説明

電子装置及びその製造方法

【課題】樹脂の消費量を少なくすることができ、電子装置の製造工程を少なくすることができ、電子装置のコストを低くすることができるようにする。
【解決手段】回路配線基板11と、回路配線基板11の所定の箇所に設定された取付領域に取り付けられた電子部品12、13とを有する。そして、回路配線基板11は、ベース材、導電層、絶縁層及び配線パターンを備える。また、取付領域に近接する位置に、絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で、せき止め部14が上方に向けて突出させて形成される。この場合、樹脂が、電子部品12と回路配線基板11との隙間から回路配線基板11上を移動し、せき止め部14の縁部に到達すると、それ以上の移動がせき止め部14によって阻止されるので、せき止め部14を超えて広がることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子装置においては、所定の配線パターンが形成された回路配線基板に集積回路チップ等の各種の電子部品を搭載するに当たり、前記回路配線基板に電子部品を取り付けるための取付領域、すなわち、実装エリアが設定され、該実装エリア内の回路配線基板側の電極パッドと、電子部品側の電極端子とを接続するようにしている。そして、接続部分を補強するために、所定の電子部品と回路配線基板との隙(すき)間に液状の樹脂がアンダーフィル材として充填(てん)される。
【0003】
ところで、前記実装エリアの近傍に他の実装エリア(以下「隣接実装エリア」という。)が設定されている場合、充填されたアンダーフィル材が実装エリアの外方に広がり、隣接実装エリアの電子部品と回路配線基板との隙間に進入してしまうことがある。
【0004】
図2は従来の回路配線基板への電子部品の搭載状態を示す平面図である。
【0005】
図において、11は回路配線基板、12、13は電子部品であり、前記回路配線基板11における電子部品12の直下に実装エリアが、電子部品13の直下に隣接実装エリアが設定される。この場合、前記電子部品12と回路配線基板11との隙間にアンダーフィル材fが充填されると、実装エリアの外側の領域にアンダーフィル材fが広がってしまう。また、隣接実装エリアが前記実装エリアの近傍に設定されると、アンダーフィル材fは電子部品13と回路配線基板11との隙間に進入してしまう。したがって、アンダーフィル材fの消費量が多くなり、電子装置のコストが高くなってしまうだけでなく、電子部品13の品質が低下してしまう。
【0006】
そこで、前記回路配線基板11における実装エリアの近傍に、図示されない溝、ダム部等を形成してアンダーフィル材fを所定の部位でせき止めるようにしている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2004−179576号公報
【特許文献2】特開2004−179578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の電子装置においては、回路配線基板11に溝、ダム部等を形成する必要があるので、電子装置の製造工程が多くなり、電子装置のコストが高くなってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来の電子装置の問題点を解決して、樹脂の消費量を少なくすることができ、電子装置の製造工程を少なくすることができ、電子装置のコストを低くすることができる電子装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の電子装置においては、回路配線基板と、該回路配線基板の所定の箇所に設定された取付領域に取り付けられた電子部品とを有する。
【0010】
そして、前記回路配線基板は、ベース材、該ベース材より上方に形成された導電層、該導電層より上方に形成された絶縁層、及び前記導電層と電気的に接続させて形成された配線パターンを備える。また、前記取付領域に近接する位置に、前記絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で、せき止め部が上方に向けて突出させて形成される。
【0011】
本発明の他の電子装置においては、さらに、前記せき止め部は、電導性材料から成る下地層、及び該下地層上に被覆された電導性材料から成る表面層を備える。
【0012】
本発明の更に他の電子装置においては、さらに、前記せき止め部はメッキによって形成される。
【0013】
本発明の更に他の電子装置においては、さらに、前記せき止め部は絶縁性の高い材料を積層することによって形成される。
【0014】
本発明の電子装置の製造方法においては、ベース材より上方に導電層を形成し、該導電層より上方に絶縁層を形成し、前記導電層と電気的に接続させて配線パターンを形成することによって回路配線基板を形成し、該回路配線基板の所定の箇所に設定された取付領域に近接する位置に、前記絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で、せき止め部を上方に向けて突出させて形成するとともに、前記取付領域に電子部品を取り付け、該電子部品と前記回路配線基板との隙間に樹脂を充填する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子装置においては、回路配線基板と、該回路配線基板の所定の箇所に設定された取付領域に取り付けられた電子部品とを有する。
【0016】
そして、前記回路配線基板は、ベース材、該ベース材より上方に形成された導電層、該導電層より上方に形成された絶縁層、及び前記導電層と電気的に接続させて形成された配線パターンを備える。また、前記取付領域に近接する位置に、前記絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で、せき止め部が上方に向けて突出させて形成される。
【0017】
