説明

電子装置

伝送配線が接続された電子回路ユニットを搭載し、前記伝送配線を取り付けた伝送配線取り付け部材を内部に収納する電子装置は、前記伝送配線取り付け部材が、当該電子装置に対して回動自在に設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、通信装置等の電子装置、特に、内部に伝送配線を収容する電子装置に関する。
【背景技術】
近年、通信装置等の電子装置にあっては、電子装置自体が高機能し、電子回路ユニットが電子装置のシェルフに高密度に搭載される。そのため、電子回路ユニットに接続されるケーブルの数も飛躍的に増加している。
図1は、従来の通信装置10の斜視図である。図2は、図1に示す従来の通信装置10の線A−Aにおける断面図である。
図1を参照するに、通信装置10は、シェルフ11と、シェルフ11の内部の電子回路ユニット収納部12に収納される多数の電子回路ユニット13等から構成される。幾つかの電子回路ユニット13の前面(図1におけるX1方向のY−Z面)にはケーブル14が接続される。また、電子回路ユニット13の後部にはコネクタが設けられ、当該コネクタがシェルフ11の内部のコネクタと嵌合することにより、プラグイン接続され、電気信号の接続が行われる。
電子回路ユニット収納部12の下側(図1におけるZ2方向側)であって、シェルフ11の前面側(図1におけるX1方向のY−Z面側)には、トレイ15が、図1におけるX2側に窪むように設けられている。図1及び図2を参照するに、トレイ15は、図1におけるY1−Y2方向に見た場合に、中空の矩形であってX1方向に開口部を備える断面形状を有する。トレイ15には、各電子回路ユニット13の上部及び下部に接続されている複数のケーブル14が一括して導入保持されている。
しかし、かかる構造を有する通信装置10では、通信装置10の内部にトレイ15が収容されているため、通信装置10の配置上の省スペース化を図ることはできるものの、トレイ15が図1におけるX2側に窪むように形成されているため、トレイ15に収容されるケーブル14を取り出す操作を行うことは困難である。
そこで、かかる点に鑑み、ケーブル14の取り出す操作の操作性を向上すべく、ケーブル14を電子回路ユニット13に対して着脱するために、トレイ15を、図1におけるX1方向に直線的に引き出して操作する構造が考えられる。
しかしながら、図2において点線で示すように、トレイ15をX1方向に引き出すと、引き出しに伴って、ケーブル14に張力が作用されてしまう。従って、ケーブル14が、例えば光ケーブル等のように、張力が作用されたり曲げられたりすること等に対して制限がある場合には、かかる構造を採用することは望ましくない。
更に、上述の何れの構造でも、トレイ15には、電子回路ユニット13の上部及び下部に接続されている複数のケーブル14が一括して導入保持されている。従って、特定のケーブルのみを操作する場合に、トレイに収容されている他のケーブルと接触してしまう。これは、例えば、ケーブル14が、上述の光ケーブル等の場合に望ましくない。
なお、公開実用新案公報・実開平4−20287は、ケーブルを収容するケーブル導入ダクトに回動開閉する蓋を備え、ケーブル導入ダクトを、当該蓋の側縁が回路基板の抜け止めとなるように配設し、蓋の開閉操作で回路基板の抜け止めと外部ケーブルの導入接続を行うことができる技術を開示するが、複数のケーブルが一括して導入ダクトに収容されている。従って、この技術によっても、特定のケーブルのみを操作する場合に、トレイに収容されている他のケーブルと接触してしまい、依然として上述の問題点を解消することはできない。
【発明の開示】
そこで、本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、伝送配線の収容のためのスペースを電子装置の内部に設けて当該電子装置の配置上の省スペース化を実現するとともに、伝送配線を取り出す操作の操作性を向上させることを実現する当該電子装置を提供することにある。
より具体的には、本発明の目的は、伝送配線が接続された電子回路ユニットを搭載し、前記伝送配線を取り付けた伝送配線取り付け部材を内部に収納する電子装置において、前記伝送配線取り付け部材は、当該電子装置に対して回動自在に設けられたことを特徴とする電子装置により達成される。
当該電子装置は、複数の前記電子回路ユニットを搭載し、複数の前記伝送配線取り付け部材を重畳して備え、一の伝送配線取り付け部材には、一の電子回路ユニットに接続される伝送配線が取り付けられ、他の電子回路ユニットに接続される伝送配線は他の伝送配線取り付け部材に取り付けられてもよい。
また、前記伝送配線取り付け部材は、水平面に対して所定の取り付け角度傾けられて当該電子装置に設けられていてもよい。
