説明

電子装置

【課題】USBコネクタにUSBデバイスを装着することが難しい環境下での煩わしさを確実に軽減とする電子装置の実現を図る。
【解決手段】USBコネクタ12のコネクタ部121にUSBデバイス11のコネクタ部111を嵌めて押し込み、支持部21がUSBコネクタ12の支持体311と当接させる。さらに押し込んで、ラック43が右方向に移動し、ピニオンギア47を時計方向に回転させる。この回転に伴いラック45とともに支持体312が左方向に移動する。USBデバイス11をUSBコネクタ12に完全に押し込むと、端子41および端子42がそれぞれガイド部材48を乗り越え、端子42(VBUS、D+、D−、GND)は端子61(VBUS、D+、D−、GND)USBデバイス11と電気的に接続される。USBデバイス11を逆向きに挿入した場合も同様にして正規の電気的接続が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、通信規格のUSBを接続してデータ伝送を可能とする電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、USB(Universal Serial Bus)は、ホストとなる電子装置にさまざまな周辺機器を接続するための通信規格であり、ドライバをインストールする必要がなく、標準機能のみでUSBコネクタに接続した機器を記憶装置として認識することができ、PC周辺機器のみならず携帯電話やデジタルオーディオプレーヤー、車載機器等への搭載も一般化している。UBSは、周辺機器と接続する場合に方向性を有しているが、方向性を持たないUSBも考えられている。
【0003】
従来の技術は、複数のコネクトピンが固定された一対のピン支持体がコネクタピンを有する面を相互に対向配置させてメス型のコネクタを構成し、一方のピン支持体を外力で移動させ、弾性部材で移動後のビン支持体を復帰させるものである。しかし、一対のピン支持体は弾性部材で復帰させていることから、弾性部材によるピン支持体の復帰とオス型のコネクタとの接続に接触不良を起こしかねず、確実に接続することが難しい、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−176543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、USBコネクタにUSBデバイスを装着することが難しい環境下での煩わしさを確実に軽減することが可能な電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、USBデバイスのコネクタ部が装着可能なコネクタ部を有するUSBコネクタと、前記コネクタ内に直線的に移動可能に支持し、端子が異なる面にそれぞれ露出した状態で固着された第1および第2の支持体と、前記第1の支持体の一端に取付けられ、直線的なギアが形成された第1のラックと、前記第2の支持体の一端に取付けられ、前記第1のラックのギアと対向する位置に直線的なギアが形成された第2のラックと、前記第1および第2のラックそれぞれのギアに噛合し、該第1および第2のラックを逆方向に移動させるピニオンギアと、を具備し、前記USBコネクタのコネクタ部に、コネクタ部が方向性を有する前記USBデバイスを装着した場合に、前記USBデバイスのコネクタ部の装着方向に係わらず、前記コネクタ内の前記第1および第2の支持体のいずれかの端子と前記USBデバイスとが電気的に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電子装置に関する一実施形態について説明するための概念的な回路ブロック図である。
【図2】USBデバイスの一例について説明するための図である。
【図3】USBコネクタの一例について説明するための図である。
【図4】電子装置内のUSBコネクタの一例について説明するための概略的な断面図である。
【図5】図4の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)はこの実施形態の動作手順について説明するための説明図である。
【図7】USBデバイスが逆向きにUSBコネクタに接続された場合について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1〜図3は、電子装置に関する一実施形態について説明するためのもので、図1はPC周辺機器のみならず携帯電話やデジタルオーディオプレーヤー、車載機器等の電子装置のUSB通信規格部分の概略的な構成を示す回路ブロック図、図2はUSBデバイスの一例について説明するための図、図3はUSBコネクタの一例について説明するための図である。
【0010】
図1において、電子機器100はUSB規格に適合したメス型のUSBコネクタ12を有する。USBコネクタ12にはUSB規格に適合したオス型のコネクタを有するUSBデバイス11が接続可能である。
【0011】
USBデバイス11は、電子機器100のUSBコネクタ12のVBUS(電源)、差動信号を伝達するためのD+,D−、GND(接地)の各端子に接続されるVBUS、D+、D−、GNDを備えたコネクタ部111と、電子機器100との通信制御を行うI/F部112と、画像データなどが記憶されるフラッシュメモリ113と、ROM114に記憶されている制御プログラムに基づいてフラッシュメモリ113からI/F部112へのデータ読出およびI/F部112からフラッシュメモリ113へのデータ書込の制御を行うCPU(中央演算部)などのデータ転送制御部115を備える。また、データ転送制御部115は、電子機器100との間で認証処理を行い、認証が成功した場合に通信部を介して電子機器100とのデータ転送を許可する機能を備える。
【0012】
図2に示すように、USBデバイス11のVBUS、D+、D−、GNDの各端子は、絶縁性の支持部21に固着されている。