この場合、樹脂が、電子部品と回路配線基板との隙間から回路配線基板上を移動し、せき止め部の縁部に到達すると、それ以上の移動がせき止め部によって阻止されるので、該せき止め部を超えて広がることがない。その結果、樹脂が他の電子部品と回路配線基板との隙間に進入することがないので、樹脂の消費量を少なくすることができるだけでなく、他の電子部品の品質が低下するのを防止することができる。しかも、樹脂を充填する時間を短くすることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0018】
また、せき止め部は、絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で形成されるので、電子装置の製造工程を少なくすることができ、作業を簡素化することができるだけでなく、電子装置のコストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の第1の実施の形態における電子装置を示す平面図、図3は本発明の第1の実施の形態における回路配線基板の断面図である。
【0021】
図において、11は回路配線基板、12、13は、集積回路チップ、半導体パッケージ、チップトランジスタ、チップダイオード、チップ抵抗、チップキャパシタ、チップコイル等の電子部品であり、前記回路配線基板11における電子部品12の直下に、電子部品12を取り付けるための取付領域としての実装エリアが、電子部品13の直下に電子部品13を取り付けるための取付領域としての隣接実装エリアが設定される。この場合、電子部品12の互いに対向する二つの縁部21、22の裏面に複数の電極端子37が形成される。なお、前記電子部品13にも電子部品12と同様に電極端子が形成される。また、前記実装エリアにおける電極端子37及び電子部品13の電極端子に対応する箇所には、電極パッド39が形成される。また、前記電子部品12、13を、CSP(Chip on Package)等の裏面に半田バンプが電極端子として形成された素子によって構成することもできる。
【0022】
なお、図3において、前記電子部品12における電極端子37は、前記各縁部21、22の裏面において回路配線基板11と対向させて形成されるようになっているが、実際は、各縁部21、22の側面から側方に向けてわずかに突出させて形成される。
【0023】
該回路配線基板11に電子部品12、13を搭載するに当たり、回路配線基板11側の電極パッド39に半田又はフラックスを使用し、電子部品12、13側の電極端子37及び電極端子を当接させて、回路配線基板11上に電子部品12、13を載置し、その状態で回路配線基板11及び電子部品12、13をリフロー炉に送り、前記各半田を溶融させることによって接続する。
【0024】
そして、前記電極端子37及び電子部品13の電極端子の半田による接続部分を補強するために、所定の電子部品、本実施の形態においては、電子部品12と回路配線基板11との隙間に液状の樹脂、本実施の形態においては、アンダーフィル材fが充填される。この場合、前記実装エリアと隣接実装エリアとが近接させて設定されているので、電子部品12と回路配線基板11との隙間に充填されたアンダーフィル材fが広がり、さらに、電子部品13と回路配線基板11との隙間に進入してしまうと、アンダーフィル材fの消費量が多くなり、電子装置のコストが高くなってしまうだけでなく、電子部品13の品質が低下してしまう。
【0025】
そこで、本実施の形態においては、充填されたアンダーフィル材fを所定の箇所でせき止めるために、前記回路配線基板11における前記縁部21の近傍で、かつ、他の電子部品13との間に、所定の形状のせき止め部14が上方に向けて突出させて形成される。該せき止め部14は、前記電子部品12、13の位置に対応させて、寸法、形状等が設定され、本実施の形態においては、帯状の形状を有し、前記縁部21に沿って直線状に延びる主延在部15、及び該主延在部15の端部から所定の方向、本実施の形態においては、直角の方向に、縁部22側に向けて延びる副延在部16、17を備える。
【0026】
ところで、図3に示されるように、前記回路配線基板11は、所定のセラミックス、本実施の形態においては、アルミナ(Al2 3 )によって所定の厚さで形成されたベース材としてのアルミナセラミックス基板31、該アルミナセラミックス基板31より上方、本実施の形態においては、アルミナセラミックス基板31上に形成され、導電性の高い材料、本実施の形態においては、タングステンによって、所定の厚さ、例えば、約15〔μm〕の厚さで形成され、所定の配線パターンを構成する導電層32、前記回路配線基板11の所定の箇所に、導電層32と電気的に接続させて、かつ、導電層32より上方、本実施の形態においては、導電層32上に形成された前記電極パッド39、前記回路配線基板11の所定の箇所に、導電層32と電気的に接続させて、かつ、導電層32より上方、本実施の形態においては、導電層32上に形成された前記せき止め部14、並びに導電層32上の前記電極パッド39及びせき止め部14以外の部分に、絶縁性の高い材料、本実施の形態においては、アルミナによって所定の厚さ、例えば、2〜4〔μm〕で形成された絶縁層としてのアルミナコート層33を備える。
【0027】
該アルミナコート層33は、導電層32上にペースト状のアルミナを塗布することによってアルミナセラミックス基板31、導電層32及びアルミナから成る原型基板を形成し、該原型基板を焼成することによって形成される。また、本実施の形態において、前記電極パッド39及びせき止め部14は、導電層32上に被覆された電導性材料、例えば、ニッケル(Ni)から成る下地層34、及び該下地層34上に被覆された電導性材料、本実施の形態においては、金(Au)から成る表面層としての金フラッシュ層35を有する。前記下地層34は、前記アルミナコート層33のあらかじめ設定された箇所にレーザ等を照射することによってアルミナコート層33を所定のパターンで除去して導電層32を露出させ、続いて、前記アルミナコート層33をマスクにして、メッキによって2層構造で、かつ、所定の厚さ、本実施の形態においては、10〜12〔μm〕で形成される。また、金フラッシュ層35も、同様に前記アルミナコート層33をマスクにして、メッキによって所定の厚さ、本実施の形態においては、0.04〔μm〕で形成される。