更に、前記伝送配線取り付け部材の回動中心の位置は、前記伝送配線取り付け部材における前記伝送配線の取り付け位置よりも、前記伝送配線取り付け部材を回動して引き出す側に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより一層明瞭となるであろう。
図1は、従来の通信装置10の斜視図である。
図2は、図1に示す従来の通信装置10の線A−Aにおける断面図である。
図3は、本発明に係る通信装置50の斜視図である。
図4は、図3に示す通信装置50であって、トレイ板部57−1をトレイ板収納部55の内部から回動した状態を示す通信装置50の斜視図である。
図5は、図3に示す通信装置50を、図3においてY1−Y2方向に見た側断面図である。
図6は、図3に示す通信装置50を、図3においてX1−X2方向に見た側面図である。
図7は、図6において楕円形で囲んだ部分を拡大して示す図である。
図8は、図3に示すトレイ板部57−1を示す図である。
図9は、図3に示すトレイ板支持金具58を示す図である。
図10は、トレイ板部57−1を、回転軸部72を中心に回動させた場合の状態を示す図である。
図11は、トレイ板部57−1乃至57−4をトレイ板収納部55から回動操作して引き出した状態を示す図である。
図12は、本発明の実施形態において、ケーブル54に対する曲げ応力の作用の緩和を説明するための図である。
図13は、トレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55の内部の水平面(図3におけるX−Y平面)に対する取り付け角度θa及びトレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55の内部に対する回動角度θbを説明するための通信装置50の模式図である。
図14は、発明者によるシミュレーションの対象となるケーブルの接続位置を示した本発明の通信装置50の模式図である。
図15は、電子回路ユニット53−5の上部のF点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−5を、取り付け角度θaの方向に回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す図である。
図16は、電子回路ユニット53−5の下部のG点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−5を、取り付け角度θaの方向に回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す図である。
図17は、電子回路ユニット53−6の上部のH点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−6を、取り付け角度θaの方向に回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す図である。
図18は、電子回路ユニット53−6の下部のI点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−6を、取り付け角度θaの方向に回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図3乃至図12を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図3は、本発明に係る通信装置50の斜視図である。図3を参照するに、通信装置50は、シェルフ51と、シェルフ51の内部の電子回路ユニット収納部52に収納される多数の電子回路ユニット(回路基板等)53等から構成される。
電子回路ユニット53のうち、4枚の電子回路ユニット53−1乃至53−4の前面(図3におけるX1方向のY−Z面)の上部及び下部に、通信装置50の外部からの信号伝送用のケーブル54が、伝送配線として接続されている。なお、本実施形態では、ケーブル54が接続される電子回路ユニット53の枚数を4枚としているが、本発明はこれに限定されない。
また、電子回路ユニット53の後部にはコネクタが設けられ、当該コネクタがシェルフ51の内部のコネクタと嵌合することにより、プラグイン接続され、電気信号の接続が行われる。
シェルフ51の最下部には、ファン実装部56が設けられている。ファン実装部56の内部には、電子回路ユニット収納部52に収納される電子回路ユニット53を強制的に空冷するファン60(図5参照)が実装される。
シェルフ51の電子回路ユニット収納部52と、ファン実装部56との間には、X2方向に窪むように、トレイ板収納部55が設けられている。トレイ板収納部55は、Y1−Y2方向に見た場合に、中空の矩形であってX1方向に開口部分を有する断面形状を有する。
