電子装置を収容するキャビネットのための熱管理システム
動作時に加熱空気流を生成する電子装置(15)を収容するキャビネットにおいて使用するための熱管理システムが記述される。このシステムは、加熱空気流から熱を奪うために、電子装置によって生成された加熱空気流の通路の中に配置された蒸発器(32)と、キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に配置された凝縮器(34)と、蒸発器を凝縮器に直接接続して、蒸発器から凝縮器に熱を移動させるためのヒートパイプ36と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信装置などの電子装置を収容するのに使用されるキャビネットに関連する。
【背景技術】
【0002】
キャビネットは、敏感な電子装置を保護するための閉じた環境を提供するために使用される。装置の性質及びその場所によって、例えば環境条件、汚染、不正使用、更には破壊行為などの要素に対抗するための保護が必要であり得る。例えば通信ネットワークにおいては、分配ポイントでの受動交差接続通信モジュールを収容するために、屋外キャビネットが従来より使用されており、ここでは例えば、中央局までつながっているケーブルに、ローカルな加入者線を接続することができる。このようなキャビネットは、道路と同じ高さに位置することが多いが、電柱上又は建物の壁若しくは屋根に取り付けられることもある。キャビネットは屋内環境において、例えばオフィスビル内、又はオフィスビルの特定の階に位置する通信分配ポイントなどで、電子装置を収容するのにも使用され得る。
【0003】
通信キャビネットの内部コンパートメントは通常、通信装置が取り付けられるレール、ラック、パネル、及び/又はフレーム(又は同様の構成要素)の形態の支持材料を含む。この種のキャビネットは、例えば、米国特許第5467250号(Howardら)、米国特許出願第2004/114326号(Dodgenら)、及びPCT国際公開特許WO 02/32202号(Vidacovichら)に記述されている。
【0004】
キャビネット内に収容されている電子装置の性質は変化し続け、その結果、キャビネット自体に付与される機能的要件も変化し続ける。例えば、通信分野におけるxDSL(デジタル加入者線)技術の普及によって、通信キャビネットは、受動通信装置ばかりでなく能動通信装置も収容するのに益々使用されるようになっている。例えば能動装置には、データ信号を処理するデジタル加入者線アクセスマルチプレクサ(DSLAM)、並びに音声信号及びデータ信号を処理するマルチサービスアクセスノード(MSAN)が挙げられる。
【0005】
1つのキャビネット内に収容される能動装置の量が増大すると、キャビネット内で発生する熱の量も増大する。キャビネット内の装置を保護するために過剰な熱は除去しなければならず、この目的でさまざまなシステムが提案されている(例えばPCT国際公開特許WO 01/015507号(Tikka)、同WO 00/062590号(Bergerら)、並びに前述の米国特許出願第2004/0114326号及びPCT国際公開特許WO 02/032202号を参照)。
【0006】
通信用キャビネットの熱除去システムの電力消費量の低減、及び場合によってはそのシステムによって発生するノイズの低減の観点から、システム内のある場所から別の場所に熱を移動させるのにヒートパイプを用いるべきことも提案されている(例えば米国特許第6 603 660号(Ehnら)、PCT国際公開特許WO 03/065781号(Tsoi)、同WO 03/009663号(Hooveら)、及び同WO 00/014469号(Mannerjoki)を参照)。例えば、PCT国際公開特許WO 03/009663号は、電子構成要素の機能システム及びサブシステムに関する熱エネルギー管理アーキテクチャについて記述しており、これにおいて熱管理構成要素は実質的に熱のみで駆動される。1つの事例において、高電力電子構成要素に固定された蒸発プレートから、熱サイホンの蒸発器に接続された凝縮プレートへの熱の移動に、可撓性のヒートパイプが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子装置を収容するために新たに構築されたキャビネットで使用するのに適しているだけでなく、既に使用中のキャビネット内に必要に応じて設置することができるような、熱除去システムのニーズが依然として存在する。本発明は、このニーズを念頭になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、動作時に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネットにおいて使用するための熱管理システムであって、
加熱空気流から熱を奪うために、前記電子装置によって生成された加熱空気流の通路の中に配置されるように構成された蒸発器と、
キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に配置されるように構成された凝縮器と、
蒸発器を前記凝縮器に直接接続して、蒸発器から凝縮器に熱を移動させるためのヒートパイプと、を含む、システムを提供する。
【0009】
本明細書で使用される用語「ヒートパイプ」は、熱伝導流体を収容する密封システムの蒸発器部分と凝縮器部分との間の接続を形成する中空管を指し、この接続は、システムの蒸発器部分の熱伝導流体(液相)に熱が適用された場合、その熱が熱伝導流体(液相及び/又は気相)の媒体を通って、システムの凝縮器部分に伝導され、そこで熱が除去された後、冷却された熱伝導流体が蒸発器部分に帰るようになっている。蒸発器部分への熱伝導流体の還流は、ヒートパイプによる毛管作用の結果として、又はヒートパイプが垂直に配向されている場合は重力の影響によって、生じ得る。
【0010】
本発明は、例えば、装置全体に冷却空気流をもたらすために動作可能な空気流発生器(ファン又はブロワーなど)を含んでいるため、動作中に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネットに適用される。能動電子装置は、典型的に、ファン又はブロワーの形態で、それ自体に冷却機構が組み込まれており、本発明は、熱管理システムの蒸発器の場所として、結果として得られる加熱空気流の通路を利用することを伴ってもよく、これにより、キャビネット内の能動電子装置上に蒸発器を直接配置する必要を回避できる。既に使用中のキャビネット内へのシステム設置がこれにより容易になり、更に、ヒートパイプの少なくとも一部分が可撓性で、これにより能動装置に対する蒸発器の位置を調整することができるようになっている場合には、より容易になり得る。別の方法としては、好適な空気流発生器を必要に応じてキャビネット内の好適な位置に別個に供給して、能動電子装置全体に冷却空気流をもたらすことができる。
