説明

電子部品

【課題】特許文献1、2の電子部品の外部電極には熱硬化型の導電性樹脂が用いられているため、外部電極内で金属粉が分散していて膜比抵抗値が大きく、所望の電気的特性を取得できない。また、導電性樹脂を塗布する厚膜技術では外部電極の膜厚を薄膜化することが難しい。特許文献3に記載の外部電極には350℃以下の熱処理で熱分解性有機金属体から金属成分を析出するが、この場合も膜比抵抗値が大きくなる。
【解決手段】本発明の電子部品10は、絶縁樹脂層12と内部電極層13とを含む電子部品本体10Aの内部電極層13に電気的に接続されて電子部品本体10A両端面に形成された外部電極16、17を備え、外部電極17は下地電極層17Aを有し、下地電極層17Aは金属粉末を含む樹脂材料からなり、この金属粉末は、400℃以下の温度で焼結する第1の金属粉末M1と、その温度では焼結しない第2の金属粉末M2とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電極と内部電極との接続信頼性を高めることができる電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には外部電極を改良した電子部品が提案されている。この電子部品は、絶縁基板上に、絶縁性樹脂層と導体パターンとを積層して形成された電子部品本体と、電子部品本体の側面の少なくとも一部を覆うように形成された外部電極とを備え、外部電極は、導体パターンに接続された下地電極と、下地電極を覆う表面電極とを有している。下地電極は、Ni粉等の金属粉が混入された導電性の樹脂(導電性樹脂)によって形成され、表面電極は、無電解Niめっき膜と無電解Niめっき膜上に形成された貴金属膜とから形成されている。また、特許文献2にも特許文献1と同様の外部電極を備えた電子部品が提案されている。
【0003】
また、特許文献3には外部電極を改良した積層セラミック電子部品が提案されている。この積層セラミック電子部品は、セラミック層と内部電極を交互に複数層積層した積層体と、積層体の端部に内部電極と電気的に接続するように形成した外部電極とを有し、外部電極は、熱分解性有機金属体を含む導電性外部電極ペーストを積層体の端部に塗布し、加熱硬化時の温度(350℃以下)で熱分解性有機金属体を熱分解させ、その金属成分を内部電極端部表面と外部電極内に析出させたものである。導電性外部電極ペーストは、熱分解した金属成分が内部電極端部表面と外部電極内で析出し、外部電極と内部電極との接続信頼性を高めている。
【0004】
特許文献4には電子部品としてのコモンモードチョークコイルが提案されている。このコモンモードチョークコイルは、非磁性体層からなる絶縁体層と導体パターンが交互に積層された積層体と、積層体の上下に配置されて積層体を挟む第1、第2の磁性体基板と、第1、第2の磁性体基板と積層体等からなる積層構造体の端面に設けられて導体パターンの引き出し電極に接続された外部電極と、を備えている。外部電極は、積層構造体の端面に蒸着やスパッタリングにより形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平09−270342号
【特許文献2】特開2001−006936号
【特許文献3】特開2000−182883号
【特許文献4】特許第3601619号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の電子部品の外部電極には熱硬化型の導電性樹脂が用いられるため、外部電極では樹脂中に金属粉が分散していて膜比抵抗値が大きくなって、所望の電気的特性を取得することができない。また、導電性樹脂を塗布する厚膜技術では外部電極の膜厚を薄膜化することが難しく、電子部品の小型化が制約される。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載されているように積層セラミックコンデンサ等の高温焼結タイプの電子部品の場合には、通常、導電性材料を焼き付けて外部電極を形成するため、外部電極を薄くすることができる。しかし、積層体を構成する絶縁層の伸縮が大きい場合には、外部電極が焼結あるいは溶融して一体化していると絶縁層の熱膨張、熱収縮に柔軟に追従できず、接続信頼性が低下する。また、絶縁層が絶縁性樹脂層によって形成されている場合には、耐熱性の問題から高温焼結タイプの導電性材料を使用することができない。耐熱性、比抵抗値及び電極膜厚等の問題を解決する導電性材料として、低温焼結タイプの導電性樹脂材料がある。しかし、低温焼結タイプの導電性樹脂材料は、例えばナノサイズにまで微粉化されたAg等の金属微粉末を含み、400℃以下の低温で金属微粉末が焼結して薄膜化するが、一般的に金属微粉末の焼結をコントロールすることが非常に難しく、殆どの場合焼結が進み過ぎて、高温焼結タイプのものと同様に絶縁性樹脂層に対する追従性に問題があり、外部電極としての実用化が難しい。
