説明

電子部品

【課題】適切にプリント基板に実装すること。
【解決手段】前面に開口部が形成されると共に後方に向けて端子部材3が導出されたハウジング2と、このハウジング2の側面に対応する位置に一対の係合片84を有し、上記開口部を覆うようにハウジング2に取り付けられるフレーム8とを備え、端子部材3及び係合片84によりプリント基板の縁部に形成された切り欠き部に実装されるプッシュスイッチ1であって、端子部材3に、プリント基板の表面に面接触する平面部31を形成する一方、係合片84を、平面部31のプリント基板に対する面接触を許容する形状としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の縁部に実装可能な電子部品に関し、特に、横押しタイプのプッシュスイッチに好適な電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横押しタイプのプッシュスイッチとして、プリント基板の縁部に形成された切り欠き部に実装される電子部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電子部品において、外部導出端子は、導電性金属片からなり、ハウジングのガイド壁部の外表面に沿って多段に折曲加工を施すことで形成されている。なお、このガイド壁部には、外部導出端子の折曲加工時におけるスプリングバックによるバラツキを吸収するために傾斜面が形成されている。
【特許文献1】特開2007−305384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の電子部品において、スプリングバックによるバラツキは、導電性金属片の材料特性等に基づいて多様に発生することから、傾斜面で一律に吸収することができず、実装される前の電子部品が傾いてしまい、プリント基板に対して適切に実装することができないという問題がある。
【0004】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、適切にプリント基板に実装することができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子部品は、前面に開口部が形成されると共に後方に向けて端子部材が導出されたハウジングと、前記ハウジングの側面に対応する位置に一対の基板取付け片を有し前記開口部を覆うように前記ハウジングに取り付けられるフレームとを備え、前記端子部材及び基板取付け片によりプリント基板の縁部に形成された切り欠き部に実装される電子部品であって、前記端子部材に、前記プリント基板の表面に面接触する平面部を形成する一方、前記基板取付け片を、前記平面部の前記プリント基板に対する面接触を許容する形状としたことを特徴とする。
【0006】
上記電子部品によれば、プリント基板の表面に面接触する平面部を有する端子部材と、この端子部材の平面部のプリント基板に対する面接触を許容する形状を有する基板取付け片とによりプリント基板の切り欠き部に実装されることから、端子部材の平面部を基準としてプリント基板に対して実装することができるので、基板取付け片との干渉により電子部品が傾く事態を防止でき、適切にプリント基板に実装することが可能となる。
【0007】
例えば、上記電子部品においては、前記プリント基板に固定される前記基板取付け片の下端面に、当該下端面の後端部が前記平面部で形成される基準面よりも上方側に配置される傾斜を設けることが考えられる。この場合には、基板取付け片の下端面の後端部が、端子部材の平面部で形成される基準面よりも上方側に配置されるので、基板取付け片の下端面が端子部材の平面部によるプリント基板に対する面接触に先行して接触する事態を防止でき、確実に端子部材の平面部のプリント基板に対する面接触を許容することが可能となる。
【0008】
特に、上記電子部品においては、前記基板取付け片の下端面の前端部を前記基準面上の位置に配置することが好ましい。この場合には、プリント基板の表面に、端子部材の平面部と、基板取付け片の下端面の前端部とで接触することとなるので、より確実に端子部材の平面部をプリント基板の表面に面接触させることが可能となる。
【0009】
