説明

電子部品

【課題】基板にたわみが生じても、クラックに起因する電気特性の劣化の少ない電子部品を提供する
【解決手段】本発明に係る電子部品は、部品素体10と、部品素体10の内部に配置され、部品素体10の外表面にまで引き出されている内部電極層21と、部品素体10の外表面にスパッタリング法または蒸着法で形成され、内部電極層21と電気的に接続されている薄膜電極31と、薄膜電極31の外表面に形成されているめっき層32、33と、を備える電子部品1において、薄膜電極31のめっき層32と接する側の表面に凹部41が形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品に関する。特に、部品素体の外表面にまで引き出されている内部電極層を備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部品素体の外表面に外部電極が形成された電子部品では、例えば電極の耐熱性やはんだ濡れ性を向上させるために、外部電極の外表面にめっき層を形成することが行われている。
【0003】
このような電子部品の構造としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の電子部品は、図4のように、部品素体101と、部品素体101の内部に配置され、部品素体101の外表面にまで引き出されている内部電極層121と、部品素体101の外表面に形成され、内部電極層121と電気的に接続されている外部電極130と、を備えている。そして、めっき層(図示せず)は、外部電極130の外表面に形成されることが多い。
【0004】
一方、外部電極には、例えば部品素体に金属とガラス成分とを焼き付ける厚膜電極や、スパッタリング法や蒸着法で金属を被着させる薄膜電極がある。薄膜電極は、厚膜電極では形成が困難な形状であっても、マスキングしてスパッタリング法や蒸着法を行うことにより、容易に形成することができる。また、薄膜電極は熱処理せずに形成することができるため、部品素体が接着層を備える場合には好適である。そのため、接着層を備えた電子部品には、外部電極に薄膜電極がよく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−203737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した電子部品は、回路基板などの基板に実装されることが多い。この時、基板と電子部品とがはんだによって接合される。ところが、この基板にたわみが生じると、実装されている電子部品に応力がかかる。近年は基板の薄層化により、基板のたわみが増大する傾向にある。そして、特許文献1の構造の電子部品をフレキシブル基板に実装して、たわみ強度試験を実施すると、たわみに起因してめっき層の外表面に発生したクラックが、内部電極層と外部電極である薄膜電極の接続部分にまで到達する問題が生じた。内部電極層と薄膜電極がクラックにより切断されると、電気特性が著しく劣化するおそれがある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであって、基板にたわみが生じても、クラックに起因する電気特性の劣化の少ない電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子部品では、部品素体と、前記部品素体の内部に配置され、前記部品素体の外表面にまで引き出されている内部電極層と、前記部品素体の外表面にスパッタリング法または蒸着法で形成され、前記内部電極層と電気的に接続されている薄膜電極と、前記薄膜電極の外表面に形成されているめっき層と、を備える電子部品において、前記薄膜電極の前記めっき層と接する側の表面に凹部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る電子部品では、前記部品素体は第1部材層と第2部材層と接着層とを備え、前記第1部材層と前記第2部材層は前記接着層を介して接着されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電子部品では、前記第1部材層はセラミックで構成され、前記第2部材層は樹脂で構成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電子部品では、前記凹部は帯状に形成されており、前記帯状の長手方向が前記内部電極層の積層方向と垂直であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電子部品では、前記凹部は前記薄膜電極に複数形成されており、前記内部電極層と前記薄膜電極の接続部分は前記複数の凹部の間に位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、薄膜電極のめっき層と接する側の表面に凹部が形成されている。凹部の存在により、薄膜電極とめっき層の接合強度が小さくなる。そのため、基板のたわみによりめっき層の外表面から電子部品の内部にクラックが発生しても、クラックは薄膜電極とめっき層との界面に伝搬する。その結果、内部電極層と薄膜電極の接続部分へのクラックの到達を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB部分の拡大図である。
【図4】従来の電子部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。本実施形態は、電子部品がコイル部品の例である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の外観を示す斜視図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。
【0017】
電子部品1は、部品素体10を備えている。部品素体10は、第1部材層であるセラミック層11と、接着層12と、第2部材層である樹脂層13と、セラミック層14と、を備えている。そして、セラミック層11と樹脂層13は、接着層12を介して接着されている。本実施形態のコイル部品の場合、セラミック層11、14の材質としては、例えばフェライトが挙げられる。また、樹脂層13の材質としては、例えばポリイミド樹脂が挙げられる。
【0018】