トレイ板収納部55の内部には、電子回路ユニット53−1乃至53−4の上部及び下部に接続されているケーブル54を導入保持する板状のトレイ板部57−1乃至57−4が、伝送配線取り付け部材として、回動自在にトレイ板支持金具58に取り付けられている。トレイ板支持金具58は、トレイ板部57−1乃至57−4とトレイ板収納部55との間に介在する介装部材として機能する。なお、トレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55への取り付け構造については、後述する。
図4は、図3に示す通信装置50であって、トレイ板部57−1をトレイ板収納部55の内部から回動した状態を示す通信装置50の斜視図である。
図3及び図4を参照するに、本実施形態では、トレイ板収納部55の内部に4枚のトレイ板部57−1乃至57−4が取り付けられている。ケーブル54が接続されている電子回路ユニット53のうち、最も右側(図3及び図4において最もY1側)の電子回路ユニット53−1の上部及び下部に接続されているケーブル54は、全長が最も長いトレイ板部57−1に取り付けられている。同様に、ケーブル54が接続されている電子回路ユニット53のうち、最も左側(図3及び図4において最もY2側)の電子回路ユニット53−4の上部及び下部に接続されているケーブル54は、全長が最も短いトレイ板部57−4に取り付けられている。
また、電子回路ユニット53−2の上部及び下部に接続されているケーブル54は、トレイ板部57−1の次に全長が長いトレイ板部57−2に取り付けられている。電子回路ユニット53−3の上部及び下部に接続されているケーブル54は、トレイ板部57−4の次に全長が短いトレイ板部57−3に取り付けられている。
次に、トレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55への取り付け構造について説明する。
図5は、図3に示す通信装置50を、図3においてY1−Y2方向に見た側断面図である。なお、図5では、説明の便宜上、ケーブル54のトレイ板部57−1乃至57−4への取り付けの図示は省略している。
図5を参照するに、シェルフ51の最下部に設けられたファン実装部56の内部には、ファン60が実装されている。ファン実装部56の上部には、漏斗状の形状を有するエアダクト61が設けられている。ファン60からの空気は、流体通路部であるエアダクト61を介して電子回路ユニット53へ導入され、電子回路ユニット53は強制的に空冷される。
トレイ板収納部55は、通信装置の内部であって、エアダクト61の外側に形成された空間部分に設けられている。トレイ板収納部55の内部には、板状のトレイ板部57−1乃至57−4が、水平面(図3におけるX−Y面)に対して夫々所定の角度(後述する角度θa)傾けられて、縦方向(図3におけるZ1−Z2方向)に、下からトレイ板部57−1、トレイ板部57−2、トレイ板部57−3、トレイ板部57−4の順で、重畳的に取り付けられている。従って、トレイ板部57−1乃至57−4は、通信装置の内部であって、エアダクト61の外側に形成された空間部分に収納されており、通信装置50の内部のスペースを有効に活用することができる。
図6は、図3に示す通信装置50を、図3においてX1−X2方向に見た側面図である。なお、図6では、説明の便宜上、ケーブル54のトレイ板部57−1乃至57−4への取り付けの図示は省略している。図7は、図6において楕円形で囲んだ部分(トレイ板部57−1乃至57−4がトレイ板収納部55の内部に取り付けられている部分)を拡大して示した図である。
図8は、図3に示すトレイ板部57−1を示す図であり、図8−(a)は、図3においてZ1−Z2方向に見た図であり、図8−(b)は、図3においてX1−X2方向に見た図であり、図8−(c)は、図3においてZ2−Z1方向に見た図である。図9は、図3に示すトレイ板支持金具58を示す図であり、図9−(a)は、図3においてZ1−Z2方向に見た図であり、図9−(b)は、図3においてZ2−Z1方向に見た図である。なお、図8では、トレイ板部57−1を示しているが、トレイ板部57−2乃至57−4もトレイ板部57−1と同様の構造を有しているので、トレイ板部57−1の説明をもって、トレイ板部57−2乃至57−4の説明に代えることとする。
図5及び図8を参照するに、トレイ板部57−1は、板金を断面がコの字型になうように折曲して形成された部材であり、上面部70、側面部75及び下面部80を有する。
トレイ板部57−1の上面部70は、全体として略矩形形状を有する。上面部70の内部には、略矩形形状の複数の切り欠き部70−1を有する。各切り欠き部70−1の間には、下面部80と共にケーブル74(図4参照)を挟持する挟持部70−2が形成されている。ケーブル74は、挟持部70−2及び下面部80に挟持されることによって、トレイ板部57−1に取り付けられる。
上面部70の左側(図3及び図4においてY2側)の端部近傍であって、図8−(a)において点線で示す中心線よりも手前側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側)、即ち、図3及び図4においてX1側に、回転軸部72が下面部80を貫通して設けられている。
