説明

電子部品用セパレータおよびその製造方法

【課題】薄膜である上に、熱収縮防止性、機械的強度およびイオン伝導性がいずれも優れた電子部品用セパレータおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電子部品用セパレータ1は、透気性を有する基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とを有する積層体10からなる。本発明の電子部品用セパレータ1においては、基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とが接着剤13を介して接着されていることが好ましい。基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とが接着剤13を介して接着されている場合には、接着剤13がフィラー粒子14を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタなどの電子部品に備えられるセパレータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタなどの電子部品は、一対の電極とセパレータとを備え、電解液が含浸されたものであり、産業用または民生用の種々の電気・電子機器に使用されている。
【0003】
電気・電子機器の性能向上のためには、電子部品のより一層の高容量化、高機能化が不可欠であり、そのために、セパレータの改良が求められている。例えば、電子部品の高容量化に対応するために、充放電時の自己発熱もしくは異常充電時などの異常発熱に耐えうる耐熱性、機械的強度、寸法安定性を有するセパレータが求められている。また、電子部品の高機能化、特に、急速充放電特性および高出力特性を向上させるために、薄膜化され、かつ、均一性が向上したセパレータが強く要求されている。
これらの要求を満たすことを目的として、例えば、特許文献1には、ポリオレフィンを延伸して作製される透気性が高い微多孔性フィルム(延伸膜)に針やレーザで貫通孔を形成して透気性をより一層高めたものをセパレータとして使用することが提案されている。
【特許文献1】国際公開第01/67536号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のセパレータは透気性が高いため、電解液の保持性およびイオン伝導性が高くなるものの、針やレーザで形成した貫通孔の孔径が大きいため、機械的強度が低かった。そのため、製造時または使用時に破断し、正極と負極とが直接接触して短絡することがあった。特に、リチウムイオン二次電池またはポリマーリチウム二次電池の電極表面には数μmの微小な突起が形成されているため、セパレータを破断させやすく、微小な短絡が起こりやすい。また、セパレータが破断した場合には、イオン移動もしくは電子移動が破断した部分に集中するため、電子部品の性能が低くなることもある。
【0005】
また、特許文献1に記載のセパレータのように、孔径の大きい貫通孔が形成されている場合には、シャットダウン温度以上のメルトダウン温度域において収縮しやすいため、高温になった場合に電極同士が直接接触しやすくなる。
薄膜のまま、熱収縮防止性、機械的強度を確保する方法として、セパレータの空隙率を低下させることが考えられるが、その場合、内部抵抗の上昇を伴い、イオン伝導性が低下するため、高機能化の要求を満たすことができない。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、薄膜である上に、熱収縮防止性、機械的強度およびイオン伝導性がいずれも優れた電子部品用セパレータおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品用セパレータは、透気性を有する基材とポリオレフィン製多孔質膜とを有する積層体からなることを特徴とする。
本発明の電子部品用セパレータにおいては、前記基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種であることが好ましい。
本発明の電子部品用セパレータにおける基材が不織布または微多孔性フィルムであることが好ましい。
本発明の電子部品用セパレータにおいては、前記ポリオレフィンが、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンであることが好ましい。
前記基材と前記ポリオレフィン製多孔質膜とが接着剤を介して接着されていることが好ましい。
前記接着剤は、電子部品を構成する電解液に溶解する成分を含有することが好ましい。
また、前記接着剤は、多孔質構造を形成する樹脂からなることが好ましい。
該多孔質構造を形成する樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアルコールから選ばれた1種であることが好ましい。
前記接着剤が多孔質構造を形成する樹脂からなる場合には、前記接着剤がフィラー粒子を含有することが好ましい。
本発明の電子部品用セパレータは、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタから選ばれる電子部品に備えられることが好ましい。
本発明の電子部品用セパレータの第1の製造方法は、透気性を有する基材およびポリオレフィン製多孔質膜の少なくとも一方の表面上に、接着剤を含有する塗布液を塗布し、該塗布液を介して前記基材と前記ポリオレフィン製多孔質膜とを重ね合わせ、乾燥して接着することを特徴とする。
本発明の電子部品用セパレータの第2の製造方法は、透気性を有する基材およびポリオレフィン製多孔質膜の少なくとも一方の表面上に、固形状の接着剤を配置させ、該接着剤を介して前記基材とポリオレフィン製多孔質膜とを重ね合わせて、接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子部品用セパレータは、薄膜である上に、熱収縮防止性、機械的強度およびイオン伝導性のいずれもが優れる。
本発明の電子部品用セパレータにおける基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種であれば、熱収縮をより小さくでき、また、電解液に用いる有機溶媒やイオン性液体に対する溶解性を低くすることができる。
