説明

電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法

【課題】液中及び液外において電子部品を搬送できる、簡易な構成の電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法を提供する。
【解決手段】電子部品103を液中及び液外において吸着保持し移動するための電子部品吸着搬送装置101であって、吸引力を発生する第1の吸引源P1と、第1の吸引源P1からの吸引力を電子部品103に作用する第1の吸引回路115、129、131と、略密封した内部空間を有し、第1の吸引回路115、129、131の途中に配置されている液体トラップ手段119と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法に関する。具体的には,
積層チップ部品等の微細な電子部品が載置された略平板状のトレイを液中と液外の間を搬送する際に、電子部品をトレイに対して吸着保持し搬送するための電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を洗浄するために液外から洗浄液中に電子部品を搬送したり、洗浄後に電子部品を洗浄液等の液体中から液外に搬送するために、種々の電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法が利用されている。
【0003】
例えば、ウエハから切り出された積層チップといった電子部品は、その切断面に加工残渣や、接着材等が付着している。このような状態の積層チップ等を用いて作製した完成品は、寸法誤差、不純物等の混入により所期の性能を発揮しない場合がある。そこで、切り出された積層チップが、次の工程に移る前に洗浄することが行われている。
【0004】
以下に具体例を説明する。図6は、従来の電子部品の洗浄用治具の断面図である。洗浄用治具701は、上治具703と、下治具705とからなる。下治具705には、キャビティ707が形成され、このキャビティ707内に洗浄される電子部品709が配置される。上治具703を下治具705に組み付けると、電子部品709がキャビティ707内に固定される。
【0005】
キャビティ707は、洗浄液を供給するための供給通路711と、洗浄液を排出するための排出通路713とに連通している。よって、洗浄液タンク(不図示)から送液ポンプ(不図示)により供給通路711に供給された洗浄液が、キャビティ707内に流入し電子部品709が洗浄される。使用した洗浄液は、排出通路713を介して洗浄用治具701の外部に排出される(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、図7は、他の従来の電子部品の被洗浄物保持具の分解図である。被洗浄物保持具801は、第1保持部807、第2保持部809、及び第3保持部811とからなる。第1保持部807は、電子部品803を収納するための複数の貫通孔805を備える。第1保持部807の下面には網状部材813が貼付され、電子部品805が落下することを防止する。第1保持部807の上面側には、第2保持部809が装着されている。第2保持部809は、枠体に網状部材815が貼付されたものであり、第1保持部807の電子部品805が上方から飛び出さないようにしてある。第3保持部811は、第2保持部809の枠体と同じ寸法、同じ形状であり、第1保持部807が第2保持部809と第3保持部811との間で挟持される。
【0007】
電子部品803を洗浄するために、被洗浄物保持具801を洗浄液が入った槽内に浸漬する。洗浄液は、第1保持部807及び第2保持部809の網状部材813等を介して電子部品813に到達し、被洗浄物保持具801を回転等することにより電子部品803が洗浄される(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−298179号公報(段落番号〔0009〕〜段落番号〔0012〕、第5図)
【特許文献2】特開平6−103511号公報(段落番号〔0008〕、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1及び2の構成では、治具や保持具に電子部品が挟持された状態で洗浄される。治具、保持具等は何度も使用するものであるから、使用される度に治具も洗浄される。しかしながら、特許文献1の治具の網状部材や、特許文献2の保持具は、その構造の複雑さから完全に洗浄することが困難である。よって、加工残渣、ゴミ等が治具、保持具自体に付着して残ってしまう恐れがある。そうすると、次に治具等を使用した場合、電子部品を汚染する恐れがある。
【0009】
さらに、引用文献1のように電子部品を挟持するために、電子部品を治具に取り付ける際、特許文献2のように保持具内で電子部品が自由に動き、電子部品と保持具が接触する際、電子部品にごみ等が発生し汚染される恐れがある。
【0010】