【0011】
本発明によるシステムにおいて、蒸発器の上方に凝縮器を位置させることにより、熱伝導流体の媒体を介して、ポンプの必要なしに(これにより関連するエネルギー消費及びノイズを回避できる)、並びに凝縮器から蒸発器への熱伝導流体の還流を促進する毛管構造を有するヒートパイプの必要なしに、システム内の熱を移動させることが可能になる。
【0012】
本発明によるシステムは、冷却空気流を生成するように構成済みのキャビネット内において有利に使用することができ、ここにおいてシステムの凝縮器は、キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるように位置することができる。例えば一部のキャビネットにおいて、壁は、自然対流により内部コンパートメント周囲に冷却空気流を促進するように意図された、キャビネットの内部コンパートメント周囲の空隙を形成する、二重シェル構成体である。別の方法として、又はこれに加えて、一部のキャビネットには、強制対流により内部コンパートメントを通る冷却空気流を促進するように意図されたファンが組み込まれる。本発明の熱管理システムの凝縮器に関する好適な位置の1つは、キャビネットの天板であるが、これは必須ではない。
【0013】
本発明のシステムに採用される熱伝導流体は、使用中にシステムが曝される動作温度、及び放散される熱量を考慮して選択されるべきである。すべてのヒートパイプシステムに関して、効率的な熱伝導を実現するために、本発明によるシステムで熱伝導流体を(液相で)充填すべき最適の液量が存在する。典型的には、熱伝導システムは、液相の熱伝導流体を50体積%を超えて充填されるが、完全には充填されない。最適な充填液量は、実験によって決定することができ、典型的には、液相及び気相の両方の熱伝導流体の媒体を介して、システムの蒸発器から凝縮器への熱伝導が起こる量である。
【0014】
本発明による熱管理システムの構成要素は、別々に供給されることができる。しかしながら、好ましくは、システムは組立済みで、熱伝導流体を収容した状態で供給される。システムは、好ましくは更なる構成要素(例えば1つ以上の追加の蒸発器及び/又は1つ以上の追加の凝縮器)の追加が許容される。
【0015】
蒸発器及び凝縮器は、任意の好適な形態であってよく、また類似の構成体であってよい。好適な形態の1つはラジエーターであり、これは、自動車の内燃機関を冷却するのに使用される、液体充填タイプのラジエーターに類似の構成体であり得る。
【0016】
システムのヒートパイプには任意の好適な中空管を使用してよく、例えば液圧ブレーキホースを使用することができる。
【0017】
本発明によるシステムは、電子装置を収容するキャビネット内にシステムの蒸発器及び/又は凝縮器を取り付けるための手段を更に含み得る。例えば通信キャビネットの場合、システムには、通信装置を取り付けるためにキャビネット内に既に存在するラック上に、蒸発器及び/又は凝縮器を取り付けるために好適な構成要素が含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
例示のため、添付図面を参照しながら、本発明による熱管理システムについて説明する。
【図1】通信システムに使用される屋外キャビネットの例。
【図2】図1のキャビネットの内部を示す。
【図3】キャビネット内部の通信装置の、1つの可能なレイアウトの概略図。
【図4】本発明による熱管理システムの概略図。
【図5】通信システムの屋外キャビネット内に設置された図4の熱管理システム。
【図6】図4の熱管理システムの構成要素。
【図7】図4の熱管理システムの改造。
【図8】図4の熱管理システムの改造。
【図9】図4の熱管理システムの改造。
【図10】図4の熱管理システムの改造。
【図11】図4の熱管理システムの改造。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び2は、通信システムのキャビネット(この場合は屋外キャビネット1)を示し、この中に本発明による熱管理システムを設置することができる。図示されているキャビネットは、好適なプラットフォーム上に立てるか、又は必要に応じて電柱若しくは建物の壁に取り付けることができ、キャビネットには後壁3(図1では見えない)、天板5、及びドア7があり、このドアが閉じているときにキャビネットの前壁が形成される。図2に示すように、ドア7が開くとラック11を収容するコンパートメント9が露わになり、ここに端末ブロック及びDSLAMなどの通信装置を取り付けることができ、これにより設置及びメンテナンスの目的にアクセス可能となる。いくつかの場合において、キャビネットには1つを超える内部コンパートメントが含まれ得る。
【0020】
周知のように、通信システム用の屋外キャビネットは多くの形態をとることが可能であり、図1及び2に示すキャビネットは一例にすぎない。通信分野以外でも、電子装置を収容するために同様のキャビネットを使用することもできる。他のキャビネットの例には、スイッチキャビネット、配電キャビネット、及び交通制御電子装置を収容するキャビネットが挙げられる。
【0021】
図3は、屋外キャビネットの内部コンパートメントにおける通信モジュールの、1つの可能な配列の概略を示す。この場合、端末ブロック13の配列形態での受動装置がコンパートメント9の一部に示されており、DSLAM 15の形態での能動装置が電源17とともに同じコンパートメントの別の部分に示されている。DSLAMモジュール15には、モジュール15に冷却空気流を発生させるファン15Aが含まれている。
【0022】
図3に示すキャビネットは、内部コンパートメント9の回りに空隙19を形成する従来型の二重シェル構成体を有しており、これにより太陽放射に対する熱分離が得られる。キャビネットが使用中のとき、能動装置15及び電源17によって発生した熱は、コンパートメント9内、及びキャビネットの二重シェル構成体によってもたらされる周囲の空隙19内の自然対流により、ある程度放散される。更に多くの熱を放散する必要がある場合は、1つ以上のファン21をキャビネットの天板5に備えることができ、これによりコンパートメント9を通る空気の流れを増強することができる。
【0023】
図3に示すような屋外用キャビネットにおける能動装置の使用が増大すると、内部コンパートメント9からのより大きな熱量を除去する必要が生じ、これにより、キャビネット内に収容されている装置が、その動作に悪影響をもたらし得るような温度に曝されないようにしなければならない。多くの場合、これは上述のような熱放散メカニズムに頼っても達成することはできない。
