説明

電子部品

【課題】コモンモードチョークコイルを内蔵する電子部品であって、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる電子部品を提供することである。
【解決手段】積層体12は、磁性体基板16a,16b及び誘電体層18a〜18eが積層されて構成されている。コイル導体20a,20bは、積層体12内に設けられ、かつ、互いに電磁気結合することによってコモンモードチョークコイルを構成している。引き出し導体22aは、コイル導体20aの一方の端部から積層体12の側面まで引き出されている。引き出し導体22bは、コイル導体20bの一方の端部から積層体12の側面まで引き出され、かつ、z軸方向から平面視したときに、コイル導体20bの一方の端部から積層体12の側面までの間において引き出し導体22aと重なっている。2つの外部電極は、積層体12の側面に設けられ、引き出し導体22a,22bのそれぞれに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、コモンモードチョークコイルを内蔵している電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載のコモンモードチョークコイルが知られている。図9は、特許文献1に記載のコモンモードチョークコイル500を平面視した図である。
【0003】
コモンモードチョークコイル500は、積層体501及びコイルパターン502,504を備えている。積層体501は、複数の絶縁層が積層されて構成されている。コイルパターン502,504は、渦巻き状をなすことによりコイルを構成している。コイルパターン502,504の一方の端部はそれぞれ、積層体501の側面に引き出されることにより引出電極部502a,504aを構成している。また、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分とは、重なっており、電磁気結合している。
【0004】
前記コモンモードチョークコイル500では、積層体501の側面には、引出電極部502a,504aのそれぞれに接続されている2つの外部電極が設けられている。外部電極同士は、互いに絶縁されている必要があるので、引出電極部502a,504aは、図9のAの領域に示すように、積層体501の側面近傍において互いに反対方向に延在した後に、積層体501の側面に引き出されている。
【0005】
しかしながら、コモンモードチョークコイル500は、コイルパターン502,504のインピーダンス整合が崩れてしまうという問題を有している。より詳細には、コモンモードチョークコイル500では、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分とは重なっているので、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分との間には均一な静電容量が発生している。よって、コイルパターン502,504の渦巻き部分は、等しい特性インピーダンスを有している。一方、引出電極部502a,504aは、図9に示すように重なっていない。そのため、引出電極部502aと引出電極部504aとの間に発生する静電容量は、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分との間に発生する静電容量よりも小さくなる。その結果、引出電極部502a,504aの特性インピーダンスは、コイルパターン502,504の渦巻き部分の特性インピーダンスよりも大きくなる。よって、引出電極部502a,504aとコイルパターン502,504の渦巻き部分との間におけるインピーダンス整合が崩れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−98625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、コモンモードチョークコイルを内蔵する電子部品であって、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、前記積層体内に設けられ、かつ、互いに電磁気結合することによってコモンモードチョークコイルを構成している第1のコイル導体及び第2のコイル導体と、前記第1のコイル導体の一方の端部から前記積層体の側面まで引き出されている第1の引き出し導体と、前記第2のコイル導体の一方の端部から前記積層体の側面まで引き出されている第2の引き出し導体であって、積層方向から平面視したときに、該第2のコイル導体の一方の端部から該積層体の側面までの間において前記第1の引き出し導体と重なっている第2の引き出し導体と、前記積層体の側面に設けられている第1の外部電極及び第2の外部電極であって、前記第1の引き出し導体及び前記第2の引き出し導体のそれぞれに接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電子部品の外観斜視図である。