上記したような汚染された電子部品から作製された製品は、所期の性能を発揮しないことが考えられ好ましくない。
【0011】
そこで、本発明者等は、上記事象を鑑みて、個々の電子部品を収容する凹部を備え、略板状部材のトレイの使用を鋭意検討した。しかし、電子部品を単に凹部に収容しただけでは、液外と液中との間を搬送する際に、電子部品が凹部から脱落することがある。
【0012】
また、発明者等は、液面近傍に電子部品が存在する場合に、電子部品に対して表面張力が働き電子部品がトレイから脱落するという知見を得た。図4を参照して表面張力ついて簡単に説明する。図4は、トレイ109に載置された電子部品である磁気ヘッドのスライダ103の上面103aが、液面147より僅かに低い状態を示す。スライダ103に対して右側液面147aの表面張力により矢印149方向へ引っ張る力が働き、さらに、左側液面147bの表面張力により矢印151方向へ引っ張る力が働く。結果として、引っ張り力149、151の合力、上向きの合成引っ張り力153がスライダに生じる。引っ張り力153によりスライダ103がトレイ109から引き上げられ、液面にばらまかれてしまう恐れがある。
【0013】
よって、スライダ103に加わる合成引っ張り力153に抗する大きさの吸引力を、スライダ103に適切に付与できるように電子部品吸着搬送装置を制御する必要がある。
【0014】
そこで、本発明は、洗浄工程において電子部品を汚染する恐れがなく、液中及び液外において電子部品をトレイ上に確実に吸着保持できる電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明の電子部品吸着搬送装置は、吸引力を発生する第1の吸引源と、前記第1の吸引源からの吸引力を前記電子部品に作用する第1の吸引回路と、略密封した内部空間を有し、前記第1の吸引回路の途中に配置される液体トラップ手段と、を備えることを特徴とする電子部品吸着搬送装置である。
【0016】
また、本発明の電子部品吸着搬送装置は、吸引孔を備え、前記電子部品が載置されるトレイと、前記トレイに連結可能であり吸引力を発生する第1の吸引源と、前記第1の吸引源と前記トレイとを連結させるとき、前記第1の吸引源と前記吸引孔とを連通することで吸引力を前記電子部品に作用させる第1の吸引回路と、を有する第1の吸引手段と、略密封した内部空間を有し、前記第1の吸引回路の途中に配置される液体トラップ手段と、を備えることを特徴とする電子部品吸着搬送装置である。
【0017】
上記構成によれば、トレイ上に電子部品を吸着保持した状態で液中及び液外に電子部品を搬送できる。また、第1の吸引回路に、液体を溜めておくための液体トラップ手段を介在させているので、第1の吸引源に液体が侵入することを防止できる。よって、複雑な液体ポンプを使用することなく、また、耐水性、耐食性処理を第1の吸引源に施す必要がない簡易な構成の第1の吸引源を使用できる。
【0018】
また、本発明の電子部品吸着搬送装置は、トレイに連結可能であり吸引力を発生する第2の吸引源と、前記第2の吸引源と前記トレイとを連結させるとき、前記第2の吸引源と前記吸引孔とを連通することで吸引力を前記電子部品に作用させる第2の吸引回路と、を有する第2の吸引手段を備え、前記第1の吸引手段と前記第2の吸引手段は、選択的に使用可能である。
【0019】
上記構成により、電子部品が置かれた環境(液中又は液外)に合わせて第1の吸引源及び第2の吸引源を適切に選択して利用できるので、電子部品吸着搬送装置の耐久性、信頼性を向上できる。
【0020】
さらに、本発明の電子部品吸着搬送装置は、前記第1の吸引回路は、前記トレイから分離可能に前記トレイに連結する。
【0021】
さらに、本発明の電子部品吸着搬送装置は、前記第2の吸引回路は、前記トレイから分離可能に前記トレイに連結する。
【0022】
なお、本発明の電子部品吸着搬送装置は、前記第1の吸引源は気体ポンプであり、前記第2の吸引源は液体ポンプである。
【0023】
本発明の電子部品吸着搬送方法の第1の態様は、電子部品を液中若しくは液外において吸着保持して移動する電子部品吸着搬送方法であって、液外において、第1の吸引源の吸引力を、前記第1の吸引源とトレイとを連結し、液体トラップを有する第1の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、前記第1の吸引源の吸引力を前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持した状態で、液面から所定距離の液中の位置まで、前記トレイを降下させる工程と、降下させる工程の後、前記第1の吸引回路を前記トレイから取り外す工程と、第2の吸引源の吸引力を、前記第2の吸引源と前記トレイとを連結する第2の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、を備える。
【0024】