【0024】
図4は、コンパートメント9から除去する熱量を増大させるために、図3のキャビネットに設置することができる熱管理システム30である。システム30は、蒸発器32と、凝縮器34と、蒸発器32を凝縮器34に直接接続しているヒートパイプ36(分枝36A、36Bを有する)と、を含む。このシステムには熱伝導液体が含まれ、密閉されている。システム30は単相システムとして機能するように意図されたものであってよく、ここにおいて、熱が蒸発器32に適用されると、加熱された熱伝導液体がヒートパイプ36に沿って凝縮器34に移動し、ここで液体が熱を放出し、蒸発器32に帰る。別の方法としては、システム30は二相システムとして機能するように意図されたものであってよく、ここにおいて、熱が蒸発器32に適用されると、熱伝導液体が気化し、この蒸気がヒートパイプ36に沿って凝縮器34に移動し、ここで蒸気が熱を放出し凝縮して液相に戻って、蒸発器32に帰る。いくつかの場合において、加熱された熱伝導液体は、蒸気とともにヒートパイプに沿って凝縮器34に移動してもよく、ここでやはり熱を放出して蒸発器32に帰る。両タイプのシステムにおいて、熱伝導液体は、ヒートパイプ36による毛管作用の結果として、又はヒートパイプが垂直に配向されている場合は、重力の影響によって蒸発器32に帰る。ヒートパイプ及びその動作の方法については周知である。
【0025】
図5は、図3のキャビネットに設置された熱管理システム30を示す。蒸発器32は、ファン15AによってDSLAM 15から生成された加熱空気流の中に位置し、凝縮器34はキャビネットの天板5の冷却空気流の中(例えば、ファン21の空気取り入れ口(存在する場合)又はキャビネット内の自然対流による空気流の中)に配置されている。ヒートパイプ36は実質的に垂直に配向されている。システムは、上述のように、蒸発器32によって吸収された熱を凝縮器34に伝導するように機能し、ここからこの熱は外へと伝導される。蒸発器32及び凝縮器34はキャビネット内に任意の好適な方法で取り付けることができるが、好ましくは、例えばキャビネット内の通信装置を取り付けるのに使用されるものと同様の取り付けねじを用いる、既にキャビネット内にあるラック11を利用する。
【0026】
蒸発器32及び凝縮器34は好適な任意の既知のタイプのものでよく、また同じ構成体であってよい。好適な構成体の一例は、複数の冷却フィンを有する自動車の内燃機関の冷却システムに使用される液体充填タイプのラジエーターである。図6は、図4の蒸発器32及び凝縮器34(1つだけを図示)として使用されているそのようなラジエーターを示す。このタイプのラジエーターは、パーソナルコンピューター(PC)デバイスの熱産出が増大するにつれ、パーソナルコンピューターを冷却するために使用されることが益々多くなっており、現在、電子装置を収容するキャビネットに使用するのに適した寸法の、効率的なコンパクト形態のものが入手できる。本発明によるシステムにおける使用に適したラジエーターの一例は、Hardware Labs(フィリピン、ケソンシティ)から商標名「Black Ice」として入手可能なものである。
【0027】
ヒートパイプ36も、好適な任意の既知のタイプのものでよいが、パイプは通常、実質的に垂直に配向され、その正常な動作は重力に依存できるため、有利さの点からは、毛管作用を生じない単純なタイプのものであってよい。従来型の液圧ホースをヒートパイプに使用することができ、好適な製品はContinental Automotive Systems(ドイツ、フランクフルトアムマイン)から入手できる。
【0028】
熱管理システム30に使用される熱伝導流体は、ヒートパイプの使用に好適な既知の任意のタイプのものでよく、システムの予想される動作温度を考慮して選択される。熱伝導流体は例えば、PCT国際公開特許WO/98/37163号(Owensら)及び同WO 99/41428号(Owens and Anome)に記述されている。熱伝導流体は、例えばメチルペルフルオロプロピルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルを含み得る。特に好適な熱伝導流体は、3M Company(米国ミネソタ州セントポール)から販売されているNovec(商標)Engineered Fluid HFE−7100である。この特定の流体については、システム30に使用するための好ましい選択肢となるような数多くの有利な特性を有している。例えば、オゾン層破壊性がゼロであり、良好な材料適合性、良好な熱安定性、及び低毒性を有し、並びに非引火性かつ非腐食性である。
【0029】
熱伝導流体は液体の形態で熱管理システム30に入れられ、次に密封される。システムを二相システムとして機能させる場合、気化を可能にするため、システムを液で完全には充填しないが、典型的にはシステム体積の50%を超えるように充填される。システムの効率的な動作を確実にするための最適な液量は、実験によって決定することができ、典型的には、液相及び気相の両方で熱伝導流体の媒体を介して、蒸発器32から凝縮器34への熱伝導が起こる量である。
【0030】
図7〜11は、図4の熱伝導システムの改造を示す。図7は、凝縮器34を1つだけ含むシステム40である。このシステムはモジュールシステムの基本単位を形成することができ、好適な流体継ぎ手を使用することにより、システムが使用されるキャビネットの要件に応じて他の構成要素をこれに追加することができる。例えば、ヒートパイプ36のポイント43にセルフシールの流体継ぎ手を供給することにより、図7の単一凝縮器34は、図8に示すように2つの凝縮器44に置き換えることができ、これにより図4に示されているものに似たシステムが得られる。別の方法としては、又はこれに加えて、図7の単一蒸発器32は、図9に示すように2つの蒸発器45に置き換えることができ、これにより、例えばキャビネット内にある2つのDSLAMから発生する熱を移動させるのに使用することができるシステムを提供することができる。同様の、又は代替の改造は、熱伝導システムにおいて他のポイントにセルフシール継ぎ手を供給することによって実現することができる。セルフシール流体継ぎ手は既知であり、例えばバネ付勢弁を含むタイプ(継ぎ手が接続されると自動的に開き、継ぎ手の接続が外されると閉まる)の継ぎ手が挙げられる。セルフシール継ぎ手の例は、英国特許GB 698 571号、米国特許第2 753 195号、同第6 499 717号、及び同第2004/031942号に記述されている。図7〜9のシステムに使用するのに好適なセルフシール継ぎ手は、Rectus AG(ドイツ、エヒターディンゲン)から商品名「74KB」として入手可能である。
