部位の周囲長を求めるようにすれば、基礎データを利用しない場合に比べて、当該周囲長を求める際の演算処理等が煩雑化してしまうのを抑制することができる。つまり、基礎データが存在していることで、測定部位の周囲長を求める際の処理負荷が過大になるのを抑制でき、当該処理の迅速化や当該処理のために必要となる構成の簡素化等が期待できる。
【0094】
さらに、予め用意した基礎データを参照して測定部位の周囲長を求める場合には、当該基礎データとして電子血圧計毎に個別のものを用意しておくことが可能となる。すなわち、基礎データとして電動減圧弁103の特性バラツキ(個体差)等に対応したものを予め用意しておくことが実現可能となるので、これにより当該特性バラツキ等に影響されずに測定部位の周囲長を求めることができるようになる。
なお、電動減圧弁103に個々の特性バラツキが無いか、或いは前記特性バラツキが本願発明の腕周囲長推定手段の実施に際して実用上差し支えのない程度の範囲内であれば、基礎データは使用する電動減圧弁103に対応する代表値を固定値として使用することができ、基礎データの測定および不揮発性メモリ113への記憶プロセスは不要となる。
他方、電動減圧弁103の個々の特性バラツキを無くし、或いは前記バラツキを本願発明の腕周囲長推定手段の実施に際して実用上差し支えのない範囲内に抑えようとすれば、相応のコスト高を招くため製品実現上賢明ではない。
本願発明の基礎データの測定および不揮発性メモリ113への記憶プロセスは、そうした問題点を解決し製品のコストダウンに貢献する発明であると言える。
【0095】
(vi)本実施形態では、測定部位の周囲長を求めるのにあたり、ブラダー201内を減圧する過程で複数の圧力値について測定部位の周囲長を求めるとともに、当該複数の圧力値における各々の周囲長から一つの基準周囲長を特定するようになっている。これにより、例えば複数の圧力値についての周囲長演算結果に生じ得るバラツキ等の悪影響を排除して、プロセッサ部115の周囲長推定手段124が求める測定部位周囲長の高精度化が図れるようになる。つまり、特定した一つの基準周囲長に基づいて血圧測定結果を補正すれば、複数の圧力値の各々の周囲長演算結果について測定バラツキが生じていても、その測定バラツキの悪影響を受けることなく、精度よく血圧測定結果を補正することができる。
【0096】
(vii)本実施形態では、不揮発性メモリ113が基礎データの記憶保持を行う。さらには、電子血圧計に調整治具30が接続された状態で、当該調整治具30が、基礎データを特定するための測定および当該測定によって得られた基礎データの不揮発性メモリ113内への書き込みを当該電子血圧計に行わせるための処理を行う。したがって、調整治具30を接続することによって、各電子血圧計別に基礎データの事前測定を行い、その結果を各電子血圧計における不揮発性メモリ113内へ書き込むことが可能となる。つまり、各電子血圧計に固有の基礎データを、当該各電子血圧計における不揮発性メモリ113内に記憶させ得るようになる。このように、測定部位の周囲長を求める際にプロセッサ部115の周囲長推定手段124が参照する基礎データについては、調整治具30を用いた個別の事前測定を経ることで、各電子血圧計における個体差を排除することができる。換言すると、各電子血圧計における電動減圧弁103の特性バラツキ等を含めた対応関係が基礎データとして各電子血圧計の不揮発性メモリ113内に書き込まれるので、当該特性バラツキ等に影響されずに測定部位の周囲長を求めることができるようになる。
【0097】
<5.変形例>
なお、本実施形態では、本発明に係る電子血圧計、測定部位周囲長推定方法および血圧測定方法の好適な実施具体例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
例えば、本実施形態では、測定部位の周囲長を求めるのにあたり、電動減圧弁103の駆動エネルギー量の一具体例である駆動電流値を利用する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはなく、他の駆動エネルギー量であっても利用可能である。
他の駆動エネルギー量としては、単位時間に電流がする仕事量である電力量を利用することが考えられる。電力量は、電動減圧弁103に対する制御を例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御によって行う場合に適用すると、特に好適であるといえる。
また、さらに他の駆動エネルギー量として、電動減圧弁103の駆動電圧値を利用することも実現可能である。このように、電動減圧弁103の駆動エネルギー量は、駆動電流値に限定されることはなく、当該電動減圧弁103の制御態様等に応じて適宜決定すればよい。ただし、本実施形態で説明したように、定電流回路によって電源電圧変動の影響等を排除できる点で、駆動エネルギー量として駆動電流値を利用することは好ましい。