本発明の電子部品吸着搬送方法の第2の態様は、電子部品を液中若しくは液外において吸着保持して移動する電子部品吸着搬送方法であって、液中において、第2の吸引源の吸引力を、前記第2の吸引源とトレイとを連結する第2の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、液面から所定距離の液中の位置まで、前記トレイを上昇させる工程と、上昇させる工程の後、前記第2の吸引回路をトレイから取り外す工程と、第1の吸引源の吸引力を、前記第1の吸引源とトレイとを連結し、液体トラップを有する第1の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、前記液中の位置から液外まで、前記第1の吸引源の吸引力を前記電子部品に作用させることにより前記トレイに前記電子部品を吸着保持した状態で前記トレイを上昇させる工程と、を備える。
【0025】
本明細書において、吸引手段は吸引源と吸引回路からなり、吸引源は吸引力を発生する部材を意味し、吸引回路は吸引源で発生した吸引力を電子部品に導き作用させるための経路を構成する部材を意味する。具体的には、後述の実施形態及び実施例おける気体ポンプや液体ポンプが吸引源に対応し、第1吸引アタッチメント、第1チューブ、第2チューブが第1の吸引回路に対応し、第2吸引アタッチメント、導管、第3チューブが第2の吸引回路に対応する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電子部品吸着搬送装置及び電子部品吸着搬送方法によれば、吸引手段を用いて電子部品をトレイ上に吸着保持する構成であるので、液中及び液外に拘わらず電子部品を確実に保持できる。さらに、液中及び液外において電子部品がトレイと接触、非接触を繰り返すことがないので、ごみ等が発生することを防止でき、結果として電子部品の汚染を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による電子部品吸着搬送装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同じ符号は同一部材を示す。
【0028】
図1は、本発明の実施形態である電子部品吸着搬送装置101の部分断面図である。図1中、電子部品吸着搬送装置101が、被洗浄物(電子部品)すなわちスライダ103を洗浄するための洗浄液105が満たされた貯留槽107に配置されている。
【0029】
電子部品吸着搬送装置101は、主として、スライダ103が配置された略平板状トレイ109を保持するためのトレイ保持手段、すなわちトレイ受け部材111と、トレイ受け部材111と連結され、スライダ103を吸着保持するための第1吸引手段113と、液体を貯留するための液体トラップ手段すなわち貯留漕119と、から構成される。
【0030】
トレイ109は、複数の断面略矩形状のスライダ収容溝139をトレイの一面(図1中において上面)に備え、各スライダ収容溝139内にスライダ103が収容される。また、スライダ収容溝139の底面139aには、トレイ109を図中上下方向(矢印133)に貫通する吸引孔141が連続している。吸引孔141の径141a(図4参照。)は、底面139aの図4中における横方向長さより小さくなるように寸法付けされ、スライダ103がスライダ収容溝139に収容されると、吸引孔141がスライダ103により塞がれた状態となる。
【0031】
図1を参照し、さらに説明すると、トレイ受け部材111は、開口部112aを備える略矩形状の枠体112と、枠体112から図中において矢印133方向に延在する柱状の支持部137とを備える。枠体112の開口部112aは、トレイ109の吸引孔141の存在する領域全てを上回る大きさであって、トレイ109がトレイ受け部材111に装着された状態では各吸引孔141と開口部112aは直接連通する構成である。なお、枠体112は、4つの枠体構成部材を矩形状に連結することにより形成される。一方の対向する枠体構成部材112b、112cの幅(図1中の横方向長さ)は互いに異なり、枠体構成部材112bの幅は枠体構成部材112cの幅より小さく寸法付けされている。他方の対向する枠体構成部材112dの幅は、同寸法である。枠体構成部材112bには支持部137が接続している。支持部137には駆動部135が連結し、駆動部135を駆動すると支持部137が昇降しトレイ受け部材111が上下方向(矢印133方向)に移動する。
【0032】
さらに、トレイ受け部材111の下方には、第1の吸引手段すなわち第1吸引手段113が配置されている。第1吸引手段113は、第1の吸引源と第1の吸引回路を備える。本実施形態における第1の吸引源は、気体ポンプ(P1)117である。第1の吸引回路は、気体ポンプ(P1)により発生した吸引力をスライダ103に導く経路を構成する部材であり、トレイ受け部材111に装着される吸引アタッチメント115と、第1チューブ129と、第2チューブ131と、から構成される。
【0033】