前記基材が不織布または微多孔性フィルムであれば、イオン伝導性をより高くすることができる。
本発明の電子部品用セパレータにおいて、前記ポリオレフィンが、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンであれば、シャットダウン機能を発揮させることができる。
前記基材とポリオレフィン製多孔質膜とが接着剤を介して接着されていれば、電子部品組み立ての際のハンドリング性が高くなる。
前記接着剤が、電子部品を構成する電解液に溶解する成分を含有すれば、過充電時あるいは過熱時に、電極同士の接触による短絡を防止することができる。
前記接着剤が多孔質構造である場合には、イオン伝導性をより高くすることができる。
前記多孔質構造を形成する樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアルコールから選ばれた1種であれば、電気絶縁性を高くすることができる。
前記接着剤がフィラー粒子を含有する場合には、イオン伝導性をより高くすることができる。
本発明の電子部品用セパレータは、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタまたはレドックスキャパシタ等の電子部品に好適に備えられる。
本発明の電子部品用セパレータの製造方法によれば、薄膜である上に、機械的強度およびイオン伝導性に優れる電子部品用セパレータを高い生産性で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
(電子部品用セパレータ)
本発明の電子部品用セパレータ(以下、セパレータと略す。)の一実施形態例について説明する。
図1(a)および(b)に、本実施形態例のセパレータを示す。このセパレータ1は、基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とが、多孔質構造を形成する樹脂を含む接着剤13を介して接着された積層体10からなるものであり、接着剤13が基材11内部のポリオレフィン製多孔質膜12側に配置されている。また、セパレータ1では、接着剤13中にフィラー粒子14が含まれている。
【0009】
[基材]
セパレータ1を構成する基材11は、空隙が形成されて透気性を有するものである。ここで、透気性とは、JIS P 8117に記載のガーレー式透気度測定装置により測定された透気度が100秒/100ml以下のことである。
基材11としては、不織布、織布、メッシュ、微多孔性フィルムから選ばれる少なくとも1種を用いることができる(図1(a)の例における基材は1枚の不織布であり、図1(b)における基材は1枚の微多孔性フィルムである)。また、基材11は不織布、織布、メッシュ、微多孔性フィルムなどから選ばれた1枚のみからなってもよいが、電子部品に組み立てたときの性能および生産性の点で、2〜4枚重ね合わせた積層構成が好ましい。基材11が不織布、織布、メッシュ、微多孔性フィルムなどから選ばれた1枚のみからなっている場合には、機械的強度が不足し、電極間短絡が発生することがある。4枚より多い積層構成にすると、性能面では内部抵抗やインピーダンスの増大、生産面ではコストアップになる上、薄膜化を実現できなくなる。
【0010】
基材11の材質としては特に制限されないが、熱収縮が小さく、かつ、電解液に用いる有機溶媒やイオン性液体に対して溶解しにくいことから、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートから選ばれた1種であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートがより好ましい。ポリエチレンテレフタレートあるいはポリアリレートを用いた場合には、セパレータ1の熱収縮をより小さくできる上に、過充電時や過熱時での溶融を抑制し、電極同士の接触による短絡をより防止できる。
【0011】
基材11の膜厚は、セパレータ1の用途に応じて適宜決めればよい。例えば、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、又は電気二重層キャパシタは高容量化を図るために電極を厚くすることがあるが、セパレータ1を薄くすることによって電極の厚さ増加分を相殺することができる。その場合、セパレータ1の膜厚は30μm以下が好ましく、20μm以下であることがより好ましい。膜厚が30μmより厚くなると、イオン移動が阻害されてインピーダンスが高くなる傾向にある。
ただし、電気二重層キャパシタ等の電子部品に適用する場合など、電解液を多量に保持する必要がある場合には、できるだけ膜厚が厚くすることが好ましい。
【0012】
本発明において、基材11の空隙の割合(空隙率)は20〜90%であることが好ましく、30〜80%がより好ましい。基材11中の空隙の割合が20%より小さいとイオン伝導性が低下する傾向にあり、90%より大きいと機械的強度が低くなり、電極同士が短絡しやすくなる傾向にある。
【0013】
基材11を構成する材料の中でも、セパレータ1の熱収縮防止性、機械的強度およびイオン伝導性のいずれもがより高くなることから、不織布または微多孔性フィルムが好ましい。
ここで、微多孔性フィルムとは、樹脂フィルム11aに多数の貫通孔11bが形成されたフィルムのことである(図2(a),(b)参照)。
微多孔性フィルムは、リチウムイオン二次電池等に使用する際に、イオンの移動が円滑であり、電池の内部抵抗が低くなることから、表面11cに対して垂直方向に貫通孔11bが形成されていることが好ましい。その場合、貫通孔11bの孔径は、平均孔径として0.1〜100μmが好ましい。貫通孔11bの平均孔径が0.1μm未満であるとイオン伝導性が低下することがあり、100μmを超えると機械的強度が低くなって短絡を起こすことがある。また、本実施形態例のように、接着剤13がフィラー粒子14を含む場合には、貫通孔11bの孔径は、フィラー粒子14の一次平均粒子径に応じて適宜選択することが好ましい。
【0014】