【0031】
図10及び11は図8及び9と同様のシステムを示し、ここにおいて各ヒートパイプ36の一部分47が可撓性である。可撓性部分47は、図に示すように、ヒートパイプのポイント43でのセルフシール継ぎ手と蒸発器32、45との間に有利に設けられる。可撓性部分47を含めることにより、熱伝導システムが使用されるキャビネット内の能動装置の近くに各蒸発器を配置するのが容易になり、システムの汎用性が増大する。
【0032】
図7に示す熱伝導システム(必要に応じて、図8〜11を参照して記述される追加構成要素を含む)は、新しいキャビネット内に設置することができ、更には、既に使用中であるが、キャビネットに含まれる能動装置の量が増大したために既存の熱除去システムが不適切になってきているものにも設置することができる。
【0033】
図1〜11は、通信用キャビネットにおける、本発明による熱管理システムを示しているが、同様のシステムを、能動電子構成要素/装置を収容する任意のキャビネットに使用することができることが認識される。更に、図1及び2に示されているキャビネットは屋外キャビネットであるが、本発明によるシステムは、キャビネット内から除去された熱が建物内の周囲空気に伝導されるような、建物内に位置するキャビネットにも同様に使用することができる。キャビネット内の熱発生電子装置が、装置を冷却する空気流を生成するためのファンを備えていない場合には、熱管理システムとともにキャビネット内に適切なファンを設置することができる。更に、キャビネットの天板は、熱管理システムの凝縮器のために便利な場所であるが、他の場所も使用できることが理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信装置などの電子装置を収容するのに使用されるキャビネットに関連する。
【背景技術】
【0002】
キャビネットは、敏感な電子装置を保護するための閉じた環境を提供するために使用される。装置の性質及びその場所によって、例えば環境条件、汚染、不正使用、更には破壊行為などの要素に対抗するための保護が必要であり得る。例えば通信ネットワークにおいては、分配ポイントでの受動交差接続通信モジュールを収容するために、屋外キャビネットが従来より使用されており、ここでは例えば、中央局までつながっているケーブルに、ローカルな加入者線を接続することができる。このようなキャビネットは、道路と同じ高さに位置することが多いが、電柱上又は建物の壁若しくは屋根に取り付けられることもある。キャビネットは屋内環境において、例えばオフィスビル内、又はオフィスビルの特定の階に位置する通信分配ポイントなどで、電子装置を収容するのにも使用され得る。
【0003】
通信キャビネットの内部コンパートメントは通常、通信装置が取り付けられるレール、ラック、パネル、及び/又はフレーム(又は同様の構成要素)の形態の支持材料を含む。この種のキャビネットは、例えば、米国特許第5467250号(Howardら)、米国特許出願第2004/114326号(Dodgenら)、及びPCT国際公開特許WO 02/32202号(Vidacovichら)に記述されている。
【0004】
キャビネット内に収容されている電子装置の性質は変化し続け、その結果、キャビネット自体に付与される機能的要件も変化し続ける。例えば、通信分野におけるxDSL(デジタル加入者線)技術の普及によって、通信キャビネットは、受動通信装置ばかりでなく能動通信装置も収容するのに益々使用されるようになっている。例えば能動装置には、データ信号を処理するデジタル加入者線アクセスマルチプレクサ(DSLAM)、並びに音声信号及びデータ信号を処理するマルチサービスアクセスノード(MSAN)が挙げられる。
【0005】
1つのキャビネット内に収容される能動装置の量が増大すると、キャビネット内で発生する熱の量も増大する。キャビネット内の装置を保護するために過剰な熱は除去しなければならず、この目的でさまざまなシステムが提案されている(例えばPCT国際公開特許WO 01/015507号(Tikka)、同WO 00/062590号(Bergerら)、並びに前述の米国特許出願第2004/0114326号及びPCT国際公開特許WO 02/032202号を参照)。
【0006】
通信用キャビネットの熱除去システムの電力消費量の低減、及び場合によってはそのシステムによって発生するノイズの低減の観点から、システム内のある場所から別の場所に熱を移動させるのにヒートパイプを用いるべきことも提案されている(例えば米国特許第6 603 660号(Ehnら)、PCT国際公開特許WO 03/065781号(Tsoi)、同WO 03/009663号(Hooveら)、及び同WO 00/014469号(Mannerjoki)を参照)。例えば、PCT国際公開特許WO 03/009663号は、電子構成要素の機能システム及びサブシステムに関する熱エネルギー管理アーキテクチャについて記述しており、これにおいて熱管理構成要素は実質的に熱のみで駆動される。1つの事例において、高電力電子構成要素に固定された蒸発プレートから、熱サイホンの蒸発器に接続された凝縮プレートへの熱の移動に、可撓性のヒートパイプが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子装置を収容するために新たに構築されたキャビネットで使用するのに適しているだけでなく、既に使用中のキャビネット内に必要に応じて設置することができるような、熱除去システムのニーズが依然として存在する。本発明は、このニーズを念頭になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、動作時に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネットにおいて使用するための熱管理システムであって、
加熱空気流から熱を奪うために、前記電子装置によって生成された加熱空気流の通路の中に配置されるように構成された蒸発器と、
キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に配置されるように構成された凝縮器と、
蒸発器を前記凝縮器に直接接続して、蒸発器から凝縮器に熱を移動させるためのヒートパイプと、を含む、システムを提供する。
【0009】
本明細書で使用される用語「ヒートパイプ」は、熱伝導流体を収容する密封システムの蒸発器部分と凝縮器部分との間の接続を形成する中空管を指し、この接続は、システムの蒸発器部分の熱伝導流体(液相)に熱が適用された場合、その熱が熱伝導流体(液相及び/又は気相)の媒体を通って、システムの凝縮器部分に伝導され、そこで熱が除去された後、冷却された熱伝導流体が蒸発器部分に帰るようになっている。蒸発器部分への熱伝導流体の還流は、ヒートパイプによる毛管作用の結果として、又はヒートパイプが垂直に配向されている場合は重力の影響によって、生じ得る。