一面が開放した箱形の第1吸引アタッチメント115は、略矩形状の開口143をトレイ受け部材111と連結する上面側に備えている。開口143の幅方向長さ(図1における横方向長さ)は、トレイ受け部材111の開口部112aの幅方向長さ(図1における横方向長さ)より僅かに長くなるように寸法付けされている。そして、トレイ受け部材111の開口部112aと第1吸引アタッチメント115の開口143とが略同心となる位置関係でトレイ受け部材111と第1吸引アタッチメント115とが連結される。第1吸引アタッチメント115は、トレイ受け部材111に装着された状態では、駆動部135により支持部137が上下方向(矢印133)に移動可能となる。
【0034】
また、吸引アタッチメント115の側壁115aには、側壁115aを貫通する貫通路145が設けられている。さらに、吸引アタッチメント115は、液体を捕集するためのトラップとして機能する略密閉された内部空間を有する液体トラップ手段すなわち貯留槽119に連結されている。吸引アタッチメント115の貫通路145には第1チューブ129の一端が連結され、第1チューブ129の他端は、貯留槽119の導入口125に連結されている。
【0035】
さらに、貯留槽119は、気体ポンプ(P1)117と連結されている。貯留槽119の導出口127は、第2チューブ131の一端が連通し、第2チューブの他端は、気体ポンプ(P1)117と連結している。
【0036】
このように、トレイ109の吸引孔141、トレイ受け部材111の開口部112a、第1吸引アタッチメントの内部空間115b、貫通路145、第1チューブ129、貯留漕119の内部空間、第2チューブ131を連通させることにより、気体ポンプ(P1)117による吸引力が、スライダ103に作用する。
【実施例】
【0037】
図2は、本発明の実施形態である電子部品吸着搬送装置101を適用した洗浄装置の実施例の部分断面図である。本実施例は、実施形態の電子部品吸着搬送装置101に第2吸引手段201を付加したものである。そこで、第2吸引手段201の構成について説明する。
【0038】
第2吸引手段201は、第2の吸引源と第2の吸引回路から構成される。第2の吸引源は、液体ポンプ(P2)207である。第2の吸引回路は、液体ポンプ(P2)207により発生した吸引力をスライダ103に導き作用させるための経路を構成する部材であり、第2吸引アタッチメント203と、第2吸引アタッチメント203と液体ポンプ(P2)を連結する導管205と、から構成される。第2吸引アタッチメント203は、図2中において上面側が開放した開口203aを備える箱形状である。また、第2吸引アタッチメント203は、貯留槽107内に固定的に配置されている。
【0039】
図3を参照してさらに、第2吸引手段201について説明する。図3は、第2吸引手段が作動している状態を示す電子部品吸着搬送装置の部分断面図である。
【0040】
第2吸引アタッチメント203は、略矩形状の開口203aをトレイ受け部材111と連結する上面側に備えている。開口203aの幅方向長さ(図3における横方向長さ)及び奥行き方向長さ(図3の表裏方向長さ)は、トレイ受け部材111の開口部112aの幅方向長さ(図3における横方向長さ)及び奥行き方向長さ(図3の表裏方向長さ)より僅かに長くなるように寸法付けされている。そして、トレイ受け部材111の開口部112aと第2吸引アタッチメント209の開口203aとが略同心となる位置関係でトレイ受け部材111と第2吸引アタッチメント209とが連結される。
【0041】
さらに、第2吸引アタッチメント203の底部203bには導管205が連結し、内部空間209が導管205と連通している。また、導管205は、液体ポンプ(P2)207に対して第3チューブ211により連結している。このように、トレイ109の貫通孔141、トレイ受け部材111の開口部112a、第2吸引手段201の吸引アタッチメントの内部空間209、導管205、第3チューブ211を連通させ、液体ポンプ(P2)207により発生する吸引力をスライダ103に対して作用させる。
【0042】
次に電子部品吸着搬送装置101の作動について本実施例の洗浄装置に関連させて図2〜5を参照して説明する。図3に示されるように、はじめに、第2吸引アタッチメント203の上面側に、トレイ受け部材111が連結し、前述の第2の吸引回路とトレイ受け部材111の開口部112aが連通する。この状態では、スライダ103に対してトレイ受け部材111方向(矢印213)への吸引力が働いているので、スライダは確実に保持されている。また、液体ポンプ(P2)207による吸引力で液体が導管内部219を矢印215、217方向に進み、最終的にポンプ207に導かれる。ポンプ207内に導かれた液体は不図示の排出口からポンプ外部へ排出される。
【0043】
