電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法
【課題】吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電子部品の吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、吸着ノズルとパーツフィーダとの単位吸着組合わせ毎に位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて吸着ノズルとパーツフィーダのそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出し、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行う。
【解決手段】電子部品の吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、吸着ノズルとパーツフィーダとの単位吸着組合わせ毎に位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて吸着ノズルとパーツフィーダのそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出し、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置においてパーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に実装する電子部品実装装置においては、部品供給部に配列されたパーツフィーダから電子部品を実装ヘッドに装着された吸着ノズルによって真空吸着により取り出して基板に移送搭載する部品実装動作が反復して実行される。真空吸着による電子部品の取り出しにおいては、吸着ノズルによるピックアップ時の電子部品に対する位置合わせ精度を確保する必要があり、位置合わせ精度が不良の場合には電子部品を正常に吸着保持することができず、吸着ミスを生じる。
【0003】
そしてこの位置合わせ精度の重要度は、実装対象とする電子部品の微細化に伴って、特に顕著となっている。このような課題に対処するため、部品吸着動作の良否を示す履歴情報を管理する機能を備えた電子部品実装装置が用いられるようになっている(例えば特許文献1参照)。この特許文献に示す先行技術例においては、電子部品実装装置(表面実装機)に装備されるテープフィーダ毎に、実測や動作履歴情報に基づいて吸着率や位置決め精度などの能力指標となるランクを定め、生産対象の基板の生産条件に基づき定められる要求ランクに適合するランクのテープフィーダを装備するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の先行技術例においては、以下に述べるような難点がある。すなわち、前述のように、真空吸着による電子部品の取り出しの良否は吸着ノズルの電子部品に対する位置合わせ精度に大きく左右され、パーツフィーダが正しい位置に部品を供給していても、吸着ノズルに装着位置ずれなどの誤差がある場合には、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせによっては正常な位置合わせ精度が確保されないことから部品吸着動作が正しく行われず、吸着率のデータが低下して当該パーツフィーダのランクは下げられる結果となる。このため、パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを適正に行うためには、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れる必要があるが、上述特許文献例を含め、従来技術においては吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づくランク分けは行われておらず、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことが困難で、新たな方策が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置は、複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置であって、前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出手段と、前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出部と、前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理部とを備えた。
【0008】
本発明の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法は、複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法であって、前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出工程と、前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出工程と、前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組合わせ毎に当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて吸着ノズルとパーツフィーダのそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出し、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うことにより、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の部分断面図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における実装ヘッドの構成および部品吸着の説明図
【図4】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ検出の説明図
【図5】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ量検出履歴データの説明図
【図6】電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ量の統計処理の説明図
【図7】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ精度を示す工程能力指数の説明図
【図8】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け基準およびメンテナンス要否判定基準の説明図
【図9】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【図10】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるフィーダランク分けおよびメンテナンス要否判定処理のフロー図
【図11】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け結果およびメンテナンス要否判定結果の表示画面の説明図
【図12】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ量検出履歴データの説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して電子部品実装装置1の構造を説明する。なお図2は、図1におけるA−A断面を部分的に示している。図1において基台1aの中央には、2列の基板搬送機構2がX方向(基板搬送方向)に配設されている。基板搬送機構2は、上流側装置から供給され当該装置による部品実装作業の対象となる基板3をX方向に搬送して、部品実装作業位置に位置決めする。基板搬送機構2の両側方には、部品供給部4が配置されており、それぞれの部品供給部4には複数のパーツフィーダであるテープフィーダ5が並設されている。
【0012】
テープフィーダ5は、電子部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、以下に説明する実装ヘッド9の吸着ノズル9aによる部品吸着位置に電子部品を供給する機能を有している。なお、ここではパーツフィーダとしてテープフィーダ5の例を示しているが、バルクフィーダやチューブフィーダなど、部品供給部4に複数が並列して装着されるタイプのパーツフィーダであれば、本発明の適用となる。