また、上記電子部品においては、前記基板取付け片の下端面の全範囲を前記プリント基板に半田付け固定することが好ましい。このように基板取付け片の下端面の全範囲をプリント基板に半田付け固定することにより、基板取付け片の下端面を傾斜させた場合においても、プリント基板に対する電子部品の実装強度を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリント基板の表面に面接触する平面部を有する端子部材と、この端子部材の平面部のプリント基板に対する面接触を許容する形状を有する基板取付け片とによりプリント基板の切り欠き部に実装されることから、端子部材の平面部を基準としてプリント基板に対して実装することができるので、基板取付け片との干渉により電子部品が傾く事態を防止でき、適切にプリント基板に実装することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る電子部品で構成されるプッシュスイッチの分解斜視図である。図2及び図3は、本実施の形態に係るプッシュスイッチの斜視図及び側面図である。なお、以下においては、図1における左方側をプッシュスイッチの前方側と呼び、同図における右方側をプッシュスイッチの後方側と呼ぶものとする。
【0012】
本実施の形態に係る電子部品は、後述するプリント基板の縁部に形成された切り欠き部に実装される横押しタイプのプッシュスイッチ1を構成する。例えば、このプッシュスイッチ1は、カメラ機能付き携帯電話機のシャッターボタンとして適用されるが、これに限定されるものではない。2段階で動作するダブルアクションタイプのプッシュスイッチを必要とする装置であれば、いかなる装置にも適用することが可能である。
【0013】
図1に示すように、プッシュスイッチ1は、前面に開口部21を有する合成樹脂製のハウジング2と、インサート成形によってハウジング2に形成された複数の端子部材3と、ハウジング2の内部空間に収納された可動接点板4、絶縁シート5及びクリック感触用板6と、ハウジング2の内部空間で前後移動可能な操作部材7と、ハウジング2に取り付けられ、操作部材7の脱落を防止するフレーム8と、ハウジング2の内底部に配設された中央固定接点9及び外部固定接点10とにより主に構成されている。
【0014】
ハウジング2の側面には、図1に示すように、その上方側部分で側方側に張り出したガイド壁部22aが設けられている。これらのガイド壁部22aの後方側端部には、後述するフレーム8の係合爪86が係合する凹部22bが形成されている。また、ハウジング2の側面の下方側端部には、後述するフレーム8の係合爪87が係合する凹部23が形成されている。これらの凹部22b及び凹部23の後面には傾斜面22c、23aが設けられている(傾斜面22c、23aについては図1に不図示、図3参照)。さらに、ガイド壁部22aよりもプッシュスイッチ1の僅かに内側に、前方側に突出する一対の係合突起部24が設けられている。これらの傾斜面22c、23a及び係合突起部24は、いずれもフレーム8を位置決めするためのものである。
【0015】
ハウジング2の内部空間の底面には、概して円形状を有する凹部25が形成されている。凹部25には、その中央に中央固定接点9が埋設されると共に、この中央固定接点9の側方側に一対の外部固定接点10が埋設されている。これらの中央固定接点9及び外部固定接点10からそれぞれ対応する端子部材3が、プッシュスイッチ1の後面から後方側に導出されている(図4参照)。なお、この端子部材3の構成については後述する。
【0016】
凹部25の周囲には、凹部25よりも前方側の位置に配置された平面部26が形成されている。平面部26は、絶縁シート5の一部が貼り付け固定される部分である。凹部25の側方側であって平面部26の間の位置には、スリット部27が形成されている。スリット部27は、凹部25と同一平面上に設けられている。このスリット部27の先に、後述する可動接点板4の腕部42を保持する保持片28が設けられている。保持片28は、凹部25の底面よりも僅かに前方側の位置に配置される一方、平面部26よりも僅かに後方側の位置に配置されている。この保持片28の上方側及び下方側の位置には、平面部26よりも前方側の位置に配置される保持台29が形成されている。保持台29は、クリック感触用板6の端部を保持する部分である。
【0017】
可動接点板4は、板ばねで構成されており、操作部材7に対する押圧操作に応じてハウジング2の底面に埋設された中央固定接点9及び外部固定接点10と接し、所定の導通状態を形成するものである。また、可動接点板4は、操作部材7に対する押圧操作に応じてクリック感触を発生させるものである。可動接点板4は、円形状部41と、一対の腕部42とを有している。円形状部41は、前方側に僅かに膨出形成されたドーム形状を有している。腕部42は、円形状部41の外周の対向する位置から側方側に延出して形成されている。
【0018】
絶縁シート5は、ハウジング2の平面部26の外形に応じた形状を有している。絶縁シート5の後面には接着剤が塗布されており、腕部42の先端の一部を除く可動接点板4の全範囲を覆うように貼り付けられる共に、平面部26に貼り付け固定される。この絶縁シート5は、可動接点板4と固定接点9等とから成る接点部に塵や埃等が侵入するのを防止する防塵材としての役割を果たすものである。
【0019】