微多孔性フィルムにおける隣接する貫通孔11b,11b間の最短距離は、平均して0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜50μmであることがより好ましい。最短距離の平均が0.01μm未満の場合は、微多孔性フィルムの機械的強度が低くなって、巻回時に破断することがあり、100μmを超える場合には、機械的強度は問題ないものの、貫通孔11bの孔径が小さい場合に、イオン伝導性が低下することがある。
【0015】
本発明において、貫通孔11bの平均孔径および隣接する貫通孔11b,11b間の最短距離の平均は、次のようにして求めた値である。すなわち、まず、微多孔性フィルムの貫通孔11bを電子顕微鏡で観察し、ランダムに貫通孔11bを100個選択する。そして、これらの貫通孔11bの孔径を測定し、その平均値を算出して平均孔径を求める。また、上記と同様に、ランダムに貫通孔11bを100個選択した後、各貫通孔11bに隣接する貫通孔11bとの最短距離を測定し、平均値を算出して隣接する貫通孔11b,11b間の最短距離の平均を求める。
【0016】
微多孔性フィルムは、例えば、延伸した樹脂フィルム11aに、針やレーザなどによって多数の貫通孔11bを形成することによって得られる。
【0017】
[ポリオレフィン製多孔質膜]
ポリオレフィン製多孔質膜12は、ポリオレフィンからなり、内部に一方の表面から他方の表面に通じる連通孔を均一に多数有するものである。ポリオレフィン製多孔質膜12は電解液に溶解しない上に、多孔質であり、連通孔を有しているため、電解液の保持性があり、しかも、電解液中のイオンを円滑に移動させることができる。さらに、過充電による発熱や、電池が過熱した際に、電気化学反応が暴走することを防ぐことができる。
【0018】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンなどが挙げられ、ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられ、プロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンブロック共重合体、ポリプロピレンランダム共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィンがポリエチレンおよび/またはポリプロピレンである場合には、リチウムイオン二次電池などの電子部品において電気化学反応が暴走する温度領域(100〜160℃程度)で、多孔質膜が溶融し、孔が潰れるため、電極間の絶縁性が高まり、電気化学反応を抑制できる。すなわち、シャットダウン機能を発揮する。さらに、電解液との濡れ性やシャットダウン性の点で、ポリエチレンがより好ましく、機械的強度の点で、高密度ポリエチレンが特に好ましい。
ポリオレフィンがポリエチレンおよびポリプロピレンである場合、ポリオレフィン製多孔質膜は、ポリエチレン多孔質膜とポリプロピレン多孔質膜とが積層された積層多孔質膜であることが好ましい。
【0019】
ポリオレフィン製多孔質膜12の空隙率としては40〜80%であることが好ましく、50〜70%であることがより好ましい。空隙率が40%未満であると、イオン伝導性が低くなる傾向にあり、80%を超えると強度が低下し、また、収縮しやすくなる傾向にある。
ここで、空隙率とは、坪量M(g/cm)、厚さT(μm)、密度D(g/cm)より下記式により求めた値である。この空隙率は多孔質の程度を示す。
空隙率(%)=[1−(M/T)/D]×100
【0020】
ポリオレフィン製多孔質膜12の孔径としては、バブルポイント法による平均孔径が0.01〜1μmであることが好ましい。平均孔径が0.01μm未満であると電解液の含浸性が低下し、イオン伝導性が低くなる傾向にある。また、1μmより大きくなると、内部短絡を起こしやすくなる傾向にある。
【0021】
ポリオレフィン製多孔質膜12の厚さとしては電子部品の薄型化の観点からできるだけ薄い方が好ましく、具体的には5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。ポリオレフィン製多孔質膜12の厚さが5μm未満であると、機械的強度が低くなる傾向にあり、また、取り扱い性も低くなる。30μmより大きくすると電子部品の薄型化が困難になる。
【0022】
ポリオレフィン製多孔質膜12は、例えば、ポリオレフィンを溶融押し出しによりフィルム化した後、得られたフィルムを延伸し、フィルム内部に微小な亀裂を多数形成させることによって得られる。また、溶媒に溶出する微粒子等をポリオレフィンにあらかじめ添加しておき、溶融押し出しによりフィルム化した後、溶媒で微粒子を溶出させることによって得られる。
【0023】
[接着剤]
接着剤13である多孔質構造を形成する樹脂としては特に制限されないが、電気絶縁性が高いことから、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアルコールから選ばれる1種が好ましい。これら樹脂は、セパレータ1に求められる耐熱性、寸法安定性、機械的強度に応じて適宜選択される。これらの樹脂の中でも、ポリフッ化ビニリデンは電解液との親和性に優れるため、より好ましい。
【0024】
多孔質構造の孔は、バブルポイント法による平均孔径が0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。孔の平均孔径が0.1μm未満であると、本実施形態例のように、フィラー粒子14を含有する場合に、フィラー粒子14が非常に強固に二次凝集して、イオン伝導性を低下させることがある。一方、15μmを超えると、薄膜化した場合に常温使用時においても機械的強度が低くなって電極同士の短絡を生じる場合がある。
ここで、バブルポイント法による孔径は、西華産業社製のポリメーターを使用して求めた値である。
【0025】
接着剤13に含まれるフィラー粒子14の具体例としては、天然シリカ、合成シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラス等の電気絶縁性無機粒子、ポリテトラフルオロエチレン、架橋アクリル、ベンゾグアナミン、架橋ポリウレタン、架橋スチレン、メラミン等の有機粒子が挙げられる。これらの中でも、基材11の目詰まりを防止でき、電子部品の性能低下を抑制できることから、電子部品を構成する電解液に溶解あるいはゲル化しにくい材質であることが好ましい。また、フィラー粒子14同士の接触による内部短絡を防ぐために、電気絶縁性であることが好ましい。具体的には、耐薬品性、耐熱性および分散性に優れた電気絶縁性無機粒子またはポリテトラフルオロエチレン粒子が好ましい。