【0013】
基台1a上面においてX方向の一方側の端部には、リニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル7が配設されており、Y軸移動テーブル7には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸移動テーブル8が、Y方向に移動自在に結合されている。2基のX軸移動テーブル8には、それぞれ実装ヘッド9がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド9は複数の保持ヘッドを備えた多連型ヘッドであり、それぞれの保持ヘッドの下端部には、図2に示すように、電子部品を吸着して保持し個別に昇降可能な吸着ノズル9aが装着されている。
【0014】
Y軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8を駆動することにより、実装ヘッド9はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド9は、それぞれ対応した部品供給部4のテープフィーダ5から電子部品P(図4参照)を吸着ノズル9aによって取り出して、基板搬送機構2に位置決めされた基板3に移送搭載する。Y軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8および実装ヘッド9は、電子部品Pを保持した実装ヘッド9を移動させることにより、電子部品Pを基板3に移送搭載する部品実装機構12を構成する。
【0015】
部品供給部4と対応する基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ6が配設されている。部品供給部4から電子部品Pを取り出した実装ヘッド9が部品認識カメラ6の上方を移動する際に、部品認識カメラ6は実装ヘッド9に保持された状態の電子部品Pを撮像して認識する。実装ヘッド9にはX軸移動テーブル8の下面側に位置して、それぞれ実装ヘッド9と一体的に移動する基板認識カメラ10が装着されている。実装ヘッド9が移動することにより、基板認識カメラ10は基板搬送機構2に位置決めされた基板3の上方に移動し、基板3を撮像して認識する。実装ヘッド9による基板3への部品実装動作においては、部品認識カメラ6による電子部品Pの認識結果と、基板認識カメラ10による基板認識結果とを加味して搭載位置補正が行われる。
【0016】
図2に示すように、部品供給部4にはフィーダベース11aに予め複数のテープフィーダ5が装着された状態の台車11がセットされる。基台1aに設けられた固定ベース1bに対して、フィーダベース11aをクランプ機構11bによってクランプすることにより、部品供給部4において台車11の位置が固定される。台車11には、電子部品を保持したキャリアテープ14を巻回状態で収納するテープリール13が保持されている。テープリール13から引き出されたキャリアテープ14は、テープフィーダ5によって吸着ノズル9aによる部品吸着位置5aまでピッチ送りされる。
【0017】
実装ヘッド9による部品実装動作では、図3に示すように、実装ヘッド9に備えられた複数の吸着ノズル9a(j)のいずれかによって、部品供給部4に配列された複数のテープフィーダ5(i)のいずれかから電子部品Pを取り出して基板3に実装する。この部品実装動作においては、吸着ノズル9a(j)とテープフィーダ5(i)との組み合わせ、すなわち単位吸着組み合わせが実装ヘッド9が基板3と部品供給部4との間を1往復する1実装ターン毎に、実装シーケンスデータによって指定される。
【0018】
次に図4を参照して、部品認識カメラ6による部品認識について説明する。実装ヘッド9による部品実装動作においては、図4(a)に示すように、吸着ノズル9aによって電子部品Pを吸着保持した実装ヘッド9を、部品認識カメラ6の上方を所定方向に移動させるスキャン動作を行う。これにより、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの画像が取得される。そしてこの画像を認識処理部36(図8参照)によって認識処理することにより、図4(b)の認識画面6aに示すように、電子部品Pの吸着位置ずれ量が検出される。すなわち認識画面6aでは、電子部品Pの中心位置を示す部品中心PC、吸着ノズル9aの中心位置を示すノズル中心NCが認識され、部品中心PCとノズル中心NCとのX方向、Y方向、Θ方向の位置ずれを示す吸着位置ずれ量ΔX、ΔY、ΔΘが検出される。
【0019】
図5は、1つの単位吸着組み合わせ15a(ノズル(j)×フィーダ(i))について、これらの吸着位置ずれ量を継続して検出した結果をグラフ化した検出履歴データ15を示している。すなわち、検出履歴データ15はX方向、Y方向、Θ方向のそれぞれの位置ずれ量を示すX方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θより構成され、X方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θには、検出されたΔX、ΔY、ΔΘの値を示すX方向データ点16X、Y方向データ点16Y、Θ方向データ点16Θが時間軸に沿って表記されている。この検出履歴データ15は、部品実装動作において実行される全ての単位吸着組み合わせ15aについて作成され、以下に説明する工程能力指数などの統計諸量を算出するための生計測データとなる。
【0020】
次に図6を参照して、検出履歴データ15に基づいて算出される統計諸量について説明する。ここで、図6(a)に示す規格幅Tは、吸着対象とする電子部品を吸着可能な許容位置ずれ量を規定するものであり、実際に電子部品を吸着する吸着実験結果を評価することにより、経験的に定められる。また許容範囲上限UCL、許容範囲下限LCLは吸着位置ずれ量の許容範囲の上限および下限を規定するものである。ここでは、吸着対象となる電子部品の吸着特性、すなわち当該電子部品を所定回数吸着して得られる吸着位置ずれ量を統計処理して求められる標準偏差σの±3倍の±3σが、許容範囲上限UCL、許容範囲下限LCLとして採用されている。
【0021】
図6(b)は、特定の単位吸着組み合わせ15aについて求められた検出履歴データ15に基づいて算出される統計諸量を示している。まず、X方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θに示すデータ値を個別に統計処理することにより、それぞれについてデータ値のばらつきの程度を示す標準偏差σおよびデータ値の平均(M)を求める。そして予め与えられる規格幅Tと算出された標準偏差σに基づいて、(1)式で示すCp=T/6σを求める。
【0022】
次いで、(2)式で示す偏り値k=|M|/(T/2)を求め、さらに求められたk、Cpを用いて、(3)式で示す工程能力指数Cpk=(1−k)・Cpを算出する。そしてこの工程能力指数Cpkは、X方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θのそれぞれについて算出され、これにより特定の単位吸着組み合わせ15aによって部品実装動作を実行する際の吸着位置精度の管理達成度合を示す工程能力を、X方向、Y方向、Θ方向について判定することが可能となっている。
【0023】
次に、図7を参照して、図6に示す方法によって各単位吸着組み合わせ15a毎に算出された工程能力指数Cpkに基づいて作成される工程能力指数テーブル20について説明する。工程能力指数テーブル20は、列方向にテープフィーダ5(i)の配列位置を示すフィーダ番地21を、行方向に吸着ノズル9a(j)を特定するノズル番号22を配列したマトリックス形式の数表であり、フィーダ番地21には、各個別のテープフィーダ5に対応した電子部品の種類を示す部品種23および使用される吸着ノズル9aの種類を示すノズル種24が付記されている。
【0024】
マトリックスを構成する各セルには、当該セルに対応するテープフィーダ5(i)と吸着ノズル9a(j)とを組み合わせた単位吸着組み合わせ15aについて算出された単位工程能力指数25ij(第1の工程能力指数)が記載されている。そして同一のフィーダ番地21についての単位工程能力指数25ijの平均値を示す総合値26F(第2の工程能力指数Cpk[Fi])は、当該フィーダ番地21に装着されたテープフィーダ5の位置合わせ精度の特性を表す指標値として取り扱うことができる。すなわち、総合値26Fiが高いと云うことは、換言すれば当該総合値26Fiの基データとなった単位工程能力指数25ijが平均して高いことを示しており、これらの単位工程能力指数25ijに共通して用いられたテープフィーダ5(i)の位置合わせ精度の特性が良好であると推論して差し支えない。同様に、同一のノズル番号22についての単位工程能力指数25ijの平均値を示す総合値26Nj(第2の工程能力指数Cpk[Nj])は、当該ノズル番号22に対応する吸着ノズル9aの位置合わせ精度の特性を表す指標値として取り扱うことができる。
