説明

電子部品

【課題】螺旋状の線状導体からなるコイルを含んだ電子部品において、実装時に、短絡が発生することを抑制する。
【解決手段】磁性体シート14には、直角三角形をなし、斜辺に沿って延在している線状導体20が設けられている。磁性体シート14は、線状導体20が設けられている主面がコア12に対向するように、該コア12に巻き付けられている。これにより、線状電極20は、コア12の上面から底面に行くにしたがって径が大きくなる螺旋形状を有している。更に、線状電極20は、電子部品10の表面に露出していない。外部電極16a,16bは、コア12の底面及び上面に設けられ、線状導体20の両端に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、螺旋状の線状導体からなるコイルを含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品として、例えば、特許文献1に記載のインダクタが知られている。該インダクタは、円錐台形のコアの表面に螺旋状の導電膜が設けられて構成されている。また、コアの上面及び下面には、外部回路との接続のための端子部が設けられている。該インダクタは、導電膜の径がコアの表面の位置によって異なっているので、複数の自己共振周波数を有する。その結果、単一のインダクタでありながら、広帯域に使用することが可能となる。
【0003】
しかしながら、前記インダクタでは、以下に説明するように、実装の際に、短絡が発生するおそれがある。より詳細には、該インダクタでは、導電膜は、コアの表面に設けられているので、外部に対して露出している。そのため、インダクタが回路基板等に実装される際に、端子部に塗布されたはんだが、導電膜に付着して、端子部と導電膜とが短絡してしまうおそれがある。このような短絡が発生すると、インダクタの巻数が設計値よりも少なくなってしまうので、インダクタは、本来の性能を発揮することができない。特に、インダクタの小型化が進むと、インダクタのピッチが小さくなるので、係る問題の解決は重要である。
【特許文献1】特開2005−72231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、螺旋状の線状導体からなるコイルを含む広帯域に使用可能な電子部品において、実装時に、短絡が発生することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態に係る電子部品は、所定の辺を有する絶縁性シートと、第1の端部と第2の端部とを有する線状導体であって、該第1の端部において前記所定の辺に接していると共に、該第2の端部に近づいていくにしたがって、該所定の辺から離れるように、前記絶縁性シートの主面上に設けられている線状導体と、を備え、前記絶縁性シートは、前記第2の端部が前記第1の端部より内側に位置すると共に、前記線状導体が設けられている主面が内側を向き、かつ、所定の平面内を前記所定の辺が周回するように巻かれていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、螺旋状の線状導体からなるコイルを含んだ電子部品において、実装時に、短絡が発生することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図1は、該電子部品10の外観斜視図である。図2は、該電子部品10の分解図である。図3及び図4は、電子部品10の製造過程における外観斜視図である。なお、図1、図3及び図4における点線は、磁性体シート14によって隠れている線状導体20を示している。
【0008】
図1に示すように、電子部品10は、コア12、磁性体シート14及び外部電極16a,16bを備えている。コア12は、磁性体材料(例えば、Ni-Cu-Zn系フェライト)からなる円柱形状の中実の棒状部材である。磁性体シート14は、磁性体材料(例えば、Ni-Cu-Zn系フェライト)からなり、図2に示すように、直角三角形状をなしている絶縁体層である。以下に、該磁性体シート14の構成についてより詳細に説明する。
【0009】
磁性体シート14は、図2に示すように、辺L1〜L3を有している。辺L1は、底辺(所定の辺)を構成している。辺L2は、辺L1に直交する辺であり、コア12の高さと等しい長さを有している。辺L3は、斜辺である。磁性体シート14の主面上には、螺旋状のコイルを構成している線状導体20が設けられている。該線状導体20は、例えば、Ag等からなる配線であり、端部t1,t2を有している。線状導体20は、端部t1において辺L1に接していると共に、端部t2に近づいていくにしたがって、辺L1から離れるように構成されている。より具体的には、線状導体20は、端部t1と端部t2とを直線に繋いでおり、かつ、辺L3に対して平行に延在している。更に、端部t2は、磁性体シート14の辺L1から最も離れた位置に接している。本実施形態では、図2に示すように、端部t2は、辺L2と辺L3とにより構成されている角に接している。