クリック感触用板6は、板ばねで構成されており、操作部材7に対する押圧操作に伴うクリック感触を発生するものである。クリック感触用板6は、プッシュスイッチ1の前方側に僅かに膨出形成されたドーム形状を有している。
【0020】
操作部材7は、例えば、絶縁性の樹脂材料で構成され、ヘッド部71、板状部72及び脚部73を有している(図1において脚部73は不図示、図4参照)。板状部72は、概して方形状を有し、その前面部中央から円柱形状のヘッド部71が立設される一方、その後面部中央から円柱形状の脚部73が立設されている。
【0021】
フレーム8は、例えば、金属製の板状部材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより形成される。フレーム8は、ハウジング2の前面を覆う平面部81を有している。平面部81には、その中央に操作部材7のヘッド部71を通過させる円形状の開口部82が形成されると共に、この開口部82の上方側且つ側方側にハウジング2の係合突起24と係合する係合孔83が形成されている。平面部81の側端部には、その上端部及び下端部近傍に後方側に延出する係合片84、85が設けられている。係合片84、85は、ハウジング2の側方側から後方側に延出し、その先端部にハウジング2の凹部22b及び凹部23と係合する係合爪86、87を有している。なお、係合片84は、後述するプリント基板11に取り付けられる基板取付け片を構成する。
【0022】
このような構成を有するプッシュスイッチ1を組み立てると、図2に示すように、ハウジング2の内部空間に可動接点板4、絶縁シート5、クリック感触用板6を収納すると共に、操作部材7の一部を前方側に突出させた状態でフレーム8がプッシュスイッチ1の前方側から取り付けられる。このとき、フレーム8においては、ハウジング2の係合突起24を係合孔83に収容すると共に、係合片84、85の係合爪86、87がハウジング2の凹部22b及び凹部23の後面側で内側に折り曲げられる。このように係合爪86、87を折り曲げられることで、図3に示すように、係合爪86、87の前方側の端面が傾斜面22c、23aの所定位置に当接し、フレーム8がハウジング2に固定される。
【0023】
本実施の形態に係るプッシュスイッチ1において、フレーム8の係合片84は、図3に示すように、前方側の幅W1よりも後方側の幅W2の方が僅かに短く構成されている。プッシュスイッチ1が組み立てたられた状態において、係合片84の上端面84aは、ハウジング2の上面と略平行に配置される。ここで、ハウジング2の上面と平行であって、係合片84の基端部の下端部を通過する面を基準面P1とする。この場合において、係合片84の下端面84bは、基準面P1よりも後方側が僅かに上方側に傾斜した状態に配置されることとなる。このように係合片84の下端面84bを傾斜させたのは、後述する端子部材3の平面部31のプリント基板11の表面に対する面接触を許容するためである。
【0024】
ここで、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1の内部構成について図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係るプッシュスイッチの断面図である。なお、図4においては、プッシュスイッチ1の中央固定接点9の中央部分における断面を示している。
【0025】
図4に示すように、端子部材3は、中央固定接点9からハウジング2の上方側部分を介して後面側に導出され、一定位置で下方側に折り曲げられると共に、後方側に折り曲げられている。そして、後方側に延出する端部は、後述するプリント基板11のランド部112に面接触する平面部31を構成している。この平面部31は、図3に示すように、ハウジング2を製造する際、その下面が基準面P1と同一平面上に配置されるようにインサート成形される。
【0026】
このように平面部31を構成することにより、プッシュスイッチ1を後述するプリント基板11の切り欠き部111に実装する際、係合片84が平面部31に先行してプリント基板11に接触するのを防止することができる。なお、図4においては、中央固定接点9に対応する端子部材3について示しているが、外部固定接点10に対応する端子部材3も同様に外部に導出されると共に平面部31を有している。
【0027】
可動接点板4が貼り付けられた絶縁シート5は、可動接点板4を凹部25に埋設された中央固定接点9等に対向させるように平面部26に貼り付け固定される。クリック感触用板6は、絶縁シート5の前方側に配置されており、保持台29に載置するように配置される。この場合において、クリック感触用板6が上方に膨出形成されたドーム形状を有することから、操作部材7に対する押圧操作が行われていない状態において、クリック感触用板6と絶縁シート5との間には一定の空間を形成されている。