【0099】
また、本実施形態では、測定部位の周囲長を求めた後、その結果を用いて血圧値の測定結果を補正する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、電動減圧弁103の駆動エネルギー量を利用して求めた測定部位の周囲長については、血圧値の測定結果の補正に用いるのではなく、または血圧値の測定結果の補正に用いるのと併せて、他の用途に用いることも可能である。他の用途としては、例えば、測定部位の周囲長を記憶保持してデータベース化し、被験者等の測定部位周囲長の管理に用いる、といったことが考えられる。
【0100】
また、本実施形態では、カフ帯20のサイズ、ブラダー201内のエアー容積、ブラダー201の内圧、ブラダー201からの減圧速度、被験者等の血圧値等について、具体的な数値を挙げて説明をしているが、これらの数値は単なる具体例に過ぎず、必要に応じて適宜設定または変更すべきであることはいうまでもない。
【0101】
また、本実施形態では、最も腕周囲長の分布の割合が多い「アダルトカフ」を例に挙げて説明を行ったが、それ以外のもの(図11参照)についても全く同様に本発明を適用可能である。
さらには、本発明によれば一つのカフ帯で広範囲の腕周囲長に対応し得るようになることから、例えば適合範囲長が240mm〜320mmのアダルトカフのカフ布のみ長くして、320mm〜420mmのラージカフの領域まで一つのカフ帯で巻けるように構成することで、一つのカフ帯で240mm〜420mmといった広範囲の腕周囲長に対応させるようにすることも考えられる。
【0102】
また、本実施形態では、前処理での基礎データ測定を調整治具30が自動で行う場合を例に挙げて説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、以下に述べるように調整作業者が手動で行うことも考えられる。すなわち、基礎データ測定を手動で行う場合には、血圧計本体10における動作モードから調整モードへの切り替え(調整モード機能127の起動)を、当該血圧計本体10での手動によるスイッチ操作でも行えるようにする。また、血圧計本体10のLCD110にて外部に接続すべきタンク容量を表示可能にする。さらに、エアー容積が互いに異なる少なくとも二つのエアータンクを調整作業者に用意させ、血圧計本体10のコネクタ101に対するエアータンクの選択的な接続および交換を、調整作業者に手動で行わせる。そして、エアータンクが接続されている状態にて、基礎データ測定のスタート指示を、血圧計本体10のスタート釦109から行えるようにする。このようにすれば、指定容量のエアータンクを用意するだけで、基礎データの測定および記憶(セットアップ)を行うことが可能となる。つまり、専用の調整治具30がなくても基礎データの測定および記憶を行うことが可能となり、特に電動減圧弁103を交換した際の基礎データの再調整等の場合に有効である。さらには、調整治具30を接続するための通信ポート127b等が不要となるため、血圧計本体10のコストダウンにも寄与することになる。
【0103】
また、調整治具30を用いて基礎データ測定を自動的に行う場合において、本実施形態では、血圧計本体10および調整治具30が双方向通信を行う通信ポート127b,35を備えていたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、電源電圧変化からデジタルコード信号を抽出して特定の制御を行うという公知技術(例えば特許第4467263号公報参照)を利用すれば、血圧計本体10および調整治具30の間が単方向通信であっても、基礎データの測定および記憶を行うことが可能となる。具体的には、血圧計本体10の電源電圧を調整治具30から供給する構成とし、血圧計本体10の動作モード切替のための情報伝達を、上記公知技術を用いて調整治具30から血圧計本体10に対して行う。そして、血圧計本体10から調整治具30に対しては、エアータンク選択信号の出力のみを行う。このような構成とすれば、血圧計本体10と調整治具30の間で双方向の通信ポート127b,35は不要となり、コストダウンへも貢献することになる。
【0104】
以上のように、本発明は、上述した本実施形態の内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
10…血圧計本体、20…カフ帯、30…調整治具、102…加圧ポンプ、103…電動減圧弁、111…加圧ポンプ駆動回路、112…電動減圧弁駆動回路、113…不揮発性メモリ、115…プロセッサ部、121…加圧制御手段、122…計時手段、123…減圧制御手段、124…周囲長推定手段、125…血圧測定手段、126…測定結果補正手段、201…ブラダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定部位に囲繞されるカフ帯と、