【図2】電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】特性インピーダンスを示したグラフである。
【図4】差動伝送特性を示したグラフである。
【図5】第1の変形例に係る電子部品の外観斜視図である。
【図6】第1の変形例に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図7】第2の変形例に係る電子部品の外観斜視図である。
【図8】第2の変形例に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図9】特許文献1に記載のコモンモードチョークコイルを平面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(電子部品の構成)
まず、電子部品の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、電子部品10の外観斜視図である。図2は、電子部品10の積層体12の分解斜視図である。以下では、積層体12の積層方向をz軸方向と定義する。積層体12をz軸方向から平面視したときの積層体12の2辺が延在している方向をx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向、y軸方向及びz軸方向は互いに直交している。
【0013】
電子部品10は、コモンモードチョークコイルを内蔵するチップ型電子部品であり、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14(14a〜14d)コイル導体20a,20b、引き出し導体22a,22b,24a,24b及びビアホール導体v1,v2を備えている。
【0014】
積層体12は、図1に示すように、直方体状をなしており、磁性体基板(絶縁体層)16a,16b及び誘電体部18を含んでいる。磁性体基板16a,16bは、フェライト等の磁性体材料により構成されており、直方体状をなしている。また、誘電体部18は、誘電体層(絶縁体層)18a〜18eがz軸方向の正方向側からこの順に並ぶように積層されることにより構成されている。誘電体層18a〜18eは、矩形状をなしており、ポリイミド樹脂等の誘電体材料により構成されている。以下では、誘電体層18a〜18eのz軸方向の正方向側の面を表面と称し、誘電体層18a〜18eのz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
【0015】
コイル導体20a,20bは、積層体12内に設けられ、かつ、互いに電磁気結合することによりコモンモードチョークコイルを構成している。より詳細には、コイル導体20aは、誘電体層18cの表面上に設けられており、時計回り方向に旋回しながら中心に近づく渦巻き形状をなしている。コイル導体20bは、コイル導体20aが設けられている誘電体層18cよりもz軸方向の負方向側に位置している誘電体層18dの表面に設けられており、時計回り方向に旋回しながら中心に近づく渦巻き形状をなしている。コイル導体20a,20bは、同じ形状を有していると共に、z軸方向から平面視したときに、一致した状態で重なっている。
【0016】
引き出し導体22aは、コイル導体20aの一方の端部から積層体12の側面まで引き出されている。より詳細には、引き出し導体22aは、引き出し部30a及び接続部32aを含んでいる。引き出し部30aは、誘電体層18cの表面上において、コイル導体20aの外側の端部から誘電体層18cのx軸方向の負方向側の辺まで直線的に延在している。接続部32aは、誘電体層18cの表面上において、引き出し部30aのx軸方向の負方向側の端部から積層体12の側面(すなわち、誘電体層18cのx軸方向の負方向側の辺)に沿ってy軸方向の負方向側に向かって延在している。これにより、接続部32aは、図1(a)に示すように、積層体12のx軸方向の負方向側の側面から、y軸方向に延在する線状に露出している。
【0017】