【0010】
本発明は、例えば、装置全体に冷却空気流をもたらすために動作可能な空気流発生器(ファン又はブロワーなど)を含んでいるため、動作中に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネットに適用される。能動電子装置は、典型的に、ファン又はブロワーの形態で、それ自体に冷却機構が組み込まれており、本発明は、熱管理システムの蒸発器の場所として、結果として得られる加熱空気流の通路を利用することを伴ってもよく、これにより、キャビネット内の能動電子装置上に蒸発器を直接配置する必要を回避できる。既に使用中のキャビネット内へのシステム設置がこれにより容易になり、更に、ヒートパイプの少なくとも一部分が可撓性で、これにより能動装置に対する蒸発器の位置を調整することができるようになっている場合には、より容易になり得る。別の方法としては、好適な空気流発生器を必要に応じてキャビネット内の好適な位置に別個に供給して、能動電子装置全体に冷却空気流をもたらすことができる。
【0011】
本発明によるシステムにおいて、蒸発器の上方に凝縮器を位置させることにより、熱伝導流体の媒体を介して、ポンプの必要なしに(これにより関連するエネルギー消費及びノイズを回避できる)、並びに凝縮器から蒸発器への熱伝導流体の還流を促進する毛管構造を有するヒートパイプの必要なしに、システム内の熱を移動させることが可能になる。
【0012】
本発明によるシステムは、冷却空気流を生成するように構成済みのキャビネット内において有利に使用することができ、ここにおいてシステムの凝縮器は、キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるように位置することができる。例えば一部のキャビネットにおいて、壁は、自然対流により内部コンパートメント周囲に冷却空気流を促進するように意図された、キャビネットの内部コンパートメント周囲の空隙を形成する、二重シェル構成体である。別の方法として、又はこれに加えて、一部のキャビネットには、強制対流により内部コンパートメントを通る冷却空気流を促進するように意図されたファンが組み込まれる。本発明の熱管理システムの凝縮器に関する好適な位置の1つは、キャビネットの天板であるが、これは必須ではない。
【0013】
本発明のシステムに採用される熱伝導流体は、使用中にシステムが曝される動作温度、及び放散される熱量を考慮して選択されるべきである。すべてのヒートパイプシステムに関して、効率的な熱伝導を実現するために、本発明によるシステムで熱伝導流体を(液相で)充填すべき最適の液量が存在する。典型的には、熱伝導システムは、液相の熱伝導流体を50体積%を超えて充填されるが、完全には充填されない。最適な充填液量は、実験によって決定することができ、典型的には、液相及び気相の両方の熱伝導流体の媒体を介して、システムの蒸発器から凝縮器への熱伝導が起こる量である。
【0014】
本発明による熱管理システムの構成要素は、別々に供給されることができる。しかしながら、好ましくは、システムは組立済みで、熱伝導流体を収容した状態で供給される。システムは、好ましくは更なる構成要素(例えば1つ以上の追加の蒸発器及び/又は1つ以上の追加の凝縮器)の追加が許容される。
【0015】
蒸発器及び凝縮器は、任意の好適な形態であってよく、また類似の構成体であってよい。好適な形態の1つはラジエーターであり、これは、自動車の内燃機関を冷却するのに使用される、液体充填タイプのラジエーターに類似の構成体であり得る。
【0016】
システムのヒートパイプには任意の好適な中空管を使用してよく、例えば液圧ブレーキホースを使用することができる。
【0017】
本発明によるシステムは、電子装置を収容するキャビネット内にシステムの蒸発器及び/又は凝縮器を取り付けるための手段を更に含み得る。例えば通信キャビネットの場合、システムには、通信装置を取り付けるためにキャビネット内に既に存在するラック上に、蒸発器及び/又は凝縮器を取り付けるために好適な構成要素が含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
例示のため、添付図面を参照しながら、本発明による熱管理システムについて説明する。
【図1】通信システムに使用される屋外キャビネットの例。
【図2】図1のキャビネットの内部を示す。
【図3】キャビネット内部の通信装置の、1つの可能なレイアウトの概略図。
【図4】本発明による熱管理システムの概略図。
【図5】通信システムの屋外キャビネット内に設置された図4の熱管理システム。
【図6】図4の熱管理システムの構成要素。
【図7】図4の熱管理システムの改造。
【図8】図4の熱管理システムの改造。
【図9】図4の熱管理システムの改造。
【図10】図4の熱管理システムの改造。
【図11】図4の熱管理システムの改造。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び2は、通信システムのキャビネット(この場合は屋外キャビネット1)を示し、この中に本発明による熱管理システムを設置することができる。図示されているキャビネットは、好適なプラットフォーム上に立てるか、又は必要に応じて電柱若しくは建物の壁に取り付けることができ、キャビネットには後壁3(図1では見えない)、天板5、及びドア7があり、このドアが閉じているときにキャビネットの前壁が形成される。図2に示すように、ドア7が開くとラック11を収容するコンパートメント9が露わになり、ここに端末ブロック及びDSLAMなどの通信装置を取り付けることができ、これにより設置及びメンテナンスの目的にアクセス可能となる。いくつかの場合において、キャビネットには1つを超える内部コンパートメントが含まれ得る。
【0020】
周知のように、通信システム用の屋外キャビネットは多くの形態をとることが可能であり、図1及び2に示すキャビネットは一例にすぎない。通信分野以外でも、電子装置を収容するために同様のキャビネットを使用することもできる。他のキャビネットの例には、スイッチキャビネット、配電キャビネット、及び交通制御電子装置を収容するキャビネットが挙げられる。
【0021】
図3は、屋外キャビネットの内部コンパートメントにおける通信モジュールの、1つの可能な配列の概略を示す。この場合、端末ブロック13の配列形態での受動装置がコンパートメント9の一部に示されており、DSLAM 15の形態での能動装置が電源17とともに同じコンパートメントの別の部分に示されている。DSLAMモジュール15には、モジュール15に冷却空気流を発生させるファン15Aが含まれている。