【0025】
本実施の形態においては、このようにして求められた総合値26F、26Nに基づいて、テープフィーダ5、吸着ノズル9aの位置合わせ精度特性を評価するようにしている。すなわち総合値26Fiを、図8(a)に示すフィーダランク分け基準27と対照することにより、テープフィーダ5を精度ランク欄27aにしたがって位置合わせ精度面からランク分けすることができる。ここでは、総合値26Fi(第2の工程能力指数Cpk[Fi])が第2しきい値THF2以上であれば、最も高い位置合わせ精度特性を有するランクAと判定され、第2しきい値THF2未満で第1しきい値以上であれば、次に高い位置合わせ精度特性を有するランクBと判定され、さらに第1しきい値未満であれば、位置合わせ精度特性が低いランクCと判定される。
【0026】
また総合値26Fi、26Njを、図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28と対照することにより、各テープフィーダ5、吸着ノズル9aのメンテナンスの要否を個別に判定することができる。すなわちテープフィーダ5については、総合値26Fi(第2の工程能力指数Cpk[Fi])が、メンテナンスしきい値THFM以上であるか、または未満であるかによって、要否欄28aに示す要否判定がなされる。同様に、吸着ノズル9aについては、総合値26Nj(第2の工程能力指数Cpk[Nj])が、メンテナンスしきい値THNM以上であるか、または未満であるかによって要否欄28bに示す要否判定がなされる。
【0027】
次に図9を参照して、制御系の構成について説明する。図9において、電子部品実装システムを構成する複数の電子部品実装装置1は、LANシステム31を介して管理コンピュータ30に接続されている。電子部品実装装置1は、通信部32、制御部33、記憶部34、機構駆動部35、認識処理部36、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39、入出力部40、表示部41を備えている。
【0028】
通信部32はLANシステム31と接続されており、LANシステム31を介して管理コンピュータ30や他装置との間でデータや信号の授受を行う。制御部33は演算機能を有するCPUであり、記憶部34に記憶された各種のプログラム、データに基づき、以下に説明する各部を制御して電子部品実装装置1による部品実装動作を実行させる。記憶部34には、部品実装動作のための動作プログラム、実装データのほか、工程能力指数算出データ34a、フィーダランク分けデータ34b、メンテナンス要否判定データ34cが記憶されている。
【0029】
工程能力指数算出データ34aは、図6に示す演算処理に用いられるデータであり、予め与えられる規格幅Tが含まれる。フィーダランク分けデータ34bは、図8(a)に示すフィーダランク分け基準27に用いられるしきい値データであり、またメンテナンス要否判定データ34cは、図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28に用いられるしきい値データである。
【0030】
機構駆動部35は、制御部33に制御されて図1に示す基板搬送機構2および部品実装機構12を駆動する。認識処理部36は、部品認識カメラ6、基板認識カメラ10による撮像結果を認識処理することにより、吸着ノズル9aに保持された状態の電子部品Pの位置認識を行うとともに、基板3の部品実装位置の位置認識を行う。したがって、部品認識カメラ6および認識処理部36は、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出手段を構成する。
【0031】
工程能力指数算出部37は、吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データ15から、一の吸着ノズル9aと一のテープフィーダ5との組み合わせを示す単位吸着組合わせ15a毎に、当該単位吸着組み合わせ15aにおける位置合わせ精度を示す単位工程能力指数25ij(第1の工程能力指数)を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせ15aについて算出された複数の単位工程能力指数25ijのデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の少なくともいずれか一方についての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数Cpk[Nj]、Cpk[Fi]を算出する工程能力指数算出処理を実行する。この処理の実行に際しては、記憶部34に記憶された工程能力指数算出データ34aが参照される。本実施の形態においては、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の双方について第2の工程能力指数を算出する例を示している。
【0032】
フィーダランク分け処理部38は、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のテープフィーダ5について位置合わせ精度等級のランク分けを行う。この処理の実行に際しては、記憶部34に記憶されたフィーダランク分けデータ34bが参照される。メンテナンス要否判定部39は、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の少なくともいずれか一方について、位置合わせ精度面でのメンテナンスの要否を個別に判定する。この処理の実行に際しては、記憶部34に記憶されたメンテナンス要否判定データ34cが参照される。本実施の形態においては、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の双方について、メンテナンスの要否を判定する例を示している。
【0033】
入出力部40はインターフェイスであり、操作指令やデータ入力を行うとともに、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39による処理結果のデータを出力する。表示部41は表示パネルを備えており、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39による判定結果を画面表示する。これにより、図11(a)、(b)に示すフィーダランク分け結果表示画面42、メンテナンス要否判定画面43が表示される。
【0034】
上記構成において、部品認識カメラ6および認識処理部36より成る吸着位置ずれ検出手段、工程能力指数算出部37およびフィーダランク分け処理部38は、電子部品実装装置1においてパーツフィーダであるテープフィーダ5の位置合わせ精度等級のランク分けを行うフィーダランク分け装置を構成する。同様に、部品認識カメラ6および認識処理部36より成る吸着位置ずれ検出手段、工程能力指数算出部37およびメンテナンス要否判定部39は、電子部品実装装置1において吸着ノズル9aまたはテープフィーダ5のメンテナンスの要否を判定するメンテナンスの要否判定装置を構成する。
【0035】
なお本実施の形態においては、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39を個別の電子部品実装装置1に備えた構成例を示したが、図9に示すように、管理コンピュータ30をLANシステム31を介して電子部品実装装置1と連結した構成の場合には、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39の機能を、管理コンピュータ30に設けるようにしてもよい。
【0036】
次に図10を参照して、前述構成の電子部品実装装置1において、テープフィーダ5の位置合わせ精度等級のランク分けおよび吸着ノズル9aまたはテープフィーダ5のメンテナンスの要否判定を行うための実行される処理フローについて説明する。これらの処理は、通常の部品実装動作を継続して実行する過程において取得蓄積された履歴データに基づいて実行される。
【0037】
まず、電子部品実装装置1による部品実装動作において、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの吸着位置ずれ量を検出する(吸着位置ずれ検出工程)。すなわち部品供給部4から吸着ノズル9aによって電子部品Pを取り出した実装ヘッド9が部品認識カメラ6の上方を移動する過程において、部品認識カメラ6によって電子部品Pの画像を取得する。そしてこの画像を認識処理することにより、図4(b)に示す吸着位置ずれ量ΔX、ΔY、ΔΘが検出され、この検出処理を継続して実行することにより、図5に示す検出履歴データ15が各単位吸着組み合わせ15a毎に取得される。