【0008】
また、特許文献3に記載の積層セラミック電子部品の外部電極には、導電性外部電極ペーストの熱硬化性樹脂が例えば350℃以下の低温で熱硬化する時に、熱分解性有機金属体が熱分解して金属成分を析出し、外部電極と内部電極との接続信頼性を高めているが、この場合にも金属成分が析出しているに過ぎず、金属成分が熱硬化性樹脂中で微粉末として分散しているため、特許文献1、2の電子部品の場合と同様に比抵抗値が高くなる。
【0009】
特許文献4に記載のコモンモードチョークコイルの外部電極の場合には、絶縁性樹脂層の熱膨張係数が第1、第2の磁性体基板、導体パターン及び外部電極に比べて大きいため、例えば高温と低温を交互に繰り返す温度サイクルを付与する信頼性試験において、温度サイクルによる絶縁樹脂層の伸縮によって外部電極を大きく変位させて、外部電極と導体パターンの引き出し電極との接続信頼性を低下させる。特に、引き出し電極の外部電極との接続面積は積層体での絶縁樹脂層の面積と比べて格段に小さいため、絶縁樹脂層の伸縮によって接続信頼性が損なわれる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、積層体を構成する絶縁層の熱膨張、熱収縮に柔軟に追従し、外部電極と内部電極との接続信頼性を高めることができる電子部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の電子部品は、絶縁基板と、この絶縁基板上に絶縁層と電極層を積層して形成された積層体と、少なくとも上記積層体の端面から露出する上記電極層の露出部分に接続され且つ上記絶縁基板及び上記積層体の端面を被覆する外部電極と、を備えた電子部品において、上記外部電極は、少なくとも下地層を有し、上記下地層は、金属粉末を含む導電性樹脂材料からなり、上記金属粉末は、400℃以下の温度で焼結する第1の金属粉末と、400℃以下の温度では焼結しない第2の金属粉末とからなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の電子部品は、請求項1に記載の発明において、上記積層体は、その上面に設けられた絶縁基板とその下面の絶縁基板との間に介在し、上記絶縁層は、絶縁性樹脂材料からなり、上記電極層は、コイル電極と、このコイル電極から上記積層体の端面に引き出された引き出し電極と、を有していることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の電子部品は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記第1の金属粉末は、粒径が3〜20nmであり、上記第2の金属粉末は、粒径が0.1〜2μmであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の電子部品は、請求項2または請求項3に記載の発明において、上記絶縁樹脂層及び上記下地層は、熱線膨張係数が60ppm/℃以下で、弾性率が20GPa以下である
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、積層体を構成する絶縁層の熱膨張、熱収縮に追従し、外部電極と内部電極との接続信頼性を高めることができる電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図3に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。
【0017】
本実施形態の電子部品10は、例えば図1に示すように、第1の絶縁体基板11と、第1の絶縁体基板11上に絶縁層12と電極層(以下、「内部電極層」と称する。)13を交互に積層して形成された積層体と、積層体上に接着剤層14を介して接合された第2の絶縁体基板15と、積層体の両端面から露出する内部電極層13の露出部分(引き出し電極)に接続され且つ第1の絶縁体基板11、積層体、接着剤層13及び第2の絶縁体基板15からなる電子部品本体10Aに両端面を二列に渡って被覆する二対の第1、第2の外部電極16、17と、を備え、複数の内部電極層13がスパイラル状に形成されたコイル電極を有するコモンモードチョークコイルとして構成されている。電子部品10は、図2に示すように矩形状を呈し、通常、マザー基板に同時に複数個形成することができる。