側面部75を介して延在形成されている下面部80は、全体として略矩形形状を有する。下面部80の左側(図3及び図4においてY2側)の端部近傍であって回転軸部72の付近には、突起部82が下側(図3及び図4においてZ2方向)に延在形成されている。
下面部80の右側(図3及び図4においてY1側)部分は、手前側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側)、即ち、図3及び図4においてX1側に、はみ出し面82が延在形成されている。はみ出し面82は、トレイ板部57−1をトレイ板収納部55の内部から回動操作する際に、操作者が掴むことができる部分である。
図5及び図9を参照するに、トレイ板支持金具58は、板金を、後述する所定の角度(後述する角度θa)折曲して形成した部材である。トレイ板支持金具58は、トレイ板取り付け部90及び収納部取り付け部95から構成される。
トレイ板取り付け部90には、貫通孔形成部91及び溝形成部92を有する。溝形成部92は、断面が湾曲形状であってトレイ板取り付け部90を貫通している。
トレイ板部57−1の下面部80をトレイ板取り付け部90に載置すると、トレイ板部57−1の回転軸部72は、トレイ板支持金具58の貫通孔形成部91に回転自在に係合される。また、トレイ板部57−1の突起部82は、トレイ板支持金具58の溝形成部92に、摺動自在に係合される。従って、トレイ板部57−1の下面部80がトレイ板支持金具58に対して回動操作されると、トレイ板部57−1の回転軸部72を中心に、トレイ板部57−1の下面部80は、トレイ板取り付け部90上を回転摺動する。
トレイ板部57−1がトレイ板収納部55の内部に収納されている状態から、トレイ板部57−1が所定の角度(後述する角度θb)回動し、トレイ板部57−1の突起部82がトレイ板支持金具58の溝形成部92の端部と接触すると、当該回転摺動は制限される。
図10は、トレイ板部57−1を、回転軸部72を中心に回動させた場合の状態を示す図である。
図10−(a)に示す状態では、トレイ板部57−1は、トレイ板収納部55の内部に収納されている。このとき、トレイ板部57−1の突起部82は、トレイ板支持金具58の溝形成部92の左側の端部と接触している。
図10−(a)に示す状態から、回転軸部72を中心にトレイ板部57−1を回動させると、図10−(b)に示す状態となる。このとき、トレイ板部57−1の突起部82は、トレイ板支持金具58の溝形成部92を摺動する。
図10−(b)に示す状態から更に、回転軸部72を中心にトレイ板部57−1を回動させ、トレイ板部57−1がトレイ板収納部55の内部に収納されている状態から所定の角度(後述する角度θb)回動された状態となると、図10−(c)に示すように、トレイ板部57−1の突起部82は、トレイ板支持金具58の溝形成部92の右側の端部と接触する。
ところで、図9を再度参照するに、収納部取り付け部95には、2つの取り付け孔形成部96が貫通形成されている。取り付け孔形成部96には、リベット97が挿入され、トレイ板部57−1が載置されたトレイ板支持金具58がトレイ板収納部55に固定される。
上述のように、トレイ板支持金具58は、板金を所定の角度(後述する角度θa)折曲して形成されるため、トレイ板支持金具58に載置されたトレイ板部57−1を、水平面(図3におけるX−Y平面)に対し、当該所定の角度(後述する角度θa)傾斜された状態で回動操作することが出来る。
図11は、上述のような構造を有するトレイ板部57−1乃至57−4をトレイ板収納部55から回動操作して引き出した状態を示す図である。図11に示す例では、トレイ板部57−1乃至57−4は、水平面(図3におけるX−Y平面)に対して、略等しい所定の角度(後述する角度θa)傾斜されている。
図11−(a)では、トレイ板部57−1乃至57−4の全てがトレイ板収納部55に収容されている状態が示されている。図11−(b)では、トレイ板部57−4がトレイ板収納部55から20度回動されている状態が示されている。図11−(c)では、トレイ板部57−4がトレイ板収納部55から30度回動されている状態が示されている。図11−(d)では、トレイ板部57−4がトレイ板収納部55から40度回動されている状態が示されている。図11−(e)では、トレイ板部57−2乃至57−4がトレイ板収納部55から40度回動されている状態が示されている。図11−(f)では、トレイ板部57−1乃至57−4がトレイ板収納部55から40度回動されている状態が示されている。
ところで、図8を参照して上述したように、トレイ板部57−1の回転軸部72は、上面部70の左側(図3及び図4においてY2側)の端部近傍であって、図8−(a)において点線で示す中心線(トレイ板部57−1におけるケーブル54の取り付け位置)よりも手前側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側)、即ち、図3及び図4においてX1側に、下面部80に貫通するように設けられている。このため、トレイ板部57−1を回動させることによってトレイ板部57−1に搭載されるケーブル54に作用される曲げ応力を緩和することが出来る。