【0038】
次に吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データ15から、単位工程能力指数25ij、総合値26F,総合値26Nを算出する演算処理が、工程能力指数算出部37によって実行される(工程能力指数算出工程)。ここでは、まず検出履歴データ15から、単位吸着組合わせ15a毎に当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す単位工程能力指数25ij(第1の工程能力指数)を算出する(ST2)。次いで、複数の単位吸着組合わせ15aについて算出された複数の単位工程能力指数25ijのデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5のそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す総合値26F,26N(第2の工程能力指数)を算出する(ST3)。
【0039】
そして算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のテープフィーダ5について位置合わせ精度等級のランク分けを行う(ランク分け処理工程)(ST4)。すなわち総合値26Fiを、図8(a)に示すフィーダランク分け基準27と対照することにより、テープフィーダ5を位置合わせ精度面からランク分けし、ランク分けの結果は図11(a)に示すフィーダランク分け結果表示画面42に表示される。ここでは、その時点でフィーダ番地42aにセットされているテープフィーダ5について、当該テープフィーダ5を特定するフィーダID記号42bとともに、総合値26Njのデータに基づくランク分け結果が表示される。ここでは、位置合わせ精度等級を3つのランク(A、B,C)に区分し、ランク分け対象のテープフィーダ5の総合値26Njが、予め各ランクに対応して規定された指数範囲のいずれに該当するかを判定する。
【0040】
次に、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5について位置合わせ精度面でのメンテナンスの要否を個別に判定する(メンテナンス要否判定工程)(ST5)。ここでは、総合値26Fi、26Njを、図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28と対照することにより、各テープフィーダ5、吸着ノズル9aのメンテナンスの要否を個別に判定する。
【0041】
すなわちメンテナンス要否判定工程において、第2の工程能力指数である総合値26Njが所定の基準範囲を外れる吸着ノズル9aがある場合には、当該吸着ノズル9aをメンテナンス対象とする。また第2の工程能力指数である総合値26Fiが所定の基準範囲を外れるテープフィーダ5がある場合には、当該テープフィーダ5をメンテナンス対象として判定する。そして判定結果は、図11(b)に示すメンテナンス要否判定画面43に表示される。ここでは、その時点でフィーダ番地43aにセットされているテープフィーダ5について、各フィーダ番地43a毎に、メンテナンスの要否欄43bにメンテナンスの要否が所定の記号等で表示される。同様に、実装ヘッド9における吸着ノズル9aを特定するノズル番号43c毎に、要否欄43bにメンテナンスの要否が所定の記号等で表示される。
【0042】
なお上述のメンテナンス要否判定工程においては、第2の工程能力指数を判定の指標として用いるようにしているが、テープフィーダ5のメンテナンス要否の判定においては、第2の工程能力指数が図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28を満たしていても、必ずしもテープフィーダ5の機能が常に正常な状態であるとは限らない。例えば、図12に示すX方向位置ずれデータ15Xのように、通常時のX方向データ点16Xのばらつき変動範囲が小さい場合には、部分的に吸着位置ずれ量ΔXが限界基準値であるUCLを超えていても、超過範囲に属する異常データ点16*が少ないときには、統計演算によって算出される第2の工程能力指数が、メンテナンス要否判定基準28に示すメンテナンスしきい値THFN未満となる場合が生じる。
【0043】
しかしながら、このように吸着位置ずれ量が部分的であっても限界基準値を超えている事象は、当該テープフィーダ5の精度特性以外の要因、例えばキャリアテープを作業者がつなぎ合わせるテープスプライシングの不良に起因する部品吸着不良などである場合が多いことから、このような事象が検出された場合にはそのまま看過すべきではない。このため、本実施の形態では、メンテナンス要否判定工程において一のテープフィーダ5についての第2の工程能力指数が所定の基準範囲内であっても、当該テープフィーダ5についての検出履歴データ15における吸着位置ずれ量が部分的に限界基準値を超えている場合には、当該テープフィーダ5に固有の精度特性以外の要因に起因するメンテナンス対象として判定し、その旨を表示画面に報知するようにしている。
【0044】
上記説明したように、本実施の形態に示す電子部品実装装置におけるフィーダランク分けでは、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データ15から、一の吸着ノズル9aと一のテープフィーダ5との組み合わせを示す単位吸着組合わせ15a毎に当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせ15aについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて吸着ノズル9aとテープフィーダ5のそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出し、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のテープフィーダ5について位置合わせ精度等級のランク分けを行うようにしている。これにより、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、テープフィーダ5のランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる。
【0045】
また本実施の形態に示す電子部品実装装置におけるメンテナンスの要否判定では、第2の工程能力指数のデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5について位置合わせ精度面でのメンテナンスの要否を個別に判定するようにしている。これにより、吸着ノズル9aおよびテープフィーダ5のそれぞれの性能監視を簡便な方法で行って、メンテナンスの要否を適正に判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法は、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができるという効果を有し、吸着ノズルによって部品供給部から部品を真空吸着により取り出して基板に移送搭載する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 電子部品実装装置
3 基板
4 部品供給部
5 テープフィーダ(パーツフィーダ)
6 部品認識カメラ
9 実装ヘッド
9a 吸着ノズル
12 部品実装機構
15a 単位吸着組み合わせ
P 電子部品
T 規格幅
Cpk 工程能力指数
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置においてパーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に実装する電子部品実装装置においては、部品供給部に配列されたパーツフィーダから電子部品を実装ヘッドに装着された吸着ノズルによって真空吸着により取り出して基板に移送搭載する部品実装動作が反復して実行される。真空吸着による電子部品の取り出しにおいては、吸着ノズルによるピックアップ時の電子部品に対する位置合わせ精度を確保する必要があり、位置合わせ精度が不良の場合には電子部品を正常に吸着保持することができず、吸着ミスを生じる。
【0003】