引き出し導体22bは、コイル導体20bの一方の端部から積層体12の側面まで引き出されており、z軸方向から平面視したときに、コイル導体20bの一方の端部から積層体12の側面までの間において引き出し導体22aと重なっている。より詳細には、引き出し導体22bは、引き出し部30b及び接続部32bを含んでいる。引き出し部30bは、誘電体層18dの表面上において、コイル導体20bの外側の端部から誘電体層18dのx軸方向の負方向側の辺まで向かって直線的に延在している。引き出し部30bは、z軸方向から平面視したときに、引き出し部30aと一致した状態で重なっている。接続部32bは、誘電体層18dの表面上において、引き出し部30bのx軸方向の負方向側の端部から積層体12の側面(すなわち、誘電体層18dのx軸方向の負方向側の辺)に沿ってy軸方向の正方向側に向かって延在している。これにより、接続部32bは、図1(a)に示すように、積層体12のx軸方向の負方向側の側面から、y軸方向に延在する線状に露出している。ただし、接続部32a,32bは、図2に示すように、引き出し部30a,30bから互いに反対方向に向かって延在している。そのため、接続部32a,32bの一部がz軸方向に一部重なっていると共に、接続部32a,32bの大半の部分においてz軸方向に重なっていない。
【0018】
引き出し導体24aは、積層体12内に設けられ、より詳細には、誘電体層18bの表面上に設けられている。そして、引き出し導体24aは、z軸方向から平面視したときにコイル導体20aの他方の端部と重なる位置から積層体12の側面まで引き出されている。より詳細には、引き出し導体24aは、接続部33a,引き出し部34a及び接続部36aを含んでいる。接続部33aは、誘電体層18bの表面上において、z軸方向から平面視したときにコイル導体20aの内側の端部と重なっている。引き出し部34aは、誘電体層18bの表面上において、接続部33aから誘電体層18bのx軸方向の正方向側の辺まで直線的に延在している。接続部36aは、誘電体層18bの表面上において、引き出し部34aのx軸方向の正方向側の端部から積層体12の側面(すなわち、誘電体層18bのx軸方向の正方向側の辺)に沿ってy軸方向の負方向側に向かって延在している。これにより、接続部36aは、図1(b)に示すように、積層体12のx軸方向の正方向側の側面から、y軸方向に延在する線状に露出している。
【0019】
引き出し導体24bは、積層体12内に設けられ、より詳細には、誘電体層18eの表面上に設けられている。そして、引き出し導体24bは、z軸方向から平面視したときにコイル導体20bの一方の端部と重なる位置から積層体12の側面まで引き出されており、z軸方向から平面視したときに、コイル導体20bの一方の端部から積層体12の側面までの間において引き出し導体24aと重なっている。より詳細には、引き出し導体24bは、接続部33b、引き出し部34b及び接続部36bを含んでいる。接続部33bは、誘電体層18eの表面上において、z軸方向から平面視したときにコイル導体20bの内側の端部と重なっている。引き出し部34bは、誘電体層18eの表面上において、z軸方向から平面視したときにコイル導体20bの内側の端部と重なる位置から誘電体層18eのx軸方向の正方向側の辺まで直線的に延在している。引き出し部34bは、z軸方向から平面視したときに、引き出し部34aと一致した状態で重なっている。接続部36bは、誘電体層18eの表面上において、引き出し部34bのx軸方向の正方向側の端部から積層体12の側面(すなわち、誘電体層18eのx軸方向の正方向側の辺)に沿ってy軸方向の正方向側に向かって延在している。これにより、接続部36bは、図1(b)に示すように、積層体12のx軸方向の正方向側の側面から、y軸方向に延在する線状に露出している。ただし、接続部36a,36bは、図2に示すように、引き出し部34a,34bから互いに反対方向に向かって延在している。そのため、接続部36a,36bの一部がz軸方向に一部重なっていると共に、接続部36a,36bの大半の部分においてz軸方向に重なっていない。
【0020】
ビアホール導体v1は、誘電体層18bをz軸方向に貫通しており、コイル導体20aの他方の端部と引き出し導体24aの接続部33aとを接続している。ビアホール導体v2は、誘電体層18dをz軸方向に貫通しており、コイル導体20bの他方の端部と引き出し導体24bの接続部33bとを接続している。
【0021】
外部電極14a,14bはそれぞれ、積層体12のx軸方向の負方向側の側面に設けられており、引き出し導体22a,22b(より詳細には、接続部32a,32b)に接続されている。より詳細には、外部電極14a,14bはそれぞれ、本体部40a,40b及び枝部42a,42bを含んでいる。本体部40a,40bは、積層体12のx軸方向の負方向側の側面において、z軸方向に延在するように設けられている。本体部40aは、本体部40bよりもy軸方向の負方向側に設けられている。また、枝部42aは、本体部40aからy軸方向の正方向側に突出しており、かつ、接続部32aを覆っている。枝部42bは、本体部40bからy軸方向の負方向側に突出しており、かつ、接続部32bを覆っている。ここで、前記の通り、接続部32a,32bの一部は、z軸方向に重なっている。そのため、枝部42a,42bは、互いに接続されることなく、z軸方向に並んでいる。枝部42aは、枝部42bよりもz軸方向の正方向側に設けられている。