【0010】
以上のように構成された磁性体シート14は、端部t2が端部t1より内側に位置すると共に、線状導体20が設けられている主面が内側を向き、かつ、コア12の底面により構成される平面内を辺L1が渦巻状に周回するように、コア12に対して巻き付けられる。より詳細には、辺L2がコア12の延在している方向と平行となるように、磁性体シート14をコア12に対して貼り付ける。この際、線状導体20が設けられている主面はコア12と対向し、端部t2はコア12と接している。そして、図3に示すように、辺L1とコア12の底面とが一致した状態を保ってコア12の周囲に磁性体シート14を巻きつける。その結果、図4に示すように、コア12及び磁性体シート14からなる中間体は、円錐台形状を有している。
【0011】
外部電極16aは、図1に示すように、コア12の底面に設けられ、端部t1(図1には図示せず)と接続されている。具体的には、端部t1は、図2に示すように、辺L1に接している。よって、磁性体シート14がコア12に巻きつけられたとしても、端部t1は、図4の状態において、磁性体シート14の隙間から外部に露出している。よって、端部t1が外部に露出した部分と外部電極16aとが接触することにより、外部電極16aと端部t1とが接続されている。
【0012】
外部電極16bは、図1に示すように、コア12の上面に設けられ、端部t2(図1には図示せず)と接続されている。具体的には、端部t2は、図2に示すように、辺L2と辺L3により形成されている角に接している。よって、磁性体シート14がコア12に巻きつけられたとしても、端部t2は、図4の状態において、磁性体シート14とコア12との隙間から外部に露出している。よって、端部t2が外部に露出した部分と外部電極16bとが接触することにより、外部電極16bと端部t2とが接続されている。
【0013】
以上のような構成を有する電子部品10では、辺L3に沿った線状導体20が設けられた磁性体シート14がコア12に対して巻きつけられている。そのため、線状導体20は、コア12の上面から底面に行くにしたがって、その径が広がっていく螺旋構造を有している。
【0014】
電子部品10が回路基板に実装される際には、回路基板に設けられたランド上に外部電極16aがはんだ付けされる。そして、外部電極16bが、回路基板上の別のランドに対してワイヤボンディング等により接続される。
【0015】
(製造方法)
以上のように構成された電子部品10の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
まず、図2に示すような円柱状のコア12を準備する。次に、大判のセラミックグリーンシートを金型により打ち抜くことにより、磁性体シート14となるべきセラミックグリーンシートを得る。
【0017】
次に、図2に示すように、磁性体シート14となるべきセラミックグリーンシートに対して、スクリーン印刷等によりAgペースト等を塗布して、線状導体20を形成する。
【0018】
次に、図3に示すように、磁性体シート14となるべきセラミックグリーンシートの線状導体20が設けられた主面をコア12に対向させる。そして、磁性体シート14となるべきセラミックグリーンシートの辺L2付近をコア12に対して貼り付ける。この後、磁性体シート14となるべきセラミックグリーンシートをコア12に巻き付ける。これにより、図4に示すような未焼成の中間体が得られる。
【0019】
次に、図4に示す中間体を袋に入れ、静水圧によりプレスを行って、磁性体シート14となるべきセラミックグリーンシートの圧着を行う。更に、図4に示す中間体に対して、脱脂及び焼成を施して、焼成された中間体を得る。
【0020】
次に、浸漬法等により、中間体の底面及び上面に、外部電極16a,16bとなるべき銀電極を形成する。その後、該銀電極の表面にNi−Snめっきを施すことにより、外部電極16a,16bを形成する。以上の工程を経て、図1に示す電子部品10が完成する。
【0021】
本願発明者は、実施例として以下に示す仕様の電子部品10を作製した。
【0022】
L1の長さ:6.9mm
L2の長さ:4.5mm
セラミックグリーンシートの厚み:25μm
コア12の直径:200μm
コア12の高さ:4.5mm
線状導体20の線幅:50μm
線状導体20の厚み:10μm
巻数:80ターン
【0023】
なお、図1ないし図4については、理解の容易のために、底辺L1を実施例に比べて短く記載した。
【0024】
(効果)
以上のように構成された電子部品10では、線状導体20が、コア12の上面から底面に行くにしたがって、その径が広がっていく螺旋構造を有している。そのため、線状導体20の径がコア12の表面の位置によって異なっているので、線状導体20により構成されるコイルは、複数の自己共振周波数を有する。その結果、電子部品10は、広帯域にわたって使用可能である。