フィラー粒子14の形状としては特に制限はなく、無定型フィラー、板状フィラー、針状フィラー、球形フィラーのいずれであってもよいが、多孔質構造の内部に均一に分散できる点では、球形フィラーが好ましい。
【0026】
フィラー粒子14の含有量は、セパレータ1の面積を基準として50g/m以下であることが好ましく、30g/m以下であることがより好ましい。フィラー粒子14の含有量が50g/mよりも多くなると、セパレータ1が厚くなりすぎたり、イオン移動を阻害してインピーダンスが高くなったりする傾向にある。
【0027】
接着剤13は、上記のように、多孔質構造を形成する樹脂が好ましいが、基材11およびポリオレフィン製多孔質膜12の孔を塞がず、電気化学的に安定なものであれば、多孔質構造を形成しない接着性樹脂であっても構わない。ただし、接着剤13が、多孔質構造を形成しない樹脂である場合には、基材11やポリオレフィン製多孔質膜12の孔を塞がない程度に、接着剤13を含む塗布液を薄く塗布することが好ましい。薄く塗布するためには、接着剤13の濃度が低い塗布液を用いればよい。
【0028】
また、接着剤13は、接着性を有するものであれば特に制限されないが、電子部品を構成する電解液に溶解する成分を含有することが好ましい。電子部品のうち特にリチウムイオン電池では、使用温度範囲以上になると、セパレータが収縮して、電極同士が直接触れて短絡するおそれがある。しかし、接着剤13が電解液に溶解する成分を含有すれば、接着剤が電解液に溶解し、基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とが剥離しやすくなる。その結果、ポリオレフィン製多孔質膜12は収縮するものの、ポリオレフィン製多孔質膜12の収縮に伴う基材11の収縮を防ぐことができるため、電極同士の短絡を防止できる。電解液に溶解する成分としては、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0029】
[セパレータの厚さ]
セパレータ1の厚さは、電子部品が電気二重層キャパシタ以外である場合には、できるだけ薄いことが好ましい。セパレータ1が薄ければ、電極を厚くして電子部品の容量を増加させることができるにもかかわらず、電子部品全体の厚さを薄くできる。具体的には、セパレータ1の厚さは40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。セパレータ1の厚さが40μmより厚いと、イオン移動が阻害されてインピーダンスが増大しやすくなる。
電子部品が電気二重層キャパシタである場合には、電解液を多量に保持するために、セパレータ1が厚いことが好ましい。
【0030】
(セパレータの製造方法)
[第1の製造方法]
次に、セパレータ1の第1の製造方法の一実施形態例について説明する。セパレータの第1の製造方法は、いわゆるウェットラミネーション法であり、まず、接着剤を、該接着剤の良溶媒、必要に応じて貧溶媒を含む溶媒に添加して、接着剤を含有する塗布液を調製する。ここで、貧溶媒を添加した場合には、接着剤が多孔質構造を形成しやすくなる。また、貧溶媒を添加しない場合には、非多孔質構造が形成されるため、接着剤濃度を下げて、基材の空隙およびポリオレフィン製多孔質膜の孔の閉塞を防止することが好ましい。
また、前記塗布液は、カールフィッシャー法による測定で水分量が0.7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。塗布液中の水分量が0.7質量%を超えると、ゲル化が急速に進み塗布液の保存期間が極端に短くなることがある。また、形成される多孔質構造が著しく不均一なものになり、電子部品の性能を低下させることがある。したがって、塗布液の溶媒として、吸湿性の高いものを用いる場合には、水分の混入防止に特に注意を払うことが好ましい。
【0031】
次いで、ポリオレフィン製多孔質膜の片面上に前記塗布液を塗布する。塗布液の塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等による塗布またはキャスティング法等が挙げられる。
そして、塗布した塗布液の上に、基材を重ね合わせた後、乾燥し、溶媒を除去して、基材とポリオレフィン製多孔質膜とを接着してセパレータを得る。
このようなセパレータの第1の製造方法によれば、セパレータを高い生産性で得ることができる。
【0032】
この第1の製造方法において、ポリオレフィン製多孔質膜は支持体上に載置されていても構わない。ポリオレフィン製多孔質膜が支持体上に載置されている場合には、乾燥後に、支持体を剥離する。
支持体としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ガラス板等が挙げられる。また、支持体には離型処理、易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。上記支持体の中でも、柔軟性を有する樹脂フィルムが好ましい。支持体が樹脂フィルムであれば、セパレータの表面を保護でき、また、樹脂フィルムにセパレータが積層されたままの状態で巻き取って保管・搬送することもできる。
また、基材の表面上に塗布液を塗布し、基材とポリオレフィン製多孔質膜とを接着しても構わない。
【0033】
第1の製造方法の具体例として、接着剤が、多孔質構造を形成する樹脂であるポリフッ化ビニリデン、基材が不織布である例について説明する。
まず、ポリフッ化ビニリデンを、これを溶解可能な良溶媒に分散させ、溶解させて塗布液を調製する。良溶媒の例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。分散、溶解方法としては、例えば、市販の攪拌機を使用する方法が挙げられる。
なお、ポリフッ化ビニリデンは、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシドに室温で容易に溶解するので、特に加熱する必要はない。