【0013】
電子機器100内には、I/O制御部13、メモリ制御部14、CPU15、RAM16、ROM17等のユニットにより制御部18を構成している。I/O制御部13には、USBコネクタ12が接続される。USBコネクタ12は、USBデバイス11を接続するための、いわゆるAタイプのUSBコネクタである。
【0014】
I/O制御部13およびメモリ制御部14は、CPU15、USBコネクタ12、RAM16、ROM17等の各種デバイス間のデータの転送制御や、対象の電子機器の種類に応じて画像、音声、データの処理等を実行するためのものである。I/O制御部13およびメモリ制御部14は、これらを1チップ化して構成することも可能である。
【0015】
図3にも示すようにUSBコネクタ12は、絶縁性の第1の支持体とする支持体311に、VBUS、D+、D−、GNDの各端子が露出した状態で固着されている。図1に示すように、VBUSは、USBデバイス11に電源を供給するため、電子機器100内の図示しない電源に接続したVBUS線19aに接続され、D+およびD−は、差動信号を伝達するためのD+線19b,D−線19cに接続され、GNDは接地するためのGND線19dと接続されている。VBUS線19a、D+線19b、D−線19cおよびGND線19dは、それぞれI/O制御部13のポート13a〜13dと接続されている。
【0016】
制御部18は、ポート13dを介して検知されるGND線19dのHまたはLの電圧レベルの変化に応じて、USBコネクタ12に対する外部からの接続の有無を検知することができる。GND線19dは、図示しない抵抗を介して例えば+5Vにプルアップしておき、USBコネクタ12が外部と未接続状態であれば、ポート13dで検知される電圧レベルはHレベルとなる。そのため、制御部18は、ポート13dにおける検知がHレベルを示せば、USBコネクタ12は外部と未接続状態と判定し、ポート13dにおける検知がLレベルを示せば、USBコネクタ12は外部と接続状態であると判定することができる。USBコネクタ12は、一般的に電子機器100の操作パネルの側面部に設置されている。
【0017】
図4、図5を参照し、USBコネクタ12の構成についてさらに説明する。図4は、電子機器100内にコネクタ部121が外部から望む状態で配置されたUSBコネクタ12の概念的な断面図を、図5は図4の要部をさらに拡大した断面図である。
【0018】
図4に示すように、本実施形態のUSBコネクタ12は、VBUS、D+、D−、GNDの各端子が絶縁性の支持体311とこの支持体311に固着されたVBUS、D+、D−、GNDの各端子の配置が逆に固着された第2の支持体とする支持体312を備えている。しかも、支持体311と312は、USBデバイス11のコネクタ部111がUSBコネクタ12のコネクタ部121内に装着されたときに、コネクタ部121の接続位置に選択的に可動する状態で支持されている。
【0019】
すなわち、USBコネクタ12のVBUS、D+、D−、GNDの各端子をまとめて示す端子41が露出した状態で固着された支持体311の一端は、直線的にギア431が形成されたラック43として取付けられている。ラック43は、第1のラックとする直線的に複数配置されたガイド44に摺動可能に支持され、図中水平方向に可動する。同様に、USBコネクタ12のVBUS、D+、D−、GNDの各端子をまとめて示す端子42が固着された支持体312の一端は、直線的にギア451が形成されたラック45に取付けられている。ラック45は、第2のラックとする複数配置されたガイド46に摺動可能に支持され、図中水平方向に可動する。ラック43のギア431とラック45のギア451は対向する位置に形成される。
【0020】
ギア431およびギア451は、共通のピ二オンギア47と噛合され、図中ピニオンギア47を時計方向に回転した場合はラック43を右方向に、ラック45を左方向にそれぞれ可動する。ピニオンギア47を反時計方向に回転した場合は、ラック43を左方向に、ラック45を右方向にそれぞれ可動する。つまり、ラック43とラック45は互いに逆方向に可動する。
【0021】
端子41と端子42との間には、ラック43と45がすれ違うとき図5に示すように、互いが接触する期間を生じさせないためのガイド部材48が配置されている。また、端子41は、ラック43に沿わせる格好でI/O制御部13(図1)の各ポート13a〜13dと接続するための配線191が施されている。配線191は、端子41と同様にVBUS、D+、D−、GND用にそれぞれ独立させた状態で配線される。端子42は、ラック45に沿わせる格好でI/O制御部13の各ポート13a〜13dと接続するための配線192が施されている。配線192は、端子42と同様にVBUS、D+、D−、GND用にそれぞれ独立させた状態で配線される。
【0022】
なお、配線191,192は、ラック43と45が例えば樹脂製であれば、ラック43および45に配線パターンを施しても構わないし、フレキシブル基板を使用しても構わない。
【0023】
端子41および端子42はそれぞれ弾性を持たせてある。これにより、端子41のVBUS、D+、D−、GNDが、USBデバイス11のVBUS、D+、D−、GNDと接続された場合に、電気的に確実に接続される。同様に端子42のVBUS、D+、D−、GNDが、USBデバイス11のVBUS、D+、D−、GNDと接続された場合に、電気的に確実に接続される。
【0024】
端子41および端子42のそれぞれのVBUS、D+、D−、GNDは、USBデバイス11のVBUS、D+、D−、GNDと対向するように配置してある。端子41および端子42とI/O制御部13の各ポート13a〜13dとの接続は、同じ接続状態になるよう配線される。
【0025】