【0025】
また、電子部品10では、磁性体シート14は、線状導体20が設けられた主面が内側を向いた状態でコア12に対して巻きつけられている。これにより、線状導体20は、電子部品10の表面に露出することがなくなる。そのため、電子部品10が回路基板に実装される際に、外部電極16a,16bに付与されたはんだが、線状導体20に付着することがない。その結果、外部電極16a,16bと線状導体20とが短絡することが防止される。
【0026】
更に、磁性体シート14が直角三角形をなしていると共に、辺L1がコア12の底面がなす平面内において周回するように、磁性体シート14は、コア12に対して巻きつけられている。そのため、下層に位置している磁性体シート14と上層に位置している磁性体シートとの間の段差G上には、磁性体シート14が位置しない。そのため、磁性体シート14同士が密着するようになり、電子部品10の歩留まりが向上する。
【0027】
(変形例)
本発明に係る電子部品は、前記電子部品10に限らない。よって、電子部品10は、その要旨の範囲内において変形されてもよい。以下に、電子部品10の変形例について説明する。
【0028】
図5は、変形例に係る電子部品10の磁性体シート114を示した図である。磁性体シート114は、図5に示すような台形を有していてもよい。より詳細には、図5に示す磁性体シート114では、図2に示した磁性体シート14の辺L1に対して、コア12となるべき長方形状の磁性体シート112が接合されている。磁性体シート114では、コア12を用いることなく磁性体シート112を巻くことにより、磁性体シート112がコア12として機能するようになる。
【0029】
なお、電子部品10では、コア12を用いているが、該コア12は必ずしも必要なものではない。よって、電子部品10において、大きなインダクタンス値が要求されない場合には、コア12を取り外してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】図1の電子部品の分解図である。
【図3】図1の電子部品の製造過程における外観斜視図である。
【図4】図1の電子部品の製造過程における外観斜視図である。
【図5】変形例に係る電子部品の磁性体シートを示した図である。
【符号の説明】
【0031】
L1〜L3 辺
t1,t2 端部
10 電子部品
12 コア
14,112,114 磁性体シート
16a,16b 外部電極
20 線状導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の辺を有する絶縁性シートと、
第1の端部と第2の端部とを有する線状導体であって、該第1の端部において前記所定の辺に接していると共に、該第2の端部に近づいていくにしたがって、該所定の辺から離れるように、前記絶縁性シートの主面上に設けられている線状導体と、
を備え、
前記絶縁性シートは、前記第2の端部が前記第1の端部より内側に位置すると共に、前記線状導体が設けられている主面が内側を向き、かつ、所定の平面内を前記所定の辺が周回するように巻かれていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記線状導体は、前記第1の端部と前記第2の端部とを直線で繋いでおり、
前記絶縁性シートは、前記線状導体と平行な斜辺を有していること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記絶縁性シートは、直角三角形状をなしていること、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2の端部は、前記絶縁シートの前記所定の辺から最も離れた位置に接していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の端部に接続されている第1の外部電極と、
前記第2の端部に接続されている第2の外部電極と、
を更に備えていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
磁性体材料からなる円柱形状のコアを、
更に備え、
前記絶縁性シートは、前記コアに対して巻きつけられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁性シートは、磁性体材料により構成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−123855(P2010−123855A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297938(P2008−297938)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】