この曲げ応力の緩和について、回転軸部72が、図8−(a)において点線で示す中心線(トレイ板部57−1におけるケーブル54の取り付け位置)よりも奥側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側と反対の側)、即ち、図3及び図4においてX2側に設けられている場合と比較して説明する。
図12は、上述のケーブル54に対する曲げ応力の作用の緩和を説明するための図である。
具体的には、図12−(a)は、仮想例として、回転軸部72が、図8−(a)において点線で示す中心線(トレイ板部57−1におけるケーブル54の取り付け位置)よりも、奥側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側と反対の側)、即ち、図3及び図4においてX2側に設けられている場合において、トレイ板部57−1がトレイ板収納部55の内部に収納されているときのトレイ板部57−1とケーブル54との関係を示す図である。
図12−(b)は、図12−(a)に示す状態から、トレイ板部57−1を、点線で示すように、回転軸部72を中心として矢印方向に回動させた状態におけるトレイ板部57−1とケーブル54との関係を示す図である。
図12−(a)及び12−(b)に示されるように、トレイ板部57−1を任意の角度回動させると、回動前のB点は、C点まで移動する。図12−(b)に示すように、回動後のA−C間の距離は、回動前のA−B間の距離よりも短くなる。ここで、ケーブル54のA−C間の長さは、ケーブル54のA−B間の長さに等しいため、A−C(A−B)間におけるケーブル54の曲げ半径は短くなり、ケーブル54は回転軸部72近傍において略折り曲げられる状態となり、ケーブルの曲げは急激なものとなる。
図12−(c)は、本発明のように、回転軸部72が、図8−(a)において点線で示す中心線(トレイ板部57−1におけるケーブル54の取り付け位置)よりも、手前側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側)、即ち、図3及び図4においてX1側に設けられている場合において、トレイ板部57−1がトレイ板収納部55の内部に収納されているときのトレイ板部57−1とケーブル54との関係を示す図である。図12−(d)は、図12−(c)に示す状態から、トレイ板部57−1を、点線で示すように、回転軸部72を中心として矢印方向に回動させた状態におけるトレイ板部57−1とケーブル54との関係を示す図である。
図12−(c)及び12−(d)に示されるように、トレイ板部57−1を任意の角度回動させると、回動前のB点は、D点まで移動する。図12−(d)に示すように、回動後のA−D間の距離は、回動前のA−B間の距離よりも長くなる。従って、ケーブル54のA−D間の長さは、ケーブル54のA−B間の長さに等しいため、A−D(A−B)間におけるケーブル54の曲げ半径は、図12−(b)に示す状態に比し長くなり、緩やかな曲げとなる。
このように、本発明では、トレイ板部57−1の回転軸部72は、上面部70の左側(図3及び図4においてY2側)の端部近傍であって、図8−(a)において点線で示す中心線トレイ板部57−1におけるケーブル54の取り付け位置)よりも、手前側(トレイ板部57−1を回動して引き出す側)、即ち、図3及び図4においてX1側に設けられている。従って、本実施形態の構造により、トレイ板部57−1に取り付けられているケーブル54にトレイ板部57−1を回動させることにより作用される曲げ応力を、緩和することが出来る。
次に、ケーブルに張力が作用されないように設定されるトレイ板部57−1乃至57−4の、トレイ板収納部55の内部の水平面(図3におけるX−Y平面)に対する取り付け角度θa及びトレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55の内部に対する回動角度θbについて説明する。
図13は、トレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55の内部の水平面(図3におけるX−Y平面)に対する取り付け角度θa及びトレイ板部57−1乃至57−4のトレイ板収納部55の内部に対する回動角度θbを説明するための通信装置50の模式図である。図13では、説明の便宜上、通信装置50を模式的に示している。図13−(a)は、図3に示す通信装置50をX1−X2方向にみた場合の模式図であり、図13−(b)は、図3に示す通信装置50をY2−Y1方向にみた場合の模式図であり、図13−(c)は、図3に示す通信装置50をZ1−Z2方向にみた場合の模式図である。