【0022】
外部電極14c,14dはそれぞれ、積層体12のx軸方向の正方向側の側面に設けられており、引き出し導体24a,24b(より詳細には、接続部36a,36b)に接続されている。より詳細には、外部電極14c,14dはそれぞれ、本体部40c,40d及び枝部42c,42dを含んでいる。本体部40c,40dは、積層体12のx軸方向の正方向側の側面において、z軸方向に延在するように設けられている。本体部40cは、本体部40dよりもy軸方向の負方向側に設けられている。また、枝部42cは、本体部40cからy軸方向の正方向側に突出しており、かつ、接続部36aを覆っている。枝部42dは、本体部40dからy軸方向の負方向側に突出しており、かつ、接続部36bを覆っている。ここで、前記の通り、接続部36a,36bの一部は、z軸方向に重なっている。そのため、枝部42c,42dは、互いに接続されることなく、z軸方向に並んでいる。枝部42cは、枝部42dよりもz軸方向の正方向側に設けられている。
【0023】
以上のように構成された電子部品10では、コイル導体20a,20bは、z軸方向から平面視したときに重なっている。これにより、コイル導体20aが発生した磁束がコイル導体20bを通過するようになり、コイル導体20bが発生した磁束がコイル導体20aを通過するようになる。したがって、コイル導体20aとコイル導体20bとが磁気結合するようになり、コイル導体20aとコイル導体20bとがコモンモードチョークコイルを構成するようになる。そして、外部電極14a,14bが入力端子として用いられ、外部電極14c,14dが出力端子として用いられる。すなわち、差動伝送信号が、外部電極14a,14bから入力し、外部電極14c,14dから出力する。そして、差動伝送信号にコモンモードノイズが含まれている場合には、コイル導体20a,20bは、コモンモードノイズにより、同じ方向に磁束を発生する。そのため、磁束同士が強め合うようになり、コモンモードに対するインピーダンスが発生する。その結果、コモンモードノイズは、熱に変換されて、コイル導体20a,20bを通過することが妨げられる。
【0024】
(電子部品の製造方法)
以上のように構成された電子部品10の製造方法について図1及び図2を参照しながら以下に説明する。なお、以下では、図1及び図2に示すように一つの電子部品10の製造方法について説明するが、実際には、複数の積層体12がつながったマザー積層体を作製し、マザー積層体をカットして、積層体12を得る。
【0025】
まず、磁性体基板16b上にフォトリソグラフィにより、ポリイミド樹脂からなる誘電体層18eを形成する。具体的には、スピン法により、磁性体基板16b上に感光性樹脂膜を塗布する。そして、感光性樹脂膜に対して露光及び現像を行って、誘電体層18eを形成する。
【0026】
次に、誘電体層18e上にフォトリソグラフィにより、Ag又はPdを主成分とする引き出し導体24bを形成する。具体的には、めっき、蒸着、スパッタリング等により誘電体層18eの表面全面に金属膜を形成する。そして、金属膜に対して感光性レジスト膜を塗布し、露光及び現像を行う。この後、感光性レジスト膜から露出した金属膜の部分をエッチングにより除去した後、感光性レジスト膜を除去する。これにより、引き出し導体24bが形成される。
【0027】
次に、誘電体層18e及び引き出し導体24b上にフォトリソグラフィにより、ポリイミド樹脂からなる誘電体層18dを形成する。具体的には、スピン法により、誘電体層18e上に感光性樹脂膜を塗布する。そして、感光性樹脂膜に対して露光及び現像を行って、ビアホール導体v2となるビアホールが形成された誘電体層18dを形成する。
【0028】
次に、誘電体層18d上にフォトリソグラフィにより、Ag又はPdを主成分とするコイル導体20b、引き出し導体22b及びビアホール導体v2を形成する。具体的には、めっき、蒸着、スパッタリング等により誘電体層18dの表面全面に金属膜を形成する。この際、誘電体層18dのビアホールに金属が充填され、ビアホール導体v2が形成される。そして、金属膜に対して感光性レジスト膜を塗布し、露光及び現像を行う。この後、感光性レジスト膜から露出した金属膜の部分をエッチングにより除去した後、感光性レジスト膜を除去する。これにより、コイル導体20b、引き出し導体22b及びビアホール導体v2が形成される。
【0029】
この後、誘電体層18dの形成工程及びコイル導体20b、引き出し導体22b及びビアホール導体v2の形成工程と同様の工程を繰り返すことにより、誘電体層18a〜18c、コイル導体20a、引き出し導体22a,24aを形成する。これにより、磁性体基板16b上に誘電体部18が形成される。
【0030】