【0028】
操作部材7は、脚部73の後端部がクリック感触用板6の前面に接触するように配置される。フレーム8は、このように操作部材7までの構成部品を収納したハウジング2に対して取り付けられる。この場合において、操作部材7には、クリック感触用板6の付勢力により前方側に押し出す力が作用している。操作部材7に対する押圧操作が行われていない状態(図4に示す状態)において、操作部材7は、ヘッド部71の一部がフレーム8の開口部82を介して前方側に突出すると共に、板状部72がフレーム8の裏面に当接し、操作部材7の前方側への移動を規制している。
【0029】
次に、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1のハウジング2に収納される構成部品の位置関係について説明する。図5〜図8は、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1のハウジング2に収納される構成部品の位置関係を説明するための図である。図5においては、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1のハウジング2の正面図を示し、図6〜図8においては、図5に示すハウジング2にそれぞれ可動接点板4、絶縁シート5及びクリック感触用板6を収納した状態について示している。
【0030】
図5に示すように、ハウジング2の内部空間の底面に形成された凹部25には、中央部に中央固定接点9が配置され、その側方側に一対の外部固定接点10が配置されている。中央固定接点9は、概して円形状を有しており、外部固定接点10は、上下方向に縦長の長方形状を有している。外部固定接点10の側方側に、スリット部27を挟んで保持片28が設けられている。また、凹部25の上方側及び下方側に概して半円弧形状の平面部26が設けられ、この平面部26の側方側に保持台29が保持片28を挟んで上下に設けられている。
【0031】
可動接点板4は、このような構成を有するハウジング2に対して、図6に示すように配置される。なお、可動接点板4は、上述のように、絶縁シート5に貼り付けられた状態でハウジング2内に配置されるが、説明の便宜上、単独の構成部品として示している。可動接点板4においては、円形状部41が凹部25に対応する位置に配置され、腕部42がスリット部27及び保持片28に対応する位置に配置されている。このように配置された状態において、円形状部41は、その中央部分が中央固定接点9に対向する位置に配置され、円形状部41と腕部42との連結部分が外部固定接点10に対向する位置に配置されている。この場合において、腕部42の端部は、保持片28に保持された状態となっている。
【0032】
絶縁シート5は、図7に示すように、その下面に可動接点板4を貼り付けた状態において、その端部を平面部26に貼り付くように配置される。この場合において、平面部26は、上述のように、保持片28よりも僅かに前方側(図7に示す紙面手前側)の位置に配置されている。このため、平面部26に貼り付け固定された絶縁シート5が可動接点板4の動作を規制することはない。
【0033】
クリック感触用板6は、このように絶縁シート5が貼り付けられたハウジング2に対して、図8に示すように、その端部において、保持台29に載置するように配置される。保持台29は、平面部26に貼り付け固定された絶縁シート5よりも前方側の位置に配置されている。一方、クリック感触用板6がドーム形状を有しているため、使用者による押圧操作が行われていない状態において、クリック感触用板6が絶縁シート5に接触することはない。
【0034】
ここで、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1における動作について図4及び図6を参照しながら説明する。プッシュスイッチ1は、使用者による押圧操作に応じて2段階の動作を行うものである。図4に示す初期状態(押圧操作を受けていない状態)のプッシュスイッチ1において、使用者から第1段階の押圧操作を受け付けた場合、操作部材7が後方側に押し込まれ、その脚部73の後端部がクリック感触用板6を後方側に押し込む。脚部73により押し込まれると、クリック感触用板6の後面が絶縁シート5に接触し、その後面に貼り付けられている可動接点板4も後方側に僅かに押し込まれる。
【0035】
可動接点板4は、図6に示すように、腕部42で保持片27に保持されている。このため、後方側に僅かに押し込まれると、可動接点板4全体ではなく、その円形状部41と腕部42との連結部分が後方側に移動する。このため、当該連結部分が双方の外部固定接点10に接触することにより、可動接点板4と外部固定接点10とが導通状態となり、プッシュスイッチ1から搭載される装置(以下、「搭載装置」という)に第1段階の押圧操作に応じた出力信号が出力される。この場合において、可動接点板4の円形状部41と中央固定接点9とは接触していない。