そしてこの位置合わせ精度の重要度は、実装対象とする電子部品の微細化に伴って、特に顕著となっている。このような課題に対処するため、部品吸着動作の良否を示す履歴情報を管理する機能を備えた電子部品実装装置が用いられるようになっている(例えば特許文献1参照)。この特許文献に示す先行技術例においては、電子部品実装装置(表面実装機)に装備されるテープフィーダ毎に、実測や動作履歴情報に基づいて吸着率や位置決め精度などの能力指標となるランクを定め、生産対象の基板の生産条件に基づき定められる要求ランクに適合するランクのテープフィーダを装備するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の先行技術例においては、以下に述べるような難点がある。すなわち、前述のように、真空吸着による電子部品の取り出しの良否は吸着ノズルの電子部品に対する位置合わせ精度に大きく左右され、パーツフィーダが正しい位置に部品を供給していても、吸着ノズルに装着位置ずれなどの誤差がある場合には、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせによっては正常な位置合わせ精度が確保されないことから部品吸着動作が正しく行われず、吸着率のデータが低下して当該パーツフィーダのランクは下げられる結果となる。このため、パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを適正に行うためには、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れる必要があるが、上述特許文献例を含め、従来技術においては吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づくランク分けは行われておらず、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことが困難で、新たな方策が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置は、複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置であって、前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出手段と、前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出部と、前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理部とを備えた。
【0008】
本発明の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法は、複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法であって、前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出工程と、前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出工程と、前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組合わせ毎に当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて吸着ノズルとパーツフィーダのそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出し、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うことにより、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の部分断面図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における実装ヘッドの構成および部品吸着の説明図
【図4】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ検出の説明図
【図5】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ量検出履歴データの説明図
【図6】電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ量の統計処理の説明図
【図7】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ精度を示す工程能力指数の説明図
【図8】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け基準およびメンテナンス要否判定基準の説明図
【図9】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【図10】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるフィーダランク分けおよびメンテナンス要否判定処理のフロー図
【図11】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け結果およびメンテナンス要否判定結果の表示画面の説明図
【図12】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における電子部品の吸着位置ずれ量検出履歴データの説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して電子部品実装装置1の構造を説明する。なお図2は、図1におけるA−A断面を部分的に示している。図1において基台1aの中央には、2列の基板搬送機構2がX方向(基板搬送方向)に配設されている。基板搬送機構2は、上流側装置から供給され当該装置による部品実装作業の対象となる基板3をX方向に搬送して、部品実装作業位置に位置決めする。基板搬送機構2の両側方には、部品供給部4が配置されており、それぞれの部品供給部4には複数のパーツフィーダであるテープフィーダ5が並設されている。
【0012】
テープフィーダ5は、電子部品を保持したキャリアテープをピッチ送りすることにより、以下に説明する実装ヘッド9の吸着ノズル9aによる部品吸着位置に電子部品を供給する機能を有している。なお、ここではパーツフィーダとしてテープフィーダ5の例を示しているが、バルクフィーダやチューブフィーダなど、部品供給部4に複数が並列して装着されるタイプのパーツフィーダであれば、本発明の適用となる。
【0013】
基台1a上面においてX方向の一方側の端部には、リニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル7が配設されており、Y軸移動テーブル7には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸移動テーブル8が、Y方向に移動自在に結合されている。2基のX軸移動テーブル8には、それぞれ実装ヘッド9がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド9は複数の保持ヘッドを備えた多連型ヘッドであり、それぞれの保持ヘッドの下端部には、図2に示すように、電子部品を吸着して保持し個別に昇降可能な吸着ノズル9aが装着されている。
【0014】
Y軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8を駆動することにより、実装ヘッド9はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド9は、それぞれ対応した部品供給部4のテープフィーダ5から電子部品P(図4参照)を吸着ノズル9aによって取り出して、基板搬送機構2に位置決めされた基板3に移送搭載する。Y軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8および実装ヘッド9は、電子部品Pを保持した実装ヘッド9を移動させることにより、電子部品Pを基板3に移送搭載する部品実装機構12を構成する。
【0015】
部品供給部4と対応する基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ6が配設されている。部品供給部4から電子部品Pを取り出した実装ヘッド9が部品認識カメラ6の上方を移動する際に、部品認識カメラ6は実装ヘッド9に保持された状態の電子部品Pを撮像して認識する。実装ヘッド9にはX軸移動テーブル8の下面側に位置して、それぞれ実装ヘッド9と一体的に移動する基板認識カメラ10が装着されている。実装ヘッド9が移動することにより、基板認識カメラ10は基板搬送機構2に位置決めされた基板3の上方に移動し、基板3を撮像して認識する。実装ヘッド9による基板3への部品実装動作においては、部品認識カメラ6による電子部品Pの認識結果と、基板認識カメラ10による基板認識結果とを加味して搭載位置補正が行われる。
【0016】