次に、誘電体部18上に磁性体基板16aを積層する。具体的には、誘電体部18上に磁性体基板16aを載置し、真空中でホットプレス機により熱圧着を施す。以上の工程により、積層体12が完成する。なお、実際には、この段階では、複数の積層体12が一つにつながったマザー積層体が完成する。そして、ダイサー等により、マザー積層体を個別の積層体12にカットする。
【0031】
次に、Agを主成分とする導電性ペーストを積層体12に塗布することにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。銀電極には乾燥及び焼き付けを施す。
【0032】
次に、銀電極上にNi/Snのめっきを施す。これにより、外部電極14が形成される。以上の工程により、電子部品10が完成する。
【0033】
(効果)
以上の電子部品10によれば、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる。より詳細には、コモンモードチョークコイル500では、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分とは重なっているので、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分との間には均一な静電容量が発生している。よって、コイルパターン502,504の渦巻き部分は、等しい特性インピーダンスを有している。一方、引出電極部502a,504aは、図9に示すように重なっていない。そのため、引出電極部502aと引出電極部504aとの間に発生する静電容量は、コイルパターン502の渦巻き部分とコイルパターン504の渦巻き部分との間に発生する静電容量よりも小さくなる。その結果、引出電極部502a,504aの特性インピーダンスは、コイルパターン502,504の渦巻き部分の特性インピーダンスよりも大きくなる。よって、引出電極部502a,504aとコイルパターン502,504の渦巻き部分との間におけるインピーダンス整合が崩れてしまう。
【0034】
一方、電子部品10では、コイル導体20a,20bは、z軸方向から平面視したときに重なっている。また、引き出し導体22a,22bは、z軸方向から平面視したときに重なっており、引き出し導体24a,24bも、z軸方向から平面視したときに重なっている。そのため、コイル導体20a,20b間に発生している静電容量と、引き出し導体22a,22b間に発生している静電容量と、引き出し導体24a,24b間に発生している静電容量とを近づけることが可能となる。その結果、コイル導体20a,20bの特性インピーダンスと引き出し導体22a,22b,24a,24bの特性インピーダンスとを近づけることが可能となる。以上より、電子部品10では、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる。
【0035】
また、前記電子部品10では、インピーダンス整合が崩れることが抑制されるので、信号の反射が発生しにくくなる。本願発明者は、以下に説明する実験を行って、信号の反射が抑制されることを確認した。より詳細には、図1に示す電子部品10の第1のサンプルを作製し、図1に示す電子部品10において、引き出し導体22,24を図9の引出電極部502a,504aと同じ構造とした第2のサンプルとを作製した。そして、第1のサンプル及び第2のサンプルの特性インピーダンス及び差動伝送特性を調べた。図3は、TDR測定による特性インピーダンスを示したグラフである。縦軸はインピーダンスを示し、横軸は時間を示しており、サンプル内部での特性インピーダンスの変動を示している。図4は、差動伝送特性を示したグラフである。縦軸は信号の減衰量を示し、横軸は周波数を示している。
【0036】
図3における横軸は前記の通り時間を示しており、第1のサンプル及び第2のサンプルに信号を入力してからのサンプル内部での特性インピーダンスの変動を示している。すなわち、第1のサンプル及び第2のサンプル内のコイル導体20及び引き出し導体22,24の各位置での特性インピーダンスを示している。インピーダンス整合がとられているサンプルでは、コイル導体20及び引き出し導体22,24の位置にかかわらずインピーダンスは大きく変動しない。図3によれば、第1のサンプルでは、第2のサンプルに比べて、インピーダンスの変動が小さいことがわかる。よって、本実験によれば、第1のサンプルは、第2のサンプルに比べて、インピーダンス整合が崩れることを抑制できていることがわかる。
【0037】
また、図4によれば、第1のサンプルの方が,第2のサンプルよりも、信号の減衰量が小さいことがわかる。これは、第1のサンプル内で発生している信号の反射量が、第2のサンプル内で発生している信号の反射量よりも小さいことを意味している。すなわち、本実験によれば、第1のサンプルは、第2のサンプルに比べて、インピーダンス整合が崩れることを抑制できていることがわかる。
【0038】