図13を参照するに、ケーブル54は、任意の電子回路ユニット53のB点に接続し、任意のトレイ板部57に取り付けられている。図13−(a)において、A点は、ケーブル54が取り付けられるトレイ板部57の端部100(図4参照)の位置を示す。C点は、図10に示す回転軸部72の位置、即ち、トレイ板部57の回動中心の位置を示す。Lは、トレイ板部57に取り付けられているケーブル54のY方向の長さを示す。Nは、トレイ板部57を回動させる前、即ち、トレイ板部57がトレイ板収納部55に収納されている状態において、B点に接続しているケーブル54のZ方向の長さ、即ち、トレイ板部57の回動前のA点とB点との間のZ方向の距離を示す。
Y方向において長さLのままケーブル54を固定したトレイ板部57を、C点を中心点として、トレイ板部57の取り付け角度θaの方向に、回動角度θb回動させ、その結果移動したトレイ板部57の端部100(図4参照)の位置、即ち、A点の座標を求める。なお、トレイ板部57を回動させる前、即ち、トレイ板部57がトレイ板収納部55に収納されている状態におけるA点(トレイ板部57の端部100(図4参照)の位置)が座標の原点となる。
トレイ板部57の回動後のA点とB点との間の距離が、トレイ板部57の回動前のA点とB点との間の距離Nよりも短ければ、ケーブル54は弛むこととなり、ケーブル54には不要な張力は作用しないこととなる。
一方、トレイ板部57の回動後のAとBとの間の距離が、トレイ板部57の回動前のAとBとの間の距離Nよりも長ければ、ケーブル54は突っ張ることとなり、ケーブル54に張力が作用していることを意味する。
トレイ板部57の回動後のAとBとの間の距離(以下、この距離を「M」とする。)は、具体的には、以下の式で算出される。即ち、
M=√{X×X+Y×Y+(N−Z)×(N−Z)}
ここで、Xは、トレイ板部57の回動後におけるAのX方向距離であって、X=L×sinθb×cosθaである。Yは、トレイ板部57の回動後におけるAのY方向距離であって、Y=L−L×cosθbである。Zは、トレイ板部57の回動後におけるAのZ方向距離であって、Z=L×sinθb×sinθaである。
例えば、L=216[mm]、N=110[mm]、θa=40[度]、θb=40[度]のときに、X=94.90717、Y=39.06316、Z=79.63657と算出される。従って、M=107.0291[mm]と算出される。よって、N>Mとなり、ケーブル54は余長を有し、弛むことが分かる。
このように、N>Mの関係が成立するように、取り付け角度θa及び回動角度θbを設定することにより、ケーブル54に不要な張力が作用することが防止される。
本発明の発明者は、上述のケーブル54の余長計測のシミュレーションを行い、以下の結果を得た。図14は、発明者によるシミュレーションの対象となるケーブルの接続位置を示した本発明の通信装置50の模式図である。
図14に示す通信装置50では、8枚の電子回路ユニット53が搭載されている。図14中、一番左の電子回路ユニット53−5の上部のF点及び下部のG点の夫々にケーブル54が接続され、トレイ板収納部55に収納されたトレイ板部57のうちY方向の長さが短いトレイ板部57−5にケーブル54は取り付けられている。
また、図14中、左から8番目に位置する電子回路ユニット53−6の上部のH点及び下部のI点の夫々にケーブル54が接続され、トレイ板収納部55に収納されたトレイ板部57のうちY方向の長さが長いトレイ板部57−6にケーブル54が取り付けられている。トレイ板部57−6の上方には、トレイ板部57−5が重畳的に設けられている。
下記の表1及び図15は、電子回路ユニット53−5の上部のF点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−5を取り付け角度θaの方向に、回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す。ここでは、L=34[mm]、N=330[mm]として算出している。

表1及び図15が示すように、電子回路ユニット53−5の上部のF点に接続されたケーブル54を搭載するトレイ板部57−5にあっては、取り付け角度θaが0「度]では、回動角度θbは10[度]であってもケーブルは突っ張ってしまい、不要な張力が作用してしまうことが分かる。一方、取り付け角度θaが15[度]以上であれば、回動角度θbを10[度]以上にしてもケーブルは弛みを生じ、余長が発生する。
下記の表2及び図16は、電子回路ユニット53−5の下部のG点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−5を取り付け角度θaの方向に、回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す。ここでは、L=34[mm]、N=110[mm]として算出している。