図2に示すように、部品供給部4にはフィーダベース11aに予め複数のテープフィーダ5が装着された状態の台車11がセットされる。基台1aに設けられた固定ベース1bに対して、フィーダベース11aをクランプ機構11bによってクランプすることにより、部品供給部4において台車11の位置が固定される。台車11には、電子部品を保持したキャリアテープ14を巻回状態で収納するテープリール13が保持されている。テープリール13から引き出されたキャリアテープ14は、テープフィーダ5によって吸着ノズル9aによる部品吸着位置5aまでピッチ送りされる。
【0017】
実装ヘッド9による部品実装動作では、図3に示すように、実装ヘッド9に備えられた複数の吸着ノズル9a(j)のいずれかによって、部品供給部4に配列された複数のテープフィーダ5(i)のいずれかから電子部品Pを取り出して基板3に実装する。この部品実装動作においては、吸着ノズル9a(j)とテープフィーダ5(i)との組み合わせ、すなわち単位吸着組み合わせが実装ヘッド9が基板3と部品供給部4との間を1往復する1実装ターン毎に、実装シーケンスデータによって指定される。
【0018】
次に図4を参照して、部品認識カメラ6による部品認識について説明する。実装ヘッド9による部品実装動作においては、図4(a)に示すように、吸着ノズル9aによって電子部品Pを吸着保持した実装ヘッド9を、部品認識カメラ6の上方を所定方向に移動させるスキャン動作を行う。これにより、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの画像が取得される。そしてこの画像を認識処理部36(図8参照)によって認識処理することにより、図4(b)の認識画面6aに示すように、電子部品Pの吸着位置ずれ量が検出される。すなわち認識画面6aでは、電子部品Pの中心位置を示す部品中心PC、吸着ノズル9aの中心位置を示すノズル中心NCが認識され、部品中心PCとノズル中心NCとのX方向、Y方向、Θ方向の位置ずれを示す吸着位置ずれ量ΔX、ΔY、ΔΘが検出される。
【0019】
図5は、1つの単位吸着組み合わせ15a(ノズル(j)×フィーダ(i))について、これらの吸着位置ずれ量を継続して検出した結果をグラフ化した検出履歴データ15を示している。すなわち、検出履歴データ15はX方向、Y方向、Θ方向のそれぞれの位置ずれ量を示すX方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θより構成され、X方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θには、検出されたΔX、ΔY、ΔΘの値を示すX方向データ点16X、Y方向データ点16Y、Θ方向データ点16Θが時間軸に沿って表記されている。この検出履歴データ15は、部品実装動作において実行される全ての単位吸着組み合わせ15aについて作成され、以下に説明する工程能力指数などの統計諸量を算出するための生計測データとなる。
【0020】
次に図6を参照して、検出履歴データ15に基づいて算出される統計諸量について説明する。ここで、図6(a)に示す規格幅Tは、吸着対象とする電子部品を吸着可能な許容位置ずれ量を規定するものであり、実際に電子部品を吸着する吸着実験結果を評価することにより、経験的に定められる。また許容範囲上限UCL、許容範囲下限LCLは吸着位置ずれ量の許容範囲の上限および下限を規定するものである。ここでは、吸着対象となる電子部品の吸着特性、すなわち当該電子部品を所定回数吸着して得られる吸着位置ずれ量を統計処理して求められる標準偏差σの±3倍の±3σが、許容範囲上限UCL、許容範囲下限LCLとして採用されている。
【0021】
図6(b)は、特定の単位吸着組み合わせ15aについて求められた検出履歴データ15に基づいて算出される統計諸量を示している。まず、X方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θに示すデータ値を個別に統計処理することにより、それぞれについてデータ値のばらつきの程度を示す標準偏差σおよびデータ値の平均(M)を求める。そして予め与えられる規格幅Tと算出された標準偏差σに基づいて、(1)式で示すCp=T/6σを求める。
【0022】
次いで、(2)式で示す偏り値k=|M|/(T/2)を求め、さらに求められたk、Cpを用いて、(3)式で示す工程能力指数Cpk=(1−k)・Cpを算出する。そしてこの工程能力指数Cpkは、X方向位置ずれデータ15X、Y方向位置ずれデータ15Y、Θ方向位置ずれデータ15Θのそれぞれについて算出され、これにより特定の単位吸着組み合わせ15aによって部品実装動作を実行する際の吸着位置精度の管理達成度合を示す工程能力を、X方向、Y方向、Θ方向について判定することが可能となっている。
【0023】
次に、図7を参照して、図6に示す方法によって各単位吸着組み合わせ15a毎に算出された工程能力指数Cpkに基づいて作成される工程能力指数テーブル20について説明する。工程能力指数テーブル20は、列方向にテープフィーダ5(i)の配列位置を示すフィーダ番地21を、行方向に吸着ノズル9a(j)を特定するノズル番号22を配列したマトリックス形式の数表であり、フィーダ番地21には、各個別のテープフィーダ5に対応した電子部品の種類を示す部品種23および使用される吸着ノズル9aの種類を示すノズル種24が付記されている。
【0024】
マトリックスを構成する各セルには、当該セルに対応するテープフィーダ5(i)と吸着ノズル9a(j)とを組み合わせた単位吸着組み合わせ15aについて算出された単位工程能力指数25ij(第1の工程能力指数)が記載されている。そして同一のフィーダ番地21についての単位工程能力指数25ijの平均値を示す総合値26F(第2の工程能力指数Cpk[Fi])は、当該フィーダ番地21に装着されたテープフィーダ5の位置合わせ精度の特性を表す指標値として取り扱うことができる。すなわち、総合値26Fiが高いと云うことは、換言すれば当該総合値26Fiの基データとなった単位工程能力指数25ijが平均して高いことを示しており、これらの単位工程能力指数25ijに共通して用いられたテープフィーダ5(i)の位置合わせ精度の特性が良好であると推論して差し支えない。同様に、同一のノズル番号22についての単位工程能力指数25ijの平均値を示す総合値26Nj(第2の工程能力指数Cpk[Nj])は、当該ノズル番号22に対応する吸着ノズル9aの位置合わせ精度の特性を表す指標値として取り扱うことができる。
【0025】
本実施の形態においては、このようにして求められた総合値26F、26Nに基づいて、テープフィーダ5、吸着ノズル9aの位置合わせ精度特性を評価するようにしている。すなわち総合値26Fiを、図8(a)に示すフィーダランク分け基準27と対照することにより、テープフィーダ5を精度ランク欄27aにしたがって位置合わせ精度面からランク分けすることができる。ここでは、総合値26Fi(第2の工程能力指数Cpk[Fi])が第2しきい値THF2以上であれば、最も高い位置合わせ精度特性を有するランクAと判定され、第2しきい値THF2未満で第1しきい値以上であれば、次に高い位置合わせ精度特性を有するランクBと判定され、さらに第1しきい値未満であれば、位置合わせ精度特性が低いランクCと判定される。
【0026】
また総合値26Fi、26Njを、図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28と対照することにより、各テープフィーダ5、吸着ノズル9aのメンテナンスの要否を個別に判定することができる。すなわちテープフィーダ5については、総合値26Fi(第2の工程能力指数Cpk[Fi])が、メンテナンスしきい値THFM以上であるか、または未満であるかによって、要否欄28aに示す要否判定がなされる。同様に、吸着ノズル9aについては、総合値26Nj(第2の工程能力指数Cpk[Nj])が、メンテナンスしきい値THNM以上であるか、または未満であるかによって要否欄28bに示す要否判定がなされる。
【0027】
次に図9を参照して、制御系の構成について説明する。図9において、電子部品実装システムを構成する複数の電子部品実装装置1は、LANシステム31を介して管理コンピュータ30に接続されている。電子部品実装装置1は、通信部32、制御部33、記憶部34、機構駆動部35、認識処理部36、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39、入出力部40、表示部41を備えている。
【0028】
通信部32はLANシステム31と接続されており、LANシステム31を介して管理コンピュータ30や他装置との間でデータや信号の授受を行う。制御部33は演算機能を有するCPUであり、記憶部34に記憶された各種のプログラム、データに基づき、以下に説明する各部を制御して電子部品実装装置1による部品実装動作を実行させる。記憶部34には、部品実装動作のための動作プログラム、実装データのほか、工程能力指数算出データ34a、フィーダランク分けデータ34b、メンテナンス要否判定データ34cが記憶されている。