【0022】
図3に示すキャビネットは、内部コンパートメント9の回りに空隙19を形成する従来型の二重シェル構成体を有しており、これにより太陽放射に対する熱分離が得られる。キャビネットが使用中のとき、能動装置15及び電源17によって発生した熱は、コンパートメント9内、及びキャビネットの二重シェル構成体によってもたらされる周囲の空隙19内の自然対流により、ある程度放散される。更に多くの熱を放散する必要がある場合は、1つ以上のファン21をキャビネットの天板5に備えることができ、これによりコンパートメント9を通る空気の流れを増強することができる。
【0023】
図3に示すような屋外用キャビネットにおける能動装置の使用が増大すると、内部コンパートメント9からのより大きな熱量を除去する必要が生じ、これにより、キャビネット内に収容されている装置が、その動作に悪影響をもたらし得るような温度に曝されないようにしなければならない。多くの場合、これは上述のような熱放散メカニズムに頼っても達成することはできない。
【0024】
図4は、コンパートメント9から除去する熱量を増大させるために、図3のキャビネットに設置することができる熱管理システム30である。システム30は、蒸発器32と、凝縮器34と、蒸発器32を凝縮器34に直接接続しているヒートパイプ36(分枝36A、36Bを有する)と、を含む。このシステムには熱伝導液体が含まれ、密閉されている。システム30は単相システムとして機能するように意図されたものであってよく、ここにおいて、熱が蒸発器32に適用されると、加熱された熱伝導液体がヒートパイプ36に沿って凝縮器34に移動し、ここで液体が熱を放出し、蒸発器32に帰る。別の方法としては、システム30は二相システムとして機能するように意図されたものであってよく、ここにおいて、熱が蒸発器32に適用されると、熱伝導液体が気化し、この蒸気がヒートパイプ36に沿って凝縮器34に移動し、ここで蒸気が熱を放出し凝縮して液相に戻って、蒸発器32に帰る。いくつかの場合において、加熱された熱伝導液体は、蒸気とともにヒートパイプに沿って凝縮器34に移動してもよく、ここでやはり熱を放出して蒸発器32に帰る。両タイプのシステムにおいて、熱伝導液体は、ヒートパイプ36による毛管作用の結果として、又はヒートパイプが垂直に配向されている場合は、重力の影響によって蒸発器32に帰る。ヒートパイプ及びその動作の方法については周知である。
【0025】
図5は、図3のキャビネットに設置された熱管理システム30を示す。蒸発器32は、ファン15AによってDSLAM 15から生成された加熱空気流の中に位置し、凝縮器34はキャビネットの天板5の冷却空気流の中(例えば、ファン21の空気取り入れ口(存在する場合)又はキャビネット内の自然対流による空気流の中)に配置されている。ヒートパイプ36は実質的に垂直に配向されている。システムは、上述のように、蒸発器32によって吸収された熱を凝縮器34に伝導するように機能し、ここからこの熱は外へと伝導される。蒸発器32及び凝縮器34はキャビネット内に任意の好適な方法で取り付けることができるが、好ましくは、例えばキャビネット内の通信装置を取り付けるのに使用されるものと同様の取り付けねじを用いる、既にキャビネット内にあるラック11を利用する。
【0026】
蒸発器32及び凝縮器34は好適な任意の既知のタイプのものでよく、また同じ構成体であってよい。好適な構成体の一例は、複数の冷却フィンを有する自動車の内燃機関の冷却システムに使用される液体充填タイプのラジエーターである。図6は、図4の蒸発器32及び凝縮器34(1つだけを図示)として使用されているそのようなラジエーターを示す。このタイプのラジエーターは、パーソナルコンピューター(PC)デバイスの熱産出が増大するにつれ、パーソナルコンピューターを冷却するために使用されることが益々多くなっており、現在、電子装置を収容するキャビネットに使用するのに適した寸法の、効率的なコンパクト形態のものが入手できる。本発明によるシステムにおける使用に適したラジエーターの一例は、Hardware Labs(フィリピン、ケソンシティ)から商標名「Black Ice」として入手可能なものである。
【0027】
ヒートパイプ36も、好適な任意の既知のタイプのものでよいが、パイプは通常、実質的に垂直に配向され、その正常な動作は重力に依存できるため、有利さの点からは、毛管作用を生じない単純なタイプのものであってよい。従来型の液圧ホースをヒートパイプに使用することができ、好適な製品はContinental Automotive Systems(ドイツ、フランクフルトアムマイン)から入手できる。
【0028】
熱管理システム30に使用される熱伝導流体は、ヒートパイプの使用に好適な既知の任意のタイプのものでよく、システムの予想される動作温度を考慮して選択される。熱伝導流体は例えば、PCT国際公開特許WO/98/37163号(Owensら)及び同WO 99/41428号(Owens and Anome)に記述されている。熱伝導流体は、例えばメチルペルフルオロプロピルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルを含み得る。特に好適な熱伝導流体は、3M Company(米国ミネソタ州セントポール)から販売されているNovec(商標)Engineered Fluid HFE−7100である。この特定の流体については、システム30に使用するための好ましい選択肢となるような数多くの有利な特性を有している。例えば、オゾン層破壊性がゼロであり、良好な材料適合性、良好な熱安定性、及び低毒性を有し、並びに非引火性かつ非腐食性である。
【0029】
熱伝導流体は液体の形態で熱管理システム30に入れられ、次に密封される。システムを二相システムとして機能させる場合、気化を可能にするため、システムを液で完全には充填しないが、典型的にはシステム体積の50%を超えるように充填される。システムの効率的な動作を確実にするための最適な液量は、実験によって決定することができ、典型的には、液相及び気相の両方で熱伝導流体の媒体を介して、蒸発器32から凝縮器34への熱伝導が起こる量である。
【0030】