【0028】
このようにして、電子部品12の縁部21の近傍にせき止め部14が形成され、該せき止め部14が形成された部分と、形成されない部分とによって6〜10〔μm〕の段差が形成される。したがって、アンダーフィル材fが電子部品12と回路配線基板11との隙間から回路配線基板11上を移動し、せき止め部14の縁部に到達すると、それ以上の移動がせき止め部14によって阻止されるので、該せき止め部14を超えて広がることがない。その結果、アンダーフィル材fが電子部品13と回路配線基板11との隙間に進入することがないので、アンダーフィル材fの消費量を少なくすることができるだけでなく、電子部品13の品質が低下するのを防止することができる。しかも、アンダーフィル材fを充填する時間を短くすることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0029】
また、せき止め部14は、前記電極パッド39と同じ材料及び同じ構造で、かつ、同じ工程で形成されるので、電子装置の製造工程を少なくすることができ、作業を簡素化することができるだけでなく、電子装置のコストを低くすることができる。
【0030】
さらに、アルミナコート層33がアルミナによって、金フラッシュ層35が金によって形成され、互いに材料が異なり、各材料のぬれ広がり性、すなわち、アンダーフィル材fとのなじみ易さが異なる。したがって、アルミナコート層33と金フラッシュ層35との境界におけるアンダーフィル材fの接触角が大きくなるので、アンダーフィル材fが境界で停止させられる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0032】
図4は本発明の第2の実施の形態における回路配線基板の断面図である。
【0033】
図において、33は、導電層32上に、絶縁性の高い材料、本実施の形態においては、アルミナによって所定の厚さ、例えば、2〜4〔μm〕で形成された絶縁層としてのアルミナコート層である。また、38は、該アルミナコート層33上に積層させて、前記回路配線基板11(図1)における電子部品12の縁部21、22の近傍で、かつ、他の電子部品13との間に、所定の形状、本実施の形態においては、帯状に形成されたせき止め部であり、該せき止め部38は、前記アルミナを積層することによって所定の厚さ、例えば、6〜10〔μm〕で形成される。
【0034】
この場合、せき止め部38は、アルミナコート層33と同じ材料及び同じ構造で、かつ、同じ工程で形成されるので、電子装置の製造工程を少なくすることができ、作業を簡素化することができるだけでなく、電子装置のコストを低くすることができる。
【0035】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電子装置を示す平面図である。
【図2】従来の回路配線基板への電子部品の搭載状態を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における回路配線基板の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における回路配線基板の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
11 回路配線基板
12、13 電子部品
14 せき止め部
31 アルミナセラミックス基板
32 導電層
33 アルミナコート層
34 下地層
35 金フラッシュ層
f アンダーフィル材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路配線基板と、該回路配線基板の所定の箇所に設定された取付領域に取り付けられた電子部品とを有するとともに、前記回路配線基板は、ベース材、該ベース材より上方に形成された導電層、該導電層より上方に形成された絶縁層、及び前記導電層と電気的に接続させて形成された配線パターンを備え、前記取付領域に近接する位置に、前記絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で、せき止め部が上方に向けて突出させて形成されることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記せき止め部は、電導性材料から成る下地層、及び該下地層上に被覆された電導性材料から成る表面層を備える請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記せき止め部はメッキによって形成される請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記せき止め部は絶縁性の高い材料を積層することによって形成される請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
ベース材より上方に導電層を形成し、該導電層より上方に絶縁層を形成し、前記導電層と電気的に接続させて配線パターンを形成することによって回路配線基板を形成し、該回路配線基板の所定の箇所に設定された取付領域に近接する位置に、前記絶縁層及び配線パターンのうちの一方と同じ材料で、せき止め部を上方に向けて突出させて形成するとともに、前記取付領域に電子部品を取り付け、該電子部品と前記回路配線基板との隙間に樹脂を充填することを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−202981(P2006−202981A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13049(P2005−13049)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】