【0036】
なお、クリック感触用板6は、このように第1段階の押圧操作が行われた時点において、そのドーム形状部分が前後方向に反転するように構成されている。これにより、使用者にクリック感触が付与されることとなる。このクリック感触の付与により、使用者は、第1段階の押圧操作が適切に行われたことを認識することが可能となる。
【0037】
そして、第1段階の押圧操作が行われた状態において、使用者から第2段階の押圧操作を受け付けた場合、更に操作部材7が後方側に押し込まれ、その脚部73の後端部が更にクリック感触用板6を後方側に押し込む。脚部73により更に押し込まれると、クリック感触用板6の後面が、絶縁シート5を介して可動接点板4を更に後方側に押し込む。
【0038】
この場合、可動接点板4は、その円形状部41と腕部42との連結部分が外部固定接点10に接触した状態で、円形状部41が押し込まれることとなる。このため、円形状部41の中央部分が中央固定接点9に接触することにより、可動接点板4と、中央固定接点9及び外部固定接点10とが導通状態となり、プッシュスイッチ1から搭載装置に第2段階の押圧操作に応じた出力信号が出力される。
【0039】
なお、可動接点板4は、このように第2段階の押圧操作が行われた時点において、そのドーム形状部分が前後方向に反転するように構成されている。これにより、使用者にクリック感触が付与されることとなる。このクリック感触の付与により、使用者は、第2段階の押圧操作が適切に行われたことを認識することが可能となる。
【0040】
次に、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1をプリント基板11に実装する態様について説明する。図9は、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1が実装されるプリント基板11の構成について示す斜視図である。図10及び図11は、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1がプリント基板11に実装された状態の斜視図及び側面図である。なお、図9〜図11においては、プリント基板11の一部を示しており、その形状については適宜変更が可能である。また、図9においては、説明の便宜上、プッシュスイッチ1も示している。
【0041】
図9に示すように、プリント基板11においては、その縁部にプッシュスイッチ1が実装される切り欠き部111が形成されている。切り欠き部111は、概して長方形状を有し、その長手方向の幅がフレーム8の係合片85の幅よりも僅かに広く構成されている。このため、切り欠き部111には、フレーム8が取り付けられたハウジング2の下方側部分を収容可能となっている。
【0042】
プリント基板11の表面であって、切り欠き部111の近傍には、3つのランド部112及び2つのダミーランド部113が設けられている。ランド部112は、切り欠き部111の奥側の位置に設けられ、ダミーランド部113は、切り欠き部111の側方側の位置に設けられている。ランド部112は、プリント基板11に実装された状態のプッシュスイッチ1における端子部材3の平面部31に対応する位置に配置され、ダミーランド部113は、同一の状態のプッシュスイッチ1におけるフレーム8の係合片84に対応する位置に配置されている。
【0043】
このように構成されたプリント基板11に対して、プッシュスイッチ1は、端子部材3及び係合片84により実装される。実装工程においては、まず、ランド部112及びダミーランド部113にクリーム半田が塗布される。そして、ハウジング2の後面を切り欠き部111の端面に当接させると共に、端子部材3及び係合片84をそれぞれランド部112及びダミーランド部113に対応する位置に配置するようにプッシュスイッチ1が配置される。このように配置したプッシュスイッチ1をリフロー半田付け装置内に通過させることで、赤外線や熱風によってクリーム半田を溶融固化させ、各端子部材3をランド部112に半田付けして電気的且つ機械的に接続すると共に、係合片84をダミーランド部113に半田付けして機械的に接続する。
【0044】
これにより、プッシュスイッチ1に対する押圧操作(第1段階、第2段階)に応じた出力信号を端子部材3から、ランド部112を介して搭載装置の制御部に出力することが可能となる。なお、ダミーランド部113は、プリント基板11における不図示のグランドパターンと接続される。このようにアース接続しておくことにより、プッシュスイッチ1の静電気による破壊を防止することが可能となる。
【0045】