図7〜11は、図4の熱伝導システムの改造を示す。図7は、凝縮器34を1つだけ含むシステム40である。このシステムはモジュールシステムの基本単位を形成することができ、好適な流体継ぎ手を使用することにより、システムが使用されるキャビネットの要件に応じて他の構成要素をこれに追加することができる。例えば、ヒートパイプ36のポイント43にセルフシールの流体継ぎ手を供給することにより、図7の単一凝縮器34は、図8に示すように2つの凝縮器44に置き換えることができ、これにより図4に示されているものに似たシステムが得られる。別の方法としては、又はこれに加えて、図7の単一蒸発器32は、図9に示すように2つの蒸発器45に置き換えることができ、これにより、例えばキャビネット内にある2つのDSLAMから発生する熱を移動させるのに使用することができるシステムを提供することができる。同様の、又は代替の改造は、熱伝導システムにおいて他のポイントにセルフシール継ぎ手を供給することによって実現することができる。セルフシール流体継ぎ手は既知であり、例えばバネ付勢弁を含むタイプ(継ぎ手が接続されると自動的に開き、継ぎ手の接続が外されると閉まる)の継ぎ手が挙げられる。セルフシール継ぎ手の例は、英国特許GB 698 571号、米国特許第2 753 195号、同第6 499 717号、及び同第2004/031942号に記述されている。図7〜9のシステムに使用するのに好適なセルフシール継ぎ手は、Rectus AG(ドイツ、エヒターディンゲン)から商品名「74KB」として入手可能である。
【0031】
図10及び11は図8及び9と同様のシステムを示し、ここにおいて各ヒートパイプ36の一部分47が可撓性である。可撓性部分47は、図に示すように、ヒートパイプのポイント43でのセルフシール継ぎ手と蒸発器32、45との間に有利に設けられる。可撓性部分47を含めることにより、熱伝導システムが使用されるキャビネット内の能動装置の近くに各蒸発器を配置するのが容易になり、システムの汎用性が増大する。
【0032】
図7に示す熱伝導システム(必要に応じて、図8〜11を参照して記述される追加構成要素を含む)は、新しいキャビネット内に設置することができ、更には、既に使用中であるが、キャビネットに含まれる能動装置の量が増大したために既存の熱除去システムが不適切になってきているものにも設置することができる。
【0033】
図1〜11は、通信用キャビネットにおける、本発明による熱管理システムを示しているが、同様のシステムを、能動電子構成要素/装置を収容する任意のキャビネットに使用することができることが認識される。更に、図1及び2に示されているキャビネットは屋外キャビネットであるが、本発明によるシステムは、キャビネット内から除去された熱が建物内の周囲空気に伝導されるような、建物内に位置するキャビネットにも同様に使用することができる。キャビネット内の熱発生電子装置が、装置を冷却する空気流を生成するためのファンを備えていない場合には、熱管理システムとともにキャビネット内に適切なファンを設置することができる。更に、キャビネットの天板は、熱管理システムの凝縮器のために便利な場所であるが、他の場所も使用できることが理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱空気流から熱を奪うために、前記キャビネット内で前記電子装置によって生成された加熱空気流の通路の中に配置されるように構成された蒸発器と、
前記キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、前記蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に配置されるように構成された凝縮器と、
前記蒸発器を前記凝縮器に直接接続して、前記蒸発器から前記凝縮器に熱を移動させるためのヒートパイプと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記蒸発器、前記凝縮器及び前記ヒートパイプが、熱伝導流体であらかじめ充填された密封システムを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱伝導流体が、例えばメチルペルフルオロプロピルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記蒸発器、前記凝縮器及び前記ヒートパイプが、別々の構成要素として供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヒートパイプの少なくとも一部分が可撓性であり、これにより前記蒸発器及び前記凝縮器の相対的位置を調整することができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ヒートパイプが、追加の凝縮器及び/又は追加の蒸発器をこの場所に接続することを可能とする、少なくとも1つの流体継ぎ手を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記継ぎ手がセルフシール継ぎ手である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記蒸発器及び前記凝縮器のうち少なくとも1つがラジエーターである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
電子装置を収容するキャビネット内に前記蒸発器及び/又は凝縮器を取り付けるための手段を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
動作中に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネット内に、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱管理システムを組み込む方法であって、
前記装置により生成される前記加熱空気流の通路の中に前記蒸発器を配置する工程と、
前記キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、前記蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に前記凝縮器を配置する工程と、
前記ヒートパイプにより前記蒸発器を前記凝縮器に直接接続する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記ヒートパイプの位置を調整する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記凝縮器を配置する工程が、前記キャビネット内の自然対流及び/又は強制対流によって生じる冷却空気流の通路の中に前記凝縮器を配置することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