【0018】
第1、第2の絶縁体基板11、15の材質は、特に制限されないが、電子部品10の用途に応じて磁性体材料、誘電体材料等の絶縁体材料を使用することができる。本実施形態では、電子部品10がコモンモードチョークコイルとして構成されているため、絶縁体基板としては、例えば高周波特性に優れた磁性体基板が好ましい。従って、以下では絶縁体基板を磁性体基板として説明する。本実施形態では第1、第2の磁性体基板11、15には絶縁層12が接触して形成されるため、第1、第2の磁性体基板11、15の絶縁層12との接触面が表面粗さRaで0.5μm以下に研磨されていることが好ましい。
【0019】
絶縁層12は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等の熱硬化性樹脂等の絶縁性樹脂材料によって形成されている。また、絶縁性樹脂材料は、感光性が付与された感光性樹脂材料を単独であるいは上記各材料と組み合わせて用いることもできる。以下では、絶縁層を絶縁樹脂層として説明する。感光性樹脂材料を含む絶縁樹脂層12は、例えばフォトリソグラフィ法を用いて絶縁樹脂層12にビアホールを形成する。その場合には、絶縁樹脂層12をフォトマスクでマスキングした後、絶縁樹脂層12を露光、現像してビアホールを形成する。複数の絶縁樹脂層12は、下層から上層に向けて絶縁樹脂層121〜126として形成されている。絶縁樹脂層122、125にはそれぞれビアホール122A、125Aが形成され、これらのビアホールにはビアホール導体が形成されている。その他の絶縁樹脂層にはビアホールが形成されていない。また、接着剤層14は、例えば熱硬化性のポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
また、複数の内部電極層13及びビアホール導体の材料としては、導電性に優れた金属であれば特に制限されないが、このような金属としては、例えばAg、Pd、Cu、Al等の金属、またはこれらの合金を用いることができる。複数の内部電極層13は、スパッタリング法を用いて成膜され、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて所定のパターンを有する第1、第2のコイル電極131、132として形成されている。第1、第2のコイル電極131、132は、図1に示すようにそれぞれの引き出し方向が異なる引き出し電極を有する以外は実質的に同一パターンで同一の大きさに形成され、絶縁樹脂層123を介して上下に重なるように形成され、1次コイル及び2次コイルとして機能する。
【0021】
第1、第2のコイル電極131、132は、実質的に同一パターンを有するため、ここでは主として第1のコイル電極131について説明する。第1のコイル電極131は、図1に示すように、互いに絶縁樹脂層122を介して上下に配置されたスパイラル状の第1、第2電極パターン131A、131Bと、第1、第2電極パターン131A、131Bの両端それぞれから一対の外部電極16、17まで引き出された一対の引き出し電極131A、131A及び131B、131Bと、を有している。一方(図1の手前)の引き出し電極131A、131Bは、手前の外部電極16にそれぞれ並列接続され、他方(図1の奥)の引き出し電極131A、131Bは奥の外部電極17にそれぞれ電気的に並列接続されている。このように第1のコイル電極131は、上下二層の第1、第2電極パターン131A、131Bを並列接続して構成されているため、断面積が略倍増して直流抵抗が低くなっている。
【0022】
また、図1に示すように第1電極パターン131Aの奥の外部電極17側の引き出し電極131Aは、その中心から第1電極パターン131Aの一部を横断する部分が切断されているが、この部分はビアホール導体で接続された第2電極パターン131Bの引き出し電極131Bが肩代わりしている。第2電極パターン131Bは、奥の外部電極17側で切断されているが、この部分はビアホール導体で接続された第1電極パターン131Aの該当部分が肩代わりしている。
【0023】
第2のコイル電極132は、第1、第2電極パターン132A、132Bと、第1のコイル電極131の引き出し電極と所定の間隔を空けて隣接する位置に引き出された引出電極132A、132A及び132B、132Bを有し、他の一対の外部電極16、17に電気的に並列接続されている。
【0024】