表2及び図16が示すように、電子回路ユニット53−5の下部のG点に接続されたケーブル54を搭載するトレイ板部57−5にあっては、取り付け角度θaが0[度]では、回動角度θbは10[度]であってもケーブルは突っ張ってしまい、不要な張力が作用してしまうことが分かる。一方、取り付け角度θaが15[度]以上であれば、回動角度θbを10[度]以上にしてもケーブルは弛みを生じ余長が発生する。
下記の表3及び図17は、電子回路ユニット53−6の上部のH点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−6を取り付け角度θaの方向に、回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す。
ここで、L=216[mm]、N=380[mm]として算出している。電子回路ユニット53−5の上部のF点と、電子回路ユニット53−6の上部のH点とは、同じ高さの位置に設けられているが、トレイ板部57の高さの差が50[mm]あるため、F点のNは330[mm]、H点のNは380[mm]と両者に50[mm]の差が設けられている。


表3及び図17が示すように、電子回路ユニット53−6の上部のH点に接続されたケーブル54を搭載するトレイ板部57−6にあっては、取り付け角度θaが0[度]では回動角度θbは10[度]であっても、また、取り付け角度θaが15[度]で回動角度θbは50[度]の場合は、ケーブルは突っ張ってしまい不要な張力が作用してしまうことが分かる。
下記の表4及び図18は、電子回路ユニット53−6の下部のI点に接続されたケーブル54が取り付けられたトレイ板部57−6を取り付け角度θaの方向に、回動角度θb回動させた場合の当該ケーブル54の余長をシミュレーションによって算出した結果を示す。
ここで、L=216[mm]、N=160[mm]として算出している。電子回路ユニット53−5の下部のG点と、電子回路ユニット53−6の下部のI点とは、同じ高さの位置に設けられているが、トレイ板部57の高さの差が50[mm]あるため、G点のNは110[mm]、I点のNは160[mm]と両者に50[mm]の差が設けられている。

表4及び図18が示すように、電子回路ユニット53−6の下部のI点に接続されたケーブル54を搭載するトレイ板部57−6にあっては、取り付け角度θaが0[度]では回動角度θbを10[度]であっても、また、取り付け角度θaが15[度]では回動角度θbは30[度]にすると、更には、取り付け角度θaが30[度]では回動角度θbは50[度]にすると、ケーブルは突っ張ってしまい、不要な張力が作用してしまうことが分かる。
このようにして、ケーブル54が弛みを生じ余長が発生するような各電子回路ユニット53の所望の取り付け角度θa及び回動角度θbを選択することが出来る。
操作の利便性からすれば、トレイ板部57の取り付け角度θaが小さく、回動角度θbが大きいことが望ましい。また、トレイ板部57のY方向の長さが長ければ長いほど、トレイ板部57の回動角度θbは小さくても、トレイ板部57を容易に操作することができる。
図3に示す例のように、ケーブル54が接続される電子回路ユニット53が複数あり、複数のトレイ板部57−1乃至57−4が重畳的にトレイ板収納部55に取り付けられる場合は、先ず、トレイ板収納部55の内部の最下部に取り付けられるトレイ板部57−1の取り付け角度θaを決定する。次いで、トレイ板収納部55の内部の最下部に取り付けられるトレイ板部57の上に設けられるトレイ板部57の順(トレイ板部57−2乃至トレイ板部57−4の順)に、取り付け角度θaが決定される。
トレイ板部57の取り付け角度θaは、その下に設けられているトレイ板部57の取り付け角度θa以上であることが必要とされる。例えば、トレイ板部57−2の取り付け角度θaは、トレイ板部57−1の取り付け角度θa以上であることが必要とされる。トレイ板部57の取り付け角度θaは、その下に設けられているトレイ板部57の取り付け角度θaよりも小さければ、夫々のトレイ板部57は接触してしまうからである。
但し、各トレイ板部57−1乃至トレイ板部57−4の取り付け角度θaは夫々同一であってもよく、また、各トレイ板部57の回転角度θbも、夫々同一であってもよい。
このような構造の下、ケーブル54を電子回路ユニット53に接続する場合には、先ず、電子回路ユニット53を、通信装置50のシェルフ51の内部の電子回路ユニット収納部52に収納する。また、トレイ板部57を通信装置50の内部のトレイ板収納部55に収納する。この状態で、ケーブル54をトレイ板部57に取り付け、ケーブル54の端部を電子回路ユニット53に接続する。ケーブル54が取り付けられたトレイ板部57は、取り付け角度θaの方向に回動することができるように通信装置50の内部のトレイ板収納部55に収納されており、通信装置50の前面への突出が最小限に抑えられている。これによって、通信装置50の内部の省スペース化が実現されている。