(第1の変形例)
次に、第1の変形例に係る電子部品10aについて図面を参照しながら説明する。図5は、第1の変形例に係る電子部品10aの外観斜視図である。図6は、第1の変形例に係る電子部品10aの積層体12の分解斜視図である。
【0039】
電子部品10と電子部品10aとの相違点は、接続部32a,32b,36a,36bの有無である。電子部品10aでは、図6に示すように、引き出し導体22a,22b,24a,24bはそれぞれ、接続部32a,32b,36a,36bを含んでいない。したがって、引き出し導体22a,22b,24a,24bはそれぞれ、引き出し部30a,30b,34a,34bの先端のみにおいて積層体12から露出している。枝部42a,42b,42c,42dはそれぞれ、引き出し部30a,30b,34a,34bが積層体12の側面から露出している部分を覆っている。
【0040】
以上のような電子部品10aにおいても、電子部品10と同様に、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる。
【0041】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例に係る電子部品10bについて図面を参照しながら説明する。図7は、第2の変形例に係る電子部品10bの外観斜視図である。図8は、第2の変形例に係る電子部品10bの積層体12の分解斜視図である。
【0042】
電子部品10aと電子部品10bとの相違点は、引き出し部30a,30bが線幅方向(y軸方向)にずらされた状態で重なっており、引き出し部34a,34bが線幅方向(y軸方向)にずらされた状態で重なっている点である。また、それに伴い、電子部品10bでは、外部電極14a〜14dの形状が変更されている。
【0043】
より詳細には、図8に示すように、電子部品10bの引き出し部30a,34aは、電子部品10aの引き出し部30a,34aに比べて、y軸方向の負方向側に位置している。これにより、引き出し部30a,30bは、線幅方向(y軸方向)にずらされた状態で重なっている。一方、電子部品10bの引き出し部30b,34bは、電子部品10aの引き出し部30b,34bに比べて、y軸方向の正方向側に位置している。引き出し部34a,34bは、線幅方向(y軸方向)にずらされた状態で重なっている。
【0044】
また、外部電極14a〜14dはそれぞれ、本体部40a〜40d及び枝部42a〜42dを含んでいる。電子部品10bの本体部40a〜40dは、電子部品10aの本体部40a〜40dと同じであるので説明を省略する。枝部42aは、本体部40aからy軸方向の正方向側に突出しており、かつ、引き出し部30aの一部を覆っている。また、枝部42bは、本体部40bからy軸方向の負方向側に突出しており、かつ、引き出し部30bの一部を覆っている。ただし、図7(a)に示すように、枝部42a,42bは、z軸方向に並んでいるのではなく、y軸方向に並んでいる。このような枝部42a,42bであっても、引き出し部30a,30bに対して接続可能である。なお、電子部品10bの枝部42c,42dの構成は、電子部品10bの枝部42a,42bと同じであるので説明を省略する。
【0045】
以上のような電子部品10bにおいても、電子部品10,10aと同様に、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品は、前記実施形態及び変形例に係る電子部品10,10a,10bに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0047】
具体的には、図1に示す電子部品10において、外部電極14は、接続部32,36の全体を覆っているが、接続部32,36の一部を覆っていてもよい。
【0048】
また、電子部品10,10a,10bにおいて、コイル導体20の中心を通過しz軸方向に延在する磁性体が設けられていてもよい。また、z軸方向から平面視したときに、コイル導体20の外側に磁性体が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明は、電子部品に有用であり、特に、コモンモードチョークコイルを内蔵する電子部品において、インピーダンス整合が崩れることを抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0050】
10,10a,10b 電子部品
12 積層体
14a〜14d 外部電極
16a,16b 磁性体基板
18 誘電体部
18a〜18e 誘電体層
20a,20b コイル導体
22a,22b,24a,24b 引き出し導体
30a,30b,34a,34b 引き出し部
32a,32b,33a,33b,36a,36b 接続部
40a〜40d 本体部