而して、本実施形態の電子部品10は、外部電極16、17に特徴がある。そこで、図3の(a)、(b)に基づいて本実施形態における外部電極16、17について説明する。外部電極16、17は同一であるため、外部電極17についてのみ説明する。図3の(a)は第2のコイル電極132の上下の引き出し電極132A、132Bと外部電極17との接続構造を示す部分断面図であり、同図の(b)は(a)の○で囲んだ部分を拡大して示す外部電極17の下地電極層を説明するための概念図である。
【0025】
外部電極17は、図3の(a)に示すように、下地電極層17Aと、中間電極層17Bと、表面電極層17Cと、で構成されている。本実施形態では下地電極層17Aに特徴がある。下地電極層17Aは、導電性ペーストを熱処理して形成されている。この導電性ペーストは、金属粉末を含む導電性樹脂材料によって形成されている。金属粉末としては、例えばAg、Ag−Pd合金、Cu、Ni−Cr合金、Ni−Cu合金等の金属が好ましく、樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、更には可撓性の高い樹脂が好ましい。金属粉末は、400℃以下の温度で焼結する第1の金属粉末M1と、400℃以下の温度では焼結しない第2の金属粉末M2とから構成されている。金属粉末は、第1、第2の金属粉末M1、M2の配合比を適宜変えることによって、第1の金属粉末M1の焼結を適宜コントロールすることができる。第1の金属粉末M1の配合比が高すぎると第1の金属粉末M1の焼結が進みすぎる虞がある。
【0026】
導電性ペーストの樹脂材料は、下地電極層17Aと積層体との接着剤を兼ね、積層体との接続性を高めることができる。また、金属粉末は、図3の(b)に示すように、400℃以下の温度で焼結する第1の金属粉末M1と、400℃以下の温度では焼結しない第2の金属粉末M2の配合物であり、下地電極層17Aに導電性を付与する。第1の金属粉末M1としては、例えば3〜20nmの粒径を有する金属微粉末が好ましい。3nm未満では第1の金属粉末M1の調製が難しく、20nmを超えると400℃以下の温度での焼結が難しくなる。第2の金属粉末M2としては、0.1〜2μmの粒径を有する金属粉末が好ましい。0.1μm未満では第1の金属粉末M1の影響で焼結する可能性があり、2μmを超えると下地電極層17Aとしての薄膜化に悪影響を及ぼす。
【0027】
導電性ペーストは、熱硬化性樹脂が400℃以下の低温で熱処理されて下地電極層17Aを形成する際に、図3の(b)に示すように第1の金属粉末M1が焼結し、第2の金属粉末M2は焼結することなく、第1の金属粉末M1の焼結を抑制する。従って、下地電極層17Aは、焼結したナノサイズの第1の金属粉末M1中に焼結していないミクロンサイズの第2の金属粉末M2が分散しているため、第1の金属粉末M1は第2の金属粉末M2を取り囲んで互いの接触面積が大きくなって、比抵抗値を低減して金属粉末としての導電性を高めることができる。しかも第2の金属粉末M2は、焼結した第1の金属粉末M1中に焼結することなく分散しているため、焼結した第1の金属粉末M1に柔軟性を付与して絶縁樹脂層12の熱膨張、熱収縮に対する追従性を高め、外部電極17と第2のコイル電極132の引き出し電極との接続信頼性を格段に高めることができる。
【0028】
また、ナノサイズの第1の金属粉末M1は、400℃以下の低温で焼結するため、導電性ペーストの熱硬化性の樹脂材料の熱処理温度で焼結して下地電極層17Aを薄膜化することができる。更に、下地電極層17Aは樹脂材料を含んでいるため、第1、第2の磁性体基板11、15とのアンカー効果に加えて、電子部品本体10Aとの接着効果が加わって、下地電極層17A、延いては外部電極17と電子部品本体10Aとの接着力が強くなって、更に接続信頼性を高めることができる。
【0029】
上述のように構成された積層体の絶縁樹脂層12及び下地電極層17Aは、それぞれ熱膨張係数が60ppm/℃以下で、弾性率が20GPa以下であることが更に好ましい。熱膨張率及び弾性率を上記範囲に調整することにより下地電極層17Aの絶縁樹脂層12に対する追従性が更に増し、絶縁樹脂層12、つまり積層体の温度変化による膨張、収縮に柔軟に追従し、積層体の内部電極層13と外部電極17の下地電極層17Aとの電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0030】
而して、本実施形態の電子部品10を製造する場合には、例えば、スピン塗布法を用いて第1の磁性体基板11上全面に感光性を付与したポリイミド樹脂を塗布して絶縁樹脂層121を形成した後、硬化させる。次いで、スパッタリング法を用いて絶縁樹脂層121上全面に第1のコイル電極131用のAgからなる導体膜を形成する。引き続き、フォトリソグラフィ法を用いて、導体膜上全面にレジスト膜を形成し、フォトマスクを通してレジスト膜を露光し、現像し、露呈した導体膜をエッチングした後、レジスト膜を除去して第1のコイル電極131の第1電極パターン131A及びその引き出し電極131A、131Aを形成する。