前記カフ帯に内包される流体袋と、
前記流体袋内に流体を供給して当該流体袋内を加圧する加圧手段と、
所定圧に加圧された前記流体袋内から流体を排出して当該流体袋内を減圧する電動減圧弁と、
前記流体袋内の減圧を所定減圧速度で行うべく前記電動減圧弁による流体の排出流量を制御するための当該電動減圧弁の駆動エネルギー量を調整する電動減圧弁駆動回路と、
前記電動減圧弁駆動回路が調整する駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求める周囲長推定手段と
を備えることを特徴とする電子血圧計。
【請求項2】
前記流体袋内を減圧する過程で前記測定部位について血圧測定を行う血圧測定手段と、
前記周囲長推定手段が求めた前記測定部位の周囲長に基づき前記血圧測定手段による血圧測定の結果を補正する測定結果補正手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記駆動エネルギー量は、前記電動減圧弁の駆動電流値である
ことを特徴とする請求項1または2記載の電子血圧計。
【請求項4】
前記電動減圧弁の駆動電流値に準ずる情報である制御信号を前記電動減圧弁駆動回路に与えることで当該電動減圧弁駆動回路に対する駆動電流値の調整指示を行う減圧制御手段を備え、
前記周囲長推定手段は、前記減圧制御手段が前記電動減圧弁駆動回路に与える制御信号を用いて、前記測定部位の周囲長を求める
ことを特徴とする請求項3記載の電子血圧計。
【請求項5】
前記基礎データは、所定周囲長の場合における前記流体袋内の圧力と前記電動減圧弁の駆動エネルギー量との対応関係を規定するものであり、前記流体袋内の圧力値と前記電動減圧弁の駆動エネルギー量またはこれに準ずる情報とが与えられると当該駆動エネルギー量またはこれに準ずる情報に対応する前記測定部位の周囲長を特定し得るように構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子血圧計。
【請求項6】
前記周囲長推定手段は、前記流体袋内を減圧する過程で複数の圧力値について前記測定部位の周囲長を求めるとともに、当該複数の圧力値における各々の周囲長から一つの基準周囲長を特定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子血圧計。
【請求項7】
前記基礎データを記憶するデータ記憶手段と、
前記基礎データを特定するための測定および当該測定によって得られた前記基礎データの前記データ記憶手段内への書き込みを行うための調整治具が接続される接続手段と
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子血圧計。
【請求項8】
流体袋を内包するカフ帯を測定部位に囲繞した状態で当該流体袋内に流体を供給して当該流体袋内を加圧し、
所定圧に加圧された前記流体袋内から電動減圧弁を用いて流体を排出し当該流体袋内を減圧するとともに、前記流体袋内を減圧するときの減圧速度が所定速度となるように前記電動減圧弁による流体の排出流量を制御すべく当該電動減圧弁の駆動エネルギー量を調整し、
調整後の前記電動減圧弁の駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求める
ことを特徴とする測定部位周囲長推定方法。
【請求項9】
流体袋を内包するカフ帯を測定部位に囲繞した状態で当該流体袋内に流体を供給して当該流体袋内を加圧し、
所定圧に加圧された前記流体袋内から電動減圧弁を用いて流体を排出し当該流体袋内を減圧するとともに、前記流体袋内を減圧するときの減圧速度が所定速度となるように前記電動減圧弁による流体の排出流量を制御すべく当該電動減圧弁の駆動エネルギー量を調整し、
調整後の前記電動減圧弁の駆動エネルギー量と予め設定された基礎データとを利用して前記測定部位の周囲長を求め、
前記流体袋内を減圧する過程で前記測定部位について血圧測定を行い、
前記電動減圧弁の駆動エネルギー量を利用して求めた前記測定部位の周囲長に基づいて当該測定部位についての血圧測定の結果を補正する
ことを特徴とする血圧測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−65939(P2012−65939A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214789(P2010−214789)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000231590)日本精密測器株式会社 (64)
【Fターム(参考)】