内部電極層21は、部品素体10の内部に配置されている。本実施形態では、内部電極層21は樹脂層13の内部に配置されている。また、内部電極層21は、一方の端が部品素体10の外表面にまで引き出されている。内部電極層21の材質の例としては、Ni、Pd、Cu、Agおよびその合金が挙げられる。なお、図示していないが、部品素体10の内部に配置され、部品素体10の外表面に引出されていない電極があっても良い。
【0019】
薄膜電極31は、部品素体10の外表面にスパッタリング法または蒸着法で形成されている。そして、薄膜電極31と内部電極層21は、部品素体10の外表面で電気的に接続されている。薄膜電極31の材質の例としては、例えばNi−Crの合金、Ni−Cuの合金、Cu、TiおよびAg等の金属材料が挙げられる。
【0020】
めっき層32、33は、薄膜電極31の外表面に形成される。めっき層32は、例えば薄膜電極31の耐熱性を向上させるため、ニッケルめっきにより構成される。また、めっき層33は、例えばはんだ濡れ性を向上させるため、すずめっきにより構成される。
【0021】
本発明では、薄膜電極31のめっき層32と接する側の表面に凹部41が形成されている。凹部41の存在により、薄膜電極31とめっき層32の接合強度が小さくなる。そのため、電子部品1が実装された基板にたわみが生じて、めっき層33の外表面から電子部品1の内部にクラックが発生しても、接合強度を小さくした薄膜電極31とめっき層32との界面に優先的にクラックが伝搬する。したがって、内部電極層21と薄膜電極31の接続部分へのクラックの到達を防止することができる。
【0022】
図3は図1のB部分の拡大図である。説明のため、めっき層32、33を省略している。本実施形態では、図3のように、凹部41は帯状に形成されており、帯状の長手方向が内部電極層21の積層方向と垂直である。また、凹部41は、薄膜電極31に複数形成されており、内部電極層21と薄膜電極31の接続部分は複数の凹部41の間に位置している。これにより、内部電極層21と薄膜電極31の接続部分へのクラックの到達をより効果的に防止することができる。
【0023】
本発明に係る電子部品は、一例として、以下のように作製される。
【0024】
最初に部品素体10を作製する。具体的には、まずセラミック層14を用意する。次に、セラミック層14の一方の主面上に、樹脂層13と内部電極層21を形成する。樹脂層13と内部電極層21は、例えばフォトリソグラフィ法で形成する。次に、樹脂層13のセラミック層14と接する側と逆側の主面に、セラミック層11を接着層12を介して接着する。
【0025】
次に、部品素体10の外表面に薄膜電極31を形成する。薄膜電極31はスパッタリング法または蒸着法で形成する。このとき、薄膜電極31のめっき層32と接する側の表面に凹部41を形成する。凹部41は、例えば、スパッタリング法や蒸着法の気化源となるソースと部品素体10の間に遮蔽板をおくことで形成する。遮蔽板と部品素体10との距離や遮蔽板の形状を適宜選択することで、遮蔽板に対応する部分の薄膜電極31の膜厚が薄くなるように凹部41を形成する。例えば帯状の遮蔽板を用いた場合には、凹部41は帯状になる。
【0026】
次に、薄膜電極31の外表面にめっき層32、33を形成する。具体的には、薄膜電極31が形成された部品素体10を被めっき物として、湿式バレル法で電解めっきをする。例えば、ニッケルめっきによりめっき層32を形成して、その後にすずめっきによりめっき層33を形成する。
【0027】
本実施形態では電子部品の一例としてコイル部品について説明した。本実施形態のコイル部品は、第1部材層がセラミックで構成され第2部材層が樹脂で構成されているが、第1部材層と第2部材層がどちらもセラミックで構成されていても良い。
【0028】
また、本発明に係る電子部品はコイル部品に限られない。例えば、第1部材層が圧電体であり、第2部材層が誘電体であるセラミック発振子であっても良い。また、薄膜電極が形成されたセラミックフィルタ、EMIフィルタ、三端子コンデンサ、あるいはサーミスタについても適用することができる。また、積層セラミックコンデンサ、インダクタンス素子についても適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 電子部品
10 部品素体
11 セラミック層(第1部材層)
12 接着層
13 樹脂層(第2部材層)
14 セラミック層
21 内部電極層
31 薄膜電極
32 めっき層
33 めっき層
41 凹部
100 電子部品
101 部品素体
121 内部電極層
130 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品素体と、
前記部品素体の内部に配置され、前記部品素体の外表面にまで引き出されている内部電極層と、
前記部品素体の外表面にスパッタリング法または蒸着法で形成され、前記内部電極層と電気的に接続されている薄膜電極と、
前記薄膜電極の外表面に形成されているめっき層と、
を備える電子部品において、
前記薄膜電極の前記めっき層と接する側の表面に凹部が形成されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項2】
前記部品素体は第1部材層と第2部材層と接着層とを備え、前記第1部材層と前記第2部材層は前記接着層を介して接着されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1部材層はセラミックで構成され、前記第2部材層は樹脂で構成されている、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記凹部は帯状に形成されており、前記帯状の長手方向が前記内部電極層の積層方向と垂直である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記凹部は前記薄膜電極に複数形成されており、前記内部電極層と前記薄膜電極の接続部分は前記複数の凹部の間に位置している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−216633(P2011−216633A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82714(P2010−82714)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】