【0031】
然る後、絶縁樹脂層121と同一要領で第1電極パターン131A及び引き出し電極131A、131A上に絶縁樹脂層122を形成し、フォトリソグラフィ法を用いて所定のパターンでビアホール122Aを形成する。この絶縁樹脂層122上に上述の場合と同一要領で導体膜を形成すると共にビアホール122Aを導電性材料で埋めてビアホール導体を形成した後、導体膜から第1のコイル電極131の第2電極パターン131B及びその引き出し電極131B、131Bを形成する。その後、絶縁樹脂層121と同一要領で絶縁樹脂層123、124を順次形成した後、第2のコイル電極132の第1電極パターン132Aとその引き出し電極132A、132A、絶縁樹脂層125、ビアホール125A、第2電極パターン132Bとその引き出し電極132B、132B及び最上層の絶縁樹脂層126からなる積層体を形成する。
【0032】
積層体を形成した後、不活性ガス雰囲気下または真空下で積層体の上面に接着層14を介して第2の磁性体基板15を加熱、加圧して接着し、複数の電子部品本体10Aを一括して作製する。次いで、ダイシング等の切断加工を行って個々の電子部品本体10Aに切り出して分割する。引き続き、電子部品本体10Aの両端面に二対の外部電極16、17を設けるために、第1、第2の金属粉末M1、M2を含む導電性ペーストを塗布し、400℃以下の低温、例えば300℃で熱処理すると、第1の金属粉末M1が焼結し、第2の金属粉末M2が焼結することなく外部電極16、17の下地電極層17A(外部電極16の下地電極層は図示してない)を形成する。次いで、湿式電解めっきによりNiからなる中間電極層17B及びSnからなる表面電極層17Cを順次積層して、外部電極17を形成する。外部電極16も外部電極17と同一要領で並行して形成する。
【0033】
また、電子部品10を作製する際に、絶縁樹脂層12及び下地電極層17Aとして熱膨張係数が60ppm/℃以下で、弾性率が20GPa以下に調整するためには、以下の樹脂材料を用いることができる。即ち、積層体の絶縁樹脂層12として、例えば熱膨張係数が17〜40ppm/℃で、弾性率が3〜5GPaの感光性が付与されたポリイミド樹脂を用いることができ、下地電極層17Aとして、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂にAg粉末を混ぜた導電性ペーストで、熱膨張係数が30〜40ppm/℃で、弾性率が5〜10GPaの導電性ペーストを用いることができる。また、接着剤層14としては、20〜50ppm/℃で、弾性率が3〜5GPaの熱硬化性のポリイミド樹脂を用いることができる。
【0034】
絶縁樹脂層12及び下地電極層17Aとして熱膨張係数が60ppm/℃以下で、弾性率が20GPa以下の樹脂材料(ポリイミド樹脂)となる電子部品10を作製し、この電子部品10における内部電極層13と下地電極層17Aとの接続信頼性を温度サイクル試験によって検証した。また、比較例として、絶縁樹脂層12及び下地電極層17Aとして熱膨張係数が60ppm/℃を超え、弾性率が20GPaを越える樹脂材料(ポリイミド樹脂)を用いて電子部品を作製し、この電子部品について同様の試験を行った。温度サイクル試験は、JIS規格に則って行った。その結果、本実施形態の電子部品10では内部電極層13と外部電極17との接続不良が発生しなかったが、比較例の電子部品では250サイクルという短い時間で内部電極層と外部電極の接続不良が発生した。
【0035】
以上説明したように本実施形態によれば、第1、第2の磁性体基板11、15と、第1、第2の磁性体基板11、15間に介在し且つ絶縁樹脂層12と内部電極層13を交互に積層して形成された積層体と、積層体の端面から露出する内部電極層13の引き出し電極に接続されて電子部品本体10Aの端面を被覆する外部電極16、17と、を備えた電子部品10において、外部電極16、17は、下地電極層17Aを有し、下地電極層17Aは、金属粉末を含む導電性樹脂材料からなり、金属粉末は、400℃以下の温度で焼結する第1の金属粉末M1と、その温度では焼結しない第2の金属粉末M2とからなるため、下地電極層17Aは、焼結した第1の金属粉末M1中に第2の金属粉末M2が介在して両者間の接触面積が大きくなって樹脂中での導電性を高め、しかも焼結していない第2の金属粉末M2によって第1の金属粉末M1