次に、第2吸引手段201の液体ポンプ(P2)207を駆動させたまま、駆動部135によりトレイ受け部材111を上昇させる(図5参照。)。この時、第2吸引手段201がトレイ受け部材111から分離、すなわち第2吸引源207と各吸引孔141とが分離される。その結果、液体ポンプ(P2)207の吸引力により、第2吸引アタッチメント203の周りの液体が内部空間209内へ流入(矢印213,215、217)する。結果として、スライダ103にはトレイ109に対して押し付けられる方向の吸引力が生じ、スライダ103がトレイ109に保持された状態が維持される。
【0044】
さらに、前述した表面張力(図4の矢印149、151)の影響を受けない深さまでトレイ109を上昇させる。ここで、第1吸引手段113の吸引アタッチメント115を矢印155右方向(図2中において右方向)に移動させ、第1吸引手段113をトレイ受け部材111に連結する。その状態が図2に示されている。
【0045】
このように、スライダ103を液内から液外へ搬送する際には、液体ポンプ(P2)207に過負荷を与えることを防止するため、第1吸引手段113の気体ポンプ(P1)117を使用する。従って、第1吸引アタッチメント115がトレイ受け部材111に摺動自在に装着されている。
【0046】
スライダ103を吸着保持した状態で、駆動部135を駆動し、支持部137を上昇させる(矢印133上方向)。スライダ103は液面147より下方に位置する場合、液体が第1の吸引回路に入り込む場合があるが、吸引回路の途中に配置された貯留槽119により液体123が貯留槽119内に溜められる(トラップ機能)。よって、液体が気体ポンプ(P1)に導入されることを防止できる。
【0047】
第1吸引手段113を作動させると、気体ポンプ(P1)117の吸引力は、貯留槽119、前記第1の吸引回路、トレイ受け部材、トレイを介してスライダ103に吸引力が作用する。引かれた気体は、矢印149,151に沿って進み、貯留槽119へと導かれる。さらに、貯留槽119の気体が矢印153に沿って気体ポンプ(P1)117に導かれ、不図示の排出口から気体ポンプ(P1)117外へと排出される。
【0048】
最後に、電子部品吸着搬送装置101のトレイ受け部材111が、液面147より上に位置させた状態で、スライダ103をスライダ収容溝139に配置したトレイ109をトレイ受け部材111から取り外す。
【0049】
本実施例ではトレイ109を保持するためにトレイ受け部材111を用い、吸引回路とトレイの吸引孔との間にトレイ受け部材111の開口部112aを介在させる構成とした。しかし、トレイ受け部材111を用いることなく、例えば、トレイ109の両側方から押圧し、トレイ109を保持するチャック機構(不図示)を第1或いは第2吸引アタッチメントに設けた場合には、第1或いは第2の吸引手段における吸引源とトレイの分離は、トレイ109と、第1吸引アタッチメント115或いは第2吸引アタッチメント209との間で直接為される構成とできることは言うまでもない。
【0050】
本実施例では、第1吸引手段において気体ポンプを使用し、第2吸引手段において液体ポンプを使用しているので、スライダが液外にある場合、若しくは液中にある場合それぞれに最も適した構成によりスライダを吸着保持することが可能となる。なお、本実施例で使用した液体ポンプを備える第2吸引手段は、付加的な構成要素である。よって、液中において長期間スライダ等の電子部品を保持する必要がなければ、液体ポンプを有する第2吸引手段を設けずに、第1吸引手段のみを使用する構成とすることができることは言うまでもない。
【0051】
上記の構成により、液体ポンプ(P2)は、所定の流体抵抗が得られる状況でのみ使用されることとなり、液体ポンプ(P2)に過負荷による故障等を防止できる。
さらに、気体ポンプ(P1)は、スライダが表面張力の影響を受けない深さで使用するので、気体ポンプ(P1)と液体ポンプ(P2)との切り替えの際、吸引力の制御ができない区間があっても、表面張力や流体抵抗などに起因するトレイから取り外そうとする力に抗してスライダを確実に保持できる。
【0052】
本実施形態及び本実施例において使用したトレイは、断面矩形状のスライダ収容溝としたが、この形状に限定されない。すなわち、トレイの表面にスライダが載置される領域を囲むように突起を形成した構成であっても良い。
【0053】
本実施形態及び本実施例において、液外にあるスライダを液中に搬送する工程についてのみ説明したが、液中にあるスライダを液外に搬送する工程は、液外から液中への作動と逆の工程により作動させれば良いことは言うまでもない。
【0054】
また、本実施例では、第2吸引アタッチメントを固定的に配置し、トレイ受け部材111のみを上下方向に移動可能としたが、第2吸引アタッチメントを上下方向に移動できる構成としても良いことは言うまでもない。
【0055】
実施形態において、電子部品としてスライダを用いたが、他の積層チップ等の他の微細電子部品を使用できることは言うまでもない。
【0056】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態の電子部品吸着保持装置の部分断面図である。
【図2】本発明の実施形態の電子部品吸着保持装置を洗浄装置に適用した実施例の部分断面図である。