【0029】
工程能力指数算出データ34aは、図6に示す演算処理に用いられるデータであり、予め与えられる規格幅Tが含まれる。フィーダランク分けデータ34bは、図8(a)に示すフィーダランク分け基準27に用いられるしきい値データであり、またメンテナンス要否判定データ34cは、図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28に用いられるしきい値データである。
【0030】
機構駆動部35は、制御部33に制御されて図1に示す基板搬送機構2および部品実装機構12を駆動する。認識処理部36は、部品認識カメラ6、基板認識カメラ10による撮像結果を認識処理することにより、吸着ノズル9aに保持された状態の電子部品Pの位置認識を行うとともに、基板3の部品実装位置の位置認識を行う。したがって、部品認識カメラ6および認識処理部36は、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出手段を構成する。
【0031】
工程能力指数算出部37は、吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データ15から、一の吸着ノズル9aと一のテープフィーダ5との組み合わせを示す単位吸着組合わせ15a毎に、当該単位吸着組み合わせ15aにおける位置合わせ精度を示す単位工程能力指数25ij(第1の工程能力指数)を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせ15aについて算出された複数の単位工程能力指数25ijのデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の少なくともいずれか一方についての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数Cpk[Nj]、Cpk[Fi]を算出する工程能力指数算出処理を実行する。この処理の実行に際しては、記憶部34に記憶された工程能力指数算出データ34aが参照される。本実施の形態においては、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の双方について第2の工程能力指数を算出する例を示している。
【0032】
フィーダランク分け処理部38は、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のテープフィーダ5について位置合わせ精度等級のランク分けを行う。この処理の実行に際しては、記憶部34に記憶されたフィーダランク分けデータ34bが参照される。メンテナンス要否判定部39は、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の少なくともいずれか一方について、位置合わせ精度面でのメンテナンスの要否を個別に判定する。この処理の実行に際しては、記憶部34に記憶されたメンテナンス要否判定データ34cが参照される。本実施の形態においては、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の双方について、メンテナンスの要否を判定する例を示している。
【0033】
入出力部40はインターフェイスであり、操作指令やデータ入力を行うとともに、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39による処理結果のデータを出力する。表示部41は表示パネルを備えており、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39による判定結果を画面表示する。これにより、図11(a)、(b)に示すフィーダランク分け結果表示画面42、メンテナンス要否判定画面43が表示される。
【0034】
上記構成において、部品認識カメラ6および認識処理部36より成る吸着位置ずれ検出手段、工程能力指数算出部37およびフィーダランク分け処理部38は、電子部品実装装置1においてパーツフィーダであるテープフィーダ5の位置合わせ精度等級のランク分けを行うフィーダランク分け装置を構成する。同様に、部品認識カメラ6および認識処理部36より成る吸着位置ずれ検出手段、工程能力指数算出部37およびメンテナンス要否判定部39は、電子部品実装装置1において吸着ノズル9aまたはテープフィーダ5のメンテナンスの要否を判定するメンテナンスの要否判定装置を構成する。
【0035】
なお本実施の形態においては、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39を個別の電子部品実装装置1に備えた構成例を示したが、図9に示すように、管理コンピュータ30をLANシステム31を介して電子部品実装装置1と連結した構成の場合には、工程能力指数算出部37、フィーダランク分け処理部38、メンテナンス要否判定部39の機能を、管理コンピュータ30に設けるようにしてもよい。
【0036】
次に図10を参照して、前述構成の電子部品実装装置1において、テープフィーダ5の位置合わせ精度等級のランク分けおよび吸着ノズル9aまたはテープフィーダ5のメンテナンスの要否判定を行うための実行される処理フローについて説明する。これらの処理は、通常の部品実装動作を継続して実行する過程において取得蓄積された履歴データに基づいて実行される。
【0037】
まず、電子部品実装装置1による部品実装動作において、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの吸着位置ずれ量を検出する(吸着位置ずれ検出工程)。すなわち部品供給部4から吸着ノズル9aによって電子部品Pを取り出した実装ヘッド9が部品認識カメラ6の上方を移動する過程において、部品認識カメラ6によって電子部品Pの画像を取得する。そしてこの画像を認識処理することにより、図4(b)に示す吸着位置ずれ量ΔX、ΔY、ΔΘが検出され、この検出処理を継続して実行することにより、図5に示す検出履歴データ15が各単位吸着組み合わせ15a毎に取得される。
【0038】
次に吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データ15から、単位工程能力指数25ij、総合値26F,総合値26Nを算出する演算処理が、工程能力指数算出部37によって実行される(工程能力指数算出工程)。ここでは、まず検出履歴データ15から、単位吸着組合わせ15a毎に当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す単位工程能力指数25ij(第1の工程能力指数)を算出する(ST2)。次いで、複数の単位吸着組合わせ15aについて算出された複数の単位工程能力指数25ijのデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5のそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す総合値26F,26N(第2の工程能力指数)を算出する(ST3)。
【0039】
そして算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のテープフィーダ5について位置合わせ精度等級のランク分けを行う(ランク分け処理工程)(ST4)。すなわち総合値26Fiを、図8(a)に示すフィーダランク分け基準27と対照することにより、テープフィーダ5を位置合わせ精度面からランク分けし、ランク分けの結果は図11(a)に示すフィーダランク分け結果表示画面42に表示される。ここでは、その時点でフィーダ番地42aにセットされているテープフィーダ5について、当該テープフィーダ5を特定するフィーダID記号42bとともに、総合値26Njのデータに基づくランク分け結果が表示される。ここでは、位置合わせ精度等級を3つのランク(A、B,C)に区分し、ランク分け対象のテープフィーダ5の総合値26Njが、予め各ランクに対応して規定された指数範囲のいずれに該当するかを判定する。
【0040】
次に、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5について位置合わせ精度面でのメンテナンスの要否を個別に判定する(メンテナンス要否判定工程)(ST5)。ここでは、総合値26Fi、26Njを、図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28と対照することにより、各テープフィーダ5、吸着ノズル9aのメンテナンスの要否を個別に判定する。