の焼結を抑制して下地電極層17Aに可変性を付与し、下地電極層17Aが積層体の絶縁樹脂層12の熱膨張、熱収縮に柔軟に追従し、外部電極16、17と内部電極層13の引き出し電極との接続信頼性を格段に高めることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、第1の金属粉末M1は粒径が3〜20nmであり、第2の金属粉末M2は粒径が0.1〜2μmであるため、ナノサイズの第1の金属粉末M1が400℃以下の低温で焼結して外部電極16、17の下地電極層17Aの導電性を高めると共にそれぞれの下地電極層17Aを薄膜化し、外部電極16、17を薄膜化することができる。更に、下地電極層17Aは樹脂を含んでいるため、電子部品本体10Aとのアンカー効果が加えて樹脂の接着効果が加わって、下地電極層17A、延いては外部電極16、17と電子部品本体10Aとの接着力が強くなって、更に接続信頼性を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、絶縁樹脂層12及び下地電極層17Aは、熱線膨張係数が60ppm/℃以下で、弾性率が20GPa以下であるため、下地電極層17Aが柔軟性を有し、絶縁樹脂層12の温度変化による膨張、収縮に柔軟に追従し、内部電極層13と外部電極16、17との接続信頼性を更に高めることができる。
【0038】
尚、本発明は上記実施形態に何等制限されるものではなく、本発明の構成要素は本発明の要旨を逸脱しない限り適宜設計変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、携帯電話やパソコン等の電子機器の電子部品や車載用の電子部品に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の電子部品の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す電子部品の外観を示す斜視図である。
【図3】(a)、(b)は図1に示す電子部品の要部を示す断面図で、(a)は内部電極層の引き出し電極と外部電極との接続構造を示す図、(b)は(a)の○で囲んだ部分を拡大して示す外部電極の下地電極層を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0041】
10 電子部品
11、15 磁性体基板(絶縁体基板)
12 絶縁樹脂層(絶縁層)
13 内部電極層(電極層)
16、17 外部電極
16A 下地電極層(下地層)
131A、131A、131B、131B 引き出し電極
132A、132A、132B、132B 引き出し電極
M1 第1の金属粉末
M2 第2の金属粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板上に絶縁層と電極層を積層して形成された積層体と、少なくとも上記積層体の端面から露出する上記電極層の露出部分に接続され且つ上記絶縁基板及び上記積層体の端面を被覆する外部電極と、を備えた電子部品において、
上記外部電極は、少なくとも下地層を有し、
上記下地層は、金属粉末を含む導電性樹脂材料からなり、
上記金属粉末は、400℃以下の温度で焼結する第1の金属粉末と、400℃以下の温度では焼結しない第2の金属粉末とからなる
ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
上記積層体は、その上面に設けられた絶縁基板とその下面の絶縁基板との間に介在し、
上記絶縁層は、絶縁性樹脂材料からなり、
上記電極層は、コイル電極と、このコイル電極から上記積層体の端面に引き出された引き出し電極と、を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
上記第1の金属粉末は、粒径が3〜20nmであり、
上記第2の金属粉末は、粒径が0.1〜2μmである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
上記絶縁樹脂層及び上記下地層は、熱線膨張係数が60ppm/℃以下で、弾性率が20GPa以下である
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−201022(P2007−201022A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15609(P2006−15609)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】