【図3】図2の第2吸引手段が作動している状態を示す部分断面図である。
【図4】図2のIV部分の拡大図である。
【図5】図2の第2吸引手段の稼動を開始した状態を示す図である。
【図6】従来の洗浄装置で使用される治具の断面図である。
【図7】他の従来の洗浄装置で使用される保持具の展開図である。
【符号の説明】
【0058】
101 電子部品吸着搬送装置
109 トレイ
111 トレイ受け部材
113 第1吸引手段
115 第1吸引アタッチメント
117 気体ポンプ(P1)
119 貯留槽
201 第2吸引手段
203 第2吸引アタッチメント
207 液体ポンプ(P2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を液中及び液外において吸着保持し移動するための電子部品吸着搬送装置であって、
吸引力を発生する第1の吸引源と、
前記第1の吸引源からの吸引力を前記電子部品に作用させる第1の吸引回路と、
略密封した内部空間を有し、前記第1の吸引回路の途中に配置されている液体トラップ手段と、を備えることを特徴とする電子部品吸着搬送装置。
【請求項2】
電子部品を液中及び液外において吸着保持し移動するための電子部品吸着搬送装置であって、
吸引孔を備え、前記電子部品が載置されるトレイと、
吸引力を発生する第1の吸引源と、前記トレイに連結可能であり、前記第1の吸引源と前記トレイとを連結させるとき、前記第1の吸引源と前記吸引孔とを連通することで吸引力を前記電子部品に作用させる第1の吸引回路と、を有する第1の吸引手段と、
略密封した内部空間を有し、前記第1の吸引回路の途中に配置される液体トラップ手段と、を備えることを特徴とする電子部品吸着搬送装置。
【請求項3】
吸引力を発生する第2の吸引源と、前記トレイに連結可能であり、前記第2の吸引源と前記トレイとを連結させるとき、前記第2の吸引源と前記吸引孔とを連通することで吸引力を前記電子部品に作用させる第2の吸引回路と、を有する第2の吸引手段を備え、
前記第1の吸引手段と前記第2の吸引手段は、選択的に使用可能であることを特徴とする請求項2に記載の電子部品吸着搬送装置。
【請求項4】
前記第1の吸引回路は、前記トレイから分離可能に前記トレイに連結することを特徴とする請求項2又は3に記載の電子部品吸着搬送装置。
【請求項5】
前記第2の吸引回路は、前記トレイから分離可能に前記トレイに連結することを特徴とする請求項3に記載の電子部品吸着搬送装置。
【請求項6】
前記第1の吸引源は気体ポンプであり、前記第2の吸引源は液体ポンプであることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の電子部品吸着搬送装置。
【請求項7】
電子部品を液中若しくは液外において吸着保持して移動する電子部品吸着搬送方法であって、
液外において、第1の吸引源の吸引力を、前記第1の吸引源とトレイとを連結し、液体トラップを有する第1の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、
前記第1の吸引源の吸引力を前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持した状態で、液面から所定距離の液中の位置まで、前記トレイを降下させる工程と、
降下させる工程の後、前記第1の吸引回路を前記トレイから取り外す工程と、
第2の吸引源の吸引力を、前記第2の吸引源と前記トレイとを連結する第2の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、を備える電子部品吸着搬送方法。
【請求項8】
電子部品を液中若しくは液外において吸着保持して移動する電子部品吸着搬送方法であって、
液中において、第2の吸引源の吸引力を、前記第2の吸引源とトレイとを連結する第2の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、
液面から所定距離の液中の位置まで、前記トレイを上昇させる工程と、
上昇させる工程の後、前記第2の吸引回路をトレイから取り外す工程と、
第1の吸引源の吸引力を、前記第1の吸引源とトレイとを連結し、液体トラップを有する第1の吸引回路を介して前記電子部品に作用させることにより前記電子部品を前記トレイに吸着保持する工程と、
前記液中の位置から液外まで、前記第1の吸引源の吸引力を前記電子部品に作用させることにより前記トレイに前記電子部品を吸着保持した状態で前記トレイを上昇させる工程と、を備える電子部品吸着搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−199380(P2006−199380A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9721(P2005−9721)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】