ケーブル54を電子回路ユニット53から取り外す場合には、当該取り外すケーブル54が搭載されたトレイ板部57のみを回動して引き出す。トレイ板部57に取り付けられたケーブル54は、上述のように余長を有しており、トレイ板部57を回動操作しても、ケーブル54に不要な張力は作用されない。
トレイ板部57を回動操作して引き出すことにより、電子回路ユニット53に接続しているケーブル54を容易に取り外す操作をすることができる。トレイ板部57は、各電子回路ユニット53に接続されているケーブル毎に設けられ、各トレイ板部57は、重畳的に取り付けられている。従って、取り外し操作の対象となっていないケーブルに接触することなく、ケーブル54を取り外す操作をすることができる。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、伝送配線としてケーブルを例に挙げて説明したが、伝送配線が光ファイバである場合にも本発明を適用することができる。また、通信装置以外の電子装置にも本発明を適用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送配線が接続された電子回路ユニットを搭載し、
前記伝送配線を取り付けた伝送配線取り付け部材を内部に収納する電子装置において、
前記伝送配線取り付け部材は、当該電子装置に対して回動自在に設けられたことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
複数の前記電子回路ユニットを搭載し、複数の前記伝送配線取り付け部材を重畳して備え、
一の伝送配線取り付け部材には、一の電子回路ユニットに接続される伝送配線が取り付けられ、他の電子回路ユニットに接続される伝送配線は他の伝送配線取り付け部材に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記伝送配線取り付け部材は、
水平面に対して所定の取り付け角度傾けられて当該電子装置に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の電子装置。
【請求項4】
前記一の伝送配線取り付け部材の前記取り付け角度は、
前記一の伝送配線取り付け部材の下に設けられている前記他の伝送配線取り付け部材の取り付け角度よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の電子装置。
【請求項5】
前記一の伝送配線取り付け部材の前記取り付け角度は、
前記一の伝送配線取り付け部材の下に設けられている前記他の伝送配線取り付け部材の取り付け角度と同一であることを特徴とする請求項3記載の電子装置。
【請求項6】
前記伝送配線取り付け部材の回動中心から前記伝送配線取り付け部材の端部までの長さは、
前記伝送配線取り付け部材の夫々によって相違することを特徴とする請求項2乃至5いずれか一項記載の電子装置。
【請求項7】
前記伝送配線取り付け部材の回動中心から前記伝送配線取り付け部材の端部までの長さが長いほど、前記伝送配線取り付け部材の回動角度は小さいことを特徴とする請求項6記載の電子装置。
【請求項8】
前記伝送配線取り付け部材の回動中心の位置は、
前記伝送配線取り付け部材における前記伝送配線の取り付け位置よりも、前記伝送配線取り付け部材を回動して引き出す側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項記載の電子装置。
【請求項9】
当該電子装置と前記伝送配線取り付け部材との間に介在する介装部材を更に備えることを特徴とする請求項1乃至8いずれか一項記載の電子装置。
【請求項10】
前記伝送配線取り付け部材は、突起部を備え、
前記介装部材は、前記伝送配線取り付け部材の突起部が摺動自在に係合される溝形成部を備え、
前記突起部が前記溝形成部の端部に接触することにより、前記伝送配線取り付け部材の回動が制限されることを特徴とする請求項9記載の電子装置。
【請求項11】
前記電子回路ユニットを空冷するファンと、
前記ファンから前記電子回路ユニットに空気を導入する流体通路部を更に備え、
前記伝送配線取り付け部材は、当該電子装置の内部であって前記流体通路部の外側に形成された空間部分に収納されることを特徴とする請求項1乃至10いずれか一項記載の電子装置。

【国際公開番号】WO2004/052065
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【発行日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556779(P2004−556779)
【国際出願番号】PCT/JP2002/012532
【国際出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】