ここで、図6(a)〜(d)を参照し、USBデバイス11がUSBコネクタ12に装着され、電気的に接続される手順について説明する。
【0026】
まず、図6(a)に示すように、USBコネクタ12のコネクタ部121に対し、USBデバイス11のコネクタ部111を嵌め、図中矢印に押し込んで行く。USBデバイス11がさらに押し込まれると、図6(b)に示すようにUSBデバイス11の支持部21がUSBコネクタ12の支持体311と当接する。当接させた状態でさらにUSBデバイス11を押し込んで行くと、ラック43が矢印A方向に移動し、ピニオンギア47を時計方向に回転する。この回転に伴いラック45とともに支持体312が矢印B方向に移動する。
【0027】
支持体311が矢印A方向に、支持体312が矢印B方向にそれぞれ移動する過程で、図6(c)に示すように、支持体311に固着された端子41がガイド部材48に乗り上げると同時に、支持体312に固着された端子42がガイド部材48に乗り上げる。
【0028】
USBデバイス11がさらに押し込まれると、図6(d)に示すように、端子41および端子42がそれぞれガイド部材48を乗り越える。このとき、端子42はVBUS、D+、D−、GNDの各端子を纏めて示すUSBデバイス11の端子61と電気的に接続される。
【0029】
これにより、USBデバイス11のVBUS、D+、D−、GNDの各端子とUSBコネクタ12のVBUS、D+、D−、GNDの各端子は、対応した状態で電気的に接続され、電子機器100とUSBデバイス11は相互通信が可能となる。
【0030】
次に、USBデバイス11の端子61が図6(a)とは上下逆の状態でUSBコネクタ12に装着された場合について考える。この場合、図6(a)ではUSBデバイス11の支持部21が支持体312と当接した状態で、図6(b)〜(d)と同じような手順でUSBデバイス11をUSBコネクタ12に押し込む。
【0031】
すると、支持体312の端子42とUSBデバイス11の端子61とが図7に示すような状態で電気的に接続される。これにより、電子機器100とUSBデバイス11は、相互通信が可能となる。
【0032】
このように、ラック43,45とピニオンギア47との組み合わせでUSBデバイス11と電気的に接続される端子41,42が固着された支持体311,312を選択的に電気的に接続可能とした。ラック43とラック45の移動は、ピニオンギア47の回転により決定することから、USBデバイス11で押し込まれた支持体311あるいは312に対して確実の押し込まれない支持体312あるいは311の移動量は一定である。このため、USBデバイス11がUSBコネクタ12に確実に挿着された状態であれば、USBデバイス11の端子61と支持体311の端子41あるいは支持体312の端子42は確実に電気的な接続が可能となる。
【0033】
この実施形態では、方向性のあるUSBデバイスをホストとなる電子装置のUSBコネクタに対して方向性を気にすることなく、接続することが可能となる。これにより薄暗い環境下やUSBデバイスの挿入口が見えづらい環境下にあっても方向性を気にすることなく、ラックとピニオンギアとの組み合わせで確実な装着が可能となり、利用者の煩わしさの軽減化を図ることができる。
【0034】
上記した実施形態に限るものではない。例えば、USBコネクタに接続されるものとしてはUSBデバイスに限らず、USBケーブルであっても構わない。また、USBコネクタ側に相手の形状に対応するようにしたが、USBデバイスやUSBケーブルなどのコネクタ側に同様の機能を持たせても構わない。
【0035】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
100 電子機器
11 USBデバイス
111,121 コネクタ部
12 USBコネクタ
191,192 配線
21 支持部
311,312 支持体
41,42 端子
43,45 ラック
431,451 ギア
44,46 ガイド
47 ピニオンギア
48 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBデバイスのコネクタ部が装着可能なコネクタ部を有するUSBコネクタと、
前記コネクタ内に直線的に移動可能に支持し、端子が異なる面にそれぞれ露出した状態で固着された第1および第2の支持体と、
前記第1の支持体の一端に取付けられ、直線的なギアが形成された第1のラックと、
前記第2の支持体の一端に取付けられ、前記第1のラックのギアと対向する位置に直線的なギアが形成された第2のラックと、
前記第1および第2のラックそれぞれのギアに噛合し、該第1および第2のラックを逆方向に移動させるピニオンギアと、を具備し、
前記USBコネクタのコネクタ部に、コネクタ部が方向性を有する前記USBデバイスを装着した場合に、前記USBデバイスのコネクタ部の装着方向に係わらず、前記コネクタ内の前記第1および第2の支持体のいずれかの端子と前記USBデバイスとが電気的に接続する、電子機器。
【請求項2】
前記第1および第2の支持体に固着された端子は、USB規格のVBUS、D+、D−、GNDである、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記USBコネクタ内には、前記第1および第2のラックが逆方向に移動する途中で、前記第1および第2の支持体に固着された端子同士が接触することを防止するガイド部材を配置した、請求項1または2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−226905(P2012−226905A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92129(P2011−92129)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】