42a〜42d 枝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体と、
前記積層体内に設けられ、かつ、互いに電磁気結合することによってコモンモードチョークコイルを構成している第1のコイル導体及び第2のコイル導体と、
前記第1のコイル導体の一方の端部から前記積層体の側面まで引き出されている第1の引き出し導体と、
前記第2のコイル導体の一方の端部から前記積層体の側面まで引き出されている第2の引き出し導体であって、積層方向から平面視したときに、該第2のコイル導体の一方の端部から該積層体の側面までの間において前記第1の引き出し導体と重なっている第2の引き出し導体と、
前記積層体の側面に設けられている第1の外部電極及び第2の外部電極であって、前記第1の引き出し導体及び前記第2の引き出し導体のそれぞれに接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1の引き出し導体は、前記絶縁体層上において、前記積層体の側面に沿って所定方向に延在しており、
前記第2の引き出し導体は、前記絶縁体層上において、前記積層体の側面に沿って前記所定方向の反対方向に沿って延在していること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極はそれぞれ、前記第1の引き出し導体及び前記第2の引き出し導体が前記積層体の側面に沿って延在している部分に接続されていること、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1の外部電極は、
積層方向に延在している第1の本体部と、
前記第1の本体部から前記所定方向の反対方向に突出しており、かつ、前記第1の引き出し導体が前記積層体の側面に沿って延在している部分を覆う第1の枝部と、
を含んでおり、
前記第2の外部電極は、
積層方向に延在している第2の本体部と、
前記第2の本体部から前記所定方向に突出しており、かつ、前記第2の引き出し導体が前記積層体の側面に沿って延在している部分を覆う第2の枝部と、
を含んでおり、
前記第1の枝部と前記第2の枝部とは、前記所定方向に直交する方向に並んでいること、
を特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の引き出し導体と前記第2の引き出し導体とは、一致した状態で重なっており、
前記第1の外部電極は、
積層方向に延在している第1の本体部と、
前記第1の本体部から所定方向に突出しており、かつ、前記第1の引き出し導体が前記積層体の側面に引き出されている部分を覆う第1の枝部と、
を含んでおり、
前記第2の外部電極は、
積層方向に延在している第2の本体部と、
前記第2の本体部から前記所定方向の反対方向に突出しており、かつ、前記第2の引き出し導体が前記積層体の側面に引き出されている部分を覆う第2の枝部と、
を含んでおり、
前記第1の枝部と前記第2の枝部とは、前記所定方向に直交する方向に並んでいること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1の引き出し導体と前記第2の引き出し導体とは、線幅方向にずらされた状態で重なっていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第1の外部電極は、
積層方向に延在している第1の本体部と、
前記第1の本体部から所定方向の反対方向に突出しており、かつ、前記第1の引き出し導体の一部を覆う第1の枝部と、
を含んでおり、
前記第2の外部電極は、
積層方向に延在している第2の本体部と、
前記第2の本体部から前記所定方向に突出しており、かつ、前記第2の引き出し導体の一部を覆う第2の枝部と、
を含んでおり、
前記第1の枝部と前記第2の枝部とは、前記所定方向に並んでいること、
を特徴とする請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1のコイル導体は、前記絶縁体層上に設けられており、
前記第2のコイル導体は、前記第1のコイル導体が設けられている前記絶縁体層とは異なる前記絶縁体層上に設けられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは、同じ形状を有しており、かつ、積層方向から平面視したときに、一致した状態で重なっていること、
を特徴とする請求項8に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−69781(P2012−69781A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213920(P2010−213920)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】