その後、ポリフッ化ビニリデンが溶解しない貧溶媒を塗布液に添加してもよい。貧溶媒としては、良溶媒より沸点の高いものを選択することが好ましい。貧溶媒の例としては、フタル酸ジブチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
塗布液中のポリフッ化ビニリデンの濃度としては、得られるセパレータの要求特性に応じて適宜変更すればよい。
【0034】
次いで、支持体上にポリオレフィン製多孔質膜を載せ、そのポリオレフィン製多孔質膜の上に前記塗布液を塗布する。次いで、塗布液を塗布したポリオレフィン製多孔質膜の表面に不織布を貼り合わせて、ポリオレフィン製多孔質膜上の塗布液の一部を不織布の内部に移行させる。そして、塗布液中の溶媒を乾燥により揮発させる。このとき、塗布液中の溶媒が樹脂中を通り、溶媒が通った部分が孔となるため、多孔質構造を形成できる。その後、支持体を剥離してセパレータを得る。
【0035】
[第2の製造方法]
次に、セパレータ1の第2の製造方法の一実施形態例について説明する。セパレータ1の第2の製造方法では、まず、固形状の接着剤をポリオレフィン製多孔質膜の片面上の全部または一部に配置する。ここで、固形状の接着剤としては、ポリオレフィン製多孔質膜を構成するポリオレフィンの融点より低いものが好ましい。
そして、固形状の接着剤を介して、基材を重ね合わせた後、基材を構成する樹脂の融点より高く、かつ、ポリオレフィン製多孔質膜の融点より低い温度で、基材とポリオレフィン製多孔質膜とを挟持し、接着してセパレータを得る。
このようなセパレータの第2の製造方法によっても、セパレータを高い生産性で得ることができる。
第2の製造方法では、ポリオレフィン製多孔質膜上に固形状の接着剤を置かずに、基材中に固形状の接着剤をあらかじめ含有させておいても構わない。また、基材上に固形状の接着剤を配置させてもよい。
【0036】
以上説明した実施形態例のセパレータ1では、ポリオレフィン製多孔質膜12に基材11が接着剤13を介して積層されており、基材11の空隙の内部およびポリオレフィン製多孔質膜12の孔の内部にまで接着剤が充填されている。そのため、ポリオレフィン製多孔質膜12が補強されており、熱収縮防止性に優れている。また、同様の理由から、機械的強度に優れており、セパレータ1の破断が防止され、電極同士の直接接触による短絡が防止されている。
また、ポリオレフィン製多孔質膜12に積層される基材11は透気性を有する上に、接着剤13が多孔質構造を形成する樹脂であるため、セパレータ1に緻密層が形成されることが防止されている。したがって、電解液の保持性が高く、電気化学特性、イオン伝導性に優れる。
また、セパレータ1では、基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とが接着剤13を介して接着されて一体化されているため、電子部品を製造する際に、巻きずれを防止でき、ハンドリングに優れる。さらに、基材11とポリオレフィン製多孔質膜12間の界面の電気抵抗を低くすることができ、セパレータ1の内部抵抗を低くすることができる。
【0037】
さらに、上記セパレータ1では、接着剤13がフィラー粒子14を含有するため、多孔質構造ではない緻密層(スキン層)の形成を防ぐことができ、イオン伝導性、電子伝導性をより高めることができる。その理由は定かではないが、セパレータ1をウェットラミネーション法により製造する場合には、溶媒が、塗布液に均一分散しているフィラー粒子14と接着剤13を構成する樹脂との界面に偏在して、フィラー粒子14の周囲にて優先的に多孔化が進行するためと考えられる。また、フィラー粒子14は、塗布した塗布液の表面および内部に均一に分散しているため、相分離状態が塗布厚方向にて均一になりやすく、緻密層の形成を防止できると推測される。
【0038】
上述した実施形態例のセパレータ1は、本発明の効果がとりわけ発揮されることから、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタから選ばれる電子部品に備えられることが好ましい。
【0039】
ここで、リチウムイオン二次電池およびポリマーリチウム二次電池は、正極と、負極と、これらの間に設けられたセパレータとを有し、これらが巻回もしくは積層された電極体を具備するものであって、その電極体に駆動用電解液が含浸され、アルミニウムケースにより封止された構造のものである。
正極としては、例えば、活物質とリチウム含有酸化物とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドン中で混合して得た混合液を、アルミニウム製集電体上に塗布して形成したものが挙げられる。負極としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出し得る炭素質材料とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドン中で混合して得た混合液を、銅製集電体上に塗布して形成したものが挙げられる。
【0040】
アルミニウム電解コンデンサは、正極箔と負極箔とがセパレータを介して巻回もしくは積層された電極体を具備するものであって、その電極体に駆動用電解液が含浸され、アルミニウムケースと封口体により封止されたものである。正極箔としては、例えば、エッチングした後、化成処理を施して誘電体皮膜を形成したアルミニウム箔などが挙げられる。
負極箔としては、例えば、エッチングされたアルミニウム箔などが挙げられる。また、正極箔および負極箔からは、正極リードおよび負極リードが封口体を貫通して外部に引き出されている。
電気二重層キャパシタは、正極と負極とがセパレータを介して巻回もしくは積層された電極体を具備するものであって、その電極体に駆動用電解液が含浸され、アルミニウムケースと封止体により封止されたものである。正極および負極としては、アルミニウムシートからなる集電体の両面に活性炭と導電剤およびバインダーを混錬した混合物が貼り付けられたものが挙げられる。また、正極箔および負極箔からは、正極リードおよび負極リードが封口体を貫通して外部に引き出しされている。
【0041】