なお、ランド部112及びダミーランド部113は、端子部材3及び係合片84を半田付け固定する際に発生するクリーム半田の張力を考慮して形成することが好ましい。すなわち、プッシュスイッチ1は、クリーム半田の張力によって後方側に引っ張られつつ固定される(アライメント効果)。このようなクリーム半田の張力を考慮してランド部112及びダミーランド部113を形成した場合には、所望の位置にプッシュスイッチ1を適切に実装することが可能となる。
【0046】
このような実装工程を経て、プッシュスイッチ1は、プリント基板11に対して図10及び図11に示すように実装される。なお、図10及び図11においては、プッシュスイッチ1を固定するクリーム半田を省略している。このように実装される場合において、プッシュスイッチ1は、端子部材3の平面部31及び係合片84の下端面のみでプリント基板11に対して固定されている。
【0047】
このように端子部材3の平面部31及び係合片84の下端面で固定した場合、プリント基板11は、その上面が、上述した基準面P1(図3参照)と同一平面上に配置されることとなる。上述したように係合片84の下端面84bは、基準面P1よりも後方側が僅かに上方側に傾斜した状態に配置されていることから、平面部31は、その下面全体でプリント基板11に対して面接触する一方、係合片84は、その前端部だけでプリント基板11に接触することとなるためである。
【0048】
なお、プッシュスイッチ1において、ダミーランド部113上のクリーム半田は、下端面84bの後端部を固定可能な厚みに塗布されている。このため、リフロー半田装置を通過させた場合、係合片84の下端面84bの全体をクリーム半田で固定することが可能となっている。したがって、係合片84の下端面84bを傾斜させた場合においても、プリント基板11に対するプッシュスイッチ1の実装強度を確保することが可能となる。
【0049】
このように本実施の形態に係るプッシュスイッチ1においては、係合片84の下端面84bの後方側部分を、基準面P1よりも僅かに上方側に傾斜した状態に配置することで、平面部31の下面全体がプリント基板11に対して面接触するようにしている。仮に、係合片84の下端面84bに傾斜を設けることなく、基準面P1と同一平面上に配置した場合には、図12に示すように、端子部材3の平面部31がプリント基板11に接触できない事態が発生し得る。
【0050】
例えば、端子部材3の折曲加工時におけるスプリングバックによるバラツキが発生した場合に平面部31がプリント基板11に接触できない事態が発生し得る。この場合には、リフロー半田装置を通過させたとしても、平面部31をクリーム半田で固定することができないか、或いは、固定できたとしても所望の実装強度を確保できない事態が予想される。このような事態を防止するため、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1においては、係合片84の下端面84bの後方側部分に傾斜を設け、プリント基板11に対する平面部31の確実な面接触を確保している。
【0051】
このように本実施の形態に係るプッシュスイッチ1においては、プリント基板11の表面に面接触する平面部31を有する端子部材3と、この端子部材3の平面部31のプリント基板11に対する面接触を許容する形状を有する係合片84とによりプリント基板11の切り欠き部111に実装される。これにより、端子部材3の平面部31を基準としてプリント基板11に対して実装することができるので、他の部分との干渉によりプッシュスイッチ1が傾く事態を防止でき、適切にプリント基板11に実装することが可能となる。
【0052】
特に、本実施の形態に係るプッシュスイッチ1においては、プリント基板11に固定される係合片84の下端面に、当該下端面の後端部が基準面P1よりも上方側に配置される傾斜を設けると共に、係合片84の下端面の前端部を基準面P1上の位置に配置している。これにより、係合片84の下端面の後端部が、基準面P1よりも上方側に配置されるので、係合片84の下端面が端子部材3の平面部31によるプリント基板11に対する面接触に先行して接触する事態を防止でき、確実に端子部材3の平面部31のプリント基板11に対する面接触を許容することが可能となる。また、プリント基板11の表面に、端子部材3の平面部31と、係合片84の下端面の前端部とで接触することとなるので、より確実に端子部材3の平面部31をプリント基板11の表面に面接触させることが可能となる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0054】