動作時に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネットであって、前記キャビネットは、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱管理システムを備え、これにより
加熱空気流から熱を奪うために、前記装置によって生成された加熱空気流の通路の中に前記蒸発器が配置され、
前記ハウジングの外の周囲空気に熱を移動させるために、前記蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に前記凝縮器が配置され、
前記蒸発器から前記凝縮器に熱を移動させるために、前記ヒートパイプが前記蒸発器を前記凝縮器に直接接続する、
キャビネット。
【請求項14】
前記装置全体に冷却空気流をもたらすために動作可能なファン又はブロワーを含み、これにより前記加熱空気流を生成する、請求項13に記載のキャビネット。
【請求項15】
前記凝縮器が、前記キャビネット内の自然対流及び/又は強制対流によって生じる冷却空気流の通路の中に配置される、請求項13又は14に記載のキャビネット。
【請求項1】
加熱空気流から熱を奪うために、前記キャビネット内で前記電子装置によって生成された加熱空気流の通路の中に配置されるように構成された蒸発器と、
前記キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、前記蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に配置されるように構成された凝縮器と、
前記蒸発器を前記凝縮器に直接接続して、前記蒸発器から前記凝縮器に熱を移動させるためのヒートパイプと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記蒸発器、前記凝縮器及び前記ヒートパイプが、熱伝導流体であらかじめ充填された密封システムを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱伝導流体が、例えばメチルペルフルオロプロピルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記蒸発器、前記凝縮器及び前記ヒートパイプが、別々の構成要素として供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヒートパイプの少なくとも一部分が可撓性であり、これにより前記蒸発器及び前記凝縮器の相対的位置を調整することができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ヒートパイプが、追加の凝縮器及び/又は追加の蒸発器をこの場所に接続することを可能とする、少なくとも1つの流体継ぎ手を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記継ぎ手がセルフシール継ぎ手である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記蒸発器及び前記凝縮器のうち少なくとも1つがラジエーターである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
電子装置を収容するキャビネット内に前記蒸発器及び/又は凝縮器を取り付けるための手段を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
動作中に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネット内に、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱管理システムを組み込む方法であって、
前記装置により生成される前記加熱空気流の通路の中に前記蒸発器を配置する工程と、
前記キャビネットの外の周囲空気に熱を移動させるために、前記蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に前記凝縮器を配置する工程と、
前記ヒートパイプにより前記蒸発器を前記凝縮器に直接接続する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記ヒートパイプの位置を調整する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記凝縮器を配置する工程が、前記キャビネット内の自然対流及び/又は強制対流によって生じる冷却空気流の通路の中に前記凝縮器を配置することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
動作時に加熱空気流を生成する電子装置を収容するキャビネットであって、前記キャビネットは、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱管理システムを備え、これにより
加熱空気流から熱を奪うために、前記装置によって生成された加熱空気流の通路の中に前記蒸発器が配置され、
前記ハウジングの外の周囲空気に熱を移動させるために、前記蒸発器の上方で冷却空気流の通路の中に前記凝縮器が配置され、
前記蒸発器から前記凝縮器に熱を移動させるために、前記ヒートパイプが前記蒸発器を前記凝縮器に直接接続する、
キャビネット。
【請求項14】
前記装置全体に冷却空気流をもたらすために動作可能なファン又はブロワーを含み、これにより前記加熱空気流を生成する、請求項13に記載のキャビネット。
【請求項15】
前記凝縮器が、前記キャビネット内の自然対流及び/又は強制対流によって生じる冷却空気流の通路の中に配置される、請求項13又は14に記載のキャビネット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−520287(P2011−520287A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508570(P2011−508570)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/042672
【国際公開番号】WO2009/137387
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/042672
【国際公開番号】WO2009/137387
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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