上記電子部品は、イオン伝導性、機械的強度が共に優れた上記セパレータが配置されたものであるから、性能、信頼性が共に優れる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態例に限定されない。例えば、上述した実施形態例では、接着剤13にフィラー粒子14が含まれていたが、図3に示すように、接着剤13にフィラー粒子が含まれていなくてもよい。ただし、イオン伝導性をより高くできることから、フィラー粒子14を含むことが好ましい。
また、上述した実施形態例では、接着剤13は基材11の内部のポリオレフィン製多孔質膜12側に配置されていたが、基材11の内部全体およびポリオレフィン製多孔質膜12の孔全体に接着剤が含まれていてもよい。その場合には、セパレータ1表面の平滑性が高くなる。セパレータ1表面の平滑性が高くなれば、セパレータ1に接触する電極間の電気化学反応を特定箇所に集中させることなく、全面にわたって均一化することができる。
【0043】
また、本発明では、接着剤を用いなくてもよい。例えば、基材11の一部を熱溶融させて、基材11とポリオレフィン製多孔質膜12とを接着してもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明のセパレータおよびその製造方法を実施例によって説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
融点が170℃のポリフッ化ビニリデンを、N,N−ジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解して、固形分濃度3質量%の塗布液を調製した。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる支持体の上に、空隙率が55%、厚さが10μmの高密度ポリエチレン製延伸多孔質膜(ポリオレフィン製多孔質膜)を載置した。次いで、そのポリオレフィン製多孔質膜上に、前記塗布液をキャスティング法により塗布した。次いで、その塗布面上に空隙率が75%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布を重ね、塗布液中の溶媒を熱で蒸発させて、高密度ポリエチレン製延伸多孔質膜とポリエチレンテレフタレート製不織布とを接着して積層体を得る共に、接着剤を多孔質化した。その後、この積層体から支持体を剥離、除去して、厚さ25μmのセパレータを得た。
【0046】
(実施例2)
ポリオレフィン製多孔質膜として、空隙率が55%、厚さが10μmの高密度ポリエチレン製延伸多孔質膜の代わりに、空隙率が50%、厚さが12μmの高密度ポリエチレン製延伸多孔質膜を使用し、基材として、空隙率が75%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布の代わりに、空隙率が70%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布を使用したこと以外は実施例1と同様にして厚さ26μmのセパレータを得た。
【0047】
(実施例3)
融点が170℃のポリフッ化ビニリデンを、N,N−ジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加して固形分濃度3質量%の塗布液を調製した。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる支持体の上に、空隙率が60%、厚さが15μmの高密度ポリエチレン製延伸多孔質膜およびホモポリプロピレン製延伸多孔質膜が積層された積層多孔質膜を載置した。そして、その積層多孔質膜上に、上記塗布液をキャスティング法により塗布した。その上に空隙率が60%、厚さが15μmのポリブチレンテレフタレート製不織布を重ね、塗布液中の溶媒を熱で蒸発させて、積層多孔質膜とポリブチレンテレフタレート製不織布とを接着して積層体を得る共に、接着剤を多孔質化した。その後、この積層体から支持体を剥離除去して、厚さ33μmのセパレータを得た。
【0048】
(実施例4)
ポリオレフィン製多孔質膜として、積層多孔質膜の代わりに、空隙率が65%、厚さが13μmのポリエチレン製多孔質膜を使用し、基材として、空隙率が60%、厚さが15μmのポリブチレンテレフタレート製不織布の代わりに、空隙率が40%、厚さが6μmのポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムを使用したこと以外は実施例3と同様にして、厚さ22μmのセパレータを得た。
【0049】
(実施例5)
ポリオレフィン製多孔質膜として、積層多孔質膜の代わりに、空隙率が50%、厚さが10μmのポリエチレン製多孔質膜を使用し、基材として、空隙率が60%、厚さが15μmのポリブチレンテレフタレート製不織布の代わりに、空隙率が50%、厚さが12μmのポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムを使用したこと以外は実施例3と同様にして、厚さ24μmのセパレータを得た。
【0050】
(実施例6)
融点が170℃のポリフッ化ビニリデンを、N,N−ジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加した後、一次平均粒子径が0.5μmのポリテトラフルオロエチレン粒子を添加して、固形分濃度3質量%(固形分中のフィラー粒子は50質量%)の塗布液を調製した。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる支持体の上に、空隙率が55%、厚さが12μmのポリエチレン製多孔質膜を載置し、そのポリエチレン製多孔質膜上に、上記塗布液をキャスティング法により塗布した。その上に空隙率が75%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムを重ね、塗布液中の溶媒を熱で蒸発させて、ポリエチレン製多孔質膜とポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムとを接着して積層体を得る共に、接着剤を多孔質化した。その後、この積層体から支持体を剥離除去して、厚さ27μmのセパレータを得た。
【0051】
(実施例7)