例えば、上記実施の形態においては、係合片84の下端面に、その前端部が基準面P1上の位置に配置される傾斜を設けた場合について説明している。しかしながら、係合片84の下端面に形成される傾斜の構成については、これに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、平面部31のプリント基板11に対する面接触を許容することを条件として、例えば、係合片84の下端面の中央付近からその後端部を上方側に配置させる傾斜としても良い。
【0055】
また、上記実施の形態においては、端子部材3の平面部31のプリント基板11に対する面接触を許容する形状として、係合片84の下端面に傾斜を設けた場合について説明しているが、係合片84の形状についてはこれに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、係合片84の下端面を基準面P1よりも上方側の位置に配置すると共に、その前端部に基準面P1まで到達する突起部を設けるようにしても良い。この場合にも、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態に係る電子部品で構成されるプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るプッシュスイッチの斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るプッシュスイッチの側面図である。
【図4】上記実施の形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
【図5】上記実施の形態に係るプッシュスイッチのハウジングに収納される構成部品の位置関係を説明するための図である。
【図6】上記実施の形態に係るプッシュスイッチのハウジングに収納される構成部品の位置関係を説明するための図である。
【図7】上記実施の形態に係るプッシュスイッチのハウジングに収納される構成部品の位置関係を説明するための図である。
【図8】上記実施の形態に係るプッシュスイッチのハウジングに収納される構成部品の位置関係を説明するための図である。
【図9】上記実施の形態に係るプッシュスイッチが実装されるプリント基板の構成について示す斜視図である。
【図10】上記実施の形態に係るプッシュスイッチがプリント基板に実装された状態の斜視図である。
【図11】上記実施の形態に係るプッシュスイッチがプリント基板に実装された状態の側面図である。
【図12】上記実施の形態に係るフレームの係合片を変形した場合のプッシュスイッチがプリント基板に実装された状態の側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 プッシュスイッチ
2 ハウジング
21 開口部
22a ガイド壁部
22b、23 凹部
22c、23a 傾斜面
24 係合突起部
25 凹部
26 平面部
27 スリット部
28 保持片
29 保持台
3 端子部材
31 接触面
4 可動接点板
41 円形状部
42 腕部
5 絶縁シート
6 クリック感触用板
7 操作部材
71 ヘッド部
72 板状部
73 脚部
8 フレーム
81 平面部
82 開口部
83 係合孔
84、85 係合片
86、87 係合爪
9 中央固定接点
10 外部固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部が形成されると共に後方に向けて端子部材が導出されたハウジングと、前記ハウジングの側面に対応する位置に一対の基板取付け片を有し前記開口部を覆うように前記ハウジングに取り付けられるフレームとを備え、前記端子部材及び基板取付け片によりプリント基板の縁部に形成された切り欠き部に実装される電子部品であって、
前記端子部材に、前記プリント基板の表面に面接触する平面部を形成する一方、前記基板取付け片を、前記平面部の前記プリント基板に対する面接触を許容する形状としたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記プリント基板に固定される前記基板取付け片の下端面に、当該下端面の後端部が前記平面部で形成される基準面よりも上方側に配置される傾斜を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記基板取付け片の下端面の前端部を前記基準面上の位置に配置したことを特徴とする請求項2記載の電子部品。
【請求項4】
前記基板取付け片の下端面の全範囲を前記プリント基板に半田付け固定することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−272195(P2009−272195A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122947(P2008−122947)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】