【0041】
すなわちメンテナンス要否判定工程において、第2の工程能力指数である総合値26Njが所定の基準範囲を外れる吸着ノズル9aがある場合には、当該吸着ノズル9aをメンテナンス対象とする。また第2の工程能力指数である総合値26Fiが所定の基準範囲を外れるテープフィーダ5がある場合には、当該テープフィーダ5をメンテナンス対象として判定する。そして判定結果は、図11(b)に示すメンテナンス要否判定画面43に表示される。ここでは、その時点でフィーダ番地43aにセットされているテープフィーダ5について、各フィーダ番地43a毎に、メンテナンスの要否欄43bにメンテナンスの要否が所定の記号等で表示される。同様に、実装ヘッド9における吸着ノズル9aを特定するノズル番号43c毎に、要否欄43bにメンテナンスの要否が所定の記号等で表示される。
【0042】
なお上述のメンテナンス要否判定工程においては、第2の工程能力指数を判定の指標として用いるようにしているが、テープフィーダ5のメンテナンス要否の判定においては、第2の工程能力指数が図8(b)に示すメンテナンス要否判定基準28を満たしていても、必ずしもテープフィーダ5の機能が常に正常な状態であるとは限らない。例えば、図12に示すX方向位置ずれデータ15Xのように、通常時のX方向データ点16Xのばらつき変動範囲が小さい場合には、部分的に吸着位置ずれ量ΔXが限界基準値であるUCLを超えていても、超過範囲に属する異常データ点16*が少ないときには、統計演算によって算出される第2の工程能力指数が、メンテナンス要否判定基準28に示すメンテナンスしきい値THFN未満となる場合が生じる。
【0043】
しかしながら、このように吸着位置ずれ量が部分的であっても限界基準値を超えている事象は、当該テープフィーダ5の精度特性以外の要因、例えばキャリアテープを作業者がつなぎ合わせるテープスプライシングの不良に起因する部品吸着不良などである場合が多いことから、このような事象が検出された場合にはそのまま看過すべきではない。このため、本実施の形態では、メンテナンス要否判定工程において一のテープフィーダ5についての第2の工程能力指数が所定の基準範囲内であっても、当該テープフィーダ5についての検出履歴データ15における吸着位置ずれ量が部分的に限界基準値を超えている場合には、当該テープフィーダ5に固有の精度特性以外の要因に起因するメンテナンス対象として判定し、その旨を表示画面に報知するようにしている。
【0044】
上記説明したように、本実施の形態に示す電子部品実装装置におけるフィーダランク分けでは、吸着ノズル9aに吸着保持された状態の電子部品Pの吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データ15から、一の吸着ノズル9aと一のテープフィーダ5との組み合わせを示す単位吸着組合わせ15a毎に当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組合わせ15aについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて吸着ノズル9aとテープフィーダ5のそれぞれについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出し、算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のテープフィーダ5について位置合わせ精度等級のランク分けを行うようにしている。これにより、吸着ノズル9aとテープフィーダ5の組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、テープフィーダ5のランク分けを適正に簡便な方法で行うことができる。
【0045】
また本実施の形態に示す電子部品実装装置におけるメンテナンスの要否判定では、第2の工程能力指数のデータに基づいて、吸着ノズル9aとテープフィーダ5について位置合わせ精度面でのメンテナンスの要否を個別に判定するようにしている。これにより、吸着ノズル9aおよびテープフィーダ5のそれぞれの性能監視を簡便な方法で行って、メンテナンスの要否を適正に判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置およびフィーダランク分け方法は、吸着ノズルとパーツフィーダの組み合わせを考慮に入れた動作履歴情報に基づいて、パーツフィーダのランク分けを適正に簡便な方法で行うことができるという効果を有し、吸着ノズルによって部品供給部から部品を真空吸着により取り出して基板に移送搭載する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 電子部品実装装置
3 基板
4 部品供給部
5 テープフィーダ(パーツフィーダ)
6 部品認識カメラ
9 実装ヘッド
9a 吸着ノズル
12 部品実装機構
15a 単位吸着組み合わせ
P 電子部品
T 規格幅
Cpk 工程能力指数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置であって、
前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出手段と、
前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出部と、
前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理部とを備えたことを特徴とする電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置。
【請求項2】
複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法であって、
前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出工程と、
前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出工程と、
前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理工程とを含むことを特徴とする電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法。
【請求項1】
複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置であって、
前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出手段と、
前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出部と、
前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理部とを備えたことを特徴とする電子部品実装装置におけるフィーダランク分け装置。
【請求項2】
複数の吸着ノズルを備えた実装ヘッドによって複数のパーツフィーダが配列された部品供給部から電子部品を真空吸着により取り出して基板に実装する電子部品実装装置において、前記パーツフィーダの位置合わせ精度等級のランク分けを行う電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法であって、
前記吸着ノズルに吸着保持された状態の電子部品の吸着位置ずれ量を検出する吸着位置ずれ検出工程と、
前記吸着位置ずれ量を継続して検出した検出履歴データから、一の吸着ノズルと一のパーツフィーダとの組み合わせを示す単位吸着組み合わせ毎に、当該単位吸着組み合わせにおける位置合わせ精度を示す第1の工程能力指数を算出するとともに、複数の単位吸着組み合わせについて算出された複数の第1の工程能力指数のデータに基づいて、前記パーツフィーダについての個別の位置合わせ精度を示す第2の工程能力指数を算出する工程能力指数算出工程と、
前記算出された第2の工程能力指数のデータに基づいて、複数のパーツフィーダについて位置合わせ精度等級のランク分けを行うランク分け処理工程とを含むことを特徴とする電子部品実装装置におけるフィーダランク分け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−98360(P2013−98360A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239991(P2011−239991)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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