空隙率が75%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムの代わりに、空隙率70%、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート製不織布を用いた以外は、実施例6と同様にして、厚さ27μmのセパレータを得た。
【0052】
(実施例8)
空隙率が75%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布(融点220℃)に、粒子径が0.2μmであり融点が80℃のポリエチレン粒子を含むディスパージョン(媒体は水)を噴霧し、50℃で静置乾燥した。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる支持体の上に、空隙率が55%、厚さが12μmのポリエチレン製多孔質膜(融点120℃)を載置した。その後、ポリエチレン製多孔質膜に、上記ポリエチレンテレフタレート製不織布を、ディスパージョンした面が接するように重ねた。そして、90℃に加温したホットプレスにて加圧して、接着した。接着後、支持体を剥離、除去して、厚さ26μmのセパレータを得た。
【0053】
(実施例9)
ポリフッ化ビニリデンを含む塗布液に代えて、濃度2質量%のポリビニルアルコールの水溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして、厚さ24μmのセパレータを得た。
【0054】
(実施例10)
空隙率が50%、厚さが12μmのポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムの代わりに、空隙率が65%、厚さが17μmのポリフェニレンサルファイド製不織布を用いた以外は、実施例5と同様にして、厚さ30μmのセパレータを得た。
【0055】
(実施例11)
実質上融点を持たないポリイミドが溶解した、N,N−ジメチルアセトアミド(良溶媒)溶液に、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加して固形分濃度3質量%の塗布液を調製した。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる支持体の上に、空隙率が55%、厚さが10μmのポリエチレン製多孔質膜を載置し、そのポリエチレン製多孔質膜上に、上記塗布液をキャスティング法により塗布した。そして、その上に、空隙率が65%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布を重ね、塗布液中の溶媒を熱で蒸発させて、ポリエチレン製多孔質膜とポリエチレンテレフタレート製不織布とを接着して積層体を得る共に、接着剤を多孔質化した。その後、この積層体から支持体を剥離除去して、厚さ25μmのセパレータを得た。
【0056】
(実施例12)
透気性を有する基材として、空隙率が75%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布の代わりに、空隙率が65%、厚さが13μmのポリアリレート製不織布を使用したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ25μmのセパレータを得た。
【0057】
(比較例1)
リチウムイオン二次電池に広く使用されている厚さが20μmのポリエチレン製延伸多孔質フィルムをセパレータとして用いた。
(比較例2)
電気二重層キャパシタに広く使用されている厚さが30μmのセルロースパルプからなる不織布セパレータをセパレータとして用いた。
(比較例3)
空隙率が60%、厚さが13μmのポリエチレンテレフタレート製不織布をセパレータとして用いた。
(比較例4)
空隙率が40%、厚さが8μmのポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムをセパレータとして用いた。
【0058】
上記実施例1〜12および比較例1〜4で得られたセパレータについて下記の特性を評価した。
<耐熱寸法安定性(熱収縮防止性)および剥離性>
実施例および比較例のセパレータを裁断して5×5cmの正方形の試験片を得た。次いで、その試験片をプロピレンカーボネートの液に浸漬した後に、縦10cm×横10cm×厚さ5mmの2枚のガラス板の間に挟み、それらを水平にしてアルミニウム製のバットに静置した。そして、150℃、200℃および250℃のオーブン中に各々1時間放置して熱による面積を測定した。面積維持率=(試験後の面積/試験前の面積:25cm)×100(%)を求め、この面積維持率を耐熱寸法安定性の指標とした。なお、面積維持率が大きいほど耐熱寸法安定性に優れる。
また、ポリオレフィン製多孔質膜と基材との剥離性についても同時に確認したところ、実施例1〜12のセパレータは加熱後にポリオレフィン製多孔質膜と基材が剥離した。剥離した場合は、上記の面積維持率は、基材またはポリオレフィン製多孔質膜の面積が大きい方を採用して計算した。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
基材とポリオレフィン製多孔質膜とが積層された電子部品用セパレータは、熱収縮防止性に優れていた。また、これらのセパレータは、加熱後に、ポリオレフィン製多孔質膜のみが収縮し、基材とポリオレフィン製多孔質膜とが剥離するため、高温域においても内部短絡を起こさないことがわかった。したがって、実施例1〜12のセパレータでは、シャットダウン温度領域以上で電極が短絡して起こるメルトダウンを回避できることがわかった。
これに対し、ポリエチレン製延伸多孔質フィルムのみの比較例1のセパレータ、セルロースパルプからなる不織布のみの比較例2のセパレータは、熱収縮防止性が低く、また、剥離性を有していなかった。特に、比較例1のセパレータは、200℃で完全に溶解しており、形状を全く維持していなかった。
ポリエチレンテレフタレート製不織布のみの比較例3のセパレータ、ポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムのみの比較例4のセパレータは、剥離性を有していなかった。
【0061】
<内部短絡防止性(機械的強度)>
2枚のステンレス板(3×3cm)に実施例および比較例のセパレータ(5×5cm)を挟み、ステンレス電極間に80Vの電位差をつけた状態で、両電極が密着するように加圧した。そして、短絡したとき(電気抵抗値がほぼ0Ωになったとき)の圧力を測定し、これを短絡圧力とした。試験は5回行い、平均値を求めた。その結果を表2に示す。なお、短絡圧力が高いほど、内部短絡防止性に優れる(短絡しにくい)ことを示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2に示すように、基材とポリオレフィン製多孔質膜とが積層された電子部品用セパレータは、内部短絡防止性に優れていた上に、そのバラツキが小さかった。
これに対し、ポリエチレン製延伸多孔質フィルムのみの比較例1のセパレータでは、高温加熱時において熱収縮し、ステンレス電極同士が直接触れるために、加圧しなくても短絡した。
セルロースパルプからなる不織布のみの比較例2のセパレータは、内部短絡防止性が低かった。また、ポリエチレンテレフタレート製不織布のみの比較例3のセパレータ、ポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムのみの比較例4のセパレータは、内部短絡防止性が低かった。
【0064】
<イオン伝導性>
交流インピーダンス法によりセパレータのイオン伝導度を測定した。具体的には、実施例1〜12および比較例1〜4のセパレータを、プロピレンカーボネートに1mol/lの濃度で(CBFが溶解した電解液中に真空含浸した後、簡易セル内に電極とセパレータを組み込んで、20℃で測定を行った。この際、電極には宝泉株式会社製の電気二重層キャパシタ用電極を使用した。その結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
表3に示すように、基材とポリオレフィン製多孔質膜とが積層された実施例1〜12のセパレータはイオン伝導性に優れていた。
これに対し、ポリエチレン製延伸多孔質フィルムのみの比較例1のセパレータおよびセルロースパルプからなる不織布のみの比較例2のセパレータは、イオン伝導性が低かった。また、ポリエチレンテレフタレート製不織布のみの比較例3のセパレータ、ポリエチレンテレフタレート製微多孔性フィルムのみの比較例4のセパレータは内部短絡が起こり、測定不可であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の電子部品用セパレータの一実施形態例を示す図であって、(a)は基材が不織布である電子部品用セパレータを示す断面図、(b)は基材が微多孔性フィルムである電子部品用セパレータを示す断面図である。
【図2】微多孔性フィルムを説明する図であって、(a)は上面図、(b)はA−A’断面図である。
【図3】本発明の電子部品用セパレータの他の実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 セパレータ(電子部品用セパレータ) 10 積層体 11 基材 11a 樹脂フィルム 11b 貫通孔 12 ポリオレフィン製多孔質膜 13 接着剤 14 フィラー粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気性を有する基材とポリオレフィン製多孔質膜とを有する積層体からなることを特徴とする電子部品用セパレータ。
【請求項2】
前記基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドから選ばれた1種であることを特徴とする請求項1記載の電子部品用セパレータ。
【請求項3】
前記基材が不織布または微多孔性フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項5】
前記基材と前記ポリオレフィン製多孔質膜とが接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項6】
前記接着剤が、電子部品を構成する電解液に溶解する成分を含有することを特徴とする請求項5に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項7】
前記接着剤が、多孔質構造を形成する樹脂を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項8】
前記多孔質構造を形成する樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアルコールから選ばれた1種であることを特徴とする請求項7に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項9】
前記接着剤がフィラー粒子を含有することを特徴とする請求項7または8に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項10】
リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタから選ばれる電子部品に備えられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子部品用セパレータ。
【請求項11】
透気性を有する基材およびポリオレフィン製多孔質膜の少なくとも一方の表面上に、接着剤を含有する塗布液を塗布し、該塗布液を介して前記基材と前記ポリオレフィン製多孔質膜とを重ね合わせ、乾燥して接着することを特徴とする電子部品用セパレータの製造方法。
【請求項12】
透気性を有する基材およびポリオレフィン製多孔質膜の少なくとも一方の表面上に、固形状の接着剤を配置させ、該接着剤を介して前記基材と前記ポリオレフィン製多孔質膜とを重ね合わせて、接着することを特徴とする電子部品用セパレータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−48738(P2007−48738A